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  • 特許-連結印刷版 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】連結印刷版
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/12 20060101AFI20221006BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20221006BHJP
   B41N 3/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B41N1/12
G03F7/00 502
B41N3/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019514337
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2019010157
(87)【国際公開番号】W WO2019188271
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018058334
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594101226
【氏名又は名称】株式会社コムラテック
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】天野 正典
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-210167(JP,A)
【文献】特開2017-154353(JP,A)
【文献】特開平9-274310(JP,A)
【文献】特開2011-194767(JP,A)
【文献】特開昭62-31858(JP,A)
【文献】特開2009-83112(JP,A)
【文献】特開昭61-139491(JP,A)
【文献】特開2013-49765(JP,A)
【文献】特開2014-133335(JP,A)
【文献】国際公開第2016/024446(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/031460(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0028691(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0232518(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/12
G03F 7/00
B41N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面が印刷面に形成された可撓性を有する複数の印刷版と、隣り合う印刷版の上記印刷面と反対側の面に接着され隣り合う印刷版を連結する片面粘着シートと、隣り合う印刷版の対面する側面と側面との間に設けられ上記側面同士を接着する、柔軟性を有する接着剤硬化部とを備え、版胴の外周面に着脱自在に装着される連結印刷版であって、上記接着剤硬化部が、下記(A)~(C)の物性を有していることを特徴とする連結印刷版。
(A)伸び率が260%以上。
(B)片面粘着シートとの180°剥離強度が4N/10mm以上。
(C)23℃のN-メチル-2-ピロリドンに24時間浸漬した際の膨潤率が30質量%以下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版を複数連結した連結印刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビに用いるTFT基板やカラーフィルタ基板の表面に、フレキソ印刷法により、配向膜や絶縁膜を形成することがよく行われている。液晶テレビは、年々大型化しており、それに対応して、フレキソ印刷法に用いる印刷版も大型化にする必要がある。その場合、印刷版の大きさを、例えば2500mm×3000mm程度にする必要がある。ところが、このような大きさの印刷版は、既存の設備で製造することができないため、既存の設備自体を大型化することが考えられる。しかし、そのようにすると、コストが大幅に高くなる。
【0003】
そこで、既存の設備で製造できる大きさの印刷版を複数連結することにより、印刷版を大型化した連結印刷版が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この連結印刷版は、連結する印刷版の側面同士を、隙間をあけて突き合わせ、その隙間に接着剤を注入した後に硬化させることにより得られる。一般に、上記印刷版の形成材料は、光硬化性樹脂が用いられ、上記連結用の接着剤も、上記印刷版と同じ形成材料(光硬化性樹脂)が用いられる。
【0004】
ここで、上記フレキソ印刷法では、印刷版を円柱状の版胴の外周面に装着した状態で、その版胴を回転させながら、上記印刷版に、上記配向膜や絶縁膜等の形成材料であるインクを供給し、そのインクをガラス基板等の印刷対象物に転写することが行われる。そのため、上記印刷版は、上記版胴の外周面に着脱自在に装着できる程度の可撓性を有している。また、上記連結印刷版における連結部分(接着剤硬化部)も、上記版胴の外周面に着脱自在に装着可能になるよう、柔軟性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-274310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記連結印刷版の使用時間が長くなると、その連結印刷版における連結部分(接着剤硬化部)が破断する場合がある。上記連結部分(接着剤硬化部)に破断が発生すると、新しい連結印刷版に取り替えられる。そのため、上記破断の発生頻度が多いと、印刷作業を中断する頻度も多くなることから、作業効率が悪くなり、しかも、連結印刷版の取り替えコストも高くなる。
【0007】
そこで、本発明者が上記破断の原因について詳しく調べた結果、上記フレキソ印刷法において、上記インクに使用される溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)が、連結印刷版における連結部分を劣化させることがわかった。また、上記連結印刷版は、版胴の外周面に沿って曲げられた状態で、印刷対象物と接触することから、その印刷対象物との摩擦により、上記連結印刷版には、引張荷重や振動が加わることがわかった。そして、上記版胴の回転軸と平行となる連結部分では、上記引張荷重や振動による応力が集中し、上記破断が発生することを突き止めた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、印刷版を複数連結した連結印刷版であって、連結部分(接着剤硬化部)の耐破断性を高めた連結印刷版を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の連結印刷版は、片面が印刷面に形成された可撓性を有する複数の印刷版と、隣り合う印刷版の上記印刷面と反対側の面に接着され隣り合う印刷版を連結する片面粘着シートと、隣り合う印刷版の対面する側面と側面との間に設けられ上記側面同士を接着する、柔軟性を有する接着剤硬化部とを備え、版胴の外周面に着脱自在に装着される連結印刷版であって、上記接着剤硬化部が、下記(A)~(C)の物性を有しているという構成をとる。
(A)伸び率が260%以上。
(B)片面粘着シートとの180°剥離強度が4N/10mm以上。
(C)23℃のN-メチル-2-ピロリドンに24時間浸漬した際の膨潤率が30質量%以下。
【0010】
本発明者は、連結印刷版の連結部分(接着剤硬化部)の耐破断性を高めるべく、その接着剤硬化部の物性に着目し、研究を重ねた。その研究の過程で、上記接着剤硬化部の硬度を低くすることに着想した。その結果、上記接着剤硬化部の耐破断性は高まるものの、場合によって、隣り合う印刷版の位置が相対的にずれ、印刷対象物の適正位置にインクを転写できないことがあった。そこで、本発明者は、上記接着剤硬化部の硬度以外の物性について研究を重ねた。その結果、上記接着剤硬化部が、上記(A)~(C)の物性を有すると、上記接着剤硬化部の耐破断性を高めるとともに、印刷を適正に行うことができることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の連結印刷版は、隣り合う印刷版を接着する接着剤硬化部が、上記(A)~(C)の物性を有しているため、上記接着剤硬化部の耐破断性を高め、適正に印刷することができる。その結果、連結印刷版の取り替え頻度が減少し、印刷の作業効率を高めることができる。また、連結印刷版の取り替えコストが高くなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の連結印刷版の一実施の形態を模式的に示し、(a)は、その平面図であり、(b)は、(a)の円部Yの連結部分のX-X断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0014】
図1(a)は、本発明の連結印刷版の一実施の形態を模式的に示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)の円部Y内の連結部分のX-X断面の拡大図である。この実施の形態の連結印刷版は、図1(a),(b)に示すように、2枚の可撓性を有する印刷版1を連結させたものである。その連結は、それら印刷版1の裏面(印刷面と反対側の面)1aに接着した1枚の片面粘着シート2と、それら印刷版1の側面1b同士を接着した接着剤硬化部3とによりなされている。そして、その接着剤硬化部3は、上記片面粘着シート2の粘着面にも接着している。また、その接着剤硬化部3の幅Wは、通常、0.5~4mmの範囲内に設定される。なお、図1(a)において、符号11は、印刷版1の印刷面(表面)の中央領域に形成された印刷用凸部である。
【0015】
上記連結印刷版の作製は、まず、作製する連結印刷版の面積と略等しい面積の1枚の上記片面粘着シート2を準備する。ついで、その片面粘着シート2の粘着面に、連結する2枚の印刷版1の裏面1aを接着する。このとき、2枚の印刷版1の側面1b同士を、隙間をあけて対面させた状態とする。そして、その隙間に接着剤を注入した後、その接着剤を硬化させる。これにより、上記接着剤が接着剤硬化部3となり、その接着剤硬化部3が、上記片面粘着シート2の粘着面と接着するとともに、上記2枚の印刷版1の対面する側面1b同士を接着する。このようにして、上記片面粘着シート2と上記接着剤硬化部3とにより上記2枚の印刷版1が連結され、上記連結印刷版を作製することができる。
【0016】
そして、その連結印刷版の接着剤硬化部3は、下記(A)~(C)の物性を有している。これが本発明の特徴である。この特徴により、上記接着剤硬化部3の耐破断性を高めるとともに、上記連結印刷版を用いた印刷を適正に行うことができる。
(A)伸び率が260%以上。
(B)片面粘着シート2との180°剥離強度が4N/10mm以上。
(C)23℃のN-メチル-2-ピロリドン(以下「NMP」という)に24時間浸漬した際の膨潤率が30質量%以下。
【0017】
すなわち、接着剤硬化部3が上記(A)の物性(伸び率が260%以上)を有することにより、その接着剤硬化部3の柔軟性が高くなっており、フレキソ印刷法で用いる際の、上記連結印刷版に加わる荷重や振動を吸収して低減することができる。上記伸び率は、JIS 7311-1995に準じて測定し、下記の式で算出される値である。
伸び率(%)={(L-L)/L}×100
上記式において、Lは標線距離であり、Lは切断時の標線間距離である。
【0018】
また、接着剤硬化部3が上記(B)の物性(片面粘着シート2との180°剥離強度が4N/10mm以上)を有することにより、その接着剤硬化部3は、片面粘着シート2の粘着面に強力に接着している。そして、接着剤硬化部3が隣り合う2枚の印刷版1を接着していることと相俟って、それら隣り合う2枚の印刷版1の相対的な位置ずれを低減することができる。
【0019】
さらに、接着剤硬化部3が上記(C)の物性(23℃のNMPに24時間浸漬した際の膨潤率が30質量%以下)を有することにより、印刷される配向膜等の形成材料に使用される溶剤(NMP)に対して膨潤しにくくなっている。そのため、接着剤硬化部3を上記溶剤に対して劣化しにくくすることができる。上記膨潤率は、下記の式で算出される値である。
膨潤率(%)={(W-W)/W}×100
上記式において、Wは浸漬する前の試験片の質量であり、Wは浸漬した後の試験片の質量である。
【0020】
より詳しく説明すると、上記印刷版1は、フレキソ印刷法で用いられるものであり、円柱状の版胴の外周面に着脱自在に装着できる程度の可撓性を有している。そのような印刷版1の形成材料としては、例えば、光硬化性樹脂等の樹脂があげられる。
【0021】
上記片面粘着シート2は、シート状の基材と、この基材の片面に形成された粘着層とからなっている。その粘着層が形成されている側の面が上記粘着面である。上記基材は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂を形成材料として、厚みが0.1~0.5mmの範囲内に設定される。上記粘着層は、例えば、アクリル系樹脂を形成材料とし、コーター等を用いて上記基材の片面に塗布され、厚みが5~50μmの範囲内に設定される。
【0022】
上記接着剤硬化部3は、上記(A)~(C)の物性を有している。そして、上記耐破断性を有することに加えて、フレキソ印刷法で用いる円柱状の版胴の外周面に上記連結印刷版を着脱自在に装着できる程度の柔軟性も有している。そのような接着剤硬化部3の形成材料(接着剤)としては、例えば、下記(a)~(c)を含有する光硬化性樹脂組成物があげられる。
(a)水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマー。
(b)(メタ)アクリレートモノマー。
(c)光重合開始剤。
【0023】
本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの一方または双方を意味するものである。
【0024】
〔(a)水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマー〕
上記(a)の水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマーは、公知の製法により製造することができる。例えば、水酸基を有する水添ポリブタジエン(a1)と、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート(a2)と、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)とを反応させることにより得られる。
【0025】
上記水添ポリブタジエン(a1)と、上記ポリイソシアネート(a2)と、上記化合物(a3)との割合は、例えば、つぎのように設定することが好ましい。すなわち、上記ポリイソシアネート(a2)のイソシアネート基(NCO基)と、上記水添ポリブタジエン(a1)の水酸基(OH基)とのモル比(NCO基/OH基)が1.0~2.0の範囲で反応させることでポリマー末端にNCO基を有するプレポリマー前駆体を合成する。上記化合物(a3)の水酸基(OH基)と、上記プレポリマー前駆体のポリマー鎖末端イソシアネート基(NCO基)とのモル比(NCO基/OH基)が0.8~1.0の範囲で反応させることが好ましく、水酸基(OH基)とイソシアネート基(NCO基)が当量になるように反応させることがより好ましい。上記水添ポリブタジエン(a1)と上記ポリイソシアネート(a2)と上記化合物(a3)との割合が、上記範囲内であると、エチレン性不飽和結合の導入が充分となり、上記接着剤硬化部3の接着性,強度等の物性が高められたり、過剰なイソシアネート基の残存による貯蔵安定性の低下を抑制できたりする。
【0026】
上記水添ポリブタジエン(a1)としては、上記接着剤硬化部3の接着性が向上する観点から、1,2-ポリブタジエン構造を80質量%以上有する水添ポリブタジエンが好ましい。
【0027】
上記ポリイソシアネート(a2)としては、ジイソシアネート、トリイソシアネート等の、2個以上のイソシアネート基を有するものであればよい。上記ジイソシアネートとしては、例えば、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-水添化キシリレンジイソシアネート、m-水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート等があげられる。また、上記トリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネートのビウレット体、およびそのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのビウレット体、およびそのイソシアヌレート体、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、およびそのイソシアヌレート体等があげられる。なかでも、上記(a)の不飽和ポリウレタンプレポリマーの製造が容易である観点から、ジイソシアネートが好ましく、より好ましくは、未黄変タイプであるイソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートである。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0028】
上記化合物(a3)としては、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合とを分子内に有する化合物であればよく、好ましくは、ヒドロキシ基とエチレン性不飽和結合とを分子内に有する化合物である。そのような化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノもしくはジ(メタ)アクリレート等をあげることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0029】
そして、上記水添ポリブタジエン(a1)と上記ポリイソシアネート(a2)と上記化合物(a3)とを反応させて得られる上記不飽和ポリウレタンプレポリマー(a)は、数平均分子量が10,000以上50,000以下であることが好ましい。数平均分子量が小さすぎると、上記接着剤硬化部3の硬度が高く(柔軟性に乏しく)なる傾向にあり、逆に大きすぎると、モノマー類との相溶性に乏しくなり、均一な接着剤が得られにくくなる傾向にあるからである。接着性、柔軟性、相溶性がより良好になる観点から、上記不飽和ポリウレタンプレポリマー(a)の数平均分子量は、15, 000~30,000の範囲内であることがより好ましい。ここでいう数平均分子量とは、GPC法を用いたポリスチレン換算平均分子量である。
【0030】
〔(b)(メタ)アクリレートモノマー〕
上記(b)の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル等の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマー類、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、モノ,ジもしくはトリアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基を有するモノマー類、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、モノ,ジもしくはトリアルキルシクロヘキセニル(メタ)アクリレート、シクロヘプテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘプテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のシクロアルケニル基を有するモノマー類、〔(1S,4S)-1,7,7-トリメチル-6-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル〕(メタ)アクリレート等のビシクロアルキル基を有するモノマー類、〔(1S,4S)-1,7,7-トリメチル-6-ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル〕(メタ)アクリレート等のビシクロアルケニル基を有するモノマー類、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イル、(メタ)アクリル酸(エチルオキシ)トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イル、(メタ)アクリル酸2-メチルトリシクロ[3.3.1.1(3,7)]デカン-2-イル、(メタ)アクリル酸2-エチルトリシクロ[3.3.1.1(3,7)]デカン-2-イル等のトリシクロアルキル基を有するモノマー類、(メタ)アクリル酸2-(3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン-6-イル)エステル、(メタ)アクリル酸2-[(3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン-6-イル)オキシ]エチルエステル等のトリシクロアルケニル基を有するモノマー類、アルキル基の炭素数が2~4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキレングリコールの炭素数が2~4,アルキレングリコールの繰り返し単位が1~10個であるポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシ基の炭素数が2~4,アルキレングリコールの炭素数が2~4,アルキレングリコールの繰り返し単位が1~10個であるアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種以上の化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0031】
上記(メタ)アクリレートモノマー(b)の含有量は、通常、水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマー(a)質量に対して5~400質量%であり、好ましくは20~300質量%であり、より好ましくは40~230質量%である。
【0032】
〔(c)光重合開始剤〕
上記(c)の光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のアセトフェノン類、ベンゾイン,α-メチルベンゾイン,α-フェニルベンゾイン等のベンゾイン類、ベンゾフェノン,ベンゾイル安息香酸,ベンゾイル安息香酸メチル等のベンゾフェノン類、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン等のαアミノケトン類、キサントン,チオキサントン等のキサントン類、アントラキノン,2-メチルアントラキノン等のアントラキノン類、{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン-1-オン}等の高分子光開始剤があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0033】
上記光重合開始剤(c)の含有量は、通常、水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマー(a)および(メタ)アクリレートモノマー(b)の合計質量(後述のエチレン性不飽和化合物(f)を含有する場合は、エチレン性不飽和化合物(f)も含めた合計質量)に対して、0.2~20質量%であり、好ましくは0.3~15質量%であり、より好ましくは0.5~10質量%である。
【0034】
なお、上記(a)~(c)の成分に加えて、必要に応じて、他の成分を用いることができる。その成分としては、例えば、下記のシランカップリング剤(d),柔軟性付与剤(e),上記(b)の成分以外のエチレン性不飽和化合物(f),各種添加剤(g)があげられる。
【0035】
〔(d)シランカップリング剤〕
上記シランカップリング剤(d)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシランおよびn-オクチルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン、ポリエーテル変性アルコキシシラン等があげられる。なかでも、上記(a)~(c)の各成分との親和性の観点から、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ポリエーテル変性アルコキシシラン等の非イオン性のシランカップリング剤が好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。上記シランカップリング剤(d)の割合は、上記(a)~(c)の成分の合計質量に対して5質量%以下とすることが好ましい。
【0036】
〔(e)柔軟性付与剤〕
上記柔軟性付与剤(e)としては、例えば、ポリブタジエン,水添ポリブタジエン,テルペン樹脂,炭化水素変性テルペン樹脂,これらの水素添加物等のテルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂,このテルペンフェノール樹脂の水素添加物等のテルペンフェノール系樹脂、脂肪族系石油樹脂,脂環族系石油樹脂,芳香族系石油樹脂,共重合系石油樹脂,ジシクロペンタジエン系石油樹脂,ピュアーモノマー系石油樹脂,これらの水素添加物等の石油系樹脂、ガムロジン,トールロジン,ウッドロジン,不均斉化ロジン,重合ロジン,これらロジンのグリセリンエステルおよびペンタエリスリトールエステル,これらの水素添加物等のロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、キシレン系樹脂、ダンマル、コーパル、シェラック等などがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、上記(a)~(c)の各成分との親和性および柔軟性向上の観点から、ポリブタジエンが好ましい。上記柔軟性付与剤(e)の割合は、上記(a)~(c)の成分の合計質量に対して100質量%以下とすることが好ましい。
【0037】
〔(f)エチレン性不飽和化合物〕
上記エチレン性不飽和化合物(f)としては、例えば、炭素数が1~7の直鎖または分岐のアルキル(メタ)アクリレート、ハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、N-置換またはN,N'-置換した(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N'-アルキレンビス(メタ)アクリルアミド、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートやポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートやポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパンアルコキシトリ(メタ)アクリレートやグリセリントリ(メタ)アクリレートやグリセリンアルコキシトリ(メタ)アクリレートやペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートやペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。上記エチレン性不飽和化合物(f)の割合は、上記(a)~(c)の成分の合計質量に対して5質量%以下とすることが好ましい。
【0038】
〔(g)添加剤〕
上記添加剤(g)としては、例えば、熱重合禁止剤,老化防止剤,酸化防止剤,難燃剤,界面活性剤,帯電防止剤,着色剤,可塑剤,表面潤滑剤,レベリング剤,軟化剤等があげられる。上記添加剤(g)の割合は、上記(a)~(c)の成分の合計質量に対して5質量%以下とすることが好ましい。
【0039】
〔接着剤の調製〕
そして、前記接着剤は、上記(a)~(c)の成分を混合することにより、光硬化性樹脂組成物に調製される。その際、必要に応じて、上記(d)~(g)の成分を混合する。
【0040】
また、上記接着剤は、先に述べた連結印刷版の作製において、連結する2枚の印刷版1の側面1b同士の隙間に注入され〔図1(a),(b)参照〕、紫外線等の活性エネルギー線が照射されることにより、硬化される。
【0041】
なお、上記実施の形態では、連結する印刷版1を2枚としたが、3枚以上としてもよい。また、連結する方向は、一方向(横方向)ではなく、それに直角な方向(縦方向)でもよいし、それら2方向(縦横方向)でもよい。
【0042】
つぎに、実施例について比較例および従来例と併せて説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0043】
〔印刷版の形成材料〕
印刷版の形成材料として、感光性樹脂組成物(旭化成社製、K-11)を準備した。
【0044】
〔片面粘着シート〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体質量に対し、イソシアネート系架橋剤を0.5質量%添加し、10分間撹拌して粘着剤溶液を得た。そして、その粘着剤溶液を、PET製のシート状基材(厚み250μm)の片面に、コーターを用いて塗布した後、100℃で3分間乾燥させて、粘着剤層(厚み30μm)を形成した。このようにして、片面粘着シートを作製した。
【0045】
〔接着剤(光硬化性樹脂組成物)の前記(a)~(c)の成分〕
接着剤の前記(a)~(c)の成分として下記のものを準備した。
(a)水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマー(数平均分子量15,000)。
(b)(メタ)アクリレートモノマーとして、下記の(b1)~(b4)を準備した。
(b1)メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イル。
(b2)アクリル酸2-エチルヘキシル。
(b3)アクリル酸2-メトキシエチル。
(b4)メタアクリル酸n-ドデシル。
(c)ジエトキシアセトフェノン(光重合開始剤)。
【0046】
〔実施例1~4および比較例1,2〕
上記(a)~(c)の成分を後記の表1に示す割合で混合し、実施例1~4および比較例1,2の接着剤を調製した。
【0047】
〔従来例〕
従来例の接着剤は、上記印刷版の形成材料と同じ感光性樹脂組成物とした。
【0048】
【表1】
【0049】
そして、上記実施例1~4、比較例1,2および従来例の接着剤に紫外線を照射して硬化させたもの(前記接着剤硬化部に相当)について、下記のようにして、伸び率,片面粘着シートとの180°剥離強度,NMPに対する膨潤率,引張強度およびショアA硬度を測定した。そして、その測定結果を後記の表2に示した。
【0050】
〔伸び率〕
上記接着剤に紫外線を照射して硬化させ、厚み2mmの接着剤硬化シート(前記接着剤硬化部に相当)を作製した。ついで、その接着剤硬化シートから、型抜きにより、JISダンベル3号(平行部の長さ20mm、幅5mm)の試験片を得た。そして、その試験片の伸び率を、伸び率測定器(引張試験機)(ミネベアミツミ社製、TGE-5kN)を用いて測定した。
【0051】
〔片面粘着シートとの180°剥離強度〕
ステンレス製基板の表面に、上記印刷版の形成材料を塗布し、2枚の印刷版の側面(厚み2.56mm)同士が隙間10mmをあけて対面させた状態を長さ100mmにわたって再現して硬化させた。ついで、上記隙間に、上記接着剤を注入し、その注入層の表面に、上記片面粘着シートの粘着面を当接させた後、紫外線を照射して、上記接着剤を硬化させて接着剤硬化部に形成した。そして、剥離試験機(引張試験機)(ミネベアミツミ社製、TGE-5kN)を用いて、剥離速度20mm/minで上記片面粘着シート(厚み45μm)を180°剥離し、その180°剥離強度を測定した。なお、この測定では、上記接着剤硬化部は、ステンレス製基板の表面に強固に接着しており、上記片面粘着シートの180°剥離では、上記接着剤硬化部と片面粘着シートとの界面で剥離した。
【0052】
〔NMPに対する膨潤率〕
上記接着剤に紫外線を照射して硬化させ、厚み3mmの接着剤硬化シート(前記接着剤硬化部に相当)を作製した。ついで、その接着剤硬化シートから、型抜きにより、長方形(40mm×20mm)の試験片を得た。そして、その試験片を23℃のNMPに24時間浸漬した。膨潤率は、浸漬前後の上記試験片の質量を測定し、前記の式に基づいて算出した。
【0053】
〔引張強度〕
上記印刷版の形成材料に紫外線を照射して硬化させ、20mm×100mm×2.56mm(厚み)のシート材を2枚作製した。ついで、それらシート材の短辺同士を、隙間2mmあけて対面させ、その隙間に上記接着剤を注入し、紫外線を照射して上記接着剤を硬化させた。このようにして、上記2枚のシート材を接着剤硬化部により連結させた試験片を得た。そして、温度23℃、湿度46%の環境下で、引張試験機(ミネベアミツミ社製、TGE-5kN)を用いて、上記試験片を長手方向に引張速度10mm/minで引っ張り、引張強度を測定した。
【0054】
〔ショアA硬度〕
上記接着剤に紫外線を照射して硬化させ、厚み9mmの接着剤硬化シートを作製した。そして、その接着剤硬化シートのショアA硬度を、デュロメータ(高分子計器社製、MD-1)を用い、JIS K6253に準じて測定した。
【0055】
【表2】
【0056】
〔耐久試験〕
上記印刷版の形成材料を用いて、連結する印刷版として、1560mm×1030mm×2.56mm(側面の厚み)のものを2枚準備した。そして、上記実施の形態と同様にして、上記片面粘着シートおよび上記接着剤を用い、連結印刷版を作製した。このとき、連結する印刷版の側面同士の隙間を2mmとした。そして、その連結印刷版を用いてフレキソ印刷法により印刷する耐久試験を行った。この耐久試験では、配向膜の形成材料(溶剤:NMP)をガラス基板に印刷し、1枚のガラス基板への印刷を1回と数えた。
【0057】
その結果、実施例1~4の連結印刷版を用いた耐久試験では、2万回印刷しても、連結印刷版が破断することなく、適正に印刷することができた。これに対し、比較例1の連結印刷版を用いた耐久試験では、連結印刷版が破断することなく、2万回印刷することができたものの、1万回を過ぎたあたりから、印刷位置のずれが生じ、適正に印刷することができなかった。しかも、耐久試験後の連結印刷版では、連結部分(接着剤硬化部)が白濁していた。また、比較例2の連結印刷版を用いた耐久試験では、2万回に達することなく、連結印刷版の連結部分が破断した。そして、従来例の連結印刷版を用いた耐久試験では、1万回に達することなく、連結印刷版の連結部分が破断した。
【0058】
この耐久試験の結果から、実施例1~4の連結印刷版は、連結部分(接着剤硬化部)が特定の物性を有しているため、その連結部分の耐破断性を高めつつ、適正に印刷できることがわかる。これに対し、その特定の物性から外れる連結部分を有する比較例1,2および従来例の連結印刷版は、連結部分の耐破断性または適正な印刷性が劣ることがわかる。
【0059】
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の連結印刷版は、フレキソ印刷法において、印刷版の連結部分(接着剤硬化部)の耐破断性を高めつつ、適正に印刷することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 印刷版
1a 裏面
1b 側面
2 片面粘着シート
3 接着剤硬化部
図1