(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】高いガラス転移温度を有する樹脂成分をベースとする透明フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20221006BHJP
C08L 33/12 20060101ALI20221006BHJP
C08K 5/51 20060101ALI20221006BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20221006BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20221006BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221006BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08J5/18 CEY
C08L33/12
C08K5/51
C08K5/13
C08K5/3492
B32B27/30 A
G02F1/1335
(21)【出願番号】P 2019544917
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(86)【国際出願番号】 US2018018795
(87)【国際公開番号】W WO2018152522
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-05
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515167791
【氏名又は名称】トリンセオ ユーロップ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジアシン・ジェイ・ゲ
(72)【発明者】
【氏名】フロランス・メルマン
(72)【発明者】
【氏名】エステル・ムーリス・ピエラ
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513324(JP,A)
【文献】特開2004-292812(JP,A)
【文献】特開昭49-085184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226313(US,A1)
【文献】特表2014-501293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/00-5/02、5/12-5/22、G02F1/1335、
C08C19/00-19/44、C08F6/00-246/00、301/00、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも115℃のTg及び少なくとも60000g/モルの重量平均分子量を有する樹脂成分を含むフィルムであって、
前記樹脂成分が、
a)メタクリル酸メチルとメタクリル酸と随意としての1種以上の追加のコモノマーとの少なくとも1種のコポリマー、及び
b)メタクリル酸メチルと1種以上のアクリル酸C
1~C
4アルキルエステルと随意としての1種以上の追加のコモノマーとのコポリマーより成る群から選択される1種以上の追加ポリマー
を含み、
該フィルムが、少なくとも90%の光線透過率及び1%未満の曇り度を有し、
前記樹脂成分の重量平均分子量が90000g/モル未満である場合には、該樹脂成分が、ホスファイト酸化防止剤、ホスフェート酸化防止剤、ホスホネート酸化防止剤、ホスフィン酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、トリアジントリオン酸化防止剤及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種の酸化防止剤を追加的に含む、前記フィルム。
【請求項2】
前記b)1種以上の追加ポリマーがメタクリル酸メチルとアクリル酸エチル又はアクリル酸メチルから選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記樹脂成分が25重量%以上のa)及び75重量%以下のb)から構成され、a)とb)との合計が100重量%である、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記b)1種以上の追加ポリマーが少なくとも120000g/モルの重量平均分子量を有する、請求項1~3のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
前記コポリマーa)中に1種以上の追加のコモノマーが存在し、前記1種以上の追加のコモノマーが、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、スチレン、α-メチルスチレン、無水マレイン酸、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチル及びそれらの組合せより成る群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
前記少なくとも1種のコポリマーa)がメタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/スチレンコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/スチレン/無水マレイン酸コポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/無水マレイン酸/α-メチルスチレンコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル/メタクリル酸ベンジルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸エチル/メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル/メタクリル酸t-ブチルコポリマー及びそれらの組合せより成る群から選択される、請求項1~5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
メタクリル酸がコポリマーa)の1~7重量%を構成する、請求項1~6のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
前記コポリマーa)がメタクリル酸メチル79~99重量%、メタクリル酸1~7重量%及び1種以上の追加のコモノマー0~20重量%から成る、請求項1~7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
前記樹脂成分のTgが140℃以下である、請求項1~8のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
二軸延伸されている、請求項1~9のいずれかに記載のフィルム。
【請求項11】
10~200
μmの厚さを有する、請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
15~80
μmの厚さを有する、請求項10に記載のフィルム。
【請求項13】
60~500
μmの厚さを有する、請求項1~9のいずれかに記載のフィルム。
【請求項14】
560nmの波長において20nm未満の面内位相差値及び560nmの波長において20nm未満の面外位相差値を有する、請求項1~13のいずれかに記載のフィルム。
【請求項15】
前記樹脂成分の重量平均分子量が少なくとも100000g/モルである、請求項1~14のいずれかに記載のフィルム。
【請求項16】
前記
樹脂成分が少なくとも70000g/モルの重量平均分子量を有する、請求項1~
14のいずれかに記載のフィルム。
【請求項17】
少なくとも92%の光線透過率及び0.5%未満の曇り度を有する、請求項1~16のいずれかに記載のフィルム。
【請求項18】
前記樹脂成分が3.8kg下で230℃において0.5~2.0g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1~17のいずれかに記載のフィルム。
【請求項19】
ホスファイト酸化防止剤、ホスフェート酸化防止剤、ホスホネート酸化防止剤、ホスフィン酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、トリアジントリオン酸化防止剤及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種の酸化防止剤を追加的に含む、請求項1~18のいずれかに記載のフィルム。
【請求項20】
ベンゾフェノンUV安定剤、ベンゾトリアゾールUV安定剤、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールUV安定剤、ヒドロキシフェニルトリアジンUV安定剤、ベンゾオキサジノンUV安定剤及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種のUV安定剤を追加的に含む、請求項1~19のいずれかに記載のフィルム。
【請求項21】
少なくとも1種の強化剤を追加的に含む、請求項1~20のいずれかに記載のフィルム。
【請求項22】
前記樹脂成分が
13C-NMRによって測定して0.5~2重量%の酸無水物環構造を含有する、請求項1~21のいずれかに記載のフィルム。
【請求項23】
前記樹脂成分を溶融押出してフィルムを形成させることを含む、請求項1~22のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
【請求項24】
前記フィルムを二軸延伸する追加工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~22のいずれかに記載の少なくとも1種のフィルムと、請求項1~22のいずれかに記載のフィルム以外の少なくとも1種の基材又はフィルムとを含む積層体。
【請求項26】
請求項1~22のいずれかに記載の少なくとも1種のフィルムを含む液晶ディスプレイ(LCD)又は有機発光ダイオード(OLED)装置。
【請求項27】
請求項1~22のいずれかに記載の少なくとも1種のフィルムを含む物品であって、反射フィルム、多層フィルム、誘目フィルム、装飾フィルム、銀コーティングミラーフィルム、レンチキュラーフィルム、IDカード、電気製品、輸送用車両、ソーラーフィルム及びデュアル輝度向上フィルムより成る群から選択される、前記物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性であり、透明性が高く且つ曇り度が低レベルである1種以上のメタクリル酸メチルのコポリマーをベースとするフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、I2着色PVA(ポリビニルアルコール)吸収偏光子を含有させた積層体には、トリアセテートセルロース(TAC)フィルムが用いられてきた。しかしながら、高温多湿条件(例えば85℃、相対湿度85%)下で必要とされる要件又はより薄い光学偏光子についての要件に適合した光学偏光子含有TAC/PVA-I2/TAC積層フィルムを製造するのは困難であった。さらに、TACフィルムは、厚さ方向及びオフアングル方向に沿って高い固有の有効な負の光学位相差を有しており、このことは、このようなフィルムを、面内スイッチング(IPS)及びフリンジフィールドスイッチング(FFS)液晶ディスプレイ(LCD)用途には適さないものにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、有機発光ダイオード(OLED)及びIPS式LCD装置(例えばLED照明ユニットを有するスマートフォン、タブレット、ノートブック型器及びLCDテレビ)用の光学偏光子において、光学保護フィルム及びゼロ-ゼロ位相差フィルムとして用いることができる、極めて低い複屈折特性を有する改良型フィルムに対する要望が存在する。さらに、LED照明パイプ、光ガイドパネル、光学イメージングレンズ及びその他のタイプの製品には、関連アクリル材料を用いることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
高い光線透過率、低い曇り度、高いガラス転移温度、低い吸湿性、機械的強度、高い寸法安定性並びに低い面内及び面外位相差に鑑みて、光学保護フィルム及びニアゼロ-ゼロ位相差フィルムとしての用途に特によく適した、メタクリル酸メチル含有コポリマーをベースとするアクリルフィルムが開発されてきた。かかるフィルムのある実施形態であって、少量のメタクリル酸モノマー単位及び酸無水物単位を含有する樹脂成分から調製されたものは、IPS式及びFFS式のLCD装置に用いるための薄い光学偏光子に特に適している。
【0005】
本発明の様々な非限定的局面を、以下のようにまとめることができる。
【0006】
局面1:少なくとも約115℃のTg及び少なくとも約60000g/モルの重量平均分子量を有する樹脂成分を含むフィルムであって、
前記樹脂成分が、
a)メタクリル酸メチルとメタクリル酸と随意としての1種以上の追加のコモノマーとの少なくとも1種のコポリマー、及び
b)随意としての、メタクリル酸メチルと1種以上のアクリル酸C1~C4アルキルエステルと随意としての1種以上の追加のコモノマーとのコポリマーより成る群から選択される1種以上の追加ポリマー
を含み、
該フィルムが、少なくとも約90%の光線透過率及び約1%未満の曇り度を有し、
前記樹脂成分の重量平均分子量が約90000g/モル未満である場合には、該樹脂成分が、ホスファイト酸化防止剤、ホスフェート酸化防止剤、ホスホネート酸化防止剤、ホスフィン酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、トリアジントリオン酸化防止剤及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種の酸化防止剤を追加的に含む、前記フィルム。
【0007】
局面2:前記少なくとも1種の追加ポリマーが樹脂成分中に存在する、局面1のフィルム。
【0008】
局面3:前記少なくとも1種の追加ポリマーがメタクリル酸メチルとアクリル酸エチル又はアクリル酸メチルから選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーである、局面2のフィルム。
【0009】
局面4:前記樹脂成分が約25重量%~100重量%のa)及び0~約75重量%のb)から構成され、a)とb)との合計が100重量%である、局面1~3のいずれかのフィルム。
【0010】
局面5:前記少なくとも1種の追加ポリマーが少なくとも100000g/モルの重量平均分子量を有する、局面2~4のいずれかのフィルム。
【0011】
局面6:前記少なくとも1種の追加ポリマーが少なくとも120000g/モルの重量平均分子量を有する、局面2~5のいずれかのフィルム。
【0012】
局面7:前記コポリマー中に1種以上の追加のコモノマーが存在し、この1種以上の追加のコモノマーが、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、スチレン、α-メチルスチレン、無水マレイン酸、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチル及びそれらの組合せより成る群から選択される、局面1~6のいずれかのフィルム。
【0013】
局面8:前記少なくとも1種のコポリマーがメタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/スチレンコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/スチレン/無水マレイン酸コポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/無水マレイン酸/α-メチルスチレンコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸エチル/メタクリル酸ベンジルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸エチル/メタクリル酸シクロヘキシルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸エチル/メタクリル酸t-ブチルコポリマー及びそれらの組合せより成る群から選択される、局面1~7のいずれかのフィルム。
【0014】
局面9:メタクリル酸が前記コポリマーの約1~約7重量%を構成する、局面1~8のいずれかのフィルム。
【0015】
局面10:メタクリル酸メチルが前記コポリマーの約80~約99重量%を構成する、局面1~9のいずれかのフィルム。
【0016】
局面11:前記コポリマーがメタクリル酸メチル約79~約99重量%、メタクリル酸約1~約7重量%及び1種以上の追加のコモノマー0~約20重量%から成る、局面1~10のいずれかのフィルム。
【0017】
局面12:前記樹脂成分のTgが少なくとも約115℃である、局面1~11のいずれかのフィルム。
【0018】
局面13:前記樹脂成分のTgが約135℃以下である、局面1~12のいずれかのフィルム。
【0019】
局面14:前記フィルムが二軸延伸されている、局面1~13のいずれかのフィルム。
【0020】
局面15:約10~約200ミクロンの厚さを有する、局面14のフィルム。
【0021】
局面16:約15~約80ミクロンの厚さを有する、局面14のフィルム。
【0022】
局面17:約60~約500ミクロンの厚さを有する、局面1~13のいずれかのフィルム。
【0023】
局面18:560nmの波長において約10nm未満の面内位相差値及び560nmの波長において約10nm未満の面外位相差値を有する、局面1~17のいずれかのフィルム。
【0024】
局面19:前記樹脂成分の重量平均分子量が少なくとも約100000g/モルである、局面1~18のいずれかのフィルム。
【0025】
局面20:前記コポリマーが少なくとも約70000g/モルの重量平均分子量を有する、局面1~19のいずれかのフィルム。
【0026】
局面21:少なくとも約92%の光線透過率及び0.5%未満の曇り度を有する、局面1~20のいずれかのフィルム。
【0027】
局面22:前記樹脂成分が3.8kg下で230℃において約0.5~約2.0g/10分のメルトフローレートを有する、局面1~21のいずれかのフィルム。
【0028】
局面23:ホスファイト酸化防止剤、ホスフェート酸化防止剤、ホスホネート酸化防止剤、ホスフィン酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、トリアジントリオン酸化防止剤及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種の酸化防止剤を追加的に含む、局面1~22のいずれかのフィルム。
【0029】
局面24:ベンゾフェノンUV安定剤、ベンゾトリアゾールUV安定剤、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールUV安定剤、ヒドロキシフェニルトリアジンUV安定剤、ベンゾオキサジノンUV安定剤及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種のUV安定剤を追加的に含む、局面1~23のいずれかのフィルム。
【0030】
局面25:少なくとも1種の強化剤を追加的に含む、局面1~24のいずれかのフィルム。
【0031】
局面26:前記樹脂成分中に酸無水物環構造が存在する、局面1~25のいずれかのフィルム。
【0032】
局面27:前記樹脂成分が13C-NMRによって測定して0.5~2重量%の酸無水物環構造を含有する、局面26のフィルム。
【0033】
局面28:前記樹脂成分を溶融押出してフィルムを形成させることを含む、局面1~27のいずれかのフィルムの製造方法。
【0034】
局面29:前記フィルムを二軸延伸する追加工程を含む、局面28の方法。
【0035】
局面30:局面1~27のいずれかに従う少なくとも1種のフィルムと、局面1~27のいずれかに従うフィルム以外の少なくとも1種の基材又はフィルムとを含む積層体。
【0036】
局面31:局面1~27のいずれかに従う少なくとも1種のフィルムを含む液晶ディスプレイ(LCD)装置。
【0037】
局面32:局面1~27のいずれかに従う少なくとも1種のフィルムを含む物品であって、反射フィルム、多層フィルム、誘目(conspicuity)フィルム、ミラーフィルム、レンチキュラーフィルム、IDカード、電気製品、輸送用車両、ソーラーフィルム及びデュアル輝度向上フィルムより成る群から選択される、前記物品。
【発明を実施するための形態】
【0038】
上で述べたように、本発明は、少なくとも約115℃のTg(別の実施形態においては少なくとも115℃、少なくとも120℃、少なくとも125℃又は少なくとも130℃のTg;ある実施形態において、樹脂成分のTgは140℃以下である)及び少なくとも約60000g/モルの重量平均分子量(別の実施形態においては少なくとも60000g/モル、少なくとも70000g/モル、少なくとも80000g/モル、少なくとも90000g/モル、少なくとも95000g/モル又は少なくとも100000g/モルの重量平均分子量)を有する樹脂成分を含むフィルムを提供する。別の実施形態において、前記樹脂成分の重量平均分子量は、250000g/モル以下又は200000g/モル以下である。前記樹脂成分は、a)メタクリル酸メチルとメタクリル酸と随意としての1種以上の追加のコモノマーとの少なくとも1種のコポリマー(以下、「メタクリル酸メチルとメタクリル酸とのコポリマー」と称する)、及び随意としてのb)メタクリル酸メチルと1種以上のアクリル酸C1~C4アルキルエステルとのコポリマーより成る群から選択される1種以上の追加ポリマー(これは随意にメタクリル酸メチル及びアクリル酸C1~C4アルキルエステル以外の追加のコモノマーを1種以上含有していてもよい)(以下、「随意としての追加ポリマー」又は「追加ポリマー」と称する)から構成される。前記フィルムは、少なくとも約90%の光線透過率及び約1%未満の曇り度を有する。別の実施形態において、前記フィルムは、少なくとも約92%の光線透過率及び約0.5%未満の曇り度を有する。前記樹脂成分の重量平均分子量が約90000g/モル未満の時には、該樹脂成分は、ホスファイト酸化防止剤、ホスフェート酸化防止剤、ホスホネート酸化防止剤、ホスフィン酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、トリアジントリオン酸化防止剤及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種の酸化防止剤を追加的に含む。
【0039】
分析試験方法
【0040】
本発明に従う樹脂成分及びフィルムの成分のパラメーター及び特徴、例えばガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量、光線透過率%及び曇り度%を測定するために用いられる試験方法は、実施例に記載する。
【0041】
メタクリル酸メチルとメタクリル酸とのコポリマー
【0042】
上で述べたように、本発明のフィルムは、メタクリル酸メチルとメタクリル酸と随意としての1種以上の追加のコモノマーとの少なくとも1種のコポリマー(「メタクリル酸メチルとメタクリル酸とのコポリマー」)から構成される樹脂成分を含むことを特徴とする。本発明の好ましい実施形態において、前記のメタクリル酸メチルとメタクリル酸とのコポリマーは、ランダムコポリマー(統計コポリマー)である。別の好ましい実施形態において、前記のメタクリル酸メチルとメタクリル酸とのコポリマーは、直鎖状コポリマー(非分岐鎖状コポリマー)である。
【0043】
前記のメタクリル酸メチルとメタクリル酸との少なくとも1種のコポリマーは、例えば、メタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/スチレンコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/スチレン/無水マレイン酸コポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/無水マレイン酸/α-メチルスチレンコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸エチル/メタクリル酸ベンジルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸エチル/メタクリル酸シクロヘキシルコポリマー、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸エチル/メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシルコポリマー及びそれらの組合せより成る群から有利に選択することができる。
【0044】
メタクリル酸は、ある実施形態において、前記コポリマーの少なくとも約0.5重量%且つ/又は前記コポリマーの約10重量%以下、例えば前記コポリマーの約1~約7重量%を占めることができる。別の実施形態に従えば、メタクリル酸メチルは、前記コポリマーの少なくとも約50重量%且つ/又は約99.5重量%以下、例えば約70~約99重量%又は約80~約99重量%を占めることができる。前記コポリマーは、本発明の様々な実施形態において、メタクリル酸メチル約79~約99重量%、メタクリル酸約1~約7重量%及び1種以上の追加のコモノマー0~約20重量%から成ることができる。
【0045】
前記コポリマーを製造するために用いられる随意としての追加のコモノマー(群)は、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸と共重合することができる任意のコモノマー(群)であることができるが、好ましい実施形態においては、ビニル芳香族モノマー及び/又は(メタ)アクリレートモノマーであり、その非限定的な例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、スチレン、環状及び脂肪族不飽和酸無水物(例えば無水マレイン酸)、α-メチルスチレン、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸ベンジル並びにそれらの組合せがある。また、アクリル酸及びその他のα,β-不飽和カルボン酸モノマーを用いることもできる。
【0046】
本発明に従う酸官能化アクリルコポリマーの特定的な実例には、以下のコポリマーが包含される:
【0047】
メタクリル酸メチル(92~98.5重量%)とメタクリル酸(1.5~8重量%)とから成るコポリマー。
【0048】
メタクリル酸メチル(70~80重量%)とメタクリル酸(1~3重量%)とα-メチルスチレン(20~25重量%)とアクリル酸n-ブチル(0.5~2重量%)とから成るコポリマー。
【0049】
メタクリル酸メチル(94~98重量%、例えば96重量%)とメタクリル酸(1.5~4.5重量%、例えば3重量%)とアクリル酸エチル(0.5~2重量%、例えば1重量%)とから成るコポリマー。
【0050】
メタクリル酸メチル(84~94重量%)とメタクリル酸(2~6重量%)とスチレン(2~10重量%)とから成るコポリマー。
【0051】
メタクリル酸メチル(92~96重量%、例えば94重量%)とメタクリル酸(2~4重量%、例えば3重量%)とスチレン(1~3重量%)と随意としてのα-メチルスチレン(0~2重量%)とから成るコポリマー。
【0052】
メタクリル酸メチル(92~96重量%、例えば94重量%)とメタクリル酸(2~4重量%、例えば3重量%)と随意としてのアクリル酸エチル(0~2重量%)と随意としてのメタクリル酸ベンジル(0~4重量%)とから成るコポリマー。
【0053】
メタクリル酸メチル(92~96重量%、例えば94重量%)、メタクリル酸(2~4重量%、例えば3重量%)と随意としてのアクリル酸エチル(0~2重量%)と随意としてのメタクリル酸t-シクロヘキシル(0~5重量%)とから成るコポリマー。
【0054】
メタクリル酸メチル(92~96重量%、例えば94重量%)とメタクリル酸(2~4重量%、例えば3重量%)と随意としてのアクリル酸エチル(0~2重量%)と随意としてのメタクリル酸t-ブチル(0~5重量%)とから成るコポリマー。
【0055】
前記コポリマーを調製するために、当技術分野において周知の任意の共重合法の適応を好適に用いることができる。前記コポリマーは、例えば塊状重合、溶融重合、溶液重合、乳化重合及びさらには懸濁重合によって得ることができる。例えば、塊状共重合においては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、及びその他の目的酸官能化アクリルコポリマーの一部として組み込まれることが望まれる任意のコモノマーを含有するモノマー混合物を好適な重合容器中に装填し、好適な開始剤又は開始剤の組み合わせ、例えばフリーラジカル開始剤(例えばペルオキシド化合物)を用いて重合を開始させることができる。追加的に1種以上の連鎖移動剤、例えばメルカプタン及び/又はジスルフィドを存在させてもよい。次いで所望の転化度を達成するのに有効な時間及び温度に重合反応混合物を加熱し、未反応モノマーがあれば次いで揮発等の任意の好適な手段によってコポリマー生成物から除去する。
【0056】
得られたコポリマーを押出等の任意の好適な方法を用いて1種以上の他の成分[例えば追加ポリマー、強化剤(例えばブロックコポリマー強化剤、コア-シェル強化剤)、UV安定剤及び/又は酸化防止剤]と配合することによって、樹脂成分が得られる。
【0057】
随意としての追加ポリマー(群)
【0058】
上で述べたように、本発明のある実施形態においては、少なくとも1種の追加ポリマーを前記樹脂成分中に存在させる。この追加ポリマーは、メタクリル酸メチルと1種以上のアクリル酸C1~C4アルキルエステルとのコポリマーより成る群から選択することができる。好適なC1~C4アルキルエステルの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル及びアクリル酸t-ブチル並びにそれらの組合せが含まれる。また、前記コポリマー中には随意に、メタクリル酸メチル及び1種以上のアクリル酸C1~C4アルキルエステル以外の少なくとも1種の追加のモノマーが重合した形で存在していてもよい。この追加ポリマーは、メタクリル酸を含有しないという点で、前記のメタクリル酸メチルとメタクリル酸とのコポリマーとは相違する。かくして、前記コポリマーを製造するために用いられる随意としての追加のコモノマー(群)は、前記のメタクリル酸メチル及びアクリル酸C1~C4アルキルエステルと共重合することができる、メタクリル酸以外の任意のコモノマー(群)であることができるが、好ましい実施形態においては、この追加のコモノマー(群)は、ビニル芳香族モノマー及び/又は(C1~C4アルキルエステル以外の)(メタ)アクリレートモノマー、例えばスチレン、環状及び脂肪族不飽和酸無水物(例えば無水マレイン酸)、α-メチルスチレン、メタクリル酸シクロヘキシル並びにそれらの組合せ(これらに限定されるわけではない)である。また、アクリル酸及び他のα,β-不飽和カルボン酸モノマーを用いることもできる。
【0059】
本発明の様々な実施形態において、前記追加ポリマーは、メタクリル酸メチル及び1種以上のアクリル酸C1~C4アルキルエステル(C1~C4アルキルアクリレート)の重合した単位から(本質的に)成ることができる。本発明の好ましい実施形態において、前記追加ポリマーは、ランダムコポリマー(統計コポリマー)である。別の好ましい実施形態において、前記追加ポリマーは、直鎖状コポリマー(非分岐鎖状コポリマー)である。
【0060】
例えば、前記少なくとも1種の追加ポリマーは、メタクリル酸メチルとアクリル酸エチル又はアクリル酸メチルから選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーであることができる。
【0061】
本発明の好ましい実施形態において、前記少なくとも1種の追加ポリマーは、少なくとも100000g/モル、少なくとも110000g/モル、少なくとも120000g/モル又は少なくとも130000g/モルの重量平均分子量を有することができる。さらなる実施形態において、前記少なくとも1種の追加ポリマーの重量平均分子量は、250000g/モル以下又は200000g/モル以下である。
【0062】
本発明において用いるのに適した追加ポリマーの製造方法には制限はない。かかる方法には、当技術分野において周知の任意の重合技術の適合が含まれ得る。例えば、前記コポリマーは、溶融重合、溶液重合又は乳化重合によって得ることができる。
【0063】
前記追加ポリマーは、本発明に従ってフィルムを製造するために用いられる樹脂成分における必須成分ではない。従って、本発明のある実施形態において、前記樹脂成分は、a)及びb)の合計重量を基準としてメタクリル酸メチルとメタクリル酸とのコポリマー約25重量%~100重量%及び前記追加ポリマー0%~約75重量%から構成され、ここで、a)とb)との合計は100重量%である。
【0064】
前記樹脂成分中に用いられるポリマー(群)は、好ましい実施形態においては、3.8kg下で230℃において約0.5~約2.0g/10分のメルトフローレートを有する樹脂成分を提供するように選択される。
【0065】
本発明のある実施形態においては、前記樹脂成分中に酸無水物環構造を存在させる。例えば、前記樹脂成分は、13C-NMRによって測定して0.5~2重量%の酸無水物環構造を含有していてよい。かかる酸無水物環構造は、重合の際に1種以上の酸無水物含有コモノマー(特に無水マレイン酸のようなエチレン性不飽和酸無水物)を使用することによって、前記のメタクリル酸メチルとメタクリル酸とのコポリマー又は前記追加ポリマー の内の一方又は両方に、組み込むことができる。酸無水物環構造はまた、グラフトによる後重合や当技術分野において周知のその他のポリマー誘導体化方法において組み込むこともできる。
【0066】
酸化防止剤
【0067】
前記フィルム中に用いられる前記樹脂成分は、1種以上の酸化防止剤を含有していてよい。前記樹脂成分の重量平均分子量が90000g/モル未満である場合、樹脂成分中に少なくとも1種の酸化防止剤を存在させる。好適な酸化防止剤には、ホスファイト酸化防止剤、ホスフェート酸化防止剤、ホスホネート酸化防止剤、ホスフィン酸化防止剤、フェノール系酸化防止(特に、立体障害フェノール系酸化防止剤)、トリアジントリオン酸化防止剤及びそれらの組合せより成る群から選択される酸化防止剤がある。
【0068】
好適な立体障害フェノール系酸化防止剤の例には、以下のものがある(が、これらに限定されるわけではない):ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(BASF社よりIrganox(登録商標)1010の製品名で販売)及びトリエチレングリコールビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート(BASF社よりIrganox(登録商標)245の製品名で販売)。好適なホスファイト酸化防止剤の例には、以下のものがある(が、これらに限定されるわけではない):ペンタエリトリトールジホスファイト、例えば米国特許第5364895号明細書及び同第5438086号明細書(それらそれぞれの開示は、言及することによってすべての目的のためにそっくりそのままここに取り入れられる)に記載されたもの、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェノール)ペンタエリトリトールジホスファイト(BASF社よりIrgafos(登録商標)126の製品名で販売)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル) ホスファイト(BASF社よりIrgafos(登録商標)168の製品名で販売)及びビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフェート(Dover Chemical社よりDoverPhos(登録商標)S-9228の製品名で販売)。
【0069】
本発明の様々な好ましい実施形態において、前記樹脂成分は、少なくとも500ppmで且つ/又は5000ppm以下の酸化防止剤を含有することができる。例えば、前記樹脂成分は、酸化防止剤を合計で1500ppm~3000ppm含むことができる。
【0070】
その他の添加剤
【0071】
前記樹脂成分は、上に挙げた様々な成分に加えて、随意に1種以上の添加剤を含むことができる。好適なタイプの追加の随意としての添加剤には、以下のものが含まれる(が、これらに限定されるわけではない):フィラー、着色剤、顔料、潤滑剤、加工助剤、UV安定剤、強化剤、帯電防止剤。但し、かかる添加剤は、所望の透明性及び清澄性特徴を有するフィルムを得る能力を妨害することのない量で存在させるものとする。
【0072】
1つの実施形態において、前記樹脂成分は追加的に少なくとも1種のUV安定剤を含む。好適なUV安定剤は、例えば、ベンゾフェノンUV安定剤、ベンゾトリアゾールUV安定剤、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールUV安定剤、ヒドロキシフェニルトリアジンUV安定剤、ベンゾオキサジノンUV安定剤及びそれらの組合せより成る群から選択することができる。ある実施形態において、前記樹脂成分は、UV安定剤を合計で約1重量%~約5重量%含む。
【0073】
別の実施形態において、前記樹脂成分は追加的に少なくとも1種の強化剤(耐衝撃性改良剤とも称される)を含む。強化剤の選択には制限はなく、ブロックコポリマー及びコア-シェル強化剤が含まれ得る。好適なブロックコポリマー強化剤には、例えばポリアクリレートソフトブロックと1個又は2個のポリメチルメタクリレート及び/又はポリスチレンハードブロックとを含有する2ブロック及び3ブロックコポリマーより成る群から選択されるブロックコポリマーがある。一般的に、かかるブロックコポリマーは、約20~約40重量%のポリ(ブチルアクリレート)ブロックを含むことができる。本発明において用いるのに好適なブロックコポリマー強化剤は、例えばArkema社から「Nanostrength」の商品名で入手可能である。
【0074】
当技術分野において周知の任意の様々なタイプのコア-シェル強化剤を用いることができる。前記コア-シェル強化剤は、エラストマーのコアと少なくとも1種の熱可塑性シェルとを有する微粒子の形にあることができ、その粒子寸法は一般的に1μm未満、有利には150~500nmの範囲、好ましくは200nm~450nmの範囲である。前記コア-シェル強化剤は一般的に単分散系であっても多分散系であってもよいコポリマーである。コアの例としては、イソプレンホモポリマー又はブタジエンホモポリマー、イソプレンと最大3モル%のビニルモノマーとのコポリマー及びブタジエンと最大35モル%(好ましくは30モル%以下)のビニルモノマーとのコポリマーが挙げられる。前記ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル又は(メタ)アクリル酸アルキルであることができる。別のコア類は、(メタ)アクリル酸アルキルのホモポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキルと最大35モル%(好ましくは30モル%以下)のビニルモノマーとのコポリマーから成る。(メタ)アクリル酸アルキルは有利にはアクリル酸ブチルである。前記ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、ブタジエン又はイソプレンであることができる。前記コポリマーのコアは、完全に又は部分的に架橋していてもよい。求められることは、コアの調製の際に少なくとも二官能性のモノマーを加えることだけである;これらのモノマーは、ポリオールのポリ(メタ)アクリルエステル、例えばブチレンジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートから選択することができる。その他の二官能性モノマーは、例えばジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、アクリル酸ビニル及びメタクリル酸ビニルである。前記コアはまた、重合の際に、不飽和官能性モノマー、例えば不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸及び不飽和エポキシドを、コア中に導入することによって、グラフトさせることによって、又はコモノマーとして、架橋させることもできる。例として、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸及びグリシジルメタクリレートを挙げることができる。
【0075】
前記シェルは、例えばスチレンホモポリマー、アルキルスチレンホモポリマー若しくはメタクリル酸メチルホモポリマー、又は上記モノマーの内の1種少なくとも70モル%と上記モノマーの内の残りのモノマー、酢酸ビニル及びアクリロニトリルから選択される少なくとも1種のコモノマーとを含むコポリマーであることができる。前記シェルは、重合の際に、不飽和官能性モノマー、例えば不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸及び不飽和エポキシドを、コア中に導入することによって、グラフトさせることによって、又はコモノマーとして、官能化することもできる。例えば無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸及びグリシジルメタクリレートを挙げることができる。例として、ポリスチレンシェルを有するコア-シェルコポリマー(A)及びPMMAシェルを有するコア-シェルコポリマー(A)を挙げることができる。前記シェルにはまた、様々なポリマー層との分散性及び適合性に役立つように官能基又は疎水性基を含有させることもできる。また、2つのシェルを有し、その一方がポリスチレンから成り、その外側のもう一方がPMMAから成るコア-シェルコポリマー(A)も存在する。有利には、前記コアがコア-シェルポリマーの70~90重量%を占め、前記シェルが30~10重量%を占める。
【0076】
前記樹脂成分中に強化剤を含ませる場合、これは、高い光学清澄性、高い耐衝撃性及び/又は高い機械的強靱性/延性を有する樹脂成分を提供するものから選択するのが好ましい。1種以上の強化剤を、樹脂成分の約40重量%まで、例えば約0.5~約20重量%の合計量で、存在させることができる。
【0077】
本発明の様々な好ましい局面において、前記フィルムは、本明細書に記載したような樹脂成分を用いて調製され、これは、厚さ3.2mmのプラークの形でASTM法D1003に従って試験した時に、88%超(好ましくは90%超)の光線透過率値を有し且つ/又は10%未満(好ましくは5%未満)の光学曇り度を示す。
【0078】
フィルムの特徴
【0079】
本発明に従うフィルムは、少なくとも約88%又は少なくとも約90%の光線透過率又は約10%未満の曇り度を有するように配合加工される。別の有利な実施形態において、前記フィルムは、反射防止コーティングなしで、少なくとも91%、少なくとも92%又はさらにそれ以上の光線透過率を有する。追加的実施形態において、前記フィルムは、5%未満の曇り度、1%未満の曇り度、0.5%未満の曇り度又は0.2%未満の曇り度を有する。
【0080】
本発明の樹脂成分を用いて、延伸フィルム、特に二軸及び/又は一軸延伸フィルムを製造することができる。二軸延伸する前に、前記フィルムは例えば約60~約500ミクロンの厚さを有していてよい。二軸延伸した後は、前記フィルムは例えば約10~約200ミクロン又は約15~約80ミクロンの厚さを有していてよい。
【0081】
本発明の様々な実施形態において、光学フィルムは、DSCにおいてN2中で10℃/分の加熱速度で測定して、少なくとも105℃、少なくとも110℃,少なくとも115℃又は少なくとも120℃又は少なくとも125℃ガラス転移温度を有することができる。本発明のある望ましい実施形態において、該フィルムの屈折率値は、589nmの波長において1.46~1.53であることができる。該フィルムの面内及び面外位相差値は、好ましくは、等価100μm当たり10nm又はそれより下に制御することができる。
前記光学フィルムの引張強さ及びモジュラスはそれぞれ70MPa超及び3GPa超である一方で、引張伸びは好ましくは7%超、より一層好ましくは10%超である。本発明のある実施形態において、フィルム積層プロセスの間に光学フィルムの明らかな応力白化は存在しない。
【0082】
フィルムの製造方法
【0083】
本発明のある実施形態において、前記フィルムは、前記樹脂成分(及び随意としての1種以上の追加の成分又は添加剤)から、押出(溶融流延)又は溶液流延法によって、加工される。
【0084】
フィルムを形成させるための押出法の最初のステップにおいては、上に記載した樹脂成分をミニキャストフィルムラインのような押出機に供給し、装填した材料を固体(例えば顆粒又はペレット)状態から溶融状態に添加させるのに足りる設定ポイント温度、押出機スクリュー速度、押出機ダイ間隔設定及び押出機背圧で操作することができる。前記押出法は一般的に240℃~280℃の範囲の温度で、好ましくは窒素等の不活性ガス下で、実施することができる。より高い加工温度での材料の劣化を避けるために、樹脂成分中に1種以上の酸化防止剤を加えるのが賢明だろう。
【0085】
溶融材料は次いで、例えばギアポンプによって、フィルム形成用ダイ(これは「Tダイ」又は「コートハンガーダイ」等の任意の慣用のフィルム形成用ダイであってよい)に移送され、このダイから支持体上に押出される。次いで、支持体上の流延材料が冷却の際に固化することによって、フィルムが形成される。支持体は、化学反応によって劣化したり変形したりすることなく、流延溶融物の温度を維持することができる材料から作られたものが好ましい。フィルムが自立特性を有するものになる点まで固化が進行したら、さらなる加工のためにフィルムを支持体から剥離させることができる。特に、フィルムを続いての後記する条件下で機械的に延伸することによるフィルム延伸処理に付すのも好ましい。機械的延伸は、フィルム形成性プロセスにおける冷却の完了前又は完了後に実施することができる。
【0086】
押出又は流延の後に、得られたフィルムを一軸延伸又は二軸延伸することができる。例えば、フィルムを延伸ステップに付すことができ、その際、フィルムを一軸式で縦方向(機械方向)又は横方向に延伸してもよく、二軸式で縦方向及び横方向に延伸してもよい。二軸延伸の場合、フィルムは2方向に同時に又は順次(即ち、縦方向の次に横方向に若しくはその逆で)延伸される。単一方向(例えば縦方向)における配向は、一軸配向フィルムをもたらす。同様に、2方向(例えば縦方向及び横方向)における配向は、同時に実施しようが2つの別々のステップとして実施しようが、二軸配向フィルムをもたらす。
【0087】
一軸又は二軸延伸は、慣用のテンター、例えばピンテンター、クリップテンター又は二軸延伸テンターを用いて、実施することができる。フィルムが支持体上にある場合、その支持体は、有効な延伸を可能にするのに十分柔軟であって、壊れることなく機械的延伸操作に耐えるものでなければならない。
【0088】
延伸は、例えばTg-20℃~Tg+40℃の範囲の温度、例えばTg-10℃~Tg+35℃の範囲、又はTg-5℃~Tg+30℃の範囲の温度において実施することができる。ここで、Tgはフィルムを作るために用いた樹脂成分のガラス転移温度である。ガラス転移温度は、非晶質ポリマーの50%ガラス化及び50%失透と定義される。
【0089】
延伸比は比Ls/L0と定義され、ここで、Lsは延伸後の延伸方向におけるフィルムの長さを表し、L0は延伸前の延伸方向におけるフィルムの長さを規定する。延伸比は好ましくは1.05倍~5.0倍、又は1.1倍~4.0倍、又は1.25倍~3.0倍の範囲であることができる。
【0090】
フィルム延伸速度とは、単位時間当たりの縦方向又は横方向における伸び率(Ls-L0)/L0×100%を指し、例えば0.01%/秒~200%/秒、0.1%/秒~100%/秒、又は0.5%/秒~50%/秒であることができる。延伸速度が遅すぎると、生産性が非常に低くなる。延伸速度が速すぎると、フィルムの破損を引き起こしやすくなる。
【0091】
延伸は、単一ステップで又は複数ステップで実施することができ、延伸条件はステップ間で同じであっても異なっていてもいいが、いずれの場合にもそれぞれのステップについて上で特定した通りの条件の範囲内にあるものとする。各延伸ステップには随意に、熱硬化ステップ、即ち、延伸フィルムを、例えば樹脂成分のガラス転移温度(Tg)付近又はそれ以上の温度において、例えば1秒~3分の範囲の時間、張力下に保つステップをさらに含ませることができる。
【0092】
さらに別の実施形態において、本発明に従うフィルムは、溶液流延又はコーティング法によって製造することができる。かかる方法は、比較的薄いフィルム、即ち押出/二軸延伸技術によって容易に達成されるものより薄い厚さを有するフィルムを形成させるのに特に有用である。当技術分野においてに周知の任意の溶液流延又はコーティング法を、本発明において用いるために適合させることができる。例えば、樹脂成分を好適な揮発性溶媒又は揮発性溶媒の組合せに溶解させ、得られた溶液を好適な基材の表面に層として適用することができる。適用した層を次いで、好適な方法、例えば加熱したり且つ/又は真空にしたりすることによって溶媒を除去する乾燥ステップに付すことができる。得られたフィルムは次いで、特定の所望の最終製品にとって適切であることができるように、基材から分離し(且つ随意に上記のように延伸し)てもよく、基材上に残しておいてもよい。
【0093】
フィルムの用途
【0094】
本発明のフィルムは、高い透明度が望まれ且つ広い温度範囲内での機械応力下でそれが維持される光学等級製品の製造に用いることができる。
【0095】
溶液流延、溶融流延又は他の任意のフィルム形成法によって得られる本発明のフィルムは、「非延伸フィルム」であるか「延伸フィルム」であるかに拘らず、さらに他の光学フィルムに積層して複合フィルム構造体を形成させることができる。これらのフィルム構造体の特定的な例には、以下のものがある(が、これらに限定されるわけではない):偏光プレート、正及び負の二軸プレート、正及び負のC-プレート、並びに負の波長分散プレート。
【0096】
本発明のフィルムは、非晶質であり、透明性が高く、曇り度が低く、調節可能な複屈折/位相差特性、長期間耐久性、良好な機械的安定性、並びに光学素子の製造に通常用いられる他の材料との適合性を示す。従って、これらのフィルムは、光学補償用に、及び光の偏光状態の操作のための光学素子の製造用に、有用であると考えられる。
【0097】
かくして、本発明のフィルムは、偏光子及びその両面に配置された2つの透明保護フィルムを含む偏光プレートであって、前記保護フィルムの少なくとも一方が本発明に従うフィルムであるものに用いることができる。
【0098】
前記偏光子は、例えば、ヨウ素系偏光子、2色性染料を用いた染料系偏光子又はポリエン系偏光子であることができる。ヨウ素系偏光子及び染料系偏光子は一般的に、PVA系フィルムから製造され、その製造方法は、PVA系フィルムをドーピングし、該フィルムを一軸延伸し、随意に定着処理をし、乾燥させることを含む。PVA系フィルムは一般的に、ビニルエステルモノマーを(場合により他のエチレン性不飽和化合物をコモノマーとして用いて)重合させ、次いでエステル官能基を鹸化させることによって得られたポリマーを含む溶液又は溶融物を流延することによって得られる。フィルムのドーピングは、一軸延伸の前に、その間に又はその後に、実施することができる。ドーピングは、例えばPVA系フィルムをヨウ素-ヨウ化カリウム及び/又は2色性染料を含む溶液中に浸漬してそれらをフィルムに吸収させることによって、又はフィルム流延段階の際にこれらのドーパントをブレンドすることによって、達成することができる。一軸延伸は、上記ドーパントを含む溶液であることができる温水若しくは熱水(30~90℃)浴中でフィルムを延伸する湿式法として、又は空気中若しくは不活性ガス雰囲気中で例えば50~180℃の範囲の温度においてフィルムを延伸する乾式法として、実施することができる。延伸比は一般的に少なくとも4倍である。機械的延伸はヨウ素ドープPVA系フィルムに1方向延伸を付与して、これはフィルムの偏光効果の原因となる。一般的に、偏光子は延伸後に100~250μm又は100~160μmの範囲の厚さを有する。定着処理では、フィルムが作られる材料の架橋が行われる;これは、例えばフィルムをホウ酸溶液と接触させることによって実施することができる。偏光子の乾燥は一般的に、例えば30~150℃の範囲の温度において、達成される。
【0099】
偏光プレートは、本発明に従う光学位相差フィルム以外の透明保護フィルムを含むことができる。これらの別の透明保護フィルムは特に制限されるものではなく、例えば商品として入手できるTACフィルムのようなセルロースアセテートフィルムであることができる。偏光プレートを形成させるために本発明に従うフィルム及び/又は別の透明保護フィルムを偏光子に適用することができる方法は、特に制限されるものではない。それらは例えば偏光子上に直接積層又は貼付することができる。
【0100】
随意に、前記偏光子と前記保護フィルムの一方若しくは両方との間又は前記保護フィルムの一方若しくは両方の表面に、追加の別の機能性フィルムを適用してもよく、この保護フィルムの一方又は両方は、本発明に従うフィルムであることができる。この別の機能性フィルムには、以下のものが含まれる(が、これらに限定されるわけではない):反射防止フィルム、光散乱フィルム、透明ハードコート、帯電防止フィルム、接着フィルム、UV吸収フィルムまたは偏光フィルム。
【0101】
必要ならば、上記のフィルム、即ち前記偏光子、保護フィルム(これは本発明のフィルム又は別のタイプの保護フィルムであることができる)及び前記別の機能性フィルムの1種の中の任意の2つの間の結合を促進するために、接着剤(特に感圧接着剤若しくはホットメルト接着剤)又はタイ層を用いることができる。フィルム積層の際に良好な接着を達成するためには、UV硬化性ウレタンアクリル樹脂及びこれと多官能性アクリル樹脂とのブレンドが好ましい。
【0102】
本発明のフィルム、又は本発明に従うフィルムを少なくとも1つ含む偏光プレートは、LCDディスプレイデバイスに用いることができる。従って、1つの局面において、本発明は、上に記載したような本発明のフィルムを含む液晶ディスプレイ又はイメージングデバイスに関する。かかる液晶ディスプレイは一般的に、液晶セル及び該液晶セルの2つの面のそれぞれの上に配置される2つの偏光プレートを含み、該偏光プレートの少なくとも一方は、本発明に従う少なくとも1つのフィルムを含む。例えば、本発明に従うフィルムは、偏光プレートの液晶に面する側に使用することができる。アクリル光学位相位相差フィルムには、ゼロ-ゼロ位相差フィルム、C-プレート、四分の一波長プレート及び二分の一波長プレートが含まれる。
【0103】
本発明に従うフィルムの別の好適な最終用途には、以下のものが含まれる(が、これらに限定されるわけではない):DVD製造、インサート成形、フラットパネルディスプレイ又はLEDの外層としての用途、メンブレンスイッチ、デカール又は転写フィルム、インストルメントパネル及びスマートカード。1つの実施形態においては、本発明に従うフィルム上にグラフィックデザインをプリントし、プリントされたフィルムを基材に適用することができる。本発明に従うフィルムは、例えば積層によって又は接着剤若しくはタイ層を用いることによって、基材の表面に適用することができる。本発明に従うフィルムを製造するために用いられる樹脂成分中に存在するコポリマーのような酸官能化アクリルポリマーを含有するフィルムは、PVA層に対する良好な接着性を提供することができる。
【0104】
本明細書内では、明瞭且つ簡潔な仕様が書かれることを可能にする態様で実施形態を説明してきたが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分離したりできることが意図され、認識されるであろう。例えば、本明細書に記載されるすべての好ましい特徴は、本明細書に記載される本発明のすべての局面に適用可能であることが理解されるだろう。
【0105】
ある実施形態において、本発明は、前記硬化性組成物又は方法の基本的特徴及び新規の特徴に著しく影響を及ぼすことのない要素又はステップを排除するものと解釈できる。さらに、ある実施形態において、本発明は、ここに特定していない要素を排除するものと解釈できる。
【0106】
特定実施形態を参照して本発明を例示して説明してきたが、本発明は示された詳細に限定されることを意図したものではない。むしろ、特許請求の範囲の均等範囲及び領域内で、本発明から逸脱することなく、詳細に様々な変更を為すことができる。
【実施例】
【0107】
試験方法:
【0108】
メルトフローレート(MFR)測定:メルトフローレート測定ではポリマーに対してInstron Ceast MF30装置を用いた。ダイ温度は230℃に調節し、ロードセル重量は3.8kgとした。乾燥ペレットは、Tgより約20℃低い温度で8時間以上用いた。
【0109】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC):ポリマー分子量測定を行うために、Waters Alliance 2695及びWaters Differential Refractometer 2410を用いた。カラムは2個のPL Gel mixed Cカラム及びガードカラム(内径7.8mm×30cm、5μm)をベースとするものだった。溶剤としてTHF(HPLCグレード)を選択した。温度は35℃に調節した。10個のポリ(メチルメタクリレート)標準物質をMp(ピーク分子量)550~1677000g/モルの範囲でキャリブレーションに用いた。
【0110】
示差走査熱量分析(DSC):アクリルポリマーのガラス転移温度を、2回目の加熱の際に、TA Instruments Q2000 DSCを用い、N2中で、10℃/分の加熱速度で、測定した。1回目の加熱では、サンプルを10℃/分の加熱速度で170℃に加熱し、次いでサンプルを10℃/分の冷却速度で0℃まで冷ました。サンプル重量は5~10mgに調節した。
【0111】
熱重量分析(TGA):TA instruments Q5000 TGAを用いてN2中で10℃/分の加熱速度で、アクリルポリマーの熱分解温度を測定した。サンプル重量は5~10mgに調節した。サンプルを真空炉中で100℃において一晩予備乾燥させた。TA instruments Q5000 TGAを用いて、N2又は空気中で30~60分等の所定時間で270℃等の選択した等温温度に達するまで毎分10~50℃の加熱速度で等温TGA測定を行った。
【0112】
全光線透過率:Perkin Elmer Lambda 950を150mmの積分球と共に用いて、透過モードで、フィルム及び/又はプラークのサンプルから、全光線透過率を測定した。選択したUV/可視光波長範囲は、UV/可視光領域で200nmから800nmだった。
【0113】
曇り度:BYK HazeGard Plusを用いて、透明フィルム及び/又はプラークの光学曇り度を測定した。
【0114】
引張強さ及び伸長性:Instron Model 4202を用いて5mm/分のクロスヘッド速度で、引張強さ、モジュラス及び引張棒の伸長性を評価した。引張は長さ6”であり、幅は0.50”だった。サンプル厚さは0.125”だった。
【0115】
二軸延伸:0.05%/秒~50%/秒の速度でBrucknerを用いて、4”×4”~6”×6”のサイズのフィルムサンプルを延伸した。採用した二軸延伸温度は、ガラス転移温度Tg-20℃~Tg+35℃付近だった。フィルム厚さは100~500μmに調節した。
【0116】
面内及び面外位相差:光学フィルムからの面内位相差は、透過中にエリプソメーター(J. A. Woollam Co. Inc.)を用いて560nmの選択波長又は全可視波長において測定し、一方、面外位相差は、560nmの選択波長又は全可視波長において得た。
【0117】
例1:
【0118】
30kgのpMMA-EA(97/3)コポリマー(97重量%のメタクリル酸メチルと3重量%のアクリル酸エチルコポリマーであって、145000~150000g/モルの重量平均分子量を有するもの)と、70kgのpMMA-MAA(95/5)コポリマー(95重量%のメタクリル酸メチルと5重量%のアクリル酸とのコポリマーであって、75000~80000g/モルの重量平均分子量を有するもの)とを、排気システムを備えた二軸スクリュー押出機を用いて、230℃のダイ温度及び260℃のバレル温度において、25kg/時間の速度で混合した。混合の間に配合物中にドラムブレンディングによって酸化防止剤(150gのIrganox(登録商標)第1酸化防止剤及び75gのIrgafos(登録商標)第2酸化防止剤)を加えた。ペレット化の前に溶融流を水浴に通した。得られた樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、3.8kg下で230℃において測定して1.5g/10分だった。この樹脂組成物のガラス転移温度は、DSCを用いてN2中で10℃/分の加熱速度で測定して120℃だった。この樹脂の重量平均分子量Mwは、GPCを用いて測定して92500g/モルであり、Mw/Mn(多分散度)値は2.2だった。この試験用サンプルの引張モジュラスは3.3GPaであり、引張強さは75MPaであり、引張伸び率は9%だった。
【0119】
前記樹脂組成物から、生産ライン上に設置された排気システムと共に高温フィルム押出ラインを用いて、光学フィルムを押出した。フィルム厚さは125μm程度に調節した。フィルム押出の前に、樹脂組成物をデシケーターオーブン中で102℃において8時間乾燥させた。10フィート/分のライン速度で均一フィルムが得られた。Lambda 950を用いて560nmにおいて測定した光線透過率は92.4%であり、曇り度計(BYK社から入手したHaze Gard Plus)を用いて測定した曇り度は0.1%だった。
【0120】
同時に、4インチ×4インチのフィルムサイズ及びBruckner伸長機を用い、145℃において、二軸延伸フィルムプロセスを実施した。二軸延伸の前に、フィルム厚さは125μmだった。二軸延伸後に、フィルム光学フィルム厚さは41μmだった。Lambda 950を用いて560nmにおいて測定した光線透過率は92.3%であり、曇り度は0.3%だった。エリプソメーター(J. A. Woollam Co. Inc.)を用いて0°、15°、30°、45°及び60°の入射角度の関数として、有効位相差を測定した。面内位相差は560nmにおいて0.6nmであり、面外位相差は560nmにおいて4.1nmだった。
【0121】
例2:
【0122】
50kgのpMMA-EA(97/3)コポリマー(97重量%のメタクリル酸メチルと3重量%のアクリル酸エチルとのコポリマーであって、145000~150000g/モルの重量平均分子量Mwを有するもの)を、50kgのpMMA-MAA(95/5)コポリマー(95重量%のメタクリル酸メチルと5重量%のメタクリル酸とのコポリマーであって、75000~80000g/モルのMwを有するもの)中に、排気システムを備えた二軸スクリュー押出機を用いて、230℃のダイ温度及び260℃のバレル温度において、25kg/時間の速度で混合した。混合の間に配合物中にドラムブレンディングによって酸化防止剤(150gのIrganox(登録商標)第1酸化防止剤及び75gのIrgafos(登録商標)第2酸化防止剤)を加えた。ペレット化の前に溶融流を水浴に通した。得られた樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、3.8kg下で230℃において測定して1.1g/10分だった。この樹脂のガラス転移温度は、DSCを用いてN2中で10℃/分の加熱速度で測定して118℃だった。この樹脂の重量平均分子量Mwは、GPCを用いて測定して103000g/モルであり、Mw/Mn(多分散度)値は2.2だった。この試験用サンプルの引張モジュラスは3.2GPaであり、引張強さは75MPaであり、引張伸び率は10%だった。
【0123】
生産ライン上に設置された排気システムと共に高温フィルム押出ラインを用いて、光学フィルムを押出した。フィルム厚さは155μm程度に調節した。フィルム押出の前に、樹脂をデシケーターオーブン中で102℃において8時間乾燥させた。10フィート/分のライン速度で均一フィルムが押出された。Lambda 950を用いて560nmにおいて測定した光線透過率は92.4%であり、曇り度計(Haze Gard Plus)を用いて測定した曇り度は0.1%だった。
【0124】
同時に、Bruckner伸長機を用い、138℃において、4インチ×4インチのフィルムサイズで、二軸延伸フィルムプロセスを実施した。二軸延伸の前に、フィルム厚さは150μmだった。二軸延伸後に、フィルム光学フィルム厚さは41μmだった。Lambda 950を用いて560nmにおいて測定した光線透過率は92.3%であり、曇り度は0.3%だった。エリプソメーター(J. A. Woollam Co. Inc.)を用いて測定した面内位相差は560nmにおいて0.5nmであり、面外位相差は560nmにおいて4.0nmだった。
【0125】
例3:
【0126】
70kgのpMMA-EA(97/3)コポリマー(97重量%のメタクリル酸メチルと3重量%のアクリル酸エチルとのコポリマーであって、145000~150000g/モルの重量平均分子量Mwを有するもの)を、30kgのpMMA-MAA(95/5)コポリマー(95重量%のメタクリル酸メチルと5重量%のメタクリル酸とのコポリマーであって、75000~80000g/モルのMwを有するもの)中に、排気システムを備えた二軸スクリュー押出機を用いて、230℃のダイ温度及び260℃のバレル温度において、25kg/時間の速度で混合した。混合の間に配合物中にドラムブレンディングによって酸化防止剤(100gのIrganox(登録商標)第1酸化防止剤及び50gのIrgafos(登録商標)第2酸化防止剤)を加えた。ペレット化の前に溶融流を水浴に通した。得られた樹脂のメルトフローレート(MFR)は、3.8kg下で230℃において測定して0.9g/10分だった。この樹脂組成物のガラス転移温度は、DSCを用いてN2中で10℃/分の加熱速度で測定して115℃だった。この樹脂の重量平均分子量Mwは、GPCを用いて測定して121000g/モルであり、Mw/Mn(多分散度)値は2.2だった。この試験用サンプルの引張モジュラスは3.2GPaであり、引張強さは73MPaであり、引張伸び率は11%だった。
【0127】
生産ライン上に設置された排気システムと共に高温フィルム押出ラインを用いて、光学フィルムを押出した。フィルム厚さは154μm程度に調節した。フィルム押出の前に、樹脂組成物をデシケーターオーブン中で100℃において8時間乾燥させた。10フィート/分のライン速度で均一フィルムが押出された。Lambda 950を用いて560nmにおいて測定した光線透過率は92.3%であり、曇り度計(Haze Gard Plus)を用いて測定した曇り度は0.1%だった。
【0128】
同時に、Bruckner伸長機を用い、135℃において、4インチ×4インチのフィルムサイズで、二軸延伸フィルムプロセスを実施した。二軸延伸の前に、フィルム厚さは150μmだった。二軸延伸後に、フィルム光学フィルム厚さは39μmだった。Lambda 950を用いて560nmにおいて測定した光線透過率は92.3%であり、曇り度は0.3%だった。エリプソメーター(J. A. Woollam Co. Inc.)を用いて測定した面内位相差は560nmにおいて0.5nmであり、面外位相差は560nmにおいて3.6nmだった。
【0129】
例4:
【0130】
100kgのpMMA-MAA(97/3)コポリマー(97重量%のメタクリル酸メチルと3重量%のアクリル酸エチルとのコポリマーであって、121000g/モルの重量平均分子量Mw及び2.1のMw/Mn値を有するもの)と、酸化防止剤(150gのIrganox(登録商標)第1酸化防止剤及び75gのIrgafos(登録商標)第2酸化防止剤)とを、高温において混合した。この混合は、排気システムを備えた二軸スクリュー押出機を用いて、230℃のダイ温度及び265℃のバレル温度において、25kg/時間の速度で実施した。ペレット化の前に溶融流を水浴に通した。得られた樹脂のメルトフローレート(MFR)は、3.8kg下で230℃において測定して0.8g/10分だった。この樹脂組成物のガラス転移温度は、DSCを用いてN2中で10℃/分の加熱速度で測定して121℃だった。この試験用サンプルの引張モジュラスは3.2GPaであり、引張強さは74MPaであり、引張伸び率は12%だった。
【0131】
生産ライン上に設置された排気システムと共に高温フィルム押出ラインを用いて、265℃のダイ温度において、光学フィルムを押出した。厚さは156μm程度に調節した。フィルム押出の前に、樹脂組成物をデシケーターオーブン中で102℃において8時間乾燥させた。15フィート/分のライン速度で均一フィルムが押出された。Lambda 950を用いて560nmにおいて測定した光線透過率は92.3%であり、曇り度計(Haze Gard Plus)を用いて測定した曇り度は0.1%だった。
【0132】
同時に、Bruckner伸長機を用い、151℃において、4インチ×4インチのフィルムサイズで、二軸延伸フィルムプロセスを実施した。二軸延伸の前に、フィルム厚さは150μmだった。二軸延伸後に、光学フィルム厚さは41μmだった。Lambda 950を用いて560nmにおいて測定した光線透過率は92.3%であり、曇り度は0.3%だった。エリプソメーター(J. A. Woollam Co. Inc.)を用いて測定した面内位相差は560nmにおいて1.2nmであり、面外位相差は560nmにおいて4.0nmだった。