(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】充電式電気自動車
(51)【国際特許分類】
B60L 7/12 20060101AFI20221006BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
B60L7/12 Q
B60L50/60
(21)【出願番号】P 2020171878
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】513066166
【氏名又は名称】猪坂 英一
(73)【特許権者】
【識別番号】513133055
【氏名又は名称】猪坂 光
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】猪坂 英一
(72)【発明者】
【氏名】猪坂 光
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0016990(US,A1)
【文献】実開昭54-045010(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第101898516(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 7/12
B60L 50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電式電気自動車において、
当該自動車に搭載されたバッテリと、
前記バッテリの出力により駆動され車輪を駆動するモータと、
前記モータを走行用に制御するコントローラと、
複数の発電機と、
前記車輪の回転により前記複数の発電機の軸を各々回転駆動させる歯車対と、
前記複数の発電機の発電出力を入力とし、前記バッテリを充電するための直流出力を出力する充電器と、を備え、
前記歯車対は、前記車輪の車軸に固定された
単一の主歯車と、前記主歯車に噛み合う増速用であって前記発電機の各々の軸に固定された複数の従歯車とから成り、複数の従歯車は、互いに増速度を異ならせていることを特徴とした充電式電気自動車。
【請求項2】
前記発電機が発電する負荷動作状態と、発電しない無負荷動作状態とを制御する発電制御器をさらに備え、
前記発電制御器は、前記車輪の回転数が所定値よりも少ない時は、前記複数の発電機の一部のみを負荷動作状態に、前記車輪の回転数が所定値よりも大きくなった時に、前記複数の発電機を負荷動作状態に制御することを特徴とした請求項1に記載の充電式電気自動車。
【請求項3】
前記従歯車は、大径で歯数の多い第1の従歯車と、前記第1の従歯車よりも小径で歯数の少ない第2の従歯車とを備え、
前記主歯車は、前記第1の従歯車と噛み合う第1の主歯車と、前記第2の従歯車と噛み合う第2の主歯車とを備え、
前記第1の従歯車が固定される前記発電機を第1の発電機とし、前記第2の従歯車が固定される前記発電機を第2の発電機とし、
前記車輪の回転数が所定値よりも少ない時で、一部のみが負荷動作状態とされる前記発電機は前記第1の発電機であることを特徴とした請求項2に記載の充電式電気自動車。
【請求項4】
前記複数の従歯車は、前記主歯車に対して、5~10倍に増速するものとされていることを特徴とした請求項2又は3に記載の充電式電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンを搭載したハイブリッド車ではない、バッテリでのみ走行する充電式電気自動車であって、特に、走行時に車輪の回転により駆動される発電装置によりバッテリを充電する充電式電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の充電式電気自動車は、満充電したバッテリで走行する航続距離がハイブリッド車に比べて長くないこと、搭載されるバッテリが大きい容積を占めること、等の問題がある。そこで、電気自動車の発電機として、自動車のプロペラシャフトと車輪の回転シャフトに複数の発電機を一体的に取り付け、走行中に発電機による発電電力を複数搭載したバッテリに適宜に切替充電することにより、家庭用電気での充電を不要とするものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電気自動車の発電機においては、発電能率が良くないため、蓄電池だけでの走行の航続距離は長く取れない。また、車輪が回転している時は、複数の発電機が常時、発電動作状態にあり、走行用のモータにとって、特に起動低速時に大きな負荷となり、バッテリの消耗が激しく、航続距離は短いものとなる。
【0005】
本発明は、上記問題を解消するものであり、発電機の発電能率を向上し、走行しながらバッテリを能率良く充電でき、車に搭載しなければならないバッテリを小容量にでき、かつ航続距離を長くすることができる充電式電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、充電式電気自動車において、
当該自動車に搭載されたバッテリと、
前記バッテリの出力により駆動され車輪を駆動するモータと、
前記モータを走行用に制御するコントローラと、
複数の発電機と、
前記車輪の回転により前記複数の発電機の軸を各々回転駆動させる歯車対と、
前記複数の発電機の発電出力を入力とし、前記バッテリを充電するための直流出力を出力する充電器と、を備え、
前記歯車対は、前記車輪の車軸に固定された単一の主歯車と、前記主歯車に噛み合う増速用であって前記発電機の各々の軸に固定された複数の従歯車とから成り、複数の従歯車は、互いに増速度を異ならせていることを特徴とするものである。
【0007】
上記において、前記発電機が発電する負荷動作状態と、発電しない無負荷動作状態とを制御する発電制御器をさらに備え、
前記発電制御器は、前記車輪の回転数が所定値よりも少ない時は、前記複数の発電機の一部のみを負荷動作状態に、前記車輪の回転数が所定値よりも大きくなった時に、前記複数の発電機を負荷動作状態に制御するものとすることが望ましい。
【0008】
上記において、前記従歯車は、大径で歯数の多い第1の従歯車と、前記第1の従歯車よりも小径で歯数の少ない第2の従歯車とを備え、
前記主歯車は、前記第1の従歯車と噛み合う第1の主歯車と、前記第2の従歯車と噛み合う第2の主歯車とを備え、
前記第1の従歯車が固定される前記発電機を第1の発電機とし、前記第2の従歯車が固定される前記発電機を第2の発電機とし、
前記車輪の回転数が所定値よりも少ない時で、一部のみが負荷動作状態とされる前記発電機は前記第1の発電機であることが望ましい。
【0009】
上記において、前記複数の従歯車は、前記主歯車に対して、5~10倍に増速するものとされていることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車軸の回転を互いに増速度の異なる歯車対を介して複数の発電機に伝達し、発電動作させるので、走行の低速から高速まで、複数の発電機の個々の発電能率が向上し、走行しながらバッテリを能率良く充電することができ、バッテリを小容量にでき、かつ航続距離を長くすることができる。
【0011】
また、複数の発電機の発電動作に入るタイミングを車の走行速度に応じて調整すれば、走行用モータに大きな負荷が掛からないようになりバッテリの消耗が少なく、そのため、バッテリの消耗が少なくなり、上記効果をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る充電式電気自動車の概念構成を示す斜視図。
【
図2】上記充電式電気自動車の発電装置の駆動系を示す正面図。
【
図3】上記発電装置の駆動系を示し、
図2のII線断面図。
【
図4】(a)は上記発電装置の駆動系における歯車対の第1従歯車の側面図、(b)は同歯車対の第2従歯車の側面図。
【
図5】実施例による充電式電気自動車における車速と車輪回転数の関係図。
【
図6】実施例による充電式電気自動車における車速と発電機回転数の関係図。
【
図7】実施例による充電式電気自動車における車速と発電力の関係図。
【
図8】上記発電装置に用いられる発電機の一例を示すブロック図。
【
図9】上記発電機の制御動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る充電式電気自動車について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る充電式電気自動車1の概念構成を示す。充電式電気自動車1は、前車輪4a、4bと、後車輪4c、4dと、バッテリ2と、バッテリ2の出力により駆動される走行用のモータ3と、車輪の回転を駆動源としてバッテリ2を充電するために発電する発電装置5と、モータ3を走行用に制御するコントローラ6と、を備えている。発電装置5は、複数の発電機7,8と、後車輪4c、4dの車軸40の回転力を各発電機7,8に伝達する駆動系を成す歯車対9と、を備えている。バッテリ2として、例えばリチウムイオン電池を用い、モータ3として、例えば永久磁石式同期モータを用いることができる。
【0014】
また、充電式電気自動車1は、発電装置5の発電機7,8の発電出力(P)のインバータ/コンバータ回路10Pを経た出力を入力としてバッテリ2を充電するための直流出力を出力する充電器10を備えている。この充電器10は、AC/DCコンバータと、バッテリの充電状態を検出し、それに応じてAC/DCコンバータを制御して充電制御を行う制御回路とを備える。この充電器10は、既存の電気自動車(EV)に搭載したバッテリを充電するための、AC電源を入力としたプラグイン式の充電装置と同等の構成とされている。
【0015】
コントローラ6は、運転者又はAIによる運転制御に応じてバッテリ2を電源としてモータ3の駆動を制御する。モータ3はその回転出力により後車輪4c、4dの車軸を回転駆動させる。本実施形態では、ステアリング走行のための前車輪4a、4bの車軸を発電用とし、後車輪4c、4dを走行駆動用としたが、これに限られず、前車輪4a、4bを走行駆動用とし、後車輪4c、4dの車軸を発電用としても構わない。また、前車輪4a、4b、後車輪4c、4dとも走行駆動用であっても構わない。これら発電機7,8、充電器10、バッテリ2、コントローラ6は、いずれも車台11(
図2、
図3参照)に搭載される。
【0016】
(発電装置の構成)
本実施形態の発電装置5は、2つのAC発電機を備え、そのうちの一方を第1の発電機7、他方を第2の発電機8と言う。これら第1の発電機7及び第2の発電機8の各軸に、前車輪4a、4bの車軸40の軸回転力を歯車対9により伝達する。歯車対9は、車軸40に固定された主歯車90と、主歯車90に噛み合う増速用の第1の従歯車91と第2の従歯車92とから成る。ここに、第2の従歯車92の方が、第1の従歯車91よりも小径とされ、増速度を高くしている。これら従歯車91,92は、それぞれ第1の発電機7及び第2の発電機8の各軸に固定される。なお、発電機の数は、本実施形態の例に限られず、3個以上、例えば4個を用いてもよい。
【0017】
第1の発電機7及び第2の発電機8の発電出力(P)は、発電出力ケーブル51を介し、さらにインバータ/コンバータ回路10Pを経て充電器10の発電出力受け端子(AC入力)12に供給される。充電器10の充電器出力端子(DC出力)13は、充電器出力ケーブル14を通してバッテリ2の充電入力端子21に接続される。バッテリ2の出力は、バッテリ出力ケーブル22を介してコントローラ6に供給される。
【0018】
充電式電気自動車1は、既存のプラグイン式の充電装置(図示なし)の充電コネクタを差し込み可能な充電口(充電リッド)15と、充電口15とバッテリ2の充電入力端子21とを繋ぐ外部充電配線16とを備える。必要に応じて、走行停止時に、充電口15に充電装置(図示なし)の充電コネクタを差し込んで、外部AC電源から電源供給を受けてバッテリ2を充電することができる。また、走行停止時に、充電器10の発電出力受け端子(AC入力)12に、外部AC電源から直接、電源供給しても、バッテリ2を充電することができる。
【0019】
(発電装置の駆動系の構成)
図2、
図3は、発電装置5の駆動系の構成を示す。
図3では、一方の発電機7のみが表れている。発電装置5の駆動系を成す歯車対9において、主歯車90は、その中心部が車軸40に固定され、前車輪4a、4b(例えば、直径70cm)の外形よりも僅かに小さい外形(例えば、直径50cm)を有し、外周面に軸方向で2つに分かれた第1の歯車90a、第2の歯車90bを有する。これら歯車90a、90bに、第1の従歯車91及び第2の従歯車92がそれぞれ噛み合う。これら従歯車91,92は、主歯車90に比べ、小さい外形を有し、いずれも増速を図っており、それぞれ、例えば、直径10cm、直径7cmとされている。
【0020】
第1の従歯車91は、第1の発電機7の軸71に固定され、第2の従歯車92は、第2の発電機8の軸81に固定される。第1の従歯車91は、第2の従歯車91よりも大径で、歯数も多い。第2の従歯車92は、第1の従歯車91よりも小径で、歯数も少ない。各々の従歯車91,92は、主歯車90に対して、5~10倍に増速するものとされている。歯車対9の増速度は、小径の従歯車92の方が、大径の従歯車91よりも高くなる。主歯車90は、軸心を通り、かつ軸心に直交する面(
図2のII-II線)で分割された2つの半円形部材により構成し、車軸40を挟むように半円形部材の端面同士を突き合わせて連結することにより構成されればよい。
【0021】
図4(a)は発電装置5の駆動系における歯車対9の第1の従歯車91を、
図4(b)は第2の従歯車92を示す。これら従歯車91,92は、主歯車90の歯車90a、90bに噛み合い、従歯車91,92の歯のピッチは同じにされている。なお、従歯車91,92の歯のピッチは、互いに異なるものであっても構わない。
【0022】
(発電装置の動作)
本実施形態の充電式電気自動車1における発電装置5の動作を説明する。バッテリ2は、外部AC電源から電源供給を受けた充電装置の充電コネクタを充電口15に差し込んで予め充電させておく。充電されたバッテリ2の出力によりモータ3を駆動して走行を開始する。車の走行に伴なう車軸40の回転とともに、歯車対9の比較的大径の主歯車90が回転し、これに噛み合う比較的小径の第1の従歯車91及び第2の従歯車92が増速して回転駆動される。これにより、第1の発電機7の軸71及び第2の発電機8の軸81が回転駆動され、発電機7,8は、負荷動作状態、すなわち発電状態となる。
【0023】
ここに、第1の従歯車91と第2の従歯車92とは増速度を異なせているので、走行の低速から高速まで、発電機7,8の稼働に伴う走行用のモータ3に加わる負荷を低減でき、発電機7,8の個々の発電能率が向上し、走行しながらバッテリ2を能率良く充電することができ、バッテリ2の消耗を遅らせることができる。このため、そのため、車に搭載されるバッテリ2の容量が従来と同じであれば、フル充電されたバッテリ2だけによる航続距離を伸ばすことができる。なお、発電機7,8による発電出力(P)は、充電器10に入力され、その充電器出力によりバッテリ2を充電する。また、車輪の回転数が極めて低速(例えば、車速10km/h未満)では、いずれの発電機7,8も無負荷状態とすることが、モータ3に掛かる負荷を少なくする上で望ましい。
【0024】
(発電制御器を備えた実施例)
本実施形態の充電式電気自動車1において、第1の発電機7及び第2の発電機8は、発電制御器79,89(その詳細例は後述)を備えている実施例とすることが望ましい。発電制御器79,89は、車輪又は車軸40の回転数信号(又は車速信号)を受けて、それに応じて各発電機7,8を、発電する負荷動作状態と、発電しない無負荷動作状態とに制御するものである。
【0025】
すなわち、発電制御器79,89は、前車輪4a、4b又は車軸40の回転数が所定値よりも少ない時(低速時)は、複数の発電機7,8の一方のみを負荷動作状態とし、車軸40の回転数が所定値よりも大きくなった時に、複数の発電機7,8を負荷動作状態に制御する。ここに、本実施形態では、低速時に一方のみを負荷動作状態とする発電機は、増速度の低い第1の発電機7としているが、必ずしもそれに限られない。
【0026】
上記実施例による発電装置5の動作を説明する。充電されたバッテリ2の出力によりモータ3を駆動して走行を開始する。そのとき、車輪の回転数(車速)が所定値よりも少ない時は、発電制御器79,89の制御により、複数の発電機7,8のち一方のみを負荷動作状態とし、その後、車輪の回転数が所定値よりも大きくなった時に、他方の発電機も負荷動作状態として複数の発電機7,8を負荷動作状態に制御する。車輪の回転数が所定値よりも下がってきたときは、一方の発電機のみを負荷動作状態とする状態に戻す。発電機7,8による発電出力(P)は、充電器10に入力され、その充電器出力によりバッテリ2を充電する。
【0027】
ここに、複数の発電機7,8のち一方のみを負荷動作状態とする発電機は、増速度の低い第1の発電機7とし、その後、他方の発電機も負荷動作状態とする発電機は、増速度の高い第2の発電機8とする。車輪の回転数が所定値よりも下がってきたときは、第1の発電機7のみを負荷動作状態に戻す。なお、車輪の回転数が極めて低速(例えば、車速10km/h未満)では、いずれの発電機7,8も無負荷状態とすることが、モータ3に掛かる負荷を少なくする上で望ましい。なお、車の走行開始とともに、一部の発電機が負荷動作状態とされるものであっても構わない。
【0028】
このように、複数の発電機7,8の負荷状態を、車輪の回転数(車速)に応じて選択して時系列的に制御しているため、発電機7,8の稼働に伴う走行用のモータ3に加わる負荷を可及的に低減でき、バッテリ2の消耗を遅らせることができる。そのため、車に搭載されるバッテリ2の容量が従来と同じであれば、フル充電されたバッテリ2だけによる航続距離をより一層、伸ばすことができる。
【0029】
ここに、例えば、40kwhのバッテリ2を搭載したとき、従来では航続距離が300km(燃費測定のJC08モードにおいて)であるのに対し、上記実施例では、それよりも長い航続距離を得ることができる。また、小容量の例えば30kwhのバッテリ2を搭載して、上記と同等の航続距離を得ることができる。しかるに、低速時から第1の発電機7及び第2の発電機8が共に負荷動作状態であると、走行用のモータ3に大きく負荷がかかり、バッテリ2の消耗が激しくなり、バッテリ2での航続距離を大きく取れない。
【0030】
(車速と車輪回転数等の関係)
図5は、実施例による充電式電気自動車1における車速と車輪回転数の関係を示す。車速の増加に伴い車輪回転数が上がり、実施例では、車速が0から、例えば10km/hまでの低速時には、発電装置5が発電しない無負荷状態とし、車速が10km/hを越えると、発電装置5の一方の第1の発電機7が発電する負荷状態とし、その後、車速が、例えば40km/hを越えると、発電装置5の第2の発電機8も発電する負荷状態、すなわち両方の発電機7,8を負荷状態とする。減速時には、車速が、例えば40km/hを下回ると、第2の発電機8を無負荷状態とし、第1の発電機7のみを負荷状態とする。さらに車速が10km/hを下回ると、第1の発電機7も無負荷状態とする。
【0031】
図6は、実施例による充電式電気自動車1における車速と発電機回転数の関係を示す。同図において、太線グラフは、負荷状態となる車速が時速10km/hを越えた範囲での第1の発電機7の軸回転を示し、細線グラフは、負荷状態となる時速40km/hを越えた範囲での第2の発電機8の軸回転を示している。第2の発電機8の軸回転は、第1の発電機7のそれよりも大きくなっている。
【0032】
図7は、実施例による充電式電気自動車1における車速と発電機の回転数・累計発電力の関係を示す。同図において、横軸は車速(時速)、縦軸(左)は発電機の回転数(棒グラフ)、縦軸(右)は発電機の累計発電力を示す。ここには、第1の発電機7のデータのみを示し、第2の発電機8のデータは省いているが、第2の発電機8の累計発電力は、第1の発電機7のそれよりも多くなる。ここに、例えば、車速100km/hで走行すれば、発電機7の回転数は、6950rpmとなり、7.5kwhの発電力が得られる。
【0033】
(発電機の一例)
図8は、発電装置5に用いられる発電機7,8の一例を示す。ここには、第1の発電機7のみを示す。第2の発電機8も同等のものが用いられる。この例による発電機7は、ブラシレス交流発電機であり、発電機7の軸71は、駆動される主歯車90に噛み合う第1の従歯車91により矢印に示すように回転駆動される。発電機7は、環状の固定子7Sと、固定子7Sの内方にあり軸71に固定される円柱状の回転子7Rとを備える。固定子7Sは、発電出力用の電機子コイル72と、励磁コイル73とを備える。回転子7Rは、界磁コイル74と、励磁電機子コイル75と、整流器76とを備える。電機子コイル72及び励磁コイル73は固定子コアに分離して巻かれ、界磁コイル74及び励磁電機子コイル75は、回転子コアに分離して巻かれる。整流器76は、励磁電機子コイル75に生成された電流を整流して界磁コイル74に供給する。
【0034】
励磁コイル73と励磁電機子コイル75は、励磁機を構成し、電機子コイル72と界磁コイル74は、発電機そのものを構成し、電機子コイル72は交流発電出力Pを生成する。交流発電出力Pの出力ライン中には励磁用変流器77,78を備え、それらの出力は発電制御器79及び整流器を介して励磁コイル73に供給される。発電制御器79は、車軸40の回転速度を検出するセンサからの信号(又は車速信号)を受けて動作し、車速に応じて励磁コイル73への励磁電流を制御するものである。
【0035】
このような構成の発電機7において、励磁コイル73に給電され励磁状態(オン)のとき、励磁電機子コイル75が回転されると、励磁電機子コイル75に起電力が生成され、その起電力でもって界磁コイル74に通電させる(初期動作時は、残留磁束が有効に機能する)。このとき、界磁コイル74が回転していると、電機子コイル72に交流発電出力Pが生成される。励磁コイル73に給電されることなく非励磁状態(オフ)のときは、電機子コイル72に交流発電出力Pは生成されない。ここに、発電制御器79が、車軸40の回転速度信号(又は車速信号)に応じて、励磁コイル73へ励磁電流を流さないことで、発電機7は発電しない無負荷状態となり、励磁コイル73へ励磁電流を流すことで、発電機7は発電する負荷状態となる。
【0036】
図9は、上記発電機7,8の制御動作のフローチャートである。発電機7,8は、車速信号に応じて発電制御器79により運転が制御される。車速が第1の速度(例えば10km)未満の低速度時には(#1でYes)、両発電機7,8は、オフ、すなわち、無負荷動作状態(空回転状態)とされる(#2)。そのため、走行用のバッテリ2の発電のために要する消耗は少ない。車速が第1速以上で第2速(例えば40km)未満の低速になると(#3でYes)、増速度の低い大径の従歯車91側の第1の発電機7のみがオン、すなわち、負荷動作(発電)状態とされる(#4)。このとき、小径の従歯車92側の第2の発電機8は、無負荷動作状態(空回転状態)のままである。さらに、車速が第2速(例えば40km)以上の高速になると(#5でYes)、小径の従歯車92側の第2の発電機8もオン、すなわち、負荷動作(発電)状態とされる(#6)。このとき、両方の発電機7,8が負荷動作状態とされる。車速が落ちていくときは、上記の#6から#4を経て#2に移行する。
【0037】
上記のような動作をするので、車速が第1の速度未満の低速度時には両方の発電機7,8が負荷動作状態であり、走行用のモータ3に負荷が殆ど掛からず、発電のためにバッテリ2が消耗することはない。車速が第1速以上で第2速未満の低速時には、増速度の低い大径の従歯車91側の第1の発電機7のみが負荷動作状態とされるので、増速度の高い小径の従歯車92側の第2の発電機8が負荷動作状態になる場合に比べて、走行用のモータ3に掛かる負荷を少なくすることができ、バッテリ2の消耗を抑制しつつ、第1の発電機7の発電力を元に充電器10の充電器出力によりバッテリ2を充電できる。車速が第2速以上の高速になると、両方の発電機7,8が負荷動作状態とされ、発電能力は大きくなり、バッテリ2を十分に充電できる。
【0038】
なお、上記では車速に応じて発電機の動作を制御するものを説明したが、車速と車輪や車軸40の回転数とは対応関係を有するので、いずれを用いて制御しても構わない。従って、請求項で言う「車輪の回転数」には、車速や車軸40の回転数をも概念として含む。
【0039】
こうして、車速に応じて発電機7,8を選択的に発電動作させるので、発電のためにバッテリ2に掛かる負担を可及的に抑えつつ、能率良く発電させ、それら発電電力でもってバッテリ2を充電することができる。このため、所定の航続距離を確保するために車に搭載しなければならないバッテリ2を可及的に少容量にすることができ、また、車に搭載するバッテリ2の容量を増やすことなく、航続距離を長くすることができる。
【0040】
本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施例では、発電機7,8の例としてブラシレス交流発電機を示したが、この構成のものに限られず、任意の直流モータ等を発電機として使用することが可能である。
【0041】
また、上記実施例では、2個の発電機7,8を搭載し、2段階の車速で発電機7,8の運転動作を切り替え制御するものを示したが、例えば発電機を4個用い、第1の発電機7として2個の発電機を用い、第2の発電機8として2個の発電機を用いてもよい。この場合、車速の一つの段階で第1の発電機7としての2個をオンに、次の段階で第2の発電機8としての2個もオンにするといった制御をすればよい。また、上記に限られず、発電機の運転動作を3段階以上に緻密に切り替え制御してもよく、そのような場合をも本発明の技術的範囲に含む。
【0042】
また、第1の発電機7として2個の発電機の第1の従歯車91の各々が、主歯車90の外周に適宜の間隔をおいて配置されればよい。第2の発電機8として2個の発電機の第2の従歯車92の各々が、同様に配置されればよい。第1の発電機7としての2個の発電機は、例えば定格7.7kwのものを用い、第2の発電機8として2個の発電機は、定格15kwのものを用いると、前者は360V、15Aの交流出力、後者は360V、30Aの交流出力を得ることができる。4個の発電機の発電出力は、充電器10のAC入力とされ、AC/DCコンバータにより、360V/90AのDC出力となる。
【0043】
また、車速の上記第1速、第2速は、例えば、第1速は、0~20kmの範囲、第2速は、30~50kmの範囲で任意に適宜設定可能であり、増速用の第1の従歯車91、第2の従歯車92は、主歯車90に対して、5~10倍の範囲で増速するものが、発電能力の増大を図り、かつ、発電のためにバッテリ2に掛かる負荷を可及的に低減するという二律背反のバランスを取るために、好ましいことが実験的に判明した。
【符号の説明】
【0044】
1 充電式電気自動車
10 充電器
10P インバータ/コンバータ回路
11 車台
12 発電出力受け端子(AC入力)
13 充電器出力端子(DC出力)
14 充電器出力ケーブル
15 充電口
16 外部充電配線
2 バッテリ
21 充電入力端子
22 バッテリ出力ケーブル
3 走行用のモータ
4a、4b 前車輪
4c、4d 後車輪
40 車軸
5 発電装置
51 発電出力ケーブル
6 コントローラ
7 第1の発電機
7S 固定子
7R 回転子
71 第1の発電機7の軸
72 発電出力用の電機子コイル
73 励磁コイル
74 界磁コイル
75 励磁電機子コイル
76 整流器
77,78 励磁用変流器
79 発電制御器
8 第2の発電機
81 第2の発電機8の軸
89 発電制御器
9 歯車対
90 主歯車
90a、90b 歯車
91 第1の従歯車
92 第2の従歯車
P 交流発電出力