(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】シミュレーション装置およびシミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
(21)【出願番号】P 2021548304
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038385
(87)【国際公開番号】W WO2021059534
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 浩平
(72)【発明者】
【氏名】矢野 高光
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116990(JP,A)
【文献】特開2008-277448(JP,A)
【文献】特開2018-64019(JP,A)
【文献】特開2012-64964(JP,A)
【文献】特開平11-232339(JP,A)
【文献】特開2005-108255(JP,A)
【文献】特開2002-111298(JP,A)
【文献】国際公開第2018/087854(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/142988(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の対基板作業を行って基板製品を生産する対基板作業機の稼働状況、および、前記基板製品の生産に必要な物品を前記対基板作業機に供給する物品移動装置の稼働状況を、前記基板製品の生産計画に基づいてシミュレーションする模擬部と、
前記模擬部によるシミュレーション結果に基づいて、前記対基板作業機による前記基板製品の生産が停止してから前記物品移動装置によって前記物品が供給されるまでの待ち時間に起因する前記対基板作業機の生産停止時間を算出する算出部と、
を備えるシミュレーション装置。
【請求項2】
前記対基板作業機は、
前記基板製品の生産に使用する前記物品を交換可能に保持する第一スロットと、
前記物品を予備的に保持可能、または、回収する前記物品を一時的に保持可能な第二スロットと、
を備え、
前記物品移動装置は、前記第一スロットと前記第二スロットとの間で前記物品の交換作業を行い、
前記算出部は、
前記対基板作業機による前記基板製品の生産が停止してから、前記物品移動装置が前記対基板作業機で不要になった前記物品を前記第一スロットから搬出するまでに要する搬出時間と、
前記物品移動装置が前記第二スロットに保持されている前記物品の搬出を開始してから、当該物品を前記第一スロットに搬入するまでに要する第一供給時間と、
に基づいて、前記生産停止時間を算出する請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記対基板作業機は、
前記基板製品の生産に使用する前記物品を交換可能に保持する第一スロットと、
前記物品を予備的に保持可能、または、回収する前記物品を一時的に保持可能な第二スロットと、
を備え、
前記物品移動装置は、前記第一スロットと前記第二スロットとの間で前記物品の交換作業を行い、
前記算出部は、
前記対基板作業機による前記基板製品の生産が停止してから、前記物品移動装置が前記対基板作業機で不要になった前記物品を前記第一スロットから搬出するまでに要する搬出時間と、
前記対基板作業機による前記基板製品の生産が停止する前に前記第二スロットが前記物品を保持することができないときに、前記物品移動装置が保管装置に保管されている前記物品の取得作業を開始してから、取得した前記物品を供給すべき前記対基板作業機に搬送して、当該物品を当該対基板作業機の前記第一スロットに搬入するまでに要する第二供給時間と、
に基づいて、前記生産停止時間を算出する請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記対基板作業機による前記基板製品の生産の停止は、前記対基板作業機における前記物品の不足または段取り替えによって発生する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記生産停止時間がゼロのときの前記対基板作業機の第一稼働率と、算出した前記生産停止時間のときの前記対基板作業機の第二稼働率とをさらに算出する請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記物品移動装置の稼働時間をさらに算出する請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記物品移動装置を具備しない基板生産ラインにおいて前記基板製品の生産に必要な前記物品を作業者が前記対基板作業機に供給する場合について、前記対基板作業機による前記基板製品の生産が停止してから、前記作業者によって前記物品が供給されるまでの待ち時間に起因する前記対基板作業機の生産停止時間を比較データとして取得する請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
前記模擬部は、前記基板製品の種類および生産予定数、並びに、前記物品の種類および必要数を少なくとも含む前記生産計画を管理する管理装置から前記生産計画を取得して、取得した前記生産計画に基づいてシミュレーションする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
前記模擬部は、前記基板製品の種類および生産予定数、並びに、前記物品の種類および必要数を少なくとも含む前記生産計画をオペレータに入力させて、前記オペレータによって入力された前記生産計画に基づいてシミュレーションする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項10】
基板に所定の対基板作業を行って基板製品を生産する対基板作業機の稼働状況、および、前記基板製品の生産に必要な物品を前記対基板作業機に供給する物品移動装置の稼働状況を、前記基板製品の生産計画に基づいてシミュレーションする模擬工程と、
前記模擬工程によるシミュレーション結果に基づいて、前記対基板作業機による前記基板製品の生産が停止してから前記物品移動装置によって前記物品が供給されるまでの待ち時間に起因する前記対基板作業機の生産停止時間を算出する算出工程と、
を備えるシミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、シミュレーション装置およびシミュレーション方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の部品実装ラインは、部品装着機と、フィーダ保管庫と、交換ロボットとを備えている。部品装着機は、フィーダから供給される部品を基板に装着する。フィーダ保管庫は、部品装着機に着脱可能なフィーダを保管する。交換ロボットは、フィーダを搬送し、フィーダ保管庫との間および部品装着機との間でフィーダを交換する。これにより、特許文献1に記載の部品実装ラインは、フィーダ保管庫に保管されているフィーダを部品装着機に供給するフィーダの供給作業を自動化しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の部品実装ラインでは、部品装着機は、交換ロボットによるフィーダの供給を受けつつ基板製品の生産を行う。しかしながら、交換ロボットによるフィーダの供給を受けるために、部品装着機は、基板製品の生産を停止する可能性がある。そのため、部品装着機による基板製品の生産が停止してから交換ロボットによってフィーダが供給されるまでの待ち時間に起因する部品装着機の生産停止時間を把握したいという要請がある。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、対基板作業機による基板製品の生産が停止してから物品移動装置によって物品が供給されるまでの待ち時間に起因する対基板作業機の生産停止時間を算出することが可能なシミュレーション装置およびシミュレーション方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、模擬部と、算出部とを備えるシミュレーション装置を開示する。前記模擬部は、基板に所定の対基板作業を行って基板製品を生産する対基板作業機の稼働状況、および、前記基板製品の生産に必要な物品を前記対基板作業機に供給する物品移動装置の稼働状況を、前記基板製品の生産計画に基づいてシミュレーションする。前記算出部は、前記模擬部によるシミュレーション結果に基づいて、前記対基板作業機による前記基板製品の生産が停止してから前記物品移動装置によって前記物品が供給されるまでの待ち時間に起因する前記対基板作業機の生産停止時間を算出する。
【0007】
また、本明細書は、模擬工程と、算出工程とを備えるシミュレーション方法を開示する。前記模擬工程は、基板に所定の対基板作業を行って基板製品を生産する対基板作業機の稼働状況、および、前記基板製品の生産に必要な物品を前記対基板作業機に供給する物品移動装置の稼働状況を、前記基板製品の生産計画に基づいてシミュレーションする。前記算出工程は、前記模擬工程によるシミュレーション結果に基づいて、前記対基板作業機による前記基板製品の生産が停止してから前記物品移動装置によって前記物品が供給されるまでの待ち時間に起因する前記対基板作業機の生産停止時間を算出する。
【発明の効果】
【0008】
シミュレーション装置は、模擬部および算出部を備える。よって、シミュレーション装置は、対基板作業機による基板製品の生産が停止してから物品移動装置によって物品が供給されるまでの待ち時間に起因する対基板作業機の生産停止時間を算出することができる。シミュレーション装置について上述したことは、シミュレーション方法についても同様に言える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】基板生産ラインの構成例を示す平面図である。
【
図2】
図1の交換システムおよび部品装着機の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】物品移動装置と部品装着機の部品供給装置との間におけるフィーダの交換作業の一例を示す平面図である。
【
図5】シミュレーション装置の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【
図6】シミュレーション装置によるシミュレーション手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】搬出時間、第一供給時間、第二供給時間、稼働時間および生産停止時間の関係の一例を示す模式図である。
【
図8】算出部による算出結果の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
1-1.基板生産ライン1の構成例
図1に示すように、基板生産ライン1は、少なくとも一つ(同図では、4つ)の部品装着機10と、交換システム30と、物品移動装置40と、保管装置5と、ライン制御コンピュータ6とを備えている。4つの部品装着機10は、
図2に示す基板90の搬送方向に沿って設置されている。部品装着機10は、基板90に所定の対基板作業を行う対基板作業機WMに含まれる。部品装着機10による対基板作業には、基板90の搬入作業および搬出作業、部品の採取作業および装着作業などが含まれる。部品装着機10には、例えば、カセット式のフィーダ20が着脱可能に設けられる。
【0011】
基板生産ライン1の基板搬入側(
図1の紙面左側)には、例えば、フィーダ20の保管に用いられる保管装置5が設置されている。また、基板生産ライン1には、交換システム30および物品移動装置40が設けられており、フィーダ20の補給作業、交換作業および回収作業を行う。なお、基板生産ライン1は、例えば、生産する基板製品の種別などに応じて、その構成を適宜追加、変更され得る。具体的には、基板生産ライン1には、例えば、はんだ印刷機、検査機、リフロー炉などの対基板作業機WMが適宜設置され得る。
【0012】
基板生産ライン1を構成する各装置は、ネットワークを介してライン制御コンピュータ6と種々のデータを入出力可能に構成されている。例えば、保管装置5は、複数のスロットを備えている。保管装置5は、複数のスロットに装備されたフィーダ20をストックする。保管装置5のスロットに装備されたフィーダ20は、ライン制御コンピュータ6との間で通信可能な状態になる。これにより、保管装置5のスロットと当該スロットに装備されたフィーダ20の識別符号が関連付けられて、ライン制御コンピュータ6に記録される。
【0013】
また、ライン制御コンピュータ6は、基板生産ライン1の動作状況を監視し、部品装着機10などの対基板作業機WM、交換システム30、物品移動装置40および保管装置5を統括制御する。ライン制御コンピュータ6には、対基板作業機WM、交換システム30、物品移動装置40および保管装置5を制御するための各種データが記憶されている。ライン制御コンピュータ6は、例えば、部品装着機10による部品の装着処理の実行に際して、制御プログラムなどの各種データを送出する。
【0014】
1-2.部品装着機10の構成例
図2に示すように、4つの部品装着機10の各々は、基板搬送装置11と、部品供給装置12と、ヘッド駆動装置13とを備えている。以下の説明において、部品装着機10の水平幅方向であり基板90の搬送方向をX方向とし、部品装着機10の水平奥行き方向をY方向とし、X方向およびY方向に垂直な鉛直方向(
図2の紙面上下方向)をZ方向とする。
【0015】
基板搬送装置11は、例えば、ベルトコンベアおよび位置決め装置などによって構成されている。基板搬送装置11は、基板90を搬送方向へ順次搬送するとともに、機内の所定位置に基板90を位置決めする。基板搬送装置11は、部品装着機10による装着処理が終了した後に、基板90を部品装着機10の機外に搬出する。
【0016】
部品供給装置12は、基板90に装着される部品を供給する。部品供給装置12は、複数のフィーダ20を装備可能な第一スロット121および第二スロット122を備えている。本実施形態では、第一スロット121は、部品装着機10の前部側の上部に配置され、装備されたフィーダ20を動作可能に保持する。第一スロット121に装備されたフィーダ20は、部品装着機10による装着処理において動作を制御され、当該フィーダ20の上部の規定位置に設けられた取り出し部において部品を供給する。
【0017】
本実施形態では、第二スロット122は、第一スロット121の下方に配置され、装備されたフィーダ20をストックする。つまり、第二スロット122は、生産に用いられるフィーダ20を予備的に保持し、または、生産に用いられた使用済みのフィーダ20を一時的に保持する。なお、第一スロット121と第二スロット122との間におけるフィーダ20の交換作業は、物品移動装置40によって行われる。
【0018】
また、フィーダ20は、部品供給装置12の第一スロット121または第二スロット122に装備されると、コネクタを介して部品装着機10から電力が供給される。そして、フィーダ20は、部品装着機10との間で通信可能な状態となる。第一スロット121に装備されたフィーダ20は、部品装着機10による制御指令などに基づいて、部品を収容するキャリアテープの送り動作が制御される。これにより、フィーダ20は、フィーダ20の上部に設けられた取り出し部において、装着ヘッド132の保持部材によって部品を採取可能に供給する。
【0019】
ヘッド駆動装置13は、直動機構によって移動台131を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。移動台131には、クランプ部材によって装着ヘッド132が交換可能(着脱可能)に固定されている。装着ヘッド132は、ヘッド駆動装置13の直動機構によって移動台131と一体的にXY方向に移動される。装着ヘッド132は、部品供給装置12によって供給された部品を保持部材によって採取する。保持部材は、例えば、供給される負圧エアによって部品を吸着する吸着ノズル、部品を把持するチャックなどを用いることができる。
【0020】
装着ヘッド132は、保持部材をZ方向に移動可能に、且つ、Z軸に平行なQ軸周りに回転可能に保持する。装着ヘッド132は、採取した部品の姿勢に応じて保持部材の位置および角度を調整する。そして、装着ヘッド132は、制御プログラムによって指令される基板90の装着位置に部品を装着する。上記の部品のピックアンドプレースサイクルの所定サイクル数分の所要時間と、基板90の搬入および搬出に要する所要時間との合計時間は、基板90一枚当たりのサイクルタイムである。
【0021】
なお、装着ヘッド132に設けられる保持部材は、基板90に部品を装着する装着処理において部品の種別に応じて適宜変更され得る。部品装着機10は、例えば、実行する装着処理にて用いる吸着ノズルが装着ヘッド132に取り付けられていない場合に、ノズルステーションに収容されている吸着ノズルを、装着ヘッド132に取り付ける。ノズルステーションは、部品装着機10の機内の所定位置に着脱可能に装備される。
【0022】
1-3.フィーダ20の構成例
図3に示すように、フィーダ20は、フィーダ本体21と、駆動装置22とを備えている。本実施形態のフィーダ本体21は、扁平な箱形状に形成されている。フィーダ本体21は、多数の部品を収容するキャリアテープが巻回されたリールを着脱可能(交換可能)に保持する。駆動装置22は、キャリアテープに設けられた送り穴に係合するスプロケットを備えている。駆動装置22は、スプロケットを回転させてキャリアテープを送り移動させる。
【0023】
フィーダ20は、制御装置(図示略)によって駆動装置22の動作が制御される。フィーダ20は、部品装着機10の第一スロット121に装備されると、コネクタを介して部品装着機10から電力の供給を受ける。これにより、フィーダ20の制御装置は、部品装着機10との間で通信可能な状態になる。第一スロット121について上述したことは、第二スロット122についても同様に言える。これにより、部品装着機10は、第一スロット121および第二スロット122におけるフィーダ20の補給および回収を検出することができる。
【0024】
1-4.交換システム30および物品移動装置40の構成例
図1および
図2に示すように、交換システム30は、第一レール31と、第二レール32とを備えている。第一レール31および第二レール32は、物品移動装置40の走行路を形成する。第一レール31は、4つの部品装着機10の配置方向に沿って設けられ、上下方向(Z方向)において、第一スロット121と、第二スロット122との間に設けられている。第二レール32は、4つの部品装着機10の配置方向に沿って設けられ、上下方向(Z方向)において、第二スロット122の下方に設けられている。第一レール31および第二レール32は、基板生産ライン1において、基板90の搬送方向の概ね全域に亘って延伸している。
【0025】
物品移動装置40は、第一レール31および第二レール32によって形成される走行路に沿って走行可能に設けられている。物品移動装置40は、例えば、第一レール31に設けられる送電部と対向して設けられる受電部を介して、非接触給電によって送電部から電力の供給を受ける。受電部が受け取った電力は、受電回路を介して物品移動装置40の走行、所定作業などに用いられる。なお、物品移動装置40は、例えば、位置検出装置によって走行路上の位置(現在位置)を検出する。位置検出装置には、例えば、光学的な検出方式、電磁誘導を用いた検出方式などを適用できる。
【0026】
上記の「所定作業」には、部品装着機10などの対基板作業機WMに着脱可能に設けられる機器DD0を、対基板作業機WMとの間で交換する交換作業が含まれる。本実施形態では、物品移動装置40は、基板90に装着される部品を供給するフィーダ20を機器DD0として、対基板作業機WMである部品装着機10との間、および、保管装置5との間でフィーダ20の交換作業を行う。
【0027】
本実施形態では、物品移動装置40は、保管装置5から部品装着機10の第一スロット121または第二スロット122にフィーダ20を搬送して、フィーダ20の補給作業を行う。また、物品移動装置40は、部品装着機10の第一スロット121と第二スロット122との間で、フィーダ20の交換作業を行う。さらに、物品移動装置40は、不要になったフィーダ20を部品装着機10から保管装置5に搬送して、フィーダ20の回収作業を行う。
【0028】
図4に示すように、物品移動装置40は、少なくとも一つ(同図では、2つ)の保持部41と、制御装置42とを備えている。本実施形態では、2つの保持部41の各々は、複数(同図では、2つ)のフィーダ20を同時にクランプ可能であり、複数(2つ)のフィーダ20を同時に保持することができる。また、2つの保持部41の各々は、例えば、直動機構などによって、フィーダ20の着脱方向(本実施形態ではY方向)に沿って独立して移動可能であり、複数(2つ)のフィーダ20を同時にY方向に沿って移動させることができる。
【0029】
さらに、2つの保持部41は、例えば、直動機構などによって、上下方向(Z方向)に一体的に移動可能であり、複数(4つ)のフィーダ20を同時にZ方向に移動させることもできる。なお、物品移動装置40は、例えば、複数(4つ)の保持部41を備えることもできる。この場合、複数(4つ)の保持部41の各々が一つのフィーダ20をクランプして、複数(4つ)のフィーダ20を独立にY方向およびZ方向に移動させることができる。また、保持部41の形態は、クランプ機構、直動機構に限定されるものではなく、種々の形態をとり得る。例えば、保持部41は、フィーダ20に設けられる穴部と嵌合可能な突出部を備えることもできる。この場合、保持部41の突出部がフィーダ20の穴部と嵌合することにより、フィーダ20が保持される。
【0030】
制御装置42は、公知の演算装置および記憶装置を備えており、制御回路が構成されている(いずれも図示略)。制御装置42は、4つの部品装着機10、交換システム30、保管装置5およびライン制御コンピュータ6と通信可能に接続されている。制御装置42は、物品移動装置40の走行、2つの保持部41の動作などを制御する。上記の構成により、物品移動装置40は、第一レール31および第二レール32に沿って所定位置まで移動するとともに、停止位置においてフィーダ20の交換作業を行うことができる。
【0031】
1-5.シミュレーション装置50の構成例
基板生産ライン1では、部品装着機10は、物品移動装置40によるフィーダ20の供給を受けつつ基板製品の生産を行う。しかしながら、物品移動装置40によるフィーダ20の供給を受けるために、部品装着機10は、基板製品の生産を停止する可能性がある。そのため、部品装着機10による基板製品の生産が停止してから物品移動装置40によってフィーダ20が供給されるまでの待ち時間に起因する部品装着機10の生産停止時間TW0を把握したいという要請がある。そこで、本実施形態では、シミュレーション装置50が設けられている。
【0032】
シミュレーション装置50は、種々の電子計算機、制御装置などに設けることができる。
図5に示すように、本実施形態のシミュレーション装置50は、電子計算機7に設けられている。電子計算機7は、公知の演算装置、記憶装置、入力装置および出力装置を備えている。シミュレーション装置50は、例えば、ライン制御コンピュータ6、複数の基板生産ライン1を管理するホストコンピュータ、クラウド上などに形成することもできる。
【0033】
また、
図5に示すように、シミュレーション装置50は、制御ブロックとして捉えると、模擬部51と、算出部52とを備えている。シミュレーション装置50は、
図6に示すフローチャートに従って、演算処理を実行する。模擬部51は、ステップS11~ステップS16に示す処理および判断を行う。算出部52は、ステップS17に示す処理を行う。
【0034】
1-5-1.模擬部51
模擬部51は、基板90に所定の対基板作業を行って基板製品を生産する対基板作業機WMの稼働状況、および、基板製品の生産に必要な物品AR0を対基板作業機WMに供給する物品移動装置40の稼働状況を、基板製品の生産計画に基づいてシミュレーションする(
図6に示すステップS11~ステップS16)。
【0035】
図1に示すように、本実施形態の基板生産ライン1は、部品装着機10を含む対基板作業機WMと、物品移動装置40と、保管装置5とを備えている。保管装置5は、フィーダ20に限らず、対基板作業機WMによる基板製品の生産に必要な物品AR0を保管することができる。例えば、既述した対基板作業機WMに着脱可能に設けられる機器DD0は、物品AR0に含まれる。
【0036】
対基板作業機WMが部品装着機10の場合、例えば、フィーダ20、複数の部品を収容するリールまたは部品トレイ、装着ヘッド132、保持部材(吸着ノズル、チャックなど)、ノズルステーションなどは、機器DD0に含まれる。対基板作業機WMが基板90にはんだを印刷するはんだ印刷機の場合、例えば、はんだカップ、マスク、スキージ、ディスペンスヘッドなどは、機器DD0に含まれる。対基板作業機WMが検査機の場合、例えば、検査ヘッドなどは、機器DD0に含まれる。検査機には、基板90に印刷されたはんだを検査するはんだ検査機、基板90に装着された部品を検査する外観検査機などが含まれる。
【0037】
同様に、物品移動装置40は、フィーダ20に限らず、保管装置5に保管されている物品AR0を対基板作業機WMに供給し、対基板作業機WMで不要になった物品AR0を保管装置5に回収することができる。また、本実施形態では、対基板作業機WMである部品装着機10は、第一スロット121および第二スロット122を備えている。他の対基板作業機WMにおいても第一スロット121および第二スロット122を備えることができ、保持する物品AR0もフィーダ20に限定されない。
【0038】
つまり、対基板作業機WMは、基板製品の生産に必要な物品AR0を交換可能に保持する第一スロット121と、物品AR0を予備的に保持可能、または、回収する物品AR0を一時的に保持可能な第二スロット122とを備えることができる。物品移動装置40は、第一スロット121と第二スロット122との間で物品AR0の交換作業を行うことができる。
【0039】
また、
図5に示すように、ライン制御コンピュータ6は、記憶装置6DSを備えている。記憶装置6DSは、例えば、ハードディスク装置などの磁気記憶装置、フラッシュメモリなどの半導体素子を使用した記憶装置などを用いることができる。記憶装置6DSには、基板製品の生産計画が記憶されている。
【0040】
模擬部51は、生産計画を管理する管理装置LC0から生産計画を取得して、取得した生産計画に基づいてシミュレーションすることができる。本実施形態では、ライン制御コンピュータ6は、管理装置LC0に相当する。これにより、模擬部51は、シミュレーション条件に含まれる生産計画を容易に設定することができる。
【0041】
また、模擬部51は、生産計画をオペレータに入力させて、オペレータによって入力された生産計画に基づいてシミュレーションすることもできる。この場合、オペレータは、シミュレーション条件に含まれる生産計画を個別に設定することができ、シミュレーション条件の変更も容易に行うことができる。なお、模擬部51は、管理装置LC0から生産計画を取得し、取得した生産計画の一部をオペレータに変更させて、生産計画を含むシミュレーション条件を設定しても良い。
【0042】
いずれの場合も、基板製品の生産計画は、基板製品の種類および生産予定数、並びに、物品AR0の種類および必要数を少なくとも含む。対基板作業機WMは、物品移動装置40による物品AR0の供給を受けつつ基板製品の生産を行う。よって、模擬部51が対基板作業機WMの稼働状況および物品移動装置40の稼働状況をシミュレーションするためには、シミュレーション条件として、上記の情報が少なくとも必要になる。
【0043】
また、例えば、
図1に示す基板生産ライン1は、4つの部品装着機10を備えている。基板90は、4つの部品装着機10に順に搬送されるので、部品装着機10による基板製品の生産時間は、4つの部品装着機10のうちの最も生産時間が長い部品装着機10の影響を受ける。同様に、基板製品の生産時間は、上流側のはんだ印刷機、はんだ検査機などの影響を受ける。また、基板製品の生産時間は、下流側のリフロー炉、外観検査機などの影響を受ける。よって、シミュレーション条件には、ボトルネックになる対基板作業機WMの生産所要時間が含まれると良い。例えば、対基板作業機WMが部品装着機10の場合、生産所要時間は、サイクルタイムを用いて表すことができる。
【0044】
さらに、例えば、4つの部品装着機10がすべて生産を停止してから段取り替えを開始する場合と、段取り替えが可能になった部品装着機10から段取り替えを開始する場合とでは、段取り替えによって発生する部品装着機10の生産停止時間TW0が異なる。よって、シミュレーション条件には、対基板作業機WMの段取り替えの方法が含まれると良い。なお、段取り替えは、例えば、基板製品の生産計画が切り替わるときに行われ、必要に応じて対基板作業機WMの各装置の構成(物品AR0を含む。)が変更され、必要に応じて対基板作業機WMを駆動制御する制御プログラムが変更される。
【0045】
また、例えば、物品AR0が基板製品の生産に必要になる前に事前に物品AR0の供給を予告して、対基板作業機WMの第二スロット122に物品AR0を予備的に保持させることができる場合がある。この場合、物品AR0が基板製品の生産に必要になる予定時間と、物品AR0の供給を予告する予告時間との時間差によって、事前に第二スロット122に準備可能な物品AR0の種類および数が変動し、対基板作業機WMの稼働状況、および、物品移動装置40の稼働状況が変動する可能性がある。よって、シミュレーション条件には、物品AR0の供給を予告する予告時間が含まれると良い。
【0046】
上述したことは、物品AR0から供給される供給品の不足についても同様に言える。例えば、物品AR0がフィーダ20の場合、リールに巻回されているキャリアテープに収容されている部品は、供給品に相当する。この場合、シミュレーション条件には、フィーダ20から供給される部品の不足を予告する予告時間が含まれると良い。このことは、例えば、物品AR0が部品トレイ、ノズルステーション、はんだカップなどの場合についても同様に言える。
【0047】
また、物品AR0から供給される供給品の残数の初期値によって、供給する物品AR0が基板製品の生産に必要になる予定時間が変動する。よって、シミュレーション条件には、物品AR0から供給される供給品の残数の初期値が含まれると良い。なお、物品AR0がフィーダ20であり供給品が部品の場合、供給品の残数の初期値は、例えば、キャリアテープのテープ幅ごとに設定することができる。テープ幅が大きくなるほど収容されている部品のサイズが大型化し、収容されている部品数が少なくなり易い。
【0048】
また、対基板作業機WMに着脱可能に設けられる機器DD0の第一スロット121および第二スロット122における初期配置によって、例えば、機器DD0の使用順序、使用頻度などが変動する可能性がある。よって、シミュレーション条件には、対基板作業機WMに着脱可能に設けられる機器DD0の第一スロット121および第二スロット122における初期配置が含まれると良い。既述した事項のうちの少なくとも一つがシミュレーション条件に含まれることにより、模擬部51は、実際の対基板作業機WMの稼働状況および物品移動装置40の稼働状況に近いシミュレーションを行うことができる。
【0049】
模擬部51は、基板製品の生産計画を含むシミュレーション条件に基づいて、対基板作業機WMの稼働状況および物品移動装置40の稼働状況をシミュレーションする。模擬部51は、まず、シミュレーションの初期設定を行う(
図6に示すステップS11)。初期設定には、既述したシミュレーション条件の設定、物品AR0の供給計画および物品AR0から供給される供給品の供給計画、不要になった物品AR0の回収計画の作成などが含まれる。
【0050】
本実施形態では、模擬部51は、物品AR0であるフィーダ20の供給計画と、フィーダ20から供給される部品の供給計画と、不要になったフィーダ20の回収計画とを作成する。部品の供給計画には、部品を供給するフィーダ20、部品を採取する保持部材、部品を装着する基板90における装着位置、部品を供給する順序(部品を基板90に装着する順序)、部品の供給数などが含まれる。部品の供給計画は、基板製品の生産計画に基づいて、サイクルタイムが最適になるように最適化される。最適化の手法は、限定されず、公知の手法を用いることができる。
【0051】
フィーダ20の供給計画または回収計画には、供給または回収する部品装着機10、第一スロット121または第二スロット122における位置、フィーダ20を供給または回収するタイミング、順序、フィーダ20の数などが含まれる。フィーダ20の供給計画または回収計画は、例えば、一度に供給または回収するフィーダ20の数、物品移動装置40の移動量、移動回数などが最適になるように最適化される。最適化の手法は、限定されず、公知の手法を用いることができる。
【0052】
次に、模擬部51は、物品AR0の供給計画、供給品の供給計画および物品AR0の回収計画を順次実行し、これらの計画を実行するのに要する実行時間を電子計算機7の記憶装置に記憶させる(ステップS12)。また、模擬部51は、物品AR0から供給される供給品の残数を算出して、供給品の残数を記憶装置に記憶させる(ステップS13)。本実施形態では、模擬部51は、部品装着機10によって部品が供給されて基板90に部品が装着される度に所要時間(部品装着機10の稼働時間)を算出し、記憶装置に記憶させる。模擬部51は、フィーダ20の供給作業、交換作業または回収作業などが行われる度に所要時間(物品移動装置40の稼働時間)を算出し、記憶装置に記憶させる。また、フィーダ20から部品が供給される度に、部品の残数を減じて、記憶装置に記憶させる。部品の残数がゼロになると、供給する部品の不足が発生する。
【0053】
また、模擬部51は、後述する待ち時間に起因する基板製品の生産停止が発生したか否かを判断する(ステップS14)。本実施形態では、模擬部51は、基板製品の生産に必要なフィーダ20が第一スロット121に装備されていない場合(段取り替えの発生)、部品装着機10による基板製品の生産停止が発生したと判断することができる。また、模擬部51は、第一スロット121に装備されているフィーダ20から供給される部品の残数がゼロになった場合(部品の不足、フィーダ20の不足)、部品装着機10による基板製品の生産停止が発生したと判断することができる。
【0054】
基板製品の生産停止が発生した場合(ステップS14でYesの場合)、模擬部51は、対基板作業機WMの生産停止時間TW0を算出して、生産停止時間TW0を記憶装置に記憶させる(ステップS15)。基板製品の生産が継続している場合(ステップS14でNoの場合)、模擬部51は、ステップS15に示す処理を実行しない。次に、模擬部51は、供給計画に含まれるすべての供給品(部品)が供給されたか否かを判断する(ステップS16)。
【0055】
供給計画に含まれるすべての供給品(部品)が供給された場合(ステップS16でYesの場合)、算出部52は、対基板作業機WMの生産停止時間TW0の集計などを行う(ステップS17)。供給計画に含まれるすべての供給品(部品)が供給されていない場合(ステップS16でNoの場合)、制御は、ステップS12に示す処理に戻り、供給計画に含まれるすべての供給品(部品)が供給されるまで、ステップS12~ステップS16に示す処理および判断が繰り返される。
【0056】
1-5-2.算出部52
算出部52は、模擬部51によるシミュレーション結果に基づいて、対基板作業機WMによる基板製品の生産が停止してから物品移動装置40によって物品AR0が供給されるまでの待ち時間に起因する対基板作業機WMの生産停止時間TW0を算出する(
図6に示すステップS17)。
【0057】
既述したように、対基板作業機WMは、基板製品の生産に使用する物品AR0を交換可能に保持する第一スロット121と、物品AR0を予備的に保持可能、または、回収する物品AR0を一時的に保持可能な第二スロット122とを備えている。また、物品移動装置40は、第一スロット121と第二スロット122との間で物品AR0の交換作業を行う。このような基板生産ライン1では、上記の待ち時間に起因する対基板作業機WMの生産停止時間TW0は、対基板作業機WMによる基板製品の生産が停止する前に第二スロット122が物品AR0を保持しているか否かによって異なる。
【0058】
対基板作業機WMによる基板製品の生産が停止する前に第二スロット122が物品AR0を保持している場合、算出部52は、搬出時間TC0と、第一供給時間TF0とに基づいて、生産停止時間TW0を算出することができる。搬出時間TC0は、対基板作業機WMによる基板製品の生産が停止してから、物品移動装置40が対基板作業機WMで不要になった物品AR0を第一スロット121から搬出するまでに要する時間をいう。また、第一供給時間TF0は、物品移動装置40が第二スロット122に保持されている物品AR0の搬出を開始してから、当該物品AR0を第一スロット121に搬入するまでに要する時間をいう。
【0059】
図7は、搬出時間TC0、第一供給時間TF0、第二供給時間TS0、稼働時間TM0および生産停止時間TW0の関係の一例を示している。折れ線L11は、対基板作業機WMの稼働状況のシミュレーション結果の一例を示している。横軸は、時刻を示し、縦軸は、対基板作業機WMが稼働している「稼働」状態、または、対基板作業機WMが基板製品の生産を停止している「停止」状態を示している。なお、稼働時間TM0は、対基板作業機WMの稼働時間であり、対基板作業機WMが基板製品を生産している時間である。
【0060】
折れ線L12は、物品移動装置40の稼働状況のシミュレーション結果の一例を示している。横軸は、時刻を示し、縦軸は、物品移動装置40が稼働している「稼働」状態、または、物品移動装置40が停止している「停止」状態を示している。物品移動装置40は、対基板作業機WMの稼働時間TM0において、第二スロット122に物品AR0を予備的に保持させるために稼働している時間がある。具体的には、物品移動装置40は、対基板作業機WMによる基板製品の生産が停止する前に、保管装置5に保管されている物品AR0の取得作業を開始して、取得した物品AR0を供給すべき対基板作業機WMに搬送して、当該物品AR0を当該対基板作業機WMの第二スロット122に搬入する。
【0061】
そして、対基板作業機WMによる基板製品の生産が停止すると、物品移動装置40は、対基板作業機WMで不要になった物品AR0を第一スロット121から搬出する。また、物品移動装置40は、第二スロット122に保持されている物品AR0を搬出して、当該物品AR0を第一スロット121に搬入する。この場合、対基板作業機WMの生産停止時間TW0は、搬出時間TC0と、第一供給時間TF0と、物品AR0が第一スロット121に搬入されてから実際に対基板作業機WMが基板製品の生産を開始するまでの所要時間とを加算した時間に相当する。
【0062】
例えば、第二スロット122に空きがないことにより、対基板作業機WMによる基板製品の生産が停止する前に第二スロット122が物品AR0を保持することができない場合がある。この場合、算出部52は、搬出時間TC0と、第二供給時間TS0とに基づいて、生産停止時間TW0を算出することができる。第二供給時間TS0は、物品移動装置40が保管装置5に保管されている物品AR0の取得作業を開始してから、取得した物品AR0を供給すべき対基板作業機WMに搬送して、当該物品AR0を当該対基板作業機WMの第一スロット121に搬入するまでに要する時間をいう。
【0063】
この場合、物品移動装置40は、対基板作業機WMによる基板製品の生産が停止した後に、保管装置5に保管されている物品AR0を取得する。具体的には、対基板作業機WMによる基板製品の生産が停止すると、物品移動装置40は、対基板作業機WMで不要になった物品AR0を第一スロット121から搬出する。また、物品移動装置40は、保管装置5に保管されている物品AR0を取得し、取得した物品AR0を供給すべき対基板作業機WMに搬送して、当該物品AR0を当該対基板作業機WMの第一スロット121に搬入する。この場合、対基板作業機WMの生産停止時間TW0は、搬出時間TC0と、第二供給時間TS0と、物品AR0が第一スロット121に搬入されてから実際に対基板作業機WMが基板製品の生産を開始するまでの所要時間とを加算した時間に相当する。
【0064】
なお、いずれの場合も、第一スロット121から搬出された物品AR0は、物品移動装置40が対基板作業機WMから保管装置5に搬送して、回収作業を行うことができる。また、物品移動装置40が回収作業を行うことができない場合、第一スロット121から搬出された物品AR0は、第二スロット122に搬入される。第二スロット122は、第一スロット121から搬出された物品AR0を一時的に保持することができる。
【0065】
対基板作業機WMによる基板製品の生産の停止の要因は、限定されない。例えば、対基板作業機WMによる基板製品の生産の停止は、対基板作業機WMにおける物品AR0の不足または段取り替えによって発生する。本実施形態では、部品装着機10による基板製品の生産の停止は、部品装着機10におけるフィーダ20の不足(フィーダ20から供給される部品の不足)または段取り替えによって発生する。
【0066】
図8は、算出部52による算出結果の一例を示している。同図では、部品装着機10の稼働時間TM0、段取り替えによる部品装着機10の生産停止時間TW0、部品の不足による部品装着機10の生産停止時間TW0、物品移動装置40の稼働時間、第一稼働率および第二稼働率、並びに、その他のデータが生産計画ごとに模式的に示されている。
【0067】
本実施形態では、算出部52は、模擬部51によるシミュレーション結果に基づいて、部品装着機10の稼働時間TM0を集計する。生産計画JB1の部品装着機10の稼働時間TM0は、稼働時間TM1で示されている。生産計画JB2の部品装着機10の稼働時間TM0は、稼働時間TM2で示されている。
【0068】
また、算出部52は、模擬部51によるシミュレーション結果に基づいて、段取り替えによる部品装着機10の生産停止時間TW0を集計する。生産計画JB1の部品装着機10の生産停止時間TW0は、停止時間TW11で示されている。生産計画JB2の部品装着機10の生産停止時間TW0は、停止時間TW12で示されている。また、算出部52は、模擬部51によるシミュレーション結果に基づいて、部品の不足(フィーダ20の不足)による部品装着機10の生産停止時間TW0を集計する。生産計画JB1の部品装着機10の生産停止時間TW0は、停止時間TW21で示されている。生産計画JB2の部品装着機10の生産停止時間TW0は、停止時間TW22で示されている。
【0069】
算出部52は、物品移動装置40の稼働時間を算出することもできる。本実施形態では、算出部52は、模擬部51によるシミュレーション結果に基づいて、物品移動装置40の稼働時間を集計する。生産計画JB1の物品移動装置40の稼働時間は、稼働時間TL1で示されている。生産計画JB2の物品移動装置40の稼働時間は、稼働時間TL2で示されている。
【0070】
なお、物品移動装置40の稼働時間には、部品の不足(フィーダ20の不足)による稼働時間が含まれる。物品移動装置40の稼働時間には、段取り替えによる稼働時間が含まれる。物品移動装置40の稼働時間には、第二スロット122に予備的にフィーダ20を保持させるための稼働時間が含まれる。物品移動装置40の稼働時間には、不要になったフィーダ20の回収のみの稼働時間が含まれる。物品移動装置40の稼働時間には、他の機器との干渉を回避する退避動作の稼働時間が含まれる。算出部52は、上記の各々について、物品移動装置40の稼働時間を算出することができる。
【0071】
算出部52は、生産停止時間TW0がゼロのときの対基板作業機WMの第一稼働率と、算出した生産停止時間TW0のときの対基板作業機WMの第二稼働率とを算出することもできる。第一稼働率および第二稼働率は、対基板作業機WMが継続して稼働できる能力をいい、可用性(Availability)を示している。つまり、第一稼働率および第二稼働率は、対基板作業機WMが基板製品を生産可能な時間と、基板製品を生産不可能な時間との合計時間に対する基板製品を生産可能な時間の割合で示される。算出部52が第一稼働率と第二稼働率を算出することにより、可用性を数値化することができ、シミュレーション装置50の利用者は、生産停止時間TW0の影響を把握し易くなる。
【0072】
本実施形態では、算出部52は、模擬部51によるシミュレーション結果に基づいて、部品装着機10の第一稼働率および第二稼働率を算出する。生産計画JB1の部品装着機10の第一稼働率は、稼働率R11で示され、生産計画JB1の部品装着機10の第二稼働率は、稼働率R21で示されている。生産計画JB2の部品装着機10の第一稼働率は、稼働率R12で示され、生産計画JB2の部品装着機10の第二稼働率は、稼働率R22で示されている。
【0073】
算出部52は、物品移動装置40を具備しない基板生産ラインにおいて基板製品の生産に必要な物品AR0を作業者が対基板作業機WMに供給する場合について、比較データを取得することができる。具体的には、算出部52は、対基板作業機WMによる基板製品の生産が停止してから、作業者によって物品AR0が供給されるまでの待ち時間に起因する対基板作業機WMの生産停止時間を比較データとして取得する。これにより、シミュレーション装置50の利用者は、対基板作業機WMの生産停止時間TW0の対比が容易になり、物品移動装置40による効果を把握し易くなる。
【0074】
なお、作業者による物品AR0の供給作業に要する所要時間は、例えば、作業者が実際に物品AR0の供給作業を行ったときの実測値に基づいて、取得することができる。また、通常、作業者による物品AR0の供給作業に要する所要時間は、ばらつきが生じる。そのため、算出部52は、複数の作業者が実際に物品AR0の供給作業を行ったときの実測値の平均値、最頻値などを算出することもできる。
【0075】
また、算出部52は、対基板作業機WMの能力値(Performance)、設備総合効率(Overall Equipment Effectivenes)などを算出することもできる。対基板作業機WMの能力値は、仕様に対する実際の対基板作業機WMの能力を示している。また、設備総合効率は、既述した稼働率(第一稼働率および第二稼働率)、対基板作業機WMの能力値および品質を乗じて算出される。100%の設備総合効率(理想効率)と、実際の設備総合効率とを比較することにより、基板製品の生産過程における損失の発生源、損失の種類などを抽出することができる。
図8に示すその他のデータには、上述した情報が含まれる。生産計画JB1のデータは、データD11で示されている。生産計画JB2のデータは、データD12で示されている。
【0076】
シミュレーション装置50は、種々の方法によって、算出部52によって算出された算出結果を出力することができる。シミュレーション装置50は、例えば、電子計算機7の出力装置(例えば、
図5に示す表示装置7DP)を用いて、算出部52によって算出された生産停止時間TW0を出力(例えば、表示装置7DPに表示)することができる。生産停止時間TW0について上述したことは、第一稼働率および第二稼働率、物品移動装置40の稼働時間、比較データの生産停止時間、並びに、その他のデータについても、同様に言える。
【0077】
2.その他
図1に示すように、本実施形態では、保管装置5は、基板生産ライン1に設けられ、物品移動装置40は、交換システム30の第一レール31および第二レール32によって形成される走行路に沿って走行することができる。しかしながら、保管装置5および物品移動装置40は、上記形態に限定されるものではなく、種々の形態をとり得る。例えば、保管装置5は、基板生産ライン1から離間した位置に設けることができ、複数の基板生産ライン1に物品AR0を供給し、複数の基板生産ライン1から物品AR0を回収することもできる。
【0078】
また、例えば、物品移動装置40は、無人搬送車を用いることができる。無人搬送車は、作業者による運転操作が不要な自動走行可能な搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)である。物品移動装置40である無人搬送車は、例えば、基板生産ライン1から離間した位置に設けられる保管装置と、対基板作業機WM(例えば、部品装着機10)との間を走行することができる。なお、無人搬送車は、複数の走行経路が想定される場合がある。
【0079】
また、複数の無人搬送車が走行する場合、複数の無人搬送車において優先度が設定される場合がある。例えば、段取り替えのために物品AR0を搬送する無人搬送車の優先度と比べて、物品AR0の不足の発生によって物品AR0を搬送する無人搬送車の優先度は、高く設定される。また、保管装置が複数の基板生産ライン1に物品AR0を供給する場合、搬送先の基板生産ライン1における生産優先度に応じて、無人搬送車の優先度が設定される場合もある。さらに、物品AR0を回収する無人搬送車の優先度と比べて、物品AR0を供給する無人搬送車の優先度は、高く設定される。このように、物品移動装置40が無人搬送車の場合、模擬部51は、無人搬送車の走行経路および優先度、他の無人搬送車の稼働状況、他の基板生産ライン1の稼働状況などを含めて、対基板作業機WMの稼働状況および物品移動装置40の稼働状況をシミュレーションすることができる。
【0080】
3.シミュレーション方法
シミュレーション装置50について既述したことは、シミュレーション方法についても同様に言える。具体的には、シミュレーション方法は、模擬工程と、算出工程とを備えている。模擬工程は、模擬部51が行う制御に相当する。算出工程は、算出部52が行う制御に相当する。
【0081】
4.実施形態の効果の一例
シミュレーション装置50は、模擬部51および算出部52を備える。よって、シミュレーション装置50は、対基板作業機WMによる基板製品の生産が停止してから物品移動装置40によって物品AR0が供給されるまでの待ち時間に起因する対基板作業機WMの生産停止時間TW0を算出することができる。シミュレーション装置50について上述したことは、シミュレーション方法についても同様に言える。
【符号の説明】
【0082】
5:保管装置、40:物品移動装置、50:シミュレーション装置、
51:模擬部、52:算出部、90:基板、121:第一スロット、
122:第二スロット、AR0:物品、LC0:管理装置、
TC0:搬出時間、TF0:第一供給時間、TS0:第二供給時間、
TW0:生産停止時間、WM:対基板作業機。