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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20221006BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20221006BHJP
   A23L 29/25 20160101ALI20221006BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20221006BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20221006BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20221006BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20221006BHJP
   A23L 5/44 20160101ALI20221006BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20221006BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20221006BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20221006BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20221006BHJP
   A23K 20/179 20160101ALI20221006BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20221006BHJP
【FI】
A23L5/00 L
A23L29/10
A23L29/25
A23L17/00 101D
A23L7/10 Z
A23L19/00 Z
A23L35/00
A23L5/44
A61K8/92
A61K8/73
A61K8/64
A61K8/06
A61K47/44
A61K47/36
A61K47/42
A23K20/158
A23K20/163
A23K20/179
A23K20/147
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019514673
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2018017285
(87)【国際公開番号】W WO2018199315
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2017089770
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴明
(72)【発明者】
【氏名】木下 俊介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 亮
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-094806(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02721933(EP,A1)
【文献】特開2006-257246(JP,A)
【文献】国際公開第2009/001786(WO,A1)
【文献】井戸隆雄,FFI Reports ガティガム,Foods & Food Ingred J Jpn,2006年,Vol.211, No.7,p.641-645,641ページ左欄第2段落、642ページ左欄第2段落、643ページ右欄、図6
【文献】IDO,T. et al.,Natural Hydrocolloid Emulsifiers (2) Emulsification Properties of GATIFOLIA (Gum Ghatti) Used for Em,Foods & Food Ingred J Jpn,2008年,Vol.213, No.4,p.365-371,要旨
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A23K
B01F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、パプリカ色素、ガティガム、及びサポニンを含有する乳化組成物であって、
前記サポニンの含有量が、乳化組成物全体の0.1質量%~5質量%であり、
前記サポニンの含有量が、前記ガティガム100質量部に対し、0.05~30質量部であり、
前記乳化組成物における乳化粒子のメディアン径が、0.05μm~1.6μmであり、
前記乳化組成物中に、アセトン不溶物が0.1質量%~10質量%含まれている、
乳化組成物。
【請求項2】
前記パプリカ色素100質量部に対する、前記サポニン含量が0.01~10質量部である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乳化組成物を含有する、飲食品、香粧品、医薬品、医薬部外品、衛生用日用品、又は飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油溶性色素、油溶性香料、又は油溶性生理活性物質等の油性成分を水性媒体に分散、又は溶解するために、油性成分を乳化処理した乳化組成物が用いられている。
例えば、特許文献1には、油溶性色素としてカロテノイドを含有し、並びに、水溶性乳化剤、トコフェロール及びレシチンを含有する乳化組成物が提案されている。特許文献2には、ガティガム、カロテノイド、及び油を含有する組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-13751号公報
【文献】特表2011-521658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は乳化安定性により一層優れる、乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ガティガムを用いた乳化組成物について鋭意研究した結果、油性成分としてカロテノイド色素等を含有する乳化組成物は、乳化粒子が粗大化する傾向があり、及び、本傾向はガティガムを用いた場合に示す特有の挙動であることを見出した。そして、本発明者らは更に鋭意研究を重ねた結果、ガティガム、及びガティガムに対して特定量のサポニンを併用することで、例えば、カロテノイド色素等を含有する場合であっても、乳化安定性に優れる乳化組成物を提供できることを見出し、かかる知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は以下の態様を含む;
項1.
水、油性成分、ガティガム、及びサポニンを含有し、且つ、
前記サポニンの含有量が、前記ガティガム100質量部に対し、0.05~30質量部である、乳化組成物。
項2.
前記油性成分100質量部に対する、前記サポニン含量が0.01~10質量部である、項1に記載の乳化組成物。
項3.
前記油性成分が、油溶性色素、油溶性香料、油溶性生理活性物質、及び油性溶媒からなる群から選択される1種以上を含有する、項1又は2に記載の乳化組成物。
項4.
前記油性成分がカロテノイド色素を含有するものである、項1~3のいずれか一項に記載の乳化組成物。
項5.
前記油性成分が油溶性香料を含有するものである、項1~3のいずれか一項に記載の乳化組成物。
項6.
前記乳化組成物の乳化粒子のメジアン径が4μm以下である、項1~5のいずれか一項に記載の乳化組成物。
項7.
液体状、粉末状、顆粒状、又は錠剤状である、項1~6のいずれか一項に記載の乳化組成物。
項8.
水、油性成分、ガティガム、及びサポニンを含有し、且つ、前記サポニンの含有量が、前記ガティガム100質量部に対し、0.05~30質量部である混合液を調製する工程、及び
前記混合液を均質化処理する工程、
を含有する、乳化組成物の製造方法。
項9.
項8に記載の乳化組成物を粉末化処理する工程、
を含有する、粉末状、顆粒状、又は錠剤状組成物の製造方法。
項10.
項1~7のいずれか一項に記載する乳化組成物、又は、項9に記載の粉末状、顆粒状、若しくは錠剤状組成物を、水性溶媒に溶解又は分散する工程、
を含有する、飲食品、香粧品、医薬品、医薬部外品、衛生用日用品、又は飼料からなる群から選択される組成物の製造方法。
項11.
項1~7のいずれか一項に記載の乳化組成物、又は、項9に記載の粉末状、顆粒状、若しくは錠剤状組成物を含有する、飲食品、香粧品、医薬品、医薬部外品、衛生用日用品、又は飼料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乳化安定性に優れる乳化組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実験例5における、乳化組成物によるカニ風味蒲鉾の着色結果を示した写真像図である。
図2】実験例6における、乳化組成物によるビビンバ炒飯の着色結果を示した写真像図である。
図3】実験例7における、乳化組成物によるキムチの着色結果を示した写真像図である。
図4】実験例8における、乳化組成物による中華饅頭の着色結果を示した写真像図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は乳化組成物に関する。以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0010】
1.乳化組成物
本発明の乳化組成物は、好適に、水中油型乳化組成物であることができる。
より説明的に述べると、本発明の乳化組成物は、好適に、
水を媒体として含有する連続相である水相、及び
油溶性素材及び/又は油性溶媒を含有する粒子形態の油相(本明細書中、これを油含有粒子と称する場合がある)を含有することができる。
【0011】

本発明で用いられる水の例は、純水、イオン交換水、及び水道水を包含する。
【0012】
水の含有量は、限定はされないが、例えば、組成物の全量に対して、5質量%以上とすることができ、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは25質量%以上である。また、水の含有量は、限定はされないが、例えば、組成物の全量に対して、60質量%以下とすることができ、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、更に好ましくは45質量%以下であり、更により好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは35質量%以下である。水の含有量としては、限定はされないが、例えば、組成物の全量に対して、5~60質量%、5~55質量%、5~50質量%、5~45質量%、5~40質量%、10~60質量%、10~55質量%、10~50質量%、10~45質量%、10~40質量%が挙げられる。
【0013】
油性成分
本発明で用いられる油性成分(すなわち、油相を構成する成分)は、油溶性素材(これは、脂溶性素材を包含する)、及び油性溶媒からなる群から選択される1種以上より構成される。本明細書において、油性とは、n-ヘキサン、及び酢酸エチルの一方又は双方に対する20℃での溶解度が、10g/L以上(好ましくは50g/L)である性質を意味することができる。
【0014】
油溶性素材
本発明で使用される油溶性素材の例は、油溶性色素、油溶性香料、及び油溶性生理活性物質等を包含する。
【0015】
油溶性色素
本発明で用いられる油溶性色素(これは、脂溶性色素を包含する。)は、着色成分を含有する油溶性又は脂溶性の物質であればよく、その限りにおいて制限されない。
本発明で使用する油溶性色素は、好ましくは、飲食品に添加可能な可食性色素であるか、又は香粧品として人体に適用可能な色素である。
【0016】
油溶性色素としては、本発明の効果を奏する限り限定はされないが、カロテノイド色素が挙げられる。カロテノイド色素としては、カロテノイドを含む天然色素であってもよい。そのようなカロテノイド色素としては、
トマト色素、デュナリエラカロテン、ニンジンカロテン、パーム油カロテン、リコピン、フィトエン、フィトフルエン、α-カロテン、β-カロテン、等のカロテン類;
トウガラシ色素(パプリカ色素)、マリーゴールド色素、ヘマトコッカス藻色素、カプサンチン、カプソルビン、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、β-クリプトキサンチン、ビオラキサンチン、アクチニオエリスリトール、ククルビタキサンチンA、クリプトカプシン、フコキサンチン、エビ色素、オキアミ色素、カニ色素等のキサントフィル類;
アナトー色素、ビキシン、β-8'-アポ-カロテナール(アポカロテナール)、β-12'-アポ-カロテナール、これらの誘導体(低級又は高級アルコールとのエステル体等)、クロセチン、ミコラジシン等のアポカロテノイド;
上記の他、ウコン色素、クルクミン、クロロフィル等が挙げられる。これらの油溶性色素は、それぞれ単独で、または2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0017】
油溶性香料
本発明で用いられる油溶性香料(これは、脂溶性香料を包含する。)は、香気成分を含有する油溶性又は脂溶性の物質であればよく、その限りにおいて制限されない。
本発明で使用する油溶性香料は、好ましくは、飲食品に添加可能な可食性香料であるか、又は香粧品として人体に適用可能な香料である。
【0018】
前記香料の例は、
動物性又は植物性の天然原料から、不揮発性溶剤抽出、揮発性溶剤抽出、又は超臨界抽出等、或いはこれらの組合せ等により得られる抽出物;
水蒸気蒸留、又は圧搾法等により得られる精油、及び回収フレーバー等の天然香料;
化学的手法で合成された香料である、合成香料;
これらの香料を油脂及び/又は溶媒に、添加した、及び/又は溶解させた香料ベース
を包含する。
前記天然香料の形態の例は、
アブソリュート、エッセンス、及びオレオレジン等の抽出物;
コールドプレス等により得られる搾液;並びに
アルコールによる抽出物、又は、水及びアルコールの混合液による抽出物、(これら抽出物として、いわゆる、チンキ)
を包含する。
【0019】
これら香料の具体例は、
オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、及びマンダリン油等の柑橘系精油類;
ラベンダー油等の花精油類(又はアブソリュート類);
ペパーミント油、スペアミント油、及びシナモン油等の精油類;
オールスパイス、アニスシード、バジル、ローレル、カルダモン、セロリ、クローブ、ガーリック、ジンジャー、マスタード、オニオン、パプリカ、パセリ、及びブラックペパー等のスパイス類の精油類(又はオレオレジン類);
リモネン、リナロール、ゲラニオール、メントール、オイゲノール、及びバニリン等の合成香料類;
コーヒー、カカオ、バニラ、及びローストピーナッツ等の豆由来の抽出油;
紅茶、緑茶、及びウーロン茶等の茶由来のエッセンシャル類;並びに
合成香料化合物
を包含できる。
これらの香料は1種単独で使用することもできるが、通常は2種以上を任意に組み合わせて調合香料として用いられる。
本発明でいう「香料」は、単一化合物からなる香料のみならず、かかる調合香料をも包含する概念として定義される。
【0020】
油溶性生理活性物質
本発明で用いられる油溶性生理活性物質(これは、脂溶性生理活性物質を包含する。)は、生体に有用な油溶性又は脂溶性の物質であればよく、その限りにおいて制限されない。
本発明で使用する油溶性生理活性物質は、好ましくは、飲食品に添加可能な可食性物質であるか、又は香粧品として人体に適用可能な物質である。
【0021】
前記油溶性生理活性物質の例は、
油溶性薬剤;
肝油、ビタミンA(例:レチノール等)、ビタミンA油、ビタミンD(例:エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等)、ビタミンB酪酸エステル、アスコルビン酸脂肪酸エステル、ビタミンE(例:トコフェロール、トコトリエノール、トコフェロール酢酸エステル等)、及びビタミンK(例:フィロキノン、メナキノン等)等の脂溶性ビタミン類;
リモネン、リナロール、ネロール、シトロネロール、ゲラニオール、シトラール、l-メントール、オイゲノール、シンナミックアルデヒド、アネトール、ペリラアルデヒド、バニリン、及びγ-ウンデカラクトン等の植物精油類;
レスベラトロール、油溶性ポリフェノール、グリコシルセラミド、セサミン、ホスファチジルセリン、コエンザイムQ10、ユビキノール、及びα-リポ酸;
α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸等のΩ-3系脂肪酸;
並びに
リノール酸、及びγ-リノレン酸等のΩ-6系脂肪酸;植物ステロール等の機能性素材等が挙げられる。
なかでも、その好適な例は、脂溶性ビタミン、コエンザイムQ10、及びα-リポ酸;並びにα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸等のΩ-3系脂肪酸
を包含する。
【0022】
これらの油溶性生理活性物質は、それぞれ単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0023】
油性溶媒
本発明で用いられる油性溶媒は、好適に、前記油溶性素材の溶媒として使用できるもの、具体的には前記油溶性素材と相溶可能なものであることができる。
本発明で用いられる油性溶媒は、好ましくは、飲食品に添加可能な可食性物質であるか、又は香粧品として人体に適用可能な物質である。
【0024】
本発明で用いられる油性溶媒の例は、
菜種油、コーン油、パーム油、大豆油、オリーブ油、ホホバ油、ヤシ油、エレミ樹脂、及びマスティック樹脂等の植物性油脂類;
牛脂、及び豚脂等の動物性油脂類;
ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、ロジン、ダンマル樹脂、エステルガム、グリセリン脂肪酸エステル、及びトリグリセリド
等を包含する。
これらはそれぞれ単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0025】
油性溶媒の例は、好ましくは、植物性油脂類、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、グリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリドであり、より好ましくは植物性油脂類、グリセリン脂肪酸エステル、及びトリグリセリド(より好ましくは中鎖トリグリセリド(MCT))である。
【0026】
本発明の乳化組成物における油性成分の含有量は、特に制限されないが、組成物の全量に対して、例えば0.1~40質量%が挙げられ、好ましくは0.3~40質量%であり、より好ましくは0.5~35質量%、更に好ましくは0.5~33質量%、更により好ましくは0.8~33質量%、特に好ましくは1~30質量%、及び最も好ましくは1~28質量%の範囲内である。
通常、油性成分の含有量が多くなるにつれ、乳化組成物の乳化安定性が低下する傾向がある。しかし、本発明によれば、油性成分の含有量が、例えば、組成物の全量に対して、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、14質量%以上、15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上、19質量%以上、20質量%以上、21質量%以上、22質量%以上、23質量%以上、24質量%以上、25質量%以上であっても、乳化安定性に優れる乳化組成物を提供できる。
【0027】
また、油性成分として、動植物、又は微生物から溶媒抽出された油性成分を用いる場合は、これらとは異なる油性成分を用いた場合と比べて、調製される乳化組成物の乳化粒子が粗大化し、乳化安定性が低下する傾向にある。これは、動植物、又は微生物から溶媒抽出された油性成分は、原料に由来する不純物を含むためと推測される。例えば、油性成分として天然原料由来のカロテノイド色素(以下、「天然カロテノイド色素」ともいう)を含有する油性成分を用いた場合、乳化組成物の乳化粒子径が、合成のカロテノイド色素を含有する乳化組成物と比べて、粗大化し、乳化安定性が低下する傾向にある。
しかしながら、本発明によれば、油性成分として、動植物、又は微生物から溶媒抽出された油性成分を含有する場合であっても、乳化安定性に優れる乳化組成物を提供することができる。
【0028】
アセトン不溶物
前記傾向は、乳化組成物中の「アセトン不溶物」の含有量が、組成物の全量に対して、0.025質量%以上、更には0.04質量%以上、より更には0.06質量%以上、特には0.1質量%以上となる場合に特に顕著になる。
しかしながら、本発明によれば、乳化組成物中の「アセトン不溶物」の含有量が、上記含有量である場合においても、乳化安定性に優れる乳化組成物を提供することができる。
【0029】
乳化組成物中の「アセトン不溶物」の含有量は、油性成分におけるアセトン不溶物の含有量を測定し、これに、乳化組成物における、アセトン不溶物を含む油性成分の割合を乗じることで算出できる。
例えば、アセトン不溶物の含有量が1質量%である油性成分を、10質量%含有する乳化組成物であれば、乳化組成物におけるアセトン不溶物の含有量は0.1質量%であると算出できる。
【0030】
油性成分におけるアセトン不溶物の含有量は、以下に従って測定することができる。
[油性成分に含まれるアセトン不溶物 測定条件]
日本油化学会制定、「基準油脂分析試験法(2013年版)」の「4.3.1-1996 アセトン不溶物」の測定方法による。
【0031】
本発明において、乳化組成物中の「アセトン不溶物」の含有量の上限は特に制限されないが、例えば、組成物の全量に対して、10質量%、9質量%、8質量%、7質量%、6質量%、5質量%、4質量%、3質量%、2質量%が挙げられる。
【0032】
ガティガム
ガティガムは、シクンシ科ガティノキ(Anogeissus Latifolia)の樹液(分泌液)に由来する多糖類であり、増粘安定剤(食品添加物)として公知の多糖類である。本発明で使用するガティガムは商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の「ガティガムRD」を挙げることができる。
【0033】
ガティガムとしては、限定はされないが、低分子化されたガティガム(低分子ガティガム)であってもよい。低分子ガティガムの重量平均分子量は、限定はされないが、例えば、0.020×10~1.10×10とすることができ、好ましくは0.020×10~0.90×10であり、より好ましくは0.020×10~0.60×10であり、更に好ましくは0.025×10~0.50×10であり、より更に好ましくは0.030×10~0.40×10であり、特に好ましくは0.030×10~0.30×10であり、更に特に好ましくは0.040×10~0.30×10である。
【0034】
ガティガムの分子量、及びその分布は、以下の方法で測定される。
[分子量、及び分子量分布の測定方法]
分子量、及び分子量分布は、以下の条件のGPC分析で測定される。
検出器: RI
移動相: 100mM KSO
流量: 1.0ml/min
温度: 40℃
カラム: TSKgel GMPWXL 30cm (ガードPWXL)
インジェクション: 100μl
プルランスタンダード: Shodex STANDARD P-82
【0035】
低分子ガティガムの製造方法
本発明の低分子ガティガムは、例えば、以下に説明する製造方法、又はこれに類似する方法により製造できる。本発明の低分子ガティガムの製造方法は、原料であるガディガムを低分子化処理する工程を含む。原料であるガディガムとしては、商業的に入手可能なガティガムを使用できる。
市場で流通しているガティガムの重量平均分子量は、通常、1.1×10~2×10の範囲内である。原料であるガディガムとしては、目的とする分子量のガティガムが製造可能であれば特に制限されず、その一部に低分子量のガティガムを元々含有していてもよい。
当該製造方法における低分子化処理の方法は、特に限定されないが、その好適な例は、加熱分解処理、酸分解処理、及び酵素分解処理からなる群より選択される1種以上の処理方法等の、水の存在下での低分子化処理方法を包含する。
【0036】
前記加熱分解処理は、所望する重量平均分子量を有するガティガムが得られる条件を技術常識に基づいて適宜選択して、実施すればよい。
通常、処理温度が高いほど、より重量平均分子量が小さいガティガムが得られる。
当該加熱分解処理の処理温度は、具体的には、例えば、60~200℃の範囲内、及び好ましくは80~200℃の範囲内であることができる。
通常、処理時間が長いほど、より重量平均分子量が小さいガティガムが得られる。
当該加熱分解処理の処理時間は、具体的には、例えば、30秒~8時間の範囲内であることができる。なお、当該時間は、加熱分解処理の処理温度に応じて適宜選択することができる。例えば、処理温度が高い場合は、処理時間を短くするなど適宜選択できる。
加熱分解処理は、例えば、pH5以下のpH条件で、好適に実施できる。
【0037】
前記酸分解処理に用いられる酸の例は、クエン酸(これは、無水クエン酸を包含する。)、リン酸、フィチン酸、リンゴ酸、酒石酸、塩酸、酢酸、乳酸、及びアスコルビン酸を包含する。
当該酸は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
通常、処理温度が高いほど、より重量平均分子量が小さいガティガムが得られる。
当該酸分解処理の処理温度は、例えば、60~200℃の範囲内であることができる。
通常、処理時間が長いほど、より重量平均分子量が小さいガティガムが得られる。
当該酸分解処理の処理時間は、例えば、30秒~8時間の範囲内であることができる。
酸分解処理は、例えば、pH4以下の条件で、好適に実施できる。
【0038】
前記酵素分解処理に用いられる酵素の例は、セルラーゼ;マンナナーゼ;ペクチナーゼ;スクラーゼ;ヘミセルラーゼ;セルロシンAC40、セルロシンHC100、セルロシンTP25、及びセルロシンGM5(エイチビィアイ株式会社製);スミチームPX、及びスミチームAG2-L(新日本化学工業株式会社製);マセロチームA(ヤクルト薬品工業株式会社製);並びにマセレイティングエンザイムY(ヤクルト薬品工業株式会社製)を包含する。
当該酵素は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
当該酵素処理の条件(例:温度、時間、pH、及び添加物)は、使用される酵素に応じて適宜選択することができる。
【0039】
本発明の乳化組成物におけるガティガムの含有量は特に制限されないが、例えば、組成物の全量に対して、0.5質量%以上、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、及び更に好ましくは2質量%以上である。また、本発明の乳化組成物におけるガティガムの上限は、例えば、20質量%以下が挙げられ、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、更により好ましくは10質量%以下、特に好ましくは9質量%以下、特により好ましくは8質量%以下、及び最も好ましくは7.5質量%以下である。
本発明の乳化組成物におけるガティガムの含有量は、例えば、0.5~20質量%、0.5~15質量%、0.5~13質量%、0.8~20質量%とすることができ、好ましくは0.8~13質量%、より好ましくは1~13質量%、更に好ましくは1~10質量%、更により好ましくは1.5~9質量%、特に好ましくは1.5~8質量%、特により好ましくは1.5~7質量%、及び最も好ましくは2~7質量%の範囲内である。
また、本発明の乳化組成物におけるガティガムの含有量は、油性成分100質量部に対して、例えば1~1000質量部、1~800質量部が挙げられ、好ましくは3~1000質量部、より好ましくは4~1000質量部、更に好ましくは5~800質量部、更により好ましくは8~500質量部、特に好ましくは10~500質量部、及び最も好ましくは10~400質量部の範囲内である。
また、好適な一態様として、乳化組成物における油性成分の含有量が5質量%を超える場合、油性成分100質量部に対するガティガムの含有量は、3~150質量部であることが好ましく、より好ましくは4~100質量部、更に好ましくは5~80質量部、更により好ましくは8~70質量部、及び特に好ましくは10~50質量部の範囲内である。
また、好適な一態様として、乳化組成物における油性成分の含有量が5質量%以下である場合、油性成分100質量部に対するガティガムの含有量は、例えば15~1000質量部が挙げられ、20~1000質量部であることが好ましく、より好ましくは30~800質量部、更に好ましくは50~600質量部、更により好ましくは50~500質量部、特に好ましくは60~500質量部、及び最も好ましくは60~450質量部の範囲内である。
【0040】
サポニン
サポニンはサポゲニンをアグリコンとする配糖体の総称である。本発明ではサポニンとして、サポニンを多く含む植物抽出物を使用することもできる。植物抽出物は、例えば、キラヤ抽出物、ユッカ抽出物、高麗人参抽出物、大豆抽出物、茶種子抽出物、及びエンジュ抽出物等が挙げられる。
【0041】
本発明の乳化組成物におけるサポニンの含有量は、前記ガティガム100質量部に対して0.05~30質量部の範囲内である。ガティガム100質量部に対するサポニンの含有量が0.05質量部を下回ると、乳化組成物の乳化安定性が不十分となり、及び乳化粒子が大きくなる傾向が強い。同様に、ガティガム100質量部に対するサポニンの含有量が30質量部を上回る場合も乳化組成物の乳化安定性が低下する。
本発明では、前記サポニンの含有量の範囲内において、乳化組成物における油性成分の含有量に応じて、適宜、サポニンの含有量を調整することができる。
例えば、乳化組成物における油性成分の含有量が0.1~5質量%である場合、ガティガム100質量部に対するサポニンの含有量は、好ましくは0.05~5質量部であり、より好ましくは0.08~4質量部、更に好ましくは0.1~3質量部、更により好ましくは0.1~2質量部、特に好ましくは0.15~1.8質量部、特により好ましくは0.15~1.6質量部、及び最も好ましくは0.15~1.2質量部である。
一方、乳化組成物における油性成分の含有量が5質量%を超える場合、ガティガム100質量部に対するサポニンの含有量は、例えば、1~30質量部、好ましくは1.5~30質量部、より好ましくは1.5~29質量部、更に好ましくは2~28質量部、更により好ましくは2.5~28質量部、特に好ましくは2.8~25質量部、特により好ましくは3~20質量部、及び最も好ましくは4~18質量部の範囲内である。
【0042】
本発明の乳化組成物におけるサポニンの含有量は、特に制限されないが、好ましくは、0.0005~2質量%の範囲内であり、乳化組成物における油性成分の含有量に応じて、適宜、サポニンの含有量を調整することができる。
例えば、乳化組成物における油性成分の含有量が0.1~5質量%である場合、乳化組成物におけるサポニンの含有量は、好ましくは0.0005~0.1質量%であり、より好ましくは0.001~0.08質量%、更に好ましくは0.005~0.08質量%、更により好ましくは0.008~0.07質量%、及び最も好ましくは0.01~0.05質量%の範囲内である。
また、乳化組成物における油性成分の含有量が5質量%を超える場合、乳化組成物におけるサポニンの含有量は、好ましくは0.01~3質量%であり、より好ましくは0.05~2.5質量%、更に好ましくは0.08~2質量%、更により好ましくは0.08~1.5質量%、及び最も好ましくは0.1~1.2質量%の範囲内である。
【0043】
本発明の乳化組成物におけるサポニンの含有量も特に制限されないが、前記油性成分100質量部に対する、サポニンの好ましい含有量は0.01~10質量部の範囲内であり、乳化組成物における油性成分の含有量に応じて、適宜、サポニンの含有量を調整することができる。油性成分100質量部に対する、サポニンのより好ましい含有量は、0.1~10質量部であり、更に好ましくは0.2~8質量部、更により好ましくは0.25~7質量部、特に好ましくは0.3~6質量部、特により好ましくは0.3~5質量部、及び最も好ましくは0.3~4質量部である。
【0044】
乳化粒子径
乳化組成物における乳化粒子のメジアン径(体積基準)は、限定はされないが、4μm以下とすることができ、好ましくは2.5μm以下であり、より好ましくは2μm以下であり、更に好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。上記のメジアン径(体積基準)は、限定はされないが、水、ガティガム及びサポニンを含有する水相と、油性成分を含有する油相とを、3000rpmで3分間撹拌する等の条件により混合した場合に得られることが好ましい。
当該メジアン径(体積基準)の下限は特に制限されず、目的とする乳化組成物に応じて適宜、調整することが可能である。当該メジアン径(体積基準)の下限は、例えば、0.05μm以上が挙げられる。
本明細書において、乳化組成物における乳化粒子のメジアン径(体積基準)は、以下により測定される。Microtrac MT3000EX-II(マイクロトラック・ベル社)等のレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて、試料の粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。得られた累積粒度分布曲線における、50%累積時の微小粒子側から見た粒子径で測定される粒度分布における累積体積50容量%の体積累積粒径(D50)が、乳化組成物における乳化粒子のメジアン径である。乳化組成物における乳化粒子のメジアン径(体積基準)は、後述の実施例の項目において詳細に記載される。
【0045】
本発明の乳化組成物は、乳化安定性に優れるため、高圧ホモジナイザー、ホモディスパー、ホモミキサー、ポリトロン式撹拌機、コロイドミル、ナノマイザー等を用いた均質化処理により、更に乳化粒子のメジアン径を小さくすることが可能である。高圧ホモジナイザーを用いた均質化処理は、限定はされないが、ホモジナイザー(15MR-8TA、MANTON-GAULIN社製)を350kg/cm、4回の条件で行うことが可能である。
均質化処理を行った場合の乳化組成物における乳化粒子のメジアン径(体積基準)は、限定はされないが、2.5μm以下とすることができ、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1.8μm以下であり、更に好ましくは1.6μm以下、更により好ましくは1.3μm以下、特に好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.8μm以下である。
均質化処理を行った場合の乳化組成物における乳化粒子の3.6μm以上の粒子径の頻度は、限定はされないが、60%以下とすることができ、好ましくは40%以下であり、より好ましくは15%以下であり、更に好ましくは10%以下であり、更により好ましくは8%以下であり、更により好ましくは5%以下であり、特に好ましくは3%以下であり、最も好ましくは2%以下である。限定はされないが、本発明の乳化組成物は、長期保存安定性に優れるため、60℃で7日間保存した場合であっても上記の乳化組成物における乳化粒子の3.6μm以上の粒子径の頻度を維持できることが好ましい。
均質化処理を行った場合の乳化組成物における乳化粒子の1.3μm以上の粒子径の頻度は、限定はされないが、60%以下とすることができ、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下であり、更に好ましくは15%以下であり、更により好ましくは10%以下であり、特に好ましくは8%以下であり、特により好ましくは5%以下であり、殊更に好ましくは3%以下であり、最も好ましくは2%以下である。限定はされないが、本発明の乳化組成物は、長期保存安定性に優れるため、60℃で7日間保存した場合であっても上記の乳化組成物における乳化粒子の1.3μm以上の粒子径の頻度を維持できることが好ましい。
【0046】
乳化組成物中のアセトン不溶物の含有量が0.025質量%以上である乳化組成物を調製する場合、又は、油性成分として天然カロテノイド色素を用いる場合、メジアン径が2μm以下である乳化組成物を調製し難くなる。しかし、本発明によれば、前記場合であっても、当該乳化組成物の乳化粒子のメジアン径が、例えば、4μm以下、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2μm以下、更に好ましくは1.5μm以下、更により好ましくは1.3μm以下、特に好ましくは1μm以下である乳化組成物を提供することができる。
また、乳化組成物中の油性成分の含有量が5質量%を超える場合においても、乳化粒子が上記メジアン径を有する、乳化組成物を調製することができる。
この場合、乳化組成物におけるメジアン径の下限値は特に制限されないが、例えば、0.3μm以上を挙げることができる。
【0047】
また、本発明によれば、乳化粒子のメジアン径(体積基準)がより小さい乳化組成物、例えば、乳化組成物のメジアン径が好ましくは0.3μm未満、より好ましくは0.25μm以下、更に好ましくは0.2μm以下である乳化組成物を調製することも可能である。
従来、ガティガムを用いた乳化組成物を水性溶媒に溶解又は分散した場合は、濁りが付与される場合があった。しかしながら、本発明の1つの実施態様によれば、水性媒体に透明に溶解又は分散する、透明タイプの乳化組成物を提供することができる。透明タイプの乳化組成物は、例えば、油性成分の含有量を10質量%以下、好ましくは5質量%以下とすること等により、調製することができる。
この場合、乳化組成物におけるメジアン径の下限値は特に制限されないが、例えば、0.05μm以上を挙げることができる。
【0048】
多価アルコール
本発明の乳化組成物は、好ましくは、多価アルコールを含有することができる。これにより、乳化組成物の保存安定性を向上させることができる。
本発明で使用できる多価アルコールの例としては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール(D-ソルビトール)、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、オリゴトース、果糖ブドウ糖液糖、及びシュクロース等が挙げられる。
これらの多価アルコールは、それぞれ単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
本発明において多価アルコールは、好ましくは、プロピレングリコール、若しくはグリセリン、又はこれらの組合せである。
【0049】
本発明の乳化組成物における多価アルコールの含有量は特に制限されず、目的とする乳化組成物に応じて適宜調整できる。乳化組成物における多価アルコールの含有量は、例えば、組成物の全量に対して、10質量%以上が挙げられ、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、及び更に好ましくは25質量%以上である。多価アルコールの含有量の上限も特に制限されないが、例えば、組成物の全量に対して、60質量%以下、好ましくは58質量%以下、より好ましくは55質量%以下、及び更に好ましくは50質量%以下である。よって、乳化組成物における多価アルコールの含有量は、例えば、組成物の全量に対して、10~60質量%、好ましくは、15~58質量%、より好ましくは、20~55質量%、更に好ましくは20~50質量%、及び最も好ましくは25~50質量%である。
乳化組成物に多価アルコールを含有させると、乳化組成物の乳化粒子が大きくなる場合があるが、本発明によれば、乳化粒子が上記範囲のメジアン径を有する乳化組成物を提供することができる。
【0050】
pH
本発明の乳化組成物のpHは、配合成分の種類や含有量、剤形等により適宜調整され、限定はされないが、例えば、2~8の範囲、2.5~7.5の範囲、又は3~7の範囲であることができる。また、本発明の乳化組成物が液体状である場合は、pHが2~4、好ましくはpHが2.5~3.5の範囲内であることが望ましい。乳化組成物のpHを前記範囲に調整するために、必要に応じて有機酸及び/又は無機酸を使用することができる。有機酸及び/又は無機酸の種類は特に制限されない。
かかる有機酸及び/又は無機酸の例としては、クエン酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸、乳酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、及びピロリン酸等が挙げられる。これらの有機酸及び/又は無機酸は、それぞれ単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
本発明において好ましい有機酸及び/又は無機酸は、クエン酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸、及び乳酸からなる群から選択される1種以上である。
【0051】
本発明の乳化組成物には、本発明の効果を妨げない範囲において、その他の任意成分として、水溶性ビタミン類、増粘安定剤、抗酸化剤、キレート剤、又は酸化防止剤等を含んでいても良い。また、本発明の乳化組成物は、本発明の効果を妨げない範囲において、エタノールを含有することができる。
【0052】
本発明の乳化組成物には、本発明の効果を妨げない範囲において、その他の乳化剤を含んでいても良い。例えば、好ましい乳化剤の一例として、レシチン(レシチン、酵素分解レシチン、及び酵素処理レシチンを含む)等が挙げられる。
【0053】
乳化組成物の製造方法
本発明は、以下に記載の乳化組成物の製造方法にも関する。
水、油性成分、ガティガム、及びサポニンを含有し、且つ、前記サポニンの含有量が、前記ガティガム100質量部に対し、0.05~30質量部である混合液を調製する工程、及び、
前記混合液を均質化処理する工程、
を含有する、乳化組成物の製造方法。
【0054】
本発明の製造方法では、水、ガティガム、サポニン、及び油性成分を含む乳化組成物が調製できる方法であれば、前記混合液の調製工程及び均質化処理工程の手段、方法、及び条件は特に制限されない。例えば、水、ガティガム、サポニン、及び油性成分の混合処理により、乳化組成物が調製できる場合は、前記混合液の調製工程及び均質化処理工程は、一工程(同工程)であることができる。
【0055】
均質化処理は、ホモジナイザー(例:高圧ホモジナイザー、ホモディスパー、ホモミキサー、ポリトロン式撹拌機、コロイドミル、ナノマイザー等)等の乳化機を用いた均質化処理であることができる。当該均質化処理の条件は、用いる乳化機の種類等に応じて、適宜決定すればよい。
【0056】
本発明の乳化組成物の剤形は、特に制限されず、乳化組成物が適用される飲食品、香粧品(これは化粧料を含む)、医薬品、又は医薬部外品等の形態の種類等により、液体状、粉末状、顆粒状、又は錠剤状等に適宜調製され得る。例えば、本発明の乳化組成物は、粉末化手段によって、乳化組成物中の粒子を粉末状にすることができる。粉末化手段は常法に従って実施でき、例えば、噴霧乾燥又は凍結乾燥等の手段をとることができる。粉末化には、適当な担体等を添加してもよい。また、本発明の乳化組成物は、前記粉末化したものを再度、水性溶媒に分散させた液体形態であってもよい。
【0057】
本観点から、本発明は、以下の態様を有する、粉末状、顆粒状、又は錠剤状の組成物の製造方法にも関する;
水、油性成分、ガティガム、及びサポニンを含有し、且つ、
前記サポニンの含有量が、前記ガティガム100質量部に対し、0.05~30質量部である混合液を調製する工程、
前記混合液を均質化処理し、乳化組成物を調製する工程、及び
前記乳化組成物を粉末化処理する工程、
を含有する、粉末状、顆粒状、又は錠剤状組成物の製造方法。
【0058】
かくして得られる、粉末状、顆粒状、又は錠剤状組成物は、水性媒体への分散性や、分散後の乳化安定性に優れるという利点を有する。粉末化処理は特に制限されず、常法に従って実施できる。粉末化処理としては、例えば、噴霧乾燥法、凍結乾燥法等が挙げられる。
【0059】
本発明の1つの実施態様として、本発明の組成物が上記粉末状、顆粒状、又は錠剤状に製剤化される場合、組成物におけるガティガムの含有量は、例えば、組成物の全量に対して、0.01~30質量%、0.5~30質量%、1~30質量%、3~30質量%、5~30質量%、7~30質量%、10~30質量%、13~30質量%、15~30質量%、1~20質量%、3~20質量%、5~20質量%、7~20質量%、10~20質量%、13~20質量%、15~20質量%、1~15質量%、3~15質量%、5~15質量%、7~15質量%、10~15質量%、13~15質量%とすることが可能である。
【0060】
本発明の1つの実施態様として、本発明の組成物が上記粉末状、顆粒状、又は錠剤状に製剤化される場合、組成物におけるサポニンの含有量は、例えば、組成物の全量に対して、0.0001~5質量%、0.0005~5質量%、0.001~5質量%、0.005~5質量%、0.01~5質量%、0.03~5質量%、0.05~5質量%、0.1~5質量%、0.2~5質量%、0.01~3質量%、0.03~3質量%、0.05~3質量%、0.1~3質量%、0.2~3質量%、0.01~1質量%、0.03~1質量%、0.05~1質量%、0.1~1質量%、0.2~1質量%とすることが可能である。
【0061】
本発明の1つの実施態様として、本発明の組成物が上記粉末状、顆粒状、又は錠剤状に製剤化される場合、組成物における油性成分の含有量は、例えば、組成物の全量に対して、0.01~40質量%、0.05~40質量%、0.3~40質量%、1~40質量%、3~40質量%、5~40質量%、7~40質量%、10~40質量%、1~30質量%、3~30質量%、5~30質量%、7~30質量%、10~30質量%、1~20質量%、3~20質量%、5~20質量%、7~20質量%、10~20質量%とすることが可能である。
【0062】
本発明の1つの実施態様として、本発明の組成物が上記粉末状、顆粒状、又は錠剤状に製剤化される場合、組成物における水の含有量は、例えば、組成物の全量に対して、0.005~15質量%、0.01~15質量%、0.05~15質量%、0.1~15質量%、0.5~15質量%、1~15質量%、0.05~12質量%、0.1~12質量%、0.5~12質量%、1~12質量%、0.05~10質量%、0.1~10質量%、0.5~10質量%、1~10質量%とすることが可能である。
【0063】
限定はされないが、本発明においては、有機溶媒を使用しないで乳化組成物を製造することも可能である。使用しないで乳化組成物の製造が可能な有機溶媒の種類としては、例えば、アセトン、シクロヘキサン、1-プロパノール、2-プロパノール、ジクロロメタン等が挙げられる。
【0064】
用途
本発明の乳化組成物、又は前記粉末状、顆粒状、若しくは錠剤状の組成物は、油性成分の種類等に応じて、各種用途に用いることができる。例えば、油性成分が色素である場合、色素製剤として適用でき、油性成分が香料である場合、香料製剤として適用できる。油性成分が生理活性物質である場合、生理活性物質製剤として適用できる。また、本発明の乳化組成物、又は前記粉末状、顆粒状、若しくは錠剤状の組成物は、飲料等の水性媒体に適度な曇りを付与する曇り剤(別名、濁り剤、クラウディ)として適用することもできる。
【0065】
本発明の乳化組成物、又は前記粉末状、顆粒状、若しくは錠剤状の組成物は、好適な態様として色素製剤が挙げられ、より好適な態様としてカロテノイド色素製剤が挙げられる。
色素製剤(乳化カロテノイド色素製剤を包含する)における色素含量は特に制限されないが、例えば、色価(E10% 1cm)が100~800、好ましくは200~700、及びより好ましくは300~600の範囲内である。
本明細書中、「色価(E10% 1cm)」とは、色素の分野の当業者が通常理解する通り、色素製剤等の色素含有物の可視部での極大吸収波長における吸光度を10w/v%溶液の吸光度に換算した数値(E10% 1cm)で表される。
本発明において、当該色価(E10% 1cm)は、日本国の食品添加物公定書 第9版「18.色価測定法」に従って決定される数値である。
【0066】
水性組成物
本発明はまた、前記乳化組成物、又は前記粉末状、顆粒状、若しくは錠剤状の組成物を含有する水性組成物に関する。
当該水性組成物の種類は、特に制限されないが、例えば、飲食品、香粧品、医薬品、医薬部外品、衛生用日用品、又は飼料、好ましくは飲食品、及びより好ましくは飲料であることができる。
当該水性組成物における、本発明の乳化組成物、又は前記粉末状、顆粒状、若しくは錠剤状の組成物の含有量は当該組成物の種類及び用途等によって異なることができるが、例えば、0.001~5質量%の範囲内、又は0.01~1質量%の範囲内であることができる。
【0067】
本発明はまた、前記乳化組成物、又は前記粉末状、顆粒状、若しくは錠剤状の組成物を含有する飲食品にも関する。
飲食品の種類は特に制限されないが、具体的には、当該飲食品の例は、
乳飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、果実飲料(例:果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果汁入り炭酸飲料、果肉飲料)、野菜飲料、野菜及び果実飲料、リキュール類等のアルコール飲料、コーヒー飲料、粉末飲料、スポーツ飲料、サプリメント飲料等の飲料類;
紅茶飲料、緑茶、ブレンド茶等の茶飲料類(なお、飲料類と茶飲料類は、「飲料」に包含される。);
カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー(例:多層ゼリー)、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;
アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、及び氷菓等の冷菓類;
チューインガム及び風船ガム等のガム類(例:板ガム、糖衣状粒ガム);
コーティングチョコレート(例:マーブルチョコレート等)、風味を付加したチョコレート(例:イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等)等のチョコレート類;
ハードキャンディー(例:ボンボン、バターボール、マーブル等)、ソフトキャンディー(例:キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等)、糖衣キャンディー、ドロップ、及びタフィ等のキャンディー類;
クッキー、ビスケット等の菓子類;
コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;
セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ(例:焼肉のたれ、焼き鳥のたれ、蒲焼きのたれ)、ソース、ラー油等の液体調味料類;
バター、バタークリーム等の上記以外の調味料類;
ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ、シロップ等のジャム類;
赤ワイン等の果実酒;
シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;
漬物等の農産加工品(例:キムチ、紅生姜、梅干し、さくら漬け、沢庵);
玉子焼き等の惣菜製品;
ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;
水産練り製品、魚卵製品等の水産加工品(例:カニ風味蒲鉾、味醂干し、一夜干し、魚卵着色、海老着色);及び
パン、麺(例:ノンフライ麺、中華麺、乾麺、茶蕎麦)、饅頭生地、米等の穀類加工食品(例:ビビンバ炒飯);
を包含する。
当該飲食品の例は、これらの製品の半製品、及び中間製品等も包含する。
【0068】
「香粧品」としては、スキンローション、口紅、日焼け止め化粧品、メークアップ化粧品、などを挙げることができる。
「医薬品」としては、各種錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ剤、うがい薬、などを挙げることができる。
「医薬部外品」としては、栄養助剤、各種サプリメント、歯磨き剤、口中清涼剤、臭予防剤、養毛剤、育毛剤、皮膚用保湿剤、などを挙げることができる。
「衛生用日用品」としては、石鹸、洗剤、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、歯磨き剤、入浴剤、などを挙げることができる。
「飼料」としては、キャットフード、ドッグフード等の各種ペットフード、;観賞魚用や養殖魚用の飼料、;などを挙げることができる。
【0069】
乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法(乳化安定性向上方法)
本発明はまた、以下の態様を有する、乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法にも関する。
水、油性成分、及びガティガムを含有する乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法であり、前記乳化組成物に、サポニンを含有する工程を有し、且つ、
前記サポニンの含有量が、前記ガティガム100質量部に対し、0.05~30質量部である、方法。
【0070】
本方法は、前記本発明の乳化組成物の実施態様、及び調製方法と同じ、又は類似することができ、及び前記本発明の乳化組成物の調製方法を参照して理解され得る。
【0071】
本発明における乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法は、好ましくは、乳化組成物に前記サポニンを含有する工程が、乳化粒子形成前に実施される態様を包含する。
本発明における乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法は、以下の好適な態様を包含する。
前記ガティガムを含有する乳化組成物の乳化安定性を向上させる方法であって、
1)水、油性成分、前記ガティガム、及び前記サポニン
を含有する混合液を調製する工程;並びに
2)前記混合液を均質化処理し、乳化組成物を調製する工程
を含む方法。
【実施例
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
【0073】
以下、各表中の組成を示す数値は、特に記載がない場合、質量%を表すことができる。
材料
パプリカ色素(1):パプリカオレオレジン、色価10% 1cm=2240、アセトン不溶物1.25質量%
パプリカ色素(2):パプリカオレオレジン、色価10% 1cm=2400、アセトン不溶物7.26質量%
マリーゴールド色素:マリーゴールドオレオレジン、色価10% 1cm=4600、アセトン不溶物5.4質量%
ヘマトコッカス藻色素:ヘマトコッカス藻色素、色価10% 1cm=2820、アセトン不溶物10.69質量%
抽出カロテン(ニンジンカロテン):キャロットオレオレジン、色価10% 1cm=250、アセトン不溶物9.37質量%
ガティガム :重量平均分子量 118万
低分子ガティガム:重量平均分子量 15万
サポニン:キラヤサポニン(サポニン含量12.5質量%、「キラヤニンC-50-MT(G)」、丸善製薬株式会社)、又はキラヤサポニン(サポニン含量7.5質量%、「キラヤエキスS」、丸善製薬株式会社)
グリセリン脂肪酸エステル:主要脂肪酸オレイン酸、HLB=15、デカグリセリン脂肪酸エステル
【0074】
低分子ガティガムは国際公開第2018/062554号に記載の方法に準じて調製した。重量平均分子量は、以下条件のGPC分析で測定した。
検出器: RI
移動相: 100mM K2SO4
流量: 1.0ml/min
温度: 40℃
カラム:TSKgel GMPWXL 30cm(ガードPWXL)
インジェクション:100μl
プルランスタンダード:Shodex STANDARD P-82
【0075】
乳化安定性試験
乳化組成物について、以下の項目を評価した。
・D50μm、又は粒子径D50:メジアン径(μm)
・3.6μm↑又は3.6μ↑ :粒子径が3.6μm以上の粒子径の頻度(%)
・1.3μm↑又は1.3μ↑ :粒子径が1.3μm以上の粒子径の頻度(%)
・0.1%E(720nm) :試料(乳化組成物)の0.1%水希釈液の720nmにおける濁度
【0076】
(乳化粒子径:メジアン径、粒子径の頻度)
前記メジアン径又は粒子径の頻度は、以下に示す条件で、乳化組成物の粒度分布を測定した。
<条件>
粒度分布測定装置:Microtrac MT3000EX-II(マイクロトラック・ベル社)
測定方法 :屈折率:1.81、測定範囲:0.021~2000μm、粒度分布:体積基準
【0077】
(濁度)
乳化組成物の乳化粒子径を評価する指標の一つとして、濁度がある。例えば、乳化粒子径が1μm以下である場合、下記濁度の値が小さい程、乳化粒子径が小さいことを意味する。
本試験例では、乳化組成物における濁度を測定することで、乳化組成物の安定性を評価した。
前記「0.1%E(720nm)」は、各試料(乳化組成物)をイオン交換水で0.1%水溶液に希釈し、当該希釈液の720nmの濁度を以下に示す条件で測定した。
<条件>
分光光度計:分光光度計V-660DS、日本分光社
測定条件 :石英セル、10mm×10mm、吸光度(Abs)
【0078】
実験例1:乳化組成物(乳化色素組成物)の製造方法
乳化組成物は各表に示す処方に従って製造した。
表1に示す油相材料を混合、及び100℃に加温し、油相を調製した。水相(1)に油相を添加し、3000rpmで3分間撹拌し、混合液を調製した。混合液に水相(2)を添加し、1000rpmで1分間撹拌した。次いで、高圧ホモジナイザー(ホモジナイザー15MR-8TA、MANTON-GAULIN社製)で均質化処理した(条件350kg/cm、4回)。
乳化組成物中のアセトン不溶物の含有量は0.21質量%である。本実験例1で調製した乳化組成物(実施例及び比較例)のpHは2.5~3.5の範囲内である。
【0079】
【表1】
【0080】
乳化組成物(油相及び水相(1)混合液、及び均質化処理後の組成物)について、乳化安定性試験を行った。乳化安定性試験は、項目「D50μm」、「3.6μm↑」、及び「1.3μm↑」を評価した。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
ガティガムを用いた比較例1-1の組成物は、混合液調製時に油が分離した。次いで、撹拌を続けたが、油相及び水相が混ざりきらず、乳化不可と判断された。
一方、ガティガム、及びガティガム100質量部に対して特定量のサポニンを含有する実施例1-1~1-3は、油相及び水相の混合のみで2μm以下のメジアン径を有する乳化組成物が得られた。更に、均質化処理を行うことで、メジアン径がより小さい乳化組成物が調製された。これにより、ガティガム及び、ガティガムに対して特定量のサポニンを含有することで、乳化安定性に優れる乳化粒子を調製できることが確認された。
【0083】
表3に示す処方に従って、上記実施例1-1等と同様に、乳化組成物を調製した。
【0084】
【表3】
【0085】
乳化組成物(油相及び水相(1)混合液、及び水相(2)混合後の組成物)について、乳化安定性試験を行った。結果を表4に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
比較例1-2及び1-3は、乳化組成物におけるガティガム含量を増加させた例である。比較例1-4及び1-5は、ガティガムに他の乳化剤(リゾレシチン、又はグリセリン脂肪酸エステル)を各々併用した例である。
これらは、表4に示すように、混合液又は水相(2)混合後の乳化状態が不十分であり、高い乳化安定性を有する組成物を提供できなかった。
【0088】
実験例2:乳化組成物(乳化香料組成物)の製造方法
乳化組成物は各表に示す処方に従って製造した。
表5に示す油相材料を混合し、油相を調製した。水相(1)に油相を添加し、3000rpmで3分間撹拌し、混合液を調製した。当該混合液を高圧ホモジナイザー(ホモジナイザー15MR-8TA、MANTON-GAULIN社製)で均質化処理した(条件500kg/cm2、5回)。次いで、水相(2)を添加し、1000rpmで1分間撹拌した。
本実験例2で調製した乳化組成物(実施例及び比較例)のpHは2~4の範囲内であり、アセトン不溶物含量は0.025質量%未満である。
【0089】
【表5】
【0090】
乳化組成物(水相(2)混合後の組成物)について、乳化安定性試験を行った。乳化安定性試験は、項目「0.1%E(720nm)」を評価した。結果を表6に示す。
【0091】
【表6】
【0092】
表6より、ガティガムに特定量のサポニンを併用することで、乳化組成物の濁度が低下することが判明した。また、実施例の中で最も濁度が大きい、実施例2-1について乳化粒子径(メジアン径)を測定したところ、その値は0.3μm未満であった。
乳化組成物の乳化粒子径が例えば、1μm以下の場合は、濁度0.1%E(720nm)の数値は乳化粒子径と比例する。従って、本結果より、ガティガムに特定量のサポニンを併用することで、乳化組成物の乳化粒子径が小さくなることが示された。
【0093】
実験例3:乳化組成物(乳化色素組成物)の製造方法
乳化組成物は各表に示す処方に従って製造した。
表7に示す油相材料を混合、及び80℃に加温し、油相を調製した。水相(1)に油相を添加し、3000rpmで3分間撹拌し、混合液を調製した。混合液に水相(2)を添加し、3000rpmで1分間撹拌した。次いで、高圧ホモジナイザー(ホモジナイザー15MR-8TA、MANTON-GAULIN社製)で均質化処理した(条件560kg/cm、4回)。
【0094】
【表7】
【0095】
乳化組成物(油相及び水相(1)混合液、及び均質化処理後の組成物)について、乳化安定性試験を行った。乳化安定性試験は、項目「D50μm」、「3.6μm↑」、及び「1.3μm↑」を評価した。結果を表8に示す。
【0096】
【表8】
【0097】
ガティガム、及びガティガム100質量部に対して特定量のサポニンを含有する実施例3-1~3-7は、油相及び水相の混合のみで4μm以下のメジアン径を有する乳化組成物が得られた。更に、均質化処理を行うことで、メジアン径がより小さい乳化組成物が調製された。本結果より、ガティガム及び、ガティガムに対して特定量のサポニンを含有することで、乳化安定性に優れる乳化粒子を調製できることが確認された。
【0098】
実験例4:乳化組成物(乳化香料組成物)の製造方法
乳化組成物は表9に示す処方に従って製造した。
表9に示す油相材料を50℃まで加熱し、油相を調製した。水相(1)に油相を添加し、3000rpmで3分間攪拌し、混合液を調製した。当該混合液に水相(2)を添加、及び3000rpmで1分間攪拌した。次いで、高圧ホモジナイザー(ホモジナイザー15MR-8TA、MANTON-GAULIN社製)で均質化処理した(条件560kg/cm、4回)。
【0099】
【表9】
【0100】
乳化組成物(均質化処理後の組成物)について、乳化安定性試験を行った。乳化安定性試験は、項目「D50μm」、「1.3μm↑」、及び「0.1%E(720nm)」を評価した。結果を表10に示す。
【0101】
【表10】
【0102】
表10より、ガティガムに特定量のサポニンを併用することで、乳化組成物の粒子径が小さくなり、及び、これに伴い乳化組成物の濁度が低下することが示された。なお、実施例4における乳化組成物中のアセトン不溶物は0.025質量%未満であった。
【0103】
実験例5 乳化組成物による飲食品の着色(カニ風味蒲鉾)
実施例1-2の乳化組成物を用いて、カニ風味蒲鉾を着色した。
すり身(白身魚すり身(株式会社 大冷製)60質量部に対し、氷水30質量部、及び実施例1-2の乳化組成物希釈液10質量部を加え、乳鉢で均一になるまで混合し、着色混合物を調製した。着色混合物における、実施例1-2の乳化組成物含量は2.1質量%である。カニ風味蒲鉾(無着色部)の上面に前記着色混合物を塗布し、95℃で15分間蒸した後、真空パック包装した。次いで、90℃で1分間の加熱殺菌(ボイル殺菌)を行った。
【0104】
着色後のカニ風味蒲鉾の写真像を図1に示す。図1に示されるように、色ムラが生じることなく、目的とする色調に均一に着色されたカニ風味蒲鉾が得られた。
【0105】
実験例6 乳化組成物による飲食品の着色(ビビンバ炒飯)
実施例1-2の乳化組成物を用いて、着色されたビビンバ炒飯を調製した。
表11の処方に従い、水洗した精米に、水、及び実施例1-2の乳化組成物を混合し、炊飯した。次いで、表12の処方に従いビビンバ炒飯を調製した。
【0106】
【表11】
【0107】
【表12】
【0108】
着色後のビビンバ炒飯の写真像を図2に示す。炊飯工程は、加熱及び対流が生じる過酷な製造工程である。しかしながら、本発明品(実施例1-2の乳化組成物)によれば、米が均一に着色されたビビンバ炒飯を調製することができた(図2)。
【0109】
実験例7 乳化組成物による飲食品の着色(キムチ)
実施例1-2の乳化組成物を用いて、着色されたキムチを調製した。
白菜漬68gに対して実施例1-2の乳化組成物を0.2g添加、及び混合して、着色キムチを調製した。
【0110】
着色後のキムチの写真像を図3に示す。図3に示されるように、漬物は塩分濃度が高く、色ムラや色素の凝集等が生じることなく、所望の色調に均一に着色されたキムチが調製された。
【0111】
実験例8 乳化組成物による飲食品の着色(中華饅頭)
表13の処方に従い、実施例1-2の乳化組成物を用いて、着色された中華饅頭を調製した。砂糖を溶解した温水に、ドライイーストを添加して、5~10分間予備発酵させた。当該イースト液を、薄力粉に少しずつ添加し、そぼろ状になるまで混合した。実施例1-2の乳化組成物を添加後、表面に光沢が出るまで生地を捏ね、次いで、1~2時間発酵させた。
【0112】
発酵後の中華饅頭の写真像を図4に示す。図4に示されるように、色ムラがなく、均一に所望の色調に着色された中華饅頭が調製された。
【0113】
実験例9:乳化組成物(乳化色素組成物)の製造方法
乳化組成物は各表に示す処方に従って製造した。
表13に示す油相材料を混合し、及び80℃まで加熱し、油相を調製した。水相(1)に油相を添加し、3000rpmで3分間撹拌し、混合液を調製した。混合液に水相(2)を添加し、3000rpmで1分間撹拌した。次いで、高圧ホモジナイザー(ホモジナイザー15MR-8TA、MANTON-GAULIN社製)で均質化処理した(条件500kg/cm、4回)。
乳化組成物中のアセトン不溶物の含有量は1.8質量%である。本実験例9で調製した乳化組成物(実施例及び比較例)のpHは2.5~3.5の範囲内であった。
【0114】
【表13】
【0115】
乳化組成物(油相、水相(1)及び水相(2)混合液、及び均質化処理後の組成物)について、乳化安定性試験を行った。乳化安定性試験は、項目「D50μm」、「3.6μm↑」、及び「1.3μm↑」を評価した。結果を表14に示す。
【0116】
【表14】
【0117】
低分子ガティガムのみを用いた比較例9-1の組成物は、混合液調製時に油が分離した。次いで、攪拌を続けたが、油相及び水相が混ざりきらず、乳化不可と判断された。
一方、低分子ガティガム、及び低分子ガティガム100質量部に対して特定量のサポニンを含有する実施例9-1及び9-2は、油相及び水相の混合のみで2μm以下のメジアン径を有する乳化組成物が得られた。更に、均質化処理を行うことで、メジアン径がより小さい乳化組成物が調製された。本結果より、低分子ガティガム、及び低分子ガティガムに対して特定量のサポニンを含有することで、乳化安定性に優れる乳化粒子を調製できることが確認された。
【0118】
実験例10:粉末化試験
表15に示す処方に従い、乳化組成物を製造し、粉末化試験を実施した。
(粉末状の乳化組成物の製造)
油相材料を混合、及び80℃まで加熱し、油相を調製した。水相(1)に油相を添加し、3000rpmで3分間撹拌し、混合液を調製した。次いで、高圧ホモジナイザー(ホモジナイザー15MR-8TA、MANTON-GAULIN社製)で均質化処理した(条件500kg/cm、4回)。均質化処理後の液に、粉末化基材としてデキストリンを含有する水相(2)を添加し、1500rpmで1分間撹拌した。得られた混合液を噴霧乾燥機(スプレードライヤー、APV Nordic Anhydro社)を用いて入口温度:160℃、出口温度:85-90℃、20000~25000rpmの条件で噴霧乾燥し、粉末状乳化組成物を得た。
【0119】
粉末状乳化組成物におけるパプリカ色素含量は18.94質量%(理論値)、ガティガム含量は5.5質量%(理論値)、及びサポニン含量は0.425質量%(理論値)である。
【0120】
【表15】
【0121】
乳化組成物(油相及び水相(1)混合液、及び均質化処理後の組成物)、及び粉末状の乳化組成物について、乳化安定性試験を行った。粉末状の乳化組成物は、イオン交換水で希釈した水溶液に対して乳化安定性試験を行った。乳化安定性試験は、項目「D50μm」、「3.6μm↑」、及び「1.3μm↑」を評価した。結果を表16に示す。
【0122】
【表16】
【0123】
表16に示すように、ガティガム、及び特定量のサポニンを併用することで、乳化粒子径が小さく、且つ、粉末化後の再分散性に優れる乳化組成物を調製できることが確認された。
図1
図2
図3
図4