(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】較正作業支援システム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/70 20170101AFI20221006BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20221006BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20221006BHJP
G06F 3/0484 20220101ALI20221006BHJP
【FI】
G06T7/70 Z
E02F9/26 C
G01C15/00 104D
G06F3/0484
(21)【出願番号】P 2019059267
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】中城 健太
(72)【発明者】
【氏名】金成 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】泉 枝穂
【審査官】小太刀 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-1775(JP,A)
【文献】特許第5111210(JP,B2)
【文献】特開2016-61054(JP,A)
【文献】別府 弘邦 ほか,バーチャルリアリティ技術を用いた建設機械の遠隔操作システム,法政大学 計算科学研究センター 研究報告,vol.18,2005年,https://www.media.hosei.ac.jp/bulletin_archives/vol18_06.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/70
E02F 3/42-43
E02F 3/84-85
E02F 9/00-9/28
G01P 21/00
G01B 11/00
G01C 15/00
G06F 3/0484
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械が備える作業装置に取り付けられた慣性計測装置の較正作業を支援する較正作業支援システムであって、
前記作業機械の車格情報と前記作業装置の仕様情報とを含む機械情報を入力するための入力装置と、
前記入力装置から入力された前記機械情報と、前記慣性計測装置を較正する際の前記作業装置の目標計測姿勢として予め定められた目標姿勢情報とに基づいて、前記目標計測姿勢をとった前記作業装置を所定の視点位置から所定の視線方向で見た場合の画像である目標姿勢画像を生成する制御装置と、
前記制御装置で生成された前記目標姿勢画像を表示する表示装置とを備え、
前記表示装置は、前記所定の視点位置から前記所定の視線方向で見た現実の前記作業装置に前記目標姿勢画像を重畳可能に構成されていることを特徴とする較正作業支援システム。
【請求項2】
請求項1の較正作業支援システムにおいて、
前記表示装置は、前記作業機械に搭乗する運転者の前方に配置される透過型ディスプレイであり、
前記所定の視点位置及び前記所定の視線方向は、前記運転者の視点位置及び視線方向であり、
前記運転者の視点位置及び視線方向を計測する計測装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記入力装置から入力された前記機械情報と、前記目標姿勢情報と、前記計測装置で計測された前記運転者の視点位置及び視線方向とに基づいて、前記目標計測姿勢をとった前記作業装置を前記運転者の視点位置及び視線方向で見たときの目標姿勢画像を前記目標姿勢画像として生成することを特徴とする較正作業支援システム。
【請求項3】
請求項2の較正作業支援システムにおいて、
前記表示装置は、前記作業機械に搭乗する運転者が装着する透過型のヘッドマウントディスプレイであり、
前記計測装置は、前記ヘッドマウントディスプレイに搭載されたカメラであって、前記作業機械の運転室の前方に設置された二次元マーカを撮影するカメラであり、
前記制御装置は、前記カメラの内部パラメータと、前記カメラの撮影画像上の前記二次元マーカの形状とに基づいて前記運転者の視点位置及び視線方向を演算することを特徴とする較正作業支援システム。
【請求項4】
請求項1の較正作業支援システムにおいて、
前記所定の視点位置及び前記所定の視線方向は、前記作業機械に取り付けられたカメラの取り付け位置及び光軸方向であり、
前記制御装置は、前記入力装置から入力された前記機械情報と、前記目標姿勢情報と、前記カメラの取り付け位置及び光軸方向とに基づいて、前記目標計測姿勢をとった前記作業装置を前記カメラで見たときの目標姿勢画像を前記目標姿勢画像として生成し、
前記表示装置は、前記作業機械に搭乗する運転者の前方に配置されるディスプレイであり、前記カメラで撮影した前記現実の作業装置と前記目標姿勢画像を重畳表示することを特徴とする較正作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械が備える作業装置に取り付けられた慣性計測装置の較正作業を支援する較正作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは、代表的な作業機械であり、作業装置として多関節型のフロント作業機を備えている。このフロント作業機の姿勢を運転者に提示し、油圧ショベルによる掘削作業を支援する表示システムとして、マシンガイダンスがある。正確なマシンガイダンスの実現にはフロント作業機の姿勢を正確に検出する必要がある。
【0003】
フロント作業機の姿勢検出に関する技術として、特許文献1には、油圧シリンダのストローク長を計測するストロークセンサと、ストロークセンサによるストローク長の計測値をリセットするリセット基準点を計測するリセットセンサと、油圧シリンダのストロークエンド位置を検出するストロークエンド検出処理部と、リセット基準点および/またはストロークエンド位置を検出した場合に、ストローク長の計測値を校正(較正)する校正処理部と、油圧シリンダの初期校正作業を行う場合、油圧シリンダが搭載される作業機械全体の表示を行うモニタと、校正対象の油圧シリンダを駆動させるための可動部を強調表示するとともに駆動方向を表示する強調表示処理部と、を備えた油圧シリンダのストローク初期校正作業支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、マシンガイダンスにおけるフロント作業機の姿勢計測手段として、IMU(Inertial Measurement Unit)が利用されている。IMUとはジャイロセンサと加速度センサから成る慣性計測装置であり、その2種類のセンサを組み合わせることで高精度かつ高応答な姿勢計測を実現している。IMUは油圧ショベルの車体およびフロント作業機の各部位(ブーム、アーム、バケットなど)の表面に設置され、IMUの取付け位置および取付け角度を事前に較正することでフロント作業機の姿勢を計測している。すなわち、較正作業が未実施である場合には、運転者にフロント作業機の姿勢情報を提示することはできない。
【0006】
ここで、IMUの較正作業とは、フロント作業機の各部位に取り付けられたIMUが計測する計測値と、実際のフロント作業機の姿勢とをマッチングさせる作業である。具体的には、フロント作業機をある姿勢(目標計測姿勢)で停止させ、その時のIMUの計測値と、各部位の回動部(ブームピン、アームピン、バケットリンクピンなど)の位置座標をトータルステーションなどの高精度な測量機器で計測し、その2つの計測値をマシンガイダンスコントローラに学習させるというものである。このとき、較正作業の精度を向上させるため、複数の姿勢で計測値の学習を実施する。また、量産機毎の精度のバラつきを抑えるため、較正作業における計測姿勢および計測回数は、作業手順書等で定められる。
【0007】
しかし、機体の車格や仕様が多岐にわたるため、運転室内でフロント作業機を操作する運転者が特定の姿勢にフロント作業機を動かすことは困難である。運転者の視点(運転室から見たフロント作業機の様子)からフロント作業機の姿勢を把握することが難しいということは、マシンガイダンスにおいて、フロント作業機の姿勢情報を様々な視点を用いて提示していることからも明らかである。そのため、従来は、運転室の外からフロント作業機の姿勢を直接目視して、正しい姿勢であるかどうかを確認している。よって、較正作業には直接関係のない、運転室の外から姿勢を確認するという余分な作業が発生しているため、作業性が低下してしまっている。
【0008】
上記の特許文献1では、シリンダ内蔵型のストロークセンサの較正作業に関わる操作支援情報を提示している。具体的には、動作させる部位(可動部)とその方向(駆動方向)を提示し、シリンダのストロークエンドに設置される検出装置でストロークの動作を検出し、較正作業の完了を報知するものである。ストロークセンサを使用する場合には、特許文献1の発明を使用することで、熟練者でなくても較正作業を効率的に実施することが可能になる。
【0009】
しかしながら、フロント作業機の姿勢計測手段としてIMUを用いる場合、同姿勢計測手段としてストロークセンサを用いる特許文献1の技術を使用することはできない。なぜなら、特許文献1のストロークセンサはシリンダに内蔵されるため、予めセンサの取付け姿勢が決まっているが、IMUは取付け姿勢が不明であり、較正作業内で取付け姿勢を較正する必要がある。そのため、特許文献1のように、シリンダのストロークエンドを検知して較正作業の完了を判断することができない。また、IMUの較正作業では、いくつかの計測姿勢をとる必要があり、特許文献1の支援情報(可動部とその駆動方向)では、フロント作業機が正しい計測姿勢にあるかどうかを運転者は判断することができない。
【0010】
本発明の目的は、IMUの較正作業中の作業装置の姿勢が目標計測姿勢と一致しているか否かを、運転室内で操作する運転者が容易に判断できる較正作業支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、作業機械が備える作業装置に取り付けられた慣性計測装置の較正作業を支援する較正作業支援システムであって、前記作業機械の車格情報と前記作業装置の仕様情報とを含む機械情報を入力するための入力装置と、前記入力装置から入力された前記機械情報と、前記慣性計測装置を較正する際の前記作業装置の目標計測姿勢として予め定められた目標姿勢情報とに基づいて、前記目標計測姿勢をとった前記作業装置を所定の視点位置から所定の視線方向で見た場合の画像である目標姿勢画像を生成する制御装置と、前記制御装置で生成された前記目標姿勢画像を表示する表示装置とを備え、前記表示装置は、前記所定の視点位置から前記所定の視線方向で見た現実の前記作業装置に前記目標姿勢画像を重畳可能に構成されているものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、IMUの較正作業中の目視による姿勢確認作業が省略されるので、較正作業の効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの構成図。
【
図2】本発明の実施形態に係る運転室7内の概観図。
【
図3】本発明の実施形態に係るヘッドマウントディスプレイのハードウェア構成図。
【
図4】本発明の実施形態に係る入力装置のハードウェア構成図。
【
図5】本発明の実施形態に係る較正作業支援システムの機能ブロック図。
【
図6】ヘッドマウントディスプレイの表示制御装置による目標姿勢画像生成フローチャート。
【
図7】本発明の実施形態に係る入力装置の入力画面のレイアウト構成図。
【
図8】本発明の実施形態に係る較正作業支援システムが運転者に提示する支援画像の一例を示す図。
【
図9】本発明の実施形態に係るフロント部材のモデル座標系とフロント作業機のフロント座標系の関係を示す図。
【
図10】本発明の実施形態に係るブーム根元ピン位置とマーカ位置の位置関係を示す図。
【
図11】本発明の実施形態に係る慣性計測装置S1,S2,S3の較正作業に必要なシステムの概略構成図。
【
図12】本発明の実施形態に係るコントローラが実行する較正作業処理のフローチャート。
【
図13】本発明の実施形態に係るフロント作業機の各フロント部材に取り付けられたマーカの位置を示す図。
【
図14】本発明の実施形態の変形例に係る表示装置の取り付け位置を示す図。
【
図15】本発明の実施形態の変形例に係る較正作業支援システムが運転者に提示する支援画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
なお,以下では,作業機械として,作業装置の先端の作業具(アタッチメント)としてバケットを備える油圧ショベルを例示するが,バケット以外のアタッチメントを備える作業機械に本発明を適用してもよい。また,姿勢検出にIMUが利用可能な作業装置を備える作業機械であれば,油圧ショベル以外の作業機械への適用も可能である。
【0015】
(全体構成)
図1は本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。なお、図中の左を前、右を後ろ、紙面の手前から奥に向かう方向を右、同奥から手前に向かう方向を左と称することがある。この図に示すように、油圧ショベル(作業機械)1は、下部走行体1eと、この下部走行体1eの上側に旋回可能に取り付けられた上部旋回体1Bと、を備えている。
【0016】
上部旋回体1Bは、ベースとなる旋回フレーム10と、この旋回フレーム10の前方左側に配置される運転室7と、旋回フレーム10の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられるフロント作業機(作業装置)1Aと、旋回フレーム10の後方に配置されるカウンタウェイト6と、フロント作業機1Aとカウンタウェイト6との間に設置されるエンジンルーム1dと、を備えている。
【0017】
フロント作業機(作業装置)1Aは,垂直方向にそれぞれ回動する複数のフロント部材(ブーム1a,アーム1b及びバケット1c)を連結して構成されている。ブーム1aの基端は上部旋回体1Bの前部においてブームピンを介して回動可能に支持されている。ブーム1aの先端にはアームピンを介してアーム1bの基端が回動可能に連結されており,アーム1bの先端にはバケットピンを介してバケット1cの基端が回動可能に連結されている。ブーム1aはブームシリンダ3aによって駆動され,アーム1bはアームシリンダ3bによって駆動され,バケット1cはバケットシリンダ3cによって駆動される。
【0018】
このフロント作業機1Aは、運転室7に搭乗した運転者Mによって操作される。カウンタウェイト6は、フロント作業機1Aとの重量バランスを取るためのもので、例えば略円弧状の水平断面を有する重量物で形成できる。
【0019】
また、フロント作業機1Aの各フロント部材(ブーム1a、アーム1b、バケット1c)の側面には、それぞれの姿勢を計測するための姿勢計測装置としての慣性計測装置(IMU)S1~S3が取り付けられている。
【0020】
図2は運転室7内の概観図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付し、同じ部分の説明は省略することがある(後の図においても同様とする)。
図2に示すように、運転室7には、運転者Mが着座する運転席7Aと、各油圧アクチュエータ3a~3cの動作を含む車体の動作を指示する操作装置としての4本の操作レバー7a1~7a4と、が設けられている。
【0021】
操作レバー7a1(操作左レバー)はアームシリンダ3b(アーム1b)及び上部旋回体1B(旋回油圧モータ(図示せず))を操作するためのものであり,操作レバー7a2(操作右レバー)はブームシリンダ3a(ブーム1a)及びバケットシリンダ3c(バケット1c)を操作するためのものである。また,操作レバー7a3(走行左レバー)は下部走行体1e(左走行油圧モータ(図示せず))を操作するためのものであり,操作レバー7a4(走行右レバー)は下部走行体1e(右走行油圧モータ(図示せず))を操作するためのものである。
【0022】
運転室7は複数のピラー16で支持されており、フロント側の2本のピラー16の間にフロントガラス(前窓)13が埋め込まれている。また、運転室7の前方に設置されたフロントガラス13には二次元マーカ7bが取り付けられており、運転席7Aに着座した運転者Mから見て右側のピラー16にはタッチパネル式の入力装置15が取り付けられている。入力装置15では、油圧ショベル1の車格情報と、フロント作業機1Aの仕様情報と、較正作業の対象を特定するための作業項目情報と、各フロント部材1a,1b,1cの回転角により目標計測姿勢を特定するための作業手順情報(目標姿勢情報とも称する)とを入力することができる。なお、入力装置15は表示装置を兼ねても良い。
【0023】
油圧ショベル1に搭乗して運転席7Aに着座した運転者Mの頭部には,運転者Mの前方に配置される透過型ディスプレイ(ハーフミラー17G)を備える表示装置としてヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)17が装着される。
【0024】
図3はHMD17のハードウェア構成図である。
図3に示すように、HMD17は、二次元マーカ7bを撮影することで運転者Mの視点位置及び視線方向を計測する計測装置としてのカメラ17Aと、目標計測姿勢をとったフロント作業機1Aを運転者Mの視点位置から運転者Mの視線方向で見た場合の画像である目標姿勢画像(支援画像とも称する)を生成する表示制御装置17Bと、表示制御装置17Bで生成された目標姿勢画像を出力するプロジェクタ17Eと、プロジェクタ17Eから出力される目標姿勢画像を拡大縮小するレンズ17Fと、レンズ17Fを通過した目標姿勢画像が投影される透過型ディスプレイであるハーフミラー17Gとを備えている。ハーフミラー17Gは、目標姿勢画像を表示する表示装置として機能する一方で、その透過性により運転者Mの視点位置及び視線方向で見た現実のフロント作業機1Aに目標姿勢画像を重畳可能に構成されている。
【0025】
カメラ17AはHMD17の本体に搭載されており、運転者Mの頭部の動きに合わせて位置及び光軸方向が変化する。ハーフミラー17GはHMD17を装着した運転者Mの瞳の前方に配置され透過性と反射性を併せ持つ構造となっているため、運転者Mはハーフミラー17G上に投影された目標姿勢画像と前方の現実の景色(現実のフロント作業機1Aも含む)を同時に視認することができる。表示制御装置17Bは、演算装置17C(例えばCPU)と、記憶装置17D(例えばROM,RAM等の半導体メモリ)と、通信インターフェース(I/F)17Hと、入出力I/F17Jとを備えている。記憶装置17Dには、予め目標姿勢画像の基となるフロント作業機1Aのモデルデータが、フロント部材毎に、後述する機械情報と対応付けて記憶されているほか、カメラ17Aの内部パラメータや、二次元マーカ7bのパターンファイルが記憶されている。また、HMD17は通信I/F17Hを介してネットワークに接続され、入力装置15とデータ通信を行うことができる。
【0026】
図4は入力装置15のハードウェア構成図である。この図に示すように入力装置15は、ディスプレイ(表示装置)15Aと、ディスプレイ15Aの上面に貼り付けられたタッチパネル(位置入力装置)15Bと、ディスプレイ15A及びタッチパネル15Bを制御する入力制御装置15Gを備えている。入力制御装置15Gは、表示制御装置17Bと同様に、演算装置15C(例えばCPU)と、記憶装置15D(例えばROM,RAM等の半導体メモリ)と、通信I/F15Hと、入出力I/F15Jとを備えている。
【0027】
図5は本発明の実施の形態に係る較正作業支援システムの機能ブロック図である。HMD17の表示制御装置17Bは、運転者Mによって入力装置15のディスプレイ15A(タッチパネル15B)に入力される情報(後述する機械情報と作業情報(
図7参照))を利用して、記憶装置17Dに記憶されたプログラムを演算装置17Cによって実行することにより
図5に示した各部として機能する。
【0028】
図7は、入力装置15のディスプレイ15Aに表示される機械情報入力画面(a)と、作業内容入力画面(b)と、作業手順入力画面(c)を示す図である。
【0029】
機械情報入力画面(a)には、油圧ショベル1の車格情報と、フロント作業機1Aの各部の仕様情報(例えば,ブームの仕様としては,標準ブーム,ツーピースブーム,ハイリフトブーム等がある)とを含む「機械情報」の入力を運転者Mから受け付ける機械情報入力部15aが設けられている。
図7の例では、車格情報と各部の仕様情報は、プルダウンメニューから運転者Mが選択するように構成されている。
【0030】
作業内容入力画面(b)と作業手順入力画面(c)には、それぞれ、慣性計測装置S1,S2,S3を較正する際の「作業情報」の入力を運転者Mから受け付ける作業情報入力部15bが設けられている。作業内容入力画面(b)の作業情報入力部15bには「作業情報」のうち作業項目の情報(“作業項目情報”は、慣性計測装置が取り付けられた複数のフロント部材(ブーム,アーム,アタッチメント(バケット))のうちどのフロント部材を姿勢計測の対象、すなわち較正作業の対象とするかを規定する情報である)が入力され、作業手順入力画面(c)作業情報入力部15bには「作業情報」のうち作業手順の情報(“作業手順情報”は、作業項目で選択したフロント部材上の慣性計測装置を較正する際にフロント作業機1Aの目標計測姿勢として予め定められた情報である)が入力される。
図7の例では、作業項目の情報(姿勢計測の対象となるフロント部材)は、プルダウンメニューから運転者Mが選択するように構成されている。作業手順の情報は、予め設定された複数の計測姿勢を予め定められた順番に自動的に表示しても良いし、運転者Mが各フロント部材の角度を手動入力して複数の目標計測姿勢をとるようにしても良い。
【0031】
運転者Mによってそれぞれの入力画面(a),(b),(c)から入力された機械情報と作業情報は、ネットワークを経由してHMD17へと送信される。
【0032】
図5において、表示制御装置17Bは、入力装置15で入力される機械情報に基づいてその対象機械に対応するフロント作業機1Aのモデルデータをモデルデータ記憶部17gから選択するモデル選択部17aと、入力装置15で入力される機械情報及び作業情報、並びに、マーカ位置情報記憶部17jに記憶されたマーカ7bの取付位置情報に基づいてモデルデータの座標を変換するモデル座標変換部17bと、入力装置15から入力された機械情報及び作業情報(作業情報には目標計測姿勢を含まれる)と、カメラ17Aの姿勢に基づいて算出される運転者Mの視点位置及び視線方向とに基づいて目標計測姿勢をとっているフロント作業機1Aを運転者Mから見た場合の画像(目標姿勢画像)を生成する目標姿勢画像生成部17cと、目標姿勢画像生成部17cで生成された目標姿勢画像をハーフミラー17Gに投影する表示制御部17dと、マーカ情報記憶部17hから読み出したマーカ7bの形状や大きさを含む情報に基づいてカメラ17Aの撮影画像からマーカ7bを検出するマーカ検出部17eと、マーカ検出部17eが検出したマーカ7bの形状や大きさ、並びに、内部パラメータ記憶部17iに記憶されているカメラ17Aの内部パラメータに基づいてカメラ17Aの位置と姿勢(カメラ17Aの外部パラメータ)を算出するカメラ姿勢推定部17fと、車格や仕様に合わせた複数のフロント作業機1Aのモデルデータが記憶されているモデルデータ記憶部17gと、マーカ7bの形状や大きさを含む情報が記憶されているマーカ情報記憶部17hと、カメラ17Aの内部パラメータ(例えば焦点距離や光学的中心)が記憶されている内部パラメータ記憶部17iと、運転室7内におけるマーカ7bの取り付け位置情報(例えばブーム1aの根元ピン(ブームピン)の位置を基準とした位置)が記憶されたマーカ位置情報記憶部17jとを備えている。
【0033】
(HMD17の表示制御装置17Bによる目標姿勢画像生成フローチャート)
HMD17の表示制御装置17Bによる目標姿勢画像を生成する方法について
図6を参照しながら説明する。
図6はHMD17の表示制御装置17Bによる目標姿勢画像生成フローチャートである。表示制御装置17Bは、運転者Mからの較正作業の開始指示の入力をトリガーとして
図6のフローを実行して目標姿勢画像をハーフミラー17Gに投影する。
【0034】
表示制御装置17Bは、運転者Mからの較正作業の開始指示を入力装置15から入力すると
図6のフローを開始して、機械情報の取得(S101)と作業情報の取得(S102)を行う。S101の機械情報としては、運転者Mが入力装置15の機械情報入力部15aに入力した情報が入力表示制御装置17Bに入力される。機械情報には、較正作業の対象となる機械(以下対象機械)の車格と、フロント作業機1Aを構成する各フロント部材(ブーム1a、アーム1b、バケット1c)の仕様が含まれる。S102の作業情報としては、機械情報と同様に運転者Mが入力装置15の作業情報入力部15bに入力した情報が表示制御装置17Bに入力される。作業情報には較正作業の作業項目(較正対象の慣性計測装置が取り付けられたフロント部材)と、その作業項目の作業手順(較正対象を較正するためにフロント作業機1Aが取るべき目標計測姿勢)が含まれる。
【0035】
S103では、モデル選択部17aは、S101で取得した機械情報を基に、対象機械に対応するモデルデータをモデルデータ記憶部17gから読み出す。前述の通り、モデルデータは、予め機械情報と対応づけられてモデルデータ記憶部17gに記憶されている。モデルデータは、ブーム1a、アーム1b、バケット1cなど、フロント部材(部位)単位で記憶され、標準ブーム、ツーピースブームなど、様々な仕様に対応している。すなわちモデル選択部17aは、入力された車格、仕様に対応するモデルデータを読み出す。
【0036】
(モデル座標系からフロントモデル座標系への変換)
S104では、モデル座標変換部17bは、機械情報と作業情報を基に、S103で読み出した各部位のモデルデータを各部位のモデル座標系からフロントモデル座標系へ座標変換を行い、作業項目及び作業手順に基づいて規定される適切な目標計測姿勢をとったフロント作業機1A全体のモデルデータ(以下、フロントモデルデータと称する)を生成する。
【0037】
S104のフロントモデル座標系への変換手法の詳細について
図9を参照しながら説明する。
図9はフロント作業機1Aの各部の座標系とフロントモデル座標系との関係を示す図である。フロントモデル座標系を、フロント作業機1Aの各部位の長手方向をZ軸(フロント前方が正)とする左手直交座標系とすると、部位モデルデータ(x
m,y
m,z
m)から目標計測姿勢のフロントモデルデータ(x
f,y
f,z
f)への変換は次式(数1参照)を用いて行うことができる。なお、θは、作業情報入力部15bが取得する作業情報に対応づけられる各部位の回転角度であり、(T
x,T
y,T
z)は、各部位毎の並進ベクトルを表す。
【0038】
【0039】
前述の通り、並進ベクトル(Tx,Ty,Tz)は、フロント作業機1Aの部位毎に異なる。較正作業の対象となる機械のフロント作業機1Aが、ブーム1a、アーム1b、バケット1cで構成されるとすると、ブーム1aの並進ベクトルTB、アーム1bの並進ベクトルTS、バケット1cの並進ベクトルTAはそれぞれ次式(数2参照)で表される。ここで、LBはブーム長、LSはアーム長、LAはバケット長、θBはブーム回転角度、θSはアーム回転角度を表す。
【0040】
【0041】
(フロントモデル座標系からマーカ座標系への変換)
さらに、モデル座標変換部17bは、S105においてマーカ位置情報記憶部17jから運転席7内のマーカ7bの取付位置情報(例えばブーム1aの根元ピン(ブームピン)の位置を基準とした位置)を読み出し、ブーム1aの基端側の回転軸を基準としたフロントモデル座標系からマーカ座標系への座標変換を行う(S106)。これにより実際のフロント作業機1Aのブーム1a根元ピン位置と、フロントモデルデータのブーム根元ピン位置を合致させる。
【0042】
S106のマーカ座標系への変換の詳細について
図10を参照しながら説明する。
図10はフロントモデル座標系とマーカ座標系との関係を示す図である。マーカ座標系を、マーカ中心を原点とし、マーカ平面と直交する方向をZ軸(車体前方が正)とする左手直交座標系とすると、実際の油圧ショベル1のブームピンの中心位置からマーカ取付中心位置までの距離ベクトル(t
x,t
y,t
z)を用いて、マーカ座標系への変換後のフロントモデルデータの座標(x
r,y
r,z
r)は次式で表される。なお、マーカ7bの取付位置情報は予めマーカ位置情報記憶部17jに記憶されており、マーカ7bはブーム根元ピンと平行に設置されているものとする。
【0043】
【0044】
(マーカの検出)
S107では、マーカ検出部17eはカメラ17Aが撮影した運転者Mの前方の画像(撮影画像)を取得する。続いてマーカ検出部17eは、S107で取得した撮影画像に対してエッジ検出等の画像処理を行い、マーカ情報記憶部17hからマーカの形状や大きさを含む情報を読み出し(S108)、その情報を基に撮影画像内に写ったマーカ7bを検出する(S109)。
【0045】
具体的には,マーカ検出部17eは,カメラ17Aが撮影する撮影画像からマーカ7bを検出するための前処理として、撮影したRGB画像に対して、閾値を用いて各画素の明度値を0または255に変換する閾値処理を行うことで、撮影画像を二値化画像へと変換する。次に、マーカ7bの輪郭を検出するために、エッジ検出処理を行う。明度差が大きな画素をエッジとする。エッジ検出は、例えば、ソーベルフィルタを用いて、二値化画像とソーベルフィルタのカーネルの畳み込み演算を行うことで水平方向と垂直方向のエッジを検出する。さらに、検出したエッジに対して直線近似を行う。直線近似には最小二乗法やハフ変換を用いる。直線近似によって、近似した直線の交点座標をマーカ矩形の頂点として取得する。さらに、マーカ検出部17eは,画像処理後の撮影画像から取得したマーカ矩形の4つの頂点で規定される四角形領域(すなわちマーカ7bが写った領域)を検出し,その四角形領域の形状と、マーカ情報記憶部17hにベクトル形式のパラメータデータとして予め記憶されたマーカ7bの形状(テンプレートパターン)とをパターンマッチングする。そして,マーカ検出部17eは,両者のマッチング率が所定のしきい値を超えた場合,撮影画像内で検出された四角形領域がマーカ7bに該当し,カメラ17Aの撮影画像にマーカ7bが写っていると判定する。
【0046】
(マーカ座標系におけるカメラ17Aの位置・姿勢の推定)
カメラ姿勢推定部17fは、S110でカメラ17Aの内部パラメータを読み出し、その内部パラメータとS109で検出したマーカ7bの形状(すなわちカメラ17Aの撮影画像上のマーカ7bの形状)とに基づいてカメラ17Aの外部パラメータ(カメラ17Aの姿勢と位置)を算出する(S111)。カメラ17Aの姿勢と位置は、カメラ17Aの光軸方向と取り付け位置と換言できる。カメラ17Aの姿勢と位置からは運転者Mの視点位置と視線方向が演算できる。内部パラメータは、カメラ17Aの歪みを含むカメラ17Aの位置や姿勢の変化に依存しないハードウェア固有のパラメータであり、記憶装置17D内に設けられた記憶領域である内部パラメータ記憶部17iに予め記憶されている。
【0047】
ここでS111のカメラ17Aの姿勢と位置の推定の詳細について説明する。なお、カメラ17Aの姿勢と位置の推定手法についても、一般に公知であるため、詳細は割愛し手順のみを記述する。
【0048】
まず、マーカ座標系からカメラ座標系への変換は、S111で推定するカメラ17Aの姿勢と位置を表す外部パラメータを用いて表現できる。一方、カメラ座標系から画面座標系への変換はカメラ17Aの内部パラメータを用いて表すことができる。ここで、内部パラメータは、ハーフミラー17Gに設定された画面座標系の原点、カメラ17Aの焦点距離、ピクセルのスケールファクタ、カメラ17Aの半径方向および円周方向の歪みを含んでいる。
【0049】
したがって、マーカ座標系から画面座標系への変換は、カメラ17Aの外部パラメータと内部パラメータを合わせて透視投影行列で表現できる。透視投影変換行列は3×4の行列であるため、未知数は12個となるが、定数倍が無視できること、マーカ7bの頂点がマーカ座標系での同一平面上にあることを拘束条件として、未知数は7個となる。したがって、カメラ17Aの撮影画像から算出されるカメラ座標系におけるマーカ7bの頂点座標と、マーカ座標系におけるマーカ7bの頂点座標との組み合わせが4組あれば方程式を解くことができる。すなわち、マーカ検出部17eが検出するカメラ座標系におけるマーカ7bの4つの頂点座標から透視投影行列の成分を求めることができる。
【0050】
前述の通り、透視投影行列は、カメラ17Aの内部パラメータと外部パラメータが合わさったものであり、マーカ7bの頂点から求めた透視投影行列と、既知である内部パラメータとから、カメラ17Aの外部パラメータ、すなわちカメラ17Aの位置・姿勢を求めることができる。
【0051】
(マーカ座標系から画面座標系への変換と目標姿勢画像の生成)
S112では、目標姿勢画像生成部17cは、S111で取得したカメラ17Aの姿勢と位置(カメラ17Aの外部パラメータ)と、カメラ17Aの内部パラメータとを用いて表現される透視投影行列を利用して、マーカ座標系におけるフロントモデルデータをハーフミラー17Gに設定された画面座標系へ変換する(透視投影変換)。この透視投影変換により、フロントモデルデータは、三次元のマーカ座標系から二次元の画面座標系へと変換される。このように透視投影変換されたフロントモデルデータの画像が、
図8の右側に示した、運転者Mから見たフロント作業機1Aの目標計測姿勢を表す目標姿勢画像24である。表示制御部17dは、目標姿勢画像生成部17cで生成された目標姿勢画像24をプロジェクタ17Eへと出力し、これにより目標姿勢画像24がハーフミラー17Gに投影される(S113)。
図8の左側には運転者Mがハーフミラー17Gを介して見える現実のフロント作業機1Aと目標姿勢画像24を重畳されている様子を示している。すなわち、本実施形態のHDM17(ハーフミラー17G)は、運転者Mの視点位置及び視線方向で見た現実のフロント作業機1Aに目標姿勢画像24を重畳可能に構成された表示装置として機能する。
【0052】
(較正作業)
次に慣性計測装置S1,S2,S3の較正作業に必要なコントローラ(較正作業制御装置)20について説明する。このコントローラ20はHMD17を利用して実際のフロント作業機1Aで目標計測姿勢をとる毎に利用される。
【0053】
図11は慣性計測装置S1,S2,S3の較正作業に必要なシステムの概略構成図である。この図に示すシステムは、慣性計測装置S1,S2,S3の出力信号を取得し、較正作業を司るコントローラ(較正作業制御装置)20と、フロント作業機1Aのフロント部材1a,1b,1cを連結する各ピンp1~p6及びバケット爪先p7(後述する
図13参照)の三次元位置座標を計測するピン位置計測装置(例えばトータルステーション)19を備えている。コントローラ20は、油圧ショベル1に搭載することができ、入力装置15、慣性計測装置S1,S2,S2及びピン位置計測装置19とデータ通信可能に接続されている。なお、コントローラ20は、HMD17の表示制御装置や入力装置15の入力制御装置に対してプログラムをインストールすることでHMD17や入力装置15内に構成しても良いし、油圧ショベル1とは独立したコンピュータ内に構成しても良い。
【0054】
コントローラ20は、表示制御装置17Bや入力制御装置15Gと同様に、演算装置と、記憶装置と、通信I/Fと、入出力I/F(いずれも図示せず)を備えており、記憶装置内に記憶されたプログラムを演算装置で実行することにより
図11中に示した各部として機能する。コントローラ20は、計測指示受信部20a、計測指示送信部20b、計測値取得部20c、出力信号取得部20d、及び取付角度算出部20eとして機能し、記憶装置内の記憶領域に構成情報記憶部20fを確保している。コントローラ20の各部の説明とともにコントローラ20で実行される処理のフローチャートについて
図12を用いて説明する。
【0055】
図12はコントローラ20が実行する較正作業処理のフローチャートである。
運転者MがHMD17に表示される目標姿勢画像24に基づいてフロント作業機1Aの姿勢を目標計測姿勢とした後にディスプレイ15A上の較正作業開始ボタンに触れると計測指示信号が出力され、コントローラ20は
図12に示したフローチャートを開始する。フローが開始されると、電気ハーネス等を介して入力装置15と接続されたコントローラ20の計測指示受信部20aは,入力装置15から出力される計測指示信号を取得する(S114)。
【0056】
S115では、コントローラ20の計測指示送信部20bは,入力装置15から計測指示を取得したことをトリガーにして、コントローラ20と無線通信可能に接続されたピン位置計測装置20に対して計測指示信号を送信する。ここでピン位置計測装置19は,例えばトータルステーションなどの角度と距離を高精度に計測可能な装置であり、以下ではピン位置計測装置19がトータルステーションの場合について説明する。
図13に示すように、フロント作業機1Aの各フロント部材1a,1b,1cを連結する各ピンp1~p6及びバケット爪先p7の軸方向端面には計測用のマーカが予め設置されている。コントローラ20から計測指示信号を受信したトータルステーション(ピン位置計測装置19)は、各マーカまでの距離及び角度を計測する。計測が終了したら、トータルステーション(ピン位置計測装置19)はその計測値(各マーカまでの距離及び角度)をコントローラ20に送信し、これによりコントローラ20がトータルステーションの計測値を取得する(S116)。なお、トータルステーションの構成および動作については公知であるため,ここでは説明を割愛する。
【0057】
S117では,コントローラ20の出力信号取得部20dは,慣性計測装置S1~S3の出力信号を取得する。
【0058】
S118では、コントローラ20の取付角度算出部20eは,S116で取得したトータルステーション(ピン位置計測装置19)の計測値と,S117で取得した慣性計測装置S1~S3の出力信号とに基づいて,フロント作業機1Aの各フロント部材に対する慣性計測装置S1~S3の取付角度を算出し(S118),それを較正情報として較正情報記憶部20fに記録する(S119)。
【0059】
(作用効果)
上記のように構成した較正作業支援システムでは、運転者Mが入力装置15に機械情報(車格情報及び仕様情報を含む)と作業情報(作業項目情報及び作業手順情報(目標計測姿勢)を含む)を入力すると、表示制御装置17Bは、目標計測姿勢をとったフロント作業機1Aを運転者Mの視点位置及び視線方向で見た場合の画像(目標姿勢画像24)を生成し、その目標姿勢画像24をHMD17のハーフミラー17Gに投影する。HMD17のハーフミラー17Gは透過性があるため、そのときの運転者Mの視点位置及び視線方向で見た現実のフロント作業機1Aに目標姿勢画像24が重畳される(
図8参照)。現実のフロント作業機1Aと同様に目標姿勢画像24も運転者Mの視点位置及び視線方向で見たフロント作業機1Aの姿である。そのため、運転者Mは、現実の各フロント部材がハーフミラー17G上の目標姿勢画像における各フロント部材に重なり合うように操作レバー7a1,7a1を操作して現実のフロント作業機1Aを動作させるだけで、運転室7内に居ながらにして較正作業に必要な目標計測姿勢をフロント作業機1Aにとらせることができる。すなわち、慣性計測装置S1,S2,S2の較正作業において運転者Mが運転室7から降りて油圧ショベル1の側方からフロント作業機1Aの姿勢を目視で確認する必要が無くなり、運転者Mの熟練度にかかわらず運転室7に居ながらにして正しい目標計測姿勢にフロント作業機1Aを操作することができる。その結果、運転室7の外から目視で確認する手順が不要になり、較正作業全体の作業性が向上する。
【0060】
(変形例)
次に上記の実施形態の変形例について説明する。上述した実施形態では、表示装置として運転者の頭部に装着するHMD17を用いて、HMD17のカメラ17Aがフロントガラス16上のマーカ7bを検出することで、運転者Mの頭部姿勢を推定し、ハーフミラー17G上での目標姿勢画像24の表示を制御する例を示した。
【0061】
その他の例として、HMD17の代わりに、レンズやハーフミラーなどの光学系を持たない一般的な表示装置(例えばLCDディスプレイや有機ELディスプレイ)を用いても良い。具体的には、
図14に示すように、運転室7における右側のピラー13に固定される表示装置18が利用可能である。表示装置18の筐体内には表示制御装置17Bが収納されている。
【0062】
図15は表示装置18の表面(図中左)と裏面(図中右)を示す図である。表示装置18の裏面にはカメラ18Aが設けられており、このカメラ18Aが、フロント作業機1Aを含む運転室7前方を撮影する。目標姿勢画像26は、上記の実施形態と同じく、入力装置9が取得する機械情報と作業情報を基に生成される。表示ディスプレイ18の表面(図中左)には、カメラ18Aが撮影した運転室前方の撮影画像25と、カメラ18Aの取り付け位置からカメラ18Aの光軸方向に向かって目標計測姿勢をとったフロント作業機1Aのモデルデータを見た場合の画像(目標姿勢画像)26とが表示されており、撮像画像25上の現実のフロント作業機1Aに目標姿勢画像26が重畳表示される。なお、その他の部分については先の実施形態と同一であり説明は省略する。
【0063】
上記のように、本変形例では、表示制御装置17Bが目標姿勢画像26を生成する際の基準となる位置及び方向を、油圧ショベル1(ピラー13)に取り付けられたカメラ18Aの取り付け位置及び光軸方向としている。表示制御装置17Bは、入力装置15から入力された機械情報と、目標姿勢情報(作業情報)と、カメラ18Aの取り付け位置及び光軸方向とに基づいて、目標計測姿勢をとったフロント作業機1Aをカメラ18Aで見たときの画像(目標姿勢画像)26として生成する。表示装置18は、運転室7内の運転室に着座した運転者Mの前方に配置されるディスプレイであり、カメラ18Aで撮影した現実のフロント作業機1Aと目標姿勢画像26を重畳表示している。
【0064】
このようにシステムを較正しても先の実施形態と同様に、較正作業の対象となる機械の車格や仕様を問わず、実際のフロントの位置と重なるように目標姿勢画像26を運転者に提示することができる。そのため、運転者は運転室7にいながら目標姿勢画像26と現在のフロント作業機1Aの姿勢との差分を容易に把握することができる。すなわち、運転者の熟練度に関わらず、運転室7にいながらも、正しい計測姿勢にフロント作業機1Aを操作することができる。その結果、運転室の外から目視で確認する手順が不要になり、作業性が向上する。
【0065】
(その他)
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
【0066】
また、上記では、目標姿勢画像24,26を生成する際に、運転者Mの視点位置及び視線方向と、カメラ18Aの取り付け位置及び光軸方向を基準としたが、現実のフロント作業機1Aと目標姿勢画像とを共通の視点位置及び視線方向で重ね合わせることができる視点位置及び視線方向であれば、所望の視点位置及び視線方向を基準にして目標姿勢画像を生成しても構わない。
【0067】
また、上記の実施形態に含まれる制御装置(例えば、表示制御装置17B、入力制御装置15G、コントローラ20)に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は、それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また、上記の制御装置に係る構成は、演算装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることで当該制御装置の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は、例えば、半導体メモリ(フラッシュメモリ、SSD等)、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク、光ディスク等)等に記憶することができる。
【0068】
また、上記の各実施の形態の説明では、制御線や情報線は、当該実施の形態の説明に必要であると解されるものを示したが、必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0069】
1…油圧ショベル、1A…フロント作業機、1a…ブーム、1b…アーム、1c…バケット、S1~S3…姿勢計測装置、7…運転室、M…運転者、7b…二次元マーカ、13…フロントガラス、15…入力装置、15A…ディスプレイ、15a…機械情報入力部、15b…作業情報入力部、16…ピラー、17…ヘッドマウントディスプレイ、17A…カメラ、17B…表示制御装置、17C…演算装置、17D…記憶装置、17E…プロジェクタ、17F…レンズ、17G…ハーフミラー、17H…通信I/F、17a…モデル選択部、17b…モデル座標変換部、17c…目標姿勢画像生成部、17d…表示制御部、17e…マーカ検出部、17f…カメラ姿勢推定部、17g…モデルデータ記憶部、17h…マーカ情報記憶部、17i…内部パラメータ記憶部、17j…マーカ位置情報記憶部、18…表示装置、18A…カメラ、24、26…目標姿勢画像、25…前景画像