(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】異方導電性シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20221006BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01R43/00 H
H01R11/01 501G
(21)【出願番号】P 2019084460
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】清水 敦也
(72)【発明者】
【氏名】萩原 幸久
(72)【発明者】
【氏名】荻野 勉
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-175148(JP,A)
【文献】実開平7-14570(JP,U)
【文献】特開平5-174937(JP,A)
【文献】特開2004-146210(JP,A)
【文献】実開平3-97889(JP,U)
【文献】特開平10-22034(JP,A)
【文献】特開平6-76909(JP,A)
【文献】特開昭60-28179(JP,A)
【文献】特開平8-55648(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/178221(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/00
H01R 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための異方導電性シートの製造方法であって、
複数の導電線が互いに平行に所望のピッチで表面に配置された導電線固定シートを得る工程と、
基材シートの表面に予め形成された未硬化ゴムからなる層に、前記導電線固定シートの前記複数の導電線が配置された前記表面を向かい合わせて押し付けることにより、前記導電線固定シートに配置された前記複数の導電線を前記未硬化ゴムからなる層に埋没させ、前記複数の導電線同士の間に前記未硬化ゴムを流入させる工程と、
前記複数の導電線同士の間に流入した前記未硬化ゴムを硬化させるとともに、前記導電線固定シートを前記複数の導電線から剥離することにより、
前記ピッチで平行に配置された前記複数の導電線と、前記複数の導電線同士の間に配置された前記未硬化ゴムが硬化してなる固形状ゴムと、を有するコアシートが、前記基材シートの表面に備えられた、基材シート付きコアシートを得る工程と、
複数の前記コアシートを積層し、互いの導電線の向きを揃えて積層されたブロック体を得る工程と、
前記ブロック体が有する複数の導電線を横切る方向にスライスカットすることにより、
異方導電性シートを得る工程と、
を有する異方導電性シートの製造方法。
【請求項2】
前記導電線固定シートの前記表面が粘着層によって形成されている、請求項1に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項3】
前記粘着層が熱によって発泡する、請求項2に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項4】
前記未硬化ゴムが加熱によって硬化する、請求項1~3の何れか一項に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項5】
前記未硬化ゴムが液状未硬化ゴムである、請求項1~4の何れか一項に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項6】
前記液状未硬化ゴムが液状シリコーンゴムである、請求項5に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項7】
前記導電線は、芯線と、前記芯線の外周を被覆する被覆層とを有し、
前記スライスカットにより得た異方導電性シートが有する前記導電線に対して、前記導電線が有する前記芯線の少なくとも一部を除去する工程をさらに有する、請求項1~6の何れか一項に記載の異方導電性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子デバイス同士を接続するために、微細な電極同士を接続するシート状の圧接型コネクター(以下、異方導電性シート)が用いられている。一般に、異方導電性シートは複数の導電部とその間を絶縁する絶縁部とを有し、第一デバイスの接続端子と第二デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続する。異方導電性シートの製造方法として特許文献1には、導電線を平行に配線した複数のシートを、基板に対して一定の角度で傾けて導電線が互いに平行になるように積層した後、基板面に平行にかつ導電線を横切る所定の幅で切断する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子デバイスの高機能化及び小型化が進み、電子デバイスが有する端子電極が小さくなり、端子電極同士のピッチ(隣接する端子の中心同士の距離)が狭くなっている。
このため、異方導電性シートが有する導電線の配置を高密度化することが求められている。
【0005】
本発明は、異方導電性シート内で隣接する導電線同士のピッチを狭くすることが可能な、異方導電性シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特許文献1を含めた従来の製造方法を
図4に示す。基材シートVの表面に未硬化の第一樹脂層101を形成する。第一樹脂層101の表面101aに複数の導電線102を、導電線102の長さ方向を揃えて平行に一定のピッチで配置する(
図4(a))。次いで各導電線102を覆うように第一樹脂層101の表面に未硬化の第二樹脂層107を形成した後、加熱硬化することにより、コアシート104を得る(
図4(b))。続いて、複数枚のコアシート104を準備し、不要な基材シートVを取り除いて、不図示の接着層を介して、複数枚のコアシート104(図示例では4枚)を積層したシート積層体108を得る(
図4(c))。ここでコアシート104を積層する際、各コアシート104が有する導電線102の長さ方向を揃える。最後に、シート積層体108の表面108aから刃を入れて、導電線102の長さ方向を横切るように所望の厚さで積層方向(α方向)に切断することにより、目的の異方導電性シート110を得る(
図4(d))。
【0007】
本発明者らが検討したところ、導電線102のβ方向のピッチを狭くすることは、第一樹脂層101の表面に導電線102を配置する際の各導電線102同士の間隔を狭めることにより比較的容易に実現できた。一方、導電線102のα方向のピッチを狭くするためには別の工夫が必要であった。本発明者らは鋭意検討して、次の解決手段を見出し、本発明を完成させた。本発明によれば、α方向のピッチを従来よりも狭くすることができる。
本発明は以下の態様を有する。
【0008】
[1] 第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための異方導電性シートの製造方法であって、複数の導電線が互いに平行に所望のピッチで表面に配置された導電線固定シートを得る工程と、基材シートの表面に予め形成された未硬化ゴムからなる層に、前記導電線固定シートの前記複数の導電線が配置された前記表面を向かい合わせて押し付けることにより、前記導電線固定シートに配置された前記複数の導電線を前記未硬化ゴムからなる層に埋没させ、前記複数の導電線同士の間に前記未硬化ゴムを流入させる工程と、前記複数の導電線同士の間に流入した前記未硬化ゴムを硬化させるとともに、前記導電線固定シートを前記複数の導電線から剥離することにより、前記ピッチで平行に配置された前記複数の導電線と、前記複数の導電線同士の間に配置された前記未硬化ゴムが硬化してなる固形状ゴムと、を有するコアシートが、前記基材シートの表面に備えられた、基材シート付きコアシートを得る工程と、複数の前記コアシートを積層し、互いの導電線の向きを揃えて積層されたブロック体を得る工程と、前記ブロック体が有する複数の導電線を横切る方向にスライスカットすることにより、異方導電性シートを得る工程と、を有する異方導電性シートの製造方法。
[2] 前記導電線固定シートの前記表面が粘着層によって形成されている、[1]に記載の異方導電性シートの製造方法。
[3] 前記粘着層が熱によって発泡する、[2]に記載の異方導電性シートの製造方法。
[4] 前記未硬化ゴムが加熱によって硬化する、[1]~[3]の何れか一項に記載の異方導電性シートの製造方法。
[5] 前記未硬化ゴムが液状未硬化ゴムである、[1]~[4]の何れか一項に記載の異方導電性シートの製造方法。
[6] 前記液状未硬化ゴムが液状シリコーンゴムである、[5]に記載の異方導電性シートの製造方法。
[7] 前記導電線は、芯線と、前記芯線の外周を被覆する被覆層とを有し、前記スライスカットにより得た異方導電性シートが有する前記導電線に対して、前記導電線が有する前記芯線の少なくとも一部を除去する工程をさらに有する、[1]~[6]の何れか一項に記載の異方導電性シートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の異方導電性シートの製造方法によれば、異方導電性シート内の導電線同士のピッチを狭くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】コアシートを作製する一例を示す断面図である。(a)導電線固定シート1に複数の導電線2が互いに平行にピッチpで配置された様子。(b)複数の導電線2が配置された導電線固定シート1の表面を、予め未硬化ゴム層3が形成された基材シート4に向かい合わせて近づける様子。(c)複数の導電線2が浸漬された未硬化ゴム層3を、導電線固定シート1と基材シート4の間に挟んだ様子。(d)複数の導電線2の間に流入した未硬化ゴムを硬化させるとともに、導電線固定シート1を複数の導電線2から剥離した様子。(e)基材シート付きコアシート7におけるコアシート6の一方の面6aに接着層8を形成した様子。(f)接着層8に対して、別の基材シート付きコアシート7におけるコアシート6を貼付し、二段重ねコアシート9を得た様子。
【
図2】二段重ねコアシート9同士を積層し、四段重ねコアシート10を得る一例を示す断面図である。
【
図3】一例として作製された異方導電性シート20の一方の主面の上面図である。
【
図4】従来の異方導電性シート110を製造する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態は、第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための異方導電性シートの製造方法であって、以下の工程(A)~(E)を少なくとも含む。
工程(A)は、複数の導電線が互いに平行に所望のピッチで表面に配置された導電線固定シートを得る工程である。
工程(B)は、基材シートの表面に予め形成された未硬化ゴムからなる層(以下、未硬化ゴム層という。)に、前記導電線固定シートの前記複数の導電線が配置された前記表面を向かい合わせて押し付けることにより、前記導電線固定シートに配置された前記複数の導電線を前記未硬化ゴム層に埋没させ、前記複数の導電線同士の間に前記未硬化ゴムを流入させる工程である。
工程(C)は、前記複数の導電線同士の間に流入した前記未硬化ゴムを硬化させるとともに、前記導電線固定シートを前記複数の導電線から剥離することにより、所望のピッチで平行に配置された前記複数の導電線と、前記複数の導電線同士の間に配置された前記未硬化ゴムが硬化してなる固形状ゴムと、を有するコアシートが、前記基材シートの表面に備えられた、基材シート付きコアシートを得る工程である。
工程(D)は、複数の前記コアシートを積層し、互いの導電線の向きを揃えて積層されたブロック体を得る工程である。
工程(E)は、前記ブロック体が有する複数の導電線を横切る方向にスライスカットすることにより、異方導電性シートを得る工程である。
【0012】
以下、図面を参照して実施形態の一例を説明する。
<工程(A)>
導電線固定シートは、その一方の面(表面)に複数の導電線が互いに平行に所望のピッチで配置され得るシート状部材である。前記一方の面は、導電線を容易に固定し得ることから、粘着性を有することが好ましい。つまり、導電線固定シートは少なくとも一方の面に粘着層が形成された粘着シートであることが好ましい。このような粘着シートとしては、例えば、樹脂シートの表面に粘着層が形成されたものが挙げられる。
後段において導電線と導電線固定シートとを剥離する操作がある。この操作を容易に行い得ることから、導電線固定シートは、少なくも一方の面に粘着層を備え、その粘着性が温度変化(加熱若しくは冷却)又は光照射等によって低下する機能を備えた剥離シートであることがより好ましい。例えば、前記粘着層が熱によって発泡する発泡剤を含んでいることが好ましい。この粘着層を加熱することにより、粘着層に貼付された導電線等を粘着層から容易に剥離することができる。このような剥離シートとして市販品を適用できる。具体的には、例えば、ニッタ株式会社製の感温性粘着シート等の市販品が挙げられる。
【0013】
導電線固定シートの形状は、複数の導電線を一方向に平行に配置することができる形状であればよく、例えば、ロール状に巻かれた状態から必要に応じて繰り出して使用するシートであってもよい。
導電線固定シートの厚さは、扱いが容易な剛性を得る観点から、例えば25μm~250μmとすることができる。
本明細書において、「厚さ」は、測定顕微鏡等の拡大観察手段を用いて、測定対象の5箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0014】
導電線を導電線固定シートの一方の面に配置する方法としては、例えば、ロールから繰り出した導電線固定シートの一方の面に対して、ボビンに巻回された複数の導電線をそれぞれボビンから繰り出して、前記一方の面に一定のピッチで連続的に配置する方法が挙げられる。
【0015】
図1(a)に、導電線固定シート1の一方の面1aに複数の導電線2が紙面奥行き方向に互いに平行に、ピッチpで配置された様子を示す。各導電線2の長さ方向は、互いに略平行であることが好ましく、完全に平行であることがより好ましい。
本明細書において「略平行である」とは、任意の導電線同士の交差角が±5°の範囲内で平行であることを意味する。
一方の面1aに配置された導電線2同士の間隔であるピッチp(中心間距離)は、例えば、10μm~100μmとすることができる。
【0016】
導電線固定シートに配置される複数の導電線の本数は特に制限されず、例えば、10~1000本程度とすることができる。
各導電線の線径は、例えば、5μm~50μmとすることができる。各導電線の線径は互いに同じであることが好ましい。
導電線の材料は、導電性物質であればよく、公知の導電線が適用される。具体的な導電性物質としては、例えば、真鍮、銅、銀、金、プラチナ、パラジウム、タングステン、ベリリウム銅、りん青銅、ニッケルチタン合金等の金属、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ紡績糸等の炭素材料が挙げられる。各導電線を構成する導電材料は互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
導電線は、前記導電性物質からなる芯線の外周を被覆する被覆層を有していてもよい。被覆層は1層でもよいし、2層以上でもよい。被覆層の材料としては、例えば、金、銀、ニッケル、銅等が挙げられる。芯線の材料と被覆層の材料は互いに異なることが好ましい。なお、導電線の直径は被覆層を含む直径である。
導電線の長さ方向に対して直交する方向の断面の形状は、特に制限されず、略円形、略楕円形、略四角形、その他の多角形等が挙げられる。安定した接続を得る観点から、略円形又は略楕円形であることが好ましい。導電線の直径は、前記断面を含む最小円の直径である。
本明細書において、「最小円の直径」は、測定顕微鏡等の拡大観察手段を用いて、30個の測定対象について、各々の断面を含む最小円の直径を測定した値の平均値である。
【0017】
<工程(B)>
前段で得た導電線固定シートの一方の面を、基材シートの表面に予め形成された未硬化ゴム層に向けて押し付ける。この際、導電線固定シートを基材シートに重ね合わせて、複数の導電線及び未硬化ゴム層を、導電線固定シートと基材シートの間に挟むことが好ましい。この押し付けにより、導電線固定シートの一方の面に配置された複数の導電線を前記未硬化ゴム層に埋没させる。この埋没により、複数の導電線同士の間に未硬化ゴム層を構成する未硬化ゴムが流入する。
【0018】
未硬化ゴムは、所望の方法により硬化させることが可能な、流動性の高いゴムである。未硬化ゴムの硬化方法としては、例えば、加熱、光照射、触媒や硬化剤による硬化等が挙げられる。
未硬化ゴムは液状未硬化ゴムであることが好ましい。ここで、液状とは、JIS K7117-1:1999に準拠して、ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法で測定された未硬化ゴムの粘度が1Pa・s~10,000Pa・sの状態をいう。液状未硬化ゴムの粘度は、1Pa・s~5,000Pa・sであることが好ましい。1Pa・s以上であると基材シートの上に未硬化ゴム層を安定に形成することができる。5,000Pa・s以下であると前記導電線を容易に未硬化ゴム層へ浸漬することができる。
具体的な未硬化ゴムとしては、例えば、液状天然ゴム、液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレン・ブタジエンゴム、液状ブチルゴム、液状ニトリルゴム、液状エチレン・プロピレンゴム、液状クロロプレンゴム、液状クロロスルホン化ポリエチレンゴム、液状ウレタンゴム、液状フッ素ゴム、液状シリコーンゴム等が挙げられる。これらの中でも、硬化後の寸法変化や反りが生じ難く、圧縮永久歪が小さく、耐熱性が高い、液状シリコーンゴムが好ましい。液状シリコーンゴムは、縮合型、付加型のいずれでもよい。
【0019】
未硬化ゴムには、公知の添加剤、例えばゴムの重合を促す触媒、ゴム同士の架橋を促す架橋剤、抗酸化剤、染料、顔料、充填剤、レベリング剤等を適量で添加してもよい。また、未硬化の樹脂の塗工性を向上させるために希釈溶剤を添加してもよい。
【0020】
基材シートは、その一方の面(表面)に未硬化ゴム層を形成し得るものであれば特に制限されず、例えば、樹脂シート、紙シート、金属シート等が挙げられる。
前記基材シートを構成する具体的な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
【0021】
基材シートの平均厚みとしては、例えば、取り扱いが容易である観点から、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。
【0022】
基材シートの一方の面に未硬化ゴム層を形成する方法としては、未硬化ゴムを層状に薄く塗布する方法又は印刷する方法が好ましい。未硬化ゴムの塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
【0023】
基材シートに予め形成する未硬化ゴム層の厚さは、導電線の線形を考慮して設定することが好ましい。目的のコアシートの厚さを薄くする観点から、未硬化ゴム層の厚さは薄い方が好ましく、複数の導電線同士の間に充分な量の液状ゴムを流入させる観点から、未硬化ゴム層の厚さは厚い方が好ましい。これらを勘案して、未硬化ゴム層の厚さhは、導電線の線径φに対して、厚さh≦線径φの関係を満たすことが好ましく、(0.5×線径φ)≦厚さh≦線径φの関係を満たすことがより好ましい。具体的には、例えば、3μm以上50μm以下の範囲で厚さhを設定することができる。
【0024】
図1(b)に、複数の導電線2が配置された導電線固定シート1の一方の面1aを、予め未硬化ゴム層3が形成された基材シート4の一方の面4aに向かい合わせて押し付ける様子を示す。
図1(c)に、導電線固定シート1を基材シート4に重ね合わせて、複数の導電線2が浸漬された未硬化ゴム層3を、導電線固定シート1と基材シート4の間に挟んだ様子を示す。この重ね合わせにおいて、導電線固定シート1の一方の面1aに配置された複数の導電線2を未硬化ゴム層3に埋没させることにより、複数の導電線2同士の間に未硬化ゴム層3を構成する未硬化ゴムが流入する。余分な未硬化ゴムが有る場合には、外部へ流出させてもよい。また、導電線2同士の間の空間の全てが未硬化ゴムで満たされていなくてもよく、前記空間の一部に空気が残留していても構わないが、空気が残留していない方が好ましい。未硬化ゴム層3を硬化する前に、減圧や加圧等により脱泡処理(脱気処理)を行い、前記空間に空気が残留しないようにすることが好ましい。
【0025】
<工程(C)>
本工程において、未硬化ゴムを硬化させる。例えば、
図1(d)に示すように、複数の導電線2の間に流入した未硬化ゴムを硬化させるとともに、導電線固定シート1を複数の導電線2から剥離する。この剥離により、基材シート4の表面4aに備えられた基材シート付きコアシート7が得られる。基材シート付きコアシート7におけるコアシート6は、所望のピッチで平行に配置された複数の導電線2と、複数の導電線2の間に配置され、導電線2同士を結合している固形状ゴム5とを有する。固形状ゴム5は、未硬化ゴムの硬化物である。
【0026】
未硬化ゴムを硬化させる硬化方法は、使用する未硬化ゴムの種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、加熱、光照射、乾燥等の方法が挙げられる。加熱による硬化温度としては、例えば、40~200℃が挙げられる。
また、未硬化ゴムの硬化方法は、使用する導電線固定シート1の粘着性を低減する方法であることが好ましい。すなわち、未硬化ゴムの硬化と、導電線固定シート1の粘着性の低下とを同時に引き起こす硬化方法が好ましい。具体的には、導電線固定シート1が感熱性粘着シートであり、その粘着力が加熱によって低下する場合、加熱硬化において同時に粘着性を低減することができ、導電線固定シート1をコアシート6から容易に剥離することができる。
【0027】
<工程(D)>
本工程において、複数のコアシートを積層したブロック体を得る。例えば、まず、工程(C)で得た基材シート付きコアシート7を2枚準備し、
図1(e)に示すように、第一の基材シート付きコアシート7におけるコアシート6の一方の面6aに接着層8を形成する。次いで、
図1(f)に示すように、接着層8に対して、第二の基材シート付きコアシート7におけるコアシート6の一方の面6aを貼付する。この際、第一のコアシート6が有する複数の導電線2の長さ方向と、第二のコアシート6が有する複数の導電線2の長さ方向とを揃えて貼付する。これにより、2枚のコアシート6が互いの導電線2の向きを揃えて積層された二段重ねコアシート9が得られる。図示例では、各コアシート6内の各導電線2の長さ方向は紙面垂直方向に揃っている。各コアシート6内の各導電線2の長さ方向は、互いに略平行であることが好ましく、完全に平行であることがより好ましい。
二段重ねコアシート9を挟んでいる2枚の基材シート4は、任意に剥離することができる。基材シート4の表面4aには、基材シート4をコアシート6から容易に剥離するための公知の離型剤からなる離型層(不図示)が設けられていることが好ましい。
【0028】
次いで、二段重ねコアシート9を二枚準備する。第一の二段重ねコアシート9及び第二の二段重ねコアシート9から一方の基材シート4をそれぞれ取り除き、少なくとも一方の二段重ねコアシート9の一方の面9aに、接着剤からなる接着層8を形成する。次いで、第一の二段重ねコアシート9及び第二の二段重ねコアシート9の互いの一方の面9a同士を向かい合わせて、接着層8を介して積層することにより、四段重ねコアシート10が得られる(
図2(a),(b))。図示例では、各二段重ねコアシート9内の各導電線2の長さ方向は紙面垂直方向に揃えている。各二段重ねコアシート9内の各導電線2の長さ方向は、互いに略平行であることが好ましく、完全に平行であることがより好ましい。
四段重ねコアシート10の一方の面及び他方の面にはそれぞれ基材シート4が配置されている。各基材シート4は任意に四段重ねコアシート10から剥離することができる。
【0029】
コアシート6、二段重ねコアシート9、四段重ねコアシート10の複数枚をそれぞれ適宜組み合わせて、上記のように接着層8を介して積層することにより、任意の複数枚のコアシート6が積層されたブロック体を得ることができる。
【0030】
コアシート6同士の積層は、接着層8を介してもよいし、コアシート6の主面同士を直接に接着してもよい。直接に接着する方法として、例えば、加熱とともに圧着する方法、接着面を活性化する表面処理(例えば、プラズマ処理、エキシマ光照射処理等)を行った上で圧着する方法等が挙げられる。
接着層8を形成する接着剤は、公知の接着剤が適用され、例えば、前述の未硬化ゴムを接着剤として用いることができる。接着層8は公知方法により形成される。接着層8が硬化する前に、減圧や加圧等により脱泡処理を行い、接着層8の中に空気が残留しないようにすることが好ましい。接着層8の厚さは、ブロック体の厚さを低減し、厚さ方向の各導電線2のピッチを狭くする観点から、コアシート6の厚さよりも薄くすることが好ましい。
【0031】
<工程(E)>
本工程において、工程(D)で得たブロック体を任意のサイズで切り出して目的の異方導電性シートを得る。切断は、ブロック体が有する各導電線の長さ方向を横切る向きで行う。例えば、各導電線の長さ方向に対して直交する向きで切断すると、異方導電性シートの主面に対して、各金属層の長さ方向が垂直に交わる状態となる。また、各導電線の長さ方向に対して、任意のなす角で切断すると、異方導電性シートの主面に対して、各導電線の長さ方向が任意のなす角で交わる(主面に対して各導電線が斜めに配置されている)状態となる。
【0032】
例えば、
図2(b)に示す四段重ねコアシート10をブロック体として用い、各導電線2の長さ方向に対して直交する方向で任意の厚さで異方導電性シート20を切り出すことができる。切り出した異方導電性シート20から基材シート4を取り除いた平面視の図(上面図、
図3参照)は、
図2(b)に示す四段重ねコアシート10の側面図と同様である。
【0033】
<作用・効果>
図2に例示する四段重ねコアシート10において、左下端の導電線2xと、右下端の導電線2yの積層方向(α方向)の位置精度は、理想的には図示の通り、基材シート4との境界に面一とされて位置ズレが無いことが望ましい。しかし、実際には一枚のコアシート6における厚さが必ずしも均一ではなく、両端の厚さを比べると±1%程度で厚さが異なることがある。例えば、β方向に沿って、紙面左から右へ向けて各コアシート6の厚さが1%程度増加することがある。この場合、導電線2xに対する導電線2yの理想的な位置からのズレは、最大で1%といえる。積層された4枚のコアシート6のぞれぞれで、1%ずつの位置ズレが生じていれば、導電線2xに対する導電線2zのα方向の位置ズレは最大で1%×4=4%となる。多くの用途では、この程度の位置ズレは許容範囲といえる。
本発明に対して、
図4に示すように、従来のコアシートは、第一樹脂層101と第二樹脂層107の間に導電線102を配置している。1層の樹脂層で厚さが1%ずれると、1枚のコアシート104で厚さは1%×2=2%ずれる。従来のコアシート104を4枚積層した場合には、位置ズレは2%×4=8%程度にまで膨れる。
以上で説明したように、本発明によれば、コアシートを1層の樹脂層で形成できるので、ブロック体の内部に配置する導電線の積層方向のピッチ精度を従来よりも向上させることができる。この結果、ブロック体から切り出す異方導電性シートに配置された導電線の位置ズレを低減することができる。また、コアシートの厚さを導電線の直径程度まで薄くできるので、積層方向の導電線のピッチを従来よりも狭くすることができる。
【0034】
<工程(F)>
本実施形態の異方導電性シートの製造方法において、工程(E)で得た異方導電性シートが有する導電線が、前記芯線と、前記芯線の外周を被覆する前記被覆層とを有する場合、前記導電線に対して、前記導電線が有する前記芯線の少なくとも一部を除去する工程をさらに有していてもよい。
前記芯線を除去する方法としては、異方導電性シートをエッチング液に浸漬し、芯線を溶解して除去する方法が好ましい。例えば、前記芯線が、鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛、すず、タングステン等の卑金属からなり、前記被覆層が、金、白金、銀、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、黒ルテニウム、及びこれらの合金等の貴金属からなる場合、エッチング液として硝酸を用いることにより、芯線を除去し、被覆層によって形成された中空の導電線を形成することができる。この際、シート表面に露出する導電線の端部からエッチングが進行するので、エッチング時間の長短を調整することにより、端部から離れた中央部分の除去の程度を調整することができる。導電線の断面が円形である場合、芯線を除去した断面は被覆層からなる円環形となる。芯線を除去することにより、接続する電子デバイスの端子に対する接触圧が低下するので、接続する電子デバイスの端子の傷付けを防止することができる。
【0035】
<異方導電性シートの形態>
図3は、本発明によって製造される異方導電性シート20の一例であり、一方の主面を示している。異方導電性シート20の厚さ方向は、α方向とβ方向に直交する紙面奥行き方向である。異方導電性シート20の他方の主面は、一方の主面の反対側の面であり、一方の主面と同様の構成である。異方導電性シート20は複数の導電線2からなる導電部とそれ以外の絶縁部とを備え、導電部が島部分で、絶縁部が海部分である海島構造を形成している。各導電線は互いに独立し、絶縁部によって互いの絶縁性が保たれている。各導電線2は、一方の主面から他方の主面へ貫通する配線を形成している。各導電線2の長さ方向は、一方の主面及び他方の主面に対して、垂直でもよいし、傾いていてもよい。
【0036】
異方導電性シート20は、矩形のシート状であり、主面の短手方向をα方向、主面の長手方向をβ方向、主面に対する垂線方向(すなわちシートの厚さ方向)をγ方向とする。
異方導電性シート20の平面視の形状は矩形に限定されず、円形、楕円形、多角形、その他の任意の形状が採用できる。
異方導電性シート20の縦×横のサイズは特に限定されず、例えば、0.5cm×0.5cm~5cm×5cmとすることができる。
異方導電性シート20の厚さは、例えば、25μm以上750μm以下とすることができる。
異方導電性シート20の形態、サイズ、厚さ等は、各主面にそれぞれ接続する電子デバイスの形状や端子の配置に合わせて適宜設定される。
【0037】
各導電線2の端部はそれぞれ一方の主面及び他方の主面に露出しており、各導電線2はα方向、β方向にそれぞれ一定のピッチで配置されている。
α方向のピッチとしては、例えば、40μm~100μm程度が挙げられ、20μm~30μm程度まで狭くすることができる。
β方向のピッチとしては、例えば、40μm~100μm程度が挙げられ、10μm~30μm程度まで狭くすることができる。
異方導電性シート20の一方の主面における導電線2の配線密度としては、例えば、100~5000本/mm2とすることができる。
ピッチや配線密度は、各主面に露出する導電線2の互いに隣接する端部同士の中心間距離から求められ、測定顕微鏡等の公知の拡大観察手段によって測定することができる。
【0038】
個々の導電線の各主面に露出する端部の大きさは、前記端部を含む最小円の直径である。前記直径は、導電線の抵抗を低減する観点と、接続する電子デバイスにおける端子の狭ピッチに対応する観点とから、例えば、1μm~100μmが好ましく、3μm~50μmがより好ましく、5μm~25μmがさらに好ましい。
前記直径は、測定顕微鏡等の公知の拡大観察手段によって測定することができる。
【0039】
異方導電性シート20の各主面における導電線2の配置は、X列×Y行の2次元アレイ状の配置である。導電線2の配置はこの例に限定されず、任意の配置パターンが採用される。X列×Y行において、例えば、X,Yはそれぞれ独立に10~1000の任意の整数とすることができる。配置パターンは、2次元アレイ状でもよく、ジグザグ状でもよく、その他の任意のパターンでもよく、無作為なランダム配置でもよい。
【0040】
[異方導電性シートの使用方法]
異方導電性シート20の用途としては、公知の圧接型コネクターと同じ用途が挙げられる。電子デバイスの端子の導通試験を行う検査用途の他、例えば、電子機器内に備えられた複数の電子デバイス同士を接続する等のいわゆる実装用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1…導電線固定シート、1a…一方の面、2…導電線、2x…導電線、2y…導電線、2z…導電線、3…未硬化ゴム層、4…基材シート、4a…一方の面、5…固形状ゴム、6…コアシート、6a…一方の面、7…基材シート付きコアシート、8…接着層、9…二段重ねコアシート、10…四段重ねコアシート、20…異方導電性シート、
101…第一樹脂層、101a…表面、102…導電線、104…コアシート、107…第二樹脂層、108…シート積層体、108a…表面、110…異方導電性シート、V…基材シート