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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1335 20060101AFI20221006BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02F1/1335 510
G02F1/1347
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019559237
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2018046209
(87)【国際公開番号】W WO2019117310
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2017240785
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】今奥 崇夫
(72)【発明者】
【氏名】今城 育子
(72)【発明者】
【氏名】内田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】菊池 克浩
(72)【発明者】
【氏名】津田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大峰 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 めぐみ
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-011038(JP,A)
【文献】国際公開第2007/040139(WO,A1)
【文献】特開2004-258372(JP,A)
【文献】特開2006-011409(JP,A)
【文献】特開2015-114386(JP,A)
【文献】特開2013-137551(JP,A)
【文献】国際公開第2014/178178(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104267456(CN,A)
【文献】特開2010-102069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335
G02F 1/13363
G02F 1/1347
G02B 5/30
G09F 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液晶セルを含む第1表示パネルと、
前記第1表示パネルに重ねて配置され、第2液晶セルを含む第2表示パネルと、
前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとの間に配置され、前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとを接合する接合部材と、
前記第1液晶セルの前記接合部材側の面とは反対側の面に設けられた第1偏光板と、
前記第2液晶セルの前記接合部材側の面とは反対側の面に設けられた第2偏光板と、
前記第1液晶セルと前記接合部材との間、及び、前記第2液晶セルと前記接合部材との間の一方に配置された第3偏光板とを備え、
前記第3偏光板は、偏光子と、前記偏光子の前記接合部材側に設けられた第1透明フィルムと、前記偏光子の前記接合部材側とは反対側に設けられた第2透明フィルムとを有し、
前記偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムであり、
前記偏光子の厚みは、26μm以上30μm以下であり、
前記第1透明フィルムは、リン酸系可塑剤を含有していないトリアセチルセルロース系フィルムであり、
前記第3偏光板の単位面積当たりの水分量は、6g/m以下であり、
前記第2透明フィルムは、リン酸系可塑剤を含有していない、
液晶表示装置。
【請求項2】
前記接合部材の厚みは、前記第3偏光板の厚み以上である、
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第2透明フィルムは、(メタ)アクリル樹脂系フィルムである、
請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第2透明フィルムは、リン酸系可塑剤を含有していないトリアセチルセルロース系フィルムである、
請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第3偏光板と前記接合部材との間に拡散層が配置されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1液晶セルと前記接合部材との間、及び、前記第2液晶セルと前記接合部材との間の他方に配置された第4偏光板を備え、
前記第4偏光板は、前記第3偏光板と同じものである、
請求項1~のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第2偏光板は、前記第3偏光板と同じものである、
請求項1~のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第2表示パネルに対向して配置されたバックライトをさらに備え、
前記第2表示パネルは、前記第1表示パネルと前記バックライトとの間に配置されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶セルを含む表示パネルを用いた液晶表示装置は、テレビ又はモニタ等のディスプレイとして利用されている。しかしながら、液晶表示装置は、有機EL(Electro Luminescence)表示装置と比べてコントラスト比が低い。
【0003】
そこで、従来、複数の表示パネルを重ね合わせることで、有機EL表示装置に匹敵する又はそれ以上のコントラスト比を実現できる液晶表示装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
この技術は、前後に配置された2枚の表示パネルのうち、前面側(観察者側)の表示パネルにカラー画像を表示し、背面側(バックライト側)の表示パネルにモノクロ画像を表示することにより、コントラスト比の向上を図るものである。
【0005】
この場合、2枚の表示パネルは、例えば、光学透明粘着シート(OCA:Optically Clear Adhesive)又は光学透明接着樹脂(OCR:Optically Clear Resin)等の接合部材によって貼り合わされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2007/040127号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、2枚の表示パネルが接合部材(接合層)で貼り合わされた液晶表示装置を長時間使用すると、表示画面が色付くことがある。特に、表示画面の中央部が褐色を帯びたように色付くことがある。このように表示画面に色付きが発生すると、表示画像の品質が低下する。
【0008】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、複数の表示パネルをOCA等の接合部材で接合したとしても、表示画像の品質が低下することを抑制できる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示に係る液晶表示装置の一態様は、第1液晶セルを含む第1表示パネルと、前記第1表示パネルに重ねて配置され、第2液晶セルを含む第2表示パネルと、前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとの間に配置され、前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとを接合する接合部材と、前記第1液晶セルの前記接合部材側の面とは反対側の面に設けられた第1偏光板と、前記第2液晶セルの前記接合部材側の面とは反対側の面に設けられた第2偏光板と、前記第1液晶セルと前記接合部材との間、及び、前記第2液晶セルと前記接合部材との間の一方に配置された第3偏光板とを備え、前記第3偏光板は、偏光子と、前記偏光子の前記接合部材側に設けられた第1透明フィルムと、前記偏光子の前記接合部材側とは反対側に設けられた第2透明フィルムとを有し、前記偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムであり、前記偏光子の厚みは、26μm以上30μm以下であり、前記第1透明フィルムは、リン酸系可塑剤を含有していないトリアセチルセルロース系フィルムであり、前記第3偏光板の単位面積当たりの水分量は、6g/m以下であり、前記第2透明フィルムは、リン酸系可塑剤を含有していない
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、表示画像の品質が低下することを抑制できる液晶表示装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る液晶表示装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る液晶表示装置の断面図である。
図3図3は、OCAによって貼合された2つの偏光板の褐色度の経時変化を示す図である。
図4図4は、変形例に係る液晶表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、及び、構成要素の配置位置や接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺等は必ずしも一致していない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。なお、本明細書において、「略」又は「約」とは、製造誤差や寸法公差を含むという意味である。
【0014】
(実施の形態)
まず、実施の形態に係る液晶表示装置1について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態に係る液晶表示装置1の概略構成を示す図である。
【0015】
液晶表示装置1は、前後方向に複数の表示パネルが重ね合わせて配置された画像表示装置の一例であって、静止画像又は動画像の画像を表示する。本実施の形態において、液晶表示装置1は、各々が液晶セルを含む2枚の表示パネルによって構成されている。
【0016】
図1に示すように、液晶表示装置1は、第1表示パネル100と、第1表示パネル100に重ねて配置された第2表示パネル200とを備える。本実施の形態において、第1表示パネル100は、第2表示パネル200の前方(前面側)に配置されている。つまり、第2表示パネル200は、第1表示パネル100の後方(背面側)に配置されている。
【0017】
液晶表示装置1は、さらに、第2表示パネル200に対向するバックライト300を備える。具体的には、バックライト300は、第2表示パネル200の背面側に配置されている。つまり、第2表示パネル200は、第1表示パネル100とバックライト300との間に配置されており、第1表示パネル100、第2表示パネル200及びバックライト300は、この順で前方から後方に向かって配置されている。
【0018】
第1表示パネル100は、第2表示パネル200よりも観察者(ユーザ)に近い位置に配置されるメインパネルであって、観察者が視認する画像を表示する。本実施の形態において、第1表示パネル100は、カラー画像を表示する。
【0019】
第1表示パネル100は、カラー画像が表示される第1画像表示領域101(アクティブ領域)を有する。第1画像表示領域101は、マトリクス状に配列された複数の第1画素によって構成されている。第1画素は、赤色用画素、緑色用画素及び青色用画素によって構成されている。なお、第1画像表示領域101にカラー画像を表示するために、第1表示パネル100には、第1ソースドライバ102及び第1ゲートドライバ103が設けられている。
【0020】
第2表示パネル200は、第1表示パネル100の背面側に配置されるサブパネルである。本実施の形態において、第2表示パネル200は、モノクロ画像を表示する。
【0021】
第2表示パネル200は、モノクロ画像が表示される第2画像表示領域201(アクティブ領域)を有する。第2画像表示領域201は、マトリクス状に配列された複数の第2画素によって構成されている。なお、第2画像表示領域201にモノクロ画像を表示するために、第2表示パネル200には、第2ソースドライバ202及び第2ゲートドライバ203が設けられている。
【0022】
なお、第1画像表示領域101の画素数と第2画像表示領域201の画素数とは同じであってもよいし異なっていてもよいが、第1画像表示領域101の画素数の方が第2画像表示領域201の画素数よりも多い方がよい。また、本実施の形態において、第2画像表示領域201における複数の第2画素は、第1画像表示領域101における複数の第1画素に対応して配列されている。具体的には、1つの第2画素が、赤色用画素、緑色用画素及び青色用画素の3つの第1画素に対応している。
【0023】
このように構成される第1表示パネル100及び第2表示パネル200は、例えば、IPS(In Plane Switching)方式又はFFS(Fringe Field Switching)方式等の横電界方式によって駆動制御される。なお、第1表示パネル100及び第2表示パネル200の駆動方式は、横電界方式に限るものではなく、VA(Vertical Alignment)方式又はTN(Twisted Nematic)方式等であってもよい。
【0024】
バックライト300は、第1表示パネル100及び第2表示パネル200に向けて光を照射する。バックライト300から出射する光は、第2表示パネル200に入射し、第2表示パネル200を透過した後、第1表示パネル100に入射する。
【0025】
本実施の形態において、バックライト300は、平面状の均一な拡散光(散乱光)を照射する面光源ユニットである。バックライト300は、例えば、LED(Light Emitting Diode)を光源とするLEDバックライトである。一例として、バックライト300は、複数のLEDが行方向及び列方向の二次元状に配置された直下型のバックライトである。
【0026】
なお、バックライト300は、直下型に限るものではなく、エッジ型であってもよい。また、バックライト300の光源は、LEDに限るものではなく、冷陰極管等であってもよい。さらに、バックライト300は、光源(LED)からの光を拡散させるための拡散板又は光の配光を制御するためのプリズムシート等の光学部材を有していてもよい。
【0027】
本実施の形態における液晶表示装置1では、第2表示パネル200と第1表示パネル100とが同一の入力映像信号(共通映像ソース)によって駆動制御される。具体的には、第2表示パネル200で表示されるモノクロ画像は、第1表示パネル100で表示されるカラー画像と同じ図柄の画像である。つまり、第2表示パネル200では、第1表示パネル100のカラー画像に同期させてモノクロ画像が表示される。
【0028】
したがって、液晶表示装置1は、第1表示パネル100の第1ソースドライバ102及び第1ゲートドライバ103を制御する第1タイミングコントローラ410と、第2表示パネル200の第2ソースドライバ202及び第2ゲートドライバ203を制御する第2タイミングコントローラ420と、第1タイミングコントローラ410及び第2タイミングコントローラ420に画像データを出力する画像処理部430とを備える。
【0029】
画像処理部430は、外部から送信された入力映像信号Dataを受信し、画像処理を実行した後、第1タイミングコントローラ410に第1画像データDAT1を出力するとともに、第2タイミングコントローラ420に第2画像データDAT2を出力する。また画像処理部430は、第1タイミングコントローラ410及び第2タイミングコントローラ420に同期信号等の制御信号(図1では省略)を出力する。第1画像データDAT1は、カラー表示用の画像データであり、第2画像データDAT2は、モノクロ表示用の画像データである。これにより、液晶表示装置1では、同じ入力映像信号によって生成されたカラー画像とモノクロ画像とが同期して表示される。
【0030】
このように、液晶表示装置1では、第1表示パネル100及び第2表示パネル200の2つの液晶パネルを重ね合わせて、第1表示パネル100にカラー画像を表示し、第2表示パネル200にモノクロ画像を表示している。これにより、カラー画像にモノクロ画像が重畳されるので、黒が引き締まったカラー画像を表示することができる。したがって、コントラスト比を向上させることができる。例えば、第1表示パネル100及び第2表示パネル200の各表示パネルのコントラスト比が1000:1以上である場合、第1表示パネル100及び第2表示パネル200を重ね合わせることによって、100万:1以上の高いコントラスト比を実現することができる。
【0031】
また、本実施の形態における液晶表示装置1は、HDR(High Dynamic Range)対応の画像表示装置であり、バックライト300として、ローカルディミング制御を行うことができるバックライトを用いている。これにより、さらに高コントラスト比かつ高画質のカラー画像を表示することができる。
【0032】
次に、液晶表示装置1の具体的な構造について、図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1に係る液晶表示装置1の構成を示す断面図である。なお、図2において、バックライト300は、模式的に表されている。
【0033】
図2に示すように、液晶表示装置1は、第1表示パネル100と第2表示パネル200とを接合する接合部材500を備える。接合部材500は、第1表示パネル100と第2表示パネル200との間に配置されている。具体的な構造は図示しないが、接合部材500によって接合された第1表示パネル100及び第2表示パネル200は、1つの液晶モジュールとして、バックライト300とともに、金属製又は樹脂製の保持部材(フレーム又はシャーシ)に保持される。
【0034】
第1表示パネル100及び第2表示パネル200は、液晶セル(液晶パネル)を含む液晶表示パネルである。具体的には、第1表示パネル100は、第1液晶セル10と、第1偏光板31及び第3偏光板33とを有する。また、第2表示パネル200は、第2液晶セル20と、第2偏光板32及び第4偏光板34とを有する。
【0035】
第2表示パネル200は、第1表示パネル100の背面側に配置されているので、第2表示パネル200の第2液晶セル20は、第1表示パネル100の第1液晶セル10の背面側に配置されている。
【0036】
第1液晶セル10は、第1TFT(Thin Film Transistor)基板11と、第1TFT基板11に対向する第1対向基板12と、第1TFT基板11及び第1対向基板12の間に配置された第1液晶層13とを備える。本実施の形態において、第1液晶セル10は、第1対向基板12が第1TFT基板11よりも前方に位置するように配置されている。つまり、第1液晶セル10は、第1TFT基板11がバックライト300側に位置するように配置されている。
【0037】
第1TFT基板11は、ガラス基板等の透明基板にTFT層(不図示)が形成されたTFTアレイ基板である。図示しないが、TFT層には、第1画像表示領域101(図1参照)の各第1画素に対応して設けられた複数のTFTと、各TFTに電圧を供給するための配線とが形成されている。また、TFT層の平坦化層上には、第1液晶層13に電圧を印加するための画素電極が形成されている。さらに、第1TFT基板11には、画素電極に対向する共通電極も形成されている。つまり、第1TFT基板11は、互いに対向する画素電極及び共通電極を含む。第1TFT基板11において、TFT、画素電極及び対向電極は画素ごとに形成されており、また、画素電極及び対向電極を覆うように配向膜が形成されている。
【0038】
第1対向基板12は、ガラス基板等の透明基板に画素形成層としてカラーフィルタ層が形成されたCF基板である。第1対向基板12の画素形成層は、複数の第1画素の各々に対応する複数の開口部が形成されたブラックマトリクスと、ブラックマトリクスの各開口部に形成された複数のカラーフィルタとを有する。ブラックマトリクスは、例えば格子状のパターンで形成される。複数のカラーフィルタの各々は、赤色画素に対応する赤色用カラーフィルタ、緑色画素に対応する緑色用カラーフィルタ、又は、青色画素に対応する青色用カラーフィルタであり、1つの第1画素に対応して形成されている。なお、画素形成層を覆うようにオーバーコート層が形成されている。また、オーバーコート層の表面には配向膜が形成されている。
【0039】
第1液晶層13は、第1TFT基板11と第1対向基板12との間に封止されている。第1液晶層13は、例えば、第1TFT基板11及び第1対向基板12の外周端部に沿ってシール部材を額縁状に形成することで封止される。第1液晶層13の液晶材料は、駆動方式に応じて適宜選択することができる。
【0040】
第2液晶セル20は、第2TFT基板21と、第2TFT基板21に対向する第2対向基板22と、第2TFT基板21及び第2対向基板22の間に配置された第2液晶層23とを備える。本実施の形態において、第2液晶セル20は、第2対向基板22が第2TFT基板21よりも前方に位置するように配置されている。つまり、第2液晶セル20は、第2TFT基板21がバックライト300側に位置するように配置されている。なお、第2液晶セル20は、第2TFT基板21が第2対向基板22よりも前方に位置するように配置されていてもよい。
【0041】
第2TFT基板21は、第1TFT基板11と同様の構成であり、ガラス基板等の透明基板にTFT層(不図示)が形成されたTFTアレイ基板である。図示しないが、第2TFT基板21のTFT層には、第2画像表示領域201(図1参照)の各第2画素に対応して設けられたTFTと、各TFTに電圧を供給するための配線とが形成されている。また、第2TFT基板21にも第2液晶層23に電圧を印加するための画素電極と画素電極に対向する共通電極とが形成されている。つまり、第2TFT基板21は、互いに対向する画素電極及び共通電極を含む。第2TFT基板21において、TFT、画素電極及び対向電極は第2画素ごとに形成されており、また、画素電極及び対向電極を覆うように配向膜が形成されている。
【0042】
第2対向基板22は、ガラス基板等の透明基板に画素形成層が形成された基板である。第2対向基板22の画素形成層は、複数の第2画素の各々に対応する複数の開口部が形成されたブラックマトリクスを有する。ブラックマトリクスは、例えば格子状のパターンで形成される。なお、画素形成層を覆うようにオーバーコート層が形成されている。また、オーバーコート層の表面には配向膜が形成されている。本実施の形態において、第2表示パネル200はモノクロ画像を表示するので、第2対向基板22の画素形成層には、カラーフィルタが形成されていない。したがって、第2対向基板22の画素形成層のブラックマトリクスの開口部内にはオーバーコート層が充填されている。
【0043】
第2液晶層23は、第2TFT基板21と第2対向基板22との間に封止されている。第2液晶層23は、例えば、第2TFT基板21及び第2対向基板22の外周端部に沿ってシール部材を額縁状に形成することで封止される。第2液晶層23の液晶材料は、駆動方式に応じて適宜選択することができる。
【0044】
上記のように、液晶表示装置1には、第1偏光板31、第2偏光板32、第3偏光板33及び第4偏光板34の4つの偏光板が用いられている。具体的には、第1偏光板31及び第3偏光板33は、第1液晶セル10を挟むように配置されており、第4偏光板34及び第2偏光板32は、第2液晶セル20を挟むように配置されている。また、第1偏光板31、第3偏光板33、第4偏光板34及び第2偏光板32は、観察者側からバックライト300に向かって、この順で配置されている。
【0045】
本実施の形態において、第1偏光板31及び第2偏光板32は、第1液晶セル10及び第2液晶セル20よりも外側の位置に配置されている。
【0046】
具体的には、第1偏光板31は、第1液晶セル10の前面(観察者側の面)に設けられている。つまり、第1偏光板31は、第1液晶セル10の接合部材500側の面とは反対側の面に設けられている。本実施の形態において、第1偏光板31は、接着層を介して第1液晶セル10の第1対向基板12の外面に貼り合わされている。
【0047】
また、第2偏光板32は、第2液晶セル20の背面(バックライト300側の面)に設けられている。つまり、第2偏光板32は、第2液晶セル20の接合部材500側の面とは反対側の面に設けられている。本実施の形態において、第2偏光板32は、接着層を介して第2液晶セル20の第2TFT基板21の外面に貼り合わされている。
【0048】
一方、第3偏光板33及び第4偏光板34は、第1液晶セル10と第2液晶セル20との間に配置されている。つまり、第3偏光板33及び第4偏光板34は、第1液晶セル10と第2液晶セル20とで挟まれた状態になっている。
【0049】
第3偏光板33は、第1液晶セル10と接合部材500との間、及び、第2液晶セル20と接合部材500との間の一方に配置されており、第4偏光板34は、第1液晶セル10と接合部材500との間、及び、第2液晶セル20と接合部材500との間の他方に配置されている。
【0050】
本実施の形態では、第1液晶セル10と接合部材500との間に第3偏光板33が配置され、接合部材500と第2液晶セル20との間に第4偏光板34が配置されている。
【0051】
具体的には、第3偏光板33は、第1液晶セル10の背面(バックライト300側の面)に設けられている。つまり、第3偏光板33は、第1液晶セル10の接合部材500側の面に設けられている。本実施の形態において、第3偏光板33は、接着層を介して第1液晶セル10の第1TFT基板11の外面に貼り合わされている。
【0052】
また、第4偏光板34は、第2液晶セル20の前面(観察者側の面)に配置されている。つまり、第4偏光板34は、第2液晶セル20の接合部材500側の面に設けられている。本実施の形態において、第4偏光板34は、粘着層を介して第2液晶セル20の第2対向基板22の外面に貼り合わされている。
【0053】
このように配置された4枚の偏光板のうち、第1液晶セル10を挟む第1偏光板31と第3偏光板33とは、偏光軸が互いに直交するように配置されている。つまり、第1偏光板31と第3偏光板33とは、クロスニコルの位置関係となるように配置されている。
【0054】
同様に、第2液晶セル20を挟む第4偏光板34と第2偏光板32とは、偏光軸が互いに直交するように配置されている。つまり、第4偏光板34と第2偏光板32とは、クロスニコルの位置関係となるように配置されている。
【0055】
また、第1液晶セル10と第2液晶セル20との間に位置する第3偏光板33と第4偏光板34とは、互いの偏光軸が略平行となるように配置されている。したがって、第1偏光板31と第2偏光板32とは、互いの偏光軸とが略平行となるように配置されている。具体的には、第3偏光板33の吸収軸と第4偏光板34の吸収軸とが略平行であり、第1偏光板31の吸収軸と第2偏光板32の吸収軸とが略平行となっている。
【0056】
第1偏光板31、第2偏光板32、第3偏光板33及び第4偏光板34の4つの偏光板の各々は、例えば樹脂材料からなるシート状の偏光フィルムであり、偏光子と、偏光子に積層された透明保護フィルムとを含む。偏光子と透明保護フィルムとは、例えば接着剤によって貼り合わされる。また、偏光子の両面を保護するために、透明保護フィルムは、偏光子の両面の各々に設けられているとよい。つまり、偏光子は、一対の透明保護フィルムで挟まれているとよい。
【0057】
4つの偏光板における各偏光子は、例えば、樹脂フィルムにヨウ素等の二色性物質を吸着させて延伸等により分子を配向させたものである。各偏光子の樹脂フィルムとしては、ポリビニルアルコール(PVA;polyvinyl alcohol)系フィルムを用いることができる。
【0058】
各偏光子に適用されるPVA系フィルムの材料としては、ポリビニルアルコール(PVA)又はその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等を用いることができるが、その他に、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものを用いてもよい。なお、ポリビニルアルコールは、一例として、重合度が1000~10000程度で、ケン化度が80~100モル%程度のものが用いられる。
【0059】
また、各偏光子を構成するPVA系フィルムには、可塑剤等の添加剤が含まれていてもよい。可塑剤としては、ポリオール及びその縮合物等を用いることができ、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を用いることができる。可塑剤の使用量は、特に制限されないが、PVA系フィルムに可塑剤を添加する場合、PVA系フィルム中には20重量%以下の可塑剤が添加されているとよい。
【0060】
また、4つの偏光板における各透明保護フィルムは、透明樹脂材料によって構成されており、偏光子を保護する保護フィルムとして機能するとともに、偏光子を支持する基材フィルムとして機能する。透明保護フィルムの材料としては、トリアセチルセルロース(TAC;Triacetylcellulose)等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0061】
第1偏光板31、第2偏光板32、第3偏光板33及び第4偏光板34の4つの偏光板において、第3偏光板33及び第4偏光板34の構成は、第1偏光板31及び第2偏光板32の構成と異なっている。
【0062】
具体的には、第3偏光板33は、偏光子33aと、偏光子33aの一方の面に積層された透明保護フィルムである第1透明フィルム33bと、偏光子33aの他方の面に積層された透明保護フィルムである第2透明フィルム33cとを有する。つまり、偏光子33aは、第1透明フィルム33bと第2透明フィルム33cとによって挟まれている。
【0063】
偏光子33aは、ヨウ素を含有するPVA系フィルムである。偏光子33aの厚みは、26μm以上30μm以下である。
【0064】
第1透明フィルム33bは、偏光子33aの接合部材500側に設けられている。具体的には、第1透明フィルム33bは、接着剤等によって偏光子33aの接合部材500側の面に貼り合わされている。第1透明フィルム33bは、リン酸系可塑剤を含有していないTAC系フィルムである。つまり、第1透明フィルム33bであるTAC系フィルムに含まれるリン酸系可塑剤は、0重量%である。
【0065】
なお、本明細書において、「リン酸系可塑剤を含有していないTAC系フィルム」とは、TAC系フィルムにリン酸系可塑剤を意図的に含有していないことを意味する。したがって、意図せずに不純物として微量のリン酸系可塑剤がTAC系フィルムに含有してしまった場合は、「リン酸系可塑剤を含有していないTAC系フィルム」の概念に含まれる。
【0066】
第2透明フィルム33cは、偏光子33aの接合部材500側とは反対側(第1液晶セル10側)に設けられている。具体的には、第2透明フィルム33cは、接着剤等によって偏光子33aの第1液晶セル10側の面に貼り合わされている。本実施の形態において、第2透明フィルム33cは、(メタ)アクリル樹脂系フィルムであるが、これに限るものではなく、第1透明フィルム33bと同様に、TAC系フィルムであってもよい。この場合、第2透明フィルム33cにもリン酸系可塑剤が含まれていない方がよい。
【0067】
なお、第1透明フィルム33b及び第2透明フィルム33cの厚みは、偏光子33aよりも厚い方がよいが、これに限るものではなく、第1透明フィルム33b及び第2透明フィルム33cの厚みは、偏光子33aよりも薄くてもよい。
【0068】
このように構成される第3偏光板33は、第1偏光板31及び第2偏光板32よりも水分量が少ない。つまり、第3偏光板33に含まれる水分量は、第1偏光板31に含まれる水分量よりも少なく、また、第2偏光板32に含まれる水分量よりも少なくなっている。具体的には、第3偏光板33の単位面積当たりの水分量は、6g/m以下である。一例として、第3偏光板33の単位面積当たりの水分量は、約5.3g/mであり、第1偏光板31及び第2偏光板32の単位面積当たりの水分量は、約6.3g/mである。
【0069】
さらに、第3偏光板33における第1透明フィルム33b及び第2透明フィルム33cは、透湿度(水分透過率)が高い方がよい。これにより、偏光子33a中の水分が第1透明フィルム33b及び第2透明フィルム33cを透過して第3偏光板33の外部に拡散されやすくなるので、後述するPVAのポリエン化による第3偏光板33の透過率の低下が抑制される傾向がある。
【0070】
また、第4偏光板34は、第3偏光板33と同様に、偏光子と、偏光子の両面を保護する透明保護フィルムとを含む。具体的には、第4偏光板34は、偏光子34aと、偏光子34aの一方の面に積層された透明保護フィルムである第1透明フィルム34bと、偏光子34aの他方の面に積層された透明保護フィルムである第2透明フィルム34cとを有する。つまり、偏光子34aは、第1透明フィルム33bと第2透明フィルム33cとによって挟まれている。
【0071】
本実施の形態において、第4偏光板34は、第3偏光板33と同じものである。具体的には、第4偏光板34と第3偏光板33とは同じ製品である。したがって、偏光子34aの材質及び厚み等は、偏光子33aの材質及び厚み等と同じである。また、第1透明フィルム34bの材質及び厚み等も、第1透明フィルム33bの材質及び厚み等と同じであり、第2透明フィルム34cの材質及び厚み等も、第2透明フィルム33cの材質及び厚み等と同じである。なお、第4偏光板34に含まれる水分量も、第3偏光板33と同じであり、約5.3g/mである。
【0072】
第4偏光板34は、第1透明フィルム34b及び第2透明フィルム34cのうち第1透明フィルム33bが接合部材500側に位置するように配置されている。したがって、第4偏光板34において、リン酸系可塑剤を含有していないTAC系フィルムである第1透明フィルム34bが偏光子34aの接合部材500側の面に貼り合わされており、(メタ)アクリル樹脂系フィルムである第2透明フィルム34cが偏光子34aの接合部材500側とは反対側の面(第2液晶セル20側の面)に貼り合わされている。
【0073】
なお、第1偏光板31及び第2偏光板32は、第3偏光板33と同様に、偏光子の両面の各々に透明保護フィルムが積層されているが、第3偏光板33とは異なる製品である。具体的には、第1偏光板31及び第2偏光板32は、偏光子がヨウ素を含有するPVA系フィルムである点では第3偏光板33及び第4偏光板34と同じであるが、偏光子を挟む2枚の透明保護フィルムがいずれもTACフィルムである点で第3偏光板33及び第4偏光板34と異なる。
【0074】
第1液晶セル10に第1偏光板31及び第3偏光板33が貼り合わされた第1表示パネル100と、第2液晶セル20に第4偏光板34及び第2偏光板32が貼り合わされた第2表示パネル200とは、接合部材500を介して接合されている。具体的には、第1表示パネル100と第2表示パネル200とは、接合部材500によって貼り合わされている。
【0075】
本実施の形態において、接合部材500は、第1表示パネル100の第3偏光板33と第2表示パネル200の第4偏光板34との間に配置されており、第3偏光板33と第4偏光板34とを接合している。
【0076】
接合部材500は、フィルム状の光学透明粘着シート(OCA)等の粘接着剤であり、例えばアクリル系等の樹脂材料によって構成されている。なお、接合部材500は、積層された複数の粘着樹脂シートによって構成されていてもよい。
【0077】
また、接合部材500の厚みは、第3偏光板33の偏光子33aの厚み以上であるとよい。本実施の形態において、接合部材500の厚みは、第3偏光板33の全体の厚みよりも厚くなっている。
【0078】
次に、本実施の形態に係る液晶表示装置1の作用効果について、本開示に至った経緯も含めて説明する。
【0079】
液晶表示装置に用いられる表示パネルは、液晶セルと、液晶セルを挟む一対の偏光板とを有する。従来、このような表示パネルを複数重ね合わせてOCA等の接合部材によって貼り合わせることで、高コントラスト比の画像表示装置が検討されている。
【0080】
しかしながら、複数の表示パネルが接合部材で貼り合わされた液晶表示装置を長時間使用すると、表示画面が色付くことがある。特に、表示画面の中央部が褐色を帯びたように色付くことがある。このように表示画面に色付きが発生すると、表示画像の品質が低下する。
【0081】
本発明者らは、このような表示画面の色付きの発生原因について検討したところ、液晶セルに貼り合わされた偏光板が変色していることが分かった。特に、2枚の表示パネルを重ね合わせた液晶表示装置では、3枚又は4枚の偏光板が用いられるが、これらの偏光板のうち2つの液晶セルの間に配置された偏光板が変色することが分かった。特に、偏光板の面内中央部が褐色に変色することが分かった。
【0082】
本発明者らは、このような偏光板の変色の原因について鋭意検討した結果、偏光板の材料と偏光板に含まれる水分とに起因して、偏光板が変色することを突き止めた。以下、この点について説明する。
【0083】
偏光板は、偏光子と、偏光子に積層された透明保護フィルムとを有する。偏光子の材料としては、例えば、ヨウ素を含有するPVA系フィルムが用いられる。
【0084】
PVA系フィルムのPVAは、加熱されると、脱水してポリエン化する。つまり、PVAにポリエン構造(-(C=C)-)が形成され、PVAが変性する。このように、PVAがポリエン化すると、偏光板が変色し、可視光を吸収する。
【0085】
また、偏光板の透明保護フィルムの材料としては、例えば、TAC系フィルムが用いられる。この場合、TAC系フィルムに柔軟性等の機能を持たせるために、リン酸系可塑剤を含有させることがある。
【0086】
ここで、リン酸系可塑剤を含有するTAC系フィルムは、高温高湿度の環境下に長時間曝されると、リン酸系可塑剤に含まれる酸不純物によってTAC系フィルムが加水分解して酸が生成される。具体的には、TAC系フィルムが加水分解すると、酢酸が生成される。
【0087】
このとき、偏光板内に水分が含まれていると、リン酸系可塑剤の酸不純物によるTAC系フィルムの加水分解が促進されることになり、偏光板中に酢酸が多く存在することになる。
【0088】
ここで、PVAのポリエン化は、主に脱水反応によるものであるが、酸の存在により促進される。つまり、酸が触媒となってPVAの脱水反応が促進する。
【0089】
したがって、上記のように、リン酸系可塑剤の酸不純物によってTAC系フィルムが加水分解して酸(酢酸)が生成されると、この酸が触媒となってPVAの脱水反応が促進し、PVAのポリエン化が進行することになる。
【0090】
しかも、一旦PVAのポリエン化が生じると、PVAの脱水反応によって水が生じて偏光板内の水分量が増加し、TAC系フィルムが加水分解しやすくなり、酢酸がより発生しやすくなる。この結果、PVAのポリエン化が加速度的に進行することになる。
【0091】
したがって、液晶表示装置における偏光板は、例えばバックライトによって加熱されることで、偏光板の偏光子を構成するPVA系フィルムのPVAが脱水反応することになるが、この際、偏光板に含まれる水分によって偏光板の透明保護フィルムを構成するTAC系フィルムが加水分解して生成された酢酸が触媒となって脱水反応が促進することとなる。この結果、PVAのポリエン化が進行し、偏光板が変色する。
【0092】
特に、2枚の液晶セルの間に位置する偏光板の主面は、接合部材に密着して封止された状態になっている。このため、偏光板の周辺部では、端部から幾分水分が抜けていくと考えられるが、偏光板の面内中央部では、水分が抜けにくい。この結果、偏光板の面内中央部は、偏光板の周辺部よりも水分が多く存在しているため、TAC系フィルムの加水分解が促進されて酢酸が多く発生しやすい。また、偏光板の面内中央部は、偏光板の周辺部と比べて高温になりやすいため、PVAのポリエン化が進行しやすい。
【0093】
したがって、偏光板の面内中央部では、TACフィルムの加水分解により生成された酢酸(触媒)による反応促進と偏光板の高温による反応促進とが相まって、PVAの脱水反応が一層促進されることとなり、PVAのポリエン化が加速度的に進行することになる。逆に、偏光板の周辺部では反応系の温度が上がりにくいため、PVAの脱水反応が進みにくい。この結果、2枚の液晶セルの間に配置された偏光板では、面内中央部が褐色に変色することになる。
【0094】
このように、本発明者らは、液晶セルに偏光板が貼り合わされた表示パネル同士を接合部材で接合することで液晶表示装置を構成する場合に、偏光子がPVA系フィルムで、透明保護フィルムがリン酸系可塑剤を含有するTAC系フィルムである偏光板を用いると、偏光板が変色するということを突き止めた。
【0095】
本開示は、このような知見に基づいてなされたものであり、本発明者らは、2つの液晶セルの間に配置された偏光板について、偏光板における偏光子及び透明保護フィルムの材料と偏光板に含まれる水分量とを規定することによって、偏光板の変色を抑制できることを見出した。
【0096】
具体的には、本実施の形態における液晶表示装置1では、第1液晶セル10と接合部材500との間に配置された第3偏光板33について、偏光子33aとしてヨウ素を含有するPVA系フィルムを用いて、第1透明フィルム33bとしてリン酸系可塑剤が含有していないTAC系フィルムを用いて、さらに、第3偏光板33の単位面積当たりの水分量を6g/m以下にしている。
【0097】
このように、第3偏光板33の単位面積当たりの水分量を6g/m以下の少量にするとともに、第1透明フィルム33bのTAC系フィルムにリン酸系可塑剤を含有させないことによって、TAC系フィルムが加水分解することを抑制できる。これにより、TAC系フィルムの加水分解によってPVAの脱水反応の触媒となる酢酸が生成することを抑制することができるので、PVAの脱水反応が生じることを抑えることができる。この結果、PVAのポリエン化を抑制することができるので、第3偏光板33が変色することを抑制することができる。
【0098】
しかも、このように構成される第3偏光板33は、偏光子の両側の2つの透明保護フィルムがいずれもTAC系フィルムで構成された第1偏光板31及び第2偏光板32と比べて耐候性及び耐熱性にも優れている。したがって、第1液晶セル10と第2液晶セル20との間に配置する偏光板として第3偏光板33を用いることで、耐候性及び耐熱性に優れた信頼性が高い液晶表示装置を実現することができる。
【0099】
また、本実施の形態に係る液晶表示装置1では、第1表示パネル100と第2表示パネル200とが接合部材500によって接合されており、第1表示パネル100の第3偏光板33は、接合部材500に密着している。
【0100】
接合部材500としては、例えばアクリル樹脂等のOCAが用いられるが、OCAが高温環境下に曝されると、OCAが気化して酸を発生する。例えば、OCAがアクリル樹脂で構成されている場合、OCAが気化してアクリル酸が発生する。
【0101】
この場合、接合部材500の気化によって生成した酸が第3偏光板33の偏光子33aに移動すると、TAC系フィルムの加水分解によって生成される酸だけではなく、接合部材500の気化によって生成した酸も触媒となって偏光子33aを構成するPVAの脱水反応を促進させるおそれがある。
【0102】
しかしながら、本実施の形態に係る液晶表示装置1では、第3偏光板33の単位面積当たりの水分量を6g/m以下の少量にするとともに、偏光子33aの接合部材500側に設けられた第1透明フィルム33bを構成するTAC系フィルムにリン酸系可塑剤を含有させていないので、TAC系フィルムの加水分解による酢酸の発生を抑制することができ、PVAのポリエン化を抑制できる。
【0103】
以上のとおり、本実施の形態に係る液晶表示装置1によれば、第1液晶セル10と接合部材500との間に配置された第3偏光板33の変色を抑制することができる。これにより、表示画面に色付きが発生することを抑制でき、表示画像の品質が低下することを抑制することができる。
【0104】
ここで、本発明者らは、偏光板の材料及び水分量と偏光板の変色との関係について実験を行ったので、以下説明する。
【0105】
この実験では、200μm角のガラス板に偏光板を貼った基板を2つ用意し、この2つの基板を偏光板同士が対面するように配置してOCAによって貼合したものをサンプルとして用いた。この実験で用いた偏光板は、いずれも、PVAからなる偏光子と、偏光子の両面に貼り合わされた透明フィルムとを有する。また、本実験では、サンプルA~Dの4種類のサンプルを用意した。サンプルA~Dは、ガラス板がいずれも同じであり、偏光板の透明フィルムの材料、偏光板に含まれる水分量及びOCAを主として変更したものである。
【0106】
具体的には、サンプルA、Bでは、偏光子の厚みが28μmであり、偏光板の単位面積当たりの水分量が6.3g/mで、リン酸系可塑剤としてリン酸トリフェニル(TPP)を含有する透明フィルムで構成された偏光板を用い、また、OCAとしては、サンプルAでは厚みが600μmのアクリル系のものを用い、サンプルBでは厚みが1000μmのアクリル系のものを用いた。なお、サンプルA、Bは、第1偏光板31に相当するものである。
【0107】
一方、サンプルC、Dでは、偏光子の厚みが28μmであり、偏光板の単位面積当たりの水分量が5.3g/mで、偏光子のOCA側に設けられたリン酸系可塑剤を含有しない透明フィルムと、偏光子のガラス板側に設けられた(メタ)アクリル樹脂系フィルムからなる透明フィルムと、を含む偏光板を用い、また、OCAとしては、サンプルCでは厚みが600μmのアクリル系のものを用い、サンプルDでは厚みが1000μmのアクリル系のものを用いた。なお、サンプルC、Dは、第3偏光板33に相当するものである。
【0108】
そして、本実験では、温度が80℃で湿度が3%の環境下でサンプルA~Dを2500時間放置し、各サンプルの色の変化を確認することで、耐久性を確認した。具体的には、色味の変化が大きいものを耐久性が無いと評価し、色味の変化が小さいものを耐久性があると評価した。その結果を以下の表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1に示すように、サンプルC、Dは、サンプルA、Bと比べて、長時間経過後における色の変化が小さく、耐久性に優れていることが分かる。
【0111】
さらに、本発明者らは、この実験結果から、第1表示パネル100と第2表示パネル200とを接合する接合部材500の厚みを厚くすればするほど、第3偏光板33の褐色を抑制できるのではないかと考え、このことについても実験を行った。この実験結果について、以下説明する。
【0112】
この実験では、上記と同じサンプルA及びサンプルBを用いた。そして、温度が80℃で湿度が3%の環境下でサンプルA及びサンプルBを放置して、面色度計によってサンプルA及びサンプルBの各々の色度を経時測定した。このとき、各サンプルの周辺部と中央部の色度差(周辺部の色度-中央部の色度)をV’値とし、このV’値を用いて、サンプルA及びサンプルBの「褐色度」を評価した。
【0113】
この実験結果を図3に示す。図3は、OCAによって貼合された2つの偏光板の褐色度の経時変化を示す図である。図3において、縦軸は、V’値の比を示しており、縦軸の数値が低いほど、サンプルの中央部が褐色の度合いが高くなることを示している。つまり、縦軸の数値が低いほど褐色化していることを示している。また、図3において、横軸は、時間(h)を示している。
【0114】
図3において、破線は、サンプルA(OCA600μm厚)の色度の経時変化を示しており、実線は、サンプルB(OCA1000μm厚)の色度の経時変化を示している。
【0115】
図3に示すように、サンプルBは、サンプルAと比べて、褐色しにくいことが分かる。特に、サンプルAは、1000時間を超えたあたりから褐色の進行度が大きくなって褐色化が目立つ傾向にあるが、サンプルBは、1000時間を超えても褐色の進行度が緩やかであり、ほとんど褐色化しないことが分かる。このように、OCAの厚みが厚くなると、褐色化しにくい傾向にあり、逆に、OCAの厚みが薄くなると、褐色化しやすい傾向にあることが分かる。
【0116】
この実験結果から、第1表示パネル100と第2表示パネル200とを接合する接合部材500の厚みを厚くすればするほど、第3偏光板33が褐色に変色することを抑制できることが分かった。
【0117】
このように接合部材500の厚みを厚くすることによって第3偏光板33の褐色化を抑制できる一つの要因は、接合部材500の厚みを厚くすることで、第3偏光板33に含まれる水分を接合部材500で吸収することができる量(水吸収能力)が大きくなったからであると考えられる。つまり、接合部材500の厚みを厚くすることで、第3偏光板33に含まれる水分量を減少させることが可能となったからであると考えられる。このように、第3偏光板33に含まれる水分量を減少させることで、第1透明フィルム33bを構成するTAC系フィルムの加水分解による酸の発生を効果的に抑制することができる。これにより、偏光子33aを構成するPVAのポリエン化を抑制することができ、第3偏光板33が褐色に変色することを抑制できる。
【0118】
そこで、本実施の形態に係る液晶表示装置1では、接合部材500の厚みを厚くするために、接合部材500の厚みを第3偏光板33の偏光子33aの厚み以上にしている。
【0119】
これにより、第1表示パネル100と第2表示パネル200とが接合部材500によって接合されて、第3偏光板33が第1液晶セル10と接合部材500との間に配置された場合であっても、第3偏光板33が変色することを効果的に抑制することができる。したがって、表示画像の品質が低下することを一層抑制することができる。
【0120】
なお、接合部材500の厚みは、第3偏光板33の全体の厚みよりも厚い方がよい。また、本実施の形態では、接合部材500の厚みは、第4偏光板34の厚みよりも厚くなっており、さらに、第1偏光板31及び第2偏光板32の厚みよりも厚くなっている。
【0121】
また、本実施の形態に係る液晶表示装置1において、第3偏光板33の第2透明フィルム33cは、(メタ)アクリル樹脂系フィルムである。
【0122】
この構成により、斜め視野角を改善することができる。これにより、表示画像の品質を向上させることができる。
【0123】
また、本実施の形態における液晶表示装置1では、第2液晶セル20と接合部材500との間に第4偏光板34が配置されている。そして、第4偏光板34は、第3偏光板33と同じものである。
【0124】
これにより、第4偏光板34についても、TAC系フィルムの加水分解によってPVAの脱水反応の触媒となる酢酸が生成することを抑制することができる。この結果、第4偏光板34についても、PVAの脱水反応が生じることを抑えることができ、PVAのポリエン化を抑制することができる。この結果、第4偏光板34が変色することも抑制することができる。したがって、表示画像の品質が低下することを一層抑制することができる。
【0125】
(変形例)
以上、本開示に係る液晶表示装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0126】
例えば、図4に示される変形例に係る液晶表示装置2のように、第3偏光板33と接合部材500との間に第1拡散層41が配置されていてもよい。第1拡散層41は、光拡散機能を有する拡散フィルム(拡散板)である。第1拡散層41としては、光拡散材が分散された構造(内部ヘイズ構造)を有するものであってもよいし、アンチグレア処理等を施すことで形成された表面凹凸構造(外部ヘイズ構造)を有するものであってもよいし、内部ヘイズ構造及び外部ヘイズ構造の両方を有するものであってもよい。
【0127】
このように、第1拡散層41を配置することによって、第2液晶セル20のブラックマトリクスのパターン形状等に起因してモアレが発生することを抑制することができる。第1拡散層41は、例えば、接着剤等によって第3偏光板33に貼り合わされている。なお、第1拡散層41は、第3偏光板33と一体の光学フィルムであってもよい。
【0128】
さらに、図4に示される液晶表示装置2では、第4偏光板34と接合部材500との間に第2拡散層42も配置されている。第2拡散層42としては、第1拡散層41と同様の構成のものを用いることができる。
【0129】
このように、第2拡散層42を配置することによって、モアレの発生を一層抑制することができる。第2拡散層42は、例えば、接着剤等によって第4偏光板34に貼り合わされている。なお、第2拡散層42も、第4偏光板34と一体の光学フィルムであってもよい。
【0130】
また、上記実施の形態及び変形例において、第1偏光板31、第2偏光板32、第3偏光板33及び第4偏光板34には、位相差板(位相差フィルム)等のその他の機能フィルムが貼り合わされていてもよい。これらの機能フィルムは、第1偏光板31、第2偏光板32、第3偏光板33及び第4偏光板34の各々と一体の光学フィルムであってもよいし、別体であってもよい。
【0131】
また、上記実施の形態及び変形例において、第1偏光板31、第2偏光板32、第3偏光板33及び第4偏光板34は、偏光子及び偏光子を挟む一対の透明保護フィルムの3層構造としたが、これに限らない。第1偏光板31、第2偏光板32、第3偏光板33及び第4偏光板34は、偏光子及び一対の透明保護フィルム以外にその他の樹脂基材層又は粘着層等を有していてもよい。この場合、樹脂基材層又は粘着層は、透明保護フィルムの外面に設けられていてもよいが、偏光子と透明保護フィルムとの間に挿入されていてもよい。つまり、第1偏光板31、第2偏光板32、第3偏光板33及び第4偏光板34は、偏光子及び一対の透明保護フィルムの3つの樹脂膜が連続して積層されたものでなくてもよい。
【0132】
また、上記実施の形態及び変形例において、さらに、第2偏光板32も第3偏光板33と同じものであってもよい。第2偏光板32は、4つの偏光板のうちバックライト300に最も近い位置に配置されているので、4つの偏光板の中で最も高温に曝されることになる。そこで、第2偏光板32として、耐候性及び耐熱性に優れている第3偏光板33と同じものを用いることによって、第2偏光板32が熱で劣化することを抑制できる。これにより、より信頼性の高い液晶表示装置を実現することができる。
【0133】
また、上記実施の形態及び変形例では、第1液晶セル10と第2液晶セル20との間に、第3偏光板33及び第4偏光板34の2枚の偏光板を挿入したが、これに限らず、第1液晶セル10と第2液晶セル20との間には、第3偏光板33及び第4偏光板34のいずれか一方のみが配置されていてもよい。なお、第3偏光板33が配置されておらず、第1偏光板31、第2偏光板32及び第4偏光板34のみによって構成されている場合、第4偏光板34が第3偏光板となる。
【0134】
また、上記実施の形態及び変形例では、2つの表示パネルを用いたが、これに限らない。例えば、3つ以上の表示パネルを用いてもよい。
【0135】
その他、上記実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0136】
1、2 液晶表示装置
10 第1液晶セル
11 第1TFT基板
12 第1対向基板
13 第1液晶層
20 第2液晶セル
21 第2TFT基板
22 第2対向基板
23 第2液晶層
31 第1偏光板
32 第2偏光板
33 第3偏光板
33a、34a 偏光子
33b、34b 第1透明フィルム
33c、34c 第2透明フィルム
34 第4偏光板
41 第1拡散層
42 第2拡散層
100 第1表示パネル
101 第1画像表示領域
102 第1ソースドライバ
103 第1ゲートドライバ
200 第2表示パネル
201 第2画像表示領域
202 第2ソースドライバ
203 第2ゲートドライバ
300 バックライト
410 第1タイミングコントローラ
420 第2タイミングコントローラ
430 画像処理部
500 接合部材
図1
図2
図3
図4