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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ケーブルおよびケーブル用補強シート
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G02B6/44 381
G02B6/44 366
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021567284
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2020046635
(87)【国際公開番号】W WO2021131875
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019231737
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】鯰江 彰
(72)【発明者】
【氏名】梶 智晃
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-006449(JP,A)
【文献】特開昭52-120386(JP,A)
【文献】特開2017-072801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0286706(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
H04B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外被と、
前記外被の内側に配置された円筒状の補強部材と、
前記補強部材の内側に配置された保護対象物と、を備え、
前記補強部材は、ジョイント部において互いに重なり合った状態で接合された第1金属シートおよび第2金属シートを含むケーブル用補強シートが前記ケーブル用補強シートの幅方向に丸められることで形成され、
前記ケーブル用補強シートは、長手方向に延びる第1側縁および第2側縁を有し、
前記ジョイント部は前記第2側縁から前記第1側縁に向かうにしたがって前記第1金属シートに向かうように傾斜し、
前記ジョイント部に含まれ、前記第1側縁上に位置し、かつ前記第1金属シートのうち最も前記第2金属シート側に位置する点を第1点とし、
前記ジョイント部に含まれ、前記第2側縁上に位置し、かつ前記第2金属シートのうち最も前記第1金属シート側に位置する点を第2点とするとき、
前記第1点が前記第2点よりも前記第1金属シート側に位置し、
前記第1金属シートおよび前記第2金属シートのうち、少なくとも一方の短い方の側縁に切欠部が形成されている、ケーブル。
【請求項2】
前記第1側縁は前記第2側縁よりも径方向外側に位置している、請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記第1金属シートの短い方の側縁および前記第2金属シートの短い方の側縁にそれぞれ前記切欠部が形成されている、請求項に記載のケーブル。
【請求項4】
前記第1側縁および前記第2側縁における前記ジョイント部の長手方向における寸法が、前記切欠部が形成されていない部分における前記ジョイント部の長手方向における寸法よりも小さい、請求項1に記載のケーブル。
【請求項5】
前記第1金属シートの端縁と前記第2側縁とのなす角度θが40°以上60°以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項6】
前記第1金属シートおよび前記第2金属シートは前記ジョイント部において溶接固定され、
前記ジョイント部の面積をS(mm)とし、
前記ケーブル用補強シートの幅をW(mm)とするとき、
S/W≧10.0を満足する、請求項1から5のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項7】
保護対象物を囲うことで前記保護対象物を保護するケーブル用補強シートであって、
ジョイント部において互いに重なり合った状態で接合された第1金属シートおよび第2金属シートを含み、
長手方向に延びる第1側縁および第2側縁を有し、
前記ジョイント部は前記第2側縁から前記第1側縁に向かうにしたがって前記第1金属シートに向かうように傾斜し、
前記ジョイント部に含まれ、前記第1側縁上に位置し、かつ前記第1金属シートのうち最も前記第2金属シート側に位置する点を第1点とし、
前記ジョイント部に含まれ、前記第2側縁上に位置し、かつ前記第2金属シートのうち最も前記第1金属シート側に位置する点を第2点とするとき、
前記第1点が前記第2点よりも前記第1金属シート側に位置し、
前記第1金属シートおよび前記第2金属シートのうち、少なくとも一方の短い方の側縁に切欠部が形成されている、ケーブル用補強シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルおよびケーブル用補強シートに関する。
本願は、2019年12月23日に日本に出願された特願2019-231737号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルなどのケーブルでは、外被に収容された保護対象物を保護するために、金属製の補強部材を用いる場合がある。例えば特許文献1のケーブルは、外被と、外被に収容されたケーブル本体と、外被の内側においてケーブル本体を囲繞する補強部材を備えている。この構成により、保護対象物であるケーブル本体がネズミやリスなどに噛まれて光ファイバが損傷することを防いでいる。補強部材は、一般的に、材料となる金属シートを丸めることで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2019-113617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーブルの長さが長い場合、補強部材の材料となる金属シートを複数枚継ぎ合わせる場合がある。ここで、金属シート同士の継ぎ目部分(ジョイント部)では、金属シートが重ね合わされるため、金属シート自体が有する厚みによって段差が生じる。このように、ジョイント部において金属シート自体の厚みがもたらす段差によって、外被に割れが生じる場合があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、外被に割れが生じることを抑制可能なケーブルまたはケーブル用補強シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るケーブルは、外被と、前記外被の内側に配置された円筒状の補強部材と、前記補強部材の内側に配置された保護対象物と、を備え、前記補強部材は、ジョイント部において互いに重なり合った状態で接合された第1金属シートおよび第2金属シートを含むケーブル用補強シートが丸められることで形成され、前記ケーブル用補強シートは、長手方向に延びる第1側縁および第2側縁を有し、前記ジョイント部は前記第2側縁から前記第1側縁に向かうにしたがって前記第1金属シートに向かうように傾斜し、前記ジョイント部に含まれ、前記第1側縁上に位置し、かつ前記第1金属シートのうち最も前記第2金属シート側に位置する点を第1点とし、前記ジョイント部に含まれ、前記第2側縁上に位置し、かつ前記第2金属シートのうち最も前記第1金属シート側に位置する点を第2点とするとき、前記第1点が前記第2点よりも前記第1金属シート側に位置している。
【0007】
本発明の第2の態様に係るケーブル用補強シートは、保護対象物を囲うことで前記保護対象物を保護するケーブル用補強シートであって、ジョイント部において互いに重なり合った状態で接合された第1金属シートおよび第2金属シートを含み、長手方向に延びる第1側縁および第2側縁を有し、前記ジョイント部は前記第2側縁から前記第1側縁に向かうにしたがって前記第1金属シートに向かうように傾斜し、前記ジョイント部に含まれ、前記第1側縁上に位置し、かつ前記第1金属シートのうち最も前記第2金属シート側に位置する点を第1点とし、前記ジョイント部に含まれ、前記第2側縁上に位置し、かつ前記第2金属シートのうち最も前記第1金属シート側に位置する点を第2点とするとき、前記第1点が前記第2点よりも前記第1金属シート側に位置している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、外被に割れが生じることを抑制可能なケーブルまたはケーブル用補強シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るケーブルの横断面図である。
図2】第1実施形態に係るケーブル用補強シートの説明図である。
図3図1の補強部材のジョイント部の位置を説明する図である。
図4】第2実施形態に係るケーブル用補強シートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係るケーブルの構成を、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、ケーブル1は、光ファイバを有するケーブル本体10と、補強部材Mと、外被30と、を備えている。補強部材Mは、ケーブル本体10の光ファイバを保護する。つまり、本実施形態において、保護対象物はケーブル本体10および光ファイバであり、ケーブル1は光ファイバケーブルである。
【0011】
(方向定義)
ここで本実施形態では、ケーブル1の長手方向を単に長手方向といい、ケーブル1の中心軸線を単に中心軸線Oという。また、中心軸線Oに直交する断面を横断面という。横断面視で、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0012】
ケーブル本体10は、コア11と、内部シース14と、一対の抗張力体(テンションメンバ)13と、を有している。
コア11は、長手方向に延びている。コア11は、複数本の光ファイバを集合することで構成されている。コア11を構成する光ファイバとしては、光ファイバ素線、光ファイバ心線、光ファイバテープ心線などを用いることができる。コア11を構成する複数の光ファイバは、例えば、束ねられた状態で、結束材によって結束されている。複数の光ファイバは、押さえ巻きや吸水テープ(シート)で覆われていてもよい。コア11の横断面形状は、特に限定されず、円形であってもよく、楕円形であってもよく、矩形であってもよい。
【0013】
内部シース14は、コア11、一対の抗張力体13、および一対の内側リップコード16を一括して被覆する。内部シース14の材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂が使用可能である。内側リップコード16は、内部シース14を引き裂いてコア11を取り出す際に用いられる。
【0014】
内部シース14と補強部材Mとの間の隙間には、一対の外側リップコード12が配置されている。一対の外側リップコード12は、補強部材Mおよび外被30を引き裂く作業(以下、単に引き裂き作業という)の際に使用される。外側リップコード12としては、ポリエステル、アラミド等の合成繊維からなる紐を用いることができる。外側リップコード12の周囲には、接着層12aがコーティングされていてもよい。
【0015】
抗張力体13は、長手方向に延びている。抗張力体13は、長手方向でコア11に対して平行に配置されていてもよく、コア11を中心とした螺旋状に配置されていてもよい。抗張力体13は、ケーブル1に作用する張力から、コア11の光ファイバを保護する。抗張力体13の材質は、例えば、金属線(鋼線等)、抗張力繊維(アラミド繊維等)、FRPなどである。抗張力体13は単線であってもよく、複数の素線を束ねたり互いに撚り合わせたりした撚線であってもよい。
【0016】
なお、ケーブル本体10には3本以上の抗張力体13が含まれていてもよい。3本以上の抗張力体13を周方向で等間隔に配置した場合、ケーブル本体10の曲げの方向性が小さくなり、ケーブル1をより取扱いやすくできる。
【0017】
外被30は、ケーブル本体10および補強部材Mを収容している。外被30は、長手方向に延びる筒状に形成されている。外被30の材質としては、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂が使用可能である。また、外被30に、難燃剤として、低分子シロキサンなどの低分子成分を含有させてもよい。
【0018】
補強部材Mは、長手方向に延びており、ケーブル本体10を囲繞する筒状に形成されている。補強部材Mの両面には、第1接着フィルムF1および第2接着フィルムF2が設けられている。補強部材Mには、コルゲート形状が形成されていてもよい。
【0019】
補強部材Mの材質としては、鉄、ステンレス鋼、銅、銅合金、アルミニウムなどの金属を用いることができる。
補強部材Mは、ケーブル本体10を全周にわたって囲繞するとともに、周方向の一部で重ねられている。補強部材Mが周方向で重ねられた部分を重なり部Aという。
【0020】
第1接着フィルムF1は、補強部材Mにおけるケーブル本体10を向く面に貼り付けられて固定されている。第2接着フィルムF2は、補強部材Mにおける外被30を向く面に貼り付けられて固定されている。第1接着フィルムF1は、外側リップコード12を補強部材Mに固定する。第2接着フィルムF2は、外被30を補強部材Mに固定する。また、第1接着フィルムF1および第2接着フィルムF2のうち、重なり部Aにおいて補強部材M同士の間に位置している部分は、重なり部Aで補強部材M同士を固定する。
【0021】
第1接着フィルムF1および第2接着フィルムF2に用いられる接着剤としては、例えば熱硬化型の接着剤を用いることができる。なお、接着フィルムF1、F2の材質は適宜変更可能である。また、接着フィルムF1、F2は2層構造であってもよい。具体的には、第2接着フィルムF2のうち、補強部材Mに接着される層は金属への接着に適した材質で形成し、外被30に接着される層は樹脂への接着に適した材質で形成してもよい。
また、他の部材及び方法で外側リップコード12の位置を固定できれば、第1接着フィルムF1を設ける必要はない。第1接着フィルムF1を設けたとしても、外側リップコード12を固定するためでなくてもよい。さらに、外被が補強部材と密着し易い材質であれば、第2接着フィルムF2は設けなくてもよい。そのかわり、重なり部Aにおいて補強部材M同士を貼り合わせるために、重なり部Aの一部または全体に接着剤を塗布してもよいし、溶接してもよい。
【0022】
次に、図2(a)~(c)を用いて、補強部材Mの製造方法を説明する。
なお、図2(a)、図2(b)において、X軸は長手方向を示し、Y軸は長手方向に直交する方向を示している。以下、X軸方向を長手方向Xといい、Y軸方向を直交方向Yという。また、長手方向Xにおける第1金属シート21側を+X側といい、第2金属シート22側を-X側という。また、直交方向Yにおける一方側を+Y側といい、他方側を-Y側という。
【0023】
補強部材Mを製造する際、まず、補強部材Mとなる複数の金属シートを用意する。金属シートの厚さは、例えば0.1~0.3mm程度である。金属シートの厚さをこの範囲とすることで、動物の食害によりコア11の光ファイバが損傷するのを防ぎ、かつ、外側リップコード12によって補強部材Mを切り裂く操作を容易にできる。
【0024】
図2(a)では、第1金属シート21および第2金属シート22を表示している。ただし、ケーブル1の長さに応じて、3枚以上の金属シートを用意してもよい。第1金属シート21は端縁21aを有し、第2金属シート22は端縁22aを有している。端縁21a、22aは、+Y側に向かうに従って+X側に向かうように傾斜している。端縁21a、22aは、直交方向Yに対して所定の角度θをなしている。角度θは鋭角である。具体的には、角度θは40°以上60°以下であることが好ましい。金属シート21、22を用意する際に、このような端縁21a、22aが形成されるように、金属シート21、22の長手方向Xにおける端部を切断するとよい。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、第1金属シート21と第2金属シート22とを重ね合わせる。本明細書では、第1金属シート21と第2金属シート22とが重なり合った部分をジョイント部Jという。図2(b)の例では、ジョイント部Jは平行四辺形状である。ジョイント部Jは、+X側に向かうに従って+Y側に向かうように、直交方向Yに対して傾斜している。この傾斜は、端縁21a、22aの形状に基づいている。長手方向Xにおける端縁21aと端縁22aとの間の間隔、すなわちジョイント部Jの長手方向Xにおける幅は、直交方向Yの全域にわたって一定である。
【0026】
ジョイント部Jにおいて、第1金属シート21と第2金属シート22とを接合することで、一枚のケーブル用補強シート20が得られる。ケーブル用補強シート20は、長手方向Xに沿って延びる第1側縁20aおよび第2側縁20bを有している。第1側縁20aは+Y側に位置し、第2側縁20bは-Y側に位置している。なお、補強部材Mにおいて、第1側縁20aは第2側縁20bよりも径方向外側に位置して、外被30に接する(図1参照)。
【0027】
ジョイント部Jにおける固定の方法としては、溶接、接着などを用いることができる。第1金属シート21と第2金属シート22とを接着により固定する場合、金属シート21、22に予め第1接着フィルムF1または第2接着フィルムF2を設けておき、これらの接着フィルムを用いて接着固定してもよい。
なお、溶接によって固定する場合であって、第1接着フィルムF1または第2接着フィルムF2が予め金属シート21、22に設けられている場合は、溶接する部分(ジョイント部J)の接着フィルムを除去した後に溶接してもよい。さらにその後で、接着フィルムF1、F2が除去された部分(ジョイント部Jなど)に、接着フィルムを再度貼り付けてもよい。この場合、接着フィルムによってジョイント部Jを補強し、ジョイント部Jにおいて割れなどが生じることを抑制できる。
【0028】
次に、図2(c)に示すように、ケーブル用補強シート20をその幅方向に丸める。これにより、ケーブル用補強シート20の周方向における両端部が重なって重なり部Aを形成する。重なり部Aにおいて、ケーブル用補強シート20の周方向における両端部は、第1接着フィルムF1または第2接着フィルムF2によって接着固定される。これにより、円筒状の補強部材Mが得られる。
【0029】
このようにして得られた補強部材Mは、図3に示すように、重なり部Aおよびジョイント部Jを有する。重なり部Aでは、ケーブル用補強シート20同士が重なり合っているため、補強部材Mの厚みはケーブル用補強シート20の厚みの2倍である。ジョイント部Jにおいても、補強部材Mの厚みは第1金属シート21の厚みと第2金属シート22の厚みの和である。
【0030】
ここで、重なり部Aにおいて、仮にジョイント部J同士が重なっていると、その部分の厚みは金属シート21、22の厚みの4倍以上である。このように、補強部材Mに厚みが極めて大きい部分があると、当該部分に大きな段差が生じることとなり、外被30に局所的な応力が作用しやすくなる。外被30に局所的な応力が作用すると、外被30に割れなどが生じやすくなる。
【0031】
そこで本実施形態の補強部材Mは、図3に示すように、重なり部Aにおいてジョイント部J同士が重ならないように構成されている。具体的には、図2(b)に示すように、第1金属シート21のうち第1側縁20a上に位置して最も-X側に位置する点を第1点21bとする。また、第2金属シート22のうち第2側縁20b上に位置して最も+X側に位置する点を第2点22bとする。このとき、第1点21bが第2点22bよりも+X側に位置している。この構成によれば、ケーブル用補強シート20をその幅方向に丸めたときに、ジョイント部Jの周方向における端部同士が長手方向Xにおいて離れる。したがって、重なり部Aにおいてジョイント部J同士が重なることが避けられ、外被30に局所的な応力が作用することを抑制できる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のケーブルは、外被30と、外被30の内側に配置された円筒状の補強部材Mと、補強部材Mの内側に配置された保護対象物(ケーブル本体10)と、を備えている。補強部材Mは、ジョイント部Jにおいて互いに重なり合った状態で接合された第1金属シート21および第2金属シート22を含むケーブル用補強シート20がその幅方向に丸められることで形成され、ケーブル用補強20シートは、長手方向Xに延びる第1側縁20aおよび第2側縁20bを有している。ジョイント部Jは第2側縁20bから第1側縁20aに向かうにしたがって第1金属シート21に向かうように傾斜している。
ジョイント部Jに含まれ、第1側縁20a上に位置し、かつ第1金属シート21のうち最も第2金属シート22側(-X側)に位置する点を第1点21bとし、ジョイント部Jに含まれ、第2側縁20b上に位置し、かつ第2金属シート22のうち最も第1金属シート21側(+X側)に位置する点を第2点22bとする。このとき、第1点21bが第2点22bよりも第1金属シート21側(+X側)に位置している。このような構成により、外被30に局所的な応力が作用することを抑制できる。
【0033】
また、本実施形態のケーブル用補強シート20は、保護対象物を囲うことで保護対象物を保護するケーブル用補強シートであって、ジョイント部Jにおいて互いに重なり合った状態で接合された第1金属シート21および第2金属シート22を含み、長手方向Xに延びる第1側縁20aおよび第2側縁20bを有している。ジョイント部Jは第2側縁20bから第1側縁20aに向かうにしたがって第1金属シート21に向かうように傾斜している。そして、ケーブル用補強シート20の第1点21bが第2点22bよりも第1金属シート21側に位置している。このケーブル用補強シート20により、上記のように外被30の割れを抑制可能な補強部材Mを形成できる。
【0034】
なお、本実施形態では、第1金属シート21の端縁21aおよび第2金属シート22の端縁22aが直線状であるが、これらは曲線状であってもよいし、凹凸があってもよい。また、第1金属シート21の端縁21aと第2金属シート22の端縁22aが平行でなくてもよい。ただし、ジョイント部Jにおける固定の信頼性の観点から、端縁21a、22aは略直線状であることが好ましく、端縁21aおよび端縁22aは平行であることがより好ましい。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態では、第1金属シート21、第2金属シート22、およびジョイント部Jの形状が第1実施形態と異なる。
【0036】
図4(a)に示すように、本実施形態の第1金属シート21には第1切欠部21cが形成され、第2金属シート22には第2切欠部22cが形成されている。
第1切欠部21cは、第1金属シート21の端縁21aのうち、+Y側の端部に形成されている。すなわち、第1金属シート21の端縁21aと第1側縁20aとが形成する鈍角部を切り落とすように第1切欠部21cが設けられている。第2切欠部22cは、第2金属シート22の端縁22aのうち、-Y側の端部に形成されている。すなわち、第2金属シート22の端縁22aと第2側縁20bとが形成する鈍角部を切り落とすように第2切欠部22cが設けられている。
第1金属シート21は-Y側の側縁よりも+Y側の側縁の方が短く、第1切欠部21cは、+Y側の側縁に形成されている。第2金属シート22は+Y側の側縁よりも-Y側の側縁の方が短く、第2切欠部22cは-Y側の側縁に形成されている。このように、第1切欠部21cおよび第2切欠部22cは、第1金属シート21および第2金属シート22がそれぞれ有する2つの側縁のうち、短い方の側縁に形成されている。
【0037】
切欠部21c、22cが形成されていることで、ジョイント部Jの長手方向Xにおける幅は、直交方向Yにおいて不均一である。具体的には、切欠部21c、22cが形成されていない部分におけるジョイント部Jの長手方向Xにおける寸法をL1とし、第1側縁20aおよび第2側縁20bにおけるジョイント部Jの長手方向Xにおける寸法をL2とする。このとき、L2<L1である。また、切欠部21c、22cが形成された部分では、ジョイント部Jの長手方向Xにおける寸法は、直交方向Yにおける外側に向かうに従って小さくなっている。なお、図面では、直線状に鈍角部を切り落とした形状の切欠部がそれぞれ示されているが、角の外側に向かって凸状の曲線を有するような形状であってもよい。
【0038】
本実施形態の場合も、第1実施形態と同様に、重なり部Aにおいてジョイント部J同士が重なることが避けられ、外被30に局所的な応力が作用することを抑制できる。
さらに本実施形態では、第1側縁20aにおけるジョイント部Jの長手方向Xにおける寸法L2が、第1側縁20aから離れた部分におけるジョイント部Jの長手方向Xにおける寸法L1よりも小さくなっている。第1側縁20aは外被30に接する部位であり、段差が形成されたときに外被30に局所的な応力を作用させる部分である。この第1側縁20aにおけるジョイント部Jの寸法L2を小さくすることで、外被30に亀裂などが生じる可能性を低減できる。さらに、第1側縁20aとは離れた部位のジョイント部Jの寸法L1を大きくすることで、ジョイント部Jの面積を大きくして接合強度を高めることができる。
【0039】
なお、本実施形態では第2側縁20bは外被30に接しないため、第2側縁20bにおけるジョイント部Jの寸法はL1と同じであってもよい。つまり、第2金属シート22には切欠部22cが形成されていなくてもよい。ただし、第2金属シート22にも切欠部22cを形成することで、第1金属シート21および第2金属シート22の形状を同じにでき、製造効率の観点から有利となる。
【実施例
【0040】
以下、具体的な実施例を用いて、上記実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0041】
ジョイント部Jの形状について評価するため、下記表1に示す実施例1~4、および比較例1~6のケーブル1を作成した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すテープ幅Wは、ケーブル用補強シート20の直交方向Yにおける幅である。角度θ、寸法L1、寸法L2については前記実施形態で説明した通りである。面積Sは、ジョイント部Jの面積である。S/Wは、面積Sをテープ幅Wで割った値である。各実施例および各比較例について、補強部材M(ケーブル用補強シート20)となる金属シート21等の材質は鉄である。また、外被30の材質は難燃性樹脂である。ジョイント部Jにおいて、金属シート21等を溶接によって接合した。
【0044】
各実施例および各比較例の条件で、ジョイント部Jが10箇所ずつ含まれるようにケーブル1を作成した。つまり、金属シートを11枚接合したケーブル用補強シート20を用いた。比較例1および比較例4については、ジョイント部Jにおける接合強度が低いため、ジョイント部Jで剥離が生じた。このためケーブル1を作成できなかった。その他の各ケーブルについて、直径がケーブルの外径の30倍であるマンドレルに巻き付け、70℃×3日間の条件で放置した。その後、外被30の割れの有無を確認した結果を表1の「外被の割れ」の欄に表示した。例えば実施例1では、10箇所のジョイント部Jのいずれにおいても外被30の割れが生じなかった。また、比較例2では、10箇所のジョイント部Jのうち8箇所において外被30の割れが生じていた。
【0045】
表1の実施例1~4では、ジョイント部Jで剥離が生じず、かつ、外被30の割れが生じなかった。これに対して、比較例1~6では、ジョイント部Jで剥離が生じるか、あるいは外被30の割れが生じた。実施例1~4と比較例1~6との差異を考察すると、実施例1~4はL2が5mm以下であり、比較例1~6はL2が5mm以上である。L2が5mm以下の条件で外被30に割れが生じたサンプルは無いため、L2を5mm以下とすることで外被30の割れの発生を抑制できると考えられる。その理由としては、L2を5mm以下とすることで、補強部材Mの第1側縁20aにおいて大きな段差が形成される範囲が小さくなり、外被30の割れの発生が抑制されたと考えられる。
【0046】
また、比較例1、4については、寸法L1および面積Sが小さすぎて、ジョイント部Jの接合強度を確保できず、ジョイント部Jで剥離が生じたと考えられる。ジョイント部Jの接合強度は面積Sが大きいほど大きくなると考えられる。実施例1~4および比較例1~6のように、ジョイント部Jで溶接固定する場合において、面積Sの値が640mm以上であればジョイント部Jの剥離は生じていないため、面積Sは640mm以上であることが好ましい。また、面積Sをテープ幅Wで割った値は、ジョイント部Jのテープ幅W全体における平均的な接合面積を表す。この平均的な接合面積を用いて一般化すると、実施例1~4および比較例1~6において、S/Wの値が10.0以上であればジョイント部Jの剥離は生じていないため、S/Wの値は10.0以上であることが好ましい。
【0047】
また、実施例1~4では、θが40°以上60°以下である。少なくともこの範囲のサンプルについては、外被30の割れについて良好な結果が得られた。
【0048】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0049】
例えば、保護対象物およびケーブル1の種類は適宜変更可能である。具体的には、保護対象物10は電線であってもよく、ケーブル1は電力ケーブルであってもよい。
また、第2実施形態では、第1金属シート21の短い方の側縁および第2金属シート22の短い方の側縁にそれぞれ切欠部21c、22cが形成されていた。これに限られず、第1金属シート21および第2金属シート22のうち、少なくとも一方の短い方の側縁に切欠部が形成されていてもよい。
【0050】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…ケーブル,10…保護対象物(ケーブル本体),20…ケーブル用補強シート,20a…第1側縁,20b…第2側縁,21…第1金属シート,21b…第1点,22…第2金属シート,22b…第2点,30…外被,J…ジョイント部,M…補強部材
図1
図2
図3
図4