(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】正規品自動認証方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20221006BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G01N35/02 C
G01N35/00 C
(21)【出願番号】P 2021550670
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2020035942
(87)【国際公開番号】W WO2021065650
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019180785
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】川辺 俊樹
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-320658(JP,A)
【文献】特表2018-530235(JP,A)
【文献】特表2018-528504(JP,A)
【文献】特開2019-050507(JP,A)
【文献】特開2008-258663(JP,A)
【文献】特開2018-062884(JP,A)
【文献】特開2018-009841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0235832(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00、35/02
H04L 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に付与された識別コードに基づいて前記物品を使用する装置側で前記物品が正規品であるか否かを認証する自動認証方法であって、
前記識別コードが複数の文字を配列して成る文字列を含み、この文字列は、前記物品を識別するための識別情報を含む識別情報部分と、パスワード部分とを有し、
前記パスワード部分は、乱数に基づいて生成される乱文字から成る第1のパスワード部分と、この第1のパスワード部分と前記識別情報とに基づき所定の乱文字作成規則にしたがって生成される乱文字から成る第2のパスワード部分とを有
するとともに、
前記第1のパスワード部分及び前記第2のパスワード部分の乱文字が混ざり合った乱文字群の配列から成る混合パスワードとして構成され、
前記方法は、
前記物品に付与された前記識別コードを前記装置側で読み取る識別コード読み取りステップと、
前記識別コード読み取りステップにより読み取られた前記識別コードの前記第1のパスワード部分と前記識別情報部分を構成する文字とに基づき、前記所定の乱文字作成規則にしたがって前記第2のパスワード部分の生成手順を再現するパスワード部分生成再現ステップと、
前記パスワード部分生成再現ステップによる再現によって生成された第2のパスワード部分を前記識別コード読み取りステップにより読み取られた物品の識別コードの第2のパスワード部分と照合するパスワード照合ステップと、
前記パスワード照合ステップにより照合される第2のパスワード部分同士が一致するときに前記物品を正規品であると認証する認証ステップと、
を含むことを特徴とする自動認証方法。
【請求項2】
前記所定の乱文字作成規則は、少なくとも1つの変換表を用いて文字を乱文字に変換することを含むことを特徴とする請求項1に記載の自動認証方法。
【請求項3】
前記識別コードは、同じロット内のそれぞれの物品を区別する場合に、前記識別情報部分を構成する文字列であるシリアル番号によって区別することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動認証方法。
【請求項4】
前記識別コードは、同じロット内のそれぞれの物品を区別しない場合に、前記第1のパスワード部分が同一ロット内で異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動認証方法。
【請求項5】
前記所定の乱文字作成規則は、文字を数値化して演算し、その演算値を変換表の入力値とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の自動認証方法。
【請求項6】
前記パスワード部分が前記乱文字の配列から成り、前記パスワード部分生成再現ステップは、前記識別コード読み取りステップにより読み取られた識別コードの前記第1のパスワード部分の特定の1つ以上の乱文字と当該乱文字の配列上における位置とから変換表に基づいてその他の乱文字を特定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の自動認証方法。
【請求項7】
前記認証ステップにより正規品であると認証された物品の識別コードを記憶部に記憶する識別コード記憶ステップを更に含み、
前記認証ステップは、前記識別コード読み取りステップにより読み取られる物品の識別コードが前記記憶部に記憶されたいずれかの識別コードと一致するときにその物品を正規品であると認証しない、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の自動認証方法。
【請求項8】
前記識別情報部分が同一である識別コードが付与された物品に関し、前記認証ステップにおける認証回数及び非認証回数を記憶する回数記憶ステップと、
前記回数記憶ステップで記憶された非認証回数が所定の回数に達したときに前記装置の使用を制限する信号を生成する装置使用制限信号生成ステップと、
を更に含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の自動認証方法。
【請求項9】
前記装置がスタンドアロン装置であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の自動認証方法。
【請求項10】
物品に付与された識別コードに基づいて前記物品を使用する装置側で前記物品が正規品であるか否かを認証する自動認証モジュールであって、
前記識別コードが複数の文字を配列して成る文字列を含み、この文字列は、前記物品を識別するための識別情報を含む識別情報部分と、パスワード部分とを有し、
前記パスワード部分は、乱数に基づいて生成される乱文字から成る第1のパスワード部分と、この第1のパスワード部分と前記識別情報とに基づき所定の乱文字作成規則にしたがって生成される乱文字から成る第2のパスワード部分とを有
するとともに、
前記第1のパスワード部分及び前記第2のパスワード部分の乱文字が混ざり合った乱文字群の配列から成る混合パスワードとして構成され、
前記モジュールは、
前記物品に付与された前記識別コードを前記装置側で読み取る識別コード読み取り部と、
前記識別コード読み取り部により読み取られた前記識別コードの前記第1のパスワード部分と前記識別情報部分を構成する文字とに基づき、前記所定の乱文字作成規則にしたがって前記第2のパスワード部分の生成手順を再現するパスワード部分生成再現部と、
前記パスワード部分生成再現部による再現によって生成された第2のパスワード部分を前記識別コード読み取り部により読み取られた物品の識別コードの第2のパスワード部分と照合するパスワード照合部と、
前記パスワード照合部により照合される第2のパスワード部分同士が一致するときに前記物品を正規品であると認証する認証部と、
を備えることを特徴とする自動認証モジュール。
【請求項11】
前記所定の乱文字作成規則は、少なくとも1つの変換表を用いて文字を乱文字に変換することを含むことを特徴とする請求項10に記載の自動認証モジュール。
【請求項12】
前記識別コードは、同じロット内のそれぞれの物品を区別する場合に、前記識別情報部分を構成する文字列であるシリアル番号によって区別することを特徴とする請求項10又は11に記載の自動認証モジュール。
【請求項13】
前記識別コードは、同じロット内のそれぞれの物品を区別しない場合に、前記第1のパスワード部分が同一ロット内で異なることを特徴とする請求項10又は11に記載の自動認証モジュール。
【請求項14】
前記所定の乱文字作成規則は、文字を数値化して演算し、その演算値を変換表の入力値とすることを特徴とする請求項10から13のいずれか一項に記載の自動認証モジュール。
【請求項15】
前記パスワード部分が前記乱文字の配列から成り、前記パスワード部分生成再現部は、前記識別コード読み取り部により読み取られた識別コードの前記第1のパスワード部分の特定の1つ以上の乱文字と当該乱文字の配列上における位置とから変換表に基づいてその他の乱文字を特定することを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の自動認証モジュール。
【請求項16】
前記認証部により正規品であると認証された物品の識別コードを記憶する識別コード記憶部を更に備え、
前記認証部は、前記識別コード読み取り部により読み取られる物品の識別コードが前記識別コード記憶部に記憶されたいずれかの識別コードと一致するときにその物品を正規品であると認証しない、
ことを特徴とする請求項10から15のいずれか一項に記載の自動認証モジュール。
【請求項17】
前記識別情報部分が同一である識別コードが付与された物品に関し、前記認証部による認証回数及び非認証回数を記憶する回数記憶部と、
前記回数記憶部に記憶された非認証回数が所定の回数に達したときに前記装置の使用を制限する信号を生成する装置使用制限信号生成部と、
を更に含むことを特徴とする請求項10から16のいずれか一項に記載の自動認証モジュール。
【請求項18】
前記装置がスタンドアロン装置であることを特徴とする請求項10から17のいずれか一項に記載の自動認証モジュール。
【請求項19】
検体が分注された反応容器を保持する反応部と、試薬を前記反応容器に供給する試薬供給部とを備え、前記試薬供給部から前記反応容器に供給される試薬を検体と反応させて反応過程を測定することにより所定の検査項目に関して測定情報を得る自動分析装置であって、
物品としての前記試薬が正規品であるか否かを認証する請求項10から18のいずれか一項に記載の自動認証モジュールを前記装置の構成要素のひとつとすることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に付与された識別コードに基づいて物品を使用する装置側で物品が正規品であるか否かを認証する自動認証方法、自動認証モジュール、及び、該自動認証モジュールを備える自動分析装置に関し、特に、乱数を用いた識別コードに基づいて正規品を認証する自動認証方法、自動認証モジュール、及び、該自動認証モジュールを備える自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品(製品)が正規品であるか非正規品であるかを認証する方法及びシステムとしては、従来から様々なものが知られており、また、そのような認証が重要課題である物品も市場に数多く存在する。
【0003】
一例として、血液凝固分析装置や、免疫測定法を用いた分析装置など、血液や尿などの生体サンプルに種々の試薬を反応させることにより様々な検査項目に関して測定情報を得ることができる自動分析装置においても、誤用及び非正規品の使用を防止するため、或いは、必要な測定品質での分析を確保する上で、物品としての試薬が正規品であるか否かを認証することが極めて重要である。
【0004】
正規品の認証は、一般に、パスワード等を含む識別コードを利用して行なわれるが、このような識別コードは、様々な方法で生成され、様々な目的をもって厳重に管理される(例えば、特許文献1参照)。具体的には、例えば、物品に表示又は貼付されるラベルにパスワード等を含む識別コードとしてバーコードが印字され、物品を使用する装置側でバーコードリーダーによってバーコードを読み取ることにより物品が正規品であるか非正規品であるかを判別するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単純な変換や生成規則によって符号化された識別コード(パスワード等)は、今日のAI技術などを駆使すれば、簡単にその生成手法が第三者に解読されて復号化されてしまう。また、どのように複雑な規則によって生成された識別コードでも、識別コードを照合するときに暗号化テーブル等を参照するようでは、テーブルが盗用されれば、第三者に全て解読されてしまう。このような第三者による識別コードの解読は、非正規品(模倣品)の流通を助長し、正規品の使用を妨害するとともに、正規品の使用で得られる結果物の厳重な品質管理を困難にする。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、物品に付与される識別コードの第三者による解読を困難にしつつ、その識別コードに基づいて物品が正規品であるか否かを認証できる自動認証方法、自動認証モジュール、及び、該自動認証モジュールを備える自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、物品に付与された識別コードに基づいて前記物品を使用する装置側で前記物品が正規品であるか否かを認証する自動認証方法であって、前記識別コードが複数の文字を配列して成る文字列を含み、この文字列は、前記物品を識別するための識別情報を含む識別情報部分と、パスワード部分とを有し、前記パスワード部分は、乱数に基づいて生成される乱文字から成る第1のパスワード部分と、この第1のパスワード部分と前記識別情報とに基づき所定の乱文字作成規則にしたがって生成される乱文字から成る第2のパスワード部分とを有し、前記方法は、前記物品に付与された前記識別コードを前記装置側で読み取る識別コード読み取りステップと、前記識別コード読み取りステップにより読み取られた前記識別コードの前記第1のパスワード部分と前記識別情報部分を構成する文字とに基づき、前記所定の乱文字作成規則にしたがって前記第2のパスワード部分の生成手順を再現するパスワード部分生成再現ステップと、前記パスワード部分生成再現ステップによる再現によって生成された第2のパスワード部分を前記識別コード読み取りステップにより読み取られた物品の識別コードの第2のパスワード部分と照合するパスワード照合ステップと、前記パスワード照合ステップにより照合される第2のパスワード部分同士が一致するときに前記物品を正規品であると認証する認証ステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
上記構成では、物品の識別情報とパスワードとを関連付けた識別コード生成手法を採用するだけでなく、乱数と乱文字作成規則との組み合わせによって、具体的には、乱数に基づいて生成される第1のパスワード部分と、この第1のパスワード部分と識別情報とに基づき所定の乱文字作成規則にしたがって生成される第2のパスワード部分との組み合わせによって識別コードのパスワード部分が形成されている。すなわち、乱数によって第1のパスワード部分の生成に不規則性を取り入れつつ、そのような乱数を乱文字作成規則によって第2のパスワード部分の生成に関与させている。そのため、パスワードの解読困難性が高められ、第三者によるパスワードの解読が非常に困難となる。その一方で、装置側における識別コードの照合(正規品の認証)では、解読困難性が高められた識別コードを読み取り、その読み取った識別コードの第1のパスワード部分(乱数に基づいて生成される乱文字)と識別情報とに基づき乱文字作成規則にしたがって第2のパスワード部分の生成手順を再現するとともに、再現した第2のパスワード部分と読み取った第2のパスワード部分とを照合して物品が正規品であるか否かを認証するため、第三者が解読困難な態様で第2のパスワード部分の生成を確実に再現できるとともに、再現した第2のパスワード部分に基づいて物品が正規品であるか否かを確実に認証することもできる。したがって、ひいては、非正規品(模倣品)の流通を防止でき、正規品の使用が妨害されず、また、正規品の使用に伴う結果物の厳重な品質管理を行なうこともできるようになる。
【0010】
なお、上記構成において、「物品」とは、製造品質が同等と看做せる製品又は商品であって、2つ以上が生産されるものをいう。そのような物品としては、例えば、プリンタのインク、自動分析装置で使用される試薬などを挙げることができる。また、「識別コード」とは、物品に表示又は貼付されるとともに、何らかの読み取り手段によって読み取り可能な物品識別コード化情報をいう。そのような識別コードとしては、バーコード、QRコード(登録商標)等を挙げることができる。また、「装置」とは、物品を消耗品として使用し、所定の機能を発揮するものをいう。装置としては、特に、ネットワークに接続されていないスタンドアロン装置(例えば、試薬の使用状況管理がなされていないスタンドアロン状態で使用される自動分析装置など)が好適であるが、これに限らない。例えば、装置同士が互いに通信可能に及び/又は機械的に接続されて一括して集中制御されるような形態も本発明において想定される。また、「正規品」とは、正規のものである物品をいう。したがって、正規でない模倣品、海賊品などの物品は非正規品となる。また、「文字」とは、一般的なコードリーダー等で読み取り可能な文字であって、キーボード等で入力可能な文字。一例として、数字、アルファベット(小文字、大文字)、記号、カナなどを挙げることができる。また、「乱文字」とは、乱数に基づいて生成された文字をいう。
【0011】
また、上記構成において、所定の乱文字作成規則は、少なくとも1つの変換表を用いて文字を乱文字に変換してもよい。この場合、変換表としては、数値または数値の組み合わせを乱文字に変換する変換表や、文字を数値に変換する変換表などを挙げることができる。また、このような変換表を用いる場合、所定の乱文字作成規則は、文字を数値化して演算し、その演算値を変換表の入力値としてもよい。
【0012】
また、上記構成において、識別コードは、同じロット内のそれぞれの物品を区別する場合には、識別情報部分を構成する文字列であるシリアル番号によって区別してもよく、一方、同じロット内のそれぞれの物品を区別しない場合には、第1のパスワード部分が同一ロット内で異なるように作成する。これにより、同じロット内でパスワード部分が同じ識別コードが作成されないため、装置での認証ステップにおける認証回数チェック(後述する)で認証失敗となることを防止できる。更に、予め複数の変換表を準備しておき、パスワード部分生成再現ステップで用いる変換表を識別情報部分又は第1のパスワード部分の内容に応じて切り換えてもよい。なお、ここで、「ロット」とは、生産条件(製造品質)が同じと看做せる複数の物品の集まりであり、「ロット番号」により個々のロットを区別する。また、「シリアル番号」とは、同一ロットで個々の物品を区別するための番号(文字列)をいう。一例として、物品には、シリアル番号を有するもの及び有さないものの2種類がある。
【0013】
また、上記構成において、自動認証方法は、認証ステップにより正規品であると認証された物品の識別コードを記憶部に記憶する識別コード記憶ステップを更に含み、認証ステップは、識別コード読み取りステップにより読み取られる物品の識別コードが記憶部に記憶されたいずれかの識別コードと一致するときにその物品を正規品であると認証しないことが好ましい。例えば、物品の構成が物質を容器に充填したものである場合、正規の物質を使用した後に使用後の容器に模倣物質(非正規の物質)を充填した模倣品を使用することも考えられるが、本構成のように、識別コード読み取りステップにより読み取られる物品の識別コードが記憶部に記憶されたいずれかの識別コードと一致するときにその物品を正規品であると認証しないようにすれば、このようにして作成された同じ識別コードの模倣品を排除できる。なお、記憶部は、認証された物品の識別コードをロット別又は使用期限別に記憶してもよく、また、その場合、例えばロットや使用期限のそれぞれの付与規則から識別コードの記憶範囲を制限することもできる。具体的には、例えば、ロットの例としては、物品の生産順にアルファベット1文字でAからZまでのロットが付与され、使用期限が生産1年後であり、次のロットの生産時期が前ロットの1年後である場合、ロットBが使用できる期間はロットAの使用期限を過ぎている。この場合、ロットAの物品が再使用されると、正規品認証後の使用期限チェックで使用不可と判定することができる。
【0014】
また、上記構成では、パスワード部分が乱文字の配列から成り、パスワード部分生成再現ステップは、識別コード読み取りステップにより読み取られた識別コードの第1のパスワード部分の特定の1つ以上の乱文字と当該乱文字の配列上における位置とから変換表に基づいてパスワード部分のその他の乱文字の配列上における位置を特定してもよい。このようにすれば、パスワードの解読困難性がより高められ、第三者によるパスワードの解読が非常に困難となる。なお、読み取られた識別コードの第1のパスワード部分の特定の1つ以上の乱文字と当該乱文字の配列上における位置とからその他の乱文字の配列上における位置を特定するための前記変換表としては、例えば、乱文字の位置を行と列とで特定する一覧表(乱文字位置解読表)などを挙げることができる。
【0015】
また、上記構成において、自動認証方法は、識別情報部分が同一である識別コードが付与された物品に関し、認証ステップにおける認証回数及び非認証回数を記憶する回数記憶ステップと、回数記憶ステップで記憶された非認証回数が所定の回数に達したときに装置の使用を制限する(例えば装置を停止させる)信号を生成する装置使用制限信号生成ステップとを更に含んでもよい。これによれば、識別コードが不完全な非正規品(完成度が低い模倣品)の使用を防止することができる。なお、装置使用制限信号生成ステップに伴って装置を停止させた場合には、その停止状態を解除できる手入力パスワード等を用いた停止状態解除処理を受け付ける機能を装置側に組み込んでおくことが好ましい。
また、正規品の認証ステップの後に、識別情報部分の適否を判定する物品適否判定ステップが実行される。この物品適否判定ステップでは、識別情報部分の構成要素、例えば物品種別番号、ロット番号、シリアル番号、使用期限等がそれぞれの定義に従った内容(文字列)であるか否かを判定し、定義を外れた場合は読み取り内容エラーと判定する。
【0016】
また、本発明は、このような自動認証方法を用いる自動認証モジュール及び該モジュールを備える自動分析装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、物品に付与される識別コードの第三者による解読を困難にしつつ、その識別コードに基づいて物品が正規品であるか否かを認証できる自動認証方法、自動認証モジュール、及び、該自動認証モジュールを備える自動分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動認証モジュールのブロック図である。
【
図2】
図1の自動認証モジュールが組み込まれる本発明の一実施形態に係る自動分析装置の概略的な全体外観図である。
【
図3】
図2の自動分析装置の内部構成を示す概略的なブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る自動認証方法のフローチャートである。
【
図5】識別コードの構成配列の一例を示す図である。
【
図6】自動認証で用いられる変換表の第1の例を示す2つの表図である。
【
図7】自動認証で用いられる変換表の第2の例を示す表図である。
【
図8】自動認証で用いられる変換表の第3の例を示す表図である。
【
図9】識別コードの構成要素の詳細な生成形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1には、物品Gに付与された識別コードCに基づいて物品Gを使用する装置(図示せず)側で物品Gが正規品であるか否かを認証するための本発明の一実施形態に係る自動認証モジュール90が示される。
【0020】
ここで、識別コードCは、複数の文字を配列して成る文字列を含む。例えば、
図5に示されるように、識別コードCは、8個の文字「2」、「A」、「1」、「0」、「C」、「H」、「d」、「U」を配列して成る文字列から成ってもよい。また、文字列の識別コードCは、物品Gを識別するための識別情報を含む識別情報部分IDと、パスワード部分Pとを有する。例えば、
図5では、識別情報部分IDが2つの部分A,Bに区分されている。より具体的には、例えば
図9に示されるように、識別情報部分IDは、物品種別番号A1(例えば、0~9の1桁の数字)とロット番号A2(例えば、A~Zのアルファベット1文字)とから成る第1の部分Aと、シリアル番号B1,B2(例えば01~99の2桁の数字)から成る第2の部分Bとに区分けされてもよい。なお、
図9では、識別情報部分IDがその構成要素として更に使用期限Eを有する。
【0021】
識別コードCを構成するパスワード部分Pは、
図5に示されるように、第1のパスワード部分(第1のパスワードと称されてもよい)P1と第2のパスワード部分(第2のパスワードと称されてもよい)P2とを有する。この場合、第1のパスワード部分P1は、
図9に示されるように、乱数rに基づいて生成される乱文字L(数字、アルファベットの小文字・大文字など)から成り、一方、第2のパスワード部分P2は、第1のパスワード部分P1と識別情報(識別情報部分ID)とに基づき所定の乱文字作成規則Rにしたがって生成される。
【0022】
すなわち、
図10に示されるように、第1のパスワード部分P1と第2のパスワード部分P2とから成るパスワード部分Pは、乱文字作成規則Rに含まれる配列規則にしたがって第1のパスワード部分P1及び第2のパスワード部分P2の乱文字群が混ざり合った混合パスワードとして構成されており、この混合パスワード(P1+P2)と識別情報部分IDとの組み合わせによって識別コードCが構成されている。
【0023】
なお、パスワード部分Pは、
図5に示されるように乱文字Lの配列から成っていてもよく、特に、
図5では、第1のパスワード部分P1を構成する構成要素C1,C2の文字「H」、「U」と第2のパスワード部分P2を構成する構成要素D1,D2の文字「C」、「d」とが交互に配列されている。また、第1のパスワード部分P1はこのような配列形態に限らない。例えば、第1のパスワード部分P1の中に「ダミー乱文字」が含まれてもよい。これにより、パスワード部分Pの解読がより困難となる。この場合、「ダミー乱文字」は、第2のパスワード部分P2の生成に利用されず、また、パスワード部分Pの配列中の所定位置に配置されるが、認証には使用されない。
【0024】
図1に戻って参照すると、本実施形態に係る自動認証モジュール90は、物品Gを使用する図示しない装置に実装されるようになっており、物品Gに付与された識別コードC(例えばバーコード等を印字したラベルとして物品Gに貼り付けられる)を読み取る識別コード読み取り部91と、識別コード読み取り部91により読み取られた識別コードCの第1のパスワード部分P1と識別情報部分IDを構成する文字とに基づき、所定の乱文字作成規則Rにしたがって第2のパスワード部分P2の生成手順を再現するパスワード部分生成再現部92と、パスワード部分生成再現部92による再現によって生成された第2のパスワード部分P2を識別コード読み取り部91により読み取られた物品Gの識別コードCの第2のパスワード部分P2と照合するパスワード照合部93と、パスワード照合部93により照合される第2のパスワード部分P2同士が一致するときに物品Gを正規品であると認証する認証部94とを備える。
【0025】
また、自動認証モジュール90は、認証部94により正規品であると認証された物品Gの識別コードCを記憶する記憶部(識別コード記憶部)96を更に備える。特に、本実施形態において、この記憶部96は、識別情報部分IDが同一である識別コードCが付与された物品Gに関して認証部94による認証回数及び非認証回数を記憶する回数記憶部としても機能するようになっている。また、本実施形態の自動認証モジュール90は、記憶部96に記憶された非認証回数が所定の回数に達したときにモジュール90が実装される装置(図示せず)の使用を制限する信号を生成する装置使用制限信号生成部95も有する。
【0026】
なお、自動認証モジュール90は、本実施の形態では、このように、識別コード読み取り部91、パスワード部分生成再現部92、パスワード照合部93、認証部94、装置使用制限信号生成部95、記憶部96を個別に有するが、これらの構成要素の少なくとも一部又は全部を統合する機能部から構成されてもよく、要は、これらのそれぞれの構成要素の機能が確保されてさえいれば、どのような形態で存在していても構わない。
【0027】
次に、このような自動認証モジュール90が実装される装置の一例として、
図2及び
図3を参照しながら自動分析装置1について説明する。この自動分析装置1は、
図3に示されるように、検体が分注された反応容器54を保持する反応部40と、試薬を反応容器54に供給する試薬供給部30とを備え、試薬供給部30から反応容器54に供給される試薬を検体と反応させて反応過程を測定することにより所定の検査項目に関して測定情報を得るようになっており、この自動分析装置1の構成要素のいずれかに実装される自動認証モジュール90は、物品Gとしての試薬が正規品であるか否かを認証するようになっている。特に、本実施形態では、試薬供給部30に、物品としての試薬容器(試薬)32に貼り付けられたバーコードとしての識別コードCをバーコードリーダーによって読み取る前述した識別コード読み取り部91を有する自動認証モジュール90が設けられている。なお、識別コード読み取り部91のみが試薬供給部30に設けられ、その他の自動認証モジュール90の構成要素が自動分析装置1の制御ユニット10に一括して設けられていても構わない。
【0028】
図2は本実施形態の自動分析装置の概略的な全体外観図、
図3は
図2の自動分析装置の概略的なブロック図である。これらの図に示されるように、本実施形態の自動分析装置1は、筐体100によってその外枠が形成されるとともに、筐体100内の上部に検体処理空間(以下、単に処理空間という)を形成して成る。
【0029】
図3に明確に示されるように、自動分析装置1は、制御ユニット10と、測定ユニット30と、タッチスクリーン190とを備える。
【0030】
制御ユニット10は、自動分析装置1の全体の動作を制御する。制御ユニット10は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)によって構成される。制御ユニット10は、バスライン22を介して互いに接続されたCenTral Processing Unit(CPU)12と、Random Access Memory(RAM)14と、Read Only Memory(ROM)16と、ストレージ18と、通信インターフェース(I/F)20とを備える。CPU12は、各種信号処理等を行なう。RAM14は、CPU12の主記憶装置として機能する。RAM14には、例えば、Dynamic RAM(DRAM)、Static RAM(SRAM)等が用いられ得る。ROM16は、各種起動プログラム等を記録している。ストレージ18には、例えば、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)等が用いられ得る。ストレージ18には、CPU12で用いられるプログラム、パラメータ等各種情報が記録されている。また、ストレージ18には、測定ユニット30で取得されたデータが記録される。RAM14及びストレージ18は、これに限らず各種記憶装置に置換され得る。制御ユニット10は、通信I/F20を介して外部の機器、例えば測定ユニット30及びタッチスクリーン190との通信を行なう。
【0031】
タッチスクリーン190は、表示装置192とタッチパネル194とを備える。表示装置192は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)又は有機ELディスプレイ等を含み得る。表示装置192は、制御ユニット10の制御下で、各種画面を表示する。この画面には、自動分析装置1の操作画面、測定結果を示す画面、解析結果を示す画面など、各種画面が含まれ得る。タッチパネル194は、表示装置192の上に設けられている。タッチパネル194は、ユーザからの入力を取得し、得られた入力情報を制御ユニット10へと伝達する。
【0032】
制御ユニット10は、通信I/F20を介して、プリンタ、ハンディコードリーダ、ホストコンピュータなど、他の機器と接続してもよい。
【0033】
測定ユニット30は、制御回路42と、データ処理回路44と、恒温槽52と、反応容器54と、光源62と、散乱光検出器64と、透過光検出器66と、検体容器72と、試薬容器74と、検体プローブ76と、試薬プローブ78とを備える。この場合、反応容器54、散乱光検出器64、及び、透過光検出器66は恒温槽52に設けられる。
【0034】
制御回路42は、制御ユニット10からの指令に基づいて、測定ユニット30の各部の動作を制御する。制御回路42は、図示を省略しているが、データ処理回路44、恒温槽52、光源62、散乱光検出器64、透過光検出器66、検体プローブ76、試薬プローブ78等と接続し、各部の動作を制御する。
【0035】
データ処理回路44は、散乱光検出器64及び透過光検出器66に接続されており、散乱光検出器64及び透過光検出器66から検出結果を取得する。データ処理回路44は、取得した検出結果に対して各種処理を行ない、処理結果を出力する。データ処理回路44が行なう処理には、例えば、散乱光検出器64及び透過光検出器66から出力されるデータの形式を、制御ユニット10で処理できる形式に変換するA/D変換処理等が含まれ得る。
【0036】
制御回路42及びデータ処理回路44は、例えば、CPU、Application Specific InTegrated Circuit(ASIC)、又はField Programmable Gate Array(FPGA)等を含み得る。制御回路42及びデータ処理回路44は、それぞれ1つの集積回路等で構成されてもよく、或いは、複数の集積回路等が組み合わされて構成されてもよい。また、制御回路42及びデータ処理回路44が1つの集積回路等で構成されてもよい。制御回路42及びデータ処理回路44の動作は、例えば記憶装置や当該回路内の記録領域に記録されたプログラムに従って行なわれ得る。
【0037】
検体容器72には、例えば患者から採血した血液から得られた検体が収容される。試薬容器74には、測定に用いる各種試薬が収容される。検体容器72及び試薬容器74は、それぞれいくつ設けられていてもよい。分析に用いられる試薬は通常複数種類あるので、試薬容器74は一般に複数ある。検体プローブ76は、制御回路42の制御下で、検体容器72に収容された検体を反応容器54に分注する。試薬プローブ78は、制御回路42の制御下で、試薬容器74に収容された試薬を反応容器54に分注する。検体プローブ76及び試薬プローブ78の数もいくつであってもよい。
【0038】
恒温槽52は、制御回路42の制御下で、反応容器54の温度を所定の温度に維持する。反応容器54内では、検体プローブ76によって分注された検体と、試薬プローブ78によって分注された試薬とが混合された混合液が反応する。なお、反応容器54は、いくつあってもよい。
【0039】
光源62は、制御回路42の制御下で、所定の波長の光を照射する。光源62は、測定の条件に応じて、異なる波長を有する光を照射するように構成されていてもよい。したがって、光源62は、複数の光源素子を有していてもよい。光源62から照射された光は、例えば光ファイバによって導かれ、反応容器54に照射される。反応容器54に照射された光は、反応容器54内の混合液の反応過程状態によって、一部は散乱し、一部は透過する。散乱光検出器64は、反応容器54で散乱した光を検出し、例えばその散乱光量を検出する。透過光検出器66は、反応容器54を透過した光を検出し、例えばその透過光量を検出する。データ処理回路44は、散乱光検出器64で検出された散乱光量の情報を処理したり、透過光検出器66で検出された透過光量の情報を処理したりする。散乱光検出器64及び透過光検出器66は、測定条件に応じて何れか一方が動作してもよい。したがって、データ処理回路44は、測定条件に応じて、散乱光検出器64で検出された散乱光量の情報と透過光検出器66で検出された透過光量の情報とのうち何れかを処理してもよい。データ処理回路44は、処理済のデータを制御ユニット10に送信する。なお、
図3に示される測定ユニット30は、散乱光検出器64と透過光検出器66との2つを備えているが、どちらか一方のみを備えていてもよい。
【0040】
制御ユニット10は、測定ユニット30から取得したデータに基づいて、各種演算を行なう。この演算には、混合液の反応量の算出、反応量に基づく被検体中の測定目的物質の物質量や活性値の定量演算等が含まれる。これらの演算の一部又は全部を、データ処理回路44が行なってもよい。
【0041】
なお、ここでは、測定ユニット30の動作を制御するPCと、データ演算及び定量演算を行なうPCとが同一の制御ユニット10である場合を示したが、これらは、別体であってもよい。言い換えると、データ演算及び定量演算を行なうPCは、単体として存在し得る。
【0042】
次に、
図4~
図8を参照して、自動分析装置1に実装された自動認証モジュール90によって試薬が正規品であるか否かを認証する方法について説明する。まず、
図4に示されるように、自動認証モジュール90は、識別コード読み取り部91によって試薬容器32に付与された識別コードCを読み取る(識別コード読み取りステップS1)。
【0043】
ここで、識別コードCが
図5に示されるようになっているものとすると、識別コードCのパスワード部分(PW)Pは、識別情報部分IDも用いて、例えば以下のように作成されている。すなわち、周知の任意の方法で乱数を生成し、第1のパスワード部分P1の構成要素C1,C2を作成する。ここでは、構成要素C1として乱数「18」が生成され、構成要素C2として乱数「31」が生成されたとする。その後、これらの乱数「18」、「31」はそれぞれ、乱文字作成規則Rにしたがい、
図6に示される第1の変換表81を用いて乱文字Lに変換される。この第1の変換表81では、乱数#「18」が乱文字「H」に変換され、乱数#「31」が乱文字「U」に変換されることとなる。これにより、第1のパスワード部分P1の2つの構成要素C1,C2がそれぞれ「H」、「U」として決定される。
【0044】
次に、このようにして作成された第1のパスワード部分P1と識別情報IDとに基づき乱文字作成規則Rにしたがって乱文字から成る第2のパスワード部分P2を作成する。具体的には、例えば、乱文字作成規則Rにしたがって、構成要素C1の乱数「18」と構成要素C2の乱数「31」との和である第1の数値「49」が求められる。これに加え、乱文字作成規則Rにしたがって、構成要素C1の乱数「18」及び構成要素C2の乱数「31」にそれぞれ所定の定数を掛け合わせることを含む演算も行われる。ここでは、構成要素C1の乱数「18」に定数「97」を掛け合わせて得られる第1の積「1746」と、構成要素C2の乱数「31」に定数「7」を掛け合わせて得られる第2の積「217」との和である第2の数値「1963」が求められる。また、一方で、乱文字作成規則Rにしたがって、識別情報部分IDの構成要素A2(ロット番号)を第1の変換表81を用いて数値化する。この第1の変換表81では、識別情報部分IDの構成要素A2の文字(英数字)「A」が数値#「11」に変換される。この数値「11」は、乱文字作成規則Rにしたがって、識別情報部分IDの構成要素A1(物品種別番号)の文字(数字)「2」と加算され、それにより、第3の数値「13」が求められる。その後、乱文字作成規則Rにしたがって、先に求められた第1の数値「49」と第3の数値「13」とが加算され、第4の数値「62」が求められる。続いて、乱文字作成規則Rにしたがって、第4の数値「62」を100で割った余りである第5の数値「62」が求められるとともに、第4の数値「62」を3で割った余りである第6の数値「2」が求められ、これらの第5及び第6の数値から
図6に示される第2の変換表82を用いて第2のパスワード部分P2の構成要素D1を決定する。具体的には、第5の数値「62」を第2の変換表82の行に対応させるとともに、第6の数値「2」を第2の変換表82の列に対応させることにより得られる乱文字「C」が第2のパスワード部分P2の構成要素D1として決定される。その後、乱文字作成規則Rにしたがって、先に求められた第2の数値「1963」と、識別情報部分IDの構成要素B1,B2(シリアル番号)の文字(数字)「1」「0」に基づく数値「10」とから、第2のパスワード部分P2の構成要素D2を決定する。具体的には、第2の数値「1963」と数値「10」とを加算して第7の数値「1973」を求め、第7の数値「1973」を100で割った余りである第8の数値「73」を求めるとともに、第7の数値「1973」を3で割った余りである第9の数値「1」を求め、これらの第8及び第9の数値から
図6に示される第2の変換表82を用いて第2のパスワード部分P2の構成要素D2を決定する。具体的には、第8の数値「73」を第2の変換表82の行に対応させるとともに、第9の数値「1」を第2の変換表82の列に対応させることにより得られる乱文字「d」が第2のパスワード部分P2の構成要素D2として決定される。このように、乱文字作成規則Rは、文字を数値化して演算し、その演算値を変換表の入力値としている。
【0045】
なお、識別コードCは、同じロット内のそれぞれの試薬容器(試薬)を区別する場合には、識別情報部分IDを構成する文字列であるシリアル番号B1,B2によって区別するが、同じロット内のそれぞれの試薬容器(試薬)を区別しない場合には、第1のパスワード部分P1が同一ロット内で異なるように設定される。
【0046】
このようにして生成された識別コードCを前述したように識別コード読み取り部91によって読み取ったら、続いて、自動認証モジュール90は、パスワード部分生成再現部92により、読み取られた識別コードCの第1のパスワード部分P1と識別情報部分IDを構成する文字とに基づき、前述した乱文字作成規則Rにしたがった第2のパスワード部分P2の生成手順を再現する(パスワード部分生成再現ステップS2)。この場合、パスワード部分生成再現部92は、識別コード読み取り部91により読み取られた識別コードCの第1のパスワード部分P1の特定の1つ以上の乱文字と当該乱文字の配列上における位置とから変換表に基づいてパスワード部分のその他の乱文字の配列上における位置を特定してもよい。具体的には、例えば
図5の識別コードCの例において、パスワード部分生成再現部92は、第1のパスワード部分P1の構成要素C1の乱文字が「H」であることから、
図7に示される第3の変換表84を用いて「H」がType4であると判別し、その後、
図8に示される第4の変換表に基づき、Type4の番号#13~#16の中から、パスワード配列上における構成要素C1の位置(ここではC1が配列上で2番目に位置する(
図5参照))に対応する番号#14から他のパスワード構成要素D1,D2,C2の位置を把握し、それらの乱文字を特定する。
【0047】
このようにしてパスワード部分生成再現部92により乱文字作成規則Rにしたがった第2のパスワード部分P2の生成手順を再現したら、パスワード照合部93は、再現により生成された第2のパスワード部分P2を識別コード読み取り部91により読み取られた試薬容器32の識別コードCの第2のパスワード部分P2と照合する(パスワード照合ステップS3)。そして、認証部94は、これら2つの乱文字列が一致するか否かを判定し(ステップS4)、一致する場合にはその試薬容器32を正規品であると認証する(ステップS7;認証ステップ)とともに、一致しない場合にはその試薬容器32を正規品として認証しない(ステップS6)。ここで、認証部94により正規品であると認証された試薬容器32の識別コードCは、記憶部96に記憶される(識別コード記憶ステップS8)。そして、認証部94は、その認証過程で、識別コード読み取り部91により読み取られる試薬容器32の識別コードCが記憶部96に記憶されたいずれかの識別コードCと一致するとき(ステップ5においてYESの場合)にその試薬容器32を正規品であると認証しない(ステップS6)ようになっている。これによれば、正規品に基づいてそれと同じ識別コードで生産された模倣品を排除できる。
【0048】
なお、本実施形態において、認証部94は、識別情報部分IDが同一である識別コードCが付与された試薬容器32に関し、その認証回数及び非認証回数を記憶部96に記憶してもよい(回数記憶ステップ)。そして、この場合、認証部94は、記憶部96に記憶された非認証回数が所定の回数に達したときに自動分析装置1の使用を制限する信号を装置使用制限信号生成部95に生成させてもよい(装置使用制限信号生成ステップ;
図1参照)。これによれば、模倣品の識別コード作成条件を確立することを目的としたパスワード生成方法の解明のための試行錯誤的な認証可否の確認作業の実施を防止することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、物品G(試薬容器32)の識別情報とパスワードとを関連付けた識別コード生成手法を採用するだけでなく、乱数rと乱文字作成規則Rとの組み合わせによって、具体的には、乱数rに基づいて生成される第1のパスワード部分P1と、この第1のパスワード部分P1と識別情報IDとに基づき所定の乱文字作成規則Rにしたがって生成される第2のパスワード部分P2との組み合わせによって識別コードCのパスワード部分Pが形成されている。すなわち、乱数rによって第1のパスワード部分P1の生成に不規則性を取り入れつつ、そのような乱数rを乱文字作成規則Rによって第2のパスワード部分P2の生成に関与させている。そのため、パスワードPの解読困難性が高められ、第三者によるパスワードの解読が非常に困難となる。その一方で、自動分析装置1側における識別コードCの正否判定(正規品の認証)では、解読困難性が高められた識別コードCを読み取り、その読み取った識別コードCの第1のパスワード部分P1(乱数rに基づいて生成される乱文字L)と識別情報IDとに基づき乱文字作成規則Rにしたがって第2のパスワード部分P2の生成手順を再現するとともに、再現した第2のパスワード部分P2と読み取った第2のパスワード部分P2とを照合して物品G(試薬容器32)が正規品であるか否かを認証するため、第三者が解読困難な態様で第2のパスワード部分P2の生成を確実に再現できるとともに、再現した第2のパスワード部分P2に基づいて物品G(試薬容器32)が正規品であるか否かを確実に認証することもできる。したがって、ひいては、非正規品(模倣品)の流通を防止でき、正規品の使用が妨害されず、また、正規品の使用に伴う結果物の厳重な品質管理を行なうこともできるようになる。
【0050】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、識別コードCの構成形態、変換表の形態、乱文字作成規則Rの内容等は任意に設定できる。また、自動認証モジュール90が適用される装置も自動分析装置に限定されない。また、前述した実施形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 自動分析装置
90 自動認証モジュール
91 識別コード読み取り部
92 パスワード部分生成再現部
93 パスワード照合部
94 認証部
95 装置使用制限信号生成部
96 記憶部
C 識別コード
G 物品
ID 識別情報部分
P パスワード部分
P1 第1のパスワード部分
P2 第2のパスワード部分
R 乱文字作成規則