(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20221006BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20221006BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20221006BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 A
E02F9/20 N
F02N11/08 X
(21)【出願番号】P 2019059451
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】西川 真司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 涼介
(72)【発明者】
【氏名】小高 克明
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特許第5637554(JP,B2)
【文献】特開2006-274750(JP,A)
【文献】特開2009-138497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/24
E02F 9/26
E02F 9/20
F02N 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、前記原動機により駆動される油圧ポンプを含む油圧駆動装置と、前記原動機を始動させる始動操作装置を含む原動機始動装置と、警報発生装置と、前記警報発生装置を作動させる警報操作装置と、コントローラとを備えた建設機械において、
前記コントローラは、
前記警報操作装置が操作されていない状態で前記始動操作装置が操作されたときは前記原動機の始動を禁止し、
前記警報操作装置の操作が終了した後、第1設定時間が経過するまでの間においても、前記始動操作装置が操作されたときの前記原動機の始動を禁止し、
前記第1設定時間が経過した後、第2設定時間が経過するまでの間は前記始動操作装置が操作されたときの前記原動機の始動を許可し、
前記第2設定時間が経過するまでの間に前記原動機が始動されなかったときは、前記原動機の始動を禁止する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記コントローラは、
前記第2設定時間が経過するまでの間に前記原動機が始動されなかったかどうかの判定を前記原動機の回転数が所定回転数以上になったかどうかによって行い、
前記原動機が始動されずに前記第2設定時間が経過したときに、前記始動操作装置が操作されていたときは前記原動機の始動を許可することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械において、
前記原動機はエンジンであり、
前記エンジンは低温時のエンジン始動性を高めるグロー装置を有し、
前記コントローラは、前記グロー装置の作動が完了した場合は、前記第1設定時間が経過しているか否かに係わらず、前記始動操作装置が操作されたときの前記エンジンの始動を許可することを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械において、
運転室内に配置された表示装置を更に備え、
前記コントローラは、前記原動機の始動を禁止する状態にあることおよび前記原動機の始動を許可する状態にあることを報知情報として前記表示装置に表示させることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等の原動機の始動時に車体周囲に注意を喚起させるための警報発生装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建設機械の代表例である油圧ショベルの取扱い説明書には、エンジン始動時には、周囲に人がいないか確認し、警報発生装置であるホーンを鳴らしてから始動するという記載がある。
【0003】
特許文献1には、警報発生手段(ホーン)による警報の発生が無い場合はエンジン始動禁止とし、警報の発生があった場合に警報の発生が第一設定時間以上継続したときに、エンジンの始動を許容し、かつ第一設定時間の経過後の第二設定時間の間のみにエンジン始動の許容を制限するようにした建設機械が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている建設機械においては、警報発生手段(ホーン)による警報発生がされた場合にのみ、第二設定時間の間においてエンジン始動が許容されるため、エンジン始動前に車体周囲の作業者に対してエンジン始動を知らせることができると考えられる。
【0006】
しかし、特許文献1においては、オペレータに違和感を与えないことを優先し、ホーンを鳴らしたあとにエンジンがすぐに始動できるべきという前提で、第一設定時間以上の警報発生後は直ちにエンジンの始動を可能としている。そのためオペレータによっては、車体周囲の確認を十分に行う前にエンジンを始動してしまう可能性がある。
【0007】
オペレータに原動機の始動前に車体周囲の確認を行わせる課題は、原動機としてエンジンの代わりに電動モータを搭載する電動油圧ショベルにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明はそのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、原動機の始動時に車体周囲に注意を喚起させるとともに、オペレータに原動機始動前の車体周囲の確認を確実に行わせることができる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するため、本発明は、原動機と、前記原動機により駆動される油圧ポンプを含む油圧駆動装置と、前記原動機を始動させる始動操作装置を含む原動機始動装置と、警報発生装置と、前記警報発生装置を作動させる警報操作装置と、コントローラとを備えた建設機械において、前記コントローラは、前記警報操作装置が操作されていない状態で前記始動操作装置が操作されたときは前記原動機の始動を禁止し、前記警報操作装置の操作が終了した後、第1設定時間が経過するまでの間においても、前記始動操作装置が操作されたときの前記原動機の始動を禁止し、前記第1設定時間が経過した後、第2設定時間が経過するまでの間は前記始動操作装置が操作されたときの前記原動機の始動を許可し、前記第2設定時間が経過するまでの間に前記原動機が始動されなかったときは、前記原動機の始動を禁止するものとする。
【0010】
このように警報操作装置が操作されていない状態で始動操作装置が操作されたときは原動機の始動を禁止することにより、原動機を始動するためにオペレータは警報発生装置を作動させなければならないため、原動機の始動時に原動機が始動することを確実に車体周囲に知らせ、車体周囲に注意を喚起させることができる。また、警報操作装置の操作が終了した後第1設定時間が経過するまでの間においても、始動操作装置が操作されたときの原動機の始動を禁止し、第1設定時間が経過した後第2設定時間が経過するまでの間は始動操作装置が操作されたときの原動機の始動を許可することにより、オペレータに原動機始動前の車体周囲の確認を確実に行わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原動機の始動時に車体周囲に注意を喚起させるとともに、オペレータに原動機始動前の車体周囲の確認を確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係わるエンジン始動装置を含む制御システムの回路構成を示す図である。
【
図3】メインコントローラのエンジン始動制御部が実行する制御の流れの全体を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第1の実施形態におけるエンジン始動制御のサブルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2の実施形態におけるエンジン始動制御のサブルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1および第2の実施形態におけるモニタを示す図である。
【
図7】本発明の第1および第2の実施形態におけるモニタの報知情報表示部に表示される報知内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に従い説明する。
【0014】
~構成~
(油圧ショベル)
図1は、本発明の一実施形態に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観を示す図である。
【0015】
図1において、油圧ショベル(建設機械)は、クローラ式の下部走行体1と、下部走行体1に対して旋回可能に設けられた上部旋回体2と、上部旋回体2の前部に上下動可能に取り付けられたフロント作業機3とを備えて構成されている。
【0016】
下部走行体1には左右一対の走行用油圧モータ(図示せず)が配置され、この走行用油圧モータおよびその減速機構等により左右のクローラが独立して回転駆動され、前方または後方に走行する。
【0017】
上部旋回体2には、油圧ショベルの各種操作を行う操作レバー装置やオペレータが着席する運転席等が配置された運転室4、エンジン等の原動機、エンジンによる駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプから吐出された圧油による駆動される旋回モータ(図示せず)などの油圧機器が備えられており、上部旋回体2は旋回モータにより下部走行体1に対して右方向または左方向に旋回される。運転室4内には、オペレータが油圧ショベル(建設機械)の状況を確認できるように各種の計器類や機体情報が表示されるモニタ26(表示装置、
図2参照)が配置されている。
【0018】
フロント作業機3は、ブーム3a、アーム3bおよびバケット3cから構成されており、ブーム3aはブームシリンダ3dにより上下動され、アーム3bはアームシリンダ3eによりダンプ側(開く側)またはクラウド側(掻き込む側)に操作され、バケット3cはバケットシリンダ3fによりダンプ側またはクラウド側に操作される。ブームシリンダ3d、アームシリンダ3eおよびバケットシリンダ3fも、旋回モータと同様、上記油圧ポンプから吐出された圧油による駆動される。これら油圧ポンプ、旋回モータ、ブームシリンダ3d、アームシリンダ3eおよびバケットシリンダ3fは図示しない方向切換弁とともに油圧ポンプを含む油圧駆動装置を構成している。
【0019】
(制御システム)
図2は、本発明の一実施形態に係わるエンジン始動装置を含む制御システムの回路構成を示す図である。
【0020】
図2において、本実施形態に係る油圧ショベルは、各種電気部品を駆動するための電源として24Vの鉛蓄電池であるバッテリ11(電源)を搭載しており、バッテリ11は、キースイッチ12(始動操作装置)、ホーンリレー13、スタータリレー14、グローリレー15に電気的に接続されている。
【0021】
キースイッチ12はロータリ式のキーシリンダであり、オペレータがキーを差し込んで回すことで、キースイッチ12をOFF位置、ACC位置、ON位置、START位置に切り替えることができる。
図2では、それら各位置におけるキースイッチ12内の端子接続を示しており、例えばキースイッチ12がON位置に操作されたときには端子1,2,3が導通するが、端子4はどこにも接続しない。START位置以外の位置は、オペレータがキーから手を離してもその位置が保持されるが、START位置についは、オペレータがキーから手を離すとON位置に自動で戻るような構造となっている。
【0022】
キースイッチ12がON位置に操作されると、バッテリ11が、キースイッチ12内を経由して、スタータカットリレー16にも電気的に接続される。また、バッテリ11は、スタータカットリレー16のコイルを通ってエンジンコントローラ(ECU)17にも電気的に接続される。
【0023】
エンジンコントローラ17はエンジン18とも電気的に接続されており、エンジン18からの各種センサ信号を受信し状態を監視すると同時に、エンジン18の燃料噴射装置を駆動することでエンジン18の回転数やトルクを制御する。
【0024】
エンジン18を始動するためにキースイッチ12をSTART位置に操作すると、エンジンコントローラ17にバッテリ11からの24V信号が投入され、これによりエンジンコントローラ17はエンジン始動操作がされたことを検知することができる。また、エンジンコントローラ17によってON/OFFが切り替えられるスタータカットリレー16がエンジンコントローラ17に電気的に接続されており、スタータカットリレー16がOFF(非励磁)の場合、スタータカットリレー16の端子16bを通ってスタータリレー14に電流が流れ、スタータリレー14をONにすることでスタータモータ19にも電流が流れる。その結果、スタータモータ19はエンジン18に接続されると同時に回転し、エンジン18を起動する。
【0025】
エンジン18の回転数はパルスセンサ20の信号に基づいてエンジンコントローラ17において演算され、エンジン回転数が燃料噴射開始の閾値を超えると、エンジンコントローラ17はエンジン18の燃料噴射装置を駆動し、エンジン回転数を目標回転数まで増加させる。エンジン回転数が始動閾値以上(例えば600rpm以上)になると、エンジンコントローラ17はエンジン18が始動したと判定する。
【0026】
エンジン18が始動したと判定すると、エンジンコントロールユニと17はスタータカットリレー16のコイル側の端子をエンジンコントローラ17内でGNDに接続することで、スタータカットリレー16をON(励磁)する。その結果、スタータカットリレー16は端子16aに切り替わり、それによりスタータリレー14のコイルに電流が流れなくなることでスタータリレー14もOFFになり、スタータモータ19はエンジンと非接続となると同時に回転が停止する。
【0027】
この作動によって、仮にオペレータがキースイッチ12をSTART位置に入れ続けたとしても、エンジン始動後は自動でスタータモータ19がエンジン18から外れて回転を停止させるため、スタータモータ19がエンジン18によって回され続けることが無く、故障を防止することができる。また、エンジン駆動中にオペレータがキースイッチ12をSTART位置に操作してしまったとしても、スタータモータ19が起動することはないため、回転しているエンジン18にスタータモータ19が接続されてしまうということも無く、故障を防止することができる。
【0028】
続いて、油圧ショベルの周囲にいる者に注意を喚起させるための警報を発する警報発生装置としてのホーン24の作動について説明する。
【0029】
油圧ショベルの運転室4内に配置された操作レバーのグリップ先端には、警報操作装置としてのホーンスイッチ21が備えられている。オペレータがホーンスイッチ21を押すと、ホーンスイッチ21内の接点がつながり、ホーンリレー13をONにする。それによってホーン24に電流が流れ、ホーン24が吹鳴することで周囲の作業者に注意を促すことができる。
【0030】
油圧ショベルには、車体全体の電子機器の制御を行うメインコントローラ22(コントローラ)が搭載されている。
【0031】
ホーンスイッチ21は信号ラインを介してメインコントローラ22に電気的に接続されており、メインコントローラ22はホーンスイッチ21が押されることで信号ラインがGND接続となることを検知して、ホーンスイッチ21のON/OFF状態を判定する。
【0032】
メインコントローラ22は、その制御機能の一部として、本発明の特徴であるエンジン始動制御部23を実装している。
【0033】
また、油圧ショベルには、オペレータに対して車体の状態や計器類の情報(冷却水温や燃料残量)、周囲監視カメラの映像を表示するためにモニタ26が搭載されている。また、油圧ショベルには、モニタ26の表示内容を変更したり、エンジン回転数を手動変更したり、エアコンやラジオの設定を変更するための操作装置としてのスイッチボックス27も搭載されている。更に、モニタ26の表示およびスイッチボックス27からの入力信号処理を行うための制御コントローラとしてモニタコントローラ25が搭載されている。
【0034】
エンジンコントローラ17、メインコントローラ22、およびモニタコントローラ25には図示していないが24Vの電源が供給されており、キースイッチ12がON位置に操作されたときにそれぞれ起動処理としての初期設定(スタートアップ)を行う。
【0035】
また、コントローラ17,22,25は、それぞれ互いにCAN通信によって接続されており、互いに他のコントローラの入出力状態を知ることが可能となっている。
【0036】
また、コントローラ17,22,25は、他のコントローラに対して、例えばリレーの駆動要求を出すことで、他のコントローラに接続されているリレーであっても間接的に制御可能となっている。例えば、メインコントローラ22がスタータカットリレー16のON/OFF指令を出すことで、エンジンコントローラ17がその指令を受け取り、スタータカットリレー16のON/OFFを切り替えることができる。また、メインコントローラ22がモニタ26の報知情報を生成することで、モニタコントローラ25は、その報知情報を受け取り、モニタ26にその報知情報を表示させることができる。
【0037】
続いて、低温時のエンジン始動に関わるシステム構成について説明する。
【0038】
エンジンコントローラ17には、エンジン18内の冷却水の温度を計測している水温センサ28と、エンジン18の吸入空気の温度を計測している吸気温センサ29も接続されており、これらの温度情報を使って、エンジンが低温状態なのかを判定する。
【0039】
エンジン18が低温状態にありエンジン18が冷えている状態では、エンジン始動のために燃料を噴射しても熱がエンジン18の本体に吸収されて燃焼エネルギーが十分にエンジン18の回転トルクに変換されないためエンジン18の始動性(エンジン18のかかり)が悪い。
【0040】
そのため、エンジン18内にグロープラグ30(グロー装置)が挿入されており、低温状態でのエンジン18の始動のため、エンジンコントローラ17はグローリレー15をONにすることでグロープラグ30に電流を温度状態に応じた時間だけ流す。グロープラグ30は、電流が流れることで発熱するようになっており、これによってエンジン18の燃焼室を暖めることで、エンジン18の始動性を高めることができる。
【0041】
エンジンコントローラ17が、エンジン18の始動性が高まったと判定したら(もしくは始動性が高まると考えられるあらかじめ設定している時間だけグロープラグ30に電流を流したら)、エンジンコントローラ17はグローリレー15をOFFにする。グロー(エンジン予熱)によってエンジン18の始動性が高まっている状態でスタータモータ19を駆動してエンジン18を始動させることで、低温時のエンジン18の始動性が向上される。
【0042】
グロー(エンジン予熱)がされているという状態や予熱によってエンジン18の始動性が高まった状態(エンジン18をスタートさせる適切なタイミング)は、状態情報としてCAN通信によってエンジンコントローラ17からメインコントローラ22およびモニタコントローラ25に送られる。モニタコントローラ25は、受信したグローの状態情報に応じて、その情報をオペレータが認識できるようにモニタ26に表示する。
【0043】
本明細書では、便宜上、グロー(エンジン予熱)が実行されていてまだエンジン18の始動性が高まっていない状態をグローON、グローによってエンジン18の始動性が高まって、エンジン18を始動してもよいとエンジンコントローラ17が判断した状態をグローOFFとして扱うこととする。
【0044】
このように構成した制御システムにおいて、メインコントローラ22のエンジン始動制御部23(コントローラ)は、ホーンスイッチ21(警報操作装置)が操作されていない状態でキースイッチ12(始動操作装置)が操作されたときはエンジン18(原動機)の始動を禁止し、ホーンスイッチ21の操作が終了した後、第1の設定時間T1が経過するまでの間においても、キースイッチ12が操作されたときのエンジン18の始動を禁止し、第1の設定時間T1が経過した後、第2の設定時間T2が経過するまでの間はキースイッチ12が操作されたときのエンジン18の始動を許可し、第2の設定時間T2が経過するまでの間にエンジン18が始動されなかったときは、キースイッチ12が操作されたときのエンジン18の始動を再び禁止する。
【0045】
また、メインコントローラ22のエンジン始動制御部23(コントローラ)は、エンジン18が始動されなかったかどうかをエンジン18の回転数が所定回転数以上になったかどうかによって判定し、エンジン18が始動されずに第2の設定時間T2が経過したときに、キースイッチ12が操作されていたときはエンジン18の始動を許可する。
【0046】
更に、上述したように油圧ショベルは、運転室4内に配置されたモニタ26(表示装置)を更に備え、メインコントローラ22のエンジン始動制御部23(コントローラ)は、エンジン18の始動を禁止する状態にあることおよびエンジン18の始動を許可する状態にあることを報知情報としてモニタ26に表示させる。
【0047】
このようなメインコントローラ22のエンジン始動制御部23が実行する処理内容の詳細を、
図3および
図4を用いて説明する。
図3は、メインコントローラ22のエンジン始動制御部23が実行する制御の流れの全体を示すフローチャートである。
【0048】
キースイッチ12がON位置に操作されることによって
図2に示す制御システムが起動されると、エンジン始動制御部23は必要なデータの初期設定を行う(ステップS1)。本実施形態では、ここでスタータカットリレー16をONにすることで初期状態としてエンジン18の始動を禁止する。
【0049】
続いてエンジン始動制御部23は、エンジン回転数が始動閾値以上(例えば600rpm以上)かどうかによってエンジン18が駆動しているかどうかを判定する(ステップS2)。エンジン18が駆動していると判定すると、車体駆動時の各種制御を行うサブルーチン(ステップS3)に入る。エンジン18が駆動していないと判定すると、エンジン始動制御のサブルーチン(ステップS4)に入る。
【0050】
以降、制御システムの動作が終了するまで、ステップS2~S4の処理が繰り返し実行される。
【0051】
(第1の実施形態の制御フロー)
図4は、本発明の第1の実施形態におけるエンジン始動制御のサブルーチン(ステップS4)の処理内容を示すフローチャートである。
【0052】
スタータカットリレー16は初期設定(ステップS1)の時点でONになっているため、エンジン始動制御のサブルーチン(ステップS4)の処理が開始された時点ではスタータモータ19を駆動させることはできず、エンジン18は始動禁止状態になっている。
【0053】
エンジン始動制御のサブルーチン(ステップS4)が開始されると、エンジン始動制御部23は、まず始動禁止状態の報知として、モニタ26にエンジン18が始動禁止状態であることを示す内容を表示させる(ステップS5)。
【0054】
次に、エンジン始動制御部23は、ホーンスイッチ21がONからOFFに変化したかどうかを判定する(ステップS6)。ホーンスイッチ21がONからOFFになっていない状態(ホーンスイッチ21が押されていない、もしくはホーンスイッチ21が押されている状態)では、ステップS6を繰り返し実行することで、エンジン始動禁止を維持したまま待機している。ホーンスイッチ21がONからOFFになったら(ホーンスイッチ21が押されている状態から開放れたら)、第1カウント時間t1のカウントを開始する(ステップS7)。
【0055】
ホーンスイッチ21のONからOFFへの変化を判定基準とすることで、必ずホーン24が鳴り終わってから第1カウント時間t1のカウントを開始することができ、オペレータや始動時の状況によって変わるホーン吹鳴時間の違いの影響を受けずに第1カウント時間t1のカウントを開始することができる。
【0056】
第1カウント時間t1のカウントが開始されたら、エンジン始動制御部23は、モニタ26への状態報知の内容を更新し(ステップS8)、第1カウント時間t1が第1設定時間T1(例えば5秒)以上になったかどうかを判定する(ステップS9)。第1カウント時間t1が第1設定時間T1未満であれば、ステップS8に戻り、モニタ26への状態報知の内容を更新しながら、エンジン始動禁止の状態を維持する。第1カウント時間t1が第1設定時間T1以上になる(第1設定時間T1に到達する)と、第1カウント時間t1のカウントを停止し、第1カウント時間t1をリセットする(ステップS10)。
【0057】
第1カウント時間t1に応じてモニタ26の表示内容を変えることで、あとどれくらいの時間待てばエンジン18が始動できるのかをオペレータが目視確認できるため、オペレータはあわてることなく周囲の安全確認を行うことができる。
【0058】
続いてエンジン始動制御部23は、スタータカットリレー16をOFFにする(ステップS11)。この時点で、オペレータがキースイッチ12をSTART位置に操作することでエンジン18始動が可能となるため、モニタ26への状態報知の内容を、始動許可状態を報知するものに変更する(ステップS12)。
【0059】
続いてエンジン始動制御部23は、第2カウント時間t2のカウントを開始し(ステップS13)、モニタ26への状態報知の内容を第2カウント時間t2に応じて更新する(ステップS14)。
【0060】
第2カウント時間t2に応じて表示内容を変えることで、あとどれくらいの時間でエンジン18が再び始動禁止になるのかをオペレータが目視確認できるため、オペレータはあわてることなく周囲の安全確認を行うことができ、また、安全確認後の速やかなエンジン18の始動をサポートすることができる。
【0061】
続いてエンジン始動制御部23は、エンジン回転数が始動閾値以上(例えば600rpm以上)かどうかによってエンジン18が始動したかどうかを判定する(ステップS15)。
【0062】
エンジン18が始動していない場合、エンジン始動制御部23は第2カウント時間t2が第2設定時間T2(例えば5秒)以上になったかどうかを判定する(ステップS16)。第2設定時間T2未満であれば、ステップS14に戻り、エンジン始動制御部23はモニタ26への状態報知の内容を更新しながら、エンジン始動許可(始動待ち)の状態を維持する。
【0063】
このループの中で、第2設定時間T2未満の間でエンジン18が始動した場合、エンジン18始動後の各種制御(ステップS3)に移行するために、エンジン始動制御部23はモニタ26に表示していたエンジン始動許可の状態報知を停止させる(表示を消す)(ステップS21)。
【0064】
その後エンジン始動制御部23は、第2カウント時間t2のカウントを停止し、第2カウント時間t2をリセットし(ステップS19)、スタータカットリレー16をONにし(ステップS20)、エンジン始動制御部23のステップS2に戻る。
【0065】
エンジン駆動状態になっていれば、各種制御(ステップS3)に移行しつつ、スタータカットリレー16がONになっているので、エンジン18始動後のスタータモータ19の自動停止および、エンジン18駆動中のスタータモータ19の飛び込み防止機能も働いている状態となる。
【0066】
また、エンジン始動制御部23は、判定処理ステップS15の別ルートとして、処理ステップS15のエンジン18の始動判定の結果がエンジン18始動していないまま、処理ステップS16の第2カウント時間t2が第2設定時間T2以上になったとき、更にキースイッチ12がSTART位置かどうかを判定する(ステップS17)。
【0067】
例えば、第2設定時間T2を5秒として、第2カウント時間t2のカウントが4.5秒のときにキースイッチ12をSTART位置に操作していた場合、スタータモータ19は回転を始めて、エンジン18を始動させようとする。この状態になっていれば、第2カウント時間t2が第2設定時間T2以上になっていてもエンジン18を始動許可状態のままに維持して、エンジン18の始動を待った方が良い。このステップS17を行わない場合は、スタータモータ19は回転しているがエンジン回転数が始動閾値未満(例えば600rpm未満)でエンジン18はまだ始動していないという状態で、スタータカットリレー16がONにされてエンジン18始動禁止状態になってしまうことが想定され、オペレータの自然な操作性を損なうおそれがある。
【0068】
第2カウント時間t2が第2設定時間T2以上になったときにキースイッチ12がSTART位置になかった場合(ステップS17)、周囲の作業者に注意を促すためのホーン吹鳴から時間が空きすぎてしまったと見なし、再び安全確認(ホーン吹鳴)後のエンジン18の始動とするために、エンジン始動制御部23は、モニタ26に始動禁止状態になっている(初期状態に戻った)ことの報知表示を行い(ステップS18)、第2カウント時間t2のカウントを停止し、第2カウント時間t2をリセットし(ステップS19)、スタータカットリレー16をONにする(ステップS20)ことで、スタータモータ19を駆動できないようにして、再びエンジン18始動を禁止状態にする。
【0069】
その後、
図3に示されるエンジン駆動判定(ステップS2)に戻ることで、エンジン始動制御(ステップS4)の最初にもどり、ホーン吹鳴待ちの始動禁止状態に戻る。
【0070】
(第1の実施形態の効果)
このように第1の実施形態を構成することで、以下のような効果を得ることができる。
【0071】
1.エンジン18を始動するためにオペレータはホーン24(警報発生装置)を吹鳴させなければならないため、エンジン18の始動時にエンジン18が始動することを確実に車体周囲に知らせ、車体周囲に注意を喚起させることができる。
【0072】
2.ホーン24の吹鳴を停止した後においても第1設定時間T1の間はエンジン18が始動できないため、オペレータがエンジン18の始動前の周囲確認を行うための時間的余裕を与え、エンジン始動前の車体周囲の確認を確実に行わせることができる。
【0073】
3.ホーン24の吹鳴を停止した後においても第1設定時間T1の間はエンジン18が始動できないため、車体周囲の作業者に対してエンジン18の始動前に退避する時間的余裕を与えることができる。
【0074】
4.第1カウント時間t1のカウント開始をホーンスイッチ21がONからOFFになったときに設定したため、必ずホーン24が鳴り終わってから第1カウント時間t1のカウントを開始させることができ、オペレータや始動時の状況によって変わるホーン吹鳴時間の違いの影響を受けずに第1カウント時間t1のカウントを開始することができる。
【0075】
5.第2カウント時間t2が第2設定時間T2以上になったとしても、そのときにキースイッチ12がSTART位置に操作されている場合は、エンジン18の始動許可の状態を維持するため、オペレータがエンジン18の始動操作をしている途中でスタータモータ19が停止することが防止され、オペレータの自然な操作性を維持することができる。
【0076】
6.第2設定時間T2が経過するまでの間にエンジン18が始動されなかったときは、キースイッチ12が操作されたときのエンジンの始動を再び禁止し、第2設定時間T2の経過後は再び初期状態に戻るため、エンジン18を始動するためにオペレータは再度ホーン24による注意喚起を実行する必要があり、この点でもホーンスイッチ21の操作なしにエンジンが始動可能となることを確実に防止することができる。
【0077】
(第2の実施形態の制御フロー)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態における制御システムの構成は
図2に示した第1の実施形態と同じである。また、第2の実施形態におけるエンジン始動制御部23の処理の基本的な部分は
図3および
図4に示した第1の実施形態と同じであるので、異なる部分のみについて説明する。
【0078】
上述したように、エンジン18は低温時のエンジン始動性を高めるグロープラグ30(グロー装置)を有している。
【0079】
第2の実施形態において、メインコントローラ22のエンジン始動制御部23(コントローラ)は、グロープラグ30(グロー装置)の作動が完了した場合は、第1の設定時間T1が経過しているか否かに係わらず、キースイッチ12(始動操作装置)が操作されたときのエンジン18の始動を許可する。
【0080】
メインコントローラ22のエンジン始動制御部23が実行する処理内容の詳細を、
図5を用いて説明する。
図5は、第2の実施形態におけるメインコントローラ22のエンジン始動制御部23が実行するエンジン始動制御のサブルーチン(ステップS4)の処理内容を示すフローチャートである。
【0081】
第2の実施形態におけるエンジン始動制御部23の制御の全体の流れは、
図3に示した第1の実施形態と同じである。
図5に示すエンジン始動制御のサブルーチン(ステップS4)の処理内容は、サブルーチン(ステップS4)の一部が
図4に示した第1の実施形態のサブルーチンと異なる。
【0082】
図5において、第2の実施形態におけるサブルーチン(ステップS4)では、
図4に示した第1の実施形態のサブルーチン(ステップS4)に対して、ステップS7とステップS8もしくはステップS10の間に低温時始動判定のステップS26が追加されている。
【0083】
すなわち、ステップS7で第1カウント時間t1のカウントが開始された後、低温始動判定のステップS26において、エンジン始動制御部23はグローONかどうかを判定する(ステップS27)。常温時のエンジン18の始動時で、グローONではないとき(グローOFFのとき)はステップS8に進み、第1の実施形態と同様に、ホーンスイッチ21がONからOFFに変化してから第1設定時間T1(例えば5秒)未満の間はエンジン18の始動を禁止する。
【0084】
低温時のエンジン18始動で、グローONのとき、エンジン始動制御部23はモニタ26に低温時始動禁止状態であることを示す表示を行う(ステップS28)。この時点では、まだエンジン18始動禁止状態だが続き、エンジン始動制御部23は、第1カウント時間t1が第1設定時間T1(例えば5秒)以上になったかどうか、もしくは、グロープラグによるエンジン予熱が実施されエンジン18の始動性が高まり、グローOFFとなったかどうかを判定する(ステップS29)。ステップS29の判定を満たせば、ステップS10~S12に進み、エンジン18を始動することができる。
【0085】
(第2の実施形態の効果)
このように第2の実施形態を構成することで、次のような効果を得ることができる。
【0086】
1.グロー(エンジン予熱)はエンジン18の燃焼室を暖めて始動性を高めるためのものなので、作業性を良くするためにはグローOFFになったら速やかにエンジン18を始動させる必要がある。第2の実施形態においては、第1設定時間T1によるホーン24の吹鳴後の始動禁止(始動待ち)時間を省略することで、低温時でグローONであった場合は、グローOFFに移行したときにエンジン18の始動許可になるため、エンジン18の始動性が高まった状態でエンジン18を始動することができ、作業性を低下させることがない。これにより第2の実施形態においては、状況に応じて作業性と安全性の両立を図ることが可能となる。
【0087】
また、この第2の実施形態においても、ホーン24を吹鳴させてから第1設定時間T1経過後であれば、グローOFFまで待たずとも、第1の実施形態と同様にエンジン18を始動することが可能となる。
【0088】
2.第2の実施形態においても、エンジン18を始動するためにホーン24を吹鳴する必要があるため、エンジン18の始動時にエンジン18が始動することを確実に車体周囲に知らせ、車体周囲に注意を喚起させることができる。また、ホーン24の吹鳴を停止した後においても第1設定時間T1の間においてはエンジン18が始動できないため、オペレータにエンジン18の始動前の周囲確認を行うための時間的余裕を与え、エンジン始動前の車体周囲の確認を行わせることができる。また、車体周囲の作業者に対してエンジン18の始動前に退避する時間的余裕を与えることができる。
【0089】
3.グローOFFになった後にエンジン18の始動が許可された場合でも、第2設定時間T2によるエンジン18の始動許可時間の制限は働くため、グローOFFになった後に第2設定時間T2の間、エンジン18を始動しないまま時間が経過した場合は、エンジン18の始動のために再度ホーン24による注意喚起を実行する必要があり、この点でもホーンスイッチ21の操作なしにエンジンが始動可能となることを確実に防止することができる。
【0090】
なお、
図5のフローチャートに記載はしていないが、作業性と安全性の両立を図るために、グローONとする条件について考慮が必要になる場合がある。
【0091】
まず、グローは低温時以外ONにならないようにするか、もしくは制御上グローONとみなさないような処理が必要である。仮に、エンジン予熱の目的と直接関係なく、常にキーON時に短時間グローをONとするエンジン18があった場合、ホーンを鳴らした時にグローがONであれば、その直後にエンジン18を始動することが可能となる。この作動は本発明が意図するものとは異なる。
【0092】
また、望ましくは低温時のグローON時間(もしくは低温時にグローONとみなす時間)は第1設定時間T1よりも長く設定されるのがよい。このように設定することで、グローONとするような低温時であっても、ホーン24を鳴らしてからエンジン18の始動許可となるまでに安全確認のための時間を確保しやすくなる。
【0093】
(モニタ画面構成)
図6は、本発明の第1および第2の実施形態におけるモニタ26を示す図である。
【0094】
モニタ26の表示部は主に、状態表示部31、計器類表示部33、報知情報表示部34、周囲監視カメラ映像表示部35の4つの領域に分かれている。
【0095】
図6において、一番上が状態表示部31であり、時刻やアワメータ、現在の作業モード、現在のパワーモード、現在の走行モード(高速、低速)等の状態情報を表示する。グローの状態を示すグロー作動表示32もこの状態表示部31に表示される。グローONのときにはグロー作動表示32が表示され、グローOFFのときにはグロー作動表示32は非表示となる。
【0096】
計器類表示部33は状態表示部31の下にあり、水温計や燃料残量系、燃費計等が表示される。
【0097】
報知情報表示部34は計器類表示部33の下にあり、本発明の第1および第2の実施形態における始動禁止状態の報知(ステップS5、S18)、第1カウント時間t1に応じた報知内容の更新(ステップS8)、始動許可状態の報知(ステップS12)および第2カウント時間t2に応じた報知内容の更新(ステップS14)による報知情報が表示される。
【0098】
また、第2の実施形態における低温時始動禁止状態の報知(ステップS24)による報知情報も、この報知情報表示部34に表示される。
【0099】
周囲監視カメラ映像表示部35は報知情報表示部34の下にあり、油圧ショベルの後方、右側、左側、もしくは全周囲を監視するための映像を表示する。
【0100】
(第1および第2の実施形態におけるモニタ26への報知内容)
図7は、本発明の第1および第2の実施形態におけるモニタ26の報知情報表示部34に表示される報知内容を示す図である。
【0101】
図7の(1)は、ステップS5およびS18にて表示される、始動禁止状態の報知の表示内容である。上段に「エンジン始動禁止中」という現在の状態を表すメッセージが表示され、下段に「ホーンを鳴らして周囲の安全確認をしてください」というオペレータへの指示行動を表すメッセージが表示されている。
【0102】
このように表示することで、オペレータは、現在の車体の状態と、自分が何をすればよいのかを一目で把握することができるため、モニタ26の画面表示を長時間注視したり、報知内容を確認するためにスイッチボックス27を操作したりする必要がなく、周囲の安全確認に時間を割くことが可能となる。
【0103】
図7の(2)は、ステップS8にて表示される、第1カウント時間t1に応じた始動禁止状態の報知の表示内容である。上段に「エンジン始動禁止中」という現在の状態が表示され、下段に「周囲の安全を確認してください。」「始動許可まで あと 5 秒」というオペレータへの指示行動を表すメッセージが表示されている。また、下段の文章の下には時間の経過を示すバーが表示されている。
【0104】
第1設定時間T1を5秒としてあらかじめ設定した場合で、第1カウント時間t1が0秒のとき、下段にはT1そのものである“始動許可まであと5秒”のメッセージが表示され、バーも右端まで表示されている。第1カウント時間t1が経過するにしたがってT1-t1(T1からt1を差し引いた差分)を表すように“始動許可まであと4秒”、“始動許可まであと3秒”、“始動許可まであと2秒”、“始動許可まであと1秒”と表示するメッセージを変化させ、最終的に“始動許可まであと0秒”のメッセージとなる。
【0105】
また、バー表示もT1-t1を表すように徐々に白塗りの表示部が短くなって、最終的に全て非表示となる。
【0106】
このように表示することで、オペレータはホーン24を鳴らしたあと、あと何秒でエンジン18の始動が可能になるのかを一目で認識することができるため、オペレータはあわてることなく周囲の安全確認を行うことが可能である。
【0107】
図7の(3)は、ステップS12およびステップS14にて表示される、第2カウント時間t2に応じた始動許可状態の報知の表示内容である。上段に「エンジン始動許可」という現在の状態を表すメッセージが表示され、下段に「周囲の安全が確認できたら、エンジンを始動してください。」「始動禁止まで あと 5秒」というオペレータへの指示行動を表すメッセージが表示されている。また、下段の文章の下には時間の経過を示すバーが表示されている。
【0108】
第2設定時間T2を5秒としてあらかじめ設定した場合で、第2カウント時間t2が0秒のとき、下段にはT2そのものである“始動禁止まであと5秒”のメッセージが表示され、バーも右端まで表示されている。第2カウント時間t2が経過するにしたがってT2-t2(T2からt2を差し引いた差分)を表すように“始動禁止まであと4秒”、“始動禁止まであと3秒”、“始動禁止まであと2秒”、“始動禁止まであと1秒”と表示するメッセージを変化させ、最終的に“始動禁止まであと0秒”のメッセージとなる。
【0109】
また、バー表示もT2-t2を表すように徐々に白塗りの表示部が短くなって、最終的に全て非表示となる。
【0110】
このように表示することで、オペレータは始動許可状態になったあと、あと何秒でエンジン18の始動が禁止になるのかを一目で認識することができるため、オペレータはあわてることなく周囲の安全確認を行うことができ、また、安全確認後の速やかなエンジン18の始動をサポートすることができる。
【0111】
図7の(4)は、ステップS28にて表示される、低温時始動禁止状態の報知の表示内容である。上段に「エンジン始動禁止中」という現在の状態を表すメッセージが表示され、中段に「周囲の安全を確認してください。」というメッセージと
図7の(2)と同じカウントダウンのメッセージと時間の経過を示すバーが表示される。
【0112】
また、下段には、「グロー作動表示が消灯しても始動許可状態になります。」というオペレータへの指示行動を表すメッセージが表示されている。
【0113】
このように表示することで、オペレータは始動禁止状態であることだけではなく、低温時のグロー作動時特有のものであり、グロー表示が消灯したら始動が可能になるということを認識することができる。
【0114】
(その他)
なお、本発明の目的は、エンジン18始動前に確実に周囲の作業者に注意を促し、かつ、その警報発報後すぐのエンジン18始動を禁止することなので、同様の目的をもって上記実施形態は修正、変形が可能である。
【0115】
例えば、上記実施の形態では、警報発報装置としてホーン24を使用したが、回転灯などの光による警報発生装置であってもよい。この場合、周囲騒音が大きい現場での稼働や耳栓着用現場での稼働においては、ホーン24よりも効果的となることも考えられる。
【0116】
また、上記実施形態では、ホーン24のON/OFFをホーンスイッチ21の信号によって判定した。しかし、この場合は、ホーン24が故障していた場合は、ホーン24が吹鳴していないにも係わらずメインコントローラ22のエンジン始動制御部23はホーンスイッチ21がONであると判定してしまう。そういった場合を考慮し、例えばホーン24の近傍にマイクを設置し、そのマイクの入力レベルをもってホーンスイッチ21のON/OFFを判定してもよい。
【0117】
また、本発明ではエンジン18を搭載した建設機械について説明したが、車体周囲に原動機が始動することを知らせる課題については、原動機の種類が制限されるものではなく、本発明は、例えば原動機として電動モータを使用する電動油圧ショベルにも適用可能である。その場合、原動機の始動を禁止する手段は、適用対象に合わせて最適に選択すればよい。
【符号の説明】
【0118】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 フロント作業機
4 運転室
11 バッテリ
12 キースイッチ(キーシリンダ)(始動操作装置)
13 ホーンリレー
14 スタータリレー
15 グローリレー
16 スタータカットリレー
17 エンジンコントローラ(ECU)
18 エンジン(原動機)
19 スタータモータ
20 パルスセンサ
21 ホーンスイッチ(警報操作装置)
22 メインコントローラ(MC)(コントローラ)
23 エンジン始動制御部(コントローラ)
24 ホーン(警報発生装置)
25 モニタコントローラ
26 モニタ(表示装置)
27 スイッチボックス
28 水温センサ
29 吸気温センサ
30 グロープラグ(グロー装置)
31 状態表示部
32 グロー作動表示
33 計器類表示部
34 報知情報表示部
35 周囲監視カメラ映像表示部