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特許71536641,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのアクリル酸誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのアクリル酸誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/04 20060101AFI20221006BHJP
   C08F 124/00 20060101ALI20221006BHJP
   C08F 224/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C07D493/04 101D
C07D493/04 CSP
C08F124/00
C08F224/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019551978
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 FR2018050750
(87)【国際公開番号】W WO2018178567
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】1752560
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】クロティルド ビュフ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マルク コルパール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン ヴィアッツ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-018762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229863(US,A1)
【文献】特開2016-094594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0073716(US,A1)
【文献】Xu, Ming-Hua; Lin, Guo-Qiang; Xia, Li-Jun,Samarium diiodide induced asymmetric synthesis of γ-butyrolactone using chiral auxiliaries derived from isosorbide and isomannide,Chinese Journal of Chemistry,1998年,16(6),561-564
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00-521/00
C08F124/00
C08F224/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、
は、直鎖状または分岐状のC1~C6アルキル基であり、
は、HまたはC1もしくはC2アルキルであり、
Lは、-O-CH-CH(OH)-CH-O-、-O-C(O)-NH-L-O-(ここで、Lは、直鎖状または分岐状のアルキレンから選択される)または-O-C(O)-NH-L-O-L-O-(ここで、-O-C(O)-NH-L-は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、IPDIイソシアヌレート、ポリメリックIPDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、メチレンビス-シクロヘキシルイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、トルエンジイソシアネート(TDI)、TDIイソシアヌレート、TDI-トリメチロールプロパンのアダクト、ポリメリックTDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、HDIイソシアヌレート、HDIビウレート、ポリメリックHDI、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート(DDDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NDI)および4,4’-ジベンジルジイソシアネート(DBDI)から選択される反応剤の残基であり、およびLは、直鎖状または分岐状のC2~C4アルキレンおよびポリ(プロピレングリコール)から選択される)である)
の化合物。
【請求項2】
は、直鎖状または分岐状のC1~C6アルキル基であり、
は、HまたはC1もしくはC2アルキルであり、
Lは、-O-CH-CH(OH)-CH-O-または-O-C(O)-NH-(CH-O-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は、メチルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
は、Hまたはメチルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Lは、-O-CH-CH(OH)-CH-O-である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
式Ia、Ib、Ic、Id:
【化2】
【化3】
の化合物およびそれらの混合物から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
式III
【化7】
を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
式IIIa、IIIb、IIIc、IIId:
【化8】
【化9】
の化合物およびそれらの混合物から選択される、請求項に記載の化合物。
【請求項9】
式IIIa、IIIbの化合物およびそれらの混合物から選択される、請求項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の式Iの化合物を製造するためのプロセスであって、
a)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールをアルキル化剤と反応させることにより、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの直鎖状または分岐状のC1~C6アルキルモノエーテルが調製される工程、
b)アクリレート、メタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、イソシアネートアクリレートまたはイソシアネートメタクリレート官能基を用いて、工程a)で得られた前記モノエーテルの遊離ヒドロキシル基が官能化される工程
を含むプロセス。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載のまたは請求項10に記載のプロセスによって得られる化合物の、ポリマーを調製するためのモノマーとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーを製造するのに特に有用である1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの新規なアクリル酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業は、例えば、バルク材料またはコーティングの形態であるポリマーを製造することを可能にする組成物を必要としている。後者の場合、それらは、例えば、保護コーティング、装飾コーティングまたは表面処理コーティングなどであり得る。これらの目的のために、多くの架橋性組成物がすでに文献中においておよび市販されて存在している。それらの組成物は、ほとんどの場合、化学工業によって石油誘導体から製造された重合性モノマーの混合物からなる。
【0003】
しかしながら、石油製品資源が徐々に枯渇している現在の状況では、石油由来の製品を天然由来の製品に置き換えることが一層有利になっている。
【0004】
生物由来のポリマー、すなわち天然由来の原料物質から製造されたポリマーを使用することは、すでに文献に記載されている。特に、L.Jasinska and C.E.Koning(“Unsaturated,biobased polyesters and their cross-linking via radical copolymerization”,Journal of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,Volume 48,Issue 13,pages 2885~2895,1 July 2010)による公刊物は、比較的高い、すなわち45℃よりも高いガラス転移温度(T)を有する不飽和ポリエステルの調製法を記載しており、これらのポリエステルは、コーティングを製造するのに特に有用である。これらの不飽和ポリエステルは、イソソルビドを無水マレイン酸、任意選択的にコハク酸と重合させることによって得られる。しかしながら、コーティングとしての使用を可能にするには、これらの不飽和ポリエステルを架橋させなければならない。それらのポリマーは、架橋剤と共に溶解され得るかまたは懸濁され得るかのいずれかであり、次いで基材に対して適用され、最後に、溶媒を蒸発させた後に架橋されるか、または標準的な「パウダーコーティング」法によって塗着されるか、または溶融させて塗着される。いずれの場合にも、これらの塗着方法では、後架橋工程が必要となる。コーティングを製造するのにいくつかの連続工程が必要であるという事実は、制約をもたらす。
【0005】
これらの欠点を克服する目的で、イソソルビドのジ(メタ)アクリル酸誘導体を架橋性モノマーとして使用することが提案された。イソソルビドのアクリレートおよびメタクリレート誘導体は、1946年にWigginsらによって最初に記載された(英国特許第586141号明細書)。本出願人の名義における特許出願国際公開第2014/147340A1号パンフレットは、イソソルビドジアクリレートまたはイソソルビドジメタクリレートを含む架橋性組成物を記載している。同様に本出願人の名義における特許出願国際公開第2015/004381A1号パンフレットは、ポリマーの製造において有用であると考えられるイソソルビドカプロラクテートジアクリレートを記載している。しかしながら、それらのイソソルビドのジメタクリレートおよびジアクリレートは、それらを用いて得られた樹脂の架橋度が高く、そのために脆いコーティングをもたらすという欠点を有する。
【0006】
第二のヒドロキシル官能基が置換されているかまたは非置換であるイソソルビドのモノ(メタ)アクリレート誘導体も公知である。例えば、特許出願米国特許出願公開第201
6/0139526A1号明細書は、イソソルビド(メタ)アクリレートをベースとする樹脂およびトナー組成物におけるそれらの使用を記載しており、この(メタクリレート)は、場合により一置換である。
【0007】
特許出願米国特許出願公開第2013/0017484号明細書は、イソソルビドの高度に特異的なモノアクリレート誘導体に関し、第二のヒドロキシル基は、酸に不安定な基またはアセタール官能基を用いて置換されている。これらの化合物は、500nm以下の放射線に対して透明なポリマーを調製するのに有用である。
【0008】
特許出願米国特許出願公開第2016/0229863A1号明細書およびGallagherらによる論文(ACS Sustainable Chem Eng.,2015,3,662~667)は、イソソルビドのモノメタクリレートモノアセテート誘導体の合成を記載している。それらは、スカンジウムトリフレートの存在下におけるイソソルビドモノアセテートとメタクリル酸無水物との反応を介して調製される。カラムクロマトグラフィーで精製した生成物は、粘稠な液体である。モノアセテート異性体の2種のエキソおよびエンド間で顕著な差は観察されなかった。これらのモノマーを重合させると、高いガラス転移温度(Tg)(130℃)とPMMAに類似する熱安定性とを有する物質が得られた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的の1つは、新規な1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのモノ(メタ)アクリレート誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の主題は、式I:
【化1】
(式中、
は、直鎖状または分岐状のC1~C6アルキル基であり、
は、HまたはC1もしくはC2アルキルであり、
Lは、O、-O-CH-CH(OH)-CH-O-、-O-C(O)-NH-L-O-(ここで、Lは、直鎖状または分岐状のアルキレンから選択される)または-O-C(O)-NH-L-O-L-O-(ここで、-O-C(O)-NH-L-は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、IPDIイソシアヌレート、ポリメリックIPDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、メチレンビス-シクロヘキシルイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、トルエンジイソシアネート(TDI)、TDIイソシアヌレート、TDI-トリメチロールプロパンのアダクト、ポリメリックTDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、HDIイソシアヌレート、HDIビウレート、ポリメリックHDI、キシリレンジ
イソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、/7-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート(DDDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NDI)および4,4’-ジベンジルジイソシアネート(DBDI)から選択される反応剤の残基であり、およびL3は、直鎖状または分岐状のアルキレンおよびポリ(プロピレングリコール)から選択される)である)
の化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
式(I)の好ましい化合物は、R、RおよびLの1つもしくは複数またはさらにはそれぞれが以下のように定義されるものである:
は、直鎖状または分岐状のC1~C4アルキル基であり、好ましくは、Rは、メチルまたはエチルであり、さらにより好ましくは、Rは、メチルであり、
は、Hまたはメチルであり、
Lは、O、-O-CH-CH(OH)-CH-O-、-O-C(O)-NH-L-O-(ここで、Lは、直鎖状または分岐状のC2~C4アルキレンから選択される)または-O-C(O)-NH-L-O-L-O-(ここで、-O-C(O)-NH-L-は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、IPDIイソシアヌレート、ポリメリックIPDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、メチレンビス-シクロヘキシルイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、トルエンジイソシアネート(TDI)、TDIイソシアヌレート、TDI-トリメチロールプロパンのアダクト、ポリメリックTDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、HDIイソシアヌレート、HDIビウレート、ポリメリックHDI、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、/7-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート(DDDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NDI)および4,4’-ジベンジルジイソシアネート(DBDI)から選択される反応剤の残基であり、およびL3は、直鎖状または分岐状の好ましくはC2~C4のアルキレンおよびポリ(プロピレングリコール)から選択される)であり、Lは、好ましくは、O、-O-CH-CH(OH)-CH-O-または-C(O)-NH-L-O-(ここで、Lは、直鎖状または分岐状のC2~C4アルキレンである)であり、さらにより好ましくは、Lは、O、-O-CH-CH(OH)-CH-O-または-O-C(O)-NH-(CH-O-であり、およびさらにより好ましくは、Lは、Oまたは-O-CH-CH(OH)-CH-O-である。
【0012】
上述の式Iの化合物は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール環構造の存在のために各種の立体配座で存在する。したがって、式Iの化合物は、イソソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-グルシトール)、イソイジド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-L-イジトール)またはイソマンニド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-マンニトール)の誘導体であり得る。したがって、本発明は、式Ia、Ib、IcおよびId:
【化2】
【化3】
(式中、R、RおよびLは、式Iに関連して先に定義された通りである)
の化合物ならびにそれらの混合物を包含する。式Iの化合物は、式IaおよびIbによる化合物ならびにそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0013】
1つの実施形態では、式Iの化合物は、式II:
【化4】
(式中、RおよびRは、式Iに関連して先に定義された通りである)
に対応する。
【0014】
は、メチルであることが好ましい。
【0015】
式IIの化合物は、式IIa、IIbおよびIIc:
【化5】
【化6】
(式中、RおよびRは、式IIに関連して先に定義された通りである)
の化合物ならびにそれらの混合物から選択することができる。式IIの化合物は、式IIaおよびIIbによる化合物ならびにそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0016】
別の実施形態では、式Iの化合物は、式III:
【化7】
(式中、RおよびRは、式Iに関連して先に定義された通りである)
に対応する。
【0017】
は、メチルであることが好ましい。
【0018】
式IIIの化合物は、式IIIa、IIIbおよびIIIcならびにIIId:
【化8】
【化9】
(式中、RおよびRは、式IIIに関連して先に定義された通りである)
の化合物から選択することができる。式IIIの化合物は、式IIIa、IIIbによる化合物またはそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0019】
1つの実施形態では、本発明による化合物は、LがOである場合、Rが三級のC4~C6アルキル基、特にtert-ブチルであることはできず、および/またはLがOであり、かつRがHである場合、Rがメチルであることはできない、先に定義された式の1つによる化合物である。
【0020】
本発明の化合物は、当業者に公知の合成方法に従って調製することができる。それらは、例えば、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから2工程の合成プロセスによって調製することができ、このプロセスは、エーテル官能基を用いて1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの1つのヒドロキシル基を保護する第一の工程と、アクリレート官能基を用いて他のヒドロキシル基を官能化させる第二の工程とを含む。
【0021】
より詳細には、式Iの化合物は、
a)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールをアルキル化剤と反応させることにより、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの直鎖状または分岐状のC1~C6脂肪族モノエーテルが調製される工程、
b)アクリレート、メタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、イソシアネートアクリレートまたはイソシアネートメタクリレート官能基を用いて、工程a)で得られたモノエーテルの遊離ヒドロキシル基が官能化される工程
を含むプロセスによって調製することができる。
【0022】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-グルシトール)、イソイジド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-L-イジトール)およびイソマンニド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-マンニトール)から選択することができる。好ましい1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソソルビドである。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールがイソソルビドである場合、工程b)の最後に式Ia、Ibの化合物またはそれらの2種の混合物が得られる。式IaおよびIbの化合物の混合物が得られた場合、当業者に公知の技術、例えばカラムクロマトグラフィーによってこの混合物を分離し得る。
【0023】
工程a)におけるモノエーテルの調製は、当業者に公知の方法に従って、例えば1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、直鎖状または分岐状のC1~C6アルキル化剤とを用いて実施することができる。アルキル化剤の直鎖状または分岐状のC1~C6アルキル残基は、直鎖状または分岐状のC1~C4アルキル残基、好ましくはメチルおよびエチルから選択することが有利である。アルキル残基がメチルであることがさらにより好ましい。使用され得るエーテル化反応は、例えば、特許出願国際公開第2014023902A1号パンフレット、国際公開第2014/168698A1号パンフレットおよび国際公開第2016/156505A1号パンフレットに記載されている。
【0024】
アルキル化剤は、特に以下から選択され得る:直鎖状もしくは分岐状のC1~C6脂肪族アルコール、直鎖状もしくは分岐状のC1~C6脂肪族アルキルハライド、硫酸の直鎖状もしくは分岐状のC1~C6脂肪族エステル、直鎖状もしくは分岐状のC1~C6脂肪族ジアルキルカーボネートまたは直鎖状もしくは分岐状のC1~C6脂肪族ジアルコキシメタン。先に述べたように、C1~C6アルキル残基は、直鎖状または分岐状のC1~C4アルキル残基、好ましくはメチルおよびエチルから選択することが有利である。アルキル残基がメチルであることがさらにより好ましい。
【0025】
アルキル化剤として使用され得るアルコールとしては、特にメタノール、エタノール、イソプロパノールおよびtert-ブタノールが挙げられ、メタノールが好ましい。アルキル化剤として使用され得るアルキルハライドとしては、特にメチル、エチル、イソプロピルおよびtert-ブチルのハロゲン化物が挙げられ、ハロゲン化メチルが好ましい。硫酸の直鎖状または分岐状のC1~C6脂肪族エステルは、例えば、メチル、エチル、イソプロピルおよびtert-ブチルエステルから選択することができ、メチルエステル、特に硫酸ジメチルが好ましい。ジアルキルカーボネートは、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネートおよびジ-tert-ブチルカーボネートから選択することができ、ジメチルカーボネートが好ましい。アルキル化剤として使用され得るジアルコキシメタンとしては、特にジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジイソプロポキシメタンおよびジ-tert-ブトキシメタンが挙げられ、ジメトキシメタンが好ましい。
【0026】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-グルシトール)、イソイジド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-L-イジトール)およびイソマンニド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-マンニトール)から選択することができる。好ましい1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソソルビドである。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールがイソソルビドである場合、工程b)の最後に式Ia、Ib(または副次的な式IIaおよびIIbまたはIIIaお
よびIIb)の化合物または両方の混合物が得られる。式IaおよびIb(または副次的な式IIaおよびIIbまたはIIIaおよびIIIb)の化合物の混合物が得られた場合、当業者に公知の技術、例えばカラムクロマトグラフィーによってこの混合物を分離し得る。
【0027】
工程a)の最後に、一般的に、工程b)で直接使用され得るモノアルキルエーテル、ジアルキルエーテルおよびジアンヒドロヘキシトールの混合物が得られるか、または混合物は、工程b)前に減圧下での精留を用いた蒸留によって分離され得る。
【0028】
工程b)では、アクリレート、メタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、イソシアネートアクリレートまたはイソシアネートメタクリレート官能基、好ましくはアクリレート、メタクリレート、エポキシアクリレートまたはエポキシメタクリレート官能基を用いて、遊離ヒドロキシル基が官能化される。
【0029】
アクリレート、メタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、イソシアネートアクリレートまたはイソシアネートメタクリレート官能基を用いた遊離ヒドロキシル基の官能化は、当業者公知の方法に従って実施することができる。例えば、アクリル酸およびメタクリル酸、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、アクリル酸およびメタクリル酸の無水物、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アルキルイソシアネートアクリレートおよびメタクリレート、またはジイソシアネートとヒドロキシアルキルアクリレートもしくはヒドロキシアルキルメタクリレートとを使用することができる。
【0030】
アクリレートまたはメタクリレート官能基を用いて遊離ヒドロキシル基を官能化すると、式IIの化合物が得られる。この場合、遊離ヒドロキシル基は、アクリル酸もしくはメタクリル酸、アクリル酸もしくはメタクリル酸のエステルまたはアクリル酸もしくはメタクリル酸の無水物と反応され得る。
【0031】
エポキシアクリレートまたはエポキシメタクリレート官能基を用いて遊離ヒドロキシル基を官能化すると、式IIIの化合物が得られる。この場合、遊離ヒドロキシル基は、アクリル酸グリシジルおよびグリシジルメタクリレートと反応され得る。
【0032】
ヒドロキシル基は、イソシアネートアクリレートまたはイソシアネートメタクリレート官能基を用いてさらに官能化され得る。この場合、遊離ヒドロキシル基は、特に直鎖状または分岐状のC2~C4アルキルイソシアネートアクリレートまたはメタクリレート、好ましくはエチルイソシアネートアクリレートまたはメタクリレートと反応され得る。最初に、遊離ヒドロキシル基をジイソシアネートと反応させ、次いでそのようにして得られた生成物をヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)アクリレートまたはポリ(プロピレングリコール)メタクリレートと反応させる、2つの工程で進行することも可能である。ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートに関して、直鎖状または分岐状のC2~C4の好ましくはヒドロキシエチルアクリレートまたはメタクリレートを使用することが有利であろう。本明細書で使用する場合、ジイソシアネートは、少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む化合物を意味するものとする。このジイソシアネートは、例えば、以下から選択することができる:イソホロンジイソシアネート(IPDI)、IPDIイソシアヌレート、ポリメリックIPDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、メチレンビス-シクロヘキシルイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、トルエンジイソシアネート(TDI)、TDIイソシアヌレート、TDI-トリメチロールプロパンのアダクト、ポリメリックTDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、HDIイソシアヌレート、HDIビウレート、ポリメリックHDI、
キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、/7-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート(DDDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NDI)および4,4’-ジベンジルジイソシアネート(DBDI)。
【0033】
本発明の化合物は、熱可塑性のアクリル系樹脂を調製するために使用することができる。具体的には、それらは、PLEXIGLAS(登録商標)の商品名で周知のPMMA(ポリメチルメタクリレート)タイプのポリマーにおけるメチルメタクリレートを部分的または全面的に置き換えることができる。
【0034】
それらは、単独で使用され得るか、またはラジカル重合プロセスに組み入れることが可能な各種の他のモノマー、例えばアクリル系およびメタクリル系モノマー(メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレートなど)、スチレンおよび酢酸ビニルと組み合わせて使用され得る。
【0035】
バルク状態、溶液状態または分散体(エマルション、懸濁液など)で調製したこれらの樹脂を使用して、次いでコーティング(ペイント、インキなど)、接着剤、義歯、光学材料、医薬品のための賦形剤などの分野において使用され得るフィルムまたは原料を製造することができる。
【0036】
これらの化合物は、熱硬化性樹脂の調製において、任意選択的に他のモノマー、特に単官能および/または多官能のアクリレートおよび/またはスチレンと組み合わせて反応性希釈剤および/または可撓性付与剤としてさらに使用され得る。
【0037】
ここで、以下の実施例において本発明を説明する。これらの実施例が決して本発明を限定しないことが明記される。
【実施例
【0038】
実施例1:イソソルビドメチルエーテルの合成
【化10】
500gのイソソルビドおよび125gの水を、冷却器を載せ、メカニカルスターラーおよび温度計を取り付けた2Lのジャケット付き反応器内に仕込む。媒体を加熱して50℃にしてから、ペリスタポンプを使用し、媒体中の温度が65℃を超えないように注意しながら258.9gの硫酸ジメチルおよび172.4の50%水酸化ナトリウムを同時に導入する。添加を2時間続ける。
【0039】
添加が完了したら直ちに媒体を95℃にし、次いでペリスタポンプを使用して2時間で172.4gの水酸化ナトリウムを導入する。
【0040】
次いで、95℃で少なくとも3時間にわたって反応媒体の撹拌を続ける。
【0041】
濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成物が液状の形態で得られ、それは、以下を含む:19.7%のイソソルビド、20.5%のイソソルビド5-O-モノメ
チルエーテルA(MMI A=エンド位で官能化)、24.8%のイソソルビド2-O-モノメチルエーテル(MMI B=エキソ位で官能化)および25%のイソソルビドジメチルエーテル(DMI)。パーセントは、NMR分析によって測定した重量パーセントに対応する。
【0042】
実施例2:イソソルビドエチルエーテルの合成
500gのイソソルビドおよび125gの水を、冷却器を載せ、メカニカルスターラーおよび温度計を取り付けた2Lのジャケット付き反応器内に仕込む。媒体を加熱して50℃にしてから、ペリスタポンプを使用し、媒体中の温度が65℃を超えないように注意しながら、316.1gの硫酸ジメチルおよび172.4の50%水酸化ナトリウムを同時に導入する。添加を2時間続ける。
【0043】
添加が完了したら直ちに媒体を95℃にし、次いでペリスタポンプを使用して2時間で172.4gの水酸化ナトリウムを導入する。
【0044】
次いで、95℃で少なくとも3時間にわたって反応媒体の撹拌を続ける。
【0045】
濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成物が液状の形態で得られ、それは、以下を含む:18%のイソソルビド、21.4%のイソソルビド5-O-モノエチルエーテル(MEI A)、26.2%のイソソルビド2-O-モノエチルエーテル(MEI B)および25.6%のイソソルビドジエチルエーテル(DEI)。パーセントは、NMR分析によって測定した重量パーセントに対応する。
【0046】
実施例3:モノメチルイソソルビドの取得
実施例1で得られた生成物1641.9gを、精留カラム、還流ヘッド、冷却器および回収受器を取り付けた2Lのジャケット付き反応器内に導入する。精留カラムに10 Sulzer EXタイプの充填エレメントを装填する。
【0047】
最初に、装置を減圧下(15mbar)に置き、カラムの塔頂温度が安定するまで全還流として生成物を150℃で加熱する。
【0048】
温度が安定したら直ちに、還流比を1よりも大きく設定して第一の留分を得る。
【0049】
精留を続けながら、圧力を徐々に低下させて0.4mbarとし、媒体の温度を200℃まで上昇させる。
【0050】
それぞれの化合物について、カラムの塔頂での蒸留温度および蒸留圧力を表にまとめる。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例4:イソソルビドモノメチルメタクリレートAの合成
40gのMMI A(生成物3)、23.7gのメタクリル酸および150gのキシレンを、Dean-Stark装置を載せ、マグネチックスターラーを備えた250mLの三ツ口丸底フラスコ内に導入し、加熱マントルを使用して加熱する。
【0053】
64mgのフェノチアジン、1040mgの70%メタンスルホン酸および110mgの50%次亜リン酸を添加する。
【0054】
次いで、反応媒体を少なくとも24時間にわたって溶媒の沸点に加熱する。共沸蒸留によって連続的に水を排出する。
【0055】
24時間反応させた後、酸価は、19mgKOH/g(粗製物)である。液-液抽出によって生成物を精製する。6%水酸化ナトリウム溶液を用いて最初の洗浄を実施し、次いで水を用いて2回洗浄する。
【0056】
無水硫酸マグネシウムを使用して有機相を乾燥させ、濾過し、かつ10mgのヒドロキノンモノメチルエーテルを添加してからロータリーエバポレーターを用いて濃縮する。
【0057】
35gのモノメチルメタクリレートAが液状の形態で得られる。構造は、85重量%よりも高い純度を有してNMR分析によって確認される。
【0058】
実施例5:イソソルビドモノメチルメタクリレートBの合成
実施例4の手順と同じ手順に従い、MMI AをMMI B(生成物2)に置き換える。36gのモノメチルメタクリレートBが固体の形状で得られる。構造は、85重量%よりも高い純度を有してNMR分析によって確認される。
【0059】
実施例6:イソソルビドモノメチルメタクリレート(AとBとの混合物)の合成
11gのMMI A(生成物3)、11gのMMI B(生成物2)および100mLのジクロロメタンを、冷却器を載せ、マグネチックスターラーを備えた500mLのジャケット付き反応器内に導入する。媒体を冷却して0℃にする。
【0060】
次いで、トリメチルアミンの溶液(50mLのジクロロメタン中16.7g)を反応媒体に添加する。次いで、ジクロロメタン(100mL)中メタクリロイルクロリド(17.3g)の溶液を、ペリスタポンプを使用し、媒体中の温度が5℃を超えないように注意しながら滴下により添加する。
【0061】
次いで、反応媒体を室温で少なくとも6時間にわたって撹拌し続ける。
【0062】
反応が終了したら、反応媒体を濾過し、次いで飽和NaHCO水溶液、NaOH(1M)およびNaClを用いた連続的な洗浄で精製する。
【0063】
無水硫酸マグネシウムを使用して有機相を乾燥させ、濾過し、かつ10mgのヒドロキノンモノメチルエーテルを添加してからロータリーエバポレーター上で濃縮する。
【0064】
そのようにして得られた生成物は、わずかに着色した液状物である。構造は、85重量%よりも高い純度を有してNMR分析によって確認される。
【0065】
実施例7:イソソルビドモノメチルウレタン-メタクリレートBの合成
36.4gのイソホロンジイソシアネート、25gのMMIBおよび0.1gのジブチルスズジラウレートを250mLのジャケット付き反応器内に導入する。
【0066】
反応媒体を加熱して75℃にし、少なくとも4時間にわたって撹拌し続ける。
【0067】
次いで、21.4gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートを導入し、媒体を60℃で少なくとも3時間にわたって撹拌し続ける。
【0068】
赤外線分析でNCO基(2200cm-1にピーク)の消失をモニターする。
【0069】
実施例8:イソソルビドモノメチルエポキシ-メタクリレートBの合成
180gのジクロロメタン中の20gのイソソルビドモノメチルエーテルMMIB(0.125mol、1当量)および12.65gのトリエチルアミン(0.125mol、1当量)を、メカニカルスターラーおよび冷却器を取り付けた250mLのジャケット付き反応器内に導入する。装置を穏やかな窒素ストリーム下に置く。
【0070】
次いで、17.8gのグリシジルメタクリレート(0.125mol、1当量)を滴下により添加する。滴下が完了したら直ちに、恒温浴の手段により媒体を加熱して70℃にする。
【0071】
反応をNMR分析によりモニターする。反応が終了したら、水/ジクロロメタンの液-液抽出により、媒体を精製する。次いで、無水硫酸マグネシウムを用いて有機相を乾燥させ、ロタバップ(rotavap)上で濃縮する。
【0072】
次いで、シリカカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/シクロヘキサン)により粗生成物を精製する。
【0073】
そのようにして得られた生成物は、わずかに着色した液状物である。構造は、NMR分析によって確認される。