(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】コンクリート充填鋼管柱の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20221006BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E04B1/30 A
(21)【出願番号】P 2019037197
(22)【出願日】2019-03-01
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018181057
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】赤田 匠
(72)【発明者】
【氏名】福井 英博
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】坪田 玲
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-213348(JP,A)
【文献】特開2004-115315(JP,A)
【文献】実開昭55-119848(JP,U)
【文献】特開2011-241652(JP,A)
【文献】特開2005-290836(JP,A)
【文献】特開平06-146410(JP,A)
【文献】特開昭61-064957(JP,A)
【文献】実開昭62-151354(JP,U)
【文献】特開平07-331679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02-21/04
E04B 1/30
F04B 15/02
C04B 14/00-14/48
G05D 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮強度が100N/mm
2を超える超高強度コンクリートを鋼管内に充填してコンクリート充填鋼管柱を構築する方法であって、
前記鋼管を立設し、空気抜き孔が設けられた鋼製のコンクリート配管を当該鋼管の内部に上から挿入するとともに、足場あるいは建物躯体に固定する工程と、
前記超高強度コンクリートを圧送装置により当該コンクリート配管内に圧送することで、前記鋼管の下側から上側に向かって超高強度コンクリートを充填する工程と、を含
み、
前記コンクリート配管は、上方に延びる第1の縦管と、当該第1の縦管の先端に連結されて水平方向に延びる水平管と、当該水平管の先端に連結されて下方に延びる第2の縦管と、を備え、
前記第1の縦管と前記水平管とは、前記水平管を水平面内で自在に回転可能な回転連結部で連結されており、
前記第2の縦管は、所定長さの配管を複数本連結して構成されており、
前記コンクリート配管を当該鋼管の内部に上から挿入する工程では、前記第2の縦管を前記鋼管の内部に上から挿入し、
前記鋼管の下側から上側に向かって超高強度コンクリートを充填する工程では、圧送装置により超高強度コンクリートを前記コンクリート配管内に圧送して、超高強度コンクリートを前記鋼管内の所定高さまで充填する工程と、
前記第2の縦管と前記水平管との連結を解除し、前記回転連結部を回転させて当該水平管の先端を前記鋼管の直上から退避させる工程と、
前記第2の縦管をクレーンで吊り上げて、当該第2の縦管を構成する配管を取り外して当該第2の縦管の全長を短くする工程と、
前記回転連結部を再度回転させて、当該水平管の先端を前記鋼管の直上に位置させて、当該水平管に前記短くした第2の縦管を再度連結する工程と、を繰り返すことを特徴とするコンクリート充填鋼管柱の構築方法。
【請求項2】
前記超高強度コンクリートは、JIS A1150によるスランプフロー値が45cm以上85cm以下のレディーミクストコンクリートであり、かつ、50cmフロー到達時間が7秒以上であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱の構築方法。
【請求項3】
圧縮強度が100N/mm
2を超える超高強度コンクリートを鋼管内に充填してコンクリート充填鋼管柱を構築する方法であって、
前記鋼管を立設し、空気抜き孔が設けられた鋼製のコンクリート配管を当該鋼管の内部に上から挿入するとともに、足場あるいは建物躯体に固定する工程と、
前記超高強度コンクリートを圧送装置により当該コンクリート配管内に圧送することで、前記鋼管の下側から上側に向かって超高強度コンクリートを充填する工程と、を含
み、
前記鋼管は、断面が矩形環状または円環状でかつ外径寸法が1200mm以内であり、
超高強度コンクリートを充填する工程では、前記鋼管内に挿入したコンクリート配管を上昇させながら、当該鋼管内に前記超高強度コンクリートを充填するとともに、前記空気抜き孔から前記超高強度コンクリートが噴出し始めたら、直ちに当該空気抜き孔を閉塞することを特徴とするコンクリート充填鋼管柱の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮強度が100N/mm2を超える超高強度コンクリートを鋼管内に充填してコンクリート充填鋼管柱を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼管内にコンクリートを充填してコンクリート充填鋼管柱(CFT柱)を構築することが提案されている(特許文献1~3参照)。
特許文献1には、鋼管柱ユニット上端の柱梁接合部の内ダイアフラムにエルボ管を取り付け、このエルボ管を通して柱内部に上からコンクリートを落とし込むコンクリート打設方法(落とし込み充填工法)が示されている。
特許文献2には、ポンプ車により鋼管の柱脚部側面に圧入口を設け、この圧入口からコンクリートを圧入して、鋼管柱の下側から上側に向かってコンクリートを充填して鋼管コンクリート構造柱を構築する方法(圧入工法)が示されている。
特許文献3には、鉛直方向に立設された鋼管内にこの鋼管の上方から配管を挿入しておき、この配管の上端からフレッシュコンクリートを流し込むことで、鋼管内にコンクリートを充填するコンクリートの打設方法(落とし込み充填工法)が示されている。ここで、配管は、筒状の鋼管であり、この配管の周壁には、空気抜き用の開口部が形成されている。
また、近年の高層建物では、細径の柱で建物荷重を支えるため、高強度コンクリートが充填された鋼管柱が採用されることが多く、具体的には、圧縮強度が100N/mm2を超える超高強度コンクリートを鋼管内に充填してコンクリート充填鋼管柱を構築することが要請されている。しかしながら、圧縮強度が100N/mm2を超える超高強度コンクリートは非常に粘性が高いため、鋼管の中に上方からコンクリートを落とし込む落し込み充填工法(特許文献1、3)や鋼管の柱脚部側面に設けた注入口からコンクリートを圧入し、鋼管の下側から上側に向かってコンクリートを圧送する圧入工法(特許文献2)では、コンクリートを鋼管内の隅々まで充填することが難しい、という問題があった。また、鋼管の柱脚部側面の圧入口から粘性の高い超高強度コンクリートを圧入しようとすると、コンクリート面をほぼ均一に保ちながら上昇させるために超高圧の圧送装置が必要となるうえに、超高強度コンクリートを圧送する際の圧力で鋼管に変形が生じないように、鋼管の板厚を厚くしたり、強固に補強したりする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-100994公報
【文献】特開平11-324326公報
【文献】特許第5806161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、圧縮強度が100N/mm2を超える超高強度コンクリートを簡易な構成で鋼管内まで供給し隅々まで充填できる、コンクリート充填鋼管柱の構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、圧縮強度が100N/mm2を超える超高強度コンクリートを充填する超高強度コンクリート充填鋼管柱の構築方法として、圧送装置に接続したコンクリート配管を鋼管の内部に上方から挿入し、その後、圧送装置により超高強度コンクリートをコンクリート配管内に圧送して、超高強度コンクリートを鋼管内に落とし込みながら充填することで、圧送装置を用いない落とし込み充填工法に比べて、非常に粘性の高い超高強度コンクリートがコンクリート配管内で詰まったり閉塞したりすることがなく、かつ、圧入工法に比べて、鋼管内の圧送抵抗による圧力上昇が小さく、鋼管の板厚を厚くしたり強固に補強したりしなくても、鋼管内に安定して超高強度コンクリートを送給できるため、鋼管内の隅々まで超高強度コンクリートを充填できる点に着眼して、本発明に至った。
第1の発明のコンクリート充填鋼管柱の構築方法は、圧縮強度が100N/mm2を超える超高強度コンクリートを鋼管(例えば、後述の鋼管10)内に充填してコンクリート充填鋼管柱(例えば、後述のコンクリート充填鋼管柱1)を構築する方法であって、前記鋼管を立設し、空気抜き孔(例えば、後述の空気抜き孔31)が設けられた鋼製のコンクリート配管(例えば、後述のコンクリート配管30)を当該鋼管の内部に上から挿入するとともに、足場(例えば、後述の枠組足場20)あるいは建物躯体に固定する工程(例えば、後述のステップS1、S2)と、前記超高強度コンクリートを圧送装置(例えば、後述のコンクリートポンプ車22)により当該コンクリート配管内に圧送することで、前記鋼管の下側から上側に向かって超高強度コンクリートを充填する工程(例えば、後述のステップS3)と、を含むことを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、空気抜き孔が設けられた鋼製のコンクリート配管を鋼管内に挿入し、そのコンクリート配管を通して圧送装置で超高強度コンクリートを鋼管内に圧送することで、超高強度コンクリート充填鋼管柱を構築する。
ここで、超高強度コンクリートの粘性は非常に高いため、コンクリート配管の先端側では、コンクリートの吐出に伴う鋼管内面とコンクリート配管との間でのコンクリートの吸引挙動や、コンクリート配管内でのコンクリートの摺動抵抗などにより、ポンプ脈動と呼ばれる瞬間的にコンクリートの流量が上下する現象が発生し、コンクリート配管が激しく暴れる場合がある。そこで、本発明では、コンクリート配管を高剛性の鋼製とし、足場や建物躯体に固定した。よって、フレッシュコンクリートの圧送に伴ってコンクリート配管が暴れるのを抑制できる。
また、フレッシュコンクリートが脈動しながら圧送されるため、コンクリート配管内に空気が巻き込まれる場合がある。よって、このままフレッシュコンクリートの充填を行うと、配管内の空気が鋼管内のフレッシュコンクリートに混入してしまう。そこで、本発明では、コンクリート配管に空気抜き孔を設けることで、圧送時にコンクリート配管内に巻き込まれたエア(空気)が空気抜き孔から排出されるため、鋼管内にコンクリートを隅々まで充填できる。
【0007】
第2の発明のコンクリート充填鋼管柱の構築方法は、前記超高強度コンクリートは、JIS A1150(コンクリートのスランプフロー試験方法)によるスランプフロー値が45cm以上85cm以下の範囲のコンクリートであることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、超高強度コンクリートとして、スランプフロー値が45cm以上85cm以下で高流動性を有する高粘性のものを用いた。よって、超高強度コンクリートを鋼管内の隅々まで比較的容易に充填できる。
また、コンクリート配管に空気抜き孔を設けることで、このような高粘性の超高強度コンクリートを圧送装置により圧送する場合でも、空気抜き孔からコンクリート配管内に巻き込まれた空気を逃がして、コンクリートを鋼管内に隅々まで充填できる。
【0009】
第2の発明のコンクリート充填鋼管柱の構築方法は、前記コンクリート配管(例えば、後述のコンクリート配管30A)は、上方に延びる第1の縦管(例えば、後述の第1の縦管50)と、当該第1の縦管の先端に連結されて水平方向に延びる水平管(例えば、後述の水平管51)と、当該水平管の先端に連結されて下方に延びる第2の縦管(例えば、後述の第2の縦管52)と、を備え、前記第1の縦管と前記水平管とは、前記水平管を水平面内で自在に回転可能な回転連結部(例えば、後述の回転連結部53)で連結されており、前記第2の縦管は、所定長さの配管(例えば、後述の配管521)を複数本連結して構成されており、前記コンクリート配管を当該鋼管の内部に上から挿入する工程(例えば、後述のステップS2)では、前記第2の縦管を前記鋼管の内部に上から挿入し、前記鋼管の下側から上側に向かって超高強度コンクリートを充填する工程(例えば、後述のステップS3)では、圧送装置により超高強度コンクリートを前記コンクリート配管内に圧送して、超高強度コンクリートを前記鋼管内の所定高さまで充填する工程(例えば、後述のステップS31)と、前記第2の縦管と前記水平管との連結を解除し、前記回転連結部を回転させて当該水平管の先端を前記鋼管の直上から退避させる工程(例えば、後述のステップS32)と、前記第2の縦管を揚重機(例えば、後述の揚重機60)で吊り上げて、当該第2の縦管を構成する配管を取り外して当該第2の縦管を短くする工程(例えば、後述のステップS33)と、前記回転連結部を再度回転させて、当該水平管の先端を前記鋼管の直上に位置させて、当該水平管に前記短くした第2の縦管を再度連結する工程(例えば、後述のステップS34)と、を繰り返すことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、鋼管の内部に挿入した第2の縦管を揚重機で吊り上げて、この状態で配管を取り外すことで、第2の縦管を短くする。このように揚重機を使用することで、コンクリート打設作業を迅速に行うことができる。
【0011】
第4の発明のコンクリート充填鋼管柱の構築方法は、前記鋼管の断面は、矩形環状または円環状でかつ外径寸法が1200mm以内であり、超高強度コンクリートを充填する工程では、前記鋼管内にコンクリート配管を挿入し、この状態で当該鋼管内に前記超高強度コンクリートを充填するとともに、前記空気抜き孔から前記超高強度コンクリートが噴出し始めたら、直ちに当該空気抜き孔を閉塞することを特徴とする。
【0012】
超高強度コンクリートは粘性が高いため、コンクリート配管内のコンクリート表面の高さが鋼管内のコンクリート表面の高さよりも高くなりやすい。その結果、コンクリート配管内のコンクリート高さが上昇し、空気抜き孔に到達する場合がある。この場合、超高強度コンクリートが空気抜き孔から漏れて、鋼管内のコンクリート未充填のダイアフラムの上部に溜まって、コンクリートの適切な充填を阻害するおそれがある。
そこで、本発明によれば、超高強度コンクリートを鋼管内に充填する際、コンクリート配管内のコンクリート表面の高さが上昇して、空気抜き孔からコンクリートが噴出し始めたら、直ちに空気抜き孔を閉塞する。これにより、超高強度コンクリートを鋼管内の隅々まで満遍なく充填できる。
また、上記第1~第3の発明によるコンクリート充填鋼管柱の構築方法によれば、大口径ではない外径寸法が1200mm以内の鋼管柱であっても、非常に粘性の高い超高強度コンクリートを鋼管内に詰まらせることなく、鋼管内の隅々まで超高強度コンクリートを充填できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧縮強度が100N/mm2を超える超高強度コンクリートを簡易な構成で鋼管内の隅々まで充填できる、コンクリート充填鋼管柱の構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の構築方法のフローチャートである。
【
図2】前記コンクリート充填鋼管柱の構築方法の説明図である。
【
図3】
図2に示すコンクリート配管の破線Aで囲んだ部分の拡大斜視図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の構築方法におけるコンクリート配管を設置した状態を示す側面図である。
【
図5】
図4に示すコンクリート配管の破線Bで囲んだ部分の拡大斜視図である。
【
図6】前記コンクリート充填鋼管柱の構築方法における超高強度コンクリートの充填方法のフローチャートである。
【
図7】前記超高強度コンクリートの充填方法の説明図(その1、コンクリート配管の側面図)である。
【
図8】前記超高強度コンクリートの充填方法の説明図(その2、コンクリート配管の平面図)である。
【
図9】前記超高強度コンクリートの充填方法の説明図(その3、コンクリート配管の側面図)である。
【
図10】前記超高強度コンクリートの充填方法の説明図(その4、コンクリート配管の側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、超高強度コンクリート充填鋼管柱の構築方法として、従来のように、鋼管の柱脚部側面の圧入口からコンクリートを圧入し、鋼管の下側から上側に向かってコンクリートを充填する圧入工法ではなく、鋼管内にコンクリート配管を挿入した後、圧送装置により超高強度コンクリートをコンクリート配管内に圧送し、鋼管の下側から上側に向かって超高強度コンクリートを充填する充填鋼管柱の構築方法である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
本実施形態では、超高強度コンクリートを鋼管10内に充填して、コンクリート充填鋼管柱1を構築する(
図2参照)。
本実施形態で用いる超高強度コンクリートは、JIS A1150(コンクリートのスランプフロー試験)によるスランプフロー値が45cm以上85cm以下であり、圧縮強度が100N/mm
2である。
セメントは、ポルトランド系セメントにシリカフューム等を混合した混合セメントである。
【0016】
なお、コンクリートは、強度が高いほど粘性が高い傾向にある。超高強度コンクリートの場合、単位水量が少ないまま、単位量当たりに使用するセメント粉末が多くなるため、粘性が高くなる傾向がある。
コンクリートの粘性は、JIS A1150(コンクリートのスランプフロー試験)において50cmフロー到達時間により評価する。具体的には、フロー到達時間が4秒以下の場合は低粘性であり、7秒超の場合は高粘性である。本発明の超高強度コンクリートは、JIS A1150(コンクリートのスランプフロー試験)において50cmフロー到達時間が7秒以上であり、高粘性である。
以下、コンクリート充填鋼管柱1を構築する手順について、
図1のフローチャートを参照しながら説明する。
【0017】
ステップS1では、
図2に示すように、コンクリート充填鋼管柱1の施工箇所を囲んで枠組足場20を架設し、さらに、この枠組足場20上にコンクリート配管30を固定するための架台21を架設する。
【0018】
ステップS2では、
図2に示すように、鋼管10を立設するとともに、圧送装置としてのコンクリートポンプ車22から鋼管10に至るコンクリート配管30を設置する。
鋼管10は、断面が円環状でかつ外径寸法が1200mm以内である。この鋼管10の上端部は、鉄骨梁が接合される柱梁接合部であり、鋼管10の柱梁接合部の内部には、貫通孔が形成された内ダイアフラムが設けられている。
鋼管10の内ダイアフラムの貫通孔を通して、コンクリート配管30を上から鋼管10の内部の下端付近まで挿入する。
ここで、コンクリート配管30は、所定長さの鋼製の配管を複数本接続したものであり、コンクリート打設時にコンクリート配管30が暴れないように、コンクリート配管30を枠組足場20および架台21に固定しておく。また、コンクリート配管30のうち鋼管10の内部に挿入される部分については、内ダイアフラムの貫通孔との引っ掛かりを防止するため、配管同士の接合を出っ張りの少ない螺合接合としている。
【0019】
図3は、
図2に示すコンクリート配管の破線Aで囲んだ部分の拡大斜視図である。
コンクリート配管30の途中(具体的には、鋼管10の上端部付近)には、空気抜き孔31が設けられるとともに、この空気抜き孔31を開閉する開閉治具40が取り付けられている。この開閉治具40は、ハット形状に曲げ加工した一対の板材41を、コンクリート配管30を挟んで配置し、4本のボルト42で互いに固定したものである。一対の板材41の一方には、貫通孔43が設けられている。
この開閉治具40を
図3中矢印方向に回転させて、開閉治具40の貫通孔43をコンクリート配管30の空気抜き孔31の上に重ねることで、空気抜き孔31が開放される。一方、開閉治具40の貫通孔43をコンクリート配管30の空気抜き孔31の上からずらすことで、空気抜き孔31が開閉治具40で閉塞される。
【0020】
ステップS3では、コンクリートポンプ車22により、超高強度コンクリートをコンクリート配管30内に圧送して、鋼管10の下側から上側に向かって超高強度コンクリートを充填する。このとき、鋼管10内に挿入したコンクリート配管30の先端の配管を一本ずつ取り外すことで、コンクリート配管30の先端高さを徐々に引き上げながら、鋼管10内に超高強度コンクリートを充填する。
ここで、最初のうちは、開閉治具40を回転させて、コンクリート配管30の空気抜き孔31を開放し、圧送時にコンクリート配管30内に巻き込まれたエア(空気)を空気抜き孔31から排出する。その後、コンクリート配管30内のコンクリート表面の高さが高くなって、空気抜き孔31からコンクリートが噴出し始めたら、開閉治具40を回転させて、直ちに空気抜き孔31を閉塞する。
【0021】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)コンクリート配管30を高剛性の鋼製とし、枠組足場20および架台21に固定した。よって、フレッシュコンクリートの圧送に伴ってコンクリート配管30が暴れるのを抑制できる。
また、コンクリート配管30に空気抜き孔31を設けたので、圧送時にコンクリート配管30内に巻き込まれたエア(空気)を空気抜き孔31から排出して、鋼管10内にコンクリートを隅々まで充填できる。
また、鋼管10内に挿入するコンクリート配管30の断面積は鋼管10の断面積より小さいため、コンクリートポンプ車22の圧送力が一定の場合、コンクリート配管内の圧送圧は、従来のように鋼管10にコンクリートを圧入する場合の圧送圧よりも高くなるので、超高強度コンクリートであっても容易に圧送できる。また、鋼管10内に挿入したコンクリート配管30内の超高強度コンクリートは、圧送方向が重力と同じ方向であるため、鋼管10を補強することなく円滑に圧送できる。また、本発明の充填方法は、落とし込み充填工法に分類され、鋼管10内にコンクリート配管10の配管1本分のコンクリート圧のみが作用するため、鋼管10を補強することなく円滑に圧送できる。
【0022】
(2)超高強度コンクリートとして、スランプフロー値が45cm以上85cm以下で高流動性を有し、50cmフロー到達時間が7秒以上と高粘性のものを用いた。よって、超高強度コンクリートを鋼管10内の隅々まで比較的容易に充填できる。
また、コンクリート配管30に空気抜き孔を設けることで、このような高粘性の超高強度コンクリートをコンクリートポンプ車22により圧送する場合でも、空気抜き孔31からコンクリート配管30内に巻き込まれた空気を逃がして、鋼管10内にコンクリートを密実に充填できる。
【0023】
(3)超高強度コンクリートを鋼管10内に充填する際、コンクリート配管30内のコンクリート表面の高さが上昇して、空気抜き孔31からコンクリートが噴出し始めたら、直ちに空気抜き孔31を閉塞する。これにより、超高強度コンクリートを鋼管10内の隅々まで満遍なく充填できる。
【0024】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、コンクリート配管30にさらに回転連結部53を設けた点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、ステップS2では、鋼管10を立設するとともに、圧送装置としてのコンクリートポンプ車22から鋼管10に至るコンクリート配管30Aを設置する。
コンクリート配管30Aは、
図4に示すように、コンクリートポンプ車22側から上方に延びる第1の縦管50と、第1の縦管50の先端に連結されて水平方向に延びる水平管51と、水平管51の先端に連結されて下方に延びる第2の縦管52と、を備える。
【0025】
第2の縦管は、鋼管10の内部に上から挿入されている。この第2の縦管52は、所定長さの配管521を複数本ここでは3本連結して構成されている。
図5は、
図4に示すコンクリート配管30Aの破線Bで囲んだ部分の拡大斜視図である。
図5にも示すように、第1の縦管50と水平管51とは、水平管51を水平面内で自在に回転可能なスイベル機構を有する回転連結部53で連結されている。
また、水平管51と第2の縦管52との連結部分には、上述の開閉治具40が取り付けられている。
【0026】
ステップS3では、コンクリートポンプ車22により、超高強度コンクリートをコンクリート配管30A内に圧送して、鋼管10の下側から上側に向かって超高強度コンクリートを充填する。このとき、鋼管10内に挿入した第2の縦管52の配管521を一本ずつ取り外すことで、第2の縦管52の先端高さを徐々に引き上げながら、鋼管10内に超高強度コンクリートを充填する。
【0027】
以下、このステップS3の超高強度コンクリートを鋼管10に充填する手順について、
図6のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、ステップS31では、
図4に示すように、コンクリートポンプ車22により超高強度コンクリートをコンクリート配管30A内に圧送して、超高強度コンクリートを鋼管10内の所定高さまで充填する。ここで、所定高さとは、例えば、第2の縦管52の先端の配管521と先端から2番目の配管521との連結部分付近である。
ステップS32では、
図7および
図8に示すように、第2の縦管52を揚重機60で吊り下げ支持し、この状態で、第2の縦管52の上端と水平管51(開閉治具40)との連結を解除し、回転連結部53を回転させて、水平管51の先端を鋼管10の直上から退避させる。
ステップS33では、
図9に示すように、第2の縦管52を揚重機60で吊り上げて、第2の縦管52の上端の配管521を取り外し、第2の縦管52を短くする。
ステップS34では、
図10および
図8に示すように、回転連結部53を再度回転させて、水平管51の先端を鋼管10の直上に位置させて、水平管51の先端に、短くした第2の縦管52を再度連結する。
ステップS35では、ステップS31~S34を繰り返す。
【0028】
ここで、最初のうちは、開閉治具40を回転させて、コンクリート配管30の空気抜き孔31を開放し、圧送時にコンクリート配管30内に巻き込まれたエア(空気)を空気抜き孔31から排出する。その後、コンクリート配管30内のコンクリート表面の高さが高くなって、空気抜き孔31からコンクリートが噴出し始めたら、開閉治具40を回転させて、直ちに空気抜き孔31を閉塞する。
【0029】
本実施形態によれば、上述の(1)~(3)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(4)鋼管10の内部に挿入した第2の縦管52を揚重機60で吊り上げて、この状態で配管を取り外すことで、第2の縦管52を短くする。このように揚重機60を使用することで、コンクリート打設作業を迅速に行うことができる。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0031】
(関連技術)
次に、本発明の関連技術について説明する。
上記実施形態のような圧縮強度が100N/mm2を超える超高強度コンクリートを鋼管内に充填するコンクリート充填鋼管柱の構築方法として、圧送する超高強度コンクリートの材料特性によっては、空気抜き孔を設けない鋼製のコンクリート配管を鋼管内部に上から挿入して、超高強度コンクリートを圧送する構築方法が考えられる。
【符号の説明】
【0032】
1…コンクリート充填鋼管柱 10…鋼管
20…枠組足場 21…架台 22…コンクリートポンプ車(圧送装置)
23…コンクリート打設用漏斗
30、30A…コンクリート配管 31…空気抜き孔
40…開閉治具 41」…板材 42…ボルト 43…貫通孔
50…第1の縦管 51…水平管 52…第2の縦管 53…回転連結部
60…揚重機 521…配管