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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】3次元(3D)印刷
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/14 20210101AFI20221006BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20221006BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20221006BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B22F10/14
B22F3/10 C
B22F3/105
B22F3/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020500212
(86)(22)【出願日】2017-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 US2017040937
(87)【国際公開番号】W WO2019009906
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】カスパーチク,ヴラデク
(72)【発明者】
【氏名】ナウカ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】イングル,デイヴィッド,マイケル
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-218712(JP,A)
【文献】国際公開第2007/097747(WO,A1)
【文献】特開2004-330743(JP,A)
【文献】国際公開第2017/079282(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/167520(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/00
B22F 10/00
B22F 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元オブジェクトを印刷するための方法であって:
(i)金属構築材料の層を適用し;
(ii)金属構築材料の層の少なくとも一部の上にバインダー流体を選択的に適用し、ここでバインダー流体は、液体ビヒクルおよび液体ビヒクル中に分散したラテックスポリマー粒子を含み、そしてラテックスポリマー粒子は250℃から600℃の熱分解温度を有し;
(iii)0.5J/cmから20J/cmのエネルギー密度を有する単一のエネルギー束を1秒未満適用することにより、選択的に適用されたバインダー流体をラテックスポリマーの熱分解を生ずることなしに、気体放電光エネルギーエミッタを用いるフラッシュ定着して、金属構築材料の層および選択的に適用されたバインダー流体を結合させ;そして
(iv)(i)、(ii)、および(iii)を少なくとも1回繰り返して3次元オブジェクトを形成することを含む、方法。
【請求項2】
(ii-a)バインダー流体から殆どの液体を除去することによって、選択的に適用されたバインダー流体を乾燥することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
(v)3次元オブジェクトを焼結温度に加熱することをさらに含む、請求項1または2の方法。
【請求項4】
ラテックスポリマー粒子は25℃から125℃のガラス転移温度を有する、請求項1から3のいずれか1の方法。
【請求項5】
フラッシュ定着の温度は125℃から400℃である、請求項1から4のいずれか1の方法。
【請求項6】
フラッシュ定着は、金属構築材料の層および選択的に適用されたバインダー流体に対して非コヒーレント光エネルギーを少なくとも1つのパルスとして適用する光エネルギーエミッタを使用して行われる、請求項1から5のいずれか1の方法。
【請求項7】
フラッシュ定着は金属構築材料の層およびバインダー流体を照射する、請求項1から6のいずれか1の方法。
【請求項8】
気体放電光エネルギーエミッタで用いられる気体は、キセノン、クリプトン、アルゴン、ヘリウム、ネオン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1から7のいずれか1の方法。
【請求項9】
ラテックスポリマー粒子はバインダー流体中に、バインダー流体の合計重量に基づいて2重量%から30重量%の範囲にわたる量で存在する、請求項1から8のいずれか1の方法。
【請求項10】
3次元オブジェクトを印刷するための印刷システムであって:
金属構築材料の供給部と;
金属構築材料の層を形成する構築材料分配器と;
バインダー流体の供給部と、このバインダー流体が液体ビヒクルおよび液体ビヒクル中に分散されたラテックスポリマー粒子を含むことと、ここでラテックスポリマー粒子は250℃から600℃の熱分解温度を有し;
バインダー流体を選択的に分配するためのインクジェットアプリケータと;および0.5J/cmから20J/cmのエネルギー密度を有する単一のエネルギー束を1秒未満適用することにより、選択的に適用されたバインダー流体をラテックスポリマーの熱分解を生ずることなしにフラッシュ定着して、金属構築材料の層および選択的に適用されたバインダー流体を結合させるための気体放電光エネルギーエミッタとを含む、印刷システム。
【請求項11】
コントローラと;および
コンピュータ実行可能な命令を記憶している非一時的なコンピュータ可読媒体とをさらに含み:
構築材料分配器およびインクジェットアプリケータを使用して、選択的に適用されたバインダー流体を有する金属構築材料の少なくとも1つの層を繰り返して形成させ、そして0.5J/cmから20J/cmのエネルギー密度を有する単一のエネルギー束を1秒未満適用することにより、光エネルギーエミッタを使用して選択的に適用されたバインダー流体をラテックスポリマーの熱分解を生ずることなしにフラッシュ定着させ、金属構築材料の層および選択的に適用されたバインダー流体を結合させることにより、コントローラに3次元オブジェクトを印刷させることをさらに含む、請求項10の印刷システム。
【請求項12】
非一時的なコンピュータ可読媒体は:
さらに少なくとも1つの熱源を使用して3次元オブジェクトを焼結温度まで加熱することにより、コントローラに3次元オブジェクトを印刷させるための、コンピュータ実行可能な命令を記憶している、請求項11の印刷システム。
【請求項13】
3次元オブジェクトを焼結温度まで加熱することは、10分間から48時間の範囲にわたる焼結期間について行われる、請求項12の印刷システム。
【請求項14】
3次元オブジェクトを焼結温度まで加熱することは、不活性ガス、低反応性ガス、還元性ガス、またはこれらの組み合わせを含む環境において行われる、請求項12または13の印刷システム。
【請求項15】
ラテックスポリマー粒子は、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、メチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ビニルベンジルクロリド、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールメタクリレート、エトキシル化ベヘニルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジメチルマレエート、ジオクチルマレエート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニル-カプロラクタム、これらの組み合わせ、これらの誘導体、およびこれらの混合物からなる群より選択されるモノマーのフリーラジカル重合によって生成されたラテックスポリマー粒子である、請求項10から14のいずれか1の印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
3次元(3D)印刷は、デジタルモデルから3次元の固体部品を作成するために使用される、付加的印刷プロセスであってよい。3D印刷は多くの場合に、製品のラピッドプロトタイピング、金型の作成、金型マスターの作成、および短期的な製造に用いることができる。幾つかの3D印刷技術は付加的プロセスであると考えられるが、それはそれらが、連続する材料層の適用を伴うためである。これは、多くの場合に材料の除去に依拠して最終的な部品を作成する、伝統的な機械加工プロセスとは異なっている。3D印刷は多くの場合に、構築材料の硬化または融合を用いることができるが、これは一部の材料については、熱補助式の押し出し、溶融、または焼成を使用して達成されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0002】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって明らかとなるが、そこでは同様の参照番号は、同一ではないとしても類似している部品に対応している。簡潔にするために、先に説明された機能を有する参照番号または特徴は、それらが現れる他の図面に関しては、記載される場合も記載されない場合もある。
【0003】
図1は、本願で開示される例示的な3D印刷システムの単純化された等角図である。
【0004】
図2Aから図2Fは、本願で開示される3D印刷方法の例を使用した、パターン化3次元オブジェクト、3次元オブジェクト、少なくとも実質的にポリマーを含まない部品、および3D金属部品の形成を示す概略図である。
【0005】
図3は、同じスチレンアクリルラテックスバインダーの異なる温度における時間と重量百分率の関係のグラフである。
【0006】
図4Aから図4Cは、本願で開示される3D印刷方法の例を使用した、3次元オブジェクトの形成を示す概略図である。
【0007】
図5Aから図5Cは、本願で開示される3D印刷方法の例による照射を示している、例示的な3D印刷システムの単純化された等角図である。
【0008】
図6Aから図6Cは、本願で開示される3D印刷方法の例によって形成された3次元オブジェクトの概略図である。
【0009】
図7Aおよび図7Bは、本願で開示される3D印刷方法(図7A)の例によって形成した3次元オブジェクトを比較用3D印刷方法(図7B)と比較した概略図である。
【0010】
図8は、本願で開示される3D印刷方法の例によって形成された3次元オブジェクトの概略図である。
【0011】
図9は、本願で開示される3D印刷方法の例を表す流れ図である。
【0012】
図10は、バインダー添加量と、ポリマー粒子および金属粒子を融合して3次元オブジェクトを形成するために使用されるエネルギー密度との間の相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
3次元(3D)印刷の幾つかの例では、バインダー流体(液体機能剤/材料としても知られている)が構築材料の層に対して選択的に適用され、そして次いで構築材料の別の層がその上に適用される。バインダー流体は、この構築材料の別の層に対して適用されてよく、そして3次元オブジェクトを形成するために、これらのプロセスが繰り返されてよい。バインダー流体は、3次元オブジェクトの構築材料を一緒に保持するバインダーを含んでいてよい。3次元オブジェクトは、層ごとの構築の間に、または構築後に、3次元オブジェクト中の構築材料を焼結するために光エネルギーおよび/または熱に曝露されてよく、焼結3D部品が形成される。
【0014】
本願で使用するところでは、用語「3D印刷部品」、「3D部品」、「部品」、「3D印刷オブジェクト」、「3Dオブジェクト」または「オブジェクト」は、完成された3D印刷部品またはオブジェクト、または3D印刷部品またはオブジェクトの層であってよい。
【0015】
本願で使用するところでは、幾つかの用語の末尾の「(単数または複数)」は、それらの用語/語句が幾つかの例では単数であってよく、また幾つかの例では複数であってよいことを示している。「(単数または複数)」が付いていない用語もまた、多くの例において単数または複数で用いられてよいことが理解されよう。
【0016】
パターン化3次元オブジェクト中のポリマー粒子を溶融するためにパウダーベッド(粉体床)の全体を加熱するという、広く受け入れられている手法を使用して3次元オブジェクトを製造する場合、熱は一般的に、数秒より長く適用される。このことは、3次元オブジェクトを製造するために使用されるエネルギーの量を増大させうるだけではなく、ポリマー粒子の溶融を達成するためにパターン化オブジェクトが加熱される時間の長さに少なくとも起因して、バインダー中のポリマー粒子の熱分解をも生じさせうる。
【0017】
したがって、ポリマーの劣化なしに結合を促進させるエネルギーを適用することによって、バインダー中のポリマー粒子を迅速に溶融させることに対する要望が存在している。
【0018】
本願で使用するところでは、用語「パターン化3次元オブジェクト」は、最終的な3D印刷部品を表す形状を有し、バインダー流体でパターン化された金属構築材料を含む、中間部品を参照している。パターン化3次元オブジェクトにおいては、金属構築材料粒子は、バインダー流体の少なくとも1つの成分によって、および/または金属構築材料粒子とバインダー流体の間の引力(単数または複数)によって、相互に弱く結合されていてよく、またはされていなくてよい。幾つかの場合においては、パターン化3次元オブジェクトの機械的強度は、それを取り扱うことができないか、または構築材料プラットフォームから取り出すことができない程度のものである。さらにまた、バインダー流体でパターン化されていない任意の金属構築材料は、それがパターン化3次元オブジェクトに隣接し、またはそれを取り囲んでいるとしても、パターン化3次元オブジェクトの一部としては考慮されないことが理解されよう。
【0019】
本願で使用するところでは、用語「3次元オブジェクト」は、約0.5J/cmから約20J/cmのエネルギー密度を有するエネルギー束を約1秒未満適用することにより、選択的に適用されたバインダー流体をフラッシュ定着(溶融)し、金属構築材料および選択的に適用されたバインダー流体を結合することから形成される、パターン化3次元オブジェクトを参照している。
【0020】
本願で使用するところでは、用語「焼結3次元オブジェクト」は、フラッシュ定着プロセスに暴露されたパターン化3次元オブジェクトを参照しており、このプロセスはバインダー流体中でのポリマー粒子の溶融を開始させ、そしてまたバインダー流体の液体成分の蒸発に寄与してよく、かくしてポリマー粒子がポリマーの膠(接着剤)を形成して、それが金属構築材料粒子を被覆し、そして金属構築材料粒子相互間の結合を生成または強化させるようにする。換言すれば、「焼結3次元オブジェクト」は、最終的な3D印刷部品を表す形状を備えた中間部品であり、バインダー流体(金属構築材料をパターン化するのに用いた)のポリマー粒子を少なくとも実質的に溶融することによって相互に結合された金属構築材料を含んでいる。パターン化3次元オブジェクトに比較すると、焼結3次元オブジェクトの機械的強度はより大きい。
【0021】
本願で使用するところでは、用語「焼結3次元オブジェクト」はまた、焼結温度に加熱された「3次元オブジェクト」を参照している。
【0022】
本願で使用するところでは、用語「3D印刷部品」、「3D部品」、または「金属部品」は、完成された焼結3次元オブジェクトを参照している。
【0023】
幾つかの例においては、3次元オブジェクトを印刷するための方法は:
(i)金属構築材料を適用し;
(ii)金属構築材料の少なくとも一部の上にバインダー流体を選択的に適用し、ここでバインダー流体は、液体ビヒクルおよび液体ビヒクル中に分散したポリマー粒子を含み;
(iii)約0.5J/cmから約20J/cmのエネルギー密度を有するエネルギー束を約1秒未満適用することにより、選択的に適用されたバインダー流体をフラッシュ定着して、金属構築材料および選択的に適用されたバインダー流体を結合させ;そして
(iv)(i)、(ii)、および(iii)を少なくとも1回繰り返して3次元オブジェクトを形成することを含むことができる。
【0024】
幾つかの例においては、バインダー流体中の液体の少なくとも部分的な蒸発は、フラッシュ定着の結果として生ずる。
【0025】
幾つかの例においては、3次元オブジェクトを印刷するための方法は、(ii-a)バインダー流体から実質的に殆どの液体を除去することによって、選択的に適用されたバインダー流体を乾燥することをさらに含むことができる。
【0026】
幾つかの例においては、3次元オブジェクトを印刷するための方法は、(v)3次元オブジェクトを焼結温度まで加熱することをさらに含むことができる。
【0027】
幾つかの例においては、ポリマー粒子は約25℃から約125℃のガラス転移温度を有することができ;そしてポリマー粒子は約250℃から約600℃の熱分解温度を有することができる。
【0028】
幾つかの例においては、フラッシュ定着温度は約125℃から約400℃であることができ、または幾つかの例において約125℃から約450℃であることができる。
【0029】
幾つかの例においては、フラッシュ定着は、金属構築材料および選択的に適用されたバインダー流体へと、非コヒーレント光エネルギーを少なくとも1つのパルスとして適用する、光エネルギーエミッタ(放出器)を使用して行われることができる。
【0030】
幾つかの例においては、フラッシュ定着は金属構築材料およびバインダー流体を照射することができる。
【0031】
幾つかの例においては、フラッシュ定着は気体放電光エネルギーエミッタを使用して行われることができ;そして気体放電光エネルギーエミッタに用いられる気体は、キセノン、クリプトン、アルゴン、ヘリウム、ネオン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択することができる。
【0032】
幾つかの例においては、ポリマー粒子はバインダー流体中に、バインダー流体の合計重量に基づいて約2重量%から約30重量%の範囲の量で存在することができる。
【0033】
幾つかの例においては、3次元オブジェクトを印刷するための印刷システムが記載される。この印刷システムは:金属構築材料の供給部と;構築材料分配器と;バインダー流体の供給部と、バインダー流体は液体ビヒクルおよび液体ビヒクルに分散したポリマー粒子を含むことと;バインダー流体を選択的に分配するインクジェットアプリケータと;および約0.5J/cmから約20J/cmのエネルギー密度を有するエネルギー束を約1秒未満適用することにより、選択的に適用されたバインダー流体をフラッシュ定着して金属構築材料および選択的に適用されたバインダー流体を結合するための光エネルギーエミッタを含むことができる。
【0034】
幾つかの例においては、光エネルギーエミッタは、約0.5J/cmから約25J/cm、または約20J/cm未満、または約10J/cm未満、または約5J/cm未満、または約2J/cm未満、または約1J/cm未満のエネルギー密度を有するエネルギー束を適用することができる。このエネルギー密度は、層ごとに、または2層ごとに、または3層ごとに、またはその他のように適用することができ、またはパターン化3次元オブジェクトが完全にパターン化された場合に適用することができる。
【0035】
幾つかの例においては、光エネルギーエミッタはエネルギー束を、約1秒未満、または約0.5秒未満、または約0.1秒未満、または約0.01秒未満にわたって適用することができる。この期間は層ごとに、または2層ごとに、または3層ごとに、またはその他のように適用することができ、またはパターン化3次元オブジェクトが完全にパターン化された場合に適用することができる。
【0036】
幾つかの例においては、印刷システムはさらに:コントローラと;および非一時的なコンピュータ可読媒体とを含むことができ、この可読媒体は:構築材料分配器およびインクジェットアプリケータを使用して選択的に適用されたバインダー流体を有する少なくとも1層の金属構築材料を繰り返し形成し、そして光エネルギーエミッタを使用して約0.5J/cmから約20J/cmのエネルギー密度を有するエネルギー束を約1秒未満適用することにより、選択的に適用されたバインダー流体をフラッシュ定着させて金属構築材料および選択的に適用されたバインダー流体を結合させることにより、コントローラに3次元オブジェクトを印刷させるための、コンピュータ実行可能な命令を記憶している。
【0037】
幾つかの例においては、非一時的なコンピュータ可読媒体は:さらに少なくとも1つの熱源を使用して3次元オブジェクトを焼結温度まで加熱することにより、コントローラに3次元オブジェクトを印刷させるための、コンピュータ実行可能な命令を記憶している。
【0038】
幾つかの例においては、3次元オブジェクトを焼結温度まで加熱することは、約10分間から約48時間、または約36時間未満、または約24時間未満、または約12時間未満、または約10時間未満、または約8時間未満、または約6時間未満、または約4時間未満、または約2時間未満、または約1時間未満の範囲にわたる焼結期間について実行することができる。
【0039】
幾つかの例においては、3次元オブジェクトを焼結温度まで加熱することは、不活性ガス、低反応性ガス、還元性ガス、真空を包含する環境において、これらの少なくとも1つに対するステージでの暴露において、またはこれらの組み合わせにおいて行われることができる。
【0040】
幾つかの例においては、ポリマー粒子は、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、メチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ビニルベンジルクロリド、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールメタクリレート、エトキシル化ベヘニルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジメチルマレエート、ジオクチルマレエート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニル-カプロラクタム、これらの組み合わせ、これらの誘導体、およびこれらの混合物からなる群より選択された(しかしこれらに限定されるものではない)モノマーのフリーラジカル重合によって生成された、ラテックスポリマー粒子であることができる。
【0041】
本願に開示された幾つかの例において、バインダー流体はポリマー粒子を含むことができ、ポリマー粒子はバインダー流体の液体ビヒクル全体に分散されている。金属構築材料の層に対して適用された場合に、液体ビヒクルは構築材料を濡らすことが可能であり、そしてポリマー粒子は層の微細な孔(すなわち、金属構築材料粒子相互の間の間隙)の中へと侵入することができる。こうして、ポリマー粒子は金属構築材料粒子相互の間の空の間隙の中へと動くことができる。バインダー流体中のポリマー粒子は、バインダー流体中のポリマー粒子をフラッシュ定着することによって、活性化され、硬化され、および/または溶融されることができる。フラッシュ定着に際して、約0.5J/cmから約20J/cmのエネルギー密度を有するエネルギー束を約1秒未満にわたって適用することにより、選択的に適用されたバインダー流体は、金属構築材料を結合する。活性化され、硬化され、または溶融された場合に、バインダー流体中のポリマー粒子は、金属構築材料粒子を3次元オブジェクトの形状へと接着する、少なくとも実質的に連続するネットワークを形成する。3次元オブジェクトは十分な機械的強度を有しており、かくしてそれは、有害な影響を受けることなしに(例えば、形状が失われない)、構築材料プラットフォームからの取り出しに耐えることができる。
【0042】
幾つかの例においては、一旦取り出してから、3次元オブジェクトをポリマー粒子の熱分解温度まて加熱してポリマー粒子を熱分解させることにより、3次元オブジェクトは脱バインダーすることができる。ポリマー粒子の少なくとも幾らかが熱分解されると、少なくとも実質的にポリマーを含まない部品を形成することができる。次いで、少なくとも実質的にポリマーを含まない部品は焼結温度まで加熱して、金属構築材料粒子を焼結させ、そして金属部品を形成することができる。
【0043】
幾つかの例においては、一旦取り出してから、3次元オブジェクトを焼結温度まで加熱して金属構築材料粒子を焼結させ、そして焼結3次元オブジェクトまたは金属部品を形成することができる。
【0044】
本願の図面を参照するとき、図示された部材およびスケールは、機能および目標とする結果に影響を与えない仕方において、異なる大きさおよび位置へと再構成可能であることが理解されよう。
【0045】
さて図1を参照すると、3D印刷システム10の例が示されている。3D印刷システム10は追加の部品を含んでいてよいこと、および本願に記載された部品の幾つかは取り外しおよび/または改造してよいことが理解されよう。さらにまた、図1に示された3D印刷システム10の部品は縮尺通りでない可能性があり、かくして、3D印刷システム10は本願に示されたものと異なる大きさおよび/または構成を有していてよい。
【0046】
3次元(3D)印刷システム10は一般に、金属構築材料16の供給部14と;構築材料分配器18と;バインダー流体36の供給部と、このバインダー流体36が液体ビヒクルおよび液体ビヒクル中に分散されたポリマー粒子を含むことと;バインダー流体36(図2C)を選択的に分配するためのインクジェットアプリケータ24と;少なくとも1つの光エネルギーエミッタ32、32’と;コントローラ28と;および非一時的なコンピュータ可読媒体とを含んでおり、この可読媒体はコントローラ28に:構築材料分配器18およびインクジェットアプリケータ24を使用して、構築材料分配器18によって適用されバインダー流体36を受け取っている金属構築材料16の複数の層34(図2B)を繰り返して形成させ、それによってパターン化3次元オブジェクト42(図2E)を生成し、そして少なくとも1つの光エネルギーエミッタ32、32’を使用してパターン化3次元オブジェクト42中のポリマー粒子をフラッシュ定着させ、3次元オブジェクト42’を生成し、そして熱源48を使用して3次元オブジェクト42’を焼結温度まで加熱して金属部品50を形成するための、コンピュータ実行可能な命令を記憶している。
【0047】
図1に示されているように、印刷システム10は、構築領域プラットフォーム12と、金属構築材料粒子16を含有している構築材料供給部14と、および構築材料分配器18とを含んでいる。
【0048】
構築領域プラットフォーム12は、金属構築材料16を構築材料供給部14から受け取る。構築領域プラットフォーム12は、印刷システム10と一体化されていてもよく、または印刷システム10へと別個に挿入可能な部材であってもよい。例えば、構築領域プラットフォーム12は、印刷システム10とは別個に入手可能なモジュールであってよい。図示されている構築領域プラットフォーム12はまた1つの例であって、プラテン、製造ベッド/印刷ベッド、ガラス板、または他の構築表面といった、別の支持部材で置き換えられていてもよい。
【0049】
構築領域プラットフォーム12は、矢印20によって示されている方向、例えばz軸に沿って移動されてよく、かくして金属構築材料16はプラットフォーム12に対して分配されてよく、または先に形成された金属構築材料16の層(図2D参照)に対して分配されてよい。ある例では、金属構築材料粒子16が分配される場合に、構築領域プラットフォーム12は十分に前進する(例えば、下方へ)ようにプログラムされてよく、かくして構築材料分配器18が金属構築材料粒子16をプラットフォーム12上に押し付けて、その上に金属構築材料16の層34を形成することができるようにする(例えば、図2Aおよび図2B参照)。構築領域プラットフォーム12はまた、例えば新たな部品を構築する場合に、元の位置に復帰してよい。
【0050】
構築材料供給部14は、容器、ベッド、または金属構築材料粒子16を構築材料分配器18と構築領域プラットフォーム12の間に配置するための他の表面であってよい。幾つかの例においては、構築材料供給部14は表面を含んでいてよく、金属構築材料粒子16はその上へと、例えば構築材料供給部14の上方に配置された構築材料源(図示せず)から供給されてよい。構築材料源の例には、ホッパー、オーガーコンベア、またはその他が含まれていてよい。加えて、または代替的に、構築材料供給部14は、金属構築材料粒子16を貯蔵位置から、構築領域プラットフォーム12の上へと、または先に形成された金属構築材料16の層の上へと拡延するための位置に付与するための、例えば移動させるための機構(例えば配送ピストン)を含んでいてよい。
【0051】
構築材料分配器18は、構築材料供給部14を越え、そして構築領域プラットフォーム12を横断して、矢印22によって示されている方向、例えばy軸に沿って移動されてよく、金属構築材料16の層を構築領域プラットフォーム12上に拡延する。構築材料分配器18はまた、金属構築材料16の拡延に続いて、構築材料供給部14に隣接する位置へと復帰してよい。構築材料分配器18は、ブレード(例えば、ドクターブレード)、ローラー、ローラーとブレードの組み合わせ、および/または金属構築材料粒子16を構築領域プラットフォーム12上に拡延することのできる、任意の他の装置であってよい。例えば、構築材料分配器18は、逆方向に回転するローラーであってよい。
【0052】
金属構築材料16は、任意の粒状金属材料であってよい。ある例では、金属構築材料16は粉体であってよい。別の例では、金属構築材料16は、焼結温度(例えば、約850℃から約2500℃の範囲の温度)に加熱された場合に、焼結して連続体となり、金属部品50(例えば、図2F参照)を形成する性質を有していてよい。「連続体」によって意味するところは、金属構築材料粒子が相互に融合して、空隙が殆どまたは全くなく、そして目標とする最終的な金属部品50の条件に合致する十分な機械的強度を備えた、単一の部品を形成することである。
【0053】
例示的な焼結温度の範囲について示唆したが、この温度は、部分的には金属構築材料16の組成および相(単数または複数)に応じて変動してよいことが理解されよう。
【0054】
ある例では、金属構築材料16は1つの元素から構成される単相の金属材料である。この例においては、焼結温度はこの単一元素の融点よりも低くてよい。
【0055】
別の例では、金属構築材料16は2つまたはより多くの元素から構成されることができ、単相合金または多相合金の形態であることができる。これら別の例においては、溶融は一般に、ある温度範囲にわたって生ずる。幾つかの単相合金については、溶融は固相線温度(溶融が開始される温度)のすぐ上で開始され、液相線温度(すべての固体が溶融した温度)を超えるまでは完了しない。他の単相合金については、溶融は包晶温度のすぐ上で開始される。包晶温度は、単相固体が二相固体に液体が加わった混合物に転化する点によって定義され、そこでは包晶温度を超える固体は包晶温度未満の固体とは異なる相にある。金属構築材料16は二相またはより多くの相から構成され(例えば、2つまたはより多くの元素から作成された多相合金)、溶融は一般に、共晶温度または包晶温度を超えた場合に開始される。共晶温度は、単相液体が二相固体へと完全に固化する温度によって定義される。一般に、単相合金または多相合金の溶融は、固相線温度、共晶温度、または包晶温度のすぐ上で開始され、液相線温度を超えるまでは完了しない。幾つかの例においては、焼結は、固相線温度、包晶温度、または共晶温度未満において生ずる可能性がある。他の例においては、焼結は固相線温度、包晶温度、または共晶温度より上で生ずる。固相線温度より上での焼結は、超固相線焼結として参照され、この技術は、より大きな構築材料粒子を使用する場合、および/または高密度を達成する場合に有用でありうる。ある例では、構築材料組成物は、金属構築材料の少なくとも40体積%が、目標とする焼結温度を超える融点を有する相(単数または複数)で構成されるように選択されてよい。焼結温度は、隣接する粒子の間での原子の移動性を許容するのに十分なエネルギーをもたらすよう、十分に高くてよいことが理解されよう。幾つかの例においては、金属構築粒子の大きさは、焼結温度が固相線温度より約100℃から150℃低くてよいように、十分に小さなものとすることができる。理論に拘束されることを望むものではないが、金属構築粒子の大きさが小さくなるほど、焼結プロセスを速くすることができ、そして焼結プロセスの間により低い温度を使用することができる。
【0056】
単一の元素または合金を、金属構築材料16として使用してよい。金属構築材料16の幾つかの例には、鋼、ステンレススチール、ブロンズ、チタン(Ti)およびその合金、アルミニウム(Al)およびその合金、ニッケル(Ni)およびその合金、コバルト(Co)およびその合金、鉄(Fe)およびその合金、ニッケルコバルト(NiCo)合金、金(Au)およびその合金、銀(Ag)およびその合金、白金(Pt)およびその合金、および銅(Cu)およびその合金が含まれる。幾つかの具体的な例には、AlSi10Mg、2000番系のアルミニウム、4000番系のアルミニウム、CoCr MP1、CoCr SP2、マルエージング鋼MS1、ハステロイC、ハステロイX、ニッケルアロイHX、インコネルIN625、インコネルIN718、SS GP1、SS 17-4PH、SS 316L、Ti6Al4V、およびTi-6Al-4V ELI7が含まれる。幾つかの例示的な合金について示唆してきたが、PbSnハンダ合金のような他の合金構築材料も使用してよいことが理解されよう。
【0057】
本願で開示される3D印刷方法(単数または複数)の開始時において、粉体形態である任意の金属構築材料16を使用してよい。かくして、金属構築材料16の融点、固相線温度、共晶温度、および/または包晶温度は、この3D印刷方法のパターン化部分が実行される環境温度よりも高くてよい(例えば、40℃を超える)。幾つかの例においては、金属構築材料16は約850℃から約3500℃の範囲にある融点を有してよい。他の例においては、金属構築材料16はある範囲にわたる融点を有する合金であってよい。合金は、低いもので約-39℃(例えば、水銀)、または約30℃(例えば、ガリウム)、または約157℃(例えば、インジウム)の融点を持つ金属を含んでいてよい。
【0058】
金属構築材料16は、類似の大きさの粒子または異なる大きさの粒子から構成されていてよい。本願に示された例では(図1および図2Aから図2F)、金属構築材料16は類似の大きさの粒子を含んでいる。用語「大きさ」は、金属構築材料16に関して本願で使用するところでは、実質的に球形の粒子の直径(すなわち、>0.84の真球度を有する球形の粒子またはほぼ球形の粒子)、または非球形粒子の平均径(すなわち、粒子を横切る直径の複数個の平均)を参照している。この粒径の実質的に球形の粒子は、良好な流動性を有し、比較的簡単に拡延可能である。例として、金属構築材料16の粒子の平均粒径は、約1μmから約200μmの範囲にあってよい。別の例として、金属構築材料16の粒子の平均粒径は、約10μmから約150μmの範囲にある。さらに別の例として、金属構築材料16の粒子の平均粒径は、約15μmから約100μmの範囲にある。
【0059】
図1に示されているように、印刷システム10はまたアプリケータ24を含んでおり、これは本願で開示されるバインダー流体36(図2Cに示す)を含んでいてよい。
【0060】
バインダー流体36は、少なくとも液体ビヒクルおよびポリマー粒子を含んでいる。幾つかの場合においては、バインダー流体36は何ら他の成分なしに、液体ビヒクルおよびポリマー粒子からなる。
【0061】
ポリマー粒子は、形成される3次元オブジェクト42、42’(図2Eに示す)の種々の段階において存在し、次いで最終的に除去され(熱分解を通じて)、そしてそれゆえ最終的な焼結3D部品50(図2Fに示す)に存在しないという点において、犠牲的な中間バインダーである。
【0062】
本願に開示される例において、ポリマー粒子は液体ビヒクルに分散されていてよい。ポリマー粒子は幾つかの異なる形態構造を有していてよい。例えば、ポリマー粒子は、IPN(相互貫入ネットワーク(網目構造))にしたがって相互分散されていてよい、高いTの親水性(ハード)成分(単数または複数)および/または低いTの疎水性(ソフト)成分(単数または複数)のポリマー組成物を含有する、個々の球形粒子であってよいが、高いTの親水性成分および低いTの疎水性成分が他の仕方で相互分散されていてよいことも考慮されている。別の例として、ポリマー粒子は、低いTの連続または不連続な疎水性コアが連続または不連続の高いTの親水性シェルによって取り囲まれ、または親水性シェルのドメインと部分的に合体することによって作成されていてよい。別の例として、ポリマー粒子の形態構造はラズベリーに類似していてよく、そこでは低いTの疎水性コアが、コアに付着された高いTの幾つかの小さな親水性粒子によって取り囲まれている。さらに別の例として、ポリマー粒子は、少なくとも部分的に相互に付着した、2個、3個、または4個の粒子を含んでいてよい。
【0063】
本願の例において、高いTの親水性成分(単数または複数)/シェル/粒子、および低いTの親水性成分(単数または複数)/コア/粒子は、お互いとの関係において定義されてよい(すなわち、高いTの親水性成分(単数または複数)/シェル/粒子は、低いTの親水性成分(単数または複数)/コア/粒子よりも高いTを有しており、そして低いTの親水性成分(単数または複数)/コア/粒子は、高いTの親水性成分(単数または複数)/シェル/粒子)よりも低いTを有している。幾つかの例においては、高いTの親水性成分(単数または複数)/シェル/粒子は、25℃よりも高いTを有している。他の例では、高いTの親水性成分(単数または複数)/シェル/粒子は、45℃よりも高いTを有している。幾つかの例においては、低いTの親水性成分(単数または複数)/コア/粒子は、25℃よりも低いTを有している。他の例では、低いTの親水性成分(単数または複数)/コア/粒子は、5℃よりも低いTを有している。
【0064】
ポリマー粒子は、インクジェット印刷(例えば、サーマルインクジェット印刷または圧電(ピエゾ)インクジェット印刷)を介して噴射可能な、任意のラテックスポリマー(すなわち、乳化重合および/またはミニエマルジョン重合として知られる技術によって作成されることが可能なポリマー)であってよい。本願に開示される幾つかの例において、ポリマー粒子はヘテロポリマーまたはコポリマーである。ヘテロポリマーは、より疎水性の成分と、より親水性の成分とを含んでいてよい。これらの例において、親水性成分は粒子をバインダー流体36中で分散可能なものとし、これに対して疎水性成分は光エネルギーに曝露された場合に合体可能であって、3次元オブジェクト42’を形成するために、金属構築材料粒子16を相互に一時的に結合する。
【0065】
の疎水性成分を形成するのに使用してよい、低いTのモノマーの例には、C4からC8のアルキルアクリレートまたはメタクリレート、スチレン、置換メチルスチレン、ポリオールアクリレートまたはメタクリレート、ビニルモノマー、ビニルエステル、またはその他が含まれる。幾つかの具体的な例には、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、ジメチルマレエート、ジオクチルマレエート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、スチレン、メチルスチレン(例えば、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン)、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ビニルベンジルクロリド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニル-カプロラクタム、これらの組み合わせ、これらの誘導体、またはこれらの混合物が含まれる。
【0066】
幾つかの例においては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレートおよびエチルアクリレートを使用することができる。
【0067】
幾つかの例においては、特定のモノマーは、それが組み合わせられるモノマーに応じ、親水性として、または疎水性として考慮されてよい。メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、およびエチルアクリレートは、疎水性の群および親水性の群の両方に属することができる。幾つかの例においては、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルを使用することができる。
【0068】
幾つかの例においては、2つまたはより多くの疎水性モノマーを使用することが可能であるが、これは相互に非相溶性であることからある程度の相分離を導きうるものであって、それによって粒子内に小さなドメインの形成を導く。代替的には、2つまたはより多くの親水性モノマーを使用することができる。
【0069】
幾つかの例においては、任意のポリマー組成物の親水性を変性する(例えば、増大させる)ために、酸の官能性を使用してよい。
【0070】
ヘテロポリマーは、上掲のモノマーの少なくとも2つ、または上掲のモノマーの少なくとも1つと、酸性モノマーのような高いTの親水性モノマーで形成されてよい。ポリマー粒子を形成するについて重合することのできる酸性モノマーの例には、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、ジメチルアクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、シアノアクリル酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、エチリジン酢酸、プロピリジン酢酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、スチリルアクリル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、フェニルアクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、アコニット酸、フェニルアクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、ビニル安息香酸、N-ビニルスクシナミン酸、メサコン酸、メタクリロイルアラニン、アクリロイルヒドロキシグリシン、スルホエチルメタクリル酸、スルホプロピルアクリル酸、スチレンスルホン酸、スルホエチルアクリル酸、2-メタクリロイルオキシメタン-1-スルホン酸、3-メタクリロイルオキシプロパン-1-スルホン酸、3-(ビニルオキシ)プロパン-1-スルホン酸、エチレンスルホン酸、ビニル硫酸、4-ビニルフェニル硫酸、エチレンホスホン酸、ビニルリン酸、ビニル安息香酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、これらの組み合わせ、これらの誘導体、またはこれらの混合物が含まれる。高いTの親水性モノマーの他の例には、アクリルアミド、メタクリルアミド、モノヒドロキシル化モノマー、モノエトキシル化モノマー、ポリヒドロキシル化モノマー、またはポリエトキシル化モノマーが含まれる。
【0071】
本願に開示のヘテロポリマーにおいて、低いTの疎水性成分(単数または複数)はポリマーの約0%から約40%を構成し、そして高いTの親水性成分(単数または複数)はポリマーの約65%から約100%を構成する。
【0072】
ある例では、選択されたモノマー(単数または複数)が重合されてヘテロポリマーが形成される。任意の適切な重合プロセスを使用してよい。例えば、疎水性-親水性ポリマー粒子は:i)高いTの親水性ポリマーを低いTの疎水性ポリマーの形成後に生成すること、ii)低いTの疎水性モノマーおよび高いTの親水性モノマーを、高いTの親水性モノマーがより多くなる比率で逐次共重合すること、iii)高いTのモノマー組成物の親水的性質を増大させて、粒子の表面付近に高いTがより高い濃度であるようにすること、またはiv)高いTの親水性外側成分またはシェルが内側成分またはコアに対してより多くなるように生成する、任意の他の一般的な方法といった、多くの技術の任意のものによって形成することができる。これらの疎水性-親水性ポリマー粒子は、コア-シェル粒子であってよい。しかしながら理解されるように、これらの技術はまた、他の形態構造を有するポリマー粒子を形成するものであってもよく、そうした形態構造には本願で記載したものが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0073】
ポリマー粒子は、サーマルインクジェット印刷または圧電印刷または連続インクジェット印刷を通じて噴射可能な粒径を有していてよい。ある例においては、ポリマー粒子の粒径は約10nmから約300nmの範囲にある。
【0074】
幾つかの例においては、ポリマー粒子は、周囲温度よりも高い(例えば、>)ガラス転移温度(T)を有している。他の例においては、ポリマー粒子は、周囲温度よりもずっと高い(例えば、>>)ガラス転移温度(T)を有している(すなわち、周囲よりも少なくとも15°高い)。本願で使用するところでは、「周囲温度」は室温(例えば、約18℃から約22℃の範囲にある)を参照してよく、または3D印刷方法が実行される環境の温度を参照してよい。3D印刷環境の周囲温度の例は、約40℃から約50℃の範囲にあってよい。ポリマー粒子のバルク材料(例えば、より疎水性の部分)のガラス転移温度Tは、25℃から約125℃の範囲にあってよい。ある例では、ポリマー粒子のバルク材料(例えば、より疎水性の部分)のガラス転移温度Tは、約40℃またはそれを上回っていてよい。バルク材料のガラス転移温度Tは、プリンタの動作温度において、軟らかくなり過ぎることなしにポリマー粒子をインクジェット印刷可能とする、任意の温度であってよい。
【0075】
ポリマー粒子は、約50℃から約150℃の範囲にある融点を有していてよい。ある例では、ポリマー粒子は約90℃の融点を有していてよい。
【0076】
ポリマー粒子の重量平均分子量は、約5,000Mwから約500,000Mwの範囲にあってよい。幾つかの例においては、ポリマー粒子の重量平均分子量は、約100,000Mwから約500,000Mwの範囲にある。幾つかの他の例においては、ポリマー粒子の重量平均分子量は、約150,000Mwから300,000Mwの範囲にある。
【0077】
ポリマー粒子はバインダー流体36中に、約2重量%から約30重量%、または約3重量%から約20重量%、または約5重量%から約15重量%(バインダー流体36の合計の重量%に基づく)の範囲にわたる量で存在していてよい。別の例においては、ポリマー粒子はバインダー流体36中に、約20体積%から約40体積%(バインダー流体36の合計の体積%に基づく)の範囲にわたる量で存在していてよい。ポリマー粒子のこうした添加量は、バインダー流体36の有する噴射信頼性および結合効率の間にバランスをもたらすものと考えられる。
【0078】
バインダー流体36が金属構築材料層またはベッド上に適用される場合、各回のパスにおいて付着されるバインダー流体の量は、約0.1マイクロリットルから約1000マイクロリットル、または約1マイクロリットルから約500マイクロリットル、または約5マイクロリットルから約100マイクロリットル、または約10マイクロリットルから約50マイクロリットル、または約1000マイクロリットル未満、または約500マイクロリットル未満、または約100マイクロリットル未満、または約0.1マイクロリットル超、または約1マイクロリットル超、または約10マイクロリットル超である。
【0079】
幾つかの例においては、バインダー流体36は、ポリマー粒子に加えて合体溶媒を含んでいる。これらの例においては、合体溶媒はポリマー粒子を可塑化し、金属構築材料粒子16を一時的に相互に結合させて3次元オブジェクト42’を形成させるために、光エネルギーへの曝露に際してポリマー粒子の合体を強化させる。幾つかの例においては、バインダー流体36は、ポリマー粒子および合体溶媒からなっていてよい(他の成分を有しない)。これらの例においては、液体ビヒクルは合体溶媒からなり(他の成分を有しない)、そして合体溶媒はバインダー流体36の残部を構成する。
【0080】
幾つかの例においては、合体溶媒は、2-ピロリジノンまたは1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンのようなラクトンであってよい。他の例においては、合体溶媒は、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテルアセテート、またはエチレングリコールモノn-ブチルエーテルアセテートのような、グリコールエーテルまたはグリコールエーテルエステルであってよい。さらに別の例においては、合体溶媒は、2-メチル-1,3-プロパンジオールのような水溶性多価アルコールであってよい。さらに他の例においては、合体溶媒は、上記した例の任意の組み合わせであってよい。さらに他の例においては、合体溶媒は、2-ピロリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノn-ブチルエーテルアセテート、2-メチル-1,3-プロパンジオール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0081】
合体溶媒はバインダー流体36中に、約0.1重量%から約50重量%の範囲にわたる量(バインダー流体36の合計の重量%に基づく)で存在していてよい。幾つかの例においては、部分的にはアプリケータ24の噴射アーキテクチャに依存して、より多い量またはより少ない量の合体溶媒を使用してよい。
【0082】
ある例においては、ポリマー粒子はバインダー流体中に、約2重量%から約30重量%の範囲にわたる量で存在し、そして合体溶媒はバインダー流体中に、約0.1重量%から約50重量%の範囲にわたる量で存在する。
【0083】
上述したように、バインダー流体36はポリマー粒子および液体ビヒクルを含んでいる。本願で使用するところでは、「液体ビヒクル」は、その中にポリマー粒子が分散されてバインダー流体36を形成するところの、液体の流体を参照していてよい。バインダー流体36については、水性ビヒクルおよび非水性ビヒクルを含む、種々多様な液体ビヒクルが使用されてよい。幾つかの場合においては、液体ビヒクルは主溶媒からなり、他の成分を有しない。
【0084】
他の例においては、バインダー流体36を分配するために使用されるアプリケータ24に部分的に依存して、バインダー流体36は他の成分を含んでいてよい。他の適切なバインダー流体成分の例には、共溶媒(単数または複数)、界面活性剤(単数または複数)、抗微生物剤(単数または複数)、抗コゲーション剤(単数または複数)、粘度調節剤(単数または複数)、pH調節剤(単数または複数)、および/または金属イオン封鎖剤(単数または複数)が含まれる。バインダー流体36中に共溶媒および/または界面活性剤が存在すると、金属構築材料16について特定の濡れ挙動を得るのが補助されうる。
【0085】
主溶媒は、水または非水性溶媒(例えば、エタノール、アセトン、n-メチルピロリドン、または脂肪族炭化水素)であってよい。幾つかの例においては、バインダー流体36はポリマー粒子および主溶媒からなる(他の成分を有しない)。これらの例においては、主溶媒はバインダー流体36の残部を構成してよい。
【0086】
水性のバインダー流体36において使用されてよい有機共溶媒の種類には、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジオール、グリコールエーテル、ポリグリコールエーテル、2-ピロリドンのようなラクタム、カプロラクタム、ホルムアミド、アセトアミド、グリコール、および長鎖アルコールが含まれる。これらの共溶媒の例には、一級脂肪族アルコール、二級脂肪族アルコール、1,2-アルコール、1,3-アルコール、1,5-アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの高級同族体(C-C12)、N-アルキルカプロラクタム、未置換のカプロラクタム、置換および未置換の両方のホルムアミド、置換および未置換の両方のアセトアミド、およびその他が含まれる。
【0087】
幾つかの適切な共溶媒の例には、水溶性高沸点溶媒(すなわち、保湿剤)が含まれ、これは少なくとも約120℃の沸点、またはこれを上回る沸点を有している。高沸点溶媒の幾つかの例には、2-ピロリドン(沸点約245℃)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(沸点約212℃)、およびこれらの組み合わせが含まれる。こうした共溶媒(単数または複数)はバインダー流体36中に、アプリケータ24の噴射アーキテクチャに依存して、バインダー流体36の合計の重量%に基づいて約1重量%から約50重量%の範囲にわたる合計量で存在してよい。
【0088】
界面活性剤(単数または複数)は、バインダー流体36の濡れ特性および噴射特性を改善するために使用されてよい。適切な界面活性剤の例には、自己乳化性の、アセチレン系ジオールの化学特性に基づくノニオン性湿潤剤(例えば、エアプロダクツ社のSURFYNOL登録商標SEF)、ノニオン性フルオロ界面活性剤(例えば、以前はZONYL FSOとして知られていた、デュポン社のCAPSTONE登録商標フルオロ界面活性剤)、およびこれらの組み合わせが含まれる。他の例においては、界面活性剤はエトキシル化低発泡性湿潤剤(例えば、エアプロダクツ社のSURFYNOL登録商標440またはSURFYNOL登録商標CT-111)またはエトキシル化湿潤剤および分子消泡剤(例えば、エアプロダクツ社のSURFYNOL登録商標420)である。さらに他の適切な界面活性剤には、ノニオン性湿潤剤および分子消泡剤(例えば、エアプロダクツ社のSURFYNOL登録商標104E)または水溶性のノニオン性界面活性剤(例えば、ダウ・ケミカル社のTERGITOLTMTMN-6またはTERGITOLTM15-S-7)が含まれる。幾つかの例においては、10未満の親水性-親油性バランス(HLB)を有する界面活性剤を使用することが有用でありうる。
【0089】
単独の界面活性剤を使用する場合でも、界面活性剤の組み合わせを使用する場合でも、バインダー流体36中にある界面活性剤(単数または複数)の合計量は、バインダー流体36の合計重量%に基づいて、約0.01重量%から約10重量%の範囲にあってよい。別の例においては、バインダー流体36中にある界面活性剤(単数または複数)の合計量は、バインダー流体36の合計重量%に基づいて、約0.5重量%から約2.5重量%の範囲にあってよい。
【0090】
液体ビヒクルはまた、抗微生物剤(単数または複数)を含んでいてよい。適切な抗微生物剤には、殺生物剤および殺菌剤が含まれる。例示的な抗微生物剤には、NUOSEPTTM(トロイ社)、UCARCIDETM(ダウ・ケミカル社)、ACTICIDE登録商標M20(ソー社)、およびこれらの組み合わせが含まれてよい。適切な殺生物剤の例には、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンの水溶液(例えば、アーチケミカルズ社のPROXEL登録商標GXL)、四級アンモニウム化合物(例えば、すべてロンザ社のBARDAC登録商標2250および2280、BARQUAT登録商標50-65B、およびCARBOQUAT登録商標250-T)、およびメチルイソチアゾロンの水溶液(例えば、ダウ・ケミカル社のKORDEK登録商標MLX)が含まれる。殺生物剤または抗微生物剤は、バインダー流体36の合計重量%に関して、約0.05重量%から約0.5重量%の範囲にわたる任意の量(標準的な用量レベルで示されるところにより)で添加されてよい。
【0091】
抗コゲーション剤が、バインダー流体36中に含まれていてよい。コゲーションは、サーマルインクジェットプリントヘッドの加熱素子上の、乾燥したバインダー流体36の堆積物を参照する。抗コゲーション剤(単数または複数)は、コゲーションの蓄積防止を補助するために含有される。適切な抗コゲーション剤の例には、オレス-3-ホスフェートホスフェート(例えば、クロダ社からCRODAFOSTMO3AまたはCRODAFOSTMN-3アシッドとして商業的に入手可能)、またはオレス-3-ホスフェートおよび低分子量(例えば、<5,000)のポリアクリル酸ポリマー(例えば、ルブリゾール社からCARBOSPERSETMK-7028ポリアクリレートとして商業的に入手可能)が含まれる。単一の抗コゲーション剤が使用される場合でも、抗コゲーション剤の組み合わせが使用される場合でも、バインダー流体中の抗コゲーション剤(単数または複数)の合計量は、バインダー流体の合計の重量%に基づいて、0.20重量%超から約0.62重量%の範囲にあってよい。ある例では、オレス-3-ホスフェートは約0.20重量%から約0.60重量%の範囲内の量で含有され、そして低分子量ポリアクリル酸ポリマーは約0.005重量%から約0.03重量%の範囲内の量で含有される。
【0092】
EDTA(エチレンジアミン4酢酸)のような金属イオン封鎖剤を含有させて、重金属不純物の有害な影響を排除するようにしてよく、そしてバッファ溶液を使用して、バインダー流体36のpHを調節するようにしてよい。例えば、これらの成分の各々は、0.01重量%から2重量%を使用することができる。粘度調節剤およびバッファもまた、バインダー流体36の性質を修正するための他の添加剤と同様に存在していてよい。こうした添加剤は、約0.01重量%から約20重量%の範囲内の量において存在することができる。
【0093】
アプリケータ24は、矢印26によって示されている方向、例えばy軸に沿って、構築領域プラットフォーム12を横切って走査されてよい。アプリケータ24は例えば、サーマルインクジェットプリントヘッドまたは圧電プリントヘッドのような、インクジェットアプリケータであってよく、そして構築領域プラットフォーム12の幅方向に延在していてよい。アプリケータ24は図1において単一のアプリケータとして示されているが、アプリケータ24は構築領域プラットフォーム12の幅にわたって延在する複数のアプリケータを含んでいてよいことが理解されよう。加えて、アプリケータ24は複数のプリントバーに配置されていてよい。アプリケータ24はまた、例えばアプリケータ24が構築領域プラットフォーム12の幅にわたって延在されていない構成においては、アプリケータ24がバインダー流体36を金属構築材料16の層のより大きな面積に対して付着させることができるように、x軸に沿って走査されてもよい。かくしてアプリケータ24は、構築領域プラットフォーム12に隣接してアプリケータ24を移動させる、移動式XYステージまたは平行移動キャリッジ(いずれも示されていない)に取り付けられて、本願に開示された方法(単数または複数)にしたがって、構築領域プラットフォーム12上に形成された金属構築材料16の層の所定の領域にバインダー流体36を付着させてよい。アプリケータ24は複数のノズル(図示せず)を含んでいてよく、バインダー流体36はそれらを介して吐出される。
【0094】
アプリケータ24はバインダー流体36の液滴を、インチ当たり約150ドット(DPI)から約1200DPIの範囲の解像度において分配してよい。他の例においては、アプリケータ24はバインダー流体36の液滴を、より高い解像度またはより低い解像度で分配してよい。液滴の速度は、約2m/sから約24m/sの範囲にあってよく、そして噴射頻度(周波数)は約1kHzから約100kHzの範囲にあってよい。1つの例では、各々の液滴は液滴当たり約10ピコリットル(pl)程度であってよいが、より大きな液滴サイズまたはより小さな液滴サイズを使用してよいことも考慮されている。例えば、液滴サイズは約1plから約400plの範囲にあってよい。幾つかの例においては、アプリケータ24はサイズが可変のバインダー流体36の液滴を分配することができる。
【0095】
上述した物理的な要素の各々は、印刷システム10のコントローラ28に対して接続され、作動可能であってよい。コントローラ28は、構築領域プラットフォーム12、構築材料供給部14、構築材料分配器18、およびアプリケータ24の動作を制御してよい。例として、コントローラ28は、3D印刷システム10の部品の種々の動作を制御するための、アクチュエータ(図示せず)を制御してよい。コントローラ28は、コンピューティング装置、半導体ベースのマイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、および/または別のハードウェア装置であってよい。図示されていないが、コントローラ28は通信ラインを経由して、3D印刷システム10の部品に接続されていてよい。
【0096】
コントローラ28は、物理的な要素を制御するために、プリンタのレジスタおよびメモリの内部で物理的(電子的)な量として表されてよいデータを操作し、および変換して、3D部品50を生成する。そのためコントローラ28は、データストア30と通信状態にあるものとして示されている。データストア30は、3D印刷システム10によって印刷される3D部品50に関連するデータを含んでいてよい。金属構築材料粒子16および/またはバインダー流体36の選択的な分配のためのデータは、形成される3D部品50のモデルから導出されてよい。例えばデータは、アプリケータ24がバインダー流体36を付着させる、金属構築材料粒子16の各々の層上の位置を含んでいてよい。1つの例において、コントローラ28は、バインダー流体36を選択的に適用するために、アプリケータ24を制御するためのデータを使用してよい。データストア30はまた、構築材料供給部14によって供給される金属構築材料粒子16の量、構築領域プラットフォーム12の動き、構築材料分配器18の動き、またはアプリケータ24の動きを、コントローラ28が制御するようにさせる、機械読み取り可能な命令(非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶されている)を含んでいてよい。
【0097】
図1に示されているように、印刷システム10はまた、光エネルギーエミッタ32、32’を含んでいてよい。幾つかの例においては、光エネルギーエミッタ32は、金属構築材料粒子16および選択的に適用されたバインダー流体36に対して光エネルギー46を放出することのできる、ストロボランプのような少なくとも1つのエネルギー源を含むことができる。例えば、この少なくとも1つのエネルギー源はXe(キセノン)ストロボランプであってよく、構築材料粒子16の各々の層および選択的に適用されたバインダー流体36に対して、短い光のパルスを適用する。幾つかの例においては、光エネルギーエミッタ32は、構築材料粒子16の層および選択的に適用されたバインダー流体36に対して移動可能であってよい。
【0098】
いずれの場合でも、コントローラ28は光エネルギーエミッタ32を制御して、エネルギー46の短いバーストを種々のエネルギーレベルで適用してよい。例えば、コントローラ28は少なくとも1つのエネルギー源を制御して、特定の低いエネルギーレベルにおいて約15msにわたり、一度フラッシュする(閃光を発する)ようにしてよい。同様に、コントローラ28は少なくとも1つのエネルギー源を制御して、特定の付加的なエネルギーレベルにおいて約15msにわたり、一度フラッシュするようにしてよい。同様に、コントローラ28は少なくとも1つのエネルギー源を制御して、特定の高いエネルギーレベルにおいて約15msにわたり、一度フラッシュするようにしてよい。他の例においては、コントローラ28は、光エネルギーエミッタ32が種々のエネルギーレベルにおいてフラッシュされる回数および/または時間の長さを変化させてよい。例えば時間の長さは、金属構築材料16の金属の種類、粒径、および/または分布について変動されてよい。
【0099】
幾つかの例によれば、光エネルギーエミッタ32は、複数のエネルギーレベル、例えば、特定の低いエネルギーレベル、特定の付加的なエネルギーレベル、または特定の高いエネルギーレベルにおいて作動されてよい、単一のエネルギー源であってよい。他の例においては、この少なくとも1つのエネルギー源は、複数のエネルギー源であってよい。これらの例においては、コントローラ28は第1のエネルギー源を制御してエネルギーを特定の低いエネルギーレベルで適用してよく、第2のエネルギー源を制御してエネルギーを特定の付加的なエネルギーレベルで適用してよく、第3のエネルギー源を制御してエネルギーを特定の高いエネルギーレベルで適用してよい、といった具合である。これらの例のいずれにおいても、少なくとも1つのエネルギー源はキセノン(Xe)ストロボランプのような光溶融源であることができるが、他の種類のストロボランプもまた実施に供されてよい。
【0100】
幾つかの例においては、少なくとも1つのエネルギー源は、キセノン、アルゴン、ネオン、クリプトン、ナトリウム蒸気、金属ハロゲン化物、または水銀蒸気などを含む、連続波放電ランプであってよい。別の例においては、少なくとも1つのエネルギー源はパルスレーザーのアレイ、連続波レーザーのアレイ、発光ダイオード(LED)のアレイ、またはこれらの組み合わせであってよい。この例においては、アレイは一様に分散されたビームを生成してよい。さらに別の例においては、少なくとも1つのエネルギー源は、キセノンまたはクリプトンを含むフラッシュ放電ランプであってよい。さらに別の例においては、少なくとも1つのエネルギー源は、タングステン-ハロゲンの連続波ランプであってよい。さらに別の例においては、少なくとも1つのエネルギー源は、200nmを超える波長を有する光を発するシンクロトロン光源であってよい。
【0101】
光エネルギーエミッタ32は、バインダー流体36中のポリマー粒子をフラッシュ定着させることにより金属構築材料16を融合させるための、十分なエネルギーを発生することができる。少なくとも1つのエネルギー源が単一パルスの光源である場合、少なくとも1つのエネルギー源は、約0.5J/cmから約25J/cmを分配することができるものであってよい。少なくとも1つのエネルギー源が分配することのできるエネルギーの量は、少なくとも1つのエネルギー源が複数パルスの光源である場合には約20J/cm未満であってよく、または少なくとも1つのエネルギー源が複数パルスの光源である場合には約10J/cm未満であってよく、または少なくとも1つのエネルギー源が複数パルスの光源である場合には約5J/cm未満であってよく、または少なくとも1つのエネルギー源が複数パルスの光源である場合には約2J/cm未満であってよく、または少なくとも1つのエネルギー源が複数パルスの光源である場合には約1J/cm未満であってよい。
【0102】
少なくとも1つのエネルギー源を含むこの種類の光エネルギーエミッタ32は、バインダー流体36中のポリマー粒子をフラッシュ定着させて金属構築材料16を層ごとに結合するために、および/または印刷が完了した後に、構築材料のケーキ(塊)44の全体(図2E参照)をフラッシュ定着させるために使用されてよい。
【0103】
さて図2Aから図2Fを参照すると、3D印刷方法の例が描かれている。方法100を実行する前に、または方法100の一部として、コントローラ28は、印刷すべき3D部品50に関係してデータストア30に記憶されているデータにアクセスしてよい。コントローラ28は、形成すべき金属構築材料粒子16の層の数を決定してよく、そしてそれぞれの個々の層上でアプリケータ24からバインダー流体36を付着すべき位置を決定してよい。
【0104】
図2Aおよび図2Bに示されているように、方法100は金属構築材料16を適用することを含んでいる。図2Aにおいて、構築材料供給部14は金属構築材料粒子16を、それらが構築領域プラットフォーム12上へと拡延される準備位置へと供給してよい。図2Bにおいて、構築材料分配器18は供給された金属構築材料粒子16を、構築領域プラットフォーム12上へと拡延してよい。コントローラ28は、構築材料供給制御命令を実行してよく、構築材料供給部14を制御して金属構築材料粒子16を適宜位置決めし、そして拡延制御命令を実行してよく、構築材料分配器18を制御して供給された金属構築材料粒子16を構築領域プラットフォーム12上に拡延させて、その上に金属構築材料粒子16の層34を形成する。図2Bに示されているように、金属構築材料粒子16の1つの層34が適用されている。
【0105】
層34は、構築領域プラットフォーム12にわたって、実質的に一様な厚さを有している。ある例では、層34の厚さは約30μmから約300μmの範囲にあるが、より薄い層またはより厚い層を使用してもよい。例えば、層34の厚さは、約20μmから約500μmの範囲にあってよい。この層の厚さは、部品をより微細に定義するためには、最小限で粒径の約2×であってよい(図2Bに示すように)。幾つかの例においては、層の厚さは粒径の約1.2×(すなわち、1.2倍)であってよい。
【0106】
さて図2Cを参照すると、方法100は続いて、金属構築材料16の一部38上にバインダー流体36を選択的に適用する。図2Cに示されているように、バインダー流体36はアプリケータ24から分配されてよい。アプリケータ24はサーマルインクジェットプリントヘッドまたは圧電プリントヘッドであってよく、そしてバインダー流体36の選択的な適用は、関連するインクジェット印刷技術によって達成されてよい。かくして、バインダー流体36の選択的な適用は、サーマルインクジェット印刷または圧電インクジェット印刷によって達成させてよい。
【0107】
コントローラ28は命令を実行してアプリケータ24を制御してよく(例えば、矢印26によって示された方向に)、バインダー流体36を、パターン化3次元オブジェクト42の一部となり、そして最終的には焼結されて3D部品50を形成することになる、金属構築材料16の所定の部分38(単数または複数)の上に付着させる。アプリケータ24は、コントローラ28からコマンドを受け取り、そして形成すべき3D部品50の層についての断面パターンにしたがって、バインダー流体36を付着させるようにプログラムされていてよい。本願で使用するところでは、形成すべき3D部品50の層についての断面パターンとは、構築領域プラットフォーム12の表面と平行な断面を参照している。図2Cに示された例においては、アプリケータ24は、バインダー流体36を、融合されて3D部品50の最初の層になる、層34の部分38(単数または複数)の上に選択的に適用する。例として、形成すべき3D部品が立方体または円筒(円柱)形に形成される場合、バインダー流体36は、金属構築材料粒子16の層34の少なくとも一部の上にに、それぞれ正方形のパターンまたは円形のパターン(上面図で見て)で付着される。図2Cに示された例においては、バインダー流体36は層34の部分38上に正方形のパターンで付着されており、部分40には付着されていない。
【0108】
上述したように、バインダー流体36はポリマー粒子および液体ビヒクルを含んでいる。やはり上述したように、幾つかの例において、バインダー流体36はまた、合体溶媒を含んでいる(液体ビヒクルとして、または液体ビヒクルに加えて)。単一のバインダー流体36が選択的に適用されて層34をパターン化してよく、または複数のバインダー流体36が選択的に適用されて層34をパターン化してよいことが理解されよう。
【0109】
図示されてはいないが、方法100は、バインダー流体36を選択的に適用するのに先立って、バインダー流体36を調製することを含んでよい。バインダー流体36を調製することは、ポリマー粒子を調製し、そして次に液体ビヒクルへとポリマー粒子を添加することを含んでよい。
【0110】
ポリマー粒子の各々が、低いTの疎水性成分および高いTの親水性成分を含有する場合、ポリマー粒子は任意の適切な方法によって調製されてよい。例えば、ポリマー粒子は以下の方法の1つによって調製されてよい。
【0111】
ある例においては、各々のポリマーは、低いTの疎水性モノマーを重合させて低いTの疎水性成分を形成し;次いで高いTの親水性モノマーを重合させて高いTの親水性成分を形成することにより、独立して調製されてよい。乳化重合においては、第1(低いT)の成分はシードポリマーとして作用し、その中に、またはその上に、第2(高いT)の成分が重合される。
【0112】
別の例では、ポリマー粒子の各々は、最初に低いTの疎水性モノマーを重合させ、そして次に高いTの親水性モノマーを、低いTの疎水性モノマーの高いTの親水性モノマーに対する比が5:95から30:70の範囲となるようにして重合させることによって、調製されてよい。この例においては、ソフトな低いTの疎水性ポリマーは、ハードな高いTの親水性ポリマー中に溶解されてよい。
【0113】
さらに別の例において、ポリマー粒子の各々は、重合プロセスを低いTの疎水性モノマーで開始し、次いで高いTの親水性モノマーを添加し、そして次いで重合プロセスを終了させることによって調製されてよい。この例において重合プロセスは、高濃度の高いTの親水性モノマーが、低いTの疎水性成分の表面またはその付近において重合するようにさせうる。このプロセスは、多くの場合にパワーフィードとして参照される技術の1つの実施形態である。
【0114】
さらに別の例において、ポリマー粒子の各々は、共重合プロセスを低いTの疎水性モノマーおよび高いTの親水性モノマーで開始し、次いで追加の高いTの親水性モノマーを添加し、そして次いで共重合プロセスを終了させることによって調製されてよい。この例において共重合プロセスは、高濃度の高いTの親水性モノマーが、低いTの疎水性成分の表面またはその付近において共重合するようにさせうる。このプロセスは、パワーフィードの別の実施形態である。このプロセスはパワーフィードの別の実施形態である。
【0115】
これらの例のいずれかにおいて使用される低いTの疎水性モノマーおよび/または高いTの親水性モノマーは、上掲の低いTの疎水性モノマーおよび/または高いTの親水性モノマー(のそれぞれ)のいずれであってもよい。ある例では、低いTの疎水性モノマーは、C4からC8のアルキルアクリレートモノマー、C4からC8のアルキルメタクリレートモノマー、スチレンモノマー、置換メチルスチレンモノマー、ビニルモノマー、ビニルエステルモノマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;そして高いTの親水性モノマーは、酸性モノマー、未置換のアミドモノマー、アルコール系アクリレートモノマー、アルコール系メタクリレートモノマー、C1からC2のアルキルアクリレートモノマー、C1からC2のアルキルメタクリレートモノマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0116】
得られたポリマー粒子は、コアシェル構造、部分閉塞構造または相互混合重合構造、または何らかの他の形態構造を示すものであってよい。
【0117】
バインダー流体36が目標部分(単数または複数)38に選択的に適用された場合、ポリマー粒子(バインダー流体36中に存在する)は、金属構築材料粒子16の中の粒子間空隙に侵入する。パターン化部分38において金属構築材料16の単位当たりに適用されるバインダー流体36の容積は、層34の部分38の厚さ部分に存在する間隙の主要部分、または殆どを満たすのに十分なものであってよい。
【0118】
適用されたバインダー流体36を有しない金属構築材料16の部分40は、その中に導入されたポリマー粒子をも有しないことが理解されよう。かくして、これらの部分は、最終的に形成されるパターン化3次元オブジェクト42の一部にはならない。
【0119】
図2Aから図2Cに示されたプロセスは繰り返してよく、幾つかのパターン化された層が繰り返して構築され、パターン化3次元オブジェクト42(図2E参照)が形成される。
【0120】
図2Dは、バインダー流体36でパターン化された層34の上に、金属構築材料16の第2の層を形成する始まりを例示している。図2Dにおいて、金属構築材料16の層34の所定の部分(単数または複数)38の上にバインダー流体36が付着された後に、コントローラ28は命令を実行して、矢印20によって示された方向へと構築領域プラットフォーム12を相対的に小さな距離だけ移動させてよい。換言すれば、構築領域プラットフォーム12は降下されて、金属構築材料16の次の層の形成を可能にしてよい。例えば構築材料プラットフォーム12は、層34の高さと等しい距離だけ降下されてよい。加えて、構築領域プラットフォーム12の降下に続いて、コントローラ28は構築材料供給部14を制御して追加の金属構築材料16を供給してよく(例えば、エレベーター、オーガー、またはその他の作動を通じて)、そして構築材料分配器18を制御して、先に形成された層34の上部に、追加の金属構築材料16を用いて金属構築材料粒子16の別の層を形成してよい。新たに形成された層は、バインダー流体36でパターン化してよい。
【0121】
図2Cに戻って参照すると、別の例においては、バインダー流体36が層34に適用された後、そして別の層が形成される前に、光エネルギーエミッタ32’を用いて、層34をフラッシュ定着に曝露してよい。層ごとに印刷を行う間にバインダー流体36を活性化するために、そして安定した3次元オブジェクト層を生成するために、少なくとも1つのエネルギー源を含む光エネルギーエミッタ32’を使用してよい。3次元オブジェクト層を形成するためのフラッシュ定着は、バインダー流体36を活性化する(または硬化する)ことができるが、しかし金属構築材料16を溶融または焼結することができない温度において行われてよい。この例では、図2Aから図2Cに示されたプロセス(層34のフラッシュ定着を含む)を繰り返して、幾つかのフラッシュ定着層を繰り返して構築し、そして3次元オブジェクト42’を生成してよい。3次元オブジェクト42’は次いで、図2Fに関して説明するプロセスで処理されることができる。
【0122】
幾つかの例においては、新たな層を繰り返して形成し、そしてパターン化すると(各々の層をフラッシュ定着せずに)、その結果として図2Eに示されたような構築材料ケーキ44が形成されることになるが、これは金属構築材料16の層34の各々の非パターン化部分40の中に存在する、パターン化3次元オブジェクト42を含んでいる。パターン化3次元オブジェクト42は、金属構築材料16および粒子間空隙内部のバインダー流体36で充填された、ある体積の構築材料ケーキ44である。構築材料ケーキ44の残部は、パターン化されていない金属構築材料16から作られている。
【0123】
やはり図2Eに示されているように、構築材料ケーキ44は少なくとも1つのエネルギー源を含む光エネルギーエミッタ32に曝露されてよく、エネルギー束 46を介してフラッシュ定着される。適用されるエネルギーは、パターン化3次元オブジェクト42にあるバインダー流体36内のポリマー粒子を溶融し、そして3次元オブジェクト42’を製造するのに十分なものであってよい。1つの例においては、光エネルギーエミッタ32が使用されて、構築材料ケーキ44にエネルギーを適用してよい。図2Eに示された例では、光エネルギーエミッタ32によってフラッシュ定着されている間に、構築材料ケーキ44は、構築領域プラットフォーム12上に残っていてよい。別の例では、構築領域プラットフォーム12は、その上にある構築材料ケーキ44と共にアプリケータ24から取り外され、そして光エネルギーエミッタ32に配置されてよい。
【0124】
活性化/硬化温度は部分的には:ポリマー粒子のT、ポリマー粒子の溶融粘度、および/または合体溶媒を使用するか、どの合体溶媒を使用するかの、少なくとも1つに依存してよい。ある例では、フラッシュ定着して3次元オブジェクト42’を形成することは、バインダー流体36を活性化(または硬化)することができるが、しかし金属構築材料16の焼結またはバインダー流体36のポリマー粒子の熱分解を行うことが可能ではない温度において行われてよい。ある例では、活性化温度はバインダー流体36のポリマー粒子のバルク材料のほぼ融点であり、そしてポリマー粒子の熱分解温度より低い(すなわち、熱分解が生ずる温度閾値より低い)。適切なラテックス系ポリマー粒子の大多数について、活性化/硬化温度の上限は、約250℃から約270℃の範囲にある。この温度閾値より上では、ポリマー粒子は揮発性成分へと化学的に分解され、そしてパターン化3次元オブジェクト42が残されることになり、かくしてその機能を発揮することがなくなる。換言すれば、バインダー流体36の活性化温度は、ポリマー粒子の融点よりも高くてよい。例として、バインダー流体の活性化温度は、約40℃から約200℃の範囲にあってよい。別の例として、バインダー流体の活性化温度は約100℃から約200℃の範囲にあってよい。さらに別の例として、バインダー流体の活性化温度は、約80℃から約200℃の範囲にあってよい。さらに別のれいとして、バインダー流体の活性化温度は、約50℃から約150℃の範囲にあってよい。さらに別の例として、バインダー流体の活性化温度は、約90℃であってよい。
【0125】
エネルギー束46が適用される時間の長さ、およびパターン化3次元オブジェクト42がフラッシュ定着される速度は、例えば:光エネルギーエミッタ源32、32’の特性、ポリマー粒子の特性、金属構築材料16の特性(例えば、金属の種類および/または粒径)、および/または3D部品50の特性(例えば、壁厚)の少なくとも1つに依存していてよい。パターン化3次元オブジェクト42は、バインダー流体の活性化温度において、約1秒未満の範囲の活性化/硬化時間にわたってフラッシュ定着されてよい。
【0126】
幾つかの例においては、パターン化3次元オブジェクト42は、層ごとに、または2層ごとに、または3層ごとに、またはその他でフラッシュ定着させてよい。幾つかの例においては、パターン化3次元オブジェクト42は、パターン化の終わりにフラッシュ定着させてよい。
【0127】
ポリマー粒子を大体融点でフラッシュ定着させることにより、パターン化された3次元オブジェクト42の金属構築材料粒子16の中で、ポリマー粒子は連続するポリマー相へと合体するようになる。上述したように、合体溶媒(バインダー流体36中に含まれている場合)はポリマー粒子を可塑化し、そしてポリマー粒子の合体を強化させる。連続するポリマー相は金属構築材料粒子16相互間で接着剤として作用してよく、安定した3次元オブジェクト42’を形成する。
【0128】
またフラッシュ定着して3次元オブジェクト42’を形成すると、パターン化3次元オブジェクト42から液体のうち相当量が蒸発する結果となりうる。蒸発された液体は、バインダー流体成分の任意のものを含んでいてよい。液体の蒸発の結果として、毛管作用を通じ、3次元オブジェクト42’の幾らかの稠密化が行われうる。
【0129】
安定化された3次元オブジェクト42’は、取り扱い可能な機械的耐久性を示す。
【0130】
3次元オブジェクト42’は次いで、構築材料ケーキ44から取り出されてよい。3次元オブジェクト42’は、任意の適切な手段によって取り出されてよい。ある例では、3次元オブジェクト42’は、パターン化されていない金属構築材料粒子16から3次元オブジェクト42’を持ち上げることによって取り出されてよい。ピストンおよびバネを含む取り出し工具を使用してよい。
【0131】
3次元オブジェクト42’が構築材料ケーキ44から取り出されたなら、3次元オブジェクト42’は構築領域プラットフォーム12から取り外して、加熱機構中に配置してよい。この加熱機構は、ヒーター48であってよい。
【0132】
幾つかの例においては、3次元オブジェクト42’は清浄化して、パターン化されていない金属構築材料粒子16をその表面から取り除いてよい。ある例では、3次元オブジェクト42’はブラシおよび/またはエアジェットで清浄化してよい。
【0133】
3次元オブジェクト42’の取り出しおよび/または清浄化の後に、幾つかの例において3次元オブジェクト42’は加熱してよく、活性化されたポリマー粒子(合体して連続するポリマー相となったもの)を取り除いて、少なくとも実質的にポリマーを含まない部品を製造してよい。
【0134】
幾つかの例においては、3次元オブジェクト42’の取り出しおよび/または清浄化の後に、3次元オブジェクト42’はヒーター48を用いて焼結温度まで加熱すること(すなわち、焼結すること)ができ、やはり図2Fに示されているようにして、最終的な3D部品50が形成される。
【0135】
幾つかの例においては、脱バインダーのための加熱および焼結のための加熱は、2つの異なる温度において行われ、そこでは脱バインダー温度は焼結温度よりも低い。脱バインダー加熱段階および焼結加熱段階の両者が全体的に図2Fに示されており、そこでは熱または熱を発生させるための放射が、熱源48から矢印46によって示されているようにして適用されてよい。.
【0136】
幾つかの例においては、脱バインダーのための加熱は、連続するポリマー相を熱分解するのに十分な、熱分解温度において達成可能である。かくして、脱バインダーのための温度は、バインダー流体36のポリマー粒子の材料に依存する。ある例では、熱分解温度は約250℃から約600℃の範囲にある。別の例では、熱分解温度は約280℃から約600℃の範囲にあり、または約500℃である。連続するポリマー相は、明確な熱分解機構(例えば、当初のバインダーの<5重量%の固体残渣を残し、そして幾つかの場合においては、当初のバインダーの<1重量%の固体残渣を残す)を有していてよい。残渣の割合がより少なければ(例えば、0%に近い)、より適切である。脱バインダー段階の間、連続するポリマー相の長鎖はまず分解して短い分子断片となり、それらは低粘度の液相に転化する。この液体が蒸発する際に生成される毛管圧力は金属構築材料粒子16を相互に引き寄せ、さらなる稠密化、および少なくとも実質的にポリマーを含まない部品の形成を導く。
【0137】
何らかの理論に拘束されるものではないが、少なくとも実質的にポリマーを含まない部品はその形状を、例えば:i)物理的な取り扱いが行われないため、少なくとも実質的にポリマーを含まない部品が受ける応力の量が小さいこと、ii)ポリマー粒子の熱分解温度において金属構築材料粒子16相互間で生ずるネッキング(局部収縮)のレベルが低いこと、および/またはiii)連続するポリマー相の除去によって生成される毛管圧力が金属構築材料粒子16を相互に押しやること、の少なくとも1つに起因して維持しうるものと考えられる。少なくとも実質的にポリマーを含まない部品は、連続するポリマー相が少なくとも実質的に除去され、そして金属構築材料粒子16がまだ焼結されていなくても、その形状を維持しうる。実質的にポリマーを有しない部品を形成するための加熱は、焼結の初期段階を開始してよく、これが結果的に形成しうる弱い結合は、最終的な焼結の間に強化される。
【0138】
焼結のための加熱は、残っている金属構築材料粒子16を焼結するのに十分な焼結温度において達成される。焼結温度は、金属構築材料粒子16の組成に大きく依存している。加熱/焼結の間に、3次元オブジェクト42’または少なくとも実質的にポリマーを含まない部品はヒーター48を使用して、金属構築材料16の融点または固相線温度、共晶温度、または包晶温度の約80%から約99.9%の範囲の温度へと加熱されてよい。別の例では、3次元オブジェクト42’は、金属構築材料16の融点または固相線温度、共晶温度、または包晶温度の約90%から約95%の範囲の温度へと加熱されてよい。さらに別の例では、3次元オブジェクト42’は、金属構築材料16の融点または固相線温度、共晶温度、または包晶温度の約60%から約85%の範囲の温度へと加熱されてよい。焼結加熱温度はまた、粒径および焼結時間(すなわち、長い温度曝露時間)にも依存してよい。
【0139】
例として、焼結温度は約850℃から約2500℃の範囲にあってよい。別の例においては、焼結温度は少なくとも900℃である。ブロンズについての焼結温度の例は約850℃であり、ステンレススチールについての焼結温度の例は約1300℃である。これらの温度は焼結温度の例として提示されたものであるが、焼結加熱温度は使用される金属構築材料16に依存するものであり、そして本願の例よりも高い温度または低い温度であってよいことが理解されよう。適切な温度での加熱は、金属構築材料粒子16を焼結および融合させて、完成品の3D部品50を形成させるが、これは3次元オブジェクト42’と比較して、よりさらに稠密化されていてよい。例えば、焼結の結果として、密度は50%の密度から90%を超えるようになってよく、そして幾つかの場合には理論密度の100%に非常に近くなる。
【0140】
熱52(焼結用)が適用される時間の長さ、および3次元オブジェクト42’が加熱される速度は、例えば:熱源または放射源48の特性、ポリマー粒子の特性、金属構築材料16の特性(例えば、金属の種類および/または粒径)、および/または3D部品50の特性(例えば、壁厚)の、少なくとも1つに依存してよい。
【0141】
幾つかの例においては、3次元オブジェクト42’は熱分解温度において、約10分から約72時間の範囲にある熱分解期間にわたって加熱されてよい。ある例では、熱分解期間は60分である。別の例では、熱分解期間は180分である。3次元オブジェクト42’は熱分解温度へと、約0.5℃/分から約20℃/分の範囲の速度において加熱されてよい。この加熱速度は部分的には:3次元オブジェクト42’中にある連続するポリマー相の量、3次元オブジェクト42’の空隙率、および/または3次元オブジェクト42’/3D部品50の特性(例えば、大きさまたは壁厚)の少なくとも1つに依存していてよい。
【0142】
3次元オブジェクト42’は焼結温度において、約20分から約15時間の範囲にある焼結期間にわたって加熱されてよい。ある例では、焼結期間は240分である。別の例では、焼結期間は360分である。3次元オブジェクト42’は焼結温度へと、約1℃/分から約20℃/分の範囲の速度において加熱されてよい。ある例では、3次元オブジェクト42’は焼結温度へと、約10℃/分から約20℃/分の範囲の速度において加熱されてよい。焼結温度までの昇温速度が速いと、より好ましい粒状構造または微細構造を製造するのに有効でありうる。しかしながら、幾つかの場合においては、より遅い昇温速度がより有効でありうる。かくして、別の例においては、3次元オブジェクト42’は焼結温度へと、約1℃/分から約3℃/分の範囲の速度において加熱される。さらに別の例においては、3次元オブジェクト42’焼結温度へと、約1.2℃/分の速度において加熱される。さらに別の例においては、3次元オブジェクト42’は焼結温度へと、約2.5℃/分の速度で加熱される。
【0143】
幾つかの例においては、熱52(脱バインダーおよび焼結の各々についての)は、不活性ガス、低反応性ガス、還元性ガス、またはこれらの組み合わせを含有する環境下に適用される。換言すれば、3次元オブジェクト42’の焼結温度への加熱は、不活性ガス、低反応性ガス、還元性ガス、またはこれらの組み合わせを含有する環境下で達成される。金属構築材料16が焼結され、金属3D部品50を生成することのできない他の反応(例えば、酸化反応)を受けることがないように、焼結は、不活性ガス、低反応性ガス、および/または還元性ガスを含有する環境下に達成されてよい。不活性ガスの例には、アルゴンガスおよびヘリウムガスが含まれる。低反応性ガスの例には窒素ガスが含まれ、そして還元性ガスの例には水素ガスおよび一酸化炭素ガスが含まれる。
【0144】
幾つかの例においては、低いガス圧力または真空下で焼結を行うと、空隙の潰れはより完全に、またはより速く生ずることが可能となり、かくしてより高密度の部品となる。しかしながら真空は、金属構築材料16(例えば、Cr)がそのような条件下で蒸発可能である場合には、焼結の際には使用されなくてよい。ある例では、低圧力環境とは、約1E-5torr(1×10-5torr)から約10torrの範囲にある圧力である。
【0145】
図示されてはいないが、図2Eおよび図2Fに示された動作は自動化されてよく、そしてコントローラ28がそれらの動作を制御してよい。
【0146】
図3に示されているように、スチレンアクリルラテックスバインダーの熱劣化(分解)に対する温度の影響がグラフに示されている。このグラフに示されているように、高い重量損失率は、速い熱劣化に対応している。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、ポリマー粒子の熱分解温度まで加熱すると、高い機械的強度を有しない3次元オブジェクトがもたらされうることを示唆している。したがって、高いエネルギー密度での短時間のバーストの結果として、溶融によりポリマー粒子のフラッシュ定着を行うことがより効果的であるが、その理由は、ポリマー粒子がポリマーの分解を生ずるのに十分な長さの時間にわたって光エネルギーに曝されることがないからである。
【0147】
図4Aから図4Cは、金属構築材料の層420にバインダー流体410を重ねることにより、バインダー流体410が構築材料のベッド430に適用されることを示している(図4A)。次いで光エネルギーエミッタ440が使用されて、パターン化が完了した後、またはバインダー流体410の各層が金属構築材料の層420に適用された後に、構築材料のベッド430上へとエネルギー束450が放出され、フラッシュ定着によりバインダー流体410中のポリマー粒子を金属構築材料420と結合し、それによって3次元オブジェクトが形成される(図4B)。次いで、3次元オブジェクト460は構築材料のベッド430から取り出される(図4C)。
【0148】
図5Aから図5Cにおいては、金属構築材料のベッド510に照射された上部層520を形成する光エネルギーエミッタ530の概略図が示されている(図5A)。図5Bは、構築材料のベッド510の上部層を照射するように矢印540の方向に移動する光エネルギーエミッタ530を示しており(図5B)、かくして構築材料のベッド510の上部層の実質的に大部分が照射520される(図5C)。
【0149】
図9においては、流れ図が3次元オブジェクトを印刷するための方法900を示しており、これは:
(i)金属構築材料を適用し910;
(ii)金属構築材料の少なくとも一部の上にバインダー流体を選択的に適用し920、ここでバインダー流体は、液体ビヒクルおよび液体ビヒクル中に分散したポリマー粒子を含み;
(iii)約0.5J/cmから約20J/cmのエネルギー密度を有するエネルギー束を約1秒未満適用することにより、選択的に適用されたバインダー流体をフラッシュ定着して、金属構築材料および選択的に適用されたバインダー流体を結合させ930;そして
(iv)(i)、(ii)、および(iii)を少なくとも1回繰り返して3次元オブジェクトを形成すること940を含んでいる。
【0150】
特に明記しない限り、以上に記載したいずれの特徴も、本願に記載の任意の例または任意の他の特徴と組み合わせることができる。
【0151】
本願に開示された例を記述し特許請求するについては、単数形「ある」、「1つの」、および「その」は、特に別様に明記されていない限り、複数への参照を含むものである。
【0152】
本開示においては、濃度、量、および他の数値データは、範囲形式で表現または提示されてよいことが理解されよう。そうした範囲形式は、単に便宜上と簡潔さのために使用されるものであり、よって範囲の端点として明確に示された数値だけでなく、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分範囲をも、あたかも各々の数値および部分範囲が明示的に示されているかのようにして含むよう、柔軟に解釈されるべきであることが理解されよう。例を示せば、「約1重量%から約5重量%」の数値範囲は、明示的に示された約1重量%から約5重量%の値だけを含むようにではなく、示された範囲内の個々の値および部分範囲をも含むように解釈されるべきである。よって、この数値範囲に含まれるものは、2、3.5、および4といった個別の値と、1~3、2~4、および3~5等といった部分範囲である。同じことが、単一の数値を示す範囲に対しても適用される。
【0153】
明細書全体を通じて、「1つの例」、「幾つかの例」、「別の例」、「例」等々に対する参照は、その例に関連して記載される特定の要素(例えば特徴、構造、および/または特性)が、本願に記載の少なくとも1つの例に含まれており、他の例においては存在しても存在しなくてもよいことを意味している。加えて、特に明記しない限り、任意の例について記載された要素は、種々の例において任意の適切な仕方で組み合わせてよいことが理解されよう。
【0154】
特に明記しない限り、本願において成分の「重量%」に対する参照は、その成分を含む組成物全体の百分率としての、その成分の重量に関するものである。例えば本願においては、例えば液体組成物中に分散されたポリウレタン(単数または複数)または着色剤(単数または複数)のような固形材料の「重量%」に対する参照は、組成物中におけるそれらの固形分の重量百分率に関するものであり、組成物の非揮発性固形分の合計の百分率としての、それらの固形分の量に対するものではない。
【0155】
本願において標準試験が言及される場合、特に明記しない限り、参照される試験のバージョンは、本件特許出願の出願時に最も近いものである。
【0156】
本願および実施例で開示されているすべての量は、特に別様に示されていない限りは重量%である。
【0157】
本件開示をさらに例証するために、ここで実施例を提示する。これらの実施例は例示を行う理由で提示されたものであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるものではないことが理解されよう。
【実施例
【0158】
組成例1
例示的な3D金属部品(「部品例1」と称する)を印刷した。部品例1を印刷するのに用いたバインダー流体は、ポリマー粒子としてアクリル系バインダーラテックス分散物を含み、合体溶媒として2-メチル-1,3-プロパンジオールおよび2-ピロリジノンを含んでいた。部品例1を印刷するために使用したバインダー流体の一般的な配合を表1に、使用した各々の成分の重量%と共に示している。アクリル系バインダーラテックス分散物の重量%は、活性分の百分率、すなわち最終的な配合物中に存在するアクリル系バインダーラテックスの固形分の合計を表している。
【表1】
【0159】
部品例を印刷するために用いた金属構築材料は、球形のステンレススチール(316L)粉体であり、D50(すなわち粒径分布のメジアンであり、全体の1/2がこの値より高く、または1/2がこの値より低い)は42μmであった。上記の表1に記載したバインダー流体を使用して、以下の実施例における部品例を印刷した。
【0160】
部品例は、ステンレススチール粉体の層およびバインダー流体を適用してパターン化3次元オブジェクトを形成することによって印刷された。各々の層の厚さは約50μmから約200μmであった。バインダー流体は、ステンレススチール粉体の層上に、ストリップ(細長い片)の形態で選択的に適用され、サーマルインクジェットプリンターによって10ピコリットルのバインダー流体液滴を生成した。金属粒子の効果的な結合を達成するために使用されたバインダー流体の量を特徴付けるために、バインダー流体の目標量を付着させるについて、プリンターの2回のパスまたは6回のパス(以下それぞれ2×および6×と称する)を使用した。各回のパスにおいて、約10マイクロリットルのバインダー流体がストリップの形態で付着された。
【0161】
ステンレススチール粉体上に付着されたバインダー流体を風乾した後、ステンレススチール粉体上に選択的に付着されたバインダー流体は、市販のキセノンストロボランプを使用して、パルス照射-すなわちフラッシュ定着-に曝露した。各々の場合について、単一の15ミリ秒のパルスを使用した。粉体の表面に分配されたエネルギーは、ランプの放電電圧を変化させることによって調節した。
【0162】
フラッシュ定着の後に、バインダー流体中でのポリマー粒子の溶融を実証するものとして、アクリル系バインダーラテックスポリマー粒子が存在していた領域内の金属粒子を「固体」3次元ストリップ部片として持ち上げた。対照的に、この領域の外側では(バインダー流体が付着されなかったため、そこにはポリマー粒子が存在しない)、以下で説明する図6図7、および図8に示されているように、ステンレススチール粉体はゆるい(固まっておらず流動的)なままである。
【0163】
3次元印刷オブジェクト-実施例1
図6Aから図6Cは、上記の組成例1に記載された組成を使用する方法によって形成された3次元オブジェクトの概略的図である。
【0164】
図6Aは、フラッシュ定着を行う前のステンレススチール粉体610を示している。200μmの厚さの1層のステンレススチール粉体610を水晶基板600上に拡延した。次いでバインダー流体のストリップ620をステンレススチール粉体610上に付着させた。バインダー流体は6回のパスで付着させた。各回のパスにおいて、約10マイクロリットルのバインダー流体がストリップ620の形態で付着された。
【0165】
図6Bは、9.74J/cmのエネルギー束が粉体610およびストリップ領域620の全体に適用された後に、図6Aで付着された材料に何が生じたかを示している。このエネルギー束はバインダー流体が付着された箇所620において、ステンレススチール粉体の上部の約60%をフラッシュ定着させた。フラッシュ定着が行われた後、このストリップ領域620の上部の約60%が固化し、そしてこの固化したストリップは固体部片640として取り外され、ステンレススチール粉体610の下側領域に十分なバインダー流体が欠如していたことから結合されなかった、ゆるいステンレススチール粉体630が後に残された。
【0166】
図6Cは、図6Bとすべて同じ要素および同じ3次元オブジェクトを示しており、付着されたストリップ形態のバインダー流体620を受け取らなかったステンレススチール粉体610が容易に掻き取れる650ことをさらに示しているが、これは、粉体610およびストリップ領域620の全体がエネルギー束に曝露されたにも拘わらず、この領域にはバインダー流体が存在していなかったためである。
【0167】
3次元印刷オブジェクト-実施例2
図7Aおよび図7Bは、上記の組成例1に記載された組成を使用する方法によって形成された3次元オブジェクトの概略的図である。
【0168】
図7Aは、水晶基板700の上に200μmの厚さで付着された1層のステンレススチール粉体710を示している。次いでバインダー流体のストリップ720をステンレススチール粉体710上に6回のパス-すなわち6×で付着させた。各回のパスにおいて、約10マイクロリットルのバインダー流体がストリップ720の形態で付着された。ステンレススチール粉体710およびバインダー流体ストリップ720の全体が7.47J/cmで照射され、固体の3次元ストリップの形成が行われた。固化されたストリップ740は取り去られ、幾らかのゆるいステンレススチール粉体730が後に残された。
【0169】
図7Bは、図7Aとすべて同じ要素および同じ3次元オブジェクトを示しており、さらに、水晶基板700上に200μmの厚さで付着された1層のステンレススチール粉体710を示している。次いでバインダー流体のストリップ720をステンレススチール粉体710上に2回のパス-すなわち2×で付着させた。各回のパスにおいて、約10マイクロリットルのバインダー流体がストリップ720の形態で付着された。ステンレススチール粉体710およびバインダー流体ストリップ720の全体が、より高いエネルギー束12.98J/cmで照射された。ストリップ720は固化せず、ストリップ部片の取り去りはできなかった。代わりに、ストリップ720は簡単に掻き取り750することができた。
【0170】
図10は、バインダー添加量と、ポリマー粒子と金属粒子を融合させて3次元オブジェクトを形成するのに使用されるエネルギー密度との間の相関を示すグラフであり、図7Aおよび図7Bを比較している。このグラフは、2回のパスでバインダー流体が付着された場合は、金属粒子およびポリマー粒子を結合するための融合を達成するのに、より高いエネルギー束が使用されたことを示している。6回のパスでバインダー流体が付着された場合には、金属粒子およびポリマー粒子を結合するための融合を達成するのに、より低いエネルギー束が使用されている。
【0171】
ラテックスポリマー粒子の溶融を開始させるために約3.12J/cmの光エネルギーが使用され、そして約21.1J/cmを超える光エネルギーは、バインダーの急速な沸騰および分解を生ずることが見いだされた。
【0172】
3次元印刷オブジェクト-実施例3
図8は、上記の組成例1に記載された組成を使用する方法によって形成された3次元オブジェクトの概略的図である。
【0173】
図8は、3層のステンレススチール粉体810を示しており、各層は水晶基板800上に拡延された約50μmの厚さを有している。次いでバインダー流体のストリップ820がステンレススチール粉体810上に6回のパス-6×で付着され、それによってステンレススチール粉体810の各層の上に2層のバインダー流体が付着された。各回のパスにおいて、約10マイクロリットルのバインダー流体がストリップ820の形態で付着された。
【0174】
9.74J/cmのエネルギー束が、粉体810およびストリップ領域820の全体に対して適用された。このエネルギー束は、バインダー流体が付着された箇所820において、実質的にすべてのステンレススチール粉体の領域をフラッシュ定着させた。フラッシュ定着の後、このストリップ領域820は固化し、固化したストリップの全体が固体部片840として取り去られ、幾らかのゆるいステンレススチール粉体830が後に残された。
【0175】
上記の例は、金属構築材料粉体上に付着されたバインダー流体中に十分なポリマー粒子が存在し、そして光エネルギーエミッタを使用して十分なエネルギー束が適用された場合には、強固な3次元オブジェクトを調製可能であることを示している。
【0176】
上記の例はまた、フラッシュ定着に際してのエネルギー束の適用によるポリマー粒子の迅速な溶融は、ポリマーの熱分解を生ずることなしに約1秒未満において、バインダー流体中のポリマー粒子の高い温度(すなわち、摂氏数百度まで)への溶融を促進することを示している。
【0177】
上記の例はまた、フラッシュ定着は、溶融したポリマー粒子を金属粉体と結合させる、ポリマー粒子の層ごとの融合を促進しうることを示している。これにより、パターン化3次元オブジェクトの形成の終わりにおいて、わざわざ別個に硬化プロセスを行う必要性なしに、3次元オブジェクトを生成するために使用される時間の量を低減することができる。
【0178】
層ごとのフラッシュ定着によって強固な3次元オブジェクトを調製可能であることから、3次元オブジェクトを形成するためのこの方法はより経済的であるが、その理由は、3次元オブジェクトの形成の間に熱エネルギーが使用されないだけでなく、電気的エネルギーの使用量も、在来の水晶タングステンハロゲン加熱ランプとフラッシュ定着用の光エネルギーエミッタ(例えば、キセノンランプでのフラッシュ定着)との間では、大きさが約3桁減少された相違を示すと計算されうるからである。3次元オブジェクトを形成するためのエネルギーのこの低減は、エネルギー束生成の効率の増大、金属粉体による吸収とランプの発光スペクトルの間での相性の改善、および構築材料ベッドの全体を加熱する必要性の排除の、少なくとも1つに起因しうる。
【0179】
以上においては幾つかの例について詳細に記載してきたが、開示された例は修正されてよいことが理解されよう。したがって、以上の説明は非限定的なものと考えられるべきである。


図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9
図10