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  • 特許-生物電気化学システムの電力変換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】生物電気化学システムの電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20221006BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20221006BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20221006BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20221006BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02M3/28 V
H02M3/00 U
H02M7/06 V
C25B9/00 A
C12M1/00 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020558477
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 FI2019050265
(87)【国際公開番号】W WO2019202202
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20185360
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520476330
【氏名又は名称】ソーラー フーズ オーユー
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ニーグレーン ラウリ
(72)【発明者】
【氏名】ラナ アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】アホラ イェロ
(72)【発明者】
【氏名】ルースカネン ヴェサ
(72)【発明者】
【氏名】ピトゥカネン ユハ-ペッカ
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-101664(JP,A)
【文献】実開平02-110951(JP,U)
【文献】実開昭57-156194(JP,U)
【文献】特表2012-512326(JP,A)
【文献】国際公開第2011/000084(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02M 3/00
H02M 7/06
C25B 9/00
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物電気化学システムの電力変換装置(101、201、301)であって、当該電力変換装置は、
前記生物電気化学システムの複数の電極を介して電流を供給する直流端子(105、205、305)をそれぞれ有する、少なくとも2つの第1コンバーター(102~104、202~204、302~304)と、
外部電力グリッドから各第1コンバーターにエネルギーを供給する第2コンバーター(106、206、306)と、
を備え、
前記第1コンバーターはそれぞれ、前記第2コンバーターからエネルギーを受け取る少なくとも1つの電気素子(107、207、307a、307b)と、前記電気素子の電圧を前記生物電気化学システムに適した電解電圧に変換する少なくとも1つの回路(108、208、308a、308b)を備え、
前記第1コンバーターはそれぞれ、前記生物電気化学システムにエネルギーを供給する際に、他の第1コンバーターから直流的に絶縁されることを特徴とする、生物電気化学システムの電力変換装置。
【請求項2】
前記電気素子(107)は、一次巻線(109)が前記第2コンバーターに接続された変圧器の二次巻線であり、前記回路は前記二次巻線の交流電圧を前記電解電圧に変換するのに適している、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電気素子(207、307a、307b)は直流電圧エネルギーストレージであり、
前記第1コンバーターはそれぞれ、前記直流電圧エネルギーストレージが前記生物電気化学システムにエネルギーを供給する際に、前記第2コンバーターに接続された充電回路(212、312)から前記直流電圧エネルギーストレージを切断する第1スイッチシステム(210、310a、310b)と、前記直流電圧エネルギーストレージが前記充電回路によって充電される際に、前記直流端子から前記回路を切断する第2スイッチシステム(211、311a、311b)を備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1コンバーターの前記直流電圧エネルギーストレージは、前記充電回路に接続される際に直列接続される、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記直流電圧エネルギーストレージはバッテリー素子を備える、請求項3または4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記直流電圧エネルギーストレージはコンデンサー素子を備える、請求項3から5のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1コンバーターはそれぞれ、前記第2コンバーターからエネルギーを受け取る2つの直流電圧エネルギーストレージ(307a、307b)と、前記2つの直流電圧エネルギーストレージの電圧を前記電解電圧に変換する2つの回路(308a、308b)を備え、
前記第1スイッチシステム(310a、310b)は、対象の直流電圧エネルギーストレージが前記生物電気化学システムにエネルギーを供給する際に、前記充電回路(312)から各直流電圧エネルギーストレージを切断するのに適しており、
前記第2スイッチシステム(311a、311b)は、対象の回路に接続された前記直流電圧エネルギーストレージが前記充電回路によって充電される際に、前記直流端子から各回路を切断するのに適している、請求項3から6のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1コンバーターはそれぞれ、1.5Vから3Vの範囲となるように前記電解電圧を制御するように構成された、請求項1から7のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項9】
微生物を培養するためのバイオリアクターチャンバー(113)と、
前記バイオリアクターチャンバーに収容された水を、水電解で水素と酸素に分解する複数の電極(115~120、215~220、315~320)と、
請求項1から8のいずれかに記載され、前記電極を介して直流を供給するように構成された電力変換装置(101、201、301)と、
を備え、
前記電極はそれぞれ、前記第1コンバーター(102~104、202~204、302~304)の1つのみに接続される、
生物電気化学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水を水素と酸素に分解するように、生物電気化学システムの培養媒体中の電気分解を促進する電力変換装置に関する。さらに、本開示は、バイオリアクターチャンバーと、当該チャンバー中の電気分解を促進する電力変換装置とを備える生物電気化学システムに関する。
【背景】
【0002】
水素酸化細菌、例えば、化学合成無機独立栄養細菌は、水素をエネルギー源として独立栄養的に成長し二酸化炭素を自身のバイオマスに吸収させることができる。これによって、二酸化炭素、水、栄養を、細菌性バイオマスおよび/またはバイオプラスチックやバイオ燃料等の他のバイオ製品に変換することができる。一般的に、水素酸化細菌を培養する生物電気化学システムは、水素酸化細菌と適切な培養媒体を収容するバイオリアクターチャンバーを備える。水素は外部の供給源からバイオリアクターチャンバーに供給できるが、この方法の問題は、水素の気液物質移動が低いことである。水素の培養媒体への溶解速度を上げるために、バイオリアクターチャンバーのヘッドスペース内の水素分圧を上げることができる。しかし、これによって爆発の危険が高まる可能性がある。なぜなら、例えば大気圧で4%から74.5%の体積濃度で水素は、空気と一緒になると燃えやすくなるからである。
【0003】
水素を供給する他の方法として、バイオリアクターチャンバー内のin situ型水電解(in situ water electrolysis)があり、電流を利用して水を水素と酸素に分解する。電流は、培養媒体中に浸漬した電極に供給される。in situ型水電解によって、水素と酸素は培養媒体内で生成されるため、水素と酸素が不十分に溶解しても問題にはならない。よって、バイオリアクターの自由な設計も可能になり得る。水電解に必要な最低電圧、いわゆる可逆電圧は1.23Vである。補助熱なしで必要な最低電圧は高くなり、周囲条件において例えば1.43Vであり、電解条件に依存する。水電解を促進するのに必要な実際の電圧は、電極間のインピーダンスによる電圧損失のためより高くなる。
【0004】
しかし、上述のin situ型水電解には問題がある。エネルギー効率の点から、水電解を促進する電圧はできるだけ低く維持されなければならない。しかし、水を水素と酸素に分解する代わりに、細菌に毒性作用をもたらす活性酸素種(Reactive Oxygen Specie:ROS)が生成され得るため、電圧が低すぎると細菌の成長に抑制作用が働く可能性がある。活性酸素種には、例えば、過酸化水素、超酸化物、ヒドロキシルラジカルがある。一方、電流が高すぎても成長の妨げになり得る。問題の一つは、充分な水素生成を得るための電流が電極を介して駆動される際の、培養媒体中、特に電極付近における局部電流密度に関する。電流密度の極大値が高いと、培養工程に有害になり、または少なくとも培養工程を乱す可能性がある。
【摘要】
【0005】
各実施の形態のいくつかの態様の基本的な理解のため、以下に簡単に摘要を説明する。この摘要は、発明の広範な概要ではない。発明の重要な、または不可欠な要素を特定したり、発明の範囲を明確にしたりするものではない。以下の摘要は、例示的な実施の形態のさらに詳細な説明の導入として、いくつかの概念を簡単に提示しているにすぎない。
【0006】
本発明は、水を水素と酸素に分解するように、生物電気化学システムの培養媒体中の水の電気分解を促進する新規の電力変換装置を提供する。本発明の電力変換装置は、
・ 前記生物電気化学システムの複数の電極を介して電流を供給する直流端子をそれぞれ有する、少なくとも2つの第1コンバーターと、
・ 外部電力グリッドから各第1コンバーターにエネルギーを供給する第2コンバーターと、
を備える。
【0007】
前記第1コンバーターはそれぞれ、前記第2コンバーターからエネルギーを受け取る少なくとも1つの電気素子と、前記電気素子の電圧を前記生物電気化学システムに適した電解電圧に変換する少なくとも1つの回路を備える。前記第1コンバーターはそれぞれ、前記生物電気化学システムにエネルギーを供給する際に、他の第1コンバーターから直流的に絶縁される。前記第2コンバーターからエネルギーを受け取る前記電気素子は、例えば、一次巻線が前記第2コンバーターに接続された変圧器の二次巻線でもよい。別の例として、前記電気素子は、対象の第1コンバーターが前記生物電気化学システムにエネルギーを供給していない時に前記第2コンバーターに接続されて、前記第1コンバーターが前記生物電気化学システムにエネルギーを供給する時に前記第2コンバーターから切断される直流電圧エネルギーストレージでもよい。
【0008】
さらに本発明は、化学合成無機独立栄養細菌等の細菌および/または他の微生物を培養する新規の生物電気化学システムを提供する。本発明の生物電気化学システムは、
・ 前記細菌および/または他の微生物を培養するバイオリアクターチャンバーと、
・ 前記バイオリアクターチャンバーに収容された水を、水電解で水素と酸素に分解する電極と、
・ 本発明の電力変換装置であって、当該電力変換装置の第1コンバーターの1つのみにそれぞれが接続される前記電極を介して直流を供給する電力変換装置と、
を備える。
【0009】
前記第1コンバーターは、水電解を促進する際に直流的に互いに絶縁されているため、1つの第1コンバーターから別の第1コンバーターに予想外や不要な電流経路が発生することがない。したがって、各第1コンバーターは、他の第1コンバーターの動作を妨害することなく自身の電極を駆動する。
【0010】
多くの電極対があるため、電極対が1つのみ使用される場合に比べ、低い局部電流密度で充分な水素生成ができる。さらに、電極対が1つのみ使用される場合に比べ、より均一に水素濃度を培養空間に分布できる。上述の第1コンバーターは、水電解を促進する際に直流的に互いに絶縁されているため、各電極対の制御と診断を構成して、培養媒体中の局所差異によって起こり得る問題を克服できる。
【0011】
適切な数の第1コンバーターを第2コンバーターに接続することで電力変換装置を様々な大きさの生物電気化学システムに適応させるように、本発明の電力変換装置はモジュラー化可能である。必要に応じて2つ以上の第2コンバーターを使用することも可能である。よって、本発明の一部の実施形態による電力変換装置は、大量生産に適したコンバーターユニットを用いて組み立てることができる。
【0012】
添付の従属請求項には、例示的かつ非限定的な種々の実施形態が記述される。
【0013】
構成および実施方法の両方に関し、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態は、本発明のさらなる目的および利点とともに、添付の図面と関連して読んだ場合に、具体的な例示的かつ非限定的な実施形態についての以下の説明から理解される。
【0014】
「備える」および「含む」という動詞は、記載されていない特徴の存在を除外することも必要ともしないというオープンな制限として本文書中で使用されている。添付の従属請求項に記載の特徴は、特に明記しない限り、互いに自由に組み合わせ可能である。さらに、本文書全体を通して、単数形の使用は複数を排除するものでないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
例示的かつ非限定的な実施形態およびその効果は、下記の図面を参照し、例示として以下に詳細に説明される。
図1】本発明の例示的かつ非限定的な実施形態の電力変換装置を備える生物電気化学システムを示す模式図である。
図2】本発明の例示的かつ非限定的な実施形態の電力変換装置を示す模式図である。
図3】本発明の例示的かつ非限定的な実施形態の電力変換装置を示す模式図である。
【例示的実施形態の説明】
【0016】
以下に記載される具体例は、添付の請求項の範囲および/または利用可能性を制限するものと解釈すべきではない。特に明記されていない限り、以下に記載される例の一覧と組は網羅的なものではない。
【0017】
図1は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態の電力変換装置101を備える生物電気化学システムを示す模式図である。生物電気化学システムは、化学合成無機独立栄養細菌等の細菌および/または他の微生物を培養するバイオリアクターチャンバー113を備える。細菌および/または他の微生物は、例えば二酸化炭素、水、栄養、および/または培養工程で必要な他の物質を含んでもよい培養媒体114で培養される。図1において、細菌および/または他の微生物は小さな楕円形で描かれている。生物電気化学システムは、培養媒体114に含まれた水を水電解で水素Hと酸素Oに分解するための電極115、116、117、118、119、120を備える。細菌および/または他の微生物は、上述の水素をエネルギー源として独立栄養的に成長し二酸化炭素を自身のバイオマスに吸収させることができる。これによって、二酸化炭素、水、栄養を、細菌性バイオマス、および/またはバイオプラスチックやバイオ燃料等の他のバイオ製品に変換することができる。
【0018】
電力変換装置101は、生物電気化学システムの電極のうち2つを介して電流を供給する直流「DC」端子をそれぞれ有する、第1コンバーター102、103、104を備える。図1において、コンバーター102の直流端子は105で示す。図1に示した例示的な場合において、コンバーター102は電極115と116に接続され、コンバーター103は電極117と118に接続され、コンバーター104は電極119と120に接続される。電力変換装置101はさらに、外部電力グリッド125からコンバーター102~104にエネルギーを供給する第2コンバーター106を備える。上記コンバーター102~104はそれぞれ、コンバーター106からエネルギーを受け取る電気素子を有する。図1において、コンバーター102の電気素子は107で示す。図1に示した例示的な場合において、各コンバーター102~104の電気素子は、一次巻線109がコンバーター106に接続された変圧器の二次巻線である。各コンバーター102~104は、それぞれの二次巻線の電圧を生物電気化学システムに適した電解直流電圧に変換する回路を有する。図1において、コンバーター102の回路は108で示す。回路108は、二次巻線の交流電圧を電解直流電圧に変換する従来技術による制御可能な整流器でもよい。電解直流電圧は、例えば、1.5Vから3Vに設定できる。回路108は、例えば、電解直流電圧を平滑化するためのインダクター・コンデンサー「LC」フィルターまたはインダクター・コンデンサー・インダクター「LCL」フィルターを有してもよい。図1に示すとおり、各コンバーター102~104が二次巻線を有しているため、コンバーター102~104は直流的に互いに絶縁される。したがって、コンバーター102~104の1つから別のコンバーターに予想外や不要な電流経路が発生することがないため、各コンバーター102~104が他のコンバーター102~104の動作を妨げることなく自身の電極を駆動する。
【0019】
図2は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態の電力変換装置201を示す模式図である。電力変換装置201は、生物電気化学システムの電極215、216、217、218、219、220のうち2つを介して電流を供給する直流「DC」端子をそれぞれ有する、第1コンバーター202、203、204を備える。図2において、コンバーター202の直流端子は205で示す。図2に示した例示的な場合において、コンバーター202は電極215と216に接続され、コンバーター203は電極217と218に接続され、コンバーター204は電極219と220に接続される。電力変換装置201はさらに、外部電力グリッド225からコンバーター202~204にエネルギーを供給する第2コンバーター206を備える。上記コンバーター202~204はそれぞれ、コンバーター206からエネルギーを受け取る電気素子を有する。図2において、コンバーター202の電気素子は207で示す。図2に示した例示的な場合において、各コンバーター202~204の電気素子は、バッテリー素子とコンデンサー素子が並列接続された直流電圧エネルギーストレージである。各コンバーター202~204は、それぞれの直流電圧エネルギーストレージの直流電圧を生物電気化学システムに適した電解直流電圧に変換する回路を有する。電解直流電圧は、例えば、1.5Vから3Vに設定できる。図2において、コンバーター202の回路は208で示す。回路208は、従来技術の制御可能な直流電圧/直流電圧「DC/DC」コンバーターでもよい。回路208は、例えば、電解直流電圧を平滑化するためのインダクター・コンデンサー「LC」フィルターまたはインダクター・コンデンサー・インダクター「LCL」フィルターを有してもよい。
【0020】
各コンバーター202~204は、対象のコンバーターの直流電圧エネルギーストレージが生物電気化学システムにエネルギーを供給する際に、充電回路212から直流電圧エネルギーストレージを切断する第1スイッチシステムを備える。図2において、コンバーター202~204の第1スイッチシステムは210で示す。各コンバーター202~204は、直流電圧エネルギーストレージが充電回路212によって充電される際に、対象のコンバーターの直流端子から直流電圧エネルギーストレージを切断する第2スイッチシステムを備える。図2において、コンバーター202~204の第2スイッチシステムは211で示す。電力変換装置201が交互に、第1スイッチシステム210が導電性であり第2スイッチシステム211が非導電性である充電状態と、第1スイッチシステム210が非導電性であり第2スイッチシステム211が導電性である電解状態になるように、生物電気化学システムは周期的に動作する。図2に示した例示的な場合において、コンバーター202~204の直流電圧エネルギーストレージは、充電回路212に接続される際に直列接続される。直列接続によって、コンバーター206の出力電圧を上げることができる。コンバーター206は、電力グリッド225の交流電圧を直流電圧エネルギーストレージの直列接続に適した直流電圧に変換する従来技術の制御可能な整流器でもよい。本発明の他の実施形態によれば、直流電圧エネルギーストレージは、充電回路に接続される際には並列接続され、または直列接続された直流電圧エネルギーストレージの並列接続された組または並列接続された直流電圧エネルギーストレージの直列接続された組を構成するように直流電圧エネルギーストレージを配置することができる。適切な接続構造は、コンバーター206の電気特性と直流電圧エネルギーストレージの電気特性に依存する。
【0021】
コンバーター202~204が電極215~220を介してエネルギーを供給する際に直流的に互いに絶縁されているため、コンバーター202~204の1つから別のコンバーターに予想外や不要な電流経路が発生することがない。よって、各コンバーター202~204が他のコンバーター202~204の動作を妨げることなく自身の電極を駆動する。
【0022】
図3は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態の電力変換装置301を示す模式図である。電力変換装置301は、電極315、316、317、318、319、320のうち2つを介して電流を供給する直流「DC」端子をそれぞれ有する、第1コンバーター302、303、304を備える。図3において、コンバーター302の直流端子は305で示す。図3に示した例示的な場合において、コンバーター302は電極315と316に接続され、コンバーター303は電極317と318に接続され、コンバーター304は電極319と320に接続される。電力変換装置301はさらに、外部電力グリッド325からコンバーター302~304にエネルギーを供給する第2コンバーター306を備える。図3はコンバーター302の機能要素を示し、コンバーター303と304はブロックとして示す。コンバーター303と304はコンバーター302と同様でもよい。
【0023】
コンバーター302は、コンバーター306からエネルギーを受け取る2つの電気素子307a、307bを有する。図3に示した例示的な場合において、各電気素子307a、307bは、バッテリー素子とコンデンサー素子が並列接続された直流電圧エネルギーストレージである。コンバーター302は、それぞれの直流電圧エネルギーストレージの直流電圧を生物電気化学システムに適した電解直流電圧に変換する2つの回路308a、308bを有する。電解直流電圧は、例えば、1.5Vから3Vに設定できる。回路308a、308bはそれぞれ、従来技術の制御可能な直流電圧/直流電圧「DC/DC」コンバーターでもよい。回路308a、308bはそれぞれ、例えば、電解直流電圧を平滑化するためのインダクター・コンデンサー「LC」フィルターまたはインダクター・コンデンサー・インダクター「LCL」フィルターを有してもよい。
【0024】
コンバーター302は、スイッチ310a、310bを有する第1スイッチシステムを備える。スイッチ310aは、電気素子307aが電極315、316を介してエネルギーを供給する際に、コンバーター306に接続された充電回路312から電気素子307aを切断するのに適している。スイッチ310bは、電気素子307bが電極315、316を介してエネルギーを供給する際に、充電回路312から電気素子307bを切断するのに適している。コンバーター302は、スイッチ311a、311bを有する第2スイッチシステムを備える。スイッチ311aは、電気素子307aが充電回路312によって充電される際に、直流端子305から回路308aを切断するのに適している。スイッチ311bは、電気素子307bが充電回路312によって充電される際に、直流端子305から回路308bを切断するのに適している。電気素子307a、307bと回路308a、308bが電極315、316を交互に駆動するように、つまり、電気素子307a、307bの一方が電極315、316を介してエネルギー供給しながら他方が充電されるように、コンバーター302によって継続して水電解を行うことが可能になる。コンバーター306は、電力グリッド325の交流電圧を充電中の電気素子に適した直流電圧に変換する従来技術の制御可能な整流器でもよい。
【0025】
上述の説明における具体例は、添付の請求項の利用可能性および/または解釈を制限するものと解釈すべきではない。特に明記されていない限り、上述の説明における例の一覧と組は網羅的なものではない。
図1
図2
図3