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特許7153668自動基礎インスリン制御及び手動ボーラスインスリン制御を有する糖尿病管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】自動基礎インスリン制御及び手動ボーラスインスリン制御を有する糖尿病管理システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/142 522
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019556661
(86)(22)【出願日】2018-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 US2018026208
(87)【国際公開番号】W WO2018194838
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】15/489,773
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519442612
【氏名又は名称】ライフスキャン アイピー ホールディングス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フィナン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マッカン ジュニア トーマス
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0114278(US,A1)
【文献】特表2015-521902(JP,A)
【文献】特表2014-524294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0038675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病管理システムであって、
被験者にインスリンを送達するための送達装置と、
前記被験者の血糖値を測定するためのグルコースセンサと、
コントローラであって、
前記グルコースセンサから前記被験者の血糖値を定期的に受信し、
モデル予測制御アルゴリズム、並びに前記被験者の、所望の血糖値、送達されたインスリンの量、及び測定された血糖値を含む前記被験者の生理学的データを使用して、基礎インスリン投与量を自動的に計算し、
前記被験者によって開始された手動ボーラスインスリン投与量を受信し、
記生理学的データに基づいて前記被験者の近い将来の血糖変動があるかどうか、前記モデル予測制御アルゴリズムを使用して、予測し、
予測された近い将来の血糖変動に基づいて、前記手動ボーラスインスリン投与量を修正し、
前記修正された手動ボーラスインスリン投与量及び前記計算された基礎インスリン投与量に基づいて総インスリン投与量を決定し、
前記総インスリン投与量を前記被験者に送達するように構成されている、コントローラと、を備える、糖尿病管理システム。
【請求項2】
前記手動ボーラスインスリン投与量は、前記被験者の現在の血糖値と前記被験者の目標血糖値との差、前記被験者のグルコース感受性、及び前記被験者のオンボードインスリンレベルに応じて計算される、請求項1に記載の糖尿病管理システム。
【請求項3】
前記修正は予測された前記近い将来の血糖変動に基づいて、前記手動ボーラスインスリン投与量を減少することを含む、請求項1に記載の糖尿病管理システム。
【請求項4】
前記修正することは、前記手動ボーラスインスリン投与量を相殺することを含む、請求項1に記載の糖尿病管理システム。
【請求項5】
前記糖尿病管理システムはボーラス計算機を更に含み、前記コントローラは、前記ボーラス計算機から前記手動ボーラスインスリン投与量を受信する、請求項1に記載の糖尿病管理システム。
【請求項6】
前記ボーラス計算機は前記手動ボーラスインスリン投与量を計算して、現在の血糖値と目標血糖値との差、前記被験者のグルコース感受性、及び前記被験者のインスリンのオンボードレベルに応じて目標血糖値を達成する、請求項5に記載の糖尿病管理システム。
【請求項7】
自動基礎インスリン制御及び手動ボーラスインスリン制御を有する糖尿病管理システムであって、前記糖尿病管理システムは、
被験者にインスリンを送達するための送達装置と、
前記被験者の血糖値を測定するためのグルコースセンサと、
コントローラであって、
前記グルコースセンサから前記被験者の血糖値を受信し、
モデル予測制御アルゴリズム、並びに前記被験者の所望の血糖値、送達されたインスリンの量、及び測定された血糖値など前記被験者の生理学的データを使用して、基礎インスリン投与量を自動的に計算し、
前記被験者によって開始された手動ボーラスインスリン投与量を受信し、
記生理学的データに基づいて前記被験者の近い将来の血糖変動があるかどうか、モデル予測制御アルゴリズムを使用して、予測し、
低血糖を示す近い将来の血糖変動があると予測される場合は、前記手動ボーラスインスリン投与量を修正するように構成されている、
コントローラと、を備える、糖尿病管理システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記修正された手動ボーラスインスリン投与量及び前記計算された基礎インスリン投与量に基づいて総インスリン投与量を決定するように更に構成されている、請求項7に記載の糖尿病管理システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記被験者に前記総インスリン投与量を送達するよう前記送達装置に命令するように更に構成されている、請求項7に記載の糖尿病管理システム。
【請求項10】
前記手動ボーラスインスリン投与量は、前記被験者の現在の血糖値と前記被験者の目標血糖値との差、前記被験者のグルコース感受性、及び前記被験者のオンボードインスリンレベルに応じて計算される、請求項7に記載の糖尿病管理システム。
【請求項11】
前記修正は予測された前記近い将来の血糖変動に基づいて、前記手動ボーラスインスリン投与量を減少することを含む、請求項7に記載の糖尿病管理システム。
【請求項12】
前記修正することは、前記手動ボーラスインスリン投与量を相殺することを含む、請求項7に記載の糖尿病管理システム。
【請求項13】
前記糖尿病管理システムはボーラス計算機を更に含み、前記コントローラは、前記ボーラス計算機から前記手動ボーラスインスリン投与量を受信する、請求項7に記載の糖尿病管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、糖尿病管理システムの分野に関し、より具体的には、自動基礎インスリン制御及び手動ボーラスインスリン制御の両方を含むインスリン制御のためのシステム及び関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病は、膵臓が十分な量のホルモンインスリンを産生できないために生じる慢性的な代謝障害であり、結果として、グルコースを代謝する身体の能力が低下する。この不全は、高血糖症、又は血漿における過剰量のグルコースの存在をもたらす。持続性高血糖症は、単独で又は低インスリン血症と合わせて、様々な重篤な症状及び生命を脅かす長期合併症と関連している。内因性インスリン産生の回復はまだ可能ではないため、正常な限度内で血糖値を常に維持するために、一定の血糖制御をもたらす恒久的治療が必要である。かかる血糖制御は、患者の身体に外部インスリンを定期的に供給し、それによって上昇した血糖値を低下させることによって達成される。
【0003】
糖尿病治療では、薬物送達装置を開発することによって相当な改善が達成されており、薬剤を毎日複数回投与するための注射器又は薬物ペンに対する患者の必要性を軽減している。これらの薬物送達装置は、自然発生の生理学的プロセスにより類似した方法で薬物を送達できるようにし、標準的なプロトコル又は個々に修正されたプロトコルに従うように制御されて、患者により良好な血糖制御をもたらすことができる。
【0004】
これらの薬物送達装置は、埋め込み型装置として構築され得る。あるいは、送達装置は、カテーテル、カニューレの経皮的挿入、又はパッチなどを介した経皮的薬物輸送によって患者に皮下注入するための輸液セットを有する外部装置であってよい。外部薬物送達装置は衣類上に取り付けられてよく、より好ましくは衣類の下若しくは内側に隠される、又は身体上に取り付けられてよく、概して、装置に内蔵されたユーザーインターフェースを介して、又は別個のリモート装置で制御される。
【0005】
装置を使用して許容可能な血糖制御を達成するには、血液又は間質液サンプルの監視が必要である。例えば、薬物送達装置によって好適なインスリン量を送達するには、患者が自身の血糖値を頻繁に測定する必要がある。血糖値は、送達装置若しくはポンプに、又はコントローラで入力されてもよく、その後、既定の、又は現在使用中の、インスリン送達プロトコル、すなわち、投与量及びタイミング対して好適な修正を計算でき、この修正は、薬物送達装置の動作をそれに応じて調整するために使用される。あるいは、又は一時的な血糖測定と併せて、連続的グルコース監視(「CGM」)が薬物送達装置と共に使用されてよく、CGMは、糖尿病患者に注入されるインスリンの閉ループ制御を可能にする。
【0006】
閉ループ制御を可能にするために、ユーザーに送達される薬物の自律的変調が、1つ以上のアルゴリズムを使用するコントローラによって提供される。例えば、観測された血糖値に反応する比例積分微分アルゴリズム(「PID」)コントローラが用いられ得、このコントローラは、個人のグルコースとインスリンとの間での相互作用の数学的モデルの単純な規則に基づいて調整され得る。
【0007】
あるいは、モデル予測アルゴリズム(「MPC」)コントローラが使用され得る。MPCコントローラは、PIDコントローラと比較して有利である。これは、MPCの出力判定の際に、時には制約を受けつつも、将来を見越して制御変化の近い将来の影響を考慮するのに対して、PIDは、典型的には、将来の変化の判定の際に過去の出力のみを含むためである。制約は、液剤が限定された「空間」内にあるようにMPCコントローラ内で実施され得る。つまり、課された送達制限内であることが保証され、システムは、到達している限度を超えない。既知のMPCは、米国特許第7,060,059号、米国特許出願公開第2011/0313680号、同第2011/0257627号、及び同第2014/0180240号、国際公開第2012/051344号、Percival et al.,「Closed-Loop Control and Advisory Mode Evaluation of an Artificial Pancreatic β-Cell:Use of Proportional-Integral-Derivative Equivalent Model-Based Controllers」,J.Diabetes Sci.Techn.,Vol.2,Issue 4,July 2008、Paola Soru et al.,「MPC Based Artificial Pancreas;trategies for Individualization and Meal Compensation」,Annual Reviews in Control 36,p.118-128(2012)、Cobelli et al.,「Artificial Pancreas:Past,Present,Future」,Diabetes,Vol.60,November 2011、Magni et al.,「Run-to-Run Tuning of Model Predictive Control for Type 1 Diabetes Subjects:In Silico Trial」,J.Diabetes Sci.Techn.,Vol.3,Issue 5,September 2009、Lee et al.,「A Closed-Loop Artificial Pancreas Using Model Predictive Control and a Sliding Meal Size Estimator」,J.Diabetes Sci.Techn.,Vol.3,Issue 5,September 2009、Lee et al.,「A Closed-Loop Artificial Pancreas based on MPC:Human Friendly Identification and Automatic Meal Disturbance Rejection」,Proceedings of the 17th World Congress,The International Federation of Automatic Control,Seoul Korea Jul.6-11,2008、Magni et al.,「Model Predictive Control of Type 1 Diabetes:An in Silico Trial」,J.Diabetes Sci.Techn.,Vol.1,Issue 6,November 2007、Wang et al.,「Automatic Bolus and Adaptive Basal Algorithm for the Artificial Pancreatic β-Cell」,Diabetes Techn.,Vol.12,No.11,2010、Percival et al.,「Closed-Loop Control of an Artificial Pancreatic β-Cell Using Multi-Parametric Model Predictive Control」Diabetes Research 2008、Kovatchev et al.,「Control to Range for Diabetes:Functionality and Modular Architecture」,J.Diabetes Sci.Techn.,Vol.3,Issue 5,September 2009、及びAtlas et al.,「MD-Logic Artificial Pancreas System」,Diabetes Care,Vol.33,No.5,May 2010に記載されている。本出願で引用された全ての物品又は文書は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本出願に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の態様による糖尿病管理システムを示す。
図2】本開示の態様による、自動基礎インスリン制御及び手動ボーラスインスリン制御を使用して糖尿病を管理するための方法を示す。
図3】本発明で有用な薬物送達装置の選択された実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用するとき、任意の数値又は範囲に対する用語「約」又は「およそ」は、本明細書に記載するように、構成要素の一部又は集合がその意図される目的に応じて機能することを可能にする好適な寸法公差を示す。加えて、本明細書で使用するとき、用語「患者」、「ユーザー」、及び「被験者」は、任意のヒト又は動物被験対象を指し、ヒト患者における対象技術の使用は好ましい実施形態であるが、システム又は方法をヒトへの使用に制限することは意図されない。
【0010】
本発明は、1つには、自動基礎インスリン制御を手動ボーラスインスリン制御と組み合わせる糖尿病管理システムに関する。MPCアルゴリズム又は別の調節アルゴリズムを使用するコントローラを介した自動基礎インスリン制御では、被験者によって開始されるインスリンの手動ボーラス投与量を考慮できない場合がある。手動ボーラスは、インスリンオンボードモデル、被験者のインスリン感受性因子、現在の血糖値、及び目標血糖値を使用するボーラス計算機を使用して、被験者によって計算されてよい。かかるシステムでは、これら2つのプロセス、すなわち、自動基礎インスリン制御及び手動ボーラスインスリン制御のそれぞれは、2つのモデル間に方向性の矛盾が存在する場合であっても、独立して続行する。これらのプロセス間の相関性の欠如は、被験者への過剰なインスリンの送達などの問題の原因となり、低血糖変動を生じさせ得る。
【0011】
これらの制約を克服する1つの方法は、傾向及びその変化の速度を含む生理学的データなど自動プロセスからのデータの一部又は全てを使用して、被験者から命令されるボーラスを手動プロセスで修正、相殺、又は変更できるようにすることにより、手動ボーラスインスリン制御と自動基礎インスリン制御との差を埋めることである。有利には、本開示は、1つには、自動基礎インスリン制御及び手動ボーラスインスリン制御の両方を組み合わせるための技術を提供し、それにより、患者の安全性に合致する方法でモデル間の矛盾が解決される。
【0012】
別の利点として、本明細書に記載する技術は、MPCなど従来の変調制御アルゴリズムの強化とみなされてよく、基礎制御及びボーラス制御の両方を組み合わせた、より完全に自動化された人工膵臓を可能にする。
【0013】
概して、本明細書において、一実施形態では、自動基礎インスリン制御及び手動ボーラスインスリン制御を有する糖尿病管理システムが提供される。糖尿病管理システムは、送達装置と、グルコースセンサと、コントローラと、を含む。送達装置は、被験者にインスリンを送達するためのものである。グルコースセンサは、被験者の血糖値を測定するためのものである。コントローラは、グルコースセンサから被験者の血糖値を受信するように構成されている。コントローラは、被験者の所望の血糖値、送達されたインスリンの量、及び測定された血糖値など被験者の生理学的データに基づいて、被験者のモデル予測制御アルゴリズム(「MPC」)を使用して、基礎インスリン投与量を自動的に計算するように構成されている。コントローラは、被験者によって開始された手動ボーラスインスリン投与量を受信するように構成されている。コントローラは、被験者の生理学的データに基づいて、手動ボーラスインスリン投与量を修正するように構成されている。コントローラは、修正された手動ボーラスインスリン投与量及び計算された基礎インスリン投与量に基づいて総インスリン投与量を決定するように構成されている。一実施形態では、コントローラは、基礎インスリン投与量を自動的に(すなわち、患者に確認せずに)送達し、被験者に確認した上で、ボーラスインスリン投与量を送達するように構成されてよい。別の実施形態では、コントローラは、例えば、患者に指示を通知することにより、ボーラスインスリン投与量を相殺するように患者に指示してよい。更なる実施形態では、コントローラは、ボーラス投与量に応じて、単に基礎インスリン投与量を修正してよい。
【0014】
別の実施形態では、自動基礎インスリン制御及び手動ボーラスインスリン制御を有する糖尿病管理システムが提示される。糖尿病管理システムは、送達装置と、グルコースセンサと、コントローラと、を含む。コントローラは、グルコースセンサから被験者の血糖値を受信するように構成されている。コントローラは、所望の血糖値、送達されたインスリンの量、及び測定された血糖値など被験者の生理学的データに基づいて、被験者のMPC又は他の制御アルゴリズムを使用して、基礎インスリン投与量を自動的に計算するように構成されている。コントローラは、被験者によって開始された手動ボーラスインスリン投与量を受信するように構成されている。コントローラは、自律制御アルゴリズム及び被験者の生理学的データに基づいて、手動ボーラスインスリン投与量を修正するように構成されている。
【0015】
更なる実施形態では、自動基礎インスリン制御及び手動ボーラスインスリン制御を使用して糖尿病を管理するための方法が提示されており、この方法は、被験者にインスリンを送達するための送達装置及び被験者の血糖値を測定するためのグルコースセンサを使用する。被験者の血糖値は、グルコースセンサから受信される。基礎インスリン投与量は、所望の血糖値、送達されたインスリンの量、及び測定された血糖値など被験者の生理学的データに基づいて、MPCなど被験者のアルゴリズム制御を使用して自動的に計算される。被験者によって開始された手動ボーラスインスリン投与量が受信される。手動ボーラスインスリン投与量は、被験者の生理学的データに基づいて修正される。総インスリン投与量は、修正された手動ボーラスインスリン投与量及び計算された基礎インスリン投与量に基づいて決定される。例えば、送達装置は、総インスリン投与量を被験者に送達するように命令されてよい。別の例では、基礎投与量は相殺されてよく、患者はボーラスインスリン投与量を相殺するように指示され得る。
【0016】
上記の実施形態は、単なる例であることが意図される。他の実施形態が開示される発明の対象の範囲内であることは、以下の考察から容易に明らかとなるであろう。
【0017】
次に、図1図3を参照して、具体的な実施例を説明する。図1は、本実施形態による、人工膵臓とみなされ得る糖尿病管理システム100を示す。糖尿病管理システム100は、薬物送達装置102と、コントローラ104と、を含む。薬物送達装置102は、可撓性チューブ108を介して輸液セット106に接続される。本発明の様々な実施形態はまた、薬物送達装置102を介した注入の代わりに、又はそれに加えて、注射器又はインスリンペンを介した注入と併用されてよい。
【0018】
薬物送達装置102は、例えば、無線周波数(「RF」)、BLUETOOTH(登録商標)など通信リンク111によってコントローラ104に対してデータを送受信するように構成されている。一実施形態では、薬物送達装置102は、インスリン注入装置、つまりポンプであり、コントローラ104は、手持ち式携帯用コントローラ、つまりスマートフォン、コンピュータ、訓練若しくはユーザー監視装置など消費者向け電子装置であってよい。かかる実施形態では、薬物送達装置102からコントローラ104に送信されるデータは、例えば、インスリン送達データ、血糖情報、基礎、ボーラス、インスリン対糖質比、インスリン感受性因子などの情報を含んでよい。コントローラ104は、通信リンク110を介してCGMセンサ112から連続的なグルコース読み取り値を受信するようにプログラムされている閉ループコントローラを含むように構成され得る。コントローラ104から薬物送達装置102に送信されるデータは、グルコース試験結果及び食品データベースを含んでおり、薬物送達装置102が、薬物送達装置102によって送達されるべきインスリンの量を計算できるようにし得る。あるいは、コントローラ104は、基礎投与量又はボーラス計算を行い、かかる計算の結果をインスリン送達装置に送信してよい。ボーラス計算は、開始時に被験者によって手動で行われてよい、又は自動化されていて、システムがボーラスインスリン制御及び基礎インスリン制御の両方を組み込むことができてよい。
【0019】
グルコース測定器114(例えば、一時的血糖測定器)は、単独で、又はCGMセンサ112と併せて、例えば通信リンク117及び118を介してコントローラ104及び薬物送達装置102のいずれか又は両方にデータを提供する。グルコース測定器114は、試験ストリップ115上に配置された流体サンプルを測定できる。試験ストリップ115上の2つの斜線領域は、後述するように、2つの電極をグラフ表示する。コントローラ104は、表示されたタッチスクリーン144又は他のデバイスなどユーザーインターフェースを介して情報を提示し、コマンドを受信できる。CGMセンサ112は、通信リンク113を介してデータ、例えば、現在の血糖値を、薬物送達装置102に直接提供できる。
【0020】
コントローラ104、薬物送達装置102、及びCGMセンサ112は、任意の組み合わせで多機能ユニットに統合され得る。例えば、コントローラ104は、薬物送達装置102と統合されて、単一のハウジングを有する統合装置を形成できる。注入機能、検知機能、及び制御機能はまた、モノリシック人工膵臓に統合され得る。様々な実施形態では、コントローラ104は、グルコース測定器114と併せて、ハウジングを有する一体型モノリシック装置に統合される。他の実施形態では、コントローラ104及びグルコース測定器114は、互いにドッキング可能であって一体型装置を形成する、2つの分離可能な装置である。装置102、104、及び114のそれぞれは、様々な機能を実行するようにプログラムされている好適なマイクロコントローラ(簡潔にするために示さず)を有する。
【0021】
薬物送達装置102又はコントローラ104はまた、例えば、通信ネットワーク118を介してリモート健康監視ステーション116と双方向通信するように構成され得る。1つ以上のサーバ126又は記憶装置128は、ネットワーク118を介してコントローラ104に通信可能に接続され得る。一例では、薬物送達装置102は、RF、BLUETOOTH(登録商標)など通信リンクを介してパーソナルコンピュータ(例えば、コントローラ104)と通信する。コントローラ104及びリモートステーション116はまた、例えば、電話地上通信ネットワークを介して双方向有線通信向けに構成され得る。リモート監視ステーション116の例としては、パーソナル又はネットワークコンピュータ126、サーバ128-メモリ記憶装置、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、病院ベース監視ステーション、又は専用のリモート臨床監視ステーションを挙げることができるが、これらに限定されない。あるいは、図1には示していないが、記憶装置、例えば、制御アルゴリズムが、クラウド内に更に設けられてよい。
【0022】
制御アルゴリズムは、図1に示す構成においてリモートコントローラ104内、薬物送達装置102内、又はこれら両方に存在し得る。ある構成では、コントローラ104は、必要な情報を薬物送達装置102から(例えば、インスリン履歴)、並びにグルコースセンサ112から(例えば、グルコースデータ)無線で収集して、薬物送達装置102が、制御アルゴリズムを使用して、薬物送達装置102によって調節して送達されるべきインスリンの量を計算できるようにする。あるいは、コントローラ104は制御アルゴリズムを含み、基礎投与量又はボーラス計算を実行し、送達命令と共にかかる計算の結果を薬物送達装置102に送信してよい。別の実施形態では、一時的血糖測定器114及びバイオセンサ115はまた、単独で、又はCGMセンサ112と併せて使用されて、コントローラ104及び薬物送達装置102のいずれか又は両方に血糖データを提供してよい。グルコース測定器114は、バイオセンサ115上の電極を通る電流を測定して、流体サンプルの血糖値を決定できる。例示的なグルコースセンサ及び関連する構成要素は、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第6,179,979号、同第8,163,162号、及び同第6,444,115号に示され、記載されている。例示的なCGMセンサは、電流測定電気化学センサ技術を用いて、分析物を測定する。CGMセンサ112は、センサ電子機器に動作可能に接続され、クリップによって取り付けられる検知膜及び生体界面膜で覆われた3つの電極を含んでよい。電極の上端部は、検知膜と電極との間に配置される自由流動性流体相である電解質相(図示せず)と接触している。検知膜は、電解質相を覆う酵素、例えば、分析物オキシダーゼを含んでよい。センサ及び関連構成要素の詳細は、参照により本明細書に援用される、米国特許第7,276,029号に示され、説明されている。
【0023】
薬物送達装置102は、制御プログラム及び動作データを記憶するための中央処理装置及びメモリ素子を含む電子信号処理構成要素、通信信号(例えば、メッセージ)を送受信するための通信モジュール(図示せず)、ユーザーに動作情報を提供するためのディスプレイ、ユーザーが情報を入力するための複数のナビゲーションボタン、システムに電力を提供するための電池、ユーザーにフィードバックを提供するためのアラーム(例えば、視覚、聴覚、又は触覚)、ユーザーにフィードバックを提供するためのバイブレータ、及びインスリンリザーバ(例えば、インスリンカートリッジ)から、可撓性チューブ108を介して側部ポートを通って輸液セット106に、そしてユーザーの身体内へとインスリンを押し込むための薬剤送達機構(例えば、薬物ポンプ及び駆動機構)のうちのいずれか、又は全てを含み得る。
【0024】
様々なグルコース管理システムは、一時的グルコースセンサ(例えば、グルコース測定器114)と、注入ポンプと、を含む。かかるシステムの例は、Animas Corporation製のONETOUCH(登録商標)グルコース管理システムである。このシステムの「ezBG」機能では、一時的グルコース測定の結果を使用して、注入ポンプによって送達されるべきインスリンの補正ボーラス量を計算できる。ポンプ及びメーターは無線で通信する。別の例は、Dexcom,Inc製のG4(登録商標)又はG5(登録商標)CGMシステムと通信するANIMAS VIBEインスリンポンプである。これらの構成要素を接続するために、インターフェースが提供され得る。閉ループ、自律制御アルゴリズムは、例えば、MATLAB言語でプログラムされ得、患者の血糖値、過去のグルコース測定値、及び予測される将来のグルコースの傾向、並びに患者固有の情報に基づいてインスリン送達の速度を調節する。
【0025】
一例では、薬物送達装置102は、リンク113を介してCGMセンサ112と直接通信するインスリンポンプである。薬物送達装置102は、CGMセンサ112からの血糖データを使用してインスリンの送達量を計算する制御機能を含む。コントローラ104は、リンク111を介して薬物送達装置102と通信するアプリケーション(ダウンロード可能なソフトウェアアプリケーション)を実行するスマートフォンであり、薬物送達装置102の遠隔操作及び血糖の遠隔監視のための機能を提供する。このアプリケーションは、ボーラスを計算する、又はインスリン送達量を調整する機能を実行できる。
【0026】
コントローラ104は、本明細書に記載の様々な実施形態のプロセスを実施する1つ以上のデータプロセッサを含んでよい。「データプロセッサ」は、データを処理するためのデバイスであり、中央処理装置(CPU)、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、メインフレームコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、又は(電気的、磁気的、光学的、生物学的構成要素、又は他の方法で実装されるかどうかにかかわらず)データ処理(processing data)、データ管理、若しくはデータ処理(handling data)を行うための任意の他のデバイスが挙げられ得る。コントロール104は、周辺システム、ユーザーインターフェース、及び記憶装置などサブシステムを有してよい、又は提供してよい。このサブシステムは、コントローラ104に統合されてよい、又は独立型構成要素として実装されてよい。
【0027】
本明細書に記載の方法を実行するためのプログラムコードは、単一プロセッサ上で、又は複数の通信可能に接続されたプロセッサ上で完全に実行され得る。例えば、コードは、ユーザーのコンピュータ上で完全に又は部分的に実行され、リモートコンピュータ、例えば、サーバ上で完全に又は部分的に実行され得る。リモートコンピュータは、ネットワーク118を通じてユーザーのコンピュータに接続され得る。ユーザーのコンピュータ又はリモートコンピュータは、従来のデスクトップパーソナルコンピュータ(PC)など非ポータブルコンピュータであってよく、又はタブレット、携帯電話、スマートフォン、若しくはラップトップなどポータブルコンピュータであってよい。周辺システムは、デジタルコンテンツ記録又は他のデータをコントローラ104に提供するように構成されている1つ以上のデバイスを含み得る。例えば、検査ストリップ115などバイオセンサは、例えば、Bluetooth(登録商標) Smart又は他の無線リンクを使用して、周辺システムを介してコントローラ104に接続され得る。バイオセンサはまた、コントローラ104に直接接続され得る。周辺システムはまた、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、又は他のデータプロセッサを含み得る。周辺システムはまた、例えば、USB、FIREWIRE(登録商標)、RS-232、又は他のインターフェースを有するデバイスをコントローラ104に通信可能に接続するために1つ以上のバスブリッジを含み得る。コントローラ104は、周辺システム内のデバイスからデータを受信すると、そのデータを記憶装置128に記憶できる。
【0028】
コントローラ104は、タッチスクリーン144として表示されるユーザーインターフェースに通信可能に接続される、又は代替的に、ユーザーインターフェースは、マウス、キーボード、別のコンピュータ(例えば、ネットワーク又はヌルモデムケーブルを介して接続される)、マイクロフォン及び音声プロセッサ若しくは音声コマンドを受信するための他のデバイス、カメラ及び画像プロセッサ若しくは視覚コマンド、例えば、ジェスチャを受信するための他のデバイス、又は任意のデバイス、又はデバイスの組み合わせであり得る、又はこれらを含む。
【0029】
コントローラ104は、ネットワーク118に対してメッセージを送信し、プログラムコードなどデータを受信できる。例えば、アプリケーションプログラム(例えば、JAVA(登録商標)アプレット)に関して要求されたコードは、ネットワーク118に接続された有形の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。ネットワークサーバ128は、記憶媒体からコードを取得し、ネットワーク118を介して送信できる。受信されたコードは、受信時にコントローラ104によって実行され得、又は後に実行するために記憶され得る。
【0030】
コントローラ104は、開ループモードで動作するように構成され得る。この動作モードでは、システムは、従来の開ループ制御型インスリンポンプのように挙動する。インスリンは、患者が設定した基礎速度プロファイル並びに患者が計算した食事及び補正ボーラスに従って送達される。CGMデータは、患者情報に関して記録され、表示され得るが、自動インスリン計算には使用されない。同様の機能は、例えば、DEXCOM G4 CGMシステムを備えるANIMAS VIBEインスリンポンプによって提供される。
【0031】
コントローラ104はまた、閉ループモードで動作するように構成され得る。この動作モードでは、コントローラ104は、必要に応じて、特定の時間間隔(例えば、5分ごと)でCGMセンサ112、グルコース測定器114、又はその両方によって伝えられる血糖値を入力の1つとして使用する予測閉ループ制御アルゴリズムによって修正された、患者の予め設定された基礎速度を送達するように薬物送達装置102に命令する。これにより、グルコース下限を超える低血糖変動又はグルコース上限を超える高血糖変動の確率を低減できる。ユーザーは、食事及び補正ボーラスを計算できる。コントローラ104は、タッチスクリーン144のユーザーインターフェースを介してボーラス計算機を提供して、ユーザーによるボーラスインスリン量の決定を支援するように構成され得る。閉ループ制御アルゴリズムは、これらの手動ボーラスを考慮してインスリンオンボード(「IOB」)推定値を策定でき、次いで、IOB推定値を使用して、検出された血糖値を処理するために必要な追加インスリン量を判定できる。
【0032】
コントローラ104はまた、タッチスクリーン144又は他のユーザーインターフェースのユーザーインターフェースを介して薬物送達装置102の低レベル制御が提供されるメンテナンスモードで動作するように構成され得る。患者が通常はアクセスしない他の機能の制御も提供され得る。このモードは、製造中、又は、例えば、コントローラ104及びグルコース測定器114が点検を必要とするときに、コントローラ104、薬物送達装置102、又はグルコース測定器114を検査できるようにする。
【0033】
ここでは、図2に関して被験者101の糖尿病を管理するための方法200について記載する。図1に関して上述したように、方法200は、単一の多機能装置で実施されてよく、又は特定の実施例、携帯性の必要性、若しくは他の要因に応じて、コントローラ104、送達装置102、又はセンサ112のうちの1つ以上で動作してよい。送達装置102は、被験者101にインスリンを送達するために使用されてよく、グルコースセンサ112は、被験者101の血糖値を測定するために使用されてよい。
【0034】
一例では、方法200は、自動基礎インスリン制御及び手動ボーラスインスリン制御の両方を使用する。自動基礎インスリン制御は、MPC若しくはPIDコントローラを備えるフィードバックコントローラの形態で、又は血糖値の測定と併せてインスリン注入を自律的に管理するための任意の他の自動化戦略で提供されてよい。別の例では、方法200は、完全自動化基礎インスリン制御ではなく、手動インスリン注入、手動グルコース測定、又はその両方のいずれかと併用されてよい。同様の方法で、方法200は、異なる形態のボーラスインスリン制御と併用されてよい。例えば、被験者が、例えば食事前にインスリンボーラスを計算し、インスリンを手動で注入する、完全手動ボーラスインスリン制御が用いられてよい。別の例では、ボーラスインスリン制御は、部分的に手動であり、部分的に計算に基づいてよい。例えば、被験者は、食事に関する特定の情報をシステムに入力でき、システム、例えば、送達装置102は、目標インスリンボーラス投与量を計算できる。
【0035】
ここでより具体的な例を参照すると、方法200は、ブロック210において、グルコースセンサ112から、例えば継続的に被験者101の血糖値を受信する。例えば、連続グルコース監視戦略は、測定値を1分当たり1回以上、又は他の所定の間隔(例えば5分ごと)で測定値を受信することを含んでよい。次に、方法200は、ブロック220において、MPCを使用して基礎インスリン投与量を自動的に計算する。
【0036】
本発明で使用するための例示的な薬物送達装置300は図3に示しており、ポンプ送達モジュール314、CGMモジュール320、及びMPCモジュール324を収容する。好ましくは、この実施形態は、例えば、いずれも参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第8,526,587号及び米国特許出願第14/015,831号に開示されている低血糖高血糖ミニマイザ(「HHM」)システムを用い、それぞれが薬物送達装置のハウジング内に組み込まれる。CGMモジュール220は、患者310に配置された図1のCGMセンサ112から信号を受信するように構成されている。MPCモジュール324は、CGMモジュール並びにポンプ送達モジュールに動作可能に接続され、記憶されたアルゴリズムに皮下グルコース情報を提供するためにこの情報を受信するように構成されており、記憶されたアルゴリズムはまた、インスリンの以前の送達を全て認識している。このデータが使用されて、血糖値の近い将来の予測値を計算し、近い将来予測される、又は実際の高血糖状態又は低血糖状態を緩和するインスリン送達速度を生成する。次いで、この速度は、電流間隔(例えば、5分)に対応する患者が設定した速度に関連してポンプ送達モジュール314によって作動される。この手順は、以降の時間間隔ごとに繰り返えされる。
【0037】
MPCモジュールで使用する例示的なアルゴリズムは、米国特許第8,562,587号及び同第8,762,070号、並びに米国特許出願第13/854,963号及び同第14/154,241号に詳述されており、その全ての内容は参照により本明細書に援用され、基礎速度、食事活動、及び連続グルコース監視に基づいてインスリンの送達を制御するための予測値を生成する。技術的には、CGMは、定期的なスケジュール(例えば、5分ごとに1回)に従って行われる。上述のように、この実施形態及びHHMシステムを使用するこの考察の全ての後続部分では、患者にインスリンが送達される。しかしながら、前述したように、他の既知のMPC又はPIDタイプの送達システム及びそれで用いられる予測アルゴリズムも用いられ得る。
【0038】
MPCは、被験者の生理学的データを使用する。例えば、生理学的データとしては、以前にシステムにプログラムされている被験者の所望の血糖値が挙げられる。データとしてはまた、以前に送達されたインスリン量及び以前に測定された血糖値、並びにインスリン又はグルコースの変化率など更なる分析が挙げられる。上述したように、基礎インスリン制御は、血糖値が、被験者の医師と相談して決定される正常範囲に維持されるように、被験者の定常状態制御を可能にする。しかしながら、基礎インスリン制御は、様々な食事事象を考慮しておらず、食事情報は、システムに入力されていない限り、必ずしもシステムに把握されていない。例えば、任意選択的に、方法200は、ブロック230において、手動ボーラスインスリン投与量を計算し、ボーラス計算機の機能を実行する。かかる場合、システムは、目標血糖値、被験者のグルコース感受性、及び被験者のインスリンの既知のオンボードレベルを考慮して計算できる。
【0039】
あるいは、一実施形態では、方法200は、ブロック240において、ボーラス計算機機能を使用して投与量を決定する代わりに、被験者101によって開始された手動ボーラスインスリン投与量を受信する。手動ボーラスインスリン投与量が、方法200によって、ブロック230において一体型ボーラス計算機によって計算されるか、又はブロック240において、被験者101によって方法200に完全に手動で入力されたかどうかにかかわらず、手動ボーラスインスリン投与量は、制御アルゴリズムの基礎インスリン送達からの逸脱を表す。具体的には、直近に食事することを認識している被験者101は、インスリンのボーラスが必要であると判定する。しかしながら、被験者101は、基礎インスリン制御の現在の状態を必ずしも認識していない。
【0040】
有利には、システムは、この手動ボーラス投与量を把握し、現在の基礎インスリン制御状態を考慮してこれを管理できる。例えば、一実施形態では、方法200は、ブロック250において、被験者101の潜在的な次回の低血糖変動を検出していてよい。例えば、低血糖変動は、被験者のグルコース変化率、以前のインスリン送達レベルなどに基づいてMPCによって示されてよい。かかる場合、インスリンの手動投与量が被験者101に送達され得るようにすることは、有害な結果を有し得る。本発明は、かかる状況において、手動ボーラスインスリン投与量を相殺することにより従来のMPC技術と比較して患者の健康を改善し得ることを発見した。被験者101の視点から見ると、これは、被験者が、所望の手動ボーラスインスリン投与量が想到され、システムによって却下されたことを認識し、被験者101が不安を抱くことなく、自信をもって食事を続けることができるように、ユーザーインターフェースを介して示され、被験者に説明され得る。
【0041】
別の例では、方法200は、ブロック260において、手動ボーラスインスリン投与量の全体を相殺する、又は無効にする代わりに、被験者の生理学的データに基づいて手動ボーラスインスリン投与量を修正する。例えば、被験者の現在の血糖値と被験者の目標血糖値との差に応じて計算し、グルコース感受性及びインスリンオンボードを考慮した後、又は、被験者101の現在のグルコース変化率を考慮した後、方法200は、あらゆる低血糖事象又は変動を回避するレベルまで計算された投与量を減少できる。修正プロセスを特徴付ける1つの方法は、MPC制御が手動ボーラス投与量に対して更なるデータ源を考慮するように修正されていることであり、したがって、方法200は、被験者101の基礎インスリン制御及びボーラスインスリン制御の両方を管理する、改良されたMPC制御を使用する方法である。修正プロセスを特徴付ける別の方法は、方法200が、継続的なグルコース測定、過去のインスリン投与量、及びその変化率など被験者の生理学的データを考慮する、改良されたボーラス計算機を具現化するようにボーラス計算機が改良されていることである。方法200がどのように特徴付けられるかにかかわらず、ボーラスインスリン制御と基礎インスリン制御とを組み合わせることの利点により、被験者101は、食事事象中などでも継続的に血糖値をより良好に制御できるようになる。
【0042】
ここで図2の例を引き続き参照すると、方法200は、ブロック270において、修正された手動ボーラスインスリン投与量及び計算された基礎インスリン投与量に基づいて総インスリン投与量を決定する。例えば、図2に示すフローチャートの多くの繰り返しの間、手動ボーラスインスリン投与量は存在しなくてよい。かかる場合、総インスリン投与量は、MPCモデルに従って計算された基礎インスリン投与量と同じであってよい。図2のフローチャートの他の繰り返し中、インスリンの手動ボーラスは、被験者101によって開始されてよい。かかる場合、方法200は、生理学的データ、ボーラス計算機データなどを考慮して、適切なインスリン投与量を決定する。用語「総インスリン投与量」は、修正された手動ボーラスインスリン投与量及び計算された基礎インスリン投与量を加算したものに限定されるものではなく、トレンドアルゴリズム、臨床試験を通して決定され、システムにプログラムされたルックアップテーブルなどに基づいて数学的に決定され得ることに留意されたい。
【0043】
次に、方法200は、ブロック280において、フローチャート300をこのように繰り返すために、被験者に総インスリン投与量を送達するように送達装置102に命令する。その後、方法200は、ブロック210に戻り、上述の連続フィードバック制御を繰り返す。
次に、具体的な実施例を挙げて説明する。患者は、1単位のインスリン感受性因子(「ISF」)50mg/dL、目標血糖値100mg/dL、及びMPCコントローラのグルコース制御範囲90~180mg/dLを有してよい。
【0044】
方法200の制御ループの1回の繰り返しにおいて、現在のデータ及び条件は、以下のとおりであり得る:CGMは、130mg/dLを報告し、低下中;検査測定器は、130mg/dLの血糖を報告;IOBは、0.2単位;炭水化物(「CHO」)は、0g(すなわち、現在は食事が存在しない)。加えて、MPCは現在、低グルコース(90mg/dL未満、範囲の下限)を予測しており、したがって、予定の基礎速度に対して、一部又は全てのインスリンの送達を保留している。
【0045】
特定の一実施例では、患者は、インスリンのボーラス送達を決定し、以下の情報をボーラス計算機に入力できる;血糖(「BG」)=130mg/dL;CHO=0g。この実施例では、ボーラス計算機は、以下の計算を使用してインスリンボーラスを提案する。
【数1】
【0046】
しかしながら、方法200は、MPCが90mg/dLの低グルコースを予測していることを認識しているため、方法200は、新しい補正0を提案する。
提案された補正=0u
【0047】
本発明は、特定の変形例及び例示的な図面に関して記載されているが、当業者は、本発明が記載される変形例又は図面に限定されないことを認識するであろう。加えて、上記の方法及び工程が特定の順序で生じる特定の事象を示す場合、当業者であれば、特定の工程の順序は修正されてよいこと、また、かかる修正は、本発明の変形例に一致することを認識するであろう。加えて、特定の工程は、可能な場合には並行プロセスで同時に実行されてよく、また上述のように順次に実行されてよい。したがって、本開示の趣旨内にあるか、又は特許請求の範囲に見出される本発明と同等である本発明の変形が存在する限り、本特許はそれらの変形を同様に網羅することを意図している。
【0048】
以下の特許請求の範囲における全ての手段又は工程+機能要素の対応する構造、材料、作用、及び等価物は、存在する場合、具体的に特許請求される他の特許請求される要素と組み合わせて実行するための任意の構造、材料、又は作用を含むことを意図する。本明細書に記載される説明は、例示及び説明の目的で提示されているが、網羅的である、又は開示される形態に限定されることを意図するものではない。本開示の範囲及び趣旨から逸脱することのない、多くの修正及び変形は当業者に明らかになるであろう。本実施形態は、本明細書に記載される1つ以上の態様及び実際的な応用の原理を最良に説明し、当業者が想到される特定の用途に適した様々な修正を有する様々な実施形態について本明細書に記載されるような1つ以上の態様を理解することを可能にするために、選択及び説明された。
図1
図2
図3