(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】非治癒性皮膚創傷の同定方法および皮膚創傷の治癒のモニター方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20221006BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20221006BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20221006BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20221006BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221006BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20221006BHJP
C12Q 1/00 20060101ALI20221006BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20221006BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/48 M
G01N33/50 P
G01N37/00 102
G01N33/53 P
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
G01N33/53 M
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12Q1/00 C
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 200
(21)【出願番号】P 2019542796
(86)(22)【出願日】2017-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2017076983
(87)【国際公開番号】W WO2018077792
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-07-07
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519150979
【氏名又は名称】アクリベス ビオメディカル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AKRIBES BIOMEDICAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ-ヴィニスキー,バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥッツ,アントン
(72)【発明者】
【氏名】デルフラー,ペトラ
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0237500(US,A1)
【文献】特開2004-121819(JP,A)
【文献】豪国特許出願公告第2007203472(AU,B2)
【文献】国際公開第2016/092542(WO,A1)
【文献】特表2004-517078(JP,A)
【文献】J. Surg. Res.,1990年,Vol.48,pp.534-538
【文献】Journal of Dermatology,1992年,Vol.19,pp.667-672
【文献】Experimental Dermatology,1995年,Vol.4,pp.342-349
【文献】J. Vasc. Surg.,1999年10月,Vol.30, No.4,pp.734-743
【文献】The International Journal of Biochemistry & Cell Biology,2011年,Vol.43,pp.1630-1640
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの個体の皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷または治癒性皮膚創傷であると同定するためのインビトロ方法であって、
a)
i)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および/または、
ii)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
b)i)および/もしくはii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値より低い場合に前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、
i)および/もしくはii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であると同定する工程と、を含み、
前記皮膚創傷が、糖尿病患者の創傷、少なくとも一種類の微生物に感染した創傷、虚血性創傷、血液供給不足もしくは静脈うっ血に罹患した患者の創傷、潰瘍、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍、動脈性下腿潰瘍、混合型潰瘍または褥瘡、神経障害性創傷、下腿潰瘍、手術創、熱傷、裂開、腫瘍性潰瘍、および広く知られていない潰瘍から選択される、方法。
【請求項2】
ヒトの個体の皮膚創傷の治癒をモニターするためのインビトロ方法であって、前記方法が、
a)
i)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、
それについて前記第一時点で得られる値および/または、
ii)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成
、それについて前記第一時点で得られる値、を測定する工程と、
c)
i)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、
それについて前記第二時点で得られる値、および/または、
ii)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成
、それについて前記第二時点で得られる値、を測定する工程と、
e)
A)前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より高いか、および/もしくは、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より高い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の改善を示すと同定する工程であるが、
ただし、前記第一時点でのa)i)、および/もしくは、前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値以下であるものであるか、
または、
B)前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より低いか、および/もしくは、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より低い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の悪化を示すと同定する工程であるが、
ただし、前記第二時点でのc)i)および/またはc)ii)で得られた前記値(複数可)が創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値の100%以下であるものである工程と、
従って、前記皮膚創傷の治癒をモニターする工程と、を含み、
前記皮膚創傷が、糖尿病患者の創傷、少なくとも一種類の微生物に感染した創傷、虚血性創傷、血液供給不足もしくは静脈うっ血に罹患した患者の創傷、潰瘍、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍、動脈性下腿潰瘍、混合型潰瘍または褥瘡、神経障害性創傷、下腿潰瘍、手術創、熱傷、裂開、腫瘍性潰瘍、および広く知られていない潰瘍から選択される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載される方法であって、前記方法が、
工程a)の後に工程b)をさらに含み、
b)a)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値より低い場合に、前記第一時点において、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、a)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に、前記第一時点において、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であると同定する工程、
および/または、
工程c)の後に工程d)をさらに含み、
d)c)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値より低い場合に、前記第二時点において、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、c)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に、前記第二時点において、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であると同定する工程、
および/または、
工程e)の後に工程f)をさらに含み、
f)一または複数の後の時点で工程a)~e)を繰り返し、
および/または、
前記第一時点と前記第二時点は6時間~12ヵ月の間離れているか、
および/または、
前記値(複数可)が少なくとも三重反復して測定され、および/または、統計的に有意であると決定される、方法。
【請求項4】
請求項1に記載される方法であって、前記方法が、
a)
i)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および、
ii)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
b)a)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低く、および、a)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低い場合、もしくは、a)i)およびa)ii)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも10%低い場合、もしくは、a)i)およびa)ii)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも15%、もしくは少なくとも20%低い場合に、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程、または、
a)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上で、および、a)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合、
もしくは、a)i)およびa)ii)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも10%、もしくは少なくとも15%、もしくは少なくとも20%高い場合、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程とを含み、
または、
a)i)とa)ii)で得られた値を組み合わせた値が確立され、および/または、a)の値が少なくとも三重反復して測定され、および/または、統計的に有意であると決定される、方法。
【請求項5】
請求項1または4に記載される方法であって、
工程a)が、以下の工程:
iiia)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下でのHaCaT細胞の増殖を測定する工程をさらに含み、
および、工程b)が、
b)i)~iiia)で得られた少なくとも2つ、もしくは3つの値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値より低い場合、および/もしくは、i)および/もしくはii)とiiia)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも10%、もしくは少なくとも15%低い場合に、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程、
または、
i)~iii)で得られた少なくとも2つ、もしくは3つの値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値以上の場合、および/もしくは、i)および/もしくはii)とiiia)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも10%、もしくは少なくとも15%高い場合に、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程とを含み、
または、i)および/もしくはii)とiiia)で得られた値を組み合わせた値が確立される、方法。
【請求項6】
請求項1、4または5に記載される方法であって、
工程a)が、以下の工程iiib)~iiid)の内一つ、二つもしくは三つ、または、以下の工程iiib)~iiie)の内一つ、二つ、三つもしくは四つを含み、前記工程が、
iiib)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、
iiic)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一または複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、
iiid)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、
iiie)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のサイトカインマーカーがIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択され、
ならびに、工程b)が、
b)以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合が、
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合、
(7)iiie)で得られた値がカットオフ値よりも高い場合であるか、
または、
以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合が、
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以上である場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以上である場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以上である場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(7)iiie)で得られた値がカットオフ値よりも低い場合である、方法。
【請求項7】
請求項6に記載される方法であって、
(5)の比率が、CD38/CD209の比率、CD197/CD209の比率およびCD197/CD206の比率から選択され、ならびに/または、i)、ii)、iiia)、iiib)、iiic)、iiid)および/もしくはiiie)で得られた値を組み合わせた複数の値が確立される、方法。
【請求項8】
請求項5、6または7に記載される方法であって、
工程b)が、
b)以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合が、
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合であって、前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、および、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択される場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合であって、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択される場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合であって、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択される場合、
(7)iiie)で得られた、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一もしくは複数のサイトカインマーカーの量(複数可)の値がカットオフ値より高い場合であるが、
ただし、少なくともi)および/もしくはii)で得られた値(複数可)は創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値(複数可)よりも低い場合であり、
ならびに/または、
以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合が、
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも高い場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも高い場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも高い場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(7)iiie)で得られた、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一もしくは複数のサイトカインマーカーの量(複数可)の値がカットオフ値より低い場合であるが、
ただし、少なくともi)および/もしくはii)で得られた値(複数可)は創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値(複数可)以上である場合である、方法。
【請求項9】
請求項2または3に記載される方法であって、
a)
i)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、
それについて前記第一時点で得られる値、および、
ii)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成
、それについて前記第一時点で得られる値、を測定する工程と、
c)
i)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、
それについて前記第二時点で得られる値、および
ii)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成
、それについて前記第二時点で得られる値、を測定する工程と、
e)
A)前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より高く、および、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より高い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の改善を示すと同定する工程であるが、
ただし、前記第一時点でのa)i)、および、前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以下であるものであるか、
または、
B)前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より低く、および、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より低い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の悪化を示すと同定する工程であるが、
ただし、前記第二時点でのc)i)およびc)ii)で得られた前記値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値の100%以下であるものである工程と、を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載される方法であって、
前記方法が工程a)の後に工程b)をさらに含み、
b)a)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低く、および、a)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低い場合に、前記皮膚創傷を前記第一時点で非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、
a)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上で、および、a)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に、前記皮膚創傷を前記第一時点で治癒性皮膚創傷であると同定する工程、
および/または、
前記方法が工程c)の後に工程d)をさらに含み、
d)c)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低く、および、c)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低い場合に、前記皮膚創傷を前記第二時点で非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、
c)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上で、および、c)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に、前記皮膚創傷を前記第二時点で治癒性皮膚創傷であると同定する工程、
および/または、
前記方法が工程e)の後に工程f)をさらに含み、
f)一または複数の後の時点で工程a)~e)を繰り返す、方法。
【請求項11】
請求項2または3に記載される方法であって、
a)
i)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、
それについて前記第一時点で得られる値、および、
ii)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成
、それについて前記第一時点で得られる値、を測定する工程と、
以下のiiia)、iiib)、iiic)およびiiid)の内一つ、二つ、三つもしくは四つ、または、以下のiiia)、iiib)、iiic)、iiid)およびiiie)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つの測定工程:
iiia)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下でのHaCaT細胞の増殖
、それについて前記第一時点で得られる値、を測定する工程、
iiib)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)
、それについて前記第一時点で得られる値、を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、
iiic)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)
、それについて前記第一時点で得られる値、を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、
iiid)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)
、それについて前記第一時点で得られる値、を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
iiie)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のサイトカインマーカーの量(複数可)
、それについて前記第一時点で得られる値、を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のサイトカインマーカーがIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択され、
c)
i)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、
それについて前記第二時点で得られる値、および
ii)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成
、それについて前記第二時点で得られる値、を測定する工程と、
以下のiiia)、iiib)、iiic)およびiiid)の内一つ、二つ、三つもしくは四つ、または、以下のiiia)、iiib)、iiic)、iiid)およびiiie)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つの測定工程:
iiia)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下でのHaCaT細胞の増殖
、それについて前記第二時点で得られる値、を測定する工程、
iiib)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)
、それについて前記第二時点で得られる値、を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、
iiic)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)
、それについて前記第二時点で得られる値、を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、
iiid)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)
、それについて前記第二時点で得られる値、を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、
iiie)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のサイトカインマーカーの量(複数可)
、それについて前記第二時点で得られる値、を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、前記一もしくは複数のサイトカインマーカーがIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択され、
e)
A)以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記第二時点で、前記皮膚創傷の治癒が改善することを示すとして同定する工程であって、前記場合が、
(1)前記第二時点でのc)i)で得られた値が前記第一時点でのa)i)で得られた値よりも高い場合、
(2)前記第二時点でのc)ii)で得られた値が前記第一時点でのa)ii)で得られた値よりも高い場合、
(3)前記第二時点でのc)iiia)で得られた値が前記第一時点でのa)iiia)で得られた値よりも高い場合、
(4)前記第二時点でのc)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率よりも低い場合であって、
前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、および、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択される場合、
(5)前記第二時点でのc)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率より低い場合であって、
前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記M2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206、およびCD209から選択され、
(6)前記第二時点でのc)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率より低い場合であって、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択される場合、
(7)前記第二時点でのc)iiie)で得られた値が前記第一時点でのa)iiie)で得られた値よりも低い場合であって、
ただし、前記第二時点での少なくともc)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が前記第一時点でのa)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)よりも前記第二時点で高く、および、
ただし、前記第一時点でのa)i)、および/もしくは、前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値以下である工程、
または、
B)以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記第二時点で、前記皮膚創傷の治癒が悪化することを示すとして同定する工程であって、前記場合が、
(1)前記第二時点でのc)i)で得られた値が前記第一時点でのa)i)で得られた値よりも低い場合、
(2)前記第二時点でのc)ii)で得られた値が前記第一時点でのa)ii)で得られた値よりも低い場合、
(3)前記第二時点でのc)iiia)で得られた値が前記第一時点でのa)iiia)で得られた値よりも低い場合、
(4)前記第二時点でのc)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率よりも高い場合であって、
前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、および、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択される場合、
(5)前記第二時点でのc)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率より高い場合であって、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択される場合、
(6)前記第二時点でのc)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率より高い場合であって、
前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択される場合、
ただし、前記第二時点での少なくともc)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が前記第一時点でのa)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)よりも低く、および、
ただし、前記第二時点でのc)i)および/もしくはc)ii)で得られた前記値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値の100%以下であるものである場合、
(7)前記第二時点でのc)iiie)で得られた値が前記第一時点でのa)iiie)で得られた値よりも高い場合である、工程と、を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載される方法であって、
前記方法が工程a)の後に工程b)をさらに含み、
b)前記皮膚創傷を前記第一時点で非治癒性皮膚創傷であるとするか、または、前記第一時点で治癒性皮膚創傷であるとするかを請求項4、5または6に従って同定する工程、
および/または、
前記方法が工程c)の後に工程d)をさらに含み、
d)前記皮膚創傷を前記第二時点で非治癒性皮膚創傷であるとするか、または、前記第二時点で治癒性皮膚創傷であるとするかを請求項4、5または6に従って同定する工程、
および/または、
前記方法が工程e)の後に工程f)をさらに含み、
f)一または複数の後の時点で工程a)~e)を繰り返す、方法。
【請求項13】
請求項1~12の任意の一項に記載される方法であって、
-前記非治癒性皮膚創傷が、標準的療法下で2ヵ月以内に閉鎖しない創傷として理解され、ならびに/または、
-前記個体が、さらに疾患や合併性を呈していたり、さらなる疾患や合併症用の医薬(複数可)を用いて治療されたり、ならびに/または、
-前記皮膚創傷が、処置されていないか、または、一もしくは複数の以下のもの:圧迫、創傷ドレッシング材、外科的デブリードマン、生物学的デブリードマン、感染予防、抗生物質療法、陰圧療法、タンパク質、増殖因子、抗体、ペプチド、糖、細胞もしくは細胞成分、人工皮膚、ヒト血液由来製剤、遺伝子治療もしくは遺伝子改変創傷床調節剤、薬物、生薬、植物抽出物を用いて治療され、ならびに/または、
-(i)請求項1もしくは3~6の任意の一項に係る方法によって、前記個体の皮膚創傷が非治癒性皮膚創傷であると同定されるか、および/もしくは、請求項2、7もしくは8に係る方法によって、前記個体の皮膚創傷が第一時点に比べて第二時点で治癒が悪化することを示すとして同定される場合に、前記個体が、圧迫、創傷ドレッシング材、外科的デブリードマン、生物学的デブリードマン、感染予防、抗生物質療法、陰圧療法、タンパク質、増殖因子、抗体、ペプチド、糖、細胞もしくは細胞成分、人工皮膚、ヒト血液由来製剤、遺伝子治療もしくは遺伝子改変創傷床調節剤、薬物、生薬、植物抽出物から選択される一もしくは複数の療法で治療されることになると同定され、ならびに/または、
-前記創傷浸出液サンプルが、皮膚創傷に陰圧を掛けるもしくは陰圧廃液装置を使用することによる物理的もしくは化学的方法か、毛細管力を利用するか、創傷浸出液をドレッシング材フィルムもしくは膜に回収するか、創傷浸出液を注射器に回収するか、吸着材、吸着ビーズもしくはフィルタを適用するか、もしくはスワッブもしくは綿棒を使用するかによる方法、もしくは、前記ドレッシング材フィルムもしくは膜がセルロース層、および/もしくは、前記吸着材がセルロース層である方法によって取得され、ならびに/または、
-前記治癒性皮膚創傷が、創傷閉鎖が継続中のもの、肉芽形成、壊死が無いこと、および/もしくは感染が無いことを特徴とし、ならびに/または、
-前記非治癒性皮膚創傷が、創傷閉鎖の欠如、創傷の面積や深さの増加、皮膚創傷の壊死や感染、および/もしくは肉芽形成の欠如を特徴とし、ならびに/または、
-前記方法で使用される前記線維芽細胞や単球細胞は、ヒト細胞、ヒト細胞であって、ヒト健常者由来、創傷治癒不全に伴う合併症を有する患者由来、および/もしくは、前記創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムを提供する個々の患者由来のものであり、ならびに/または、
-前記創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルが、1:2~1:1000の間、または1:10~1:200の間で希釈される、方法。
【請求項14】
請求項1~13の任意の一項に記載される方法であって、
i)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖を測定する工程が、以下の工程:
(i)初代ヒト皮膚線維芽細胞を培養する工程、
(ii)前記細胞を固相支持体上にインキュベーションし、従って、前記細胞が前記支持体に接着することを可能にする工程、
(iii)前記創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルと前記細胞を接触させ、前記接触が前記細胞の接着が起こる前もしくは後に実施される場合がある工程、
(iv)前記初代線維芽細胞の、細胞外マトリックスの構成物を含む量、もしくは細胞数を決定する工程を含み、
および/もしくは、前記方法が2D細胞培養で実施され、ならびに/または、
ii)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程が、以下の工程:
(i)初代ヒト皮膚線維芽細胞を、支持体または接着増強剤でプレコーティングした支持体上に播種する工程、
(ii)前記細胞を前記支持体上で培養するか、またはコンフルエントになるまで前記細胞を前記支持体上で培養する工程、
(iii)前記細胞を、(i)マトリックス促進サプリメントおよび(ii)創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルと接触させる工程であって、(i)および(ii)が同時もしくは経時的に接触されてもよい工程、
(iv)前記線維芽細胞由来マトリックスの量を決定する工程を含み、
および/もしくは、前記方法が3D細胞培養で実施され、ならびに/または、
iii)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での角化細胞の増殖を測定する工程が、以下の工程:
(i)角化細胞を培養する工程、
(ii)前記細胞を固相支持体上にインキュベーションし、従って、前記細胞が前記支持体に接着することを可能にする工程、
(iii)前記創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルと前記細胞を接触させ、前記接触が前記細胞の接着が起こる前もしくは後に実施される場合がある工程、
(iv)前記角化細胞の量、もしくは細胞数を決定する工程を含み、
および/もしくは、前記方法が2D細胞培養で実施され、ならびに/または、
iv)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程が、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞もしくは(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションするか、もしくはCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用されるマクロファージ分化に到達するまで細胞をインキュベートする工程、
(iii)創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)前記細胞の培養上清中の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量を測定する工程であって、
前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、および、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、ならびに/または、
v)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)を測定する工程が、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞もしくは(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程、
(iii)創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)マクロファージの細胞表面上の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)を測定する工程であって、
前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、もしくは、前記細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)が、免疫学的アッセイおよび/もしくは蛍光アッセイによって、もしくは、FACS解析によって測定される工程を含み、
および/もしくは、工程(iv)は、
一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤もしくは抗体と前記マクロファージを接触させる工程と、前記マクロファージに結合する結合分子の量を測定することによって、従って、前記細胞表面マーカーの量(複数可)を測定する工程と、
および/もしくは、一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤もしくは抗体と前記マクロファージを接触させる工程であって、
細胞集団内で、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーにそれぞれ陽性である細胞のパーセンテージを測定する工程であって、従って、前記細胞表面マーカーの度数分布(複数可)を測定する工程とを含み、ならびに/または、
vi)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程が、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞もしくは(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションするか、もしくはCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用されるマクロファージ分化に到達するまで細胞をインキュベートする工程、
(iii)創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)前記マクロファージ中の一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAの前記発現レベルを測定する工程であって、
前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、および/もしくは、前記方法が、マーカーmRNAに特異的に結合するプローブを、ハイブリダイゼーションが可能な条件下で前記マクロファージ
から得られたRNAと接触させ、そして、ハイブリダイズした前記プローブを検出する工程を含み、ならびに/または、
vii)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一もしくは複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程が、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞もしくは(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションするか、もしくはCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用されるマクロファージ分化に到達するまで細胞をインキュベートする工程、
(iii)創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)前記細胞の培養上清中の、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一もしくは複数のサイトカインマーカーの量を測定する工程を含む、方法。
【請求項15】
請求項1~14の任意の一項に記載される方法であって、以下の方法工程が同時に実行されるものであり、前記方法工程が
i)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖を測定する工程、
ii)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程、
または、
以下の方法工程が同時に実行されるものであり、前記方法工程が
i)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖を測定する工程、
ii)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程、
および、
iiia)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での角化細胞の増殖を測定する工程、ならびに/または、
iiib)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択される工程、ならびに/または、
iiic)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択される工程、ならびに/または、
iiid)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択される工程、ならびに/または、
iiie)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のサイトカインマーカーがIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される工程であり、
ならびに/または、前記方法工程は、単一の支持体、チップ、アレイ、マイクロアレイ、ナノアレイ、プレート、マルチウエルプレート、もしくはディッシュ上で実行される、方法。
【請求項16】
請求項
1~15の
任意の一項に記載される方
法を実行するため
のキットであって、
前記キットが、
a)初代線維芽細胞と、
b)角化細胞と、
c)複数の隔離された領域もしくは穴を有する支持体であって、前記領域もしくは穴のサブセットが(i)接着増強剤もしくはゼラチンでコーティングされるか、ならびに/または、(ii)線維芽細胞由来マトリックス(FDM)で充填されている支持体と、
ならびに、
f)一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤もしくは抗体と、
を含むキット。
【請求項17】
請求項16に記載されるキットであって、
前記キットは、
d)マトリックス促進サプリメントと、および/または、
e)単球細胞と、および/または、
g)IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一または複数のサイトカインマーカーを特異的に認識する結合剤もしくは抗体と、および/または、
f)がさらに、一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーを特異的に認識する結合剤もしくは抗体、および/または、一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAを特異的に認識するプローブであり、前記一または複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一または複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、前記一または複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、前記一または複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択されるものと、
をさらに含むキット。
【請求項18】
請求項1~15の任意の一項に記載される方法を実行する
ための支持体であって、前記支持体が複数の隔離された領域または穴を含み、
a)前記領域または穴のサブセットが接着増強剤でコーティングされていて、
b)前記領域もしくは穴のサブセットが接着増強剤でコーティングされているか、および/または、線維芽細胞由来マトリックス(FDM)で充填されていて、
c)前記領域または穴のサブセットが処理されておらず、
e)
e1)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM1細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤もしくは抗体を含み、ならびに
e2)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤もしくは抗体を含み、前記一または複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一または複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、
前記サブセットa)、b)、c)、e)が重ならない、支持体。
【請求項19】
請求項18に記載される支持体であって、
前記支持体は、さらに
d)
d1)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM1マーカーを特異的に認識する結合剤もしくは抗体を含み、ならびに
d2)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM2マーカーを特異的に認識する結合剤もしくは抗体を含み、前記一または複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、ならびに、前記一または複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、
および/または、
f)
f1)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM1マーカーmRNAを特異的に認識するプローブを含み、ならびに、
f2)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM2マーカーmRNAを特異的に認識するプローブを含み、前記一または複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、ならびに、
g)前記領域または穴のサブセットが、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一または複数のサイトカインマーカーを特異的に認識する結合剤もしくは抗体を含む、
ことを特徴とし、
ならびに/または、
前記支持体は、さらに
(x)a)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が初代線維芽細胞をさらに含み、および/または、
(xi)(x)もしくはb)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が単球細胞をさらに含み、および/または、
(xii)c)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が初代線維芽細胞をさらに含み、および/または、
(xiii)c)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が角化細胞を含むものであって、
(xii)と(xiii)に係る前記領域もしくは穴は重ならない、
ことを特徴とし、
ならびに/または、
前記支持体がチップ、アレイ、マイクロアレイ、ナノアレイ、プレート、マルチウエルプレート、もしくはディッシュであり、および/もしくは、前記支持体がプラスチック製支持体である、
ことを特徴とする、支持体。
【請求項20】
ヒトの個体の皮膚創傷治癒を改善するのに適切な化合物をスクリーニング
するためのスクリーニング方法であって、以下の工程を含み:
A)(i)少なくとも一つのヒトの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物の存在下で初代線維芽細胞の増殖を測定する工程と、
B)A)で得られた値が、前記少なくとも一つの候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値より少なくとも10%高いもしくは少なくとも10%低い場合に、以下の方法工程B1)~B5)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つ、または、以下の方法工程B1)~B6)の内一つ、二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つを実行する工程:
B1)(i)少なくとも一つのヒトの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物の存在下で初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程、
B2)(i)少なくとも一つのヒトの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物の存在下で角化細胞の増殖を測定する工程、
B3)(i)少なくとも一つのヒトの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、ならびに、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、
B4)(i)少なくとも一つのヒトの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージ上の一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、
B5)(i)少なくとも一つのヒトの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージ中の一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、
B6)(i)少なくとも一つのヒトの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のサイトカインマーカーがIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択され、
B1)~B5)またはB1)~B6)で得られた少なくとも一つの値が、前記候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値よりも少なくとも10%高い場合に、前記化合物が皮膚創傷治癒を改善するのに適していると同定され、および、
創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルが得られた皮膚創傷が非治癒および/または慢性創傷であり、
少なくともB1)に従った前記方法工程が実行される、スクリーニング方法。
【請求項21】
請求項20に記載される化合物をスクリーニング
するためのスクリーニング方法であって、
a)前記少なくとも一つの候補化合物が、小分子、ホルモン、糖類、タンパク質、ペプチド、ポリマー、抗体、もしくはその誘導体、もしくはその結合体、核酸、ウイルス剤、一もしくは複数の細胞、もしくは、一もしくは複数の遺伝子改変細胞から選択され、ならびに/または、
b)前記少なくとも一つの候補化合物が、免疫調節剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗感染剤、増殖因子、サイトカイン、抗増殖剤および増殖刺激剤から選択され、ならびに/または、
c)前記少なくとも一つの候補化合物が、単一の化合物、もしくは、2、3、4もしくは5以上の異なる化合物であり、前記2、3、4もしくは5以上の異なる化合物は、単一の組成物中に存在してもよいし、2以上の別々の組成物に存在してもよく、ならびに/または、
d)前記値が少なくとも三重反復して測定され、および/もしくは、統計的に有意であるとB)で証明され、および/もしくは、統計的な有意がp≦0.05、p≦0.001もしくはp≦0.001で証明され、
ならびに/または、B1)~B5)もしくはB1)~B6)で得られた少なくとも一つの値が、前記候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値よりも統計学的に有意に、もしくは、p≦0.05、p≦0.001もしくはp≦0.001で少なくとも10%高いかもしくは少なくとも10%低い場合に、前記化合物が皮膚創傷治癒を調節するのに適していると同定され、ならびに/または、
e)A)およびB1)~B5)またはA)およびB1)~B6)に係る前記方法工程が請求項20に従って実行される、スクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体の皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷または治癒性皮膚創傷であると同定するためのインビトロ方法、個体の皮膚創傷の治癒をモニターするためのインビトロ方法、皮膚創傷治癒を調節するのに適切な化合物をスクリーニングして得るための方法、および、それらに関連するキットに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性創傷は米国だけでも570万人の患者がいる世界的に主要な健康問題であり、人口の高齢化と代謝疾患発生率の増加に起因して増えることが見込まれている。
【0003】
慢性創傷は多因子の病因を有していて、以下の互いに異なる変数(a)基礎疾患(例、糖尿病、動脈または静脈不全)、b)血圧、c)年齢と栄養状態、およびd)微生物環境)に依存している。
【0004】
慢性創傷は、2ヵ月以内に治癒しなかった創傷として一般的に理解される。慢性創傷は世界的に主要な健康問題となっている。米国とEUを含む先進国では、全人口の1~2%が生涯に慢性創傷を経験することになると推定されている(非特許文献1)。米国単独でも、約570万人の患者が罹患している。この数字は、人口の高齢化と代謝疾患発生率の増加に起因して増えると予想されている。
【0005】
主要な慢性創傷の症状には、静脈性潰瘍、褥瘡および糖尿病性足部潰瘍がある。静脈性潰瘍は、慢性静脈不全に基づく下腿の病変組織における障害であって、しばしば深部静脈血栓症を伴う。褥瘡は、身体を動かすことができない患者における組織の重度低酸素血症の結果である。糖尿病性足部潰瘍は、糖尿病患者の生涯を通じて最大25%に影響を及ぼし、しばしば下肢の切断をする結果になる。これらの創傷の全ての標準的ケアには、ドイツ皮膚病協会の推奨するところによると(非特許文献2)、創傷ドレッシング材、外科的および生物学的(マゴット)デブリードマン(壊死組織切除)、感染予防ならびに陰圧療法が含まれる。Regranex(登録商標)(PDGF:血小板由来増殖因子)が唯一の承認登録された薬学的治療であるが、その治療効力は小さく、細胞ベースの療法の成功率も同様である。治療法に関わらず、全ての慢性創傷の1/3では再発が問題となっている。
【0006】
他の場合には抗炎症剤となるのであるが、副腎皮質ステロイド外用薬が使用できない理由は、その副作用の一つが創傷治癒を実際に遅延させてしまうためである(非特許文献3)。非ステロイド性抗炎症薬(例、イブプロフェン)は、創傷の疼痛を緩和するのに有効であるに過ぎない(非特許文献2)。
【0007】
しかしながら、個々人における皮膚創傷が非治癒性慢性創傷であるかもしくはそれに発展するかどうか、および/または、皮膚創傷の治癒が将来改善するかもしくは悪化するかどうかはしばしば判定がとても難しい。
【0008】
複数のマーカーが、創傷治癒に関連して知られている。さらにまた、ある種のマーカーに関して過去に記載されたことには、一般的な非治癒性創傷群で(プールされるか、または、別々のどちらかの判定平均値について)、一般的な治癒性創傷と(プールされるか、または、別々のどちらかの判定平均値について)比較した場合、上昇または減少するマーカーもある。しかしながら、個々の創傷サンプルを解析する場合、個々人のそのようなマーカーの絶対値はしばしば非常にバリエーションに富んでいて、確実に個々人の一つ一つの皮膚創傷をモニターまたは診断することができない。例えば、ミエロペルオキシダーゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ、エラスターゼの酵素活性は、非治癒性創傷と比べて治癒性創傷の浸出液中では一般的に低いことが分かっている。しかし、個々の創傷浸出液サンプル中で測定された酵素レベルの違いは非常に大きく、従って、非治癒性皮膚創傷を確実に同定することはできない(
図8~10)。さらにまた、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αサイトカインレベルは、治癒性皮膚創傷と比べて非治癒性皮膚において一般的に高い(
図11)。しかしながら、ここでも個々の値は非常に違っている。例えば、サイトカインレベルは、治癒性浸出液のいくつかに関しては非治癒性創傷浸出液中でのものと同じ範囲にあり(
図13)、非治癒性創傷由来の創傷浸出液サンプルの約50%のみがマクロファージによるサイトカイン分泌を誘導する(
図15)。
【0009】
非治癒性皮膚創傷を確実に同定するための方法、および/または、皮膚創傷の治癒が悪化することを同定するための方法は、罹患している個人のそのような皮膚創傷をちょうどよい時にさらに治療する機会を提供し、従って、再発、および/または、治癒状態の悪化を回避または減弱することができる。
【0010】
従って、個人の非治癒性皮膚創傷を正確に診断およびモニターすることを可能にする方法、キットおよびデバイス、ならびに再発を予防するために個人の皮膚創傷の創傷治癒を予測することを可能にする方法の必要性がある。
【0011】
皮膚に傷ができた後に、複雑な生物学的プロセスが開始され、複数の生物学的経路の活性化と同期化につながる。創傷治癒の典型的なステージには、炎症、新組織形成および組織リモデリング(非特許文献4に総評される)が含まれ、
図1に示すように様々な細胞タイプの寄与がある。
【0012】
基礎病態(例、糖尿病、静脈不全もしくは動脈閉塞)、または微生物感染が、生理学的創傷治癒プロセスを妨げると、治癒不全が起こり、しばしば慢性創傷(潰瘍)ができてしまう。慢性創傷では、創傷治癒プロセスの炎症フェーズが永続し、そして、その創傷は組織再生とリモデリングのステージへと進行しない。この場合、病原体となる食細胞は、組織細胞、細胞外マトリックスおよび増殖因子を破壊するため創傷組織中にサイトカイン、プロテアーゼおよび毒性酸素ラジカルを含む様々な因子を放出する(非特許文献5)。これらの病原因子は創傷それ自身中(例、フィブリン塊中または創傷浸出液(創傷液)中)に含まれている。
【0013】
創傷液は、創傷浸出液(WE)と呼ばれるが、創傷細胞の分子的フィンガープリントを含む細胞外液であって、「液体生検(liquid biopsy)」と称される場合がある。代替的には、創傷バイオフィルムが使用可能である。
【0014】
本発明者ら独自のエントリポイントは、創傷慢性化を発症する要因(pathogenic drivers)が患者の材料に含まれているという事実を利用することである。この患者の材料を使用して、本発明者らは、創傷治癒プロセスに関与する様々な細胞タイプを使用するインビトロ細胞方法を確立および開発した。治癒が不十分な創傷の創傷浸出液はこれらの方法ではネガティブな効果を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】Gottrup F(2004)Am J Surg 187:38S-43S
【文献】Dissemond J et al(2014)JDDG 1610-0379/2014/1207:541-554
【文献】Hengge UR(2006)J Am Acad Dermatol 54:1-15
【文献】Gurtner GG et al(2008)Nature 453:314-321
【文献】Clark RAF et al(2007)J Invest Dermatol 127:1018-1029
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
驚くべきことに、開発確立したこれらの方法は、個体の皮膚創傷を治癒性または非治癒性皮膚創傷と同定することや、個体の皮膚創傷の治癒をモニターすることや、既知および未知の化合物の効力を評価することや、皮膚創傷治癒に関連する化合物スクリーニングに特に適している。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一態様において、本発明は、個体の皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷または治癒性皮膚創傷であると同定するためのインビトロ方法であって、
a)
i)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および/または、
ii)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
b)
i)および/またはii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値より低い場合に前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、
i)および/またはii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であると同定する工程とを含み、
好ましくは、a)での値(複数可)が少なくとも三重反復して測定され、および/または、統計的に有意であると決定される、方法に関する。
【0018】
本発明の好ましい一態様では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい態様では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい態様では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0019】
同一の個体の互いに異なる皮膚創傷が異なった治癒を示す場合があることが知られている。例えば、ある一つの皮膚創傷が治癒性皮膚創傷である場合であっても、同一個体の同時または異なる時点での別の皮膚創傷が、例えば、特定の皮膚創傷に影響を及ぼす基礎疾患または感染が原因で非治癒性皮膚創傷となる場合もある。
【0020】
実施例で示すように、本発明は、個体の皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷または治癒性皮膚創傷であると同定することを可能にするインビトロ方法に関する。従って、本発明は、例えば、同一個体の互いに異なる皮膚創傷を具体的に評価することを可能とする。
【発明の効果】
【0021】
個体の皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷と同定することは、患者の観察、つまり、創傷治癒をモニターすることを可能にし、そして、皮膚創傷の治癒を安定化、寛解、および/または改善するための具体的治療的介入も可能にする。例えば、本発明の方法を使用して非治癒性皮膚創傷として同定された皮膚創傷は、以下の一または複数のもの(圧迫、創傷ドレッシング材、外科的デブリードマン、生物学的デブリードマン、感染予防、抗生物質療法、陰圧療法、タンパク質(特に、増殖因子)、抗体、ペプチド、糖、細胞もしくは細胞成分、人工皮膚、ヒト血液由来製剤、遺伝子治療もしくは遺伝子改変創傷床調節剤、薬物、生薬、植物抽出物)を用いて治療可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図の説明文
【
図1】皮膚創傷への細胞動員:正常な治癒プロセスを示す図である。
【
図2】インビトロアッセイの模式図である。慢性潰瘍由来の創傷浸出液を回収し、細胞培養培地に希釈し、そしてマイクロタイタープレート中で細胞を刺激するために使用した。マクロファージは単球(ヒト血液から単離されるもの)のインビトロ分化によって産生する。慢性WEで刺激すると、マクロファージは炎症促進性サイトカインを産生する。初代ヒト線維芽細胞はWEの存在下または非存在下で、単層培養または線維芽細胞由来マトリックス(「人工皮膚」)のいずれかで増殖させる。慢性WEは細胞増殖および/またはマトリックス成長を阻害可能である。マクロファージはWEの存在下または非存在下、線維芽細胞または線維芽細胞由来マトリックスの存在下で増殖する。慢性WEはM1マクロファージ表現型への移行を導く。角化細胞は、WEの存在下または非存在下、単層培養で増殖する。慢性WEは細胞増殖を阻害可能である。本発明者らは、WEの炎症促進効果や増殖阻害効果に対抗するか、またはM2マクロファージプロフィールへの移行を促進する化合物をスクリーニングして得た。
【
図3】線維芽細胞由来マトリックス(FDM)形成への様々なWEの効果を示す図である。FDMは互いに異なるWEの存在下または非存在下(コントロール)、96穴プレート中で成長させた。総細胞タンパク質を、増殖と細胞外マトリックス生産量を反映するために測定した。
【
図4】4種類のWEの存在下での初代ヒト線維芽細胞の増殖の特徴を示す図である。WEを培地中に1:25、1:50または1:100で希釈し、そして、増殖を未処理コントロール(=100%)と比較した。値は8つのサンプルの平均±SDである。
【
図5】一つの例示的384穴プレートでの増殖の初期スクリーニング結果を示す図である。線は個々の化合物を表す。WE#27による増殖阻害に関するカットオフ線(48.8%水平線「WE#27増殖」)より下の線は抗増殖化合物である。水平線の上部より上の値はポジティブヒットと見なした。
【
図6A】スクリーニングして得た浸出液の生化学的および細胞的(マクロファージ)特徴解析を示す図である。A)ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好中球エラスターゼおよびメタロプロテイナーゼ(MMP)の酵素活性;B)WE中の炎症性サイトカインIL-1α、IL-1βおよびTNF-αのレベル;ならびにC)WEで24時間刺激したマクロファージの上清中に誘導されるIL-1α、IL-1βおよびTNF-αのレベルである。
【
図6B】スクリーニングして得た浸出液の生化学的および細胞的(マクロファージ)特徴解析を示す図である。A)ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好中球エラスターゼおよびメタロプロテイナーゼ(MMP)の酵素活性;B)WE中の炎症性サイトカインIL-1α、IL-1βおよびTNF-αのレベル;ならびにC)WEで24時間刺激したマクロファージの上清中に誘導されるIL-1α、IL-1βおよびTNF-αのレベルである。
【
図6C】スクリーニングして得た浸出液の生化学的および細胞的(マクロファージ)特徴解析を示す図である。A)ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好中球エラスターゼおよびメタロプロテイナーゼ(MMP)の酵素活性;B)WE中の炎症性サイトカインIL-1α、IL-1βおよびTNF-αのレベル;ならびにC)WEで24時間刺激したマクロファージの上清中に誘導されるIL-1α、IL-1βおよびTNF-αのレベルである。
【
図8】浸出液の生化学的特徴解析を示す図である。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好中球エラスターゼおよびメタロプロテイナーゼ(MMP)の酵素活性である。
【
図9】酵素活性:非治癒性創傷由来のWEによるものを示す図である。約半分の非治癒性創傷は、感染に起因すると思われる好中球の侵入の兆候(MPO、エラスターゼ)を示す。メタロプロテイナーゼ活性は、いくつかの例外はあるが一般的に低い。MPO(前部ライン上のカラム):最高値:2.2×10
6mU/mlである。エラスターゼ(中間ライン上のカラム):最高値:5×10
4nMである。MMP(後部ライン上のカラム):最高値:1.8×10
6nMである。
【
図10】酵素活性:治癒性創傷由来のWEによるものを示す図である。MPOは前部ライン上のカラムである。エラスターゼは中間ライン上のカラムである。MMPは後部ライン上のカラムである。全ての酵素レベルは、非治癒性創傷のものよりも一般的に低い。
【
図11】非治癒性創傷対治癒性創傷由来のWE中のサイトカインを示す図である。
【
図12】非治癒性創傷由来のWE中のサイトカインを示す図である。半分より多い非治癒性WEは認識可能なレベルのIL-1βを含んでいる。IL-1αは、IL-1βと同じWE中で測定可能ではあるが、そのレベルはずっと低い。TNF-αは、半分より多くの非治癒性WE中に存在する。
【
図13】治癒性創傷由来のWE中のサイトカインを示す図である。治癒性WEのいくつかでは、サイトカインレベルは非治癒性WEのものと同じ範囲内にある。
【
図14】マクロファージ上清中のサイトカインを示す図である。
【
図15】マクロファージ上清中のサイトカインを示す図である。マクロファージのIL-1αは前部ライン上のカラムである。マクロファージのIL-1βは中間ライン上のカラムである。TNF-αは後部ライン上のカラムである。非治癒性創傷由来のWEの約50%のみがマクロファージによるサイトカイン分泌を誘導する。非治癒性創傷由来のWEによって誘導される主要サイトカインはTNF-αである。
【
図16】マクロファージ上清中のサイトカインを示す図である。マクロファージのIL-1αは前部ライン上のカラムである。マクロファージのIL-1βは中間ライン上のカラムである。TNF-αは後部ライン上のカラムである。治癒性創傷由来のWEはほとんどサイトカインを誘導しない。WE中とマクロファージ上清中の間でのサイトカインレベルに相関は無かった。
【
図17】非治癒性創傷由来のWEの存在下での増殖および線維芽細胞由来マトリックス形成を示す図である。HaCaT増殖は前部ライン上のカラムである。線維芽細胞増殖は中間ライン上のカラムである。線維芽細胞由来マトリックス形成は後部ライン上のカラムである。約半数の非治癒性WEが、初代ヒト線維芽細胞とHaCaT角化細胞との両方の72時間での増殖を阻害し、線維芽細胞由来マトリックス形成も阻害する。全てのWEは1:25希釈で試験した。
【
図18】治癒性創傷由来のWEの存在下での増殖および線維芽細胞由来マトリックス形成を示す図である。HaCaT増殖は前部ライン上のカラムである。線維芽細胞増殖は中間ライン上のカラムである。線維芽細胞由来マトリックス形成は後部ライン上のカラムである。ほとんどの治癒性WEはFDM形成を向上する。一つの治癒性WEだけがFDMの形成を阻害する。ほとんどの治癒性WEに関しては、FDM形成アッセイの結果は、HDFとHaCaT増殖アッセイのものと対応している。全てのWEは1:25希釈で試験した。
【
図19】線維芽細胞と初代内皮細胞(EC)の増殖:非治癒性創傷由来のWEによるものを示す図である。初代EC増殖は前部ライン上のカラム(n=18)である。線維芽細胞増殖は後部ライン上のカラム(n=18)である。WEは1:25希釈で試験した。初代内皮細胞増殖に関する14/18個のWEの活性は、線維芽細胞に関する活性と相関していた。
【
図20】線維芽細胞と初代内皮細胞(EC)の増殖:治癒性創傷由来のWEによるものを示す図である。初代EC増殖は前部ライン上のカラム(n=15)である。線維芽細胞増殖は後部ライン上のカラム(n=15)である。WEは1:25希釈で試験した。線維芽細胞に何らかの増殖阻害を示した3個のWEは、初代内皮細胞増殖も強く阻害した。
【
図21】創傷治癒に関する2D線維芽細胞アッセイの妥当性:承認登録薬物PDGFの効果を示す図である。PDGFの効果は2D線維芽細胞増殖アッセイにおいても反映される。PDGFは、積極的な非治癒性創傷浸出液(WE#49)の増殖阻害効果を部分的に逆転させるだけである。WE#13(治癒性)は、PDGFと同様に、HDF増殖向上効果を有する。
【
図22】線維芽細胞(HDF)増殖アッセイ:メタロプロテイナーゼ阻害剤(GM6001)の効果を示す図である。汎用MMP阻害剤GM6001は、培地またはMMP活性の無いWEに対して効果がない。GM6001は、WE#49(MMP活性が最も高いもの(1.8×10
6nM))の効果を部分的に逆転させる。
【
図23】増殖/FDM形成:阻害性および刺激性WEによるものを示す図である。上図:線維芽細胞増殖:用量依存的阻害(非治癒性WE)を示す。濃度が低くなるのに伴って増殖は高くなる。いくつかのWEでの増殖はポジティブコントロール(PDGF)に匹敵している。下図:FDM形成:用量依存的阻害(非治癒性WE)を示す。(いくつかの治癒性WEでは)FDM形成の用量依存的増強を示す。TGF-β効果に合致する増強がある。
【
図24】創傷治癒に関する3D線維芽細胞アッセイの妥当性を示す図である。第1サンプル(1日目):非治癒性潰瘍。第2サンプル(14日目):肉芽形成開始。第3サンプル(17日目):治癒の改善。第4サンプル(21日目):治癒中。第1サンプルは、FDM形成阻害が高かった。第3サンプル(「改善」)に関しては、FDM形成の定常的増加があった。FDM形成の増強は治癒性創傷の状況を反映する。
【
図25】患者B:下腿潰瘍、右下腿、緑膿菌と黄色ブドウ球菌に陽性を示す。サンプル#2(01.06.2015)の評価:治癒傾向無し。サンプル#3(08.06.2015)の評価:改善したが、この時点から再び悪化が始まる。生化学的パラメータ:MPOとエラスターゼのデータは(感染による)好中球侵入の減少と合致している。MMP活性は比較的低い(全体での最高値の最大3%)。
【
図26A】患者B:マーカーとしてサイトカインを使用した場合を示す図である。浸出液のサイトカインレベルは、炎症の減少と合致するが、マクロファージにおけるIL-1誘導の増加があった。
【
図26B】患者B:マーカーとしてサイトカインを使用した場合を示す図である。浸出液のサイトカインレベルは、炎症の減少と合致するが、マクロファージにおけるIL-1誘導の増加があった。
【
図27】患者B:線維芽細胞と角化細胞の増殖、FDM形成を示す図である。WE#3の創傷が治癒性であると記載されていたにも関わらず、両方の浸出液は線維芽細胞と角化細胞の全てに対して積極的に毒性があった。というのも、一週間後にはその創傷は悪化していた。本実験は、本発明の方法の予見的価値を示す。
【
図28】患者C:下腿潰瘍、右下腿、治癒傾向を示す。サンプル#5(28.08.2015)。サンプル#6(02.09.2015)の評価:治癒傾向を示す。サンプル#10(18.09.2015)の評価:治癒傾向を示す。生化学的パラメータ:全ての酵素活性は低レベル(全体で最も高い値の最大5%)である。
【
図29A】患者C:サイトカインを示す図である。創傷浸出液対マクロファージ上清でのレベルを示している。浸出液でのサイトカインレベルは低い(全体で最も高い値の最大3%)。マクロファージにおけるIL-1誘導は非常に低く、TNF-αは無かった。
【
図29B】患者C:サイトカインを示す図である。創傷浸出液対マクロファージ上清でのレベルを示している。浸出液でのサイトカインレベルは低い(全体で最も高い値の最大3%)。マクロファージにおけるIL-1誘導は非常に低く、TNF-αは無かった。
【
図30】患者C:線維芽細胞と角化細胞の増殖、FDM形成を示す図である。線維芽細胞とKC角化細胞への毒性効果を示した浸出液は無かった。例外:1:25希釈のWE#6の初代KCに対する効果である。一つの浸出液(WE#6)は1:25希釈でFDM形成を2.5倍増加させた。このインビトロデータはこの患者個人の臨床表現型と一致していて、このことは本方法の予見的価値を示すものである。
【
図31】患者A:下腿潰瘍、下腿、両側である。生化学的パラメータ:MPOとエラスターゼのデータは好中球侵入の減少と合致している(18.03.2015:非治癒性-23.06.2015:治癒性)。治癒性創傷のサンプルでのMMP活性は中レベルである。
【
図32A】患者A:創傷浸出液対マクロファージ上清中のサイトカインを示す図である。浸出液のIL-1レベルは炎症の減少と合致していたが、TNF-αは逆方向に進んでいる。マクロファージでのIL-1誘導は低いが、治癒創傷でのTNF-αレベルは中レベルである。
【
図32B】患者A:創傷浸出液対マクロファージ上清中のサイトカインを示す図である。浸出液のIL-1レベルは炎症の減少と合致していたが、TNF-αは逆方向に進んでいる。マクロファージでのIL-1誘導は低いが、治癒創傷でのTNF-αレベルは中レベルである。
【
図33】患者A:線維芽細胞と角化細胞の増殖、FDM形成を示す図である。#1浸出液(18.03.2015-非治癒性)は、全ての線維芽細胞に対して積極的に毒性があった。経過後の浸出液(23.06.2015-治癒性)は、初代KCにのみ阻害を示した。インビトロデータは臨床表現型と一致していて、このことは本発明の方法の予見的価値を示すものである。
【
図34】線維芽細胞/マクロファージ共培養におけるマクロファージ細胞表面マーカー発現:CD38/CD209、CD197/CD209およびCD197/CD206の比率を示す図である。非治癒性創傷由来のWE(n=18)のものである。WEは1:25希釈で試験した。非刺激細胞(すなわち、WE非存在下で共培養したマクロファージ)は、CD38/CD209、CD197/CD209およびCD197/CD206の比率がそれぞれ0.5、0.6および0.6である。
【
図35】線維芽細胞/マクロファージ共培養におけるマクロファージ細胞表面マーカー発現:CD38/CD209、CD197/CD209およびCD197/CD206の比率を示す図である。治癒性創傷由来のWE(n=18)のものである。WEは1:25希釈で試験した。非刺激細胞(すなわち、WE非存在下で共培養したマクロファージ)は、CD38/CD209、CD197/CD209およびCD197/CD206の比率がそれぞれ0.5、0.6、および0.6である。
【
図36】線維芽細胞/マクロファージ共培養におけるマクロファージM2ケモカイン分泌:CCL18を示す図である。非治癒性創傷由来のWE(n=18)のものである。WEは1:25希釈で試験した。非刺激細胞(すなわち、WE非存在下で共培養したマクロファージ)は70pg/ml分泌していた。
【
図37】線維芽細胞/マクロファージ共培養におけるマクロファージM2ケモカイン分泌:CCL18を示す図である。治癒性創傷由来のWE(n=18)のものである。WEは1:25希釈で試験した。非刺激細胞(すなわち、WE非存在下で共培養したマクロファージ)は70pg/ml分泌していた。
【
図38】線維芽細胞/マクロファージ共培養における炎症促進性サイトカイン分泌:IL-1αを示す図である。非治癒性創傷由来のWE(n=18)のものである。WEは1:25希釈で試験した。非刺激細胞(すなわち、WE非存在下で共培養したマクロファージ)は全くIL-1αを分泌していなかった。一般的に、非治癒性WEで刺激した共培養物でのIL-1αレベルは治癒性WEで刺激したものよりも高い。
【
図39】線維芽細胞/マクロファージ共培養における炎症促進性サイトカイン分泌:IL-1αを示す図である。治癒性創傷由来のWE(n=18)のものである。WEは1:25希釈で試験した。非刺激細胞(すなわち、WE非存在下で共培養したマクロファージ)は全くIL-1αを分泌していなかった。一般的に、治癒性WEで刺激した共培養物でのIL-1αレベルは非治癒性WEで刺激したものよりも低い。
【
図40】線維芽細胞/マクロファージ共培養における炎症促進性サイトカイン分泌:IL-1βを示す図である。非治癒性創傷由来のWE(n=18)のものである。WEは1:25希釈で試験した。非刺激細胞(すなわち、WE非存在下で共培養したマクロファージ)は全くIL-1βを分泌していなかった。一般的に、非治癒性WEで刺激した共培養物でのIL-1βレベルは治癒性WEで刺激したものよりも高い。
【
図41】線維芽細胞/マクロファージ共培養における炎症促進性サイトカイン分泌:IL-1βを示す図である。治癒性創傷由来のWE(n=18)のものである。WEは1:25希釈で試験した。非刺激細胞(すなわち、WE非存在下で共培養したマクロファージ)は全くIL-1βを分泌していなかった。一般的に、治癒性WEで刺激した共培養物でのIL-1βレベルは非治癒性WEで刺激したものよりも低い。
【
図42】線維芽細胞/マクロファージ共培養における炎症促進性サイトカイン分泌:TNF-αを示す図である。非治癒性創傷由来のWE(n=18)のものである。WEは1:25希釈で試験した。非刺激細胞(すなわち、WE非存在下で共培養したマクロファージ)は全くTNF-αを分泌していなかった。一般的に、非治癒性WEで刺激した共培養物でのTNF-αレベルは治癒性WEで刺激したものよりも高い。
【
図43】線維芽細胞/マクロファージ共培養における炎症促進性サイトカイン分泌:TNF-αを示す図である。治癒性創傷由来のWE(n=18)のものである。WEは1:25希釈で試験した。非刺激細胞(すなわち、WE非存在下で共培養したマクロファージ)は全くTNF-αを分泌していなかった。一般的に、治癒性WEで刺激した共培養物でのTNF-αレベルは非治癒性WEで刺激したものよりも低い。
【
図44】創傷が治癒するかどうかを線維芽細胞/マクロファージ共培養アッセイにおけるマクロファージM1/M2細胞表面マーカー比率で評価することの妥当性を示す図である。第1サンプル(1日目):非治癒性潰瘍。第2サンプル(14日目):肉芽形成開始。第3サンプル(17日目):治癒の改善。第4サンプル(21日目):治癒中。第1サンプルは、治癒フェーズ由来のサンプルよりもCD197/CD209およびCD197/CD206の比率が高かった。
【
図45】創傷治癒に関する線維芽細胞/マクロファージ共培養アッセイにおけるサイトカイン分泌の妥当性を示す図である。第1サンプル(1日目):非治癒性潰瘍。第2サンプル(14日目):肉芽形成開始。第3サンプル(17日目):治癒の改善。第4サンプル(21日目):治癒中。第1サンプルは他の全てのものよりもIL-1α、IL-1βおよびTNF-αのレベルが高かった。サイトカイン分泌の低下は治癒性創傷の状況を反映する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
「創傷」は生きている個体の組織へのダメージ(例、切り傷、裂け目、熱傷、破れ目)として理解されるが、好ましくは、創傷は生きている個体の組織の開放性損傷として理解される。
【0024】
本発明は、皮膚創傷に適する方法と関連事項に関する。従って、「皮膚創傷」は生きている個体の皮膚へのダメージ(例、切り傷、裂け目、熱傷、破れ目)として理解される。好ましくは、皮膚創傷は生きている個体の皮膚の開放性損傷として理解される。その皮膚は個体の任意の領域(例、頭部、腕、足、胸、背中)に位置している場合がある。さらに、その個体は1つ、2つ、3つまたは4つ以上の皮膚創傷を有する場合がある。さらにまた、皮膚創傷の面積は異なっている場合もある。好ましい実施形態では、皮膚創傷は創傷浸出液を出している。別の好ましい実施形態では、皮膚創傷は創傷バイオフィルムを形成している。皮膚創傷は、例えば、糖尿病患者の創傷、少なくとも一種類の微生物に感染した創傷、虚血性創傷、血液供給不足もしくは静脈うっ血に罹患した患者の創傷、潰瘍(例、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍(例、動脈性下腿潰瘍)、混合型潰瘍または褥瘡)、神経障害性創傷、下腿潰瘍、手術創、熱傷、裂開、腫瘍性潰瘍、および広く知られていない潰瘍から選択されてもよい。本方法の信頼性を増加させるためには、個体の皮膚創傷は力学的に創傷閉鎖を妨げるさらなる疾患(例、石灰沈着症、つまり、創傷中のカルシウム結晶が創傷閉鎖を力学的に妨げるもの、または、滲出性皮膚炎)に冒されてはいけない。
【0025】
潰瘍は、組織の崩壊を伴う皮膚の傷として理解される。潰瘍の結果として、表皮、しばしば真皮の一部、そして皮下脂肪さえも完全に失われる場合がある。
【0026】
本明細書中に使用される「非治癒性皮膚創傷」とは、期待される速度で治癒しない皮膚創傷のことを言い、特に、標準的療法下で2ヵ月以内、好ましくは、標準的療法下で3か月以上以内に閉鎖しない皮膚創傷である。好ましくは、非治癒性皮膚創傷は、創傷閉鎖の欠如、創傷の面積や深さの増加、皮膚創傷の壊死や感染、および/または肉芽形成の欠如を特徴とする。
【0027】
本明細書中で使用される「治癒性皮膚創傷」は、期待される速度で治癒する皮膚創傷として、特に、標準的療法下で2ヵ月以内に閉鎖する皮膚創傷として理解される。好ましくは、治癒性皮膚創傷は、創傷閉鎖が継続中のもの、肉芽形成、壊死が無いこと、および/または感染が無いことを特徴とする。
【0028】
「標準的療法」は、皮膚創傷に関して医師が一般的に推奨する治療、特に、創傷ドレッシング材、外科的および生物学的(マゴット)デブリードマン、感染予防、陰圧療法、ならびに生物学的もしくは細胞処置を用いる療法から選択される一または複数の治療として理解される。
【0029】
本明細書中に記載される本方法の別の好ましい実施形態では、皮膚創傷は処置しないか、もしくは、標準的療法を用いるか、または、一もしくは複数の以下のもの(圧迫、創傷ドレッシング材、外科的デブリードマン、生物学的デブリードマン、感染予防、抗生物質療法、陰圧療法、タンパク質(特に、増殖因子)、抗体、ペプチド、糖、細胞もしくは細胞成分、人工皮膚、ヒト血液由来製剤、遺伝子治療もしくは遺伝子改変創傷床調節剤、薬物、生薬、植物抽出物)を用いて治療する。
【0030】
個体は動物であり、好ましくは、個体は脊椎動物、特に、哺乳類、より好ましくはヒトである。個体は、その他のことに関しては健常者であってもよいし、もしくは、さらに疾患や合併性を呈している場合もあり、および/または、さらなる疾患や合併症用の医薬(複数可)を用いて治療される。さらに、個体の皮膚創傷は、未処置である場合もあるし、標準的療法または一もしくは複数の以下のもの(圧迫、創傷ドレッシング材、外科的デブリードマン、生物学的デブリードマン、感染予防、抗生物質療法、陰圧療法、タンパク質(特に、増殖因子)、抗体、ペプチド、糖、細胞もしくは細胞成分、人工皮膚、ヒト血液由来製剤、遺伝子治療もしくは遺伝子改変創傷床調節剤、薬物、生薬、植物抽出物)を用いて治療可能である。
【0031】
工程a)では、本発明の方法は、
i)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および/または、
ii)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程を含む。
【0032】
本発明の好ましい一態様では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい態様では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい態様では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0033】
前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖を測定する工程は、実施例、特に実施例3.1.1で示すように実施可能である。本方法のために、初代線維芽細胞を使用するが、それは初代哺乳類皮膚線維芽細胞、好ましくは、初代ヒト皮膚線維芽細胞である場合がある。培養初代ヒト皮膚線維芽細胞を得る方法は当該技術分野で既知であり、例えば、本実施例にて説明される。例えば、その細胞はFCS含有DMEM培地を使用して培養可能である。さらに好ましい実施形態では、細胞を固相支持体上でインキュベーションし、従って、細胞をその支持体に(例えば、実施例に記載するように、マルチウエルプレートを使用して)接着可能とする。さらに、細胞を、創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル(任意ではあるが希釈したもの、例えば、培地または生理食塩水溶液で希釈したもの)と接触させる。接触は、細胞接着が起こる前または後で実施可能である。例えば、接触は、任意ではあるが希釈した液体創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを、接着前(例えば、細胞播種時)か接着後のいずれかに細胞へと加えることによって達成してもよい。接触は、例えば、ピペッティングと任意ではあるが穏やかに混合することによっても達成可能である。細胞を、適切な時間(例えば、6時間~300時間、より好ましくは12時間~200時間、さらに好ましくは24時間~120時間)インキュベーションする。実施例では、72時間が使用できた。創傷浸出液または創傷バイオフィルムサンプルを含まないネガティブコントロールサンプルに関しては、創傷浸出液または創傷バイオフィルムを含まない相応しい液体(例、培地もしくは生理食塩水溶液)を加えてもよいし、または、液体を加えなくてもよい。その後、初代線維芽細胞の(細胞外マトリックスの構成物を含む)量、好ましくは細胞数を、例えば、細胞を固定し、そして、総タンパク量を測定することによって決定する。細胞は、例えば、パラホルムアルデヒドを使用して固定してもよい。さらに、適切な染料(例、スルホローダミンB)を使用して、初代線維芽細胞の(細胞外マトリックスの構成物を含む)量、好ましくは細胞数を決定することができる。形成された細胞外マトリックスを含む染色した細胞は、例えば、染料に合わせて適切な波長での吸光度または蛍光を測定することによって、その後定量可能である。好ましくは、本方法を2D細胞培養(固相支持体上に接着するように細胞を培養することを可能とするもの)で実施する。好ましい実施形態では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0034】
好ましくは、本方法工程は、以下の工程:
(i)初代ヒト皮膚線維芽細胞を培養する工程、
(ii)前記細胞を固相支持体上でインキュベーションし、それによって、前記細胞が前記支持体に接着することを可能にする工程、
(iii)任意ではあるが希釈された前記創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと前記細胞を接触させ、前記接触が前記細胞の接着が起こる前または後に実施される場合がある工程、
(iv)前記初代線維芽細胞の(細胞外マトリックスの構成物を含む)量、好ましくは細胞数を、例えば、細胞を固定し、そして、総タンパク量を測定することによって決定する工程を含む。
好ましくは、本方法を2D細胞培養で実施する。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0036】
本発明の方法においては、細胞培養は好ましくは約20℃~40℃、より好ましくは25℃~38℃、さらに好ましくは約37℃で実行する。
【0037】
皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程は、実施例、特に実施例3.1.2で示すように実施可能である。本方法のために、初代線維芽細胞を使用するが、それは初代哺乳類皮膚線維芽細胞、好ましくは、初代ヒト皮膚線維芽細胞である場合がある。実施例では、初代ヒト皮膚線維芽細胞を、支持体(接着増強剤(例、ゼラチン)で好ましくはプレコーティングしたもの)上に播種する。例えば、そのコーティングは、接着増強剤(例、ゼラチン)含有溶液または懸濁液で支持体をインキュベーションすることによって実現してもよい。実施例では、0.2%ゼラチン溶液が使用できた。好ましくは、細胞がコンフルエントになるまで培養する。次に、細胞を、(i)マトリックス促進サプリメント、および(ii)(任意ではあるが希釈された)創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムと接触させるが、(i)および(ii)は同時に接触させても経時的に接触させてもよい。例えば、マトリックス促進サプリメント(ビタミンCもしくはその生理学的に許容される塩(例、ナトリウム塩)または2-ホスホ-L-アスコルビン酸もしくはその生理学的に許容される塩を含む溶液、および、EGFとインスリンの合剤から好ましくは選択されるもの)を、例えば、ピペッティングと任意ではあるが穏やかに混合することにより細胞へと加える。創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルは任意ではあるが希釈されて、同時または経時的に接触させてもよい。例えば、任意ではあるが希釈された創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルは、マトリックス促進サプリメントと混合する場合があり、その混合物を細胞へと加えてもよい。また、任意ではあるが希釈された創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルは、同時ではあるが別々に加えてもよいし、または、マトリックス促進サプリメントに経時的もしくはその前にではあるが別々に加えてもよい。経時的な非同時的接触を行う場合には、構成要素(i)と(ii)は、好ましくは、1時間以内に接触させる。細胞をその後好ましくは12時間~20日インキュベーションするが、任意ではあるが希釈された創傷浸出液または創傷バイオフィルムとマトリックス促進サプリメントとを補充した新鮮な培地で、任意ではあるが少なくとも1回培地交換する。実施例では、4日間のインキュベーション後に一度培地交換し、全インキュベーションは8日であった。3次元的な線維芽細胞由来マトリックスが形成される。というのも固相支持体が、その空間を満たすことを可能にし、従って3D細胞培養を可能にする少なくとも一つの穴を好ましくは含んでいるからである。その後、例えば、前記細胞を固定して総タンパク質含量を決定することによって線維芽細胞由来マトリックスの量を測定する。細胞は、例えば、パラホルムアルデヒドを使用して固定してもよい。さらに、適切な染料(例、スルホローダミンB)を使用して、初代線維芽細胞の(細胞外マトリックスの構成物を含む)量、好ましくは細胞数を決定することができる。細胞外マトリックスの構成物を含む染色した細胞は、例えば、染料に合わせて適切な波長での吸光度または蛍光を測定することによって、その後定量可能である。
【0038】
従って、本方法工程は、好ましくは以下の工程:
(i)初代ヒト皮膚線維芽細胞を、支持体(接着増強剤(例、ゼラチン)で好ましくはプレコーティングしたもの)上に播種する工程、
(ii)好ましくはコンフルエントになるまで、前記細胞を前記支持体上で培養する工程、
(iii)前記細胞を、(i)マトリックス促進サプリメント、および(ii)(任意ではあるが希釈された)創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと接触させる工程であって、(i)および(ii)が同時または経時的に接触されてもよい工程、
(iv)例えば、前記細胞を固定して総タンパク質含量を決定することによって線維芽細胞由来マトリックスの量を測定する工程を含み、
好ましくは、本方法は3D細胞培養で実施される。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0040】
「線維芽細胞由来マトリックス」または「FDM」は、マトリックス形成が可能な環境(例、マトリックス促進サプリメントの存在下)で生きている線維芽細胞によって形成される細胞外マトリックス(ECM)として理解される。FDMは実施例で記載されるように得ることができる。特に、FDMは、(i)初代ヒト皮膚線維芽細胞を、支持体(接着増強剤(例、ゼラチン)でプレコーティングしたもの)上に播種し、(ii)好ましくはコンフルエントになるまで、前記細胞を前記支持体上で培養し、(iii)マトリックス促進サプリメント(例、ビタミンCもしくはその生理学的に許容される塩、2-ホスホ-L-アスコルビン酸もしくはその生理学的に許容される塩、または、EGFとインスリンの合剤)と前記細胞を接触させることによって得ることができる。
【0041】
「マトリックス促進サプリメント」は、インビトロ細胞培養で生きている線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を促進させる化合物または組成物として理解される。適したマトリックス促進サプリメントは、ビタミンCもしくはその生理学的に許容される塩(例、ナトリウム塩)または2-ホスホ-L-アスコルビン酸もしくはその生理学的に許容される塩、および、EGFとインスリンの合剤であり、ならびに、これら化合物を含む組成物(例、溶液または懸濁液)である。EGFおよびインスリンの合剤は、例えば、EGFもしくはインスリンをそれぞれ含む別々の溶液として別々に、または、EGFおよびインスリンを含む溶液として一緒に、細胞培養物に提供可能である。
【0042】
「接着増強剤」は、固相支持体(例、プラスチック支持体)への細胞接着を増強するが、細胞の生存率に実質的に干渉しない剤である。好ましい実施形態では、接着増強剤はゼラチンまたはフィブロネクチンであり、より好ましくはゼラチンである。
【0043】
「2D細胞培養」は、細胞を平坦または実質的に平坦な表面で培養する細胞培養として理解される。好ましい実施形態では、2D細胞培養は接着細胞の培養である。
【0044】
「3D細胞培養」は、細胞を非平坦または実質的に非平坦な表面で培養する細胞培養として理解される。好ましい実施形態では、3D細胞培養は、マトリックス(例、ECM)、特にFDM内での接着細胞培養および/または細胞培養である。
【0045】
「支持体」または「固相支持体」は、チップ、アレイ(例、マイクロアレイもしくはナノアレイ)、プレート(例、マルチウエルプレート)、もしくはディッシュから好ましくは選択される。細胞培養に適用する場合、固相支持体は好ましくは細胞培養に適していて、例えば、支持体はプラスチック製支持体であってもよい。
【0046】
「創傷浸出液」は、皮膚創傷内または上に位置する細胞外液として理解される。創傷浸出液は、「液体生検」とも称される。
【0047】
「創傷バイオフィルム」は、コロニー形成可能な微生物による皮膚創傷の感染から生じる物質として理解される。典型的には、創傷バイオフィルムは粘着性の物質である。創傷バイオフィルムは、細菌、真菌、酵母、藻類および他の微生物から選択される微生物種と細胞片とを含む。創傷バイオフィルムは、ある種の微生物自身が皮膚創傷の表面へと付着し粘着性の物質を分泌することによって形成される。例えば、創傷バイオフィルムサンプルは、創傷表面を鋭利な外科器具でデブリードマン(創面切除)することによってか、または、創傷表面を綿棒もしくは創傷ドレッシング材でふき取ることによって取得可能である。
【0048】
「創傷浸出液サンプル」または「WE」は、個体の皮膚創傷から得られる創傷浸出液の試料として理解される。創傷浸出液サンプル取得方法は当該技術分野で既知である。例えば、創傷浸出液サンプルの取得は、特に皮膚創傷に陰圧を掛ける、例えば、陰圧廃液装置を使用することによる物理的もしくは化学的方法、毛細管力を利用するか、創傷浸出液をドレッシング材フィルムもしくは膜に回収するか、創傷浸出液を注射器に回収するか、吸着材(例、吸着ビーズもしくはフィルタ)を適用するか、またはスワッブ(例、綿棒)を使用するかによる方法であって、特に、ドレッシング材フィルムもしくは膜がセルロース層、および/または、吸着材がセルロース層である方法によって行われる。好ましい、適したセルロース層は、ナノセルロース層(例、biocellic+やepicite+として市販されているナノセルロース層)である。そのような層はその製造も含めてWO2013/060321、WO2016/113400および/またはWO2017/089005に記載されている。創傷浸出液サンプルの体積は異なっていてもよく、1nl~1l、10nl~10 1l、または100nl~1l、例えば1μl~1l、1ml~1lまたは10ml~1lの範囲にある場合がある。例えば、実施例で調べた創傷浸出液サンプルの体積は、400mlまでで、典型的には、10~100ml、特に、10~50mlであった。創傷浸出液サンプルは、サンプル取得後本発明の方法に直接使用してもよく、または、本発明の方法での使用前に保存、特に<4℃、<0℃もしくは<10℃で保存してもよい。
【0049】
創傷浸出液を取得するために使用可能な好ましいセルロース層は、ナノセルロース層、特に、biocellic+やepicite+として市販されるものである。そのような特に好ましいセルロース層は、WO2013/060321、WO2016/113400および/またはWO2017/089005に記載されている。従って、WO2013/060321、WO2016/113400および/またはWO2017/089005にナノセルロース層とその製造が明示的に開示されている。ナノセルロースは、ナノ構造のセルロースを表す用語として一般的に理解される。ナノセルロースまたはナノ構造のセルロースには、セルロースナノファイバー(CNF)(ミクロフィブリル化セルロース(MFC)とも呼ばれるもの)、ナノ結晶性セルロース(NCCもしくはCNC)、および細菌性ナノセルロースが含まれる。細菌性ナノセルロースは細菌によって生産されるナノ構造のセルロースとして理解される。
【0050】
特に、WO2017/089005はナノ構造のセルロース(BNC)含有物を開示し、その物はBNCを少なくとも1重量%、最大15重量%の量で含み、液を少なくとも85重量%、最大99重量%の量で含み、平均厚さは少なくても0.5mm、最大8mであり、BNCは微生物由来である。
【0051】
好ましくは、物の平均厚さは最大6mmであり、好ましくは最大5mmである。好ましくは、物のBNCの重量平均分子量は、最大1,500,000g/mol、好ましくは最大1,200,000g/mol、最大1,000,000g/mol、最大900,000g/mol、最大850,000g/mol、最大800,000g/mol、最も好ましくは最大780,000g/molである。好ましくは、物のBMCはカルボニル基を、8.5μmol/g未満、好ましくは8.0μmol/g未満、7.5μmol/g未満、7.0μmol/g未満、6.0μmol/g未満、より好ましくは5.75μmol/g未満の量で含む。好ましくは、物の多分散指数(Mw/Mn)は、2.5より大きく3.5未満、好ましくは3.0未満、より好ましくは2.75未満である。好ましくは、物の引張強度は、252MPaより大きく、好ましくは275MPaより大きく、より好ましくは300MPaより大きく、最も好ましくは310MPaより大きい。さらに、WO2017/089005はそのようなセルロース層生産方法を開示していて、従って、そのようなセルロース層生産方法に関して本明細書はWO2017/089005に明示的に言及する。特に、セルロース含有物の製造方法が開示されていて、その方法は、少なくとも以下の工程、a)準静的連続プロセスで生物工学的に生産されるナノ構造セルロース(BNC)を提供する工程と、b)その物を提供する工程と、c)任意ではあるがその物を滅菌する工程とを含む。
【0052】
WO2016/113400が開示するのは多相バイオマテリアルであって、厚さが2mmより大きい、少なくとも2種類の細菌性セルロースネットワークからなる細菌により合成されるナノセルロース(BNC)を含むもので、前記BNCが透明であるものである。好ましくは、前記BNCは、厚さが約3mmまで透明なものである。好ましくは、前記BNCは、厚さが約5mmまで透明なものである。好ましくは、前記BNCの固形分は少なくとも1または少なくとも2%である。好ましくは、前記BNCの引張強度は少なくとも0.1MPaである。好ましくは、前記BNCの水分吸収容量(WAC)は少なくとも80%である。好ましくは、前記BNCの湿潤状態の水蒸気透過率は少なくとも100g/(m2*24h)である。好ましくは、第一BNCネットワークの平均断面孔面積は、第二BNCネットワークよりも少なくとも1.2倍大きい。好ましくは、少なくとも一つのBNCネットワークの重合度は少なくとも400である。好ましくは、多相バイオマテリアルにおいて、最も高い重合度のBNCネットワークの重合度は、最も低い重合度のBNCネットワークの重合度と比べて、少なくとも2倍高い。WO2016/113400が開示するのは細菌によって合成されるナノセルロース(BNC)から構成される多相バイオマテリアルの生産方法であって、一緒にまたは別々に調製された少なくとも二種類の異なるセルロース生産細菌株を培養培地に植菌して、従って、多種の細菌性セルロースネットワークから構成されるBNCを合成する工程を含み、その多相バイオマテリアルのBNC構造とBNC特性が、前記少なくとも二種類の異なる細菌株の選択、それらの調製と植菌、および合成条件の選択によって事前に決定される方法である。好ましくは、より速い初期セルロース生産動力学を持つ株の初期動力学(被除数)とより遅い初期セルロース生産動力学を持つ株の初期動力学(除数)の比率は最大2である。好ましくは、多相バイオマテリアルを厚さが2mmを超えるように成長させる。好ましくは、培養培地は炭素源を、培養培地の体積に基づいて少なくとも10g/lの量で含む。好ましくは、互いに異なるセルロース生産株の植菌率は多くとも90:10である。
【0053】
WO2013/060321が開示するのは乾燥セルロースおよびセルロース含有材料の生成方法であって、前記セルロースまたは前記セルロース含有材料は、セルロース構造と濃度をほぼ完全に再構成しながら乾燥し、膨潤性を保持する目的のものであって、水分結合剤の吸着効果の対象となり、この吸着材に暴露した後にはその材料の任意の構造変化に関わらず乾燥されるものである、方法である。好ましくは、この水分結合剤として、浸透圧的や吸湿的効果のある溶液を使用し、特に、単独の糖類、塩、糖類含有または糖類様物質、ポリエチレン酸化物、これらの水分結合物質群の互いに異なる代表物の合剤やこれらの水分結合物質群の一または複数の代表物と一または複数の界面活性剤や一または複数の防腐剤との合剤を含む。好ましくは、再膨潤挙動をさらに改変するために、水分結合剤に加えて、界面活性剤や防腐剤含有溶液を使用する。好ましくは、水分結合性溶液の浸透圧的に効果がある濃度やその吸湿性の物質の濃度は、0.01%~飽和限界であり、好ましくは5~20%である。好ましくは、浸透圧的や吸湿的に効果のある溶液と組み合わせて使用される界面活性剤や防腐剤を、0.01%~飽和限界まで、好ましくは0.01~10%の濃度で使用する。
好ましくは、水分結合剤で処理されるセルロースまたはセルロース含有材料を空気乾燥する。好ましくは、水分結合剤で処理されるセルロースまたはセルロース含有材料を真空乾燥する。
好ましくは、水分結合性溶液の吸着剤効果の対象となるセルロースまたはセルロース含有材料を、水分結合性溶液の中に浸す。好ましくは、水分結合性溶液の吸着剤効果の対象となるセルロースまたはセルロース含有材料の上に、水分結合性溶液を噴霧するか、滴下するか、刷毛で塗るか、または注ぐ。好ましくは、吸着剤に暴露する目的のセルロース作成過程に加えて、水分結合剤を前もって加える。さらに開示されるのは適する乾燥セルロースと乾燥セルロース含有材料であって、その特徴は、乾燥セルロースと乾燥セルロース含有材料の構造には、元のセルロース構造と濃度をほぼ完全に再構成しながら膨潤性を有する目的で、乾燥した水分結合剤の浸透圧的や湿潤的効果のある吸着材が含まれる。
【0054】
本発明に従って使用可能なナノセルロース層は、ナノセルロース膜またはドレッシング材であって、それらは任意ではあるがカバーが付けられていて、また、ディスク状の形態であってもよい。従って、セルロース層またはナノセルロース層は、一つの好ましい実施形態では、セルロースディスクまたはナノセルロースディスクである。典型的には、創傷浸出液と接触させるナノセルロース表面積は、約1cm2~100cm2の範囲にある。
【0055】
「創傷バイオフィルムサンプル」または「WB」は、個体の皮膚創傷から得られる創傷バイオフィルムの試料として理解される。創傷バイオフィルムサンプル取得方法は当該技術分野で既知である。例えば、創傷バイオフィルムサンプルは、鋭利な外科器具でデブリードマンすることによってか、または、創傷表面を綿棒もしくは創傷ドレッシング材でふき取ることによって取得可能である。創傷バイオフィルムサンプルの体積は異なっていてもよく、1nl~1l、10nl~1lまたは100nl~1l、例えば1μl~1l、1ml~1lまたは10ml~1lの範囲にある場合がある。創傷バイオフィルムの湿重量は異なっていてもよく、10μg~10g、100μg~10g、例えば、1mg~10g、10mg~10g、100mg~10gまたは1g~10gの範囲にある場合がある。創傷バイオフィルムサンプルは、サンプル取得直後に本発明の方法中で使用してもよいし、本発明の方法で使用する前に保存、特に、<4℃、<0℃または<10℃で保存可能である。
【0056】
初代線維芽細胞の増殖と初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成とを測定することに関連する上記アッセイが皮膚創傷をそれぞれ治癒性皮膚創傷または非治癒性皮膚創傷として確実に同定することができるということは驚くべき知見であった。特に、皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷として確実に同定することが可能となる。従って、これらのアッセイの内一つまたは両方を、本発明の方法に使用することができる。特に、治癒性創傷の創傷浸出液が、創傷浸出液の非存在下のコントロールと比べて、初代線維芽細胞の増殖と初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成とへの用量依存的正の作用を有していることは驚くべき知見であった。従って、前記アッセイ(複数可)で得られる、創傷浸出液非存在下で得られたコントロール値以上の値(複数可)は治癒性創傷の指標となる。従って、前記アッセイ(複数可)で得られる、創傷浸出液非存在下で得られたコントロール値より低い値(複数可)は非治癒性創傷の指標となる。
【0057】
コントロール値(複数可)は並行して測定してもよいし、または、独立して確立してもよいが、好ましくは並行して得る。
【0058】
従って、本発明の方法の工程b)において、皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定するのは、i)および/もしくはii)で確立された値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で得られたコントロール値より低い場合であって、好ましくは、各コントロール値(複数可)より少なくとも10%低い、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%各コントロール値(複数可)よりも低い場合;
または、皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定するのは、i)および/もしくはii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合であって、各コントロール値(複数可)より少なくとも10%高い、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%各コントロール値(複数可)よりも高い場合であり、より好ましいのは、i)で得られた値が少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%各コントロール値より高いもので、および/もしくは、ii)で得られた値が少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%各コントロール値よりも高い場合である。
【0059】
さらに、少なくとも三重反復して測定を実施するのが好ましく、および/または、診断の精度を改善するために統計的に有意であると決定することが好ましい。統計法は当該技術分野で既知である。例えば、標準偏差を決定してもよい。さらに、皮膚創傷を治癒または非治癒性皮膚創傷として同定するための統計学的有意差はp≦0.05、p≦0.001またはp≦0.001である場合がある。
【0060】
従って、好ましい実施形態では、工程a)での値(複数可)が少なくとも三重反復して測定され、および/または、統計的に有意であると決定される。
【0061】
さらにまた、判明したのは、両方のアッセイ(創傷浸出液サンプル存在下で、それぞれ、初代線維芽細胞の増殖と初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成とを測定するもの)を実施する場合に、本発明の精度がさらに改善されることであった。従って、両アッセイで得られた値(複数可)が創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値より低い場合に皮膚創傷は非治癒性皮膚創傷と確実に同定可能である。さらに、両アッセイで得られた値(複数可)が創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に皮膚創傷は治癒性皮膚創傷と確実に同定可能である。より好ましい実施形態では、両アッセイにおける各値が、各コントロール値よりも少なくとも10%高い、より好ましくは両アッセイにおいて得られた各値が少なくとも15%、さらに好ましくは、少なくとも20%、30%、40%または50%各コントロール値よりも高い場合に、皮膚創傷を治癒性皮膚創傷として同定する。好ましい実施形態では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0062】
従って、別の好ましい実施形態では、両アッセイにおける各値が、各コントロール値よりも少なくとも10%低い、より好ましくは両アッセイにおいて得られた各値が少なくとも15%、さらに好ましくは、少なくとも20%、30%、40%または50%各コントロール値よりも低い場合に、皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷として同定する。従って、本発明の方法の信頼性と精度はさらに向上可能である。
【0063】
従って、好ましい実施形態では、本発明の方法は、
a)
i)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および、
ii)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
b)a)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低く、および、a)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低い場合、好ましくは、a)i)およびa)ii)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも10%低い場合、より好ましくは、a)i)およびa)ii)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%低い場合に、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程、または、
a)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上で、および、a)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合、
好ましくは、a)i)およびa)ii)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%高い場合、より好ましくは、a)i)で得られた前記値が少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%各コントロール値より高く、および、a)ii)で得られた前記値が少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%前記各コントロール値よりも高い場合に、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程と、を含み、
好ましくは、a)i)とa)ii)で得られた値を組み合わせた値を確立し、および/または、a)の値は少なくとも三重反復して測定したり、統計的に有意であると決定したりする。
【0064】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0065】
さらにまた、驚くべき知見は、角化細胞(例、初代角化細胞またはHaCaT細胞)の増殖を測定するさらなるアッセイを本方法に含めることによって、精度と信頼性をさらに増加させることができることであった。さらに、実施例で判明したのは、初代角化細胞に比べるとHaCaT細胞の使用が好ましく、そして、線維芽細胞ベースの上記アッセイと組み合わせると信頼性の高い予測を可能とすることであった。驚くべき知見とは、初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイ、初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定するアッセイおよび角化細胞の増殖を測定するアッセイで得られる少なくとも2つ、好ましくは3つの値全部が、創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値以上である場合、より好ましくは、初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイや初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定するアッセイおよび角化細胞の増殖を測定するアッセイで得られる値が少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、20%、30%、40%または50%各コントロール値より高い場合に、皮膚創傷を治癒性皮膚創傷として確実に同定可能であることであった。
【0066】
従って、判明したのは、初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイ、初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定するアッセイおよび角化細胞の増殖を測定するアッセイで得られる少なくとも2つ、好ましくは3つの値全部が、創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値よりも低い場合、より好ましくは、初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイや初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定するアッセイおよび角化細胞の増殖を測定するアッセイで得られる値が少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、20%、30%、40%または50%各コントロール値より低い場合に、皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷として確実に同定可能であることであった。
【0067】
従って、本発明の方法の別の好ましい実施形態では、工程a)はさらに以下の工程:
iiia)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での角化細胞の増殖を測定する工程を含み、
ならびに、工程b)は、
b)i)~iiia)で得られた少なくとも2つ、好ましくは3つの値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値より低い場合、より好ましくは、i)および/もしくはii)とiiia)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%低い場合に、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程、
または、
i)~iii)で得られた少なくとも2つ、好ましくは3つの値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値以上の場合、より好ましくは、i)および/もしくはii)とiiia)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%高い場合、
さらに好ましくは、i)で得られた前記値が少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%各コントロール値より高く、および/もしくは、ii)で得られた前記値が少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%前記各コントロール値よりも高く、ならびに、iiia)で得られた前記値が少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%各コントロール値より高い場合に、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程、を含み、
好ましくは、i)および/もしくはii)とiiia)で得られた値を組み合わせた値を確立する。
【0068】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0069】
工程iiia)では、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での角化細胞の増殖を測定する。角化細胞増殖アッセイは、好ましくは、例えば実施例で記載されるように、標準的条件下(例、培地としてFCS含有DMEMを使用することによるもの)でヒト初代角化細胞またはHaCaT細胞(標準的角化細胞株)を培養する工程を含む。その後、前記細胞を固相支持体上でインキュベーションし、従って、前記細胞が前記支持体に接着することを可能にする。さらに、任意ではあるが希釈された前記創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと前記細胞を接触させ、前記接触が前記細胞の接着が起こる前または後に実施される場合がある。例えば、任意ではあるが希釈した創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを、例えば、ピペッティングによってまたはそうでなければ液体に加えることによって接着細胞に加えてもよい。または、任意ではあるが希釈した創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを、例えば、非接着細胞にピペッティングによってまたはそうでなければ液体に加えることによりその細胞へと加え、その後、その角化細胞が接着できるようにしてもよい。その後、細胞は、好ましくは6時間~200時間、好ましくは24時間~100時間インキュベーションする。実施例では、細胞を72時間インキュベーションする。その後、例えば、前記細胞を固定して総タンパク質含量を決定することによって角化細胞の量、好ましくは細胞数を測定する。細胞は、例えば、パラホルムアルデヒドを使用して固定してもよい。さらに、適切な染料(例、スルホローダミンB)を使用して、角化細胞の量、好ましくは細胞数を決定することができる。染色した細胞は、例えば、染料に合わせて適切な波長での吸光度または蛍光を測定することによって、その後定量可能である。好ましくは、本方法を2D細胞培養(固相支持体上に接着するように細胞を培養することを可能とするもの)で実施する。好ましくは、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0070】
角化細胞は初代角化細胞または角化細胞株、特にヒト初代角化細胞またはヒト角化細胞株であってもよい。一つの好ましい実施形態では、本発明で使用する角化細胞をHaCaT細胞および初代角化細胞から選択する。HaCaT細胞は、確立されていて広く使用されるヒト角化細胞株である。
【0071】
より好ましい実施形態では、本発明で使用する角化細胞はHaCaT細胞である。
【0072】
従って、好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での角化細胞の増殖を測定する工程は以下の工程:
(i)角化細胞を培養する工程、
(ii)前記細胞を固相支持体上にインキュベーションし、従って、前記細胞が前記支持体に接着することを可能にする工程、
(iii)任意ではあるが希釈された前記創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと前記細胞を接触させ、前記接触が前記細胞の接着が起こる前または後に実施される場合がある工程、
(iv)例えば、前記細胞を固定して総タンパク質含量を決定することによって前記角化細胞の量、好ましくは細胞数を測定する工程を含み、
好ましくは、本方法を2D細胞培養で実施する。
【0073】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0074】
さらにまた、驚くべき知見とは、創傷浸出液に関連してマクロファージM1およびM2マーカーを測定する一または複数のさらなるアッセイを本方法中に含めることによって、精度と信頼性をさらに増加させることができることであった。これらのマーカーは、細胞表面タンパク質マーカー、マクロファージ上清中のタンパク質マーカー、または、マクロファージ中のマーカーmRNAである場合がある。
【0075】
マクロファージは、組織常在性の専門化した食細胞および抗原提示細胞(APC)であり、循環する末梢血単球から分化したものである。様々な表現型を有する活性化マクロファージは、当業者によって、M1マクロファージとM2マクロファージに分類される。M1マクロファージは活性化マクロファージであって、急性炎症性表現型を有する免疫エフェクター細胞が含まれる。これらの細胞は細菌に対して非常に攻撃的であり、多量のリンホカインを生産する。M2マクロファージは、代替的に活性化したものであり、抗炎症性である。
【0076】
「M2マーカー」は、M2マクロファージに特異的なタンパク質マーカーとして理解される。好ましくは、そのマーカーはマクロファージによって分泌される。適するM2マーカーが当該技術分野で既知であり、好ましくは、CCL22およびCCL18から選択される。それらのマーカーは、当該技術分野で既知の方法によって、例えば、免疫学的アッセイを使用することによって、さらに好ましくはELISAアッセイを使用することによって測定される場合がある。
【0077】
「M1マーカー」は、M1マクロファージに特異的なタンパク質マーカーとして理解される。好ましくは、そのマーカーはマクロファージによって分泌される。適するM1マーカーが当該技術分野で既知であり、好ましくは、CXCL10およびIL-23p19から選択される。それらのマーカーは、当該技術分野で既知の方法によって、例えば、免疫学的アッセイを使用することによって、さらに好ましくはELISAアッセイを使用することによって測定される場合がある。
【0078】
「M1細胞表面マーカー」は、マクロファージ表面に発現され且つM1マクロファージ特異的なタンパク質マーカーとして理解される。適するM1マーカーが当該技術分野で既知であり、好ましくは、CD38、CD64およびCD197から選択される。それら細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)は、免疫学的アッセイおよび/または蛍光アッセイによって、特に、FACS解析によって(典型的には、度数分布が測定されることによって)測定可能である。
【0079】
「M2細胞表面マーカー」は、マクロファージ表面に発現され且つM2マクロファージ特異的なタンパク質マーカーとして理解される。適するM2細胞表面マーカーが当該技術分野で既知であり、好ましくは、CD200受容体(CD200R)、CD206およびCD209から選択される。それら細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)は、免疫学的アッセイおよび/または蛍光アッセイによって、特に、FACS解析によって(典型的には、度数分布が測定されることによって)測定可能である。
【0080】
「M2マーカーmRNA」は、マクロファージによって発現され、M2マクロファージに特異的なmRNAとして理解される。適するM2マーカーmRNAが当該技術分野で既知であり、好ましくは、CD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択される。マーカーmRNAは当該技術分野で既知の方法によって測定される。好ましくは、その量は、マーカーmRNAに特異的に結合するプローブ(このプローブは任意ではあるが標識される)を、ハイブリダイゼーションが可能な条件下でマクロファージRNAと接触させ、そして、ハイブリダイズしたプローブを検出することによって測定される。例えば、mRNAは検出前にcDNAへと逆転写される場合がある。
【0081】
「M1マーカーmRNA」は、マクロファージによって発現され、M1マクロファージに特異的なmRNAとして理解される。適するM1マーカーmRNAが当該技術分野で既知であり、好ましくは、CD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択される。好ましくは、その量は、マーカーmRNAに特異的に結合するプローブ(このプローブは任意ではあるが標識される)を、ハイブリダイゼーションが可能な条件下でマクロファージRNAと接触させ、そして、ハイブリダイズしたプローブを検出することによって測定される。例えば、mRNAは検出前にcDNAへと逆転写される場合がある。
【0082】
驚くべき知見とは、初代線維芽細胞の増殖の測定、初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックスの測定および角化細胞の増殖の測定に関する上記一または複数の細胞アッセイと組み合わせると、M1/M2マーカーの比率が治癒性または非治癒性皮膚創傷の指標となることであった。特に、M1/M2マーカー、M1/M2細胞表面マーカーまたはM1/M2マーカーmRNAの比率が高いことが、非治癒性皮膚創傷の指標となる一方、M1/M2マーカー、M1/M2細胞表面マーカーまたはM1/M2マーカーmRNAの比率が低いことは治癒性皮膚創傷の指標となる。
【0083】
実施例3.1.6と
図38~43および45に示すように、驚くべき知見とは、マクロファージ/線維芽細胞共培養物中のマクロファージによって分泌される炎症促進性サイトカインIL1α、IL1βおよびTNF-αの量が創傷治癒をモニターするためや治癒性皮膚創傷または非治癒性皮膚創傷を同定して予測するのに特に適していることが分かったことであった。特に、より高い量のこれらのサイトカインが、治癒性創傷由来のWEに比較して、非治癒性創傷由来のWEの存在下で分泌されることが判明した。サイトカインIL1α、IL1βおよびTNF-αはタンパク質、好ましくはヒトタンパク質であって、当業者に周知のものである。IL1α(インターロイキン-1αまたはIL-1αとしても知られるもの)、IL1β(インターロイキン-1βまたはIL-1βとしても知られるもの)およびTNF-α(腫瘍壊死因子αまたはTNF-αとしても知られるもの)は、当該技術分野で既知の方法によって、例えば、免疫学的アッセイを使用することによって、さらに好ましくは実施例に記載されるようにELISAアッセイを使用することによって測定可能である。IL1α、IL1βおよびTNF-αは炎症促進性サイトカインであることが知られている。
【0084】
従って、本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明の方法の工程a)は、以下の工程iiib)~iiid)の内一つ、二つまたは三つをさらに含み、前記工程は、
iiib)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
iiic)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
iiid)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
そして、本発明の方法の工程b)は、
b)以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合に、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合は、
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合であるか、
または、
以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合に、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合が、
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以上である場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以上である場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以上である場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合であり、
好ましくは、i)、ii)、iiia)、iiib)、iiic)および/もしくはiiid)で得られた値を組み合わせた値が確立される。
【0085】
従って、本発明のまたさらに好ましい実施形態では、本発明の方法の工程a)は、以下の工程iiib)~iiid)の内一つ、二つもしくは三つをさらに含むか、または、以下の工程iiib)~iiie)の内一つ、二つ、三つもしくは四つをさらに含み、前記工程が
iiib)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、前記一または複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、前記M2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、
iiic)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、前記一または複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一または複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、
iiid)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、前記一または複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、
iiie)前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、前記一または複数のサイトカインマーカーがIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択され、
ならびに、工程b)は、
b)以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合が
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合であって、特に、前記比率が、CD38/CD209の比率、CD197/CD209の比率およびCD197/CD206の比率から選択される場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合、
(7)iiie)で得られた値がカットオフ値よりも高い場合であるか、
または、
以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合が、
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以上である場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以上である場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以上である場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合であって、特に、前記比率が、CD38/CD209の比率、CD197/CD209の比率およびCD197/CD206の比率から選択される場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(7)iiie)で得られた値がカットオフ値よりも低い場合であり、
好ましくは、i)、ii)、iiia)、iiib)、iiic)、iiid)および/もしくはiiie)で得られた値を組み合わせた値が確立される。
【0086】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0087】
従って、本発明のまたさらに好ましい実施形態では、本発明の方法の工程a)は、上記工程iiib)、iiic)およびiiie)の内一つ、二つまたは三つをさらに含む。そのような好ましい実施形態では、工程b)は、上記非治癒性皮膚創傷評価項目の(1)~(5)と(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つまたは六つが満たされる場合に、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含む。さらに、そのような好ましい実施形態では、工程b)は、上記治癒性皮膚創傷評価項目の(1)~(5)と(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つまたは六つが満たされる場合に、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含む。
【0088】
実施例3.1.6と
図34、35および44に示すように、驚くべき知見とは、以下のM1細胞表面マーカー/M2細胞表面マーカーの比率(CD38/CD209の比率、CD197/CD209の比率およびCD197/CD206の比率)がそれぞれ治癒性皮膚創傷または非治癒性皮膚創傷の同定予測に特に適していることが判明したことであった。
【0089】
従って、好ましい実施形態では、iiic)で得られた、CD38/CD209の比率、CD197/CD209の比率およびCD197/CD206の比率から選択される量(複数可)および/または度数分布(複数可)の比率がカットオフ値より高い場合に、皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷として同定する。
【0090】
従って、別の好ましい実施形態では、iiic)で得られた、CD38/CD209の比率、CD197/CD209の比率およびCD197/CD206の比率から選択される量(複数可)および/または度数分布(複数可)の比率がカットオフ値より低い場合に、皮膚創傷を治癒性皮膚創傷として同定する。
【0091】
度数分布は、ある集団内で所定マーカーに陽性の細胞のパーセンテージ(FACS解析で最も一般的な表示値)を決定することによって測定可能である。また、量は、マーカーに対して標識結合剤を使用して個々の細胞当たりの細胞表面上の標識分子数の代わりに、例えば、平均蛍光強度によって測定される細胞表面発現量を決定することによって測定可能である。
【0092】
好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程は、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)任意ではあるが希釈された創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)前記細胞の培養上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量を測定する工程であって、
好ましくは、前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、および/または、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択されるか、より好ましくは、前記マーカーが免疫学的アッセイを使用することによって、さらに好ましくはELISAアッセイを使用することによって測定される工程を含む。
【0093】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0094】
例えば、初代ヒト単球細胞は2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞、または線維芽細胞由来マトリックスと共培養してもよい。線維芽細胞由来マトリックス生成方法は、実施例中および上部に記載される。その後、マクロファージ分化が達成されるまで細胞をインキュベーションする。例えば、CD163はマクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用可能である。さらに、例えば、サンプルを細胞にピペッティングし、任意ではあるが穏やかに混合することによって、任意ではあるが希釈した創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと細胞を接触させる。さらに、細胞を、好ましくは1時間~100時間、例えば、4時間~100時間インキュベーションする。その後、前記細胞の培養上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量を測定する。その上清は典型的にはそのような目的のために回収され、マーカーは適するアッセイ(例、免疫学的アッセイ)を使用して測定される。例えば、ELISAを使用してもよい。好ましい実施形態では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0095】
別の好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程は、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)任意ではあるが希釈された創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)マクロファージの細胞表面上の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程を含む。
【0096】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0097】
例えば、初代ヒト単球細胞は2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞、または線維芽細胞由来マトリックスと共培養してもよい。線維芽細胞由来マトリックス生成方法は、実施例中および上部に記載される。その後、マクロファージ分化が達成されるまで細胞をインキュベーションする。例えば、CD163はマクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用可能である。さらに、例えば、サンプルを細胞にピペッティングし、任意ではあるが穏やかに混合することによって、任意ではあるが希釈した創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと細胞を接触させる。さらに、細胞を、好ましくは1時間~100時間、例えば、4時間~100時間インキュベーションする。その後、マクロファージの細胞表面上の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する。例えば、細胞を回収して、FACS解析に掛けて、単球/マクロファージ集団をゲーティングしてもよい。平均蛍光強度の幾何平均を使用して、表面マーカー発現を定量することができる。
【0098】
好ましくは、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーはCD38、CD64およびCD197から選択され、ならびに/または、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーはCD200受容体(CD200R)、CD206およびCD209から選択される。より好ましくは、それら細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を、免疫学的アッセイおよび/または蛍光アッセイによって、特に、FACS解析によって測定する。
【0099】
一つの好ましい実施形態では、工程(iv)は、一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体と前記マクロファージを接触させる工程であって、前記結合剤が任意ではあるが標識、特に蛍光ラベルで標識される工程と、前記マクロファージに結合する結合分子の量を測定、特に、平均蛍光強度を測定することによって、従って、前記細胞表面マーカーの量(複数可)を測定する工程とを含む。例えば、表面マーカーを特異的に認識し、蛍光ラベルを含む抗体が使用可能である。
【0100】
別の好ましい実施形態では、工程(iv)は、一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体と前記マクロファージを接触させる工程であって、前記結合剤が任意ではあるが標識、特に蛍光ラベルで標識される工程と、細胞集団内で、前記一または複数のM1細胞表面マーカーと前記一または複数のM2細胞表面マーカーにそれぞれ陽性である細胞のパーセンテージを測定する工程であって、特に、FACS解析が実施され、従って、前記細胞表面マーカーの度数分布(複数可)を測定する工程と、を含む。例えば、表面マーカーに特異的に結合し、蛍光ラベルを含む抗体が使用可能である。
【0101】
マーカータンパク質の結合剤としてのタンパク質の測定は、タンパク質またはポリぺプチドと特異的に相互作用するタンパク質を同定取得する任意の様々な公知の方法(例、酵母ツーハイブリッドスクリーニングシステム)であって、米国特許第5,283,173号や米国特許第5,468,614号、またはそれと同等のものに記載されるものを使用して実行可能である。マーカーを特異的に認識する結合剤は、好ましくは、その対応する標的分子に対する親和性が少なくとも107l/molである。マーカーを特異的に認識する結合剤は、好ましくは、その対応する標的マーカー分子に対する親和性が108l/molまたはさらに好ましくは109l/molである。当業者の理解するように特定の用語は、サンプルに存在する他の生体分子がマーカーを特異的に認識する結合剤に有意に結合しないことを示すために使用される。好ましくは、標的マーカー分子以外の生体分子への結合レベルは、各標的マーカー分子に対する親和性のわずか10%以下、より好ましくはわずか5%以下の結合親和性となる。好ましい特異的結合剤は親和性と特異性に関する上記最低限の評価項目を満たす。
【0102】
マーカーを特異的に認識する結合剤は、好ましくは、そのマーカーと反応する抗体である。抗体という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、そのような抗体の抗原結合断片、単鎖抗体、および、抗体の結合領域を含む遺伝子構築物のことを言う。
【0103】
用語「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、その断片(例、F(ab’)2とFab断片)、および、任意の天然または組換え生産される結合相手(マーカータンパク質に特異的に結合する分子)が含まれる。特異的結合剤の上記評価項目を満たす任意の抗体断片が使用可能である。抗体は、例えば、Tijssen(Tijssen,P.,Practice and theory of enzyme immunoassays、Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam(1990)、本全体、特に43-78ページ)に記載される最先端の方法で作製される。また、当業者は、抗体の特異的単離に使用可能な免疫吸着材に基づく方法をよく認識している。これらの手段によって、ポリクローナル抗体の品質と従ってその免疫アッセイでの性能は向上可能となる(Tijssen,P.、上記、108-115ページ)。
【0104】
本発明に開示されることを実現するために、例えば、ヤギで作製したポリクローナル抗体が使用可能である。しかしながら、別の種、例えば、ラット、ウサギまたはモルモット由来のポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体も使用可能なことも明白である。モノクローナル抗体は任意の必要な量で一定の特性を有して生産可能であるので、臨床で定期的に使用されるアッセイの開発における理想的ツールとなる。
【0105】
測定のために、個体から得られたサンプルを、結合剤/マーカー複合体形成に適する条件下で対象マーカーを特異的に認識する結合剤とインキュベーションする。そのような条件が特定される必要がない理由は、当業者が発明に値する労力無しに容易にそのような適切なインキュベーション条件を同定することができるからである。結合剤/マーカー複合体の量を、本発明の方法と使用で測定および使用する。当業者が理解するように、特異的結合剤/マーカー複合体の量を測定する多数の方法があり、それらはすべて妥当な教科書(例、Tijssen P.、上記のもの、またはDiamandis,E.P.とChristopoulos,T.K.(編)、Immunoassay、Academic Press、Boston(1996)を参照されたい)に詳細に記載されている。
【0106】
特に、マーカー(複数可)に対するモノクローナル抗体は、定量的免疫アッセイ(マーカー(複数可)の量または濃度を測定するもの)で使用される。
【0107】
例えば、マーカーはサンドウィッチ型アッセイ形式で検出可能である。そのようなアッセイでは、第一の特異的結合剤を使用して一側の対象マーカーを捕獲し、第二の特異的結合剤(例、二次抗体)(標識されて直接的または間接的に検出可能なもの)を他側に使用する。第二の特異的結合剤は、検出可能なリポーター部分または標識(例、酵素、染料、放射性核種、発光基、蛍光基もしくはビオチン等)を含む場合がある。任意のリポーター部分または標識は、そのシグナルが洗浄後の支持体に残る結合剤の量に直接関連するか比例する限り、本明細書中に開示される方法で使用可能である。固相支持体に結合したままの第二結合剤の量をその後、特異的に検出可能なリポーター部分または標識に適する方法を使用して測定する。放射性基に関しては、シンチレーション測定またはオートラジオグラフィー方法が一般的に適切である。抗体-酵素結合体は、各種カップリング手法(総説に関しては、例えば、Scouten,W.H.,Methods in Enzymology 135:30-65、1987を参照されたい)を使用して調製可能である。分光法を使用して、染料(例、酵素反応の発色産物を含むもの)、発光基および蛍光基を検出してもよい。ビオチンは、アビジンまたはストレプトアビジンを使用して検出可能であり、異なるリポーター基(一般的には放射性または蛍光性基または酵素)に結合可能である。酵素リポーター基は、基質を(一般的には特定時間)加えて、その後、その反応産物を分光解析、分光光度解析、または他の解析を行うことによって、一般的に検出可能である。標準物質とその添加物を使用し、周知の手法を使用してサンプル中の抗原レベルを測定することができる。
【0108】
本発明のマーカータンパク質を測定する免疫アッセイには、本明細書中に記載されるマーカータンパク質の定量のための、例えば、ELISA、酵素免疫アッセイ(EIA)、および電気化学発光免疫アッセイ(ECLIA)が含まれる。
【0109】
別の好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程は、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)任意ではあるが希釈された創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)前記マクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの前記発現レベルを測定する工程を含む。
【0110】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0111】
好ましくは、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、ならびに/または、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択される。より好ましくは、本方法は、マーカーmRNAに特異的に結合するプローブ(このプローブは任意ではあるが標識される)を、ハイブリダイゼーションが可能な条件下でマクロファージRNAと接触させる工程と、ハイブリダイズしたプローブを検出する工程とを含む。
【0112】
例えば、初代ヒト単球細胞は2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または線維芽細胞由来マトリックスと共培養してもよい。線維芽細胞由来マトリックス生成方法は、実施例中および上部に記載される。その後、マクロファージ分化が達成されるまで細胞をインキュベーションする。例えば、CD163はマクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用可能である。さらに、例えば、サンプルを細胞にピペッティングし、任意ではあるが穏やかに混合することによって、任意ではあるが希釈した創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと細胞を接触させる。さらに、細胞を、好ましくは1時間~100時間、例えば、4時間~100時間インキュベーションする。その後、前記マクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する。例えば、細胞を回収して、mRNA発現レベル(複数可)を適切なプロ-ブを使用して測定してもよい。例えば、ハウスキーピング遺伝子(例、アクチンまたはGAPDH)の発現レベルを測定する場合があり、そして、M1またはM2マーカーRNA(複数可)の発現レベル(複数可)をハウスキーピング遺伝子に相対的な発現レベルとして測定してもよい。
【0113】
別の好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一または複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程は、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)任意ではあるが希釈された創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)前記細胞の培養上清中のIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一または複数のサイトカインマーカーの量を測定する工程であって、
好ましくは、前記サイトカインマーカーが免疫学的アッセイを使用することによって、より好ましくはELISAアッセイを使用することによって測定される工程を含む。
【0114】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0115】
例えば、初代ヒト単球細胞は2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または線維芽細胞由来マトリックスと共培養してもよい。線維芽細胞由来マトリックス生成方法は、実施例中および上部に記載される。その後、マクロファージ分化が達成されるまで細胞をインキュベーションする。例えば、CD163はマクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用可能である。さらに、例えば、サンプルを細胞にピペッティングし、任意ではあるが穏やかに混合することによって、任意ではあるが希釈した創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと細胞を接触させる。さらに、細胞を、好ましくは1時間~100時間、例えば、4時間~100時間インキュベーションする。その後、前記細胞の培養上清中のIL-1α、IL-1βおよびTNF-αの一または複数のものの量を測定する。その上清はそのような目的で一般的やり方を用いて回収し、サイトカインマーカーを適するアッセイ(例、免疫学的アッセイ)を使用して測定する。例えば、ELISAを使用してもよい。好ましい実施形態では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0116】
実施例3.1.6と
図38~43および45に示すように、上清中のIL-1α、IL-1βおよびTNF-αの量は治癒性創傷と比べて非治癒性創傷由来の創傷浸出液の存在下で高く、そして、互いに異なる時点において、非治癒性状態にある創傷由来の創傷浸出液の存在下の方が、治癒性状態にある同一創傷由来の創傷浸出液に比べて高い。従って、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αの量はそれぞれ治癒性または非治癒性創傷の指標となると共に、皮膚創傷の創傷治癒をモニターするための指標ともなる。この状況では、カットオフ値を適切に決定する。
【0117】
アッセイに関して適切なカットオフ値は、所望の感度と特異度に応じて選択可能である。感度と特異度は、分類関数として統計学において知られる二項分類検定を実行する際の統計学的基準である。
【0118】
感度(真陽性率とも呼ばれる)は陽性が正しく同定される割合(例、治癒性皮膚創傷として同定された治癒性皮膚創傷のパーセンテージ)を測る。
【0119】
特異度(真陰性率とも呼ばれる)は陰性が正しく同定される割合(例、非治癒性皮膚創傷として同定された治癒性皮膚創傷のパーセンテージ)を測る。
【0120】
任意の検定に関しては、通常基準間で妥協点がある。例えば、安全性への潜在的脅威を検査する空港セキュリティー設定においては、飛行機や乗員乗客に脅威を与える物を見過ごすリスクを減らすために(高感度)、バックルや鍵のような低リスクアイテムでも検出を起こすように(低特異度)スキャナーを設定する場合がある。この妥協点は受信者動作特性曲線としてグラフ化可能である。完璧な予測とは100%の感度(例、全ての非治癒性皮膚創傷が非治癒性皮膚創傷として同定されること)と100%の特異度(例、すべての治癒性皮膚創傷が非治癒性皮膚創傷として同定されないこと)として説明可能である;しかしながら、如何なる理論的予測もベイズ誤り率として知られる最小限のエラーバウンドを有する。感度または特異度のいずれかを増加させるためにカットオフを設定する場合がある。
【0121】
二以上の値(例、初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイと初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定するアッセイを実施する際に決定される値)を本発明の方法で使用する場合、それらアッセイで得られた二以上の値を使って組み合わせた値が算定可能である。組み合わせた値を、各コントロールを組み合わせた値(同等の数学的手順を使用して得られたもの)と比較する。好ましい実施形態では、組み合わせた値は、各値に重みづけして計算することによって得る。これが意味するのは、アッセイの一つは他のものよりもより高い重みづけを与えられるということである。好ましくは、重み係数は、皮膚創傷の参照集団を解析することによって得られたものである。
【0122】
さらに、驚くべき知見とは、本明細書中に記載される二以上の細胞生化学アッセイを実行する場合に正確さと信頼性の増加が達成可能であり、その場合、初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイおよび/または初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス(FDM)を測定するアッセイで得られた値(複数可)が治癒性皮膚創傷または非治癒性皮膚創傷として皮膚創傷を同定するのに必須である。例えば、皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷として同定する工程で好ましく要求されるのは、少なくとも初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイおよび/または初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定するアッセイで得られる値(複数可)が、創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値(複数可)よりも低いことである。さらに、皮膚創傷を治癒性皮膚創傷として同定する工程で好ましく要求されるのは、少なくとも初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイおよび/または初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定するアッセイで得られる値(複数可)が、創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値(複数可)以上であることである。好ましくは、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0123】
従って、本発明のより好ましい実施形態では、工程b)は、
以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つが満たされる場合に前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合は、
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合であるが、
ただし、少なくともi)および/もしくはii)で得られた値(複数可)は創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値(複数可)よりも低い場合であり、
ならびに/または、
以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つが満たされる場合に前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合が、
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも高い場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも高い場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも高い場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合であるが、
ただし、少なくともi)および/もしくはii)で得られた値(複数可)は創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値(複数可)以上である場合である。
【0124】
従って、本発明の別のより好ましい実施形態では、工程b)は、
b)以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合が、
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも低い場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合であって、前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、および、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択される場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合であって、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記M2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、特に、前記比率が、CD38/CD209の比率、CD197/CD209の比率およびCD197/CD206の比率から選択される場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも高い場合であるが、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択される場合、
(7)iiie)で得られた、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一もしくは複数のサイトカインマーカーの量(複数可)の値がカットオフ値より高い場合であるが、
ただし、少なくともi)および/もしくはii)で得られた値(複数可)は創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値(複数可)よりも低い場合であり、
ならびに/または、
以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含み、前記場合が、
(1)i)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも高い場合、
(2)ii)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも高い場合、
(3)iiia)で得られた値が、創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値よりも高い場合、
(4)iiib)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(5)iiic)で得られた、一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合であって、特に、前記比率が、CD38/CD209の比率、CD197/CD209の比率およびCD197/CD206の比率から選択される場合、
(6)iiid)で得られた、一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率がカットオフ値よりも低い場合、
(7)iiie)で得られた、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一もしくは複数のサイトカインマーカーの量(複数可)の値がカットオフ値より低い場合であるが、
ただし、少なくともi)および/もしくはii)で得られた値(複数可)は創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値(複数可)以上である場合である。
【0125】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0126】
本発明の別のより好ましい実施形態では、工程b)は、上記非治癒性皮膚創傷評価項目の(1)~(5)と(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つまたは六つが満たされる場合に、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含むが、ただし、少なくともi)および/またはii)で得られた値(複数可)は創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値(複数可)よりも低い場合である。本発明の別のより好ましい実施形態では、工程b)は、上記治癒性皮膚創傷評価項目の(1)~(5)と(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つまたは六つが満たされる場合に、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定する工程を含むが、ただし、少なくともi)および/またはii)で得られた値(複数可)は創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立される各コントロール値(複数可)以上である場合である。
【0127】
より好ましい実施形態では、治癒性皮膚創傷に関する上記(1)~(6)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つ、上記(1)~(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つ、または、上記(1)~(5)と(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合に前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であるとして同定するが、ただし、少なくともi)および/もしくはii)で得られた値(複数可)は各コントロール値よりも少なくとも10%高く、より好ましくは、i)および/もしくはii)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、30%、40%もしくは50%高い場合であり、さらに好ましくは、i)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、30%、40%もしくは50%高い場合であって、ii)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、さらに好ましくは110%、120%、130%もしくは140%高い場合である。
【0128】
別のより好ましい実施形態では、非治癒性皮膚創傷に関する上記(1)~(6)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つ、上記(1)~(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つ、または、上記(1)~(5)と(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合に前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定するが、ただし、少なくともi)および/もしくはii)で得られた値(複数可)は各コントロール値よりも少なくとも10%低く、より好ましくは、i)および/もしくはii)で得られた前記値が前記各コントロール値より少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、30%、40%もしくは50%低い場合である。
【0129】
さらに、一または複数の上記細胞生化学アッセイを使用して、個体の皮膚創傷の治癒をモニターするインビトロ方法を確立することが驚くべきことに可能であった。特に、驚くべき知見とは、二つの異なる時点での皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖を測定する工程、および/または、二つの異なる時点での前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程が創傷の治癒をモニターすることを可能とすることであった。つまり、より早い第一時点と比べて、より遅い第二時点で測定された値(複数可)の増加が前記皮膚創傷の治癒が改善したことを示す一方、より早い前記時点と比べて、より遅い前記時点で測定された値(複数可)の減少は前記皮膚創傷の治癒が悪化したことを示す。前記細胞アッセイが同定方法に関して上記したように実施される。また、上記同定方法を適用することによって、皮膚創傷がそれぞれ治癒性皮膚創傷または非治癒性皮膚創傷であるかどうかを各時点で決定することも任意ではあるが可能である。
【0130】
さらに、一つの好ましい実施形態では、一または複数のさらなる時点で本方法工程を繰り返し、従って、経時的に患者の治癒をモニターすることも可能である。
【0131】
3人の個々の患者に関して図に示すように(
図27は患者「B」、
図30は患者「C]、そして
図33は患者「A」)、本発明の方法は、患者の皮膚創傷の創傷治癒を確実にモニターおよび予測することを可能にする。例えば、本発明の方法は、目視によって創傷治癒の改善を結論した時点での、患者の皮膚創傷治癒のその後の悪化を正確に予測した。
【0132】
従って、別の実施形態では、本発明は個体の皮膚創傷の治癒をモニターするインビトロ方法に関し、本方法は、
a)
i)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および/または、
ii)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
b)任意ではあるが、a)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値より低い場合に、前記第一時点において、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、a)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に、前記第一時点において、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であると同定する工程と、
c)
i)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および/または、
ii)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
d)任意ではあるが、c)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値より低い場合に、前記第二時点において、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、c)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に、前記第二時点において、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であると同定する工程と、
e)
A)前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より高いか、および/もしくは、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より高い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の改善を示すと同定するか、
または、
B)前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より低いか、および/もしくは、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より低い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の悪化を示すと同定する工程と、
f)任意ではあるが、一または複数の後の時点で工程a)~e)を繰り返して、
従って、前記皮膚創傷の治癒をモニターする工程と、を含み、
好ましくは、
前記第一時点と前記第二時点は6時間~12ヵ月の間離れているか、および/または、
前記値(複数可)が少なくとも三重反復して測定され、および/または、統計的に有意であると決定されている。
【0133】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0134】
第二時点は第一時点よりも後であると理解される。一般的には、前記第一時点と前記第二時点は少なくとも6時間離れていて、特に、6時間~12ヵ月の間離れている。例えば、前記第一時点と前記第二時点は12時間~3、6もしくは12ヵ月離れているか、または、1日、1週もしくは1ヵ月~12ヵ月離れている。
【0135】
一つまたは両方の線維芽細胞ベースアッセイの値(複数可)の増加がより早い時点と比べてより遅い時点で確認できる場合に、第一時点と比べて第二時点で皮膚創傷の治癒が改善したことを示すと決定する本モニター法は非常に信頼性が高い。ただし、その場合、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下で初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイ、および創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下で初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定するアッセイの一つまたは両方で得られた各値は、第一のより早い時点では、創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以下である。従って、創傷が第一のより早い時点で非治癒性創傷であると本発明の同定方法によって決定される場合に、治癒の改善をモニターすることが特に信頼性が高い。
【0136】
従って、個体の皮膚創傷の治癒をモニターする本発明の方法は、それぞれの時点で、それぞれ本発明の方法を実施して、皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷または治癒性皮膚創傷であると同定する工程を含むことが好ましい。
【0137】
さらに、一つまたは両方の線維芽細胞ベースアッセイの値(複数可)の減少がより早い時点と比べてより遅い時点で確認できる場合に、第二時点で皮膚創傷の治癒が悪化したことを示すと決定する本モニター法は非常に信頼性が高い。ただし、その場合、第二のより遅い時点での皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下で初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイ、および創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下で初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定するアッセイの一つまたは両方で得られた各値は、第一のより早い時点で創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値の100%以下である。従って、創傷が第二のより遅い時点で非治癒性創傷であると本発明の同定方法によって決定される場合に、治癒の悪化をモニターすることが特に信頼性が高い。
【0138】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0139】
本同定方法の好ましい実施形態を本発明のモニター方法にも適用できると理解される。
【0140】
従って、別の実施形態では、本発明は個体の皮膚創傷の治癒をモニターするインビトロ方法に関し、本方法は、
a)
i)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および/または、
ii)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
b)任意ではあるが、a)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムサンプルの非存在下で確立されたコントロール値より低い場合に、前記第一時点において、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、a)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に、前記第一時点において、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であると同定する工程と、
c)
i)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および/または、
ii)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
d)任意ではあるが、c)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値より低い場合に、前記第二時点において、前記皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、c)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に、前記第二時点において、前記皮膚創傷を治癒性皮膚創傷であると同定する工程と、
e)
A)前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より高いか、および/もしくは、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より高い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の改善を示すと同定する工程であるが、ただし、前記第一時点でのa)i)、および/もしくは、前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値以下であるものであるか、
または、
B)前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より低いか、および/もしくは、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より低い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の悪化を示すと同定する工程であるが、
ただし、前記第二時点でのc)i)および/もしくはc)ii)で得られた前記値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値の100%以下であるものである工程と、
f)任意ではあるが、一または複数の後の時点で工程a)~e)を繰り返して、
従って、前記皮膚創傷の治癒をモニターする工程と、を含み、
好ましくは、
前記第一時点と前記第二時点は6時間~12ヵ月の間離れているか、および/または、
前記値(複数可)が少なくとも三重反復して測定され、および/または、統計的に有意であると決定されている。
【0141】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
前記サンプルが第一時点で創傷浸出液サンプルである場合、第二時点でのサンプルも好ましくは創傷浸出液サンプルである。本方法工程の工程f)の任意の繰り返しについても同じことが適用される。
【0142】
前記サンプルが第一時点で創傷バイオフィルムサンプルである場合、第二時点でのサンプルも好ましくは創傷バイオフィルムサンプルである。本方法工程の工程f)の任意の繰り返しについても同じことが適用される。
【0143】
一つの好ましい実施形態では、本発明の方法は、
a)
i)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および、
ii)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
b)任意ではあるが、a)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低く、および、a)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低い場合に、前記皮膚創傷を前記第一時点で非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、
a)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上で、および、a)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に、前記皮膚創傷を前記第一時点で治癒性皮膚創傷であると同定する工程と、
c)
i)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および
ii)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
d)任意ではあるが、c)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低く、および、c)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値よりも低い場合に、前記皮膚創傷を前記第二時点で非治癒性皮膚創傷であると同定するか、または、c)i)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上で、および、c)ii)で得られた値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立されたコントロール値以上の場合に、前記皮膚創傷を前記第二時点で治癒性皮膚創傷であると同定する工程と、
e)
A)前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より高く、および、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より高い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の改善を示すと同定する工程であるが、
ただし、前記第一時点でのa)i)および前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以下であるものであるか、
または、
B)前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より低く、および、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より低い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の悪化を示すと同定する工程であるが、
ただし、前記第二時点でのc)i)およびc)ii)で得られた前記値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値の100%以下であるものである工程と、
f)任意ではあるが、一または複数の後の時点で工程a)~e)を繰り返す工程と、を含む。
【0144】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0145】
例えば、工程a)~e)は、二回、三回、四回、五回、六回、七回、八回、九回または十回以上の後の時点で繰り返してもよい。
【0146】
一つの好ましい実施形態では、前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%または50%高く、および、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%または50%高い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の改善を示すと同定するが、
ただし、前記第一時点でのa)i)および前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値が創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以下であるものであるか、好ましくは、前記第一時点での値(複数可)は、前記第一時点で創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、25%、30%、40%または50%低い。
【0147】
別の好ましい実施形態では、前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%または50%低く、および、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%または50%低い場合に、前記第二時点での皮膚創傷が治癒の悪化を示すと同定するが、
ただし、前記第二時点でのc)i)およびc)ii)で得られた前記値が創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値の100%以下であるか、好ましくは、前記第二時点での値(複数可)は、前記第二時点で創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、25%、30%、40%または50%低い。
【0148】
さらに、驚くべき知見とは、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下で初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイと、創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下で初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定するアッセイに関する両アッセイと、任意ではあるが、上記マクロファージM1およびM2マーカーやサイトカインマーカーIL1α、IL1βおよび/またはTNFαに関するさらなるアッセイとを実行する場合に、さらにより正確で信頼性の高いモニター法が達成可能であることであった。
【0149】
従って、別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、
a)
i)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および、
ii)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
以下のiiia)、iiib)、iiic)およびiiid)の一つ、二つ、三つまたは四つの測定工程であって、前記工程が、
iiia)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での角化細胞の増殖を測定する工程、
iiib)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
iiic)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
iiid)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
b)任意ではあるが、前記皮膚創傷を前記第一時点で非治癒性皮膚創傷であるとするか、または前記第一時点で治癒性皮膚創傷であるとするかを本発明の方法に従って同定する工程と、
c)
i)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および
ii)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
以下のiiia)、iiib)、iiic)およびiiid)の一つ、二つ、三つまたは四つの測定工程であって、前記工程が、
iiia)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での角化細胞の増殖を測定する工程、
iiib)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
iiic)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
iiid)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
d)任意ではあるが、前記皮膚創傷を前記第二時点で非治癒性皮膚創傷であるとするか、または前記第二時点で治癒性皮膚創傷であるとするかを本発明の方法に従って同定する工程と、
e)
A)以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つが満たされる場合に前記第二時点で前記皮膚創傷の治癒が改善するのを示すとして同定する工程であって、前記場合が、
(1)前記第二時点でのc)i)で得られた値が前記第一時点でのa)i)で得られた値よりも高い場合、
(2)前記第二時点でのc)ii)で得られた値が前記第一時点でのa)ii)で得られた値よりも高い場合、
(3)前記第二時点でのc)iiia)で得られた値が前記第一時点でのa)iiia)で得られた値よりも高い場合、
(4)前記第二時点でのc)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率よりも低い場合、
(5)前記第二時点でのc)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率より低い場合、
(6)前記第二時点でのc)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率より低い場合であって、
ただし、前記第二時点での少なくともc)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が前記第一時点でのa)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)よりも前記第二時点で高く、および、
ただし、前記第一時点でのa)i)および/もしくは前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値以下である工程、
または、
B)以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つが満たされる場合に前記第二時点で前記皮膚創傷の治癒が悪化するとして同定する工程であって、前記場合が、
(1)前記第二時点でのc)i)で得られた値が前記第一時点でのa)i)で得られた値よりも低い場合、
(2)前記第二時点でのc)ii)で得られた値が前記第一時点でのa)ii)で得られた値よりも低い場合、
(3)前記第二時点でのc)iiia)で得られた値が前記第一時点でのa)iiia)で得られた値よりも低い場合、
(4)前記第二時点でのc)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率よりも高い場合、
(5)前記第二時点でのc)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率より高い場合、
(6)前記第二時点でのc)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率より高い場合であって、
ただし、前記第二時点での少なくともc)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が前記第一時点でのa)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)よりも低く、および、
ただし、前記第二時点でのc)i)および/もしくはc)ii)で得られた前記値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値の100%以下であるものである工程と、
f)任意ではあるが、一もしくは複数の後の時点で工程a)~e)を繰り返す工程と、を含む。
【0150】
従って、さらに別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、
a)
i)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および、
ii)第一時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
以下のiiia)、iiib)、iiic)およびiiid)の内一つ、二つ、三つもしくは四つ、または、以下のiiia)、iiib)、iiic)、iiid)およびiiie)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つの測定工程:
iiia)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下でのHaCaT細胞の増殖を測定する工程、
iiib)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、
iiic)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一または複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、
iiid)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
iiie)第一時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、前記一または複数のサイトカインマーカーがIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択され、
b)任意ではあるが、前記皮膚創傷を前記第一時点で非治癒性皮膚創傷であるとするか、または、前記第一時点で治癒性皮膚創傷であるとするかを本発明の方法に従って同定する工程と、
c)
i)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖、および
ii)第二時点での、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程と、
以下のiiia)、iiib)、iiic)およびiiid)の内一つ、二つ、三つもしくは四つ、または、以下のiiia)、iiib)、iiic)、iiid)およびiiie)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つの測定工程:
iiia)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下でのHaCaT細胞の増殖を測定する工程、
iiib)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、
iiic)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、前記一または複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一または複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、
iiid)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、前記一または複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、
iiie)第二時点で、前記皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、前記一または複数のサイトカインマーカーがIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択され、
d)任意ではあるが、前記皮膚創傷を前記第二時点で非治癒性皮膚創傷であるとするか、または、前記第二時点で治癒性皮膚創傷であるとするかを本発明の方法に従って同定する工程と、
e)
A)以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記第二時点で、前記皮膚創傷の治癒が改善することを示すとして同定する工程であって、前記場合が、
(1)前記第二時点でのc)i)で得られた値が前記第一時点でのa)i)で得られた値よりも高い場合、
(2)前記第二時点でのc)ii)で得られた値が前記第一時点でのa)ii)で得られた値よりも高い場合、
(3)前記第二時点でのc)iiia)で得られた値が前記第一時点でのa)iiia)で得られた値よりも高い場合、
(4)前記第二時点でのc)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率よりも低い場合であって、
前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、ならびに、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択される場合、
(5)前記第二時点でのc)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率より低い場合であって、
前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記M2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、
特に、前記比率が、CD38/CD209の比率、CD197/CD209の比率およびCD197/CD206の比率から選択される場合、
(6)前記第二時点でのc)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率より低い場合であって、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択される場合、
(7)前記第二時点でのc)iiie)で得られた値が前記第一時点でのa)iiie)で得られた値よりも低い場合であって、
ただし、前記第二時点での少なくともc)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が前記第一時点でのa)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)よりも前記第二時点で高く、および、
ただし、前記第一時点でのa)i)および/もしくは前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値以下である工程、
または、
B)以下の(1)~(6)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合、もしくは、以下の(1)~(7)の場合の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つを満たす場合、前記第二時点で、前記皮膚創傷の治癒が悪化することを示すとして同定する工程であって、前記場合が、
(1)前記第二時点でのc)i)で得られた値が前記第一時点でのa)i)で得られた値よりも低い場合、
(2)前記第二時点でのc)ii)で得られた値が前記第一時点でのa)ii)で得られた値よりも低い場合、
(3)前記第二時点でのc)iiia)で得られた値が前記第一時点でのa)iiia)で得られた値よりも低い場合、
(4)前記第二時点でのc)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiib)で得られた一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーの量(複数可)の比率よりも高い場合であって、
前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、ならびに、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択されて、
特に、前記比率が、CD38/CD209の比率、CD197/CD209の比率およびCD197/CD206の比率から選択される場合、
(5)前記第二時点でのc)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiic)で得られた一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)に対する一もしくは複数のM1細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)の比率より高い場合であって
前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択される場合、
(6)前記第二時点でのc)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率が、前記第一時点でのa)iiid)で得られた一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)に対する一もしくは複数のM1マーカーmRNAの発現レベル(複数可)の比率より高い場合であって、
前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択される場合、
(7)前記第二時点でのc)iiie)で得られた値が前記第一時点でのa)iiie)で得られた値よりも低い場合であって、
ただし、前記第二時点での少なくともc)i)および/もしくはc)ii)で得られた値(複数可)が前記第一時点でのa)i)および/もしくはa)ii)で得られた値(複数可)よりも低く、および、
ただし、前記第二時点でのc)i)および/もしくはc)ii)で得られた前記値(複数可)が創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値の100%以下であるものである工程と、
f)任意ではあるが、一または複数の後の時点で工程a)~e)を繰り返す工程と、を含む。
【0151】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0152】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態では、工程a)およびc)は、iiia)、iiib)、iiic)およびiiie)の内一つ、二つもしくは三つまたは四つの測定工程を含む。そのような好ましい実施形態では、創傷治癒が改善することに関する(1)~(5)および(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つまたは六つの場合が満たされる場合に、第二時点での工程e)A)で治癒が改善することを示すとして皮膚創傷を同定するが、ただし、前記第二時点での少なくともc)i)および/またはc)ii)で得られた値(複数可)は、前記第一時点でのa)i)および/またはa)ii)で得られた値(複数可)よりも前記第二時点で高く、および、ただし、前記第一時点でのa)i)および/または前記第一時点でのa)ii)で得られた値は創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値以下である。さらに、そのような好ましい実施形態では、皮膚創傷治癒が悪化することに関する(1)~(5)および(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つまたは六つの場合が満たされる場合に、第二時点での工程e)B)で治癒が悪化することを示すとして皮膚創傷を同定するが、ただし、前記第二時点での少なくともc)i)および/またはc)ii)で得られた値(複数可)が前記第一時点でのa)i)および/またはa)ii)で得られた値(複数可)よりも低く、および、ただし、前記第二時点でのc)i)および/またはc)ii)で得られた値(複数可)は創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立されたコントロール値の100%以下である。
【0153】
一つの好ましい実施形態では、治癒が改善したことに関する上記(1)~(6)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つ、または、上記(1)~(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つ、または、上記(1)~(5)と(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合に第二時点で皮膚創傷の治癒が改善するのを示すとして同定するが、好ましくは、前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%高く、および/または、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%高く、
ただし、前記第一時点でのa)i)および/または前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値は創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以下であり、好ましくは、前記第一時点での値(複数可)は、前記第一時点で創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、25%、30%、40%または50%低い。
【0154】
好ましくは、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0155】
一つのより好ましい実施形態では、治癒が改善したことに関する上記(1)~(6)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つ、または、上記(1)~(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つ、または、上記(1)~(5)と(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合に第二時点で皮膚創傷の治癒が改善するのを示すとして同定するが、好ましくは、前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%高く、および、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%高く、
ただし、前記第一時点でのa)i)および前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値は創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以下であるものであるか、好ましくは、前記第一時点での値は、前記第一時点で創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、25%、30%、40%または50%低い。
【0156】
別の好ましい実施形態では、創傷治癒が悪化したことに関する上記(1)~(6)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つ、または、上記(1)~(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つ、または、上記(1)~(5)と(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合に第二時点で皮膚創傷の治癒が悪化するのを示すとして同定するが、好ましくは、前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%低く、および/または、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%低く、
ただし、前記第二時点でのc)i)および/またはc)ii)で得られた前記値は創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値の100%以下であるか、好ましくは、前記第二時点での値(複数可)は、前記第二時点で創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、25%、30%、40%または50%低い。
【0157】
別のより好ましい実施形態では、創傷治癒が悪化したことに関する上記(1)~(6)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つ、または、上記(1)~(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つ、六つもしくは七つ、または、上記(1)~(5)と(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、四つ、五つもしくは六つを満たす場合に第二時点で皮膚創傷の治癒が悪化するのを示すとして同定するが、好ましくは、前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%低く、および、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%低く、
ただし、前記第二時点でのc)i)およびc)ii)で得られた前記値は創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値の100%以下であるか、好ましくは、前記第二時点での値は、前記第二時点で創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、25%、30%、40%または50%低い。
【0158】
さらに、好ましいのは、少なくとも三つのアッセイ:初代線維芽細胞の増殖を測定するアッセイ、初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定するアッセイ、および角化細胞の増殖を測定するアッセイを前記第一および第二時点で実行することである。従って、本発明の方法のさらに別の好ましい実施形態では、本方法工程a)i)、a)ii)およびa)iii)を前記第一時点で、ならびに、c)i)、c)ii)およびc)iii)を前記第二時点で実行する。
【0159】
一つのより好ましい実施形態では、治癒が改善することに関する(1)~(3)の内少なくとも二つ、好ましくは三つの場合が満たされる場合に、第二時点で皮膚創傷の治癒が改善することを示すとして同定するが、好ましくは、前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%高く、および/または、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%高く、および/または、前記第二時点でのc)iiia)で得られた前記値が前記第一時点でのa)iiia)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%高く、
ただし、前記第一時点でのa)i)および/または前記第一時点でのa)ii)および/または前記第一時点でのa)iiia)で得られた前記値は創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以下であり、好ましくは、前記第一時点での値(複数可)は、前記第一時点で創傷浸出液または創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、25%、30%、40%または50%低い。
【0160】
一つのより好ましい実施形態では、治癒が改善することに関する(1)~(3)の内少なくとも二つ、好ましくは三つの場合が満たされる場合に、第二時点で皮膚創傷の治癒が改善することを示すとして同定するが、好ましくは、前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%高く、および、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%高く、ならびに/または、前記第二時点でのc)iiia)で得られた前記値が前記第一時点でのa)iiia)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%高く、
ただし、前記第一時点でのa)i)と前記第一時点でのa)ii)と、および/または、前記第一時点でのa)iiia)とで得られた前記値は創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値以下であり、好ましくは、前記第一時点での値は、前記第一時点で創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、25%、30%、40%もしくは50%低い。
【0161】
別の好ましい実施形態では、創傷治癒が悪化したことに関する上記(1)~(6)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、もしくは、上記(1)~(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つ、もしくは、上記(1)~(5)と(7)の内少なくとも二つ、好ましくは三つを満たす場合に第二時点で皮膚創傷の治癒が悪化するのを示すとして同定するが、好ましくは、前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%低く、ならびに/または、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%低く、ならびに/または、前記第二時点でのc)iiia)で得られた前記値が前記第一時点でのa)iiia)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%低く、
ただし、前記第二時点でのc)i)および/もしくはc)ii)および/もしくはc)iiia)で得られた前記値は創傷浸出液または創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値の100%以下であるか、好ましくは、前記第二時点での値(複数可)は、前記第二時点で創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、25%、30%、40%もしくは50%低い。
【0162】
別のより好ましい実施形態では、創傷治癒が悪化することに関する(1)~(3)の内少なくとも二つ、好ましくは三つの場合が満たされる場合に、第二時点で皮膚創傷の治癒が悪化することを示すとして同定するが、好ましくは、前記第二時点でのc)i)で得られた前記値が前記第一時点でのa)i)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%低く、および、前記第二時点でのc)ii)で得られた前記値が前記第一時点でのa)ii)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%低く、ならびに/または、前記第二時点でのc)iiia)で得られた前記値が前記第一時点でのa)iiia)で得られた前記値より少なくとも10%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、25%、30%、40%もしくは50%低く、
ただし、前記第二時点でのc)i)とc)ii)と、および/もしくは、c)iiia)とで得られた前記値は創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルム非存在下で確立された各コントロール値の100%以下であるか、好ましくは、前記第二時点での値は、前記第二時点で創傷浸出液もしくは創傷バイオフィルムの非存在下で確立された各コントロール値の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、25%、30%、40%もしくは50%低い。
【0163】
本明細書中に記載される本発明の任意の方法の一つの好ましい実施形態では、個体は哺乳類、より好ましくはヒトである。
【0164】
本明細書中に記載される本発明の任意の方法の別の好ましい実施形態では、皮膚創傷は、糖尿病患者の創傷、少なくとも一種類の微生物に感染した創傷、虚血性創傷、血液供給不全もしくは静脈うっ血に罹患した患者の創傷、潰瘍(例、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍(例、動脈性下腿潰瘍)、混合型潰瘍または褥瘡)、神経障害性創傷、下腿潰瘍、手術創、熱傷、裂開、腫瘍性潰瘍および広く知られていない潰瘍から選択される。
【0165】
実施例に記載されているが、そのような創傷は、慢性皮膚創傷や非治癒性皮膚創傷へと発展する高いリスクを有するか、および/または、創傷治癒の悪化を示す。そのような皮膚創傷は、本発明の方法が特にメリットがある場合がある。本明細書中に記載される本発明の任意の方法の別の好ましい実施形態では、非治癒性皮膚創傷は、標準的療法では2ヵ月以内に閉鎖しない創傷として理解される。
【0166】
本明細書中に記載される本発明の任意の方法の別の好ましい実施形態では、個体はさらなる疾患や合併性を呈しているか、および/または、さらなる疾患や合併症用の医薬(複数可)を用いて治療される。実施例に記載されているが、そのような個体は、慢性皮膚創傷や非治癒性皮膚創傷へと発展する高いリスクを有するか、および/または、創傷治癒の悪化を示す場合がある。そのような皮膚創傷は、本発明の方法が特にメリットがある場合がある。
【0167】
本明細書中に記載される本方法の別の好ましい実施形態では、皮膚創傷は処置しないか、または、一もしくは複数の以下のもの(圧迫、創傷ドレッシング材、外科的デブリードマン、生物学的デブリードマン、感染予防、抗生物質療法、陰圧療法、タンパク質(特に、増殖因子)、抗体、ペプチド、糖、細胞もしくは細胞成分、人工皮膚、ヒト血液由来製剤、遺伝子治療もしくは遺伝子改変創傷床調節剤、薬物、生薬、植物抽出物)を用いて治療可能である。
【0168】
本明細書中に記載される本方法の別の好ましい実施形態では、圧迫、創傷ドレッシング材、外科的デブリードマン、生物学的デブリードマン、感染予防、抗生物質療法、陰圧療法、タンパク質(特に、増殖因子)、抗体、ペプチド、糖、細胞もしくは細胞成分、人工皮膚、ヒト血液由来製剤、遺伝子治療もしくは遺伝子改変創傷床調節剤、薬物、生薬、植物抽出物から選択される一もしくは複数の療法で治療するように個体を同定する場合は、(i)個体の皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷もしくは治癒性皮膚創傷であると同定する本発明の方法によって、個体の皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷であるとして同定するか、および/または、皮膚創傷の治癒をモニターする本発明の方法によって、第一時点に比べて第二時点での治癒が悪化することを示すとして個体の皮膚創傷を同定する場合である。
【0169】
従って、またさらなる実施形態では、本発明は個体の非治癒性皮膚創傷を治療する方法に関し、この方法は、個体に、圧迫、創傷ドレッシング材、外科的デブリードマン、生物学的デブリードマン、感染予防、抗生物質療法、陰圧療法、タンパク質(特に、増殖因子)、抗体、ペプチド、糖、細胞もしくは細胞成分、人工皮膚、ヒト血液由来製剤、遺伝子治療もしくは遺伝子改変創傷床調節剤、薬物、生薬、植物抽出物から選択される一または複数の療法を投与する工程を含み、前記個体が本発明の方法を実施することによって少なくとも一つの非治癒性皮膚創傷を有すると同定される方法である。
【0170】
従って、またさらなる実施形態では、本発明は治癒が悪化することを示す個体の皮膚創傷を治療する方法に関し、この方法は、個体に、圧迫、創傷ドレッシング材、外科的デブリードマン、生物学的デブリードマン、感染予防、抗生物質療法、陰圧療法、タンパク質(特に、増殖因子)、抗体、ペプチド、糖、細胞もしくは細胞成分、人工皮膚、ヒト血液由来製剤、遺伝子治療もしくは遺伝子改変創傷床調節剤、薬物、生薬、植物抽出物から選択される一または複数の療法を投与する工程を含み、前記個体が本発明の方法を実施することによって創傷治癒が悪化することを示す少なくとも一つの皮膚創傷を有すると同定される方法である。
【0171】
少なくとも一つの活性剤(例、抗生物質療法、タンパク質(特に、増殖因子)、抗体、ペプチド、糖、細胞または細胞成分、人工皮膚、ヒト血液由来製剤、遺伝子治療または遺伝子改変創傷床調節剤、薬物、生薬、および植物抽出物)の投与に関する療法に関しては、治療的有効量を個体に投与する。好ましくは、そのような少なくとも一つの活性剤は、少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤をさらに含む場合がある医薬組成物から構成される。その治療的有効量は前記剤の性質に依存していて、当業者には既知である。さらに、少なくとも一つの活性剤を一度にまたは繰り返して投与してもよい。
【0172】
本明細書中に記載される本発明の任意の方法の別の好ましい実施形態では、創傷浸出液サンプルの取得は、特に皮膚創傷に陰圧を掛ける、特に、陰圧廃液装置を使用することによる物理的もしくは化学的方法、毛細管力を利用するか、創傷浸出液をドレッシング材フィルムもしくは膜に回収するか、創傷浸出液を注射器に回収するか、吸着材(例、吸着ビーズもしくはフィルタ)を適用するか、もしくはスワッブ(例、綿棒)を使用するかによる方法であって、特に、ドレッシング材フィルムもしくは膜がセルロース層、および/または、吸着材がセルロース層である方法によって行われる。実施例では、創傷浸出液サンプルを得るために、陰圧を皮膚創傷に掛ける。
【0173】
本明細書中に記載される本発明の任意の方法の別の好ましい実施形態では、治癒性皮膚創傷は、創傷閉鎖が継続中のもの、肉芽形成、壊死が無いこと、および/または、感染が無いことを特徴とする。
【0174】
本明細書中に記載される本発明の任意の方法の別の好ましい実施形態では、非治癒性皮膚創傷は、創傷閉鎖の欠如、創傷の面積や深さの増加、皮膚創傷の壊死や感染、および/または肉芽形成の欠如を特徴とする。
【0175】
本明細書中に記載される本発明の方法の別の好ましい実施形態では、本方法で使用される線維芽細胞や単球細胞は、ヒト細胞、好ましくは、ヒト細胞や初代細胞であって、ヒト健常者由来、創傷治癒不全に伴う合併症(例、糖尿病)を有する患者由来、および/または、創傷浸出液を提供する個々の患者由来のものである。
【0176】
本明細書中に記載される本発明の方法の別の好ましい実施形態では、創傷浸出液サンプルを、1:2~1:1000の間、好ましくは1:10~1:200または1:20~1:100の間で希釈する。例えば、1:25または1:50の希釈物(例、培地中への希釈物)が使用できた。創傷浸出液サンプルを、好ましくは、水性液(例、水性溶液または懸濁液)に希釈する。好ましい実施形態では、創傷浸出液サンプルを、細胞培地(例、FCS含有DMEM)へと希釈する。また、水性生理食塩水溶液(例、水性緩衝生理食塩水溶液)が使用可能である。好ましくは、創傷浸出液サンプルを水性液(本発明の方法のアッセイで使用される細胞の生存率に実質的に干渉しないもの)に希釈する。
【0177】
本明細書中に記載される本発明の方法の別の好ましい実施形態では、創傷バイオフィルムサンプルを、1:2~1:1000の間、好ましくは1:10~1:200または1:20~1:100の間で希釈する。創傷バイオフィルムサンプルを、好ましくは、水性液(例、水性溶液または懸濁液)に希釈する。好ましい実施形態では、創傷バイオフィルムサンプルを、細胞培地(例、FCS含有DMEM)へと希釈する。また、水性生理食塩水溶液(例、水性緩衝生理食塩水溶液)が使用可能である。好ましくは、創傷バイオフィルムサンプルを水性液(本発明の方法のアッセイで使用される細胞の生存率に実質的に干渉しないもの)に希釈する。
【0178】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖を測定する工程は、以下の工程:
(i)初代ヒト皮膚線維芽細胞を培養する工程、
(ii)前記細胞を固相支持体上にインキュベーションし、従って、前記細胞が前記支持体に接着することを可能にする工程、
(iii)任意ではあるが希釈された前記創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと前記細胞を接触させ、前記接触が前記細胞の接着が起こる前または後に実施される場合がある工程、
(iv)前記初代線維芽細胞の(細胞外マトリックスの構成物を含む)量、好ましくは細胞数を、例えば、前記細胞を固定し、そして、総タンパク質含量を測定することによって決定する工程を含み、
好ましくは、本方法は2D細胞培養で実施される。
【0179】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程は、以下の工程:
(i)初代ヒト皮膚線維芽細胞を、支持体(接着増強剤(例、ゼラチン)で好ましくはプレコーティングしたもの)上に播種する工程、
(ii)好ましくはコンフルエントになるまで、前記細胞を前記支持体上で培養する工程、
(iii)前記細胞を、(i)マトリックス促進サプリメントおよび(ii)(任意ではあるが希釈された)創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと接触させる工程であって、(i)および(ii)が同時または経時的に接触されてもよい工程、
(iv)例えば、前記細胞を固定して総タンパク質含量を決定することによって線維芽細胞由来マトリックスの量を測定する工程を含み、
好ましくは、本方法は3D細胞培養で実施される。
【0180】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での角化細胞の増殖を測定する工程は、以下の工程:
(i)角化細胞を培養する工程、
(ii)前記細胞を固相支持体上にインキュベーションし、従って、前記細胞が前記支持体に接着することを可能にする工程、
(iii)任意ではあるが希釈された前記創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと前記細胞を接触させ、前記接触が前記細胞の接着が起こる前または後に実施される場合がある工程、
(iv)例えば、前記細胞を固定して総タンパク質含量を決定することによって前記角化細胞の量、好ましくは細胞数を測定する工程を含み、
好ましくは、本方法は2D細胞培養で実施される。
【0181】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程は、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)任意ではあるが希釈された創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)前記細胞の培養上清中の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量を測定する工程であって、
好ましくは、前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、および/または、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、より好ましくは、前記マーカーが免疫学的アッセイを使用することによって、さらに好ましくはELISAアッセイを使用することによって測定される工程を含む。
【0182】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程は、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞もしくは(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)任意ではあるが希釈された創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)マクロファージの細胞表面上の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)を測定する工程であって、
好ましくは、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーはCD38、CD64およびCD197から選択され、および/もしくは、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーはCD200受容体(CD200R)、CD206およびCD209から選択され、より好ましくは、前記細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)が、免疫学的アッセイおよび/もしくは蛍光アッセイによって、特に、FACS解析によって測定される工程を含み、
さらに好ましくは、工程(iv)は、
一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体と前記マクロファージを接触させる工程であって、前記結合剤が任意ではあるが標識、特に蛍光ラベルで標識される工程と前記マクロファージに結合する結合分子の量を測定、特に、平均蛍光強度を測定することによって、従って、前記細胞表面マーカーの量(複数可)を測定する工程と、
ならびに/または、
一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体と前記マクロファージを接触させる工程であって、前記結合剤が任意ではあるが標識、特に蛍光ラベルで標識される工程と細胞集団内で、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーにそれぞれ陽性である細胞のパーセンテージを測定する工程であって、特に、FACS解析が実施され、従って、前記細胞表面マーカーの度数分布(複数可)を測定する工程とを含む。
【0183】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程は、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)任意ではあるが希釈された創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)前記マクロファージ中の一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAの前記発現レベルを測定する工程を含み、
好ましくは、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、ならびに/または、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、より好ましくは、本方法は、マーカーmRNAに特異的に結合するプローブ(このプローブは任意ではあるが標識される)を、ハイブリダイゼーションが可能な条件下でマクロファージRNAと接触させ、そして、ハイブリダイズしたプローブを検出する工程を含む。
【0184】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0185】
一つの好ましい実施形態では、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一または複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程は、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)任意ではあるが希釈された創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを前記細胞と接触させる工程、
(iv)前記細胞の培養上清中の、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一または複数のサイトカインマーカーの量を測定する工程を含む。
【0186】
一つの好ましい実施形態では、前記サイトカインマーカーは、免疫学的アッセイを使用することによって、より好ましくはELISAアッセイを使用することによって測定される。
【0187】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0188】
さらに、好ましいのは、本発明の方法で実施される二以上のアッセイが同時に実行されることであり、さらに好ましいのは、本方法工程が単一の支持体上で実行されることである。そのような実施形態では、チップ上創傷テスト方法が提供される。それによって、臨床検査者の要求が満たされる。
【0189】
本明細書中に記載される本発明の方法の好ましい実施形態では、以下の方法工程が同時に実行され、前記工程は、
i)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖を測定する工程、
ii)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程、
ならびに、任意ではあるが
iiia)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での角化細胞の増殖を測定する工程、および/または、
iiib)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、および/または、
iiic)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、および/または、
iiid)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
好ましくは、本方法の前記工程は、単一の支持体上で実行され、より好ましくは、前記支持体がチップ、アレイ(例、マイクロアレイもしくはナノアレイ)、プレート(例、マルチウエルプレート)、またはディッシュである。
【0190】
本明細書中に記載される本方法の別の好ましい実施形態では、以下の方法工程を同時に実行し、前記工程は、
i)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖を測定する工程、
ii)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程、
ならびに、任意ではあるが
iiia)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルの存在下での角化細胞の増殖を測定する工程、および/または、
iiib)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択される工程、および/または、
iiic)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/もしくは度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択される工程、および/または、
iiid)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択される工程、および/または、
iiie)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルもしくは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一もしくは複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一もしくは複数のサイトカインマーカーがIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される工程であり、
好ましくは、本方法の前記工程は、単一の支持体上で実行され、より好ましくは、前記支持体がチップ、アレイ(例、マイクロアレイもしくはナノアレイ)、プレート(例、マルチウエルプレート)、またはディッシュである。
【0191】
「同時」とは、前記アッセイに関する前記方法工程が少なくとも部分的に時間が重なることを意味すると理解される。
【0192】
好ましくは、本発明の任意の方法の方法工程が単一の支持体上で実行され、より好ましくは、前記支持体がチップ、アレイ(例、マイクロアレイもしくはナノアレイ)、プレート(例、マルチウエルプレート)、またはディッシュである。固相支持体は、その空間を充填することができて、従って、3D細胞培養を可能とする、少なくとも一つ、好ましくは複数の隔離された領域または穴を含み、より好ましくは、少なくとも一つ、さらに好ましくは、複数の穴を含む。例えば、複数の隔離された穴を含む、マルチウエルプレート、マイクロアレイまたはナノアレイが使用可能である。実施例では、マルチウエルプレートが使用できた。好ましくは、固相支持体は、細胞の生存率と実質的に干渉せず、および/または、細胞培養に適していて、例えば、支持体はプラスチック製支持体である。3D細胞培養に関しては、固相支持体は、好ましくは少なくとも一つの穴(例、ウエル)、より好ましくは複数の隔離された穴を含む。例えば、マルチウエルプレートが使用可能である。そのようなマルチウエルプレートは複数の隔離された穴を有する。
【0193】
さらなる実施形態では、本発明は、上記方法工程i)~iiid)を実行する剤を含むキットに関し、
好ましくは、本キットは、
a)初代線維芽細胞と、
b)角化細胞と、
c)複数の隔離された領域もしくは穴を有する支持体であって、前記領域もしくは穴のサブセットが(i)接着増強剤(好ましくは、ゼラチン)でコーティングされるか、および/または、(ii)線維芽細胞由来マトリックス(FDM)で充填されている支持体と、
d)任意ではあるが、マトリックス促進サプリメントと、
e)単球細胞と、
f)任意ではあるが、結合剤、好ましくは抗体であって、一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーを特異的に認識するもの、および/または、結合剤、好ましくは抗体であって、一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識するもの、および/または、一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAを特異的に認識するプローブとを含む。
【0194】
好ましいM1/M2マーカー(複数可)、細胞表面マーカー(複数可)および/またはマーカーmRNA(複数可)は、本発明の方法に関して上記される。
【0195】
さらなる実施形態では、本発明は、上記方法工程i)~iiid)またはi)~iiie)を実行する剤を含むキットに関し、本キットは、
a)初代線維芽細胞と、
b)角化細胞と、
c)複数の隔離された領域もしくは穴を有する支持体であって、前記領域もしくは穴のサブセットが(i)接着増強剤(好ましくは、ゼラチン)でコーティングされるか、および/または、(ii)線維芽細胞由来マトリックス(FDM)で充填されている支持体と、
d)任意ではあるが、マトリックス促進サプリメントと、
e)任意ではあるが、単球細胞と、
f)一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体と、任意ではあるが、
一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体、および/または、一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAを特異的に認識するプローブであって、
前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択されるものと、
g)任意ではあるが、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一または複数のサイトカインマーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体と、を含む。
【0196】
一つの好ましい実施形態では、角化細胞をHaCaT細胞および初代角化細胞、特に、ヒト初代角化細胞から選択する。
【0197】
より好ましい実施形態では、本発明で使用する角化細胞はHaCaT細胞である。
【0198】
線維芽細胞由来マトリックス(FDM)は、(i)支持体(接着増強剤(例、ゼラチン)でプレコーティングされるもの)上に初代ヒト皮膚線維芽細胞を播種する工程と、(ii)前記細胞を前記支持体上で培養する(好ましくはコンフルエントになるまで)工程と、(iii)マトリックス促進サプリメント(ビタミンCもしくはその生理学的に許容される塩または2-ホスホ-L-アスコルビン酸もしくはその生理学的に許容される塩、または、EGFおよびインスリンの合剤)と前記細胞を接触させる工程とによって得ることができる。FDMは、インサイチュ(in situ)で形成可能であるか、または、形成後に支持体へ移行可能である。
【0199】
さらに、本発明の方法を実行可能な支持体(例、チップ)が好ましい。例えば、皮膚創傷治癒のいくつかの側面を診断、モニターおよび予測可能、例えば、非治癒性皮膚創傷を同定および皮膚創傷の治癒の悪化を予測するチップ上創傷テストが提供可能である。
【0200】
従って、またさらなる実施形態では、本発明は、本発明の方法の実行に適する支持体に関し、前記支持体は複数の隔離された領域または穴を有していて、
a)前記領域または穴のサブセットが接着増強剤でコーティングされていて、
b)前記領域もしくは穴のサブセットが接着増強剤でコーティングされているか、および/または、線維芽細胞由来マトリックス(FDM)で充填されていて、
c)前記領域または穴のサブセットが処理されておらず、
d)任意ではあるが、
d1)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM1マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体を含み、
d2)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM2マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体を含み、
e)任意ではあるが、
e1)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM1細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体を含み、および
e2)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体を含み、
ならびに、
f)任意ではあるが、
f1)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM1マーカーmRNAを特異的に認識するプローブを含み、および、
f2)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM2マーカーmRNAを特異的に認識するプローブを含むが、
前記サブセットa)~f)は重ならず、
好ましくは、
(x)a)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が初代線維芽細胞をさらに含み;
(xi)(x)もしくはb)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が単球細胞をさらに含み;
(xii)c)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が初代線維芽細胞をさらに含み;ならびに/または、
(xiii)c)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が角化細胞をさらに含むものであって、
(xii)と(xiii)に係る前記領域もしくは穴は重ならず、
より好ましくは、前記支持体がチップ、アレイ(例、マイクロアレイもしくはナノアレイ)、プレート(例、マルチウエルプレート)、もしくはディッシュであり、および/もしくは、前記支持体がプラスチック製支持体である。
【0201】
従って、またさらなる実施形態では、本発明は、本発明の方法の実行に適する支持体に関し、前記支持体は複数の隔離された領域または穴を有していて、
a)前記領域または穴のサブセットが接着増強剤でコーティングされていて、
b)前記領域もしくは穴のサブセットが接着増強剤でコーティングされているか、および/または、線維芽細胞由来マトリックス(FDM)で充填されていて、
c)前記領域または穴のサブセットが処理されておらず、
d)任意ではあるが、
d1)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM1マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体を含み、
d2)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM2マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体を含み、前記一または複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、および、前記一または複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択されて、
e)
e1)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM1細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体を含み、および
e2)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体を含み、前記一または複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一または複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、
f)任意ではあるが、
f1)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM1マーカーmRNAを特異的に認識するプローブを含み、前記一または複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、および、
f2)前記領域または穴のサブセットが、一または複数のM2マーカーmRNAを特異的に認識するプローブを含み、前記一または複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、
ならびに、
g)任意ではあるが、前記領域または穴のサブセットが、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一または複数のサイトカインマーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体と、を含み、
前記サブセットa)~f)は重ならず、
好ましくは、
(x)a)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が初代線維芽細胞をさらに含み;
(xi)(x)もしくはb)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が単球細胞をさらに含み;
(xii)c)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が初代線維芽細胞をさらに含み;および/または、
(xiii)c)に係る前記領域もしくは穴の少なくとも一部が角化細胞をさらに含むものであって、
(xii)と(xiii)に係る前記領域もしくは穴は重ならず、
より好ましくは、前記支持体がチップ、アレイ(例、マイクロアレイもしくはナノアレイ)、プレート(例、マルチウエルプレート)、もしくはディッシュであり、および/もしくは、前記支持体がプラスチック製支持体である。
【0202】
固相支持体は、好ましくは、複数の隔離された穴を含む。穴はその空間を充填可能であり、従って、3D細胞培養を可能にする。例えば、複数の隔離された穴を含む、マルチウエルプレート、マイクロアレイ、またはナノアレイが使用可能である。実施例では、マルチウエルプレートが使用できた。好ましくは、固相支持体は、細胞の生存率と実質的に干渉せず、および/または、細胞培養に適していて、例えば、支持体はプラスチック製支持体である。3D細胞培養に関しては、固相支持体は複数の隔離されたウエルを含む場合がある。例えば、マルチウエルプレートが使用可能である。一つの好ましい実施形態では、支持体は、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上の領域または穴、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10~105、2、3、4、5、6、7、8、9または10~104、2、3、4、5、6、7、8、9または10~103、あるいは、2、3、4、5、6、7、8、9または10~102の隔離された領域または穴を含む。
【0203】
古典的創薬は時間のかかるプロセスである。ゲノム解析とタンパク質解析技術の最近の進歩が多数の新たな有力な薬物標的の同定を導いてきたが、前臨床の仮定に基づく研究がうまくいかない率は未だ高い。事実、10個の内8つの医薬が臨床試験に失敗する[DiMasi J(2010)、Clin Pharmacol Ther 87:272-277]。臨床開発第I相での医薬品が監督官庁(例、米国食品医薬品局(FDA))によって承認される確率は10%までと低い[Hay M et al(2014)Nat Biotechnol 32:40-51]。不認可の原因は多くの場合効力の欠如(56%)であり、安全性の問題(28%)が二番目である[Arrowsmith J&Miller P(2013)Nat Rev Drug Discov 12:569]。
【0204】
効力の欠如が示唆することは、伝達経路仮定に基づく創薬を臨床へ応用することに限界があり、従って、不認可率が高くなってしまうことである。このことは、基礎病原機構の理解が乏しい疾患に特に当てはまるし、慢性創傷の場合もそうである[Eming SA et al(2014),Sci Transl Med 6:1-16)]。
【0205】
本発明者らは、患者の材料をシステム生物学に基づく焦点を絞った創薬の開始点として使用することによって、臨床応用性や臨床成功率を改善することを目指す。本発明者らのアプローチにおいて、本発明者らは、新たに開発したインビトロ、エクスビボ(ex vivo)試験システムにおいて病理学的要因(pathomechanistic drivers)を含む罹患患者の組織または体液を使用し、病態生理に干渉する化合物を探索する。
【0206】
健常ドナー由来のヒト材料は、各種臓器(皮膚を含む)を用いる薬物安全性および毒性試験で現在ほとんどの場合で使用されている[Coleman RA(2011)Int Scholarly Res Network article ID806789;Clotworthy M&Archibald K(2013)Expert Opin Drug Metab Toxicol 9:1155-1169;Atac B(2013)Lab Chip 13:3555-3561]。ヒト組織を使用する臨床応用的創薬はまだ始まったばかりである[Clotworthy M(2012)Expert Opin Drug Discov 7:543-547]。腫瘍学分野においてのみ、病気に罹患した組織がかなりの量で使用されている[Nieva JJ(2012)Future Oncol 8:989-998]。妥当な病原因子を含むヒト材料を化合物スクリーニングの初期に使用することで、本発明者らは、臨床応用性、つまり、臨床成功率を改善し、前臨床開発時間を実質的に短縮できると考えている。
【0207】
慢性創傷由来の創傷浸出液はインビトロで炎症促進性であり、インビボアッセイにおいて創傷治癒を遅延させる。従って、本発明者らは、治癒が遅れる原因の重要因子がこれらの浸出液および創傷バイオフィルム中に含まれていると結論する。
【0208】
マクロファージ、角化細胞および線維芽細胞が、創傷炎症を継続させ、その結果創傷が慢性になるのに重要な細胞であると認識される。刺激物として慢性創傷由来WEを使用して、本発明者らは、これら細胞タイプにおける、化合物スクリーニングに適する新たな試験システムを確立した。これらのシステムは、非治癒性慢性潰瘍の治療に関して、WE誘導細胞活性化阻害剤の同定を目的とする本発明者らの研究の基礎を形成する(
図2)。
【0209】
驚くべきことに、本発明者らは、皮膚創傷治癒を調節するのに適切な化合物をスクリーニングして得る確実、強力および効果的な方法を確立することができた。本方法工程を実施例4.3に概説し、本方法は、本発明のさらなる方法に関する上記アッセイを利用する。特に、(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物の存在下での初代線維芽細胞の増殖を、主要アッセイとして測定する。候補化合物がこのアッセイで活性があるとわかった場合、本明細書中に記載されるさらなるアッセイの少なくとも一つを実行する。前記アッセイで得られた値が、少なくとも一つの候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値より少なくとも10%高いもしくは少なくとも10%低いか、または、カットオフ値よりも高い場合に、候補化合物は初代線維芽細胞アッセイの増殖に活性があると確認される。
【0210】
従って、またさらなる実施形態では、本発明は、皮膚創傷治癒を調節するのに適切な化合物をスクリーニングして得る方法に関し、以下の工程:
A)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物の存在下で初代線維芽細胞の増殖を測定する工程と
B)A)で得られた値が、前記少なくとも一つの候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値より少なくとも10%高いまたは少なくとも10%低い場合に、以下の方法工程B1)~B5)の内一つ、二つ、三つ、四つまたは五つを実行する工程:
B1)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物の存在下で初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程、
B2)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物の存在下で角化細胞の増殖を測定する工程、
B3)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
B4)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
B5)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
B1)~B5)で得られた少なくとも一つの値が、前記候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値よりも少なくとも10%高いかまたは少なくとも10%低い場合に、前記化合物が皮膚創傷治癒を調節するのに適していると同定され、
好ましくは、A)およびB1)~B5)に係る本方法工程が、本発明の方法に関して上記したように実行される工程と、を含む。
【0211】
従って、またさらなる実施形態では、本発明は、皮膚創傷治癒を調節するのに適切な化合物をスクリーニングして得る方法に関し、以下の工程:
A)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物の存在下で初代線維芽細胞の増殖を測定する工程と
B)A)で得られた値が、前記少なくとも一つの候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値より少なくとも10%高いまたは少なくとも10%低い場合に、以下の方法工程B1)~B5)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つ、または、以下の方法工程B1)~B6)の内一つ、二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つを実行する工程:
B1)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物の存在下で初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程、
B2)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物の存在下で角化細胞の増殖を測定する工程、
B3)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、および、前記一または複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択され、
B4)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選択され、前記一または複数のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選択され、
B5)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、前記一または複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、
B6)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のサイトカインマーカーがIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択され、
B1)~B5)またはB1)~B6)で得られた少なくとも一つの値が、前記候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値よりも少なくとも10%高いかまたは少なくとも10%低い場合に、前記化合物が皮膚創傷治癒を調節するのに適していると同定され、
好ましくは、A)およびB1)~B5)またはA)およびB1)~B6)に係る本方法工程が、本発明の方法に関して上記したように実行される工程と、を含む。
【0212】
好ましい実施形態では、A)で得られた値が前記少なくとも一つの候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値より少なくとも10%高いまたは少なくとも10%低い場合に、工程B)は、上記方法工程B1)~B4)およびB6)の内一つ、二つ、三つ、四つまたは五つを実行することに関する。そのような好ましい実施形態では、B1)~B4)およびB6)で得られた少なくとも一つの値が前記候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値よりも少なくとも10%高いかまたは少なくとも10%低い場合に、前記化合物は皮膚創傷治癒を調節するのに適しているとして同定され、
好ましくは、A)とB1)~B4)およびB6)とに係る本方法工程が、本発明の方法に関して上記したように実行される。
【0213】
本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0214】
本方法は、一または複数回繰り返される場合がある。
【0215】
一つの好ましい実施形態では、A)で得られた値がカットオフ値よりも高いかもしくは低い場合に、工程B)は、前記方法工程B1)~B5)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つ、または、前記方法工程B1)~B6)の内一つ、二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つ、または、前記方法工程B1)~B4)およびB6)の内一つ、二つ、三つ、四つまたは五つを実行する工程を含む。例えば、カットオフ値は、(候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値)+(X*標準偏差)であって、Xが0.5以上(例、1、1.5、2、2.5、3、4以上)から、例えば、5、6、7、8、9または10までである。実施例では、Xは3である。また、カットオフ値は、(候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値)-(X*標準偏差)であって、Xが0.5以上(例、1、1.5、2、2.5、3、4以上)から、例えば、5、6、7、8、9または10までである。
【0216】
さらに好ましい実施形態では、B1)~B5)、または、B1)~B6)、または、B1)~B4)およびB6)で得られた少なくとも一つの値が各カットオフ値よりも少なくとも10%高いかまたは10%低い場合に、皮膚創傷治癒を調節するのに適しているとして前記化合物を同定する。
【0217】
一つの好ましい実施形態では、創傷浸出液サンプルを、特に上記のように希釈する。別の好ましい実施形態では、創傷バイオフィルムサンプルを、特に上記のように希釈する。
【0218】
従って、特に本発明のアッセイに関する本発明のさらなる方法のための好ましい実施形態は、スクリーニングのための上記方法にも適用される。
【0219】
一つの好ましい実施形態では、上記A)で得られた値が少なくとも一つの候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値よりも少なくとも15%、20%、25%、30%、40%または50%高い場合に、前記方法工程B1)~B5)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つ、または、前記方法工程B1)~B6)の内一つ、二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つ、または、前記方法工程B1)~B4)およびB6)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つを実行する。
【0220】
より好ましい実施形態では、B1)およびB2)で得られた少なくとも一つの値が少なくとも一つの候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値よりも少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%または50%高い場合に、皮膚創傷治癒を調節するのに適しているとして前記化合物を同定する。
【0221】
より好ましい実施形態では、創傷治癒を調節すると、創傷治癒が改善する。
【0222】
別の好ましい実施形態では、上記A)で得られた値が少なくとも一つの候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値よりも少なくとも15%、20%、25%、30%、40%もしくは50%低い場合に、前記方法工程B1)~B5)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つ、または、前記方法工程B1)~B6)の内一つ、二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つ、または、前記方法工程B1)~B4)およびB6)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つを実行する。
【0223】
より好ましい実施形態では、B1)およびB2)で得られた少なくとも一つの値が少なくとも一つの候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値よりも少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%または50%低い場合に、皮膚創傷治癒を調節するのに適しているとして前記化合物を同定する。
【0224】
別の実施形態では、創傷治癒を調節すると、創傷治癒が悪化する。皮膚創傷治癒を悪化させるのに適しているとして同定された化合物は、肥厚性瘢痕、ケロイドもしくは線維症を治療および/または予防するのに適する。
【0225】
(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物を同時または経時的に加えてインキュベーションする場合がある。同時に加える場合、(i)と(ii)は別々の組成物または一つの組成物として加えてもよい。例えば、任意ではあるが希釈した創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを、例えば、その液を支持体のウエルへピペッティングすることによって、アッセイに加えることができる。そして、前記任意ではあるが希釈した創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの前、同時、または後のいずれかで、候補化合物を、例えば、そのような化合物含有液を支持体のウエル中へとピペッティングすることによって別々に加える。また、任意ではあるが希釈した創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを、少なくとも一つの候補化合物または少なくとも一つの候補化合物を含む組成物と混合してもよいし、経時的に本アッセイに加えてもよい。
【0226】
本方法工程は、少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを接触させる工程を含む。例えば、一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルが使用可能である。または、二以上の個体(例、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10以上の個体)の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルの混合物が使用可能である。創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルは、治癒性創傷または非治癒性創傷(例、潰瘍)由来のサンプルまたはそれらの混合物である場合がある。本発明の好ましい一実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。別の好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい実施形態では、前記サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0227】
一つの好ましい実施形態では、(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物の存在下で初代線維芽細胞の増殖を測定する工程が、以下の工程:
(i)初代ヒト皮膚線維芽細胞を培養する工程、
(ii)前記細胞を固相支持体上にインキュベーションし、従って、前記細胞が前記支持体に接着することを可能にする工程、
(iii)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル(任意ではあるが希釈されたもの)、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物を、前記細胞と接触させる工程であって、前記接触が、前記細胞の接着前または後に実行される場合があり、および、(i)と(ii)を同時または経時的に接触させる場合がある工程、
(iv)前記初代線維芽細胞の(細胞外マトリックスの構成物を含む)量、好ましくは細胞数を、例えば、細胞を固定し、そして、総タンパク質含量を測定することによって決定する工程を含み、
好ましくは、本方法は2D細胞培養で実施される。
【0228】
一つの好ましい実施形態では、(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物の存在下で初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程が、以下の工程:
(i)初代ヒト皮膚線維芽細胞を、支持体(接着増強剤(例、ゼラチン)で好ましくはプレコーティングしたもの)上に播種する工程、
(ii)好ましくはコンフルエントになるまで、前記細胞を前記支持体上で培養する工程、
(iii)(i)マトリックス促進サプリメント、(ii)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル(任意ではあるが希釈されたもの)、および、(iii)少なくとも一つの候補化合物を、前記細胞と接触させる工程であって、前記接触が、前記細胞の接着前または後に実行される場合があり、および、(i)と(ii)と(iii)を同時または経時的に接触させる場合がある工程、
(iv)例えば、前記細胞を固定して総タンパク質含量を決定することによって線維芽細胞由来マトリックスの量を測定する工程を含み、
好ましくは、本方法は3D細胞培養で実施される。
【0229】
別の好ましい実施形態では、(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物の存在下で角化細胞の増殖を測定する工程が、以下の工程:
(i)角化細胞を培養する工程、
(ii)前記細胞を固相支持体上にインキュベーションし、従って、前記細胞が前記支持体に接着することを可能にする工程、
(iii)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル(任意ではあるが希釈されたもの)、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物を、前記細胞と接触させる工程であって、前記接触が、前記細胞の接着前または後に実行される場合があり、および、(i)と(ii)を同時または経時的に接触させる場合がある工程、
(iv)例えば、前記細胞を固定して総タンパク質含量を決定することによって前記角化細胞の量、好ましくは細胞数を測定する工程を含み、
好ましくは、本方法は2D細胞培養で実施される。
【0230】
別の好ましい実施形態では、(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル(任意ではあるが希釈されたもの)、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物を、前記細胞と接触させる工程であって、(i)と(ii)を同時または経時的に接触させる場合がある工程、
(iv)前記細胞の培養上清中の一もしくは複数のM1マーカーと一もしくは複数のM2マーカーの量を測定する工程であって、
好ましくは、前記一もしくは複数のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選択され、および/または、前記一もしくは複数のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選択されるか、より好ましくは、前記マーカーが免疫学的アッセイを使用することによって、さらに好ましくはELISAアッセイを使用することによって測定される工程を含む。
【0231】
別の好ましい実施形態では、(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されている工程が、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル(任意ではあるが希釈されたもの)、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物を、前記細胞と接触させる工程であって、(i)と(ii)を同時または経時的に接触させる場合がある工程、
(iv)マクロファージの細胞表面上の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、
好ましくは、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーはCD38、CD64およびCD197から選択され、および/または、前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーはCD200受容体(CD200R)、CD206およびCD209から選択され、より好ましくは、前記細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)が、免疫学的アッセイおよび/または蛍光アッセイによって、特に、FACS解析によって測定される工程を含み、
さらに好ましくは、工程(iv)は、
一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体と前記マクロファージを接触させる工程であって、前記結合剤が任意ではあるが標識、特に蛍光ラベルで標識される工程と、前記マクロファージに結合する結合分子の量を測定、特に、平均蛍光強度を測定することによって、従って、前記細胞表面マーカーの量(複数可)を測定する工程と、
ならびに/または、
一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと一もしくは複数のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する結合剤、好ましくは抗体と前記マクロファージを接触させる工程であって、前記結合剤が任意ではあるが標識、特に蛍光ラベルで標識される工程と、細胞集団内で、前記一もしくは複数のM1細胞表面マーカーと前記一もしくは複数のM2細胞表面マーカーにそれぞれ陽性である細胞のパーセンテージを測定する工程であって、特に、FACS解析が実施され、従って、前記細胞表面マーカーの度数分布(複数可)を測定する工程とを含む。
【0232】
別の好ましい実施形態では、(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル(任意ではあるが希釈されたもの)、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物を、前記細胞と接触させる工程であって、(i)と(ii)を同時または経時的に接触させる場合がある工程、
(iv)前記マクロファージ中の一もしくは複数のM1マーカーmRNAと一もしくは複数のM2マーカーmRNAの前記発現レベルを測定する工程であって、
好ましくは、前記一もしくは複数のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選択され、ならびに/または、前記一もしくは複数のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選択され、より好ましくは、本方法が、マーカーmRNAに特異的に結合するプローブ(このプローブは任意ではあるが標識される)を、ハイブリダイゼーションが可能な条件下でマクロファージRNAと接触させ、そして、ハイブリダイズしたプローブを検出する工程を含む。
【0233】
別の好ましい実施形態では、(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージの上清中の、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一または複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、以下の工程:
(i)(a)2D細胞培養のヒト皮膚線維芽細胞または(b)線維芽細胞由来マトリックスとともに初代ヒト単球細胞を共培養する工程、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで前記細胞をインキュベーションする工程であって、任意ではあるがCD163が前記マクロファージ分化の細胞表面マーカーとして使用される工程、
(iii)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル(任意ではあるが希釈されたもの)、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物を、前記細胞と接触させる工程であって、(i)と(ii)を同時または経時的に接触させる場合がある工程、
(iv)前記細胞の培養上清中の、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一または複数のサイトカインマーカーの量を測定する工程であって、
好ましくは、前記サイトカインマーカーが免疫学的アッセイを使用することによって、より好ましくはELISAアッセイを使用することによって測定される工程を含む。
【0234】
広範な化合物が本スクリーニング方法に使用可能である。例えば、使用可能なのは、小分子、ホルモン、糖類、タンパク質、ペプチド、ポリマー、生物製剤(例、タンパク質、ペプチド、抗体もしくはその誘導体、またはその結合体)、核酸、ウイルス剤、創傷ドレッシング材(任意ではあるが、治療活性剤を含むもの)、または一もしくは複数の細胞(例、一もしくは複数の遺伝子改変細胞)である。さらに、複数の化合物を、並行して試験することができる。2、3、4、5、6、7、8、9または10以上の候補化合物を並行して試験しようとする場合、それら化合物を別々に加えてもよいし、二以上の候補化合物を含む少なくとも一つの組成物として加えてもよい。従って、膨大な数の候補化合物が試験可能である。例えば、2以上の組成物(例、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上の組成物(各組成物は少なくとも一つの(例、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上の)候補化合物を含む))を加えてもよい。化合物または化合物含有組成物は、液体(例、溶液)、特に、水性溶液、培地または懸濁液(例、水性溶液もしくは培地中の懸濁物)として提供可能である。候補化合物(複数可)不含有の液体、特に、溶液または懸濁液は、本アッセイ(複数可)で使用される細胞の生存率と実質的に干渉しない。
【0235】
従って、本発明の方法の一つの好ましい実施形態では、前記少なくとも一つの化合物を、小分子、ホルモン、糖類、タンパク質、ペプチド、ポリマー、生物製剤(例、タンパク質、ペプチド、抗体もしくはその誘導体、またはその結合体)、核酸、ウイルス剤、または一もしくは複数の細胞(例、一もしくは複数の遺伝子改変細胞)から選択する。本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記少なくとも一つの化合物を、免疫調節剤(より好ましくは、免疫抑制剤)、抗生物質、抗感染剤、増殖因子、サイトカイン、抗増殖剤、および増殖刺激剤から選択する。例えば、既知の承認済活性剤(例、創傷治癒の分野または他の適応症(例、炎症性疾患や増殖障害)で承認された活性剤)が試験可能である。さらに、新規化合物および/または化合物ライブラリーが試験可能である。例えば、コンビナトリアルライブラリーまたは他の小分子化合物ライブラリー、あるいは抗体ライブラリーが試験可能である。
【0236】
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記少なくとも一つの化合物は、単一の化合物、または2、3、4もしくは5以上の異なる化合物であり、その2、3、4もしくは5以上の異なる化合物は、単一の組成物中に存在してもよいし、2以上の別々の組成物に存在してもよい。
【0237】
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記値が少なくとも三重反復して測定され、ならびに/または、統計的に有意であるとB)で決定されるが、より好ましくは、p≦0.05、p≦0.001もしくはp≦0.001であり、および/もしくは、B1)~B5)、B1)~B6)、もしくはB1)~B4)およびB6)で得られた少なくとも一つの値が、前記候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値よりも、統計的に有意に、より好ましくは、p≦0.05、p≦0.001、もしくはp≦0.001で少なくとも10%高い(例、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%もしくは50%高い)か、もしくは、少なくとも10%低い(例、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%もしくは50%低い)場合に、前記化合物が皮膚創傷治癒を調節するのに適しているとして同定される。
【0238】
皮膚創傷治癒を調節、特に、改善するのに適していると同定される化合物は、創傷治癒に関する効力と安全性のインビトロ、エクスビボおよび/またはインビボモデルで試験することができる。
【0239】
皮膚創傷治癒を調節、特に、悪化させるのに適していると同定される化合物は、肥厚性瘢痕、ケロイドおよび線維症に関する効力と安全性のインビトロ、エクスビボおよび/またはインビボモデルで試験することができる。
【0240】
ケロイドは、その成熟度に依るが、III型またはI型コラーゲンのいずれかから主として構成される皮膚瘢痕の一種である。ケロイドは、皮膚の傷が治った場所でその後I型コラーゲンにゆっくりと置き換わった肉芽形成組織が過剰成長した結果物である。ケロイド瘢痕は良性である。
【0241】
線維症とは、修復または再活性化プロセスにおける器官または組織の線維性結合組織の過剰形成のことである。
【実施例】
【0242】
実施例
1. 略語:
略語 説明
DMSO ジメチルスルホキシド
EC 内皮細胞
FCS ウシ胎仔血清
FDM 線維芽細胞由来マトリックス
HaCaT ヒト角化細胞株
HBSS ハンクス平衡塩類溶液
HDF ヒト皮膚線維芽細胞
M-CSF マクロファージコロニー刺激因子
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PDGF-BB 血小板由来増殖因子
RPMI ロズウエルパーク記念研究所培地
SRB スルホローダミンB
WE 創傷浸出液
【0243】
2. 慢性創傷を有する患者由来の創傷浸出液を使用して、実験システムにおいて創傷の慢性化を模倣するアッセイシステム
創傷浸出液(創傷液)は、創傷細胞の分子的フィンガープリントを含む細胞外液であって、「液体生検」と称される場合がある。創傷浸出液(WE)の除去によって創傷治癒を改善することができるので、本発明者らはWE内に含まれる因子が、例えば、自然免疫細胞の活性化を通して創傷治癒を有意に阻害すると考えた。
【0244】
以下に記載するように、本発明者らは、慢性創傷由来の創傷浸出液がインビトロで炎症促進性であり、インビボアッセイにおいて創傷治癒を遅延させることを示すことができた。従って、本発明者らは、治癒が遅れる原因の重要因子がこれらの浸出液中に含まれていると結論する。
【0245】
3. インビトロアッセイ
マクロファージ、角化細胞および線維芽細胞が、創傷炎症を継続させ、その結果創傷が慢性になるのに重要な細胞であると認識される。慢性創傷由来のWEを刺激物として使用することによって、本発明者らは、これらの細胞タイプにおける新規試験システムであって、化合物スクリーニング、皮膚創傷の治癒をモニター、および/または、個体の皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷もしくは治癒性皮膚創傷であるとして同定するのに適するものを確立した。本アッセイは、非治癒性慢性潰瘍の治療に関してWE誘導細胞活性化の阻害物質の同定(
図2)、ならびに、皮膚創傷の治癒をモニターする方法および/または個体の皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷や治癒性皮膚創傷として同定する方法を目的とする本発明者らの研究の基礎を成している。
【0246】
慢性創傷が炎症促進性サイトカインを高生産する炎症促進性のM1マクロファージ表現型を示す一方で、治癒性創傷はM2表現型を示す[Sindrilaru A et al(2013)Adv Wound Care 2:357-368]。本発明者らは、インビトロで分化したマクロファージに対する慢性潰瘍由来の創傷浸出液(WE)の影響を検証した。これらマクロファージが低レベルまたは高レベルのサイトカインを放出する能力に基づいて、これらのマクロファージを二種類のサブセットに分けることができた。また、本発明者らは、有意により高いレベルのIL-1α、IL-1βおよびTNF-αがサブセットのWEに含まれ、マクロファージによる高レベルのサイトカイン放出を引き起こしたことを実証することができた。
【0247】
3.1. 細胞アッセイ
3.1.1. 初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)増殖アッセイ:
個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルの存在下での初代線維芽細胞の増殖の測定工程
初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)をCELLnTEC社(Bern)から購入した。10%FCS、2mMグルタミン、および100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)でルーチン的に細胞を増やした。培地、抗生物質、およびグルタミンはLonza社から購入した。細胞を継代数10で使用した。細胞をトリプシン処理し、96穴プレートの内部ウエルへと200μl中に5000細胞/ウエルで播種した。外側ウエルには滅菌水を充填した。細胞を一晩接着させ、その後、以下の条件(滅菌ろ過したWEを培地中に異なる濃度で希釈したものの存在下または非存在下で、段階的濃度の化合物または20ng/mlのPDGF-BB(Tonbo Biosciences社#TO-21-8501-U010))下、37℃で72時間インキュベーションした。ネガティブコントロールサンプルについては、200μlの培地を、特定刺激物の代わりに加えた。または、総容量50μlの試験化合物または増殖因子とWEまたは培地とを一緒に、細胞を2500細胞/ウエルで384穴プレート中に播種した。
【0248】
72時間のインキュベーション期間が終了後、細胞を、4%パラホルムアルデヒド(Morphisto社)で15分間室温固定し、そして、PBSで3回洗浄した。細胞を一晩接着(1日目)した後にコントロールプレートを固定して、開始細胞数を測定した。
【0249】
スルホローダミンB(SRB、シグマ社)で固定細胞を染色することによって細胞数の基準としての総細胞タンパク質を測定した。1%酢酸中の0.4%SRB溶液をウエルに30分かけて加えた。その後、洗浄溶液が無色になるまで、ウエルを1%酢酸で洗浄した。乾燥後、前記染料を、10mMのTris・HCl(pH8.5)で溶出し、低細胞密度または高細胞密度についてそれぞれ550または492nmのいずれかで吸光度を測定した。1日目の開始細胞数(96穴プレートに対するもの)を示すサンプルの平均吸光度を、WE処理細胞の吸光度の値から引き算した。
【0250】
全ての実験は、各サンプルおよび濃度に関して三重反復して実施し、そして、平均±標準偏差(SD)を実験の評価に使用した。結果を、非刺激細胞に関するコントロール値のパーセンテージとして表す。
【0251】
4つの選択されたWEの異なる希釈液によって誘導される初代ヒト線維芽細胞(HDF)の増殖阻害を
図4に示す。
【0252】
384穴プレートでの化合物スクリーニングに関しては、DMSO中の50nlの化合物溶液を、音響分注によって配置し、DMSOの終濃度が0.1%(細胞増殖に影響を与えない(結果は示さない))になった。WEを使用してスクリーニングすることに関しては、未処理および非刺激コントロールでの増殖(=100%)に対する%として化合物の結果を計算した。そして、
図5に示すように、平均増殖
WE%+3*標準偏差として、ポジティブヒットのカットオフを定義した。
【0253】
3.1.2. 線維芽細胞由来マトリックス(FDM)の形成:皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルの存在下での初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成の測定工程
HDF細胞を、-3日目に5000細胞/ウエルで96穴組織培養プレート(384穴プレートに関しては1250細胞/ウエル)(100μlの0.2%ゼラチン溶液(シグマ社)で1時間37℃プレコーティングしたもの)中に播種した。細胞がコンフルエントになったとき(=0日目)、HDF増殖アッセイで記載したように、マトリックス促進サプリメント(ビタミンC:2-ホスホ-L-アスコルビン酸三ナトリウム塩、100μg/ml;シグマ社)をPDGF-BB、TGF-β1または段階的濃度の化合物-/+WEを含む試験サンプルとともに加えた。4日後、培地を、ビタミンCと刺激物と化合物とを含む新鮮な培地で交換し、0日目で開始した条件を維持した。TGF-β1とPDGF-BBをそれぞれ、FDM形成と細胞増殖を促進させるためのポジティブコントロールとして含めた。8日の総インキュベーション時間の後、FDM生産量をSRB染色によって固定培養物中で測定し、上記したように評価した。
【0254】
3.1.3. 角化細胞増殖アッセイ:皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルの存在下での角化細胞の増殖の測定工程
10%FCS、2mMグルタミン、および100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシンを含むDMEMでルーチン的にHaCaT角化細胞株を培養した。HDF細胞に関して記載したように、増殖アッセイを実施した。初代ヒト角化細胞を、ラット尾部コラーゲン(40μg/ml;Gibco社)またはゼラチン(0.2%;シグマ社)でコーティングしたプラスチック上の0.06nMカルシウムを含み増殖因子(Lonza社CC-4131)を添加したKBM培地(Lonza社CC-3104)中で増殖させた。抗生物質は使用しなかった。HDF細胞に関して記載したように、増殖アッセイを実施した。
【0255】
3.1.4. 初代ヒト皮膚微小血管内皮細胞増殖アッセイ:皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルの存在下での内皮細胞の増殖の測定工程
初代ヒト内皮細胞HMVEC-d-(Lonza社、CC-2543)を、EGM-2-MV BulletKit培地(Lonza社CC-3156&CC-4147)中で培養した。HDF細胞に関して記載したように、増殖アッセイを実施した。
【0256】
3.1.5. 初代ヒトマクロファージ刺激アッセイ
初代ヒトマクロファージを単球(末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたもの)から分化させた。PBMCを、赤十字(ウィーン)から得たバフィーコートから、LymphoPrep(Technoclone社)を使用して単離した。30mlのバフィー濃縮物をPBSで1:2に希釈し、50mlのファルコンチューブ中に15mlのLymphoprepで穏やかに下層にし、21℃、1800rpmで25分間遠心分離した。中間層を慎重に新しいファルコンチューブに移し、氷冷PBSで50mlにまで満たした。もう一度遠心分離工程(10分、1200rpm、4℃)を実施した後、細胞ペレットをPBSで3回洗浄し、20%FCSと10%DMSOを含むRPMI培地中に再懸濁し、そして、液体窒素中で凍結した。製造元のマニュアルに従ってautoMACS-Sorter(Miltenyi社)上でCD14ビーズキット(Miltenyi社)を用いるポジティブ選択を使用して、凍結アリコートから単球を調製した。
【0257】
培養とマクロファージへ分化するためには、単球を6穴プレート(Nunc社)中に4×106単球/ウエルで播種し、ウエル当たり総容量5mlで、RPMI(10%FCS、2mMグルタミン、および100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシンを添加したもの)中で20ng/mlのM-CSF(R&D Systems社)とともにインキュベーションした。2日後、2mlの上清を除去し、20ng/mlのM-CSFを含む新鮮な培地(2.5ml/ウエル)で置換した。三日目には、顕微鏡観察を行い、接着性で、しばしば伸長した細胞へ分化したことがわかった。
【0258】
マクロファージをゴムスクレーパーで回収し、1200rpmで5分遠心分離し、血清不含有培地に再懸濁し、そして、100μl中、2×105細胞/ウエルで播種した。37℃で1時間後、2倍に濃縮した刺激物を100μlの容量で加え、必要とされる終濃度を得た。100ng/mlのLPS(シグマ社)と50ng/mlのIFN-γ(PeproTech社)の合剤が、サイトカイン分泌の誘導に関するポジティブコントロールとして働いた。段階的濃度の試験化合物を、滅菌フィルター済WEを1:100希釈したものの存在下または非存在下で調製した。ネガティブコントロールサンプルについては、100μlの培地を、特定刺激物の代わりに加えた。
【0259】
24時間後、200μlの上清を、U型ウエルプレートへ移し、将来のサイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-6、TNF-α)分析のために-20℃で凍結した。WE誘導サイトカイン刺激を計算するために、投入WEのサイトカイン濃度を、得られた上清での量から差し引いた。
【0260】
3.1.6. ヒト皮膚におけるマクロファージ挙動を反映するインビトロモデルとしてのヒト単球-皮膚線維芽細胞共培養:
(a)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され;(b)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルとインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され;(c)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルとインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され;(d)皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルとインキュベーションしたマクロファージの上清中の、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択される一または複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されている。
磁気ビーズ分離によって健常ドナーのPBMCから単離されたCD14+単球を、単独または初代ヒト皮膚線維芽細胞(CellNTec社)または線維芽細胞由来マトリックス(FDM)の存在下でインキュベーションした。FDMは、初代ヒト皮膚線維芽細胞を増殖サプリメントであるビタミンCまたはインスリンおよびEGF(ビタミンC:2-ホスホ-L-アスコルビン酸三ナトリウム塩、100μg/ml;ヒトEGF、5ng/ml;ヒトインスリン、5μg/ml)と共に3週間インキュベーションすることによって生成されたものである。または、繊維芽細胞単層培養物が使用可能でもある。4日~一週間、M-CSF(25ng/ml)の存在下または非存在下でマクロファージを分化させた後、M1とM2マクロファージ誘導のコントロールとして、IFN-γ(50ng/ml)、LPS(100ng/ml)およびIL-4(25ng/ml)またはその合剤とともに一晩、その培養物を刺激した。非治癒性創傷と治癒性創傷由来のWEの効果を評価するために、1:25~1:100の範囲で希釈したWEを培養培地に加えて一晩刺激した。
【0261】
上清を回収し、ELISAによるサイトカイン測定用に凍結し、そして、細胞を回収し、FACS解析に掛けて、単球集団をゲーティングした。平均蛍光強度(MFI)の幾何平均を使用して、表面マーカー発現を定量した。
【0262】
特異的mRNAレベルをハウスキーピング遺伝子と比較した比率として測定する;得られた値は「ハウスキーピング遺伝子に相対的な発現」である。
【0263】
評価には2つの可能な選択肢がある:a)ある集団内で所定マーカーに陽性の細胞のパーセンテージ(FACS解析で最も一般的な表示値)、または、b)平均蛍光強度によって測定される細胞表面発現の量(個々の細胞当たりの細胞表面上の標識分子数の代わりとしてのもの)である。
【0264】
以下の表示値を使用した。
FACS:M1マクロファージに関しては、CD38、CD64およびCD197;M2マクロファージに関しては、CD200受容体(CD200R)、CD206およびCD209;マクロファージ分化のマーカーとしてはCD163である。M1/M2細胞表面マーカー発現の比率を計算した。
【0265】
ELISA:M1マクロファージに関しては、CXCL10およびIL-23p19;M2マクロファージマーカーに関しては、CCL22およびCCL18;M1表現型の指標となる炎症促進性マーカーとしては、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αである。
【0266】
mRNA:M1マクロファージに関しては、CD38、CD64 CD38、CD64およびCD197;M2マクロファージに関しては、CD200受容体(CD200R)、CD206およびCD209;マクロファージ分化のマーカーとしてはCD163である。
【0267】
3.2. 生化学アッセイ
3.2.1. タンパク質アッセイ
創傷浸出液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に希釈して、そして、20~2000μg/mlの範囲の標準物質としてウシ血清アルブミンを使用する市販のタンパク質アッセイ(Pierce社BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific社#23225))に掛けた。アッセイを96穴ELISAマイクロプレート(Greiner社#655101)中で実行し、TECAN Infinite M200 Proマイクロプレートリーダー上、562nmで測定し、評価についてはMagellan7.2ソフトウエアを使用した。
【0268】
3.2.2. ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性アッセイ
PBSで事前に希釈したWEサンプル中のMPO活性を、96穴ELISAマイクロプレート中で3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)の酸化により測定した。10μlの希釈WEサンプルを、40μlのアッセイ緩衝液(78mMのNaH2PO4・H2O、1.67mMのNa2HPO4、0.5%HTAB(pH5.40))に加え、その後、青色が発色するまで(30分まで)40μlの1×TMB ELISA基質溶液(eBioscience社#00-4201-56)とインキュベーションした。アッセイ緩衝液中のヒト白血球由来MPO(シグマ社M6908-5UN)を、0.12~120mU/mlの濃度で、標準物質として使用した。反応を45μlの2NのH2SO4を加えることによって停止させ、そして、サンプルをTECAN Infinite M200 Proマイクロプレートリーダー上、450nmで測定し、評価についてはMagellan7.2ソフトウエアを使用した。
【0269】
3.2.3. 好中球エラスターゼアッセイ
WE(PBSに1:2で事前に希釈したもの)のエラスターゼ活性を、蛍光発色基質MeOSuc-Ala-Ala-Pro-Val-AMCの蛍光を測定することによって決定した。5μlの事前に希釈したWEを、384穴黒色ポリスチレンプレート(Corning社#3573)中の20μlのアッセイ緩衝液(50mMのTris(pH7.4)、600mMのNaCl、0.05%CHAPS)へと加えた。アッセイ緩衝液中の終濃度1.4μMのエラスターゼ基質V(Merck-Millipore/Calbiochem社カタログ#324740)25μlを加えた後、反応を1時間進行させた。ヒト白血球由来エラスターゼ(シグマ社E8140-1UN)の系列希釈物(10nMが最高濃度のもの)を、標準物質として使用した。反応を、TECAN Infinite M200 Pro(励起380nm、発光460nm)上で測定し、評価についてはMagellan7.2ソフトウエアを使用した。
【0270】
3.2.4. マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)アッセイ
全てのマトリックスメタロプロテイナーゼの活性を、蛍光発色基質MCA-Lys-Pro-Leu-Gly-Leu-DPA-Ala-Arg-NH2の蛍光を測定することによってWE中で決定した。WEをアッセイ緩衝液(100mMのTris(pH=7.4)、100mMのNaCl、10mMのCaCl2、10μMのZnCl2、0.075%(v/v)Brij35)中に希釈し、そして、15μlのWE希釈物を384穴黒色ポリスチレンプレート(Corning社#3573)のウエルへと移した。アッセイ緩衝液中の活性型ヒトMMP9全長タンパク質(Abcam社#ab168863)を、0.31~20nmの濃度で標準物質として使用した。アッセイ緩衝液中の終濃度が5μMのMMP基質(Biosyntan社#50347.1)15μlを加えた後、反応を2時間37℃で進行させた。蛍光を、TECAN Infinite M200 Pro(励起323nm、発光382nm)上で測定し、評価についてはMagellan7.2ソフトウエアを使用した。
【0271】
3.3. サイトカインアッセイ
3.3.1. IL-1αの測定
WE中およびマクロファージ上清中のIL-1αを、F96Maxisorp Nunc免疫プレート(Nunc社、#439454)中で、製造元のマニュアルに従って、R&D Systems社のhIL1-αDuoSet ELISAキット(#DY200)を使用して測定した。酵素反応を、TMB溶液(eBioscience社)で検出し、そして、50μl/ウエルの2NのH2SO4を加えることによって停止させた。吸光度をTECAN Infinite M200 Pro上、450nmで測定した。
【0272】
3.3.2. IL-1βの測定
WE中およびマクロファージ上清中のIL-1βを、F96Maxisorp Nunc免疫プレート(Nunc社、#439454)中で、製造元のマニュアルに従って、eBioscience社のIL1-βELISA ReadySet-Goキット(#88-7261-88)を使用して測定した。酵素反応と測定はIL-1αで記載したように実行した。
【0273】
3.3.3. TNF-αの測定
WE中およびマクロファージ上清中のTNF-αを、F96Maxisorp Nunc免疫プレート(Nunc社、#439454)中で、製造元のマニュアルに従って、eBioscience社のTNF-αELISA ReadySet-Goキット(#88-7346-88)を使用して測定した。酵素反応と測定はIL-1αで記載したように実行した。
【0274】
3.3.4. CCL18の測定
WE中およびマクロファージ上清中のCCL18を、F96Maxisorp Nunc免疫プレート(Nunc社、#439454)中で、製造元のマニュアルに従って、R&D Systems社のhCCL18/PARC DuoSet ELISAキット(#DY394)を使用して測定した。酵素反応と測定はIL-1αで記載したように実行した。
【0275】
3.4. マクロファージ表面マーカーのフローサイトメトリーによる解析
細胞を回収して、FACSバッファー(2%FCS含有PBS)中に再懸濁した。非特異的抗体結合を、ヒトTrustain FCRブロッキング溶液(Biolegend社、#422302)を用いて、氷上10分間インキュベーションすることによって阻止した。eBioscience社(現在は、ThermoFisher Scientific社)の以下の蛍光色素結合抗体(CD38-PerCPeFluor710(#46-0388-42)、CD197-APC(#17-1979-42)、CD206-AF488(#53-2069-42)、CD209-PerCP Cy5.5(#45-2099-42))を使用して、30分間氷上で染色することによって特異的表面マーカーを検出した。CD45eFluor(#50669-0459-42)を用いた共染色することによって、共培養から解析する際に、マクロファージと初代ヒト線維芽細胞とを区別した。FACSバッファーで細胞を洗浄後、細胞を1%パラホルムアルデヒド含有PBSで固定し、その後、データをBeckman Coulter社のGalliosフローサイトメーター上で取得するまで暗所にて4℃で保管し、Kaluza分析ソフトウエア1.3で解析した。
【0276】
4.1. 本発明のスクリーニング方法における化合物スクリーニングのための創傷浸出液の選択
異なる特徴と非常に多様な病因を持つ四種類の異なる創傷浸出液を(それらのいくつかまたは全てに共通するヒットの同定を可能にするために)選択した。患者の特徴を表1にまとめる。
【0277】
【0278】
これらWE中の様々な酵素活性と炎症性サイトカインレベルおよび初代ヒトマクロファージ中のサイトカイン誘導を
図6に示す。
【0279】
4.2 個体の皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷または治癒性皮膚創傷であるとして同定する方法、および、個体の皮膚創傷の治癒をモニターする方法
上記細胞アッセイと生化学アッセイを使用して驚くべきことに可能となったのは、個体の皮膚創傷を非治癒性皮膚創傷または治癒性皮膚創傷であるとして同定する信頼性の高い方法、および、個体の皮膚創傷の治癒をモニターする方法を確立することであった。
【0280】
これらアッセイでの評価が明らかにしたことは、
-初代ヒト線維芽細胞の増殖が、非治癒性潰瘍由来の浸出液の45%により阻害されるが、治癒性創傷(3つのものすべては手術創であった)由来の浸出液のたった8%によってしか阻害されないこと、
-線維芽細胞増殖アッセイで活性があると証明された浸出液のほとんどがHaCaT角化細胞の増殖と線維芽細胞由来マトリックス(FDM)の形成も同様に阻害したこと、
-微小血管内皮細胞の増殖を試験した33個の浸出液に関しては、ほとんどの活性が線維芽細胞への効果と似たものであったこと、
-治癒性および非治癒性潰瘍の両方由来のいくつかの浸出液が、興味深いことに、FDM促進活性を示したことである。
【0281】
特に、本発明の方法は、驚くべきことに、特定の個体の特定の皮膚創傷が、将来、創傷治癒の改善または悪化を示すかどうかの予測を可能にした。
【0282】
4.3. 皮膚創傷治癒を調節するのに適切な化合物をスクリーニングして得る本発明の方法
驚くべき知見とは、皮膚創傷治癒を調節するのに適切な化合物をスクリーニングして得る方法が以下の工程を用いて確立できたことである:
主要アッセイ:線維芽細胞増殖。
【0283】
候補化合物がもし上記アッセイで活性があることが判明した場合には、上記詳述した以下の5または6つの二次的アッセイ1)~5)または1)~6)の内一または複数を実行し、前記二次的アッセイは、
1)FDM(3D線維芽細胞)アッセイ(増殖と細胞外マトリックス形成の両方を測定するもの)、
2)HaCaT増殖アッセイ、
3)線維芽細胞/マクロファージ共培養:M1対M2マクロファージ表面マーカーの発現アッセイ、
4)線維芽細胞/マクロファージ共培養:M1対M2マクロファージマーカーの分泌アッセイ、
5)線維芽細胞/マクロファージ共培養:M1対M2マクロファージマーカーmRNAの発現アッセイ、
6)線維芽細胞/マクロファージ共培養:IL-1α、IL-1βおよびTNF-αのサイトカインマーカーの分泌アッセイである。
【0284】
これらのアッセイを、少なくとも一つの個体由来の創傷浸出液の存在下で実行する。もし化合物が前記5または6つの二次的アッセイの少なくとも一つでさらに活性がある場合に、皮膚創傷治癒を調節するのに適しているとして化合物を同定する。
【0285】
384穴プレートでの化合物スクリーニングに関しては、DMSO中の50nlの化合物溶液を、音響分注によって配置し、DMSOの終濃度が0.1%(細胞増殖に影響を与えない(結果は示さない))になった。WEを使用してスクリーニングすることに関しては、未処理および非刺激コントロールでの増殖(=100%)に対する%として化合物の結果を計算した。そして、
図5に示すように、平均増殖
WE%+3*標準偏差として、ポジティブヒットのカットオフを定義した。
【0286】
従って、皮膚創傷治癒を調節するのに適切な化合物をスクリーニングして得る方法は、以下の工程:
A)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプル、および、(ii)少なくとも一つの候補化合物の存在下で初代線維芽細胞の増殖を測定する工程と
B)A)で得られた値が、前記少なくとも一つの候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値より少なくとも10%高いまたは少なくとも10%低い場合に、以下の方法工程B1)~B5)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つ、または、以下の方法工程B1)~B6)の内一つ、二つ、三つ、四つ、五つもしくは六つ、または、以下の方法工程B1)~B4)およびB6)の内一つ、二つ、三つ、四つもしくは五つを実行する工程:
B1)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物の存在下で初代線維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程、
B2)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物の存在下でHaCaT細胞の増殖を測定する工程、
B3)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーと一または複数のM2マーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
B4)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーと一または複数のM2細胞表面マーカーの量(複数可)および/または度数分布(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
B5)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAと一または複数のM2マーカーmRNAの発現レベル(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養され、
B6)(i)少なくとも一つの個体の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプル、および、(ii)前記少なくとも一つの候補化合物とインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のサイトカインマーカーの量(複数可)を測定する工程であって、前記マクロファージが線維芽細胞と共培養されていて、前記一または複数のサイトカインマーカーがIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選択され、
B1)~B5)、またはB1)~B6)、またはB1)~B4)およびB6)で得られた少なくとも一つの値が、前記候補化合物の非存在下で確立されたコントロール値よりも少なくとも10%高いかまたは少なくとも10%低い場合に、前記化合物が皮膚創傷治癒を調節するのに適していると同定され、
好ましくは、A)とB1)~B5)、またはA)とB1)~B6)、またはB1)~B4)およびB6)に係る本方法工程が、本願の実施例および/またはその他の部分に記載されるように実行される工程と、を含む。