(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】作業機械および周囲監視システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
E02F9/26 A
(21)【出願番号】P 2019199394
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】穴原 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】溝口 和彦
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 昭広
(72)【発明者】
【氏名】西川 真司
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172223(JP,A)
【文献】特開2019-157409(JP,A)
【文献】特開2004-076351(JP,A)
【文献】特開2005-248502(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111859(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/105527(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/121818(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/24
E02F 9/20-9/22
E02F 3/42-3/43
E02F 3/84-3/85
G08B 23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に設けられたフロント作業機と、
前記車体および前記フロント作業機を操作する操作信号をオペレータの操作に基づいて出力する操作装置と、
前記車体の周囲の物体を検知するセンサと、を備えた作業機械において、
前記操作装置からの操作信号に基づいて前記車体および前記フロント作業機の動作を制御するとともに、前記センサにより前記物体が検知された場合に、前記車体および前記フロント作業機の少なくとも一方の動作を制限する動作制限制御を行う制御装置と、
前記制御装置に前記動作制限制御の有効と無効を指示する指示装置と、を備え、
前記制御装置は、前記センサによって前記物体が検知され前記指示装置により前記動作制限制御が無効とされている場合、または前記センサによって前記物体が検知され前記指示装置により前記動作制限制御が有効とされた状態で前記操作装置が操作されている場合には第一状態の警告によって前記オペレータに報知し、
前記制御装置は、前記センサによって前記物体が検知され前記指示装置により前記動作制限制御が有効とされた状態で前記操作装置が操作されていない場合には前記第一状態の警告よりも警告強度が弱い第二状態の警告によって前記オペレータに報知することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械において、
前記車体は、下部走行体、及び、前記下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体とを有し、
前記制御装置は、前記上部旋回体の旋回範囲に基づいて予め定められた検知範囲において前記物体が検知されているとき、前記指示装置からの指示信号を受信し、かつ前記操作装置によって前記上部旋回体の旋回動作が操作されている場合には、前記第一状態の警告によって前記オペレータに報知することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1記載の作業機械において、
前記第一状態の警告および前記第二状態の警告は音であることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1記載の作業機械において、
前記車体および前記フロント作業機を駆動する複数の油圧アクチュエータと、
油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれに供給される圧油の流量を制御する方向切換弁と、
前記方向切換弁を制御する前記操作信号としてのパイロット圧を減圧することで前記車体および前記フロント作業機の少なくとも一方の動作を制限する制限装置と、
前記制限装置を介して前記方向切換弁に供給される前記操作信号としてのパイロット圧の大きさを検出する圧力センサとを備え、
前記制御装置は、前記操作信号としてのパイロット圧が予め定めた基準圧力よりも低い場合に前記指示装置からの指示信号を受信していると判定し、前記操作信号としてのパイロット圧が前記基準圧力以上の場合に記指示装置からの指示信号を受信していないと判定することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
車体と、
前記車体に設けられたフロント作業機と、前記車体および前記フロント作業機を操作するための操作信号を出力する操作装置と、を備える作業機械のための周囲監視システムにおいて、
前記車体の周囲の物体を検知するセンサと
前記センサからの検知信号を受信したとき前記車体または前記フロント作業機の動作を制御する制御機能を有する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記検知信号を受信したときに、前記制御機能が有効であるか否かと、前記操作装置が操作されているか否かとを判定し、
前記制御機能が無効であると判定した場合、または前記制御機能が有効で前記操作装置が操作されていると判定した場合には、第一状態の警告を発するための指令を発信し、
前記制御機能が有効であると判定し、かつ前記操作装置が操作されていないと判定した場合には前記第一状態の警告よりも警告強度が弱い第二状態の警告を発するための指令を発信することを特徴とする周囲監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および周囲監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械においては、オペレータの運転支援に関する技術として作業機械の周囲監視を補助するものが知られている。例えば、特許文献1には、作業機械の周辺の所定範囲内に存在する所定の物体を検知する物体検知部と、前記物体検知部により前記物体が検知された場合、音による警報を行う警報部と、を備え、前記警報部は、前記物体検知部により前記物体が検知された状態が継続している場合、所定の条件が成立したときに、前記音による警報を停止すると共に、前記音による警報の停止後、光による警報を行う作業機械用周辺監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、作業機械の周辺に監視対象である所定の物体が存在していることをオペレータが認識しているような状況で警報音を光による警報に切り換えることによってオペレータの煩わしさの抑制を図っている。しかしながら、例えば、直射日光によって光による警報のオペレータからの視認性が著しく低下してしまう場合や、オペレータが光による警報を見ていない場合などには、オペレータが光による警報を認識できないおそれがある。また、作業機械の周囲監視において、物体を検知した際に作業機械の動作を制限することで安全性を高めることも考えられるが、種々の要因によって動作を制限する機能が必ずしも働く状況であるとは限られず、周囲監視におけるオペレータの運転支援としては検討の余地が残されている。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、周囲監視における警報の実効性を確保しつつ、オペレータの煩わしさを抑制することができ、なおかつ安全性能を高めた作業機械および周囲監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、車体と、前記車体に設けられたフロント作業機と、前記車体および前記フロント作業機を操作する操作信号をオペレータの操作に基づいて出力する操作装置と、前記車体の周囲の物体を検知するセンサと、を備えた作業機械において、前記操作装置からの操作信号に基づいて前記車体および前記フロント作業機の動作を制御するとともに、前記センサにより前記物体が検知された場合に、前記操作信号を制限することで前記車体および前記フロント作業機の少なくとも一方の動作を制限する動作制限制御を行う制御装置と、前記制御装置に前記動作制限制御の有効と無効を指示する指示装置と、を備え、前記制御装置は、前記センサによって前記物体が検知されているときに、前記指示装置により前記動作制限制御が無効とされている状態、または前記指示装置により前記動作制限制御が有効とされた状態で前記操作装置が操作されている場合には第一状態の警告によって前記オペレータに報知し、前記制御装置は、前記センサによって前記物体が検知されているときに、前記指示装置により前記動作制限制御が有効とされた状態で前記操作装置が操作されていない場合には前記第一状態の警告よりも警告強度が弱い第二状態の警告によって前記オペレータに報知するものとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業機械の周囲監視における警報の実効性を確保しつつ、オペレータの煩わしさを抑制することがで、なおかつ安全性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】作業機械の一例である油圧ショベルの外観を概略的に示す斜視図である。
【
図2】油圧ショベルに適用される油圧回路システムの一部を関連構成とともに抜き出して模式的に示す図である。
【
図3】油圧ショベルのセンサの配置および検知範囲を模式的に示す上面図である。
【
図4】油圧ショベルの周囲監視システムに係る構成を抜き出して模式的に示す機能ブロック図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施の形態に係る制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、作業機械の一例とし、油圧ショベルを示して説明するが、クレーンやホイールローダのような他の作業機械にも本発明を適用することが可能である。
【0010】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を
図1~
図5を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を概略的に示す斜視図である。
【0012】
図1において、油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体1e及び下部走行体1eに対して旋回可能に設けられた上部旋回体1dにより構成された車体1Bと、上部旋回体1dの前側に俯仰動可能に設けられたフロント作業機1Aとから概略構成されている。
【0013】
フロント作業機1Aは、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム1a、アーム1b、及びバケット1c)を連結して構成されている。ブーム1aの基端は上部旋回体1dの前部に回動可能に支持されている。また、ブーム1aの先端にはアーム1bの一端が回動可能に連結されており、アーム1bの他端(先端)にはバケット1cが回動可能に連結されている。ブーム1a、アーム1b、及びバケット1cは、油圧アクチュエータであるブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、及びバケットシリンダ3cによってそれぞれ駆動される。
【0014】
下部走行体1eは、左右一対のクローラフレームにそれぞれ掛け回された一対のクローラを図示しない減速機構等を介してそれぞれ油圧アクチュエータとしての走行油圧モータ3e,3fで駆動して走行するように構成されている。なお、
図1において、走行油圧モータ3e,3fは、左右一対の構成のうちの一方のみを図示して符号を付し、他方の構成については図中に括弧書きの符号のみを示して図示を省略する。
【0015】
上部旋回体1dは、基部となる旋回フレーム上に各部材を配置して構成されており、旋回フレームが油圧アクチュエータである旋回油圧モータ3dにより下部走行体1eに対して旋回駆動されることにより、上部旋回体1dが下部走行体1eに対して旋回可能となっている。
【0016】
上部旋回体1dの旋回フレーム上の前側には、オペレータが搭乗して油圧ショベル1の操作を行うための運転室1fが配置されているほか、原動機であるエンジン25、エンジン25により駆動される油圧ポンプ26及びパイロットポンプ27、各油圧アクチュエータ(走行油圧モータ3e,3f、旋回油圧モータ3d、ブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3c)を駆動するための油圧回路システムなどが搭載されている(
図2参照)。また、上部旋回体1dには、油圧ショベル1の全体の動作を制御する制御装置20が配置されている。
【0017】
運転室1f内には、オペレータが着座する座席や、フロント作業機1Aの駆動操作、上部旋回体1dの旋回操作、下部走行体1eの走行操作などを行う操作装置4(
図2参照)、ゲートロックレバー、座席に着座したオペレータが見やすい位置であって外部視野の妨げにならない位置に配置されたモニタなどが設けられている。なお、運転室1f内に配置された構成については
図1における図示を省略する。
【0018】
図2は、油圧ショベルに適用される油圧回路システムの一部を関連構成とともに抜き出して模式的に示す図である。なお、
図2においては、油圧ショベル1の複数の油圧アクチュエータのうち旋回油圧モータ3dに係る構成を代表して示している。
【0019】
図2において、油圧回路システムは、原動機であるエンジン25と、エンジン25によって駆動される油圧ポンプ26及びパイロットポンプ27と、油圧ポンプ26から吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータ(
図2では旋回油圧モータ3dのみを図示)と、油圧ポンプ26から複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する複数の方向切換弁(ここでは、旋回油圧モータ3dに係る方向切換弁28のみを図示)と、複数の油圧アクチュエータの動作を指示し、複数の方向切換弁を切り換えるパイロット圧(操作信号)を生成する油圧パイロット式の操作装置(ここでは、旋回操作に係る操作装置4のみを図示)とを備えている。
【0020】
方向切換弁28は、センタバイパス型であり、センタバイパスライン28a上に位置するセンタバイパス通路を有している。センタバイパス通路は、センタバイパスライン28aに直列に接続されており、方向切換弁28のスプールが中立位置にあるときはセンタバイパス通路をセンタバイパスライン28aと連通し、方向切換弁28のスプールが
図2中左側又は右側の切換位置に切り換えられるとセンタバイパス通路をセンタバイパスライン28aから遮断するようになっている。センタバイパスライン28aの上流側は油圧ポンプ26の吐出ライン26aに接続され、センタバイパスライン28aの下流側はタンクライン29aを介して圧油タンク29に接続されている。
【0021】
操作装置4は、例えば操作レバーであり、その操作量(傾倒量)に応じてパイロットポンプ27の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁を有している。また、操作装置4は、操作レバーの各方向への傾倒量、すなわちレバー操作量をそれぞれ電気的に検知する操作量センサ4a,4bを含んでおり、操作量センサ4a,4bが検出したレバー操作量は制御装置20に出力される。
【0022】
方向切換弁28は、操作装置4からのパイロット圧(操作信号)によって切り換えられる。したがって、例えば、操作装置4を中立位置から左旋回に対応する方向(例えば左側)に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が操作信号として方向切換弁28の
図2中右側の受圧部へ出力され、これによって方向切換弁28が
図2中右側の切換位置に切り換えられ、旋回油圧モータ3dが回転して、上部旋回体1dが下部走行体1eに対して左方向に旋回するようになっている。一方、例えば、操作装置4を中立位置から右旋回に対応する方向(例えば右側)に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が操作信号として方向切換弁28の
図2中左側の受圧部へ出力され、これによって方向切換弁28が
図2中左側の切換位置に切り換えられ、旋回油圧モータ3dが回転して、上部旋回体1dが下部走行体1eに対して右方向に旋回するようになっている。
【0023】
操作装置4から方向切換弁28の2つの受圧部への管路には、それぞれ、電磁弁23a,23bが設けられている。電磁弁23a,23bは、操作装置4から方向切換弁28に出力されるパイロット圧(操作信号)を制限する制限装置を構成するものであり、後述する制御装置20からの電磁弁電流(指令信号)に基づいてパイロット圧(操作信号)を制限することにより油圧アクチュエータである旋回油圧モータ3dの動作速度を制限する。以降、この制御を必要に応じて動作制限制御と称する。
【0024】
また、電磁弁23a,23bから方向切換弁28の2つの受圧部への管路には、それぞれ、圧力センサ23c,23dが設けられている。圧力センサ23c,23dは、電磁弁23a,23bを介して方向切換弁28に供給されるパイロット圧(操作信号)の圧力を検出し、検出結果を制御装置20に出力する。
【0025】
パイロットポンプ27の吐出ライン27aには、パイロットポンプ27の吐出圧を一定に保持するパイロットリリーフ弁(図示せず)が設けられている。また、パイロットポンプ27の吐出ライン27aにはロック弁27bが設けられており、このロック弁27bは、運転室1f内に設けられたゲートロックレバーの操作に応じて切り換えられる。ゲートロックレバーは、ゲートロックレバー4fがロック解除位置(下降位置)にある場合に閉じ状態、ロック位置(上昇位置)にある場合に開き状態となるポジションスイッチ(図示せず)を有している。例えば、ゲートロックレバーが下降位置に操作されてポジションスイッチが閉じ状態になると、ポジションスイッチを介してロック弁27bのソレノイド部が通電され、ロック弁27bが連通位置に切り換えられる。これにより、パイロットポンプ27の吐出ライン27aが連通されて、パイロットポンプ27の吐出圧が操作装置4などに導入される。すなわち、操作装置4などの操作によるパイロット圧の生成が可能となり、油圧アクチュエータを作動させることができる(作業可能状態)。一方、ゲートロックレバーが上昇位置に操作されてポジションスイッチが開き状態になると、ロック弁27bが遮断位置に切り換えられる。これにより、パイロットポンプ27の吐出ライン27aが遮断される。すなわち、操作装置4などを操作してもパイロット圧が生成されない状態となり、油圧アクチュエータが作動しないようになっている(作業不可状態)。
【0026】
なお、
図2に図示しない左右の走行油圧モータ3e,3f、ブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、及びバケットシリンダ3cに係る油圧回路システムも旋回油圧モータ3dに係る油圧回路システムと同様の構成を備えている。例えば、走行操作に係る操作装置から走行油圧モータ3e,3fのそれぞれの方向切換弁の2つの受圧部への管路には、それぞれ、電磁弁24a,24b(後の
図4参照)が設けられており、制御装置20からの電磁弁電流(指令信号)に基づいてパイロット圧(操作信号)を制限することにより油圧アクチュエータである走行油圧モータ3e,3fの動作速度を制限する(すなわち、動作制限制御を行う)。
【0027】
図3は、油圧ショベルのセンサの配置および検知範囲を模式的に示す上面図である。
【0028】
図1及び
図3に示すように、上部旋回体1dの上部の左右および後方には、上部旋回体1dの周囲の物体を検知するための複数のセンサ13a,13b,13cが搭載されている。センサ13a,13b,13cは、油圧ショベル1におけるオペレータの運転支援として周囲監視を行う周囲監視システム(後述)の一部を構成している。複数のセンサ13a,13b,13cは、その配置に応じて、それぞれ、後方センサ13a、右側方センサ13b、及び左側方センサ13cと称する。すなわち、複数のセンサ13a,13b,13cは、上部旋回体1dの後方に設けられて上部旋回体1dの後方を検知可能範囲131aとする後方センサ13aと、上部旋回体1dの右側方に設けられて上部旋回体1dの右側方を検知可能範囲131bとする右側方センサ13bと、上部旋回体1dの左側方に設けられて上部旋回体1dの左側方を検知可能範囲131cとする左側方センサ13cとから構成されている。
【0029】
また、
図3に示すように、油圧ショベル1の周囲には、センサ13a,13b,13cによる物体の検知を行う検知範囲14,15,16が設定されている。検知範囲14は、上部旋回体1dが下部走行体1eに対して旋回動作を行う場合の上部旋回体1dの後端の旋回範囲に基づいて定められた検知範囲である。検知範囲15は、下部走行体1eの走行動作における後方側に下部走行体1eの幅および走行速度(走行可能速度)に基づいて定められた検知範囲である。検知範囲16は、上部旋回体1dが下部走行体1eに対して旋回動作を行う場合のフロント作業機1Aの先端の旋回範囲に基づいて定められた検知範囲である。
【0030】
センサ13a,13b,13cは、センサ13a,13b,13cから物体までの距離および方向を検知し、検知した物体の3次元座標系における位置を検知結果として出力するものであり、例えば、赤外線深度センサである。なお、センサ13a,13b,13cは、物体を検知してその位置を特定することができれば良く、例えば、ミリ波センサやステレオカメラを用いたセンサなどを用いても良い。センサ13a,13b,13cの上部旋回体1dに対する相対的な取り付け位置は設計情報などにより予め定められているので、設計情報とセンサ13a,13b,13cの検知結果とから、検知した物体の上部旋回体1dに対する相対位置(3次元座標系における相対位置)を特定することができる。
【0031】
以上のように構成した本実施の形態の油圧ショベル1は、オペレータの運転支援として、センサ13a,13b,13cの検知結果に基づいて油圧ショベル1の周囲監視を行う周囲監視システムを有している。
【0032】
図4は、本実施の形態に係る油圧ショベルの周囲監視システムに係る構成を抜き出して模式的に示す機能ブロック図である。
【0033】
図4において、周囲監視システムは、複数のセンサ13a,13b,13cと、圧力センサ23c,23dと、操作量センサ4a,4bと、動作制限制御のON/OFFを指示する指示装置31と、制限装置としての電磁弁23a,23b,24a,24bと、運転室1f等に設けられた警告装置としての音声出力装置30と、複数のセンサ13a,13b,13cの検知結果に基づいて電磁弁23a,23b,24a,24bへの指令信号と音声出力装置30への指令信号とを生成して出力する制御装置20とから構成されている。
【0034】
ここで、制限装置(電磁弁23a,23b,24a,24b)及び警告装置(音声出力装置30)は、オペレータの運転支援を行う運転支援装置の一部を構成している。
【0035】
制限装置は、センサ13a,13b,13cの検知結果に応じた制御装置20の制御により、油圧ショベル1の走行動作や旋回動作を制限する(すなわち、動作制限制御を行う)ことでオペレータの運転支援を行う。指示装置31は、例えば、運転室1f内に設けらえており、オペレータの操作によって動作制限制御の機能を有効(ON)とするか無効(OFF)とするかを指示する。
【0036】
警告装置である音声出力装置30は、センサ13a,13b,13cの検知結果に応じた制御装置20による制御に基づいて音声情報を伝えることでオペレータの運転支援を行う。音声出力装置30は、制御装置20からの指令に応じて種々の音(音声情報)を出力することができる。音声出力装置30が出力する音には、例えば、第一状態の音と第二状態の音とがある。第一状態の音および第二状態の音はともに警報(警告)効果を有するものであり、第一状態の音の方が第二状態の音に比べてより警報効果(警告強度)が強いものとする。具体的には、例えば、第二状態の音と比較して、第一状態の音の音を大きくしたり、音圧を大きくしたり、人がより認識しやすい周波数にしたりすることが考えられる。
【0037】
なお、音声出力装置30は、少なくとも第一状態の音と第二状態の音の2種類の音(音声、ブザー音、メロディ、など)を出力可能であれば良く、例えば、スピーカーやブザー等である。また、音声出力装置30としては、音量や音圧、音質などの異なる2種類以上のスピーカーやブザーを併せて用いてもよいし、或いは1つのスピーカーやブザーで入力信号を変化させて音量や音圧、音質などを変えるように構成してもよい。
【0038】
また、本実施の形態においては、警告装置として音声出力装置30を用いる場合を例示して説明するが、警告強度の異なる警告(例えば、第一状態の警告と第二状態の警告)をオペレータに対して発することができるものであれば警告装置として用いることができる。すなわち、例えば、音声出力装置30に代えて、種々の情報を表示可能な表示装置を警告装置として備え、警告強度の異なる第一状態の表示および第二状態の表示によってオペレータに対して警告を発するように構成しても良い。この場合には、例えば、第二状態の表示よりも警告強度が強い第一状態の表示と、第二状態の表示とを表示することでオペレータの警告を発する。また、例えば、音声出力装置30に代えて、種々の状態の発行が可能な発光装置を警告装置として備え、警告強度の異なる第一状態の光および第二状態の光によってオペレータに対して警告を発するように構成しても良い。この場合には、例えば、第二状態の光よりも警告強度が強い第一状態の光と、第二状態の光とを発することでオペレータの警告を発する。また、例えば、音声出力装置30に代えて、種々の振動によってオペレータに情報を報知可能な振動装置を警告装置として備え、警告強度の異なる第一状態の振動および第二状態の振動によってオペレータに対して警告を発するように構成しても良い。この場合には、例えば、第二状態の光よりも警告強度が強い第一状態の振動と、第二状態の振動とを行うことでオペレータの警告を発する。また、これらの組み合わせによって警告強度の異なる警告(例えば、第一状態の警告と第二状態の警告)をオペレータに対して発するように構成しても良い。
【0039】
制御装置20は、周囲監視システムに係る機能部として、検知位置判定部20aと、動作制限制御部20bと、音声出力制御部20cとを有している。
【0040】
検知位置判定部20aは、センサ13a,13b,13cの検知結果に基づいて、検知された物体の検知位置を判定し、判定結果を動作制限制御部20b及び音声出力制御部20cに出力する。また、検知位置判定部20aは、検知範囲14,15,16の情報を有しており、センサ13a,13b,13cの検知結果(位置情報)と検知範囲14,15,16とを比較することで、検知された物体が検知範囲14,15,16の何れの位置にあるかを判定することができる。
【0041】
動作制限制御部20bは、オペレータの指示装置31の操作によって動作制限制御をONとする(機能を有効とする)指示がなされている場合には、検知位置判定部20aの判定結果、すなわち、検知された物体の位置が検知範囲14,15,16の何れであるかに基づいて、操作装置4から出力される操作信号を制限する制限装置としての電磁弁23a,23b,24a,24bを制御することにより、下部走行体1eの走行動作と上部旋回体1dの下部走行体1eに対する旋回動作との少なくとも何れか一方を制限する。例えば、上部旋回体1dの旋回動作中には検知範囲14を検知対象の範囲とし、検知範囲14において物体を検知した場合には、電磁弁23a,23bに指令信号を出力することで上部旋回体1dの旋回動作を制限する。また、下部走行体1eの走行動作中には検知範囲15を検知対象の範囲とし、検知範囲15において物体を検知した場合には、電磁弁24a,24bに指令信号を出力することで下部走行体1eの走行動作を制限する。なお、オペレータの指示装置31の操作によって動作制限制御をOFFとする(機能を無効とする)指示がなされている場合には、動作制限制御部20bは電磁弁23a,23b,24a,24bの制御、すなわち、動作制限制御を行わない。
【0042】
また、動作制限制御部20bは、圧力センサ23c,23dからの検出結果に基づいて、動作制限制御が有効か否か、すなわち、電磁弁23a,23bが正常に動作しているか否かを判定する。具体的には、動作制限制御がONであって、センサ13a,13b,13cによって物体が検知され、旋回動作や走行動作の動作制限制御を行うために動作制限制御部20bから電磁弁23a,23b,24a,24bへの指令信号を出力した場合、すなわち、方向切換弁28などへのパイロット圧を制限する(減圧する)制御が行われている場合に、電磁弁23a,23b,24a,24bを介したパイロット圧の圧力が予め定めた圧力以下に制限されているか(減圧されているか)否かを判定することで、動作制限制御が有効(正常)か否(異常)かを判定する。動作制限制御部20bは、動作制限制御が有効か否かの判定結果、すなわち、電磁弁23a,23b,24a,24bがそれぞれ正常であるか異常であるかを音声出力制御部20cに出力する。
【0043】
音声出力制御部20cは、検知位置判定部20aの判定結果と、動作制限制御部20bの判定結果と、操作量センサ4a,4bの検出結果とに基づいて音声出力装置30を制御することにより、オペレータへの検知内容の報知を行う。
【0044】
図5は、制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0045】
図5において、制御装置20の動作制限制御部20b及び音声出力制御部20cは、まず、検知位置判定部20aからの判定結果に基づいて、物体が検知されたか否かを判定し(ステップS100)、判定結果がNOの場合には、処理を終了する。
【0046】
また、ステップS100での判定結果がYESである場合には、動作制限制御部20bは、動作制限制御がONであるか否かを判定し(ステップS110)、判定結果がYESの場合には、動作制限制御が有効であるか否かを判定する(ステップS120)。ステップS120での判定結果がYESの場合には、音声出力制御部20cは、操作量センサ4a,4bからの検出結果に基づいて、操作装置4が操作されているか否かを判定し(ステップS130)、判定結果がYESの場合には、音声出力装置30を制御して第二状態の音を出力し(ステップS140)、処理を終了する。
【0047】
また、ステップS110の判定結果がNOの場合、すなわち、動作制限制御がOFFである場合には、第一状態の音を出力し(ステップS141)、処理を終了する。また、ステップS120の判定結果がNOの場合に、すなわち、動作制限制御が無効である場合(異常である場合)には、第一状態の音を出力し(ステップS141)、処理を終了する。また、ステップS130での判定結果がNOの場合、すなわち、操作装置4の操作が行われている場合には、第一状態の音を出力し(ステップS141)、処理を終了する。
【0048】
なお、
図5に示す処理(ステップS100~S141)は、油圧ショベル1が起動している状態においては、制御装置20の動作に係るベースクロック等に基づいて継続的に繰り返し実行される。
【0049】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0050】
従来技術においては、作業機械の周辺に監視対象である所定の物体が存在していることをオペレータが認識しているような状況で警報音を光による警報に切り換えることによってオペレータの煩わしさの抑制を図っていた。しかしながら、例えば、直射日光によって光による警報のオペレータからの視認性が著しく低下してしまう場合や、オペレータが光による警報を見ていない場合などには、オペレータが光による警報を認識できないおそれがある。また、作業機械の周囲監視において、物体を検知した際に作業機械の動作を制限する動作制限制御を行うことで安全性を高めることも考えられるが、動作制限制御を無効(OFF)としている場合や、動作制限制御の機能に異常が生じている場合など、動作制限制御が必ずしも働く状況であるとは限られない。
【0051】
これに対して本実施の形態においては、センサ13a,13b,13cによって物体が検知されている場合に、動作制限制御がOFF(無効)とされている場合、動作制限制御が異常である場合、又は、操作装置4が操作されている場合などのように、潜在的に作業機械と物体との接触の可能性が高まる場合には、物体が検知されたことを第一状態の音(警告強度が第二状態に対して相対的に強い音)によってオペレータに報知することで、オペレータがより確実に警報に気づくようにするとともに、動作制限制御が正常である場合、かつ、操作装置4が操作されていない場合には、物体が検知されたことを第一状態の音とは異なる第二状態の音(警告強度が第一状態に対して相対的に弱い音)によってオペレータに報知するように構成したので、周囲監視における警報の実効性を確保しつつ、オペレータの煩わしさを抑制することができる。
【0052】
すなわち、例えば、物体を検知して警報が鳴っている場合に、オペレータが警報に気づいていない場合、または、警報には気付いているが一定時間が経過したことによって警報に対する意識が薄れてしまっている場合には、操作レバーを操作してしまう恐れがある。したがって、このような場合には、操作レバーを操作した際に警報レベルを上げる、すなわち、警報効果の大きい音声情報をオペレータに伝えることにより、警報の実効性を向上させることができる。
【0053】
また、油圧ショベルなどの旋回動作を行う作業機械の場合には、旋回動作と走行動作とで物体と作業機械との接触防止を考慮すべき範囲(すなわち、物体を検知すべき範囲)が異なる。例えば、
図3に示したように、旋回動作において作業機械と物体との接触を考慮すべき範囲は検知範囲14であり、走行動作においては検知範囲15である。したがって、検知範囲15で物体を検知している場合には、旋回動作のための操作装置の操作は低リスクの操作であるといえるし、走行動作のための操作装置の操作はリスクの高い操作であるといえる。このように、リスクが高いレバー操作の場合には警報効果を大きく(警告強度を強く)、リスクが低いレバー操作の場合には警報効果を小さく(警告強度を弱く)することで、オペレータの煩わしさを低減することができ、なおかつ安全性を高めることができる。
【0054】
また、本実施の形態においては、例えば、
図5に示したように、動作制限制御がONであり、かつ、有効である場合であってもレバー操作が無い場合には、検知した物体と油圧ショベル1(フロント作業機1A、車体1B)との接触の可能性が無いため、第一状態の音よりも警告強度の弱い第二の音を用いるように構成したので、リスクに対して不当に警告強度の強い音でオペレータに報知することがなくなり、オペレータの煩わしさを低減することができる。
【0055】
また、本実施の形態においては、旋回動作や走行動作に係る方向切換弁の受圧部に導かれるパイロット圧を検出する圧力センサを設け、圧力センサの検出結果から動作制限制御が有効であるか否かを判定することで動作制限制御の実効性を監視し、動作制限制御がONの場合に、方向切換弁の受圧部に入力されるパイロット圧を制限する電磁弁が故障などの異常によって動作しない場合であっても、より警告強度の強い第一状態の音でオペレータに報知することで、動作制限制御の異常をオペレータに報知するよう構成したので、周囲監視システム全体の安全性をより向上することができる。
【0056】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を
図6を参照しつつ説明する。
【0057】
本実施の形態は、操作装置の操作対象によって音声出力の仕方を変えたものである。
【0058】
図6は、本実施の形態に係る制御装置の処理内容を示すフローチャートである。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0059】
図6において、制御装置20の動作制限制御部20b及び音声出力制御部20cは、まず、検知位置判定部20aからの判定結果に基づいて、物体が検知されたか否かを判定し(ステップS100)、判定結果がNOの場合には、処理を終了する。
【0060】
また、ステップS100での判定結果がYESの場合、すなわち、物体が検知された場合には、検知位置が旋回動作に係る範囲である検知範囲14(
図3参照)であるか否かと(ステップS101)、検知位置が走行動作に係る範囲である検知範囲15(
図3参照)であるか否かとを判定し(ステップS102)、ステップS101,S102の判定結果がともにNOの場合には、音声出力制御部20cは、第二状態の音を出力し(ステップS142)、処理を終了する。
【0061】
また、ステップS101,S102の少なくとも一方の判定結果がYESの場合、すなわち、物体の検知位置が検知範囲14,15の少なくとも一方である場合には、動作制限制御部20bは、動作制限制御がONであるか否かを判定し(ステップS110)、判定結果がYESの場合には、動作制限制御が有効であるか否かを判定する(ステップS120)。ステップS120での判定結果がYESの場合には、音声出力制御部20cは、操作量センサ4a,4bからの検出結果に基づいて、操作装置4が操作されているか否かを判定し(ステップS131)、判定結果がYESの場合には、音声出力装置30を制御して第二状態の音を出力し(ステップS140)、処理を終了する。
【0062】
また、ステップS110の判定結果がNOの場合、すなわち、動作制限制御がOFFである場合には、第一状態の音を出力し(ステップS141)、処理を終了する。また、ステップS120の判定結果がNOの場合に、すなわち、動作制限制御が無効である場合(異常である場合)には、第一状態の音を出力し(ステップS141)、処理を終了する。また、ステップS131での判定結果がYESの場合、すなわち、操作装置4の操作が行われている場合には、第一状態の音を出力し(ステップS141)、処理を終了する。
【0063】
なお、
図6に示す処理(ステップS100~S142)は、油圧ショベル1が起動している状態においては、制御装置20の動作に係るベースクロック等に基づいて継続的に繰り返し実行される。
【0064】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0065】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
以上のように構成した本実施の形態の特徴を説明する。
【0067】
(1)上記の実施の形態では、車体1Bと、前記車体に設けられたフロント作業機1Aと、前記車体および前記フロント作業機を操作する操作信号をオペレータの操作に基づいて出力する操作装置4と、前記車体の周囲の物体を検知するセンサ13a,13b,13cと、を備えた作業機械(例えば、油圧ショベル1)において、前記操作装置からの操作信号に基づいて前記車体および前記フロント作業機の動作を制御するとともに、前記センサにより前記物体が検知された場合に、前記車体および前記フロント作業機の少なくとも一方の動作を制限する動作制限制御を行う制御装置20と、前記制御装置に前記動作制限制御の有効と無効を指示する指示装置31と、を備え、前記制御装置は、前記センサによって前記物体が検知され前記指示装置により前記動作制限制御が無効とされている場合、または前記センサによって前記物体が検知され前記指示装置により前記動作制限制御が有効とされた状態で前記操作装置が操作されている場合には第一状態の警告によって前記オペレータに報知し、前記制御装置は、前記センサによって前記物体が検知され前記指示装置により前記動作制限制御が有効とされた状態で前記操作装置が操作されていない場合には前記第一状態の警告よりも警告強度が弱い第二状態の警告によって前記オペレータに報知するものとした。
【0068】
これにより、作業機械の周囲監視における警報の実効性を確保しつつ、オペレータの煩わしさを抑制することができ、なおかつ安全性能を高めることができる。
【0069】
(2)また、上記の実施の形態では、上記(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル1)において、前記車体1Bは、下部走行体1e、及び、前記下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体1dとを有し、前記制御装置20は、前記上部旋回体の旋回範囲に基づいて予め定められた検知範囲において前記物体が検知されているとき、前記指示装置からの指示信号を受信し、かつ前記操作装置によって前記上部旋回体の旋回動作が操作されている場合には、前記第一状態の音によって前記オペレータに報知するものとした。
【0070】
(3)また、上記の実施の形態では、上記(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル1)において、前記第一状態の警告および前記第二状態の警告は音であるものとした。
【0071】
(4)また、上記の実施の形態では、上記(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル1)において、前記車体1Bおよび前記フロント作業機1Aを駆動する複数の油圧アクチュエータ3d,3e,3fと、油圧ポンプ26から前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれに供給される圧油の流量を制御する方向切換弁28と、前記方向切換弁を制御する前記操作信号としてのパイロット圧を減圧することで前記車体および前記フロント作業機の少なくとも一方の動作を制限する制限装置(例えば、電磁弁23a,23b,24a,224b)と、前記制限装置を介して前記方向切換弁に供給される前記操作信号としてのパイロット圧の大きさを検出する圧力センサ23c,23dとを備え、前記制御装置は、前記操作信号としてのパイロット圧が予め定めた基準圧力よりも低い場合に前記指示装置からの指示信号を受信していると判定し、前記操作信号としてのパイロット圧が前記基準圧力以上の場合に記指示装置からの指示信号を受信していないと判定するものとした。
【0072】
(5)また、上記の実施の形態では、車体1Bと、前記車体に設けられたフロント作業機1Aと、前記車体および前記フロント作業機を操作するための操作信号を出力する操作装置4と、を備える作業機械(例えば、油圧ショベル1)のための周囲監視システムにおいて、前記車体の周囲の物体を検知するセンサ13a,13b,13cと前記センサからの検知信号を受信したとき前記車体または前記フロント作業機の動作を制御する制御機能を有する制御装置20と、を備え、前記制御装置は、前記検知信号を受信したときに、前記制御機能が有効であるか否かと、前記操作装置が操作されているか否かとを判定し、前記制御機能が無効であると判定した場合、または前記制御機能が有効で前記操作装置が操作されていると判定した場合には、第一状態の警告を発するための指令を発信し、前記制御機能が有効であると判定し、かつ前記操作装置が操作されていないと判定した場合には前記第一状態の警告よりも警告強度が弱い第二状態の警告を発するための指令を発信するものとした。
【0073】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…油圧ショベル、1A…フロント作業機、1B…車体、1a…ブーム、1b…アーム、1c…バケット、1d…上部旋回体、1e…下部走行体、1f…運転室、3a…ブームシリンダ、3b…アームシリンダ、3c…バケットシリンダ、3d…旋回油圧モータ、3e…走行油圧モータ、3f…走行油圧モータ、4…操作装置、4a,4b…操作量センサ、4f…ゲートロックレバー、13a…後方センサ、13b…右側方センサ、13c…左側方センサ、14,15,16…検知範囲、20…制御装置、20a…検知位置判定部、20b…動作制限制御部、20c…音声出力制御部、23a,23b,24a,24b…電磁弁、23c,23d…圧力センサ、25…エンジン、26…油圧ポンプ、26a…吐出ライン、27…パイロットポンプ、27a…吐出ライン、27b…ロック弁、28…方向切換弁、28a…センタバイパスライン、29…圧油タンク、29a…タンクライン、30…音声出力装置、31…指示装置、131a,131b,131c…検知可能範囲