IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エースクラップ アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図1
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図2
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図3
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図4
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図5
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図6
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図7
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図8
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図9
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図10
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図11
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図12
  • 特許-パズルタイプ接続部を有するリトラクタ 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】パズルタイプ接続部を有するリトラクタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20221006BHJP
   A61F 2/91 20130101ALI20221006BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61B17/02
A61F2/91
A61B17/34
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019517400
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017074509
(87)【国際公開番号】W WO2018060253
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】102016118605.8
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514129877
【氏名又は名称】エースクラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ビーガー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】クリングザイス,ズザンネ
(72)【発明者】
【氏名】グリム,クリスチアン
(72)【発明者】
【氏名】ゼルパ,マリオ
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-147049(JP,A)
【文献】特表2005-519672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/02
A61F 2/04
A61F 2/82
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リトラクタ機能を有するステントであって、少なくとも、チューブ形状のシースの拡張セクションを形成する、より高い半径方向の柔軟性を有する第一のセクションと、チューブ形状のシースの強化セクションを形成する、より低い半径方向の柔軟性を有する第二のセクションとに周方向に分割された、半径方向に柔軟に拡張可能なチューブ形状のシースを備え、より高い半径方向の柔軟性を有する前記第一のセクションは、前記周方向において、より低い柔軟性を有する前記第二のセクションに直接隣接し、該ステントは、該ステントの軸方向に数のセグメントに更に分割され、各々の該セグメントは、強化セクションおよび拡張セクションを有し、かつ前記複数のセグメントは、セグメント長短縮のための名目上の分離点を形成する軸方向接続セクションを介して、それぞれの強化セクションにおいて結合される該ステントにおいて、前記セグメントは、前記強化セクションを介して少なくとも一つの軸方向接続セクションによって互いに接続され、前記軸方向接続セクションは、前記複数のセグメントのうちの第一のセグメントにおける少なくとも一つの軸方向に配向された凹みと、前記第一のセグメントに隣接する前記複数のセグメントのうちの第二のセグメントにおける少なくとも一つの対応する挿入されたセクションまたは軸方向に配向された突起とによって形成され、前記少なくとも一つの対応する挿入されたセクションまたは軸方向に配向された突起が前記少なくとも一つの軸方向に配向された凹みに篏合され、かつ前記少なくとも一つの軸方向に配向された凹み、及び前記少なくとも一つの挿入されたセクションまたは軸方向に配向された突起は、各々が軸方向に作用するアンダーカット係合を形成し、該アンダーカット係合によって、前記第一のセグメント及び第二のセグメントは、前記軸方向かつ前記周方向に互いに形状的に接続されるが、前記アンダーカット係合の領域における前記第一のセグメント及び第二のセグメントの半径方向の相対移動によって分離されるように構成されることを特徴とするリトラクタ機能を有するステント。
【請求項2】
前記少なくとも一つの挿入されたセクションまたは軸方向に配向された突起は、対称的であり、前記軸方向に作用するアンダーカットを形成する狭窄を形成し、前記少なくとも一つの軸方向に配向された凹みは、前記狭窄に対して相補的であるように設計されることを特徴とする請求項1に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項3】
前記第一のセグメント及び第二のセグメントは、前記少なくとも一つの挿入されたセクションまたは軸方向に配向された突起と、前記少なくとも一つの軸方向に配向された凹みとの間の分離ラインに沿って、半径方向へ前記ステントの回転軸に向けられ、且つ、半径方向に作用するアンダーカットを形成するように互いに対して斜めに設定された半径方向切断エッジを備え、それによって、前記少なくとも一つの挿入されたセクションまたは軸方向に配向された突起は、局所的な相対移動によって前記少なくとも一つの軸方向に配向された凹みから半径方向外方へのみ解放されるように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項4】
前記第一のセグメント及び第二のセグメントは、前記少なくとも一つの挿入されたセクションまたは軸方向に配向された突起と前記少なくとも一つの軸方向に配向された凹みとの間の分離ラインに沿って切断エッジを備え、前記切断エッジは、半径方向に反作用するアンダーカットを形成するように構成され、該半径方向に反作用するアンダーカットは、反対方向にのみ解放されるように構成され、それによって、前記軸方向接続セクションは、方向に生じる塑性変形および/または弾性変形によってのみ解放されることができることを特徴とする請求項1または2に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項5】
前記半径方向に反作用するアンダーカットは、前記少なくとも一つの軸方向に配向された凹みの先端エッジで前記第のセグメントに形成されるフック形状の部分表面によって作り出され、前記フック形状の部分表面は、前記第二のセグメントの側面内に突出することを特徴とする請求項3または4に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項6】
前記少なくとも一つの挿入されたセクションまたは軸方向に配向された突起と前記少なくとも一つの軸方向に配向された凹みとの間の分離ラインは少なくとも一つの軸方向接続セクションを備え、前記分離ラインは、一体的に結合されるように、少なくとも一つの点でウエブによって架橋され、前記ウエブは、追加の所定の破断点として働くことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項7】
前記ステントの先端に配置される前記複数のセグメントのうちの先端セグメントは、該先端セグメントに近接して配置される前記複数のセグメントのうちの一つ以上の基端セグメントよりも長い軸方向延長部を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項8】
前記少なくとも一つの挿入されたセクションまたは軸方向に配向された突起と前記少なくとも一つの軸方向に配向された凹みとの間の分離ラインは、0.01mmから0.1mmの範囲内にある隙間幅を有し、前記チューブ形状のシースは、0.5mmから1.2mmの範囲内にある壁厚を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項9】
少なくとも二つの軸方向接続セクションが、前記複数のセグメントのうちの少なくとも一つのセグメントに、強化セクションにおいて、直径方向に対向しまたは周方向に均一に離間して形成されることを特徴とする請求項1に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項10】
前記拡張セクション、および前記強化セクションは、チューブ形状ブランクのレーザ切断または水噴射切断によって作り出されることを特徴とする請求項1から9いずれか一項に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項11】
前記拡張セクションと前記強化セクションは、前記周方向に交互に配置され、且つ同じタイプのセクションは、前記軸方向に互いに直線状に配列されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項12】
前記チューブ形状のシースは、より高い半径方向の柔軟性を有する少なくとも二つの拡張セクションを備え、且つより低い半径方向の柔軟性を有する少なくとも二つの強化セクションを備え、前記チューブ形状のシースは、前記周方向において前記少なくとも二つの拡張セクション及び前記少なくとも二つの強化セクションに分割されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項13】
前記少なくとも二つの拡張セクションはそれぞれ、複数の離間したバンドを備え、前記少なくとも二つの強化セクションはそれぞれ、固体の板構造を備えていることを特徴とする請求項12に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【請求項14】
隣接する二つのセグメントの前記強化セクションは、前記軸方向において、互いに対して直線に沿って直線状に配列されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のリトラクタ機能を有するステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の一般名称に係るステントリトラクタまたはリトラクタステントに関し、特に、セグメント構造によって(前記軸方向における)個別の長さ調整を可能とする使い捨てリトラクタステントに関する。
【背景技術】
【0002】
リトラクタは、一般的に、手術野/切り口を開いておくまたは前記手術野/切り口を拡張するための外科用器具/コンポーネントである。この器具/コンポーネントは、患者の外側から前記手術野内に挿入され、拡張要素が互いから離間される。その結果、結合組織および/または筋肉組織は、(半径方向に)離れるように押圧され、したがって、前記手術野が拡張される。必要な拡張力は、必要に応じて手術台に取り付けられた保持アームを介して体外から、または前記拡張要素に力を印加するスプリングおよび/または支持要素によって体内かから印加される。
【0003】
たとえば、米国特許第6187000号明細書(特許文献1)は、拡張可能な先端を有するこの種のリトラクタを開示している。ここで、ステンレス金属製の一種の箔が、チューブ/漏斗になるように巻かれ、前記隣り合うまたは重なり合う箔エッジが、互いにリベット止めされる。第一の、軸方向端側のリベットは、旋回ヒンジを形成するが、第二の、軸方向に離間された端側リベットは、前記フォイルに形成されるスロット内に案内され、前記フォイルが巻かれたときに、前記第一のリベット周りに旋回しながら部分的に前記箔ロールの前記直径を増加するまたは減少するために前記全周にわたって延びる。これによって、シリンダおよび漏斗形状が形成されることができる。
【0004】
この種のステントリトラクタのための他の構造体は、米国特許第8372131号明細書(特許文献2)から既知となっている。この構造体は、好ましくは、記憶特性を有する均質なワイヤメッシュに加工された材料よりなるステントチューブまたはホースの構成に備え、それによって、前記ワイヤメッシュの内側および/または外側が、たとえば、PTFT製の流体密の膜で被覆される。前記ステントチューブは、最初に、膨張バルーンによって囲まれかつ先端に単一の中央に位置する釘または骨螺子の形態の一種の骨アンカーを有するトロッカーシャフトからなる膨張セットに取り付けられる。
【0005】
前記既知のステントリトラクタの体内配置のために、前記トロッカーシャフトは、前記患者の体内に挿入され、前記釘または螺子を使用して患者の骨(たとえば、椎骨)に固定される。次に、前記膨張バルーンが膨張されて、前記ステントリトラクタを半径方向に広げ、前記周囲の患者組織を半径方向に均一に離間するように押圧する。前記拡張されたステントリトラクタを残しながら前記骨アンカーを緩めかつ前記トラッカーシャフトを引っ込めた後に、接近径を有する患者への接近が、好ましくは、最小侵襲性外科用器具で手術を実行するために生成され、前記外科用器具が、前記ステントリトラクタによって画定されるチャネル内に挿入されることができる。
【0006】
国際公開第2014/022094号(特許文献3)から、開創装置を形成するための別個の支持要素を有する編物構造体が一般的に既知となっている。この国際公開第2014/022094号によれば、チューブ状に形成される編んだ組織が、拡張力を前記周囲の患者組織に印加するために一種の別個の支持フレームによって半径方向外方へ押圧される。前記支持フレームは、前記編んだ組織を半径方向外方へ貫通する多数のロッドも有し、これらのロッドは、前記患者の組織にこれらのロッド自体を一時的に固定し、したがって、前記患者の体に前記構造体を軸方向に保持する。
【0007】
最後に、米国特許出願公開第2010/0312189号明細書(特許文献4)は、異なる長さの幾つかの折り目またはビード(および、したがって、異なる半径方向の柔軟性を有するセクション)が互いに接続され、チューブ状要素の壁で部分的に重なるように生成され、前記折り目またはビードによって、前記チューブ状要素が拡張および収縮されることができるリトラクタを開示している。
【0008】
しかしながら、当該リトラクタシステムの場合、当該リトラクタシステムが、全体的に多数のコンポーネントを有するので、製造が比較的に高価であることが分かっている。これが、前記リトラクタシステムが使い捨て物品として使用されることができないまたは限定的にしか使用されることができない理由である。この結果、標準のリトラクタシステムの再調整のために時間の大きな浪費および高いコストを生じることになる。
【0009】
加えて、前記既知の従来の技術の解決策では、個別に適応させることまたは長さを調節することができず、異なる用途に備えて多数の異なるコンポーネントを必要としている。
【0010】
リトラクタ機能を有するステントは、独国特許出願公開第102015100933号明細書(特許文献5)から既知になっており、当該ステントは、半径方向に柔軟な拡張可能なシースを備え、当該シースは、異なる半径方向の柔軟性を有する少なくとも二つの一体的に製造されたセクションに前記周方向へ細分割され、かつ所定の切断点を介して一体的に結合された態様で接続されかつ分離されることができるいくつかの軸方向セグメントを有する。このように、このようなステントリトラクタは、長さを柔軟に調整することができかつその場で適応させることができる。
【0011】
しかしながら、前記軸方向セグメントが所定の切断点を介してのみ接続されるそのような解決策は好ましくないことが分かっており、理由は、手術中に十分な安定性を得て、意図しない前記ステントの座屈や膨張を確実に防止するために、前記所定の切断点が比較的に大きく設計されなければならないので、分離のために必要な力を増し、場合によっては、その場で前記ステントの前記長さを調整するための特殊な工具を必要とするからである。その場での切断中に前記ステントに印加される力が大きすぎると、前記ステントを囲む前記組織を傷付ける可能性がある。加えて、先の鋭い破断エッジが前記所定の切断点に生じる可能性があり、それによって、傷害のリスクをもたらす。
【0012】
以下に記載の本発明は、上記の前記リトラクタ機能を有する前記ステントに基づくが、従来の技術で公知の解決策と同じ前記接続要素の安定性を持って前記軸方向セグメントのより単純で、好ましくはバリのないその場での分離を可能にすると同時にそのような分離によって前記患者に対する外傷の前記リスクを減少する新たな接続と分離の概念を開発することを優先の課題としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第6187000号明細書
【文献】米国特許第8372131号明細書
【文献】国際公開第2014/022094号
【文献】米国特許出願公開第2010/0312189号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015100933号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の技術的現状に鑑み、本発明の目的は、使い捨て物品(使い捨て概念)として好適なまたは設計される汎用的なステント(リトラクタ)を提供することである。
【0015】
さらに、本発明の好ましい目的は、特に、最小の侵襲性での接近(たとえば、腰椎、胸部および頸椎への接近、頭蓋への適用)のために、望ましいように理論的に形成されかつ適応(円形、長円形等)させることができるリトラクタシステムを提供することであり、当該トラクタシステムは、また、特にその場で、前記リトラクタの挿入後に、長さ調節することを容易にすることが好ましい。
【0016】
さらに、この発明は、前記リトラクタが、極めて単純な工具(たとえば、クランプ、プライヤー)を使用してまたは手で比較的に小さな力でなおかつバリや切断エッジからの傷害のリスクを生じることなく前記リトラクタの長さを調節することができることを好ましい課題としている。
【0017】
最後に、本発明の他の好適な目標は、前記ステントが前記製造プロセス中に一個の接続部として製造される、またはどのようなアセンブリプロセスも必要とすることなくブランクから製造されることができることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題および目的は、少なくとも請求項1に記載の技術的特徴を有するステントリトラクタを有する本発明に従って解決/達成される。前記ステントリトラクタの有利なさらなる展開は、従属する請求項の主題である。
【0019】
したがって、本発明の核をなす思想は、前記ステントリトラクタを多数の軸方向/長手方向セグメント(すなわち、前記軸方向に互いに分離されることができるセグメント)に分割することであり、前記セグメントには、前記軸方向に突出し/退却しかつ少なくとも軸方向に作用するアンダーカットが一体的に形成されかつ前記パズルピースの原理に従って互いに篏合することができるようになっている。
【0020】
パズルピースは、概して平らな要素であり、前記要素は、当該要素のエッジに突起と凹みを有するように輪郭が付けられ、好ましくはカードボード材料から作られ、前記パズルピースは、突起と凹みを組み立てることによって互いにしっかりと接続されることができる。前記パズルピースは、前記接続されたパズルピースが引き裂かれることができなくなるように互いに相互作用する頭状の突起並びに湾状の(蹄鉄形状の)凹みを有することが好ましい。
【0021】
本発明は、好ましくは薄板状のまたは薄膜状の(薄肉の)ステントまたはリトラクタセグメントのフロントエッジに対応する輪郭を形成して前記セグメントを軸方向に互いに一緒に分離可能に保持するために、(一体的接続部なしで)前記突起および凹みが互いに嵌り合う立体パズルピースのようなものを形成することによってこの接続原理を使用している。もし、次に、前記セグメントが互いから再び分離しようとする場合、前記協働する突起と凹みは、結果として破断エッジを生じることなく、前記ステントの前記軸方向に対して垂直に押し離すだけでよい。
【0022】
前記パズルピースの原理にしたがって前記セグメント接続部の意図しない緩みを防止するために、前記リムやエッジにおける前記突起および凹みは、互いに対して反対方向に面取りされる/斜角がつけられることができることが好ましい。これは、前記ステントの前記軸方向に対して垂直な二つのセグメントの変位が、二つの半径方向に対向する突起-凹み接続部の前記反対方向に配向され、したがって、反対方向に作用する面取りによって阻止されるように前記突起および凹みを形成する輪郭の前記リム/エッジが互いに対して斜角がつけられることを意味している。換言すれば、二つの半径方向に対向する突起-凹み接続部のエッジは、半径方向内方に面取りされ(半径方向内方にテーパが付けられ)、それによって、二つの結合されたセグメントの半径方向への変位を阻止する。
【0023】
しかしながら、代わりに、二つの半径方向に対向する突起‐凹み接続部(これらは、少なくとも、二つの隣り合うセグメントの軸方向ロックのために必要である)は、互いに対して正確に180°で対向せず、したがって、互いに結合された二つのセグメントが横にずらされると引っ掛るように設けられてもよい。最後に、代わりに、好ましくは等しい円周方向距離に前記セグメントに形成される少なくとも三つの突起‐凹み接続部が設けられるように規定することができる。
【0024】
より具体的には、本発明の第一の態様によれば、リトラクタとしての使用に適応構成させたステントが提案される。このために、前記ステントは、前記周方向から見たときに、異なる(半径方向の)柔軟性を有する少なくとも二つのセクションに分割される、半径方向に柔軟で拡張可能なチューブ状壁構造体を有する。より高い柔軟性を有する前記セクションすなわち拡張セクションは、前記ステントの前記直径を変化可能にし、したがって、前記ステントに前記半径方向に望ましいように(たとえば、円形、長円形等)変形される/拡張される前記能力を付与するように働き、他方、より低い柔軟性の前記ステントすなわち前記強化セクションは、少なくとも特定の半径方向への外部の半径方向の力に対して前記ステントの安定性を増し、したがって、前記組織を広げられた状態に保持するのに十分な前記ステントの剛性を維持するのに役立つ。前記ステント(個別のステントセグメント)の前記好ましい一体設計は、たとえば、金属薄板のレーザ切断または水噴射切断による迅速で容易な製造方法を意味している。これによって、使い捨て概念の経済的で実用的な実施が可能となる。
【0025】
本発明によれば、前記ステントは、前記軸方向に少なくとも二つの分離可能なセグメント(長手方向セグメント)に分割され、前記少なくとも二つの分離可能なセグメントの各々は、少なくとも一つの接続要素/接続ユニット(突起‐凹み接続部)によって他方に結合される。これらの接続要素のうちの少なくとも一つは、パズルタイプの接続部/リンクとして形成され、前記少なくとも一つの接続要素は、第一の軸方向セグメントが少なくとも一つの凹みまたは凹面状のパズルセクションを有し、第二の隣接する軸方向セグメントの挿入されるセクション/部分表面または凸面状のパズルセクションが前記少なくとも一つの凹みまたは凹面状パズルセクションに挿入され、かつ前記二つの対応するパズルセクションは、前記軸方向かつ周方向に形状接続によって結合されるが、前記半径方向へは互いに分離されることができるということによって、構造的に/構成的に特徴付けられる。
【0026】
相互に接続される二つの隣り合うステントセグメント同士間の交差ラインまた分離エッジ(インターフェース)の前記進路は、少なくとも一つのアンダーカット部位を形成し、当該少なくとも一つのアンダーカット部位を介して、前記隣り合うセグメントは、形状接続によって前記軸方向および前記周方向の両方で相互接続されるが、前記隣り合うセグメントは、前記アンダーカット部位の前記エリアにおいて局所的に前記二つのセグメントの互いに対する半径方向の相対移動によって取り外されることができる、と言うこともできる。
【0027】
上記のように、前記パズルタイプの接続部が前記半径方向へ局所的に分離されることしかできずかつこれらの局所的半径方向は、互いに対して角度が付けられることができるから、前記ステントの前記チューブ状壁構造部の湾曲によって、そのようなパズルタイプの接続部は、特に二つ以上のそのような接続セクションが存在する場合、自動ロックを生じることができる。これによって、分離されるべき一つのセグメントが、前記ステントの弾性および/または塑性変形によって、および/または前記セグメントを互いに対して行ったり来たり繰り返し移動させることによってのみ分離可能にすることができる。他方、前記ステントに作用する軸方向の力およびねじり力は、前記パズルタイプの接続部によって形成される形状篏合によって十分に伝達されることができ、このことは、前記ステントが手術野に挿入されるときおよび/または手術部位が開いた状態を保つときの前記ステントの前記安定性にとって特に重要になり得る。このようなパズルタイプの接続部は、前記ステントの前記湾曲を使用して二つのセグメント間に形状接続部を形成し、それによって、前記個別のパズルタイプの接続部が前記接続点での局所的半径方向移動(好ましい方向への移動)によって容易に分離されることができるので、比較的に容易な分離可能性を有する前記接続点の高い安定性が提供される。このようにして、手によるまたは極めて単純な工具での前記ステントの柔軟な長さ適応のための単純な分離概念が実施されることができる。
【0028】
一個に製造されるコンポーネントの分離可能接続要素に対する従来の技術で既知となっている最も一般的な解決策である所定の破断点または一体型接続部とは対照的に、前記接続部の前記強度および剛性は、本発明に係るパズルタイプの接続部を有する材料の厚みに比例しない。より高い剛性または強度を、所定の破断点において達成しようとする場合、前記所定の破断点の前記直径が増加されなければならず、したがって、前記一体型接続部を分離するために印加されねばならない前記力も増加される。前記所定の破断点の特定の材料の厚みから、前記一体的に結合された接続部を分離するための切断工具を使用することさえ必要かもしれない。他方では、本発明に係るパズルタイプの接続部は、このように接続された前記セグメントが、特殊な分離工具を使用することなく、同じまたはより伝え易い負荷によってより容易に分離されることができるという利点を有する。加えて、一体的に結合された接続部が切断されるときには鋭利なエッジやバリが形成されるかもしれないリスクがあり、前記鋭利なエッジやバリがその場でバリ取りされることができず、このことは、患者およびユーザに対する傷害のリスクを意味するが、本発明に係るパズル構造には当てはまらない。
【0029】
好適な実施形態によれば、前記凹みおよび前記挿入されたセクションは、対称的であってもよく、前記挿入されたセクションは、前記軸方向における形状篏合を創り出すために近位で狭くなるまたはボトルネックを形成することが好ましいかもしれない。前記対応する挿入されたセクションとともにこのように適応され凹みは、さね継ぎ接続部状の設計と呼ばれることができ、たとえば、旧来のパズルタイプの接続部の前記断面形状におけるそのような接続要素は、あり継ぎ形、すなわち、特に好ましくはT-スロットと舌状部接続の形態に設計されることができる。
【0030】
他の好適な一実施形態によれば、前記切断エッジは、少なくとも一つのパズルタイプの接続部に沿って半径方向に前記回転軸に向けることができる。前記用語「切断エッジ」は、一般的には、前記ステントの前記チューブ状側面に形成された全ての(部分的な)表面のうちの側方エッジ表面を指している。前記切断エッジの前記回転軸に対するそのような位置合わせは、前記切断エッジが互いに対して平行または斜めに配置されず、たとえば、レーザビーム切断により、当該レーザビームは、常に、標準として前記回転軸に向けられることができるので、より単純な製造が可能となるという結果を生じる。前記切断エッジ同士間の前記隙間幅は、前記チューブの壁厚よりも比較的小さくなるように選択されることができることが好ましく、それによって、半径方向におけるアンダーカットが、前記切断エッジの前記設定角度によって創り出されることができ、前記アンダーカットによって、前記パズルタイプの接続部の前記エリアにおける前記ステントの前記セグメントは、相対的な半径方向移動によってのみ分離されることができ、前記パズルタイプの接続部の前記挿入されたセクションは前記周方向に隣接する前記部分的な表面に対して、半径方向外方へ案内される。換言すれば、好ましい方向への分離のみが本実施形態によって可能である。前記切断エッジのそのような配向は、前記パズルタイプの接続部の意図しない緩みを発生し難くする。前記結果として生じるアンダーカットの前記サイズは、前記切断エッジ間の前記隙間幅と前記ステントの前記壁厚とを介して調整されることができる。前記隙間幅は、比較的に小さな壁厚(約0.5mmから1.2mm、好ましくは0.7mmから1mm)でも十分なアンダーカットを創り出すことができるように比較的に小さい(約0.01mmから0.1mm、好ましくは、約0.05mm)ように選択されることが好ましく、前記パズルタイプの接続部はなおも手によって緩められることができる。
【0031】
安定性をさらに増すために、パズルタイプの接続部内の前記切断エッジは、反作用表面が創り出され、当該反作用表面は、当該反作用表面を解放するために反対方向に移動されなければならないように少なくとも一つのパズルタイプの接続部を有するさらなる実施形態にしたがって設計することができる。パズル上で対となった部分的な表面に異なるアンダーカットを有することが好ましい。たとえば、前記パズルタイプの接続部に沿う前記切断エッジの一部分は、半径方向内方への移動によってのみ解放されることができるが、前記残りの切断エッジは、半径方向外方への移動によってのみ解放されることができる。このような実施形態は、前記個別のパズルタイプの接続部が、前記切断エッジによって形成された前記半径方向アンダーカットに打ち勝つための前記パズル要素の弾性変形または塑性変形によってのみ解放されることができるので、前記パズルタイプの接続部の緩みをさらに抑制する。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、パズルタイプの接続部は、前記周方向における二つの隣接するセグメントの前記部分的表面が前記それぞれの他方のセグメントの前記側面に交互に係合する/突出し、このようにして反作用表面を創り出すように設計されてもよく、それによって、前記切断エッジは、この場合であっても、前記ステントの前記回転軸方向に向けられることができ、それによって、より容易な製造を促進する。
【0033】
本発明の好適な一実施形態によれば、少なくとも一つのパズルタイプの接続部は、前記挿入されたセクションの前記基端の狭窄が、前記凹みの前記先端エッジに形成された二つのフック形状の要素によって生成されるように設計されることができ、したがって、前記二つのフック形状の要素は、前記挿入されたセクションを有する前記第二のセグメントの前記表面内に突出し、したがって、前記切断エッジが前記回転軸に向けられるときでも、上記の実施形態に従う反作用表面、したがって、自動ロック効果を生じる。
【0034】
さらなる一実施形態によれば、前記パズルタイプの接続部は、一体的に結合された接続部/所定の破断点と組み合わせることができる、すなわち、前記パズルタイプの接続部に沿う前記切断ラインは、前記接続要素をさらに安定化しかつ前記パズルタイプの接続部の意図しない傾きを防止するために、ウエブによって少なくとも一点で一体的に架橋されることができる。ここで、前記ウエブ(所定の破断点)は、前記所定の破断点の切断/分離を容易にするために、たとえば、0.01mmから0.1mm、好ましくは、約0.05mmの直径/ウエブ幅を有するように比較的に小さくなるように選択することができる。
【0035】
このように、前記用途の前記要請により、必要に応じて、前記反作用アンダーカットおよび/または所定の破断点を前記元のパズルタイプの接続部に追加することによって前記接続部の前記安定性を増すことができる異なるタイプのパズルタイプの接続部が提案される。
【0036】
本発明の他の一実施形態によれば、前記リトラクタステントは、当該リトラクタステントの先端に前記軸方向により長い連続するセグメントおよび当該リトラクタステントの基端に多数のより短い分離可能なセグメントを有していてもよい。前記手術部位に最初に挿入される前記先端の長いセグメントに対しては、より高い強度および/または剛性が、前記軸方向の連続性によって得ることができ、他方、前記ステントリトラクタの挿入後に前記手術部位から突出するこれらの基端のセグメントは、当該ステントリトラクタを適切な長さに短くするまたは当該ステントリトラクの長さを柔軟に適応させるために単純に分離されることができる。
【0037】
好適な一実施形態によれば、前記ステントは、一個のセグメント当たり少なくとも二つの接続要素を有することができ、当該少なくとも二つの接続要素は、力の均一な流れを確保しかつ軸方向負荷を印加したときに、その結果として前記患者および/または前記ユーザへ傷害を与えることになりかねない望ましくない座屈のリスクを最小にするために、直径方向に対向して、または円周方向に均一に分布させることができる。
【0038】
本発明の好適な一設計によれば、前記拡張セクションは、各々が軸方向に離間された、好ましくは、弾性または塑性的に変形可能な多数の拡張要素からなり、前記弾性または塑性的に変形可能な多数の拡張要素の各々が前記周方向に延在するアコーディオンワイヤから形成されると規定される。これによって、前記拡張セクションの前記エリアおよび前記強化セクションと前記パズルタイプの接続部のエリアの両方において、たとえば、(閉じた)チューブ外形から打ち抜きまたは切断、好ましくは、レーザ切断または水噴射切断によって前記ステントの前記壁構造体が製造されることができ、前記壁構造体は、引き続きバリ取りが行われることができる。このように、製造は単純でかつコスト効果がよいので、使い捨て製品に適している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明を、添付の図面を参照し好適な例示の実施形態を使用して以下でより詳細に説明する。
図1】本発明の第一の好適な例示の実施形態に係るステントの表示である。
図2】同じ実施形態の側面図である。
図3】前記第一の好適な実施形態に係るステントの断面図である。
図4】前記第一の好適な実施形態に係るステントの他の断面図である。
図5】前記第一の好適な実施形態に係る壁構造体の平坦なパターンを示す。
図6】前記第一の好適な実施形態に係る前記パズルタイプの接続部の細部を示す。
図7】第二の好適な実施形態に係る壁構造体の平坦なパターンを示す。
図8】前記第二の好適な実施形態に係る前記パズルタイプの接続部の細部を示す。
図9】反作用アンダーカットを有する第三の実施形態に係るパズルタイプの接続部の細部を示す。
図10】第三の実施形態に係るパズルタイプの接続部の断面図である。
図11】前記第三の実施形態に係るパズルタイプの接続部の他の断面図である。
図12】反作用アンダーカットを有する第四の実施形態に係るパズルタイプの接続部の細部を示す。
図13】反作用アンダーカットを有する前記第四の実施形態に係るパズルタイプの接続部の細部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1から図5にしたがって、本発明の第一の好適な実施形態に係るステント(リトラクタ)1の前記壁構造体は、前記周方向から見て低剛性を有する二つの周セクション2(以降、拡張セクション/要素と呼ばれる)および比較的に高い剛性を有する二つの周セクション4(以降、強化セクション/要素と呼ばれる)からなり、これらの周セクション2および4は、互いに対して交互に前記周方向に配置され、かつ前記軸方向に直線的に配置されている。
【0041】
原則として、本発明に係る前記ステント1は、チューブ形状またはホース形状を有し、同一または類似の剛性の前記周セクションが、直径方向に互いに対向している。また、前記ステント1は一体的に製造されている、すなわち、前記個別の周セクション同士が一体的に結合されている。
【0042】
前記比較的薄肉のステントチューブ(約0.5から1.5mm)は、レーザ切断または水噴射切断によって上記の周セクションに分割されるのが好ましい。しかしながら、打ち抜きやフライス加工等の他の加工技術を使用して以下で説明する前記壁構造体を製造することができることに留意すべきである。要求事項および意図する目的/適用部位により、前記初期の直径(前記構造的位置での、すなわち、拡張されていないときの前記ステントチューブの内径)は、たとえば、10から30mmの範囲内であることができる。
【0043】
前記ステント1は、その基本的に標準の血管ステント(Coroflex)から引き継いだ拡張セクション2に壁構造体を本質的に有する。これは、前記ステント1が、少なくとも前記ステントの拡張セクション(拡張要素)2の領域において多数の軸方向に離間し、好ましくは平行なバンド6から形成され、当該バンド6は、前記周方向に蛇行して、または蛇腹状に延在し、したがって、前記拡張セクションの前記蛇腹形状の領域に前記半径方向に柔軟な予備拡張部を形成することを意味している。
【0044】
前記安定性を増すために、前記硬い方の周セクション(強化セクション)4は、前記周方向から見たときに、二つの拡張セクション2の間に(交互に)配置されている。前記強化セクション(強化要素)4は、実質的に閉じた、好ましくは矩形の板セクションによって形成され、当該矩形の板セクションは、当該矩形の板セクションの基本形状が前記軸方向に見て、樋やトレイのように湾曲しており、かつチャネル形状であり、さらに半径方向に広がらないかほんのわずかに広がることが意図されている。
【0045】
また、図1から図5から分かるように、本発明に係る前記ステント/リトラクタ1は、いくつかの軸方向に離間/分離した(円形/リング)セグメント8、8´、8´´からなり、前記セグメント8、8´、8´´は、各々が上記のような前記四個の周セクションからなり、当該円形セグメント8は、接続要素10によって(一体的ではなく)前記強化セクション4を介して互いに接続されている。このセグメント設計は、前記ステントの直径が半径方向に拡張されたときに、前記ステントの軸方向の長さは、前記個々のセグメント8、8´、8´´のみが半径方向に拡張されるために、実質的に同じままであるという利点を有する。さらに、前記接続要素10は、手でまたは極めて単純な工具、たとえば、プライヤーやクランプで容易に取り外すことができるので、前記ステント1の手術中の長さ調整が可能である。
【0046】
図6に示されるように、前記接続要素10は、第一のセグメント8´の軸方向エッジ(フロントエッジ)に配置された凹み/切り抜き18および隣接する第二のセグメント8の対応する挿入されたセクション/突起16によって形成される。この例示の実施形態では、前記凹みは、実質的に矩形であり、当該凹みの先端の側面エッジに二つのフック形状の部分表面/セクション22を有することが好ましく、前記二つのフック形状の部分表面/セクション22は、前記挿入されたセクション16と軸方向に形状篏合を創り出す。パズルタイプの接続部の前記形状におけるこれらの接続要素10によって、前記軸方向および前記周方向における前記二つの隣接するセグメントの形状篏合が作り出されるが、前記接続部は、前記半径方向における前記挿入されたセクション16の移動によって取り外し可能なままである。
【0047】
図3および図4に係る前記横断面図に特に示されているように、前記ステントの前記突起/後退セクションにおける前記半径方向切断エッジは、前記回転軸Rに向けて配向されかつ当該回転軸Rに位置合わせされている。その結果、前記周方向に離間された、各突起/後退セクションの前記半径方向切断エッジ24は、互いに対して斜めに設定されており、壁厚に対する隙間幅の適切に選択された比率で、半径方向に作用するアンダーカットを形成するので、特定のセクションが、画定された好ましい方向(半径方向内方)(矢印で指示)にのみ取り外されることができる。前記第一のセグメント8´の前記フック形状の部分表面22が前記第二のセグメント8の領域内に突出していること、または前記第二のセグメント8の相補的フック形状の凹みによって受容されていることにより、前記フック形状の部分表面22の周りに、反作用半径方向アンダーカット14、14´が前記第二のセグメント8(図4参照)の前記切断エッジ24に形成される状況になり、したがって、前記第二のセグメント8は、この領域における前記材料の塑性変形および/または弾性変形によってこれらの半径方向アンダーカット14、14´に打ち勝つことによってのみ前記パズルタイプの接続部から解放されることができ、この変形は、約0.7mmから1mmの対応する壁厚によってほとんど苦労せずに可能である。
【0048】
図1図2および図5は、リトラクタ機能を有する本発明に係るステントが、当該ステントが当該ステントの先端により長い軸方向セグメント8´´を有することができるように一実施形態にしたがって組み立てられることができることを示しており、前記軸方向セグメント8´´は最初に前記患者に挿入され、前記セグメントセクション8´´-1、8´´-2および8´´-3の幾つかの蛇行する拡張バンド6がS字形状の接続セクション7を介して前記軸方向に一体的に結合されるように接続されることができ、セグメント8´´において直列に接続されたときに拡張セクション2として作用する。これによって、連続的強化セクション4´´と組み合わせて、前記先端セグメント8´´にパズルタイプの接続部要素10を介して取り外し可能に接続/結合される前記より短いセグメント8、8´より高い安定性が与えられ、このことは、前記先端セクションが、前記手術部位への挿入中により高い力に曝される可能性があり、かつ現場では、前記手術部位から最終的に突出するこれらの基端セグメントのみが分離されなければならないため有用であろう。
【0049】
使用のために、リトラクタ機能を有する本発明に係るステント1は、例えば、トロッカーを使用して、手術部位に挿入されることができ、当該トロッカーの除去後に、前記手術部位への接近のために開いたままにできる。前記ステント1の個別のセグメント8、8´、8´´は、個別に拡張されることができる。拡張後に、前記ステント1の基端に突出するセグメント8、8´、8´´は、単純な手段でかつほとんど苦労せずに分離することができ、前記ステント1は、適切な長さにすることができる。
【0050】
図7および図8に示される他の実施形態によれば、接続要素10は、上記のパズルタイプの接続部に加えて、前記凹み18と前記挿入されたセクション16との間に一体的に結合された所定の破断点を有していてもよく、当該破断点は、言わばウエブや橋のように前記セクション8、8´間を前記分離ライン12で架橋する。このように、前記接続部のより一層高い安定性が達成でき、それによって、前記パズルタイプの接続部によって確立される前記好ましい方向を利用する前記接続部は、同様の安定性を有する所定の破断点当たり単に一体的に結合された接続部よりも手でより容易に取り外すことができる。前記所定の破断点は、たとえば、0.01mmから0.1mm、好ましくは、約0.05mmの直径を有するように設計することができる。
【0051】
図9から図13に示されるさらなる実施形態によれば、追加の反作用軸方向アンダーカット14、14´が、前記切断ビーム/取り外し工具を選択的に制御することによって前記切断エッジに作り出されることもできる。このように、たとえば、前記軸方向に延在する切断エッジ24は、前記挿入されたセクション16が半径方向外方にしか解放されることができないようにパズルタイプの接続部に沿って互いに対して設定されることができ(図10)、他方、前記切断エッジ24は、前記挿入されたセクション16が半径方向内方にしか解放されることができないように前記周方向に互いに対して設定されることができ(図11)、それによって、前記アンダーカット14、14´は、互いを抑制し、前記接続部を一層安定させる。したがって、前記挿入されたセクション16は、そのような実施形態において弾性変形または塑性変形によってのみ前記パズルタイプの接続部から解放されることができる。前記横断面図は、前記半径方向アンダーカットが、互いに対して角度が付けられたエッジにより実質的に楔形のアンダーカットを形成することを明瞭に示している。
【0052】
図12に示されるように、前記半径方向アンダーカット14、14´の位置合わせは、自動ロック効果を創り出するために個別の切断エッジセクションに沿って変化させる/互い違いにすることもできる。同様に、前記凹み18に沿う平行な切断エッジは、好ましくは対になって、互いを抑制することもできる(図13参照)。アンダーカットを安定化するために上記の切断エッジ配向の任意の組み合わせも考えられる。
【0053】
前記ステント1は、当該ステント1を除去するために破壊されることができる。また、当該ステント1は、当該ステント1を単純に押し込むことによってサイズを減少することができ、次に、前記ステント1は、取り外されることができる。特に、(先端に)漏斗形状の構造体が前記拡張処理中に創り出された場合、たとえば、前記ステント1は、前記ステント構造体に係合する圧縮鉗子によって再び圧縮されることが考えられる。
【0054】
鋼、チタンまたはプラスチックが、本発明に係るステント1の前記材料として使用されることができ、それによって、プラスチック部品が射出成形によって製造されることが好ましい。さらに、前記ステント1は、たとえば、電解研磨によって、前記壁の輪郭を切断した後にバリ取りが行われることができる。加えて、前記残りの構造体の前記表面は、たとえば顕微鏡適用下での測光反射特性を向上するために艶消しまたは被覆されることもできる。
【0055】
要約すれば、本発明は、以下の特性を有するステントを提案する。
-望ましいように成形されかつ適応させることができる使い捨てステント(リトラクタ)1、
-セグメント構造が個別の長さ調整を可能とする、
-前記製造処理中に、一体型の接続部がレーザ切断によって作り出される、
-個別のセグメント8、8´、8´´が、前記ステント1の前記湾曲を使用したパズルタイプの接続部によって形状篏合するように保持される、
-半径方向アンダーカットが、前記パズルタイプの接続部に沿って前記切断エッジに創り出され、前記半径方向アンダーカットが前記パズルタイプの接続部の意図しない外れを防止する、および
-前記パズルタイプの接続部の概念は、所定の破断点と組み合わされてもよい。
【0056】
これらの特性は、以下の利点を有する。
-現場でも前記リトラクタが単純にセグメント分離される、
-ステント1の前記長さは挿入前に決定される必要はない、
-前記セグメントは、前記アンダーカットが前記必要な強度を提供するので、前記リトラクタが拡張された後に分離されることもできる、
-前記パズルタイプの接続部が高い安定性を有すると同時に容易に取り外される、
-前記接続部は、前記製造処理中に作られ、組み立ては必要ない、および
-クランプやプライヤー等の単純な器具が分離のために使用されることができる。
【0057】
図示の前記例示の実施形態に基づき、本発明に係る前記保持デバイス1は、多くの点で変更されることができる。
【0058】
例として、前記拡張セクションは、様々な形状を取ることができ、必ずしも帯状である必要はないが、格子形状やハニカム形状であることもでき、または、たとえば、折り畳み構造を有する薄肉の閉じた薄板として形成されてもよい。
【0059】
記述された前記ステントを、組織を保護するために、好ましくはプラスチック箔製のシース等の他の従来の技術のリトラクタのコンポーネントおよび機能、または前記患者に当該リトラクタステントを一時的に固定するためのデバイスと組み合せることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 リトラクタ機能を有するステント
2 拡張セクション
4 強化セクション
4´´ 連続強化セクション
6 バンド/ステント形状の拡張構造体
7 接続セクション
8、8´、8´´ 軸方向セグメント
8´´-1 セグメントセクション
8´´-2 セグメントセクション
8´´-3 セグメントセクション
10 接続要素
12 分離ライン
14、14´ 半径方向アンダーカット
16 挿入されたセクション/凸状部分表面
18 凹み
20 フック形状の部分表面/くびれ
22 バー/所定の破断点
24 半径方向切断エッジ
R 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13