(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ロック機構
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
B60B33/00 501D
(21)【出願番号】P 2018149785
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】598085526
【氏名又は名称】ホッタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀田 国男
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047845(JP,A)
【文献】特開2007-168759(JP,A)
【文献】特開2002-081474(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0160617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に取り付けた停止体に爪体を歯合して車輪の回転をロックする自在キャスターのロック機構であって、
前記爪体に上下軸の下端を連結し、前記上下軸の上端を上下枠に回動可能に取り付け、前記上下枠の上部に連結軸で屈伸可能に連結した第1リンク板と第2リンク板を前記上下軸と直列に取り付けると共に、前記上下枠に吊り板を前記第1、第2リンク板を屈曲方向に回動させる状態で取り付けることで、
第1リンク板と第2リンク板が伸長してロックとなり、吊り板にワイヤーを接続して上方に引いて前記吊り板を回動することで、前記吊り板が前記連結軸を押して前記第1、第2リンク板を屈曲し、更に前記ワイヤーを引くと前記吊り板と共に、前記上下枠と前記上下軸を介して爪体を引き上げてアンロックとすることを特徴とする自在キャスターのロック機構。
【請求項2】
請求項1のロック機構であって、
第1リンク板と第2リンク板の連結部を弾性体により、常に伸長方向に付勢してあることを特徴とする自在キャスターのロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、自在キャスターの車輪の回転を停止するロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
台車等の運搬車両の中で、特に重量物運搬や駅などの人通りの多い場所で使用する車両においては、掛け忘れることが無く、確実に車両の動きを停止できる安全性と機能性を兼ね備えた車両のロック機構が必要とされている。
そして、そのロック機構は固定キャスターより自在キャスターに設けることが停止機能としては有効でありニーズも高い。
【0003】
こうした、自在キャスターのロック機構として、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。
この特許文献1の方法は自在キャスターの車輪に取付けの停止体に爪体を弾性体により歯合するものであり、ロックの掛け忘れを考慮した構成であるが、爪体の浮き上がりを防止するものが無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、従来方法の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車輪に停止体を取り付け、車輪支持枠に爪体を回動可能に取り付けて、前記爪体の上方に上下軸と前記上下軸と直列に第1リンク板と第2リンク板を屈伸可能となるよう連結して配置し、前記第1リンク板、第2リンク板を常に伸長方向に付勢して停止体と爪体とを歯合させてある自在キャスターのロック機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のロック機構は、車輪に取り付けた停止体に爪体を歯合して車輪の回転をロックする自在キャスターのロック機構であって、前記爪体に上下軸の下端を連結し、前記上下軸の上端を上下枠に回動可能に取り付け、前記上下枠の上部に屈伸可能に連結した第1リンク板と第2リンク板を前記上下軸と直列に取り付けると共に、前記上下枠に吊り板を前記第1、第2リンク板を屈曲方向に回動させる状態に取り付けることで、第1リンク板と第2リンク板が伸長してロックとなり、吊り板で前記第1、第2リンク板を屈曲させてアンロックとする構成にしてある。
これにより、ロック時に車輪の回転モーメントにより発生する爪体の浮上力をリンク板が支えて爪体が停止体から外れることを防止すると共に、操作しない時は常にロック状態にすることで、掛け忘れの防止も可能である。
【0007】
請求項2のロック機構は、第1リンク板と第2リンク板の連結部を弾性体により、常に伸長方向に付勢した構成にしてある。
これにより、停止体と爪体の歯合速度を上げて車輪が低速回転している状態でも歯合を可能としてある。
【発明の効果】
【0008】
車輪に取り付けの停止体に爪体を歯合する機構と簡単な爪体の離脱防止機構とにより、安全性と経済性に優れた車輪のロック機構となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】
図1の第1、第2リンク部(丸く囲んだ領域)の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願発明の実施形態について説明する。
最初にロック機構の構成について
図1、2、3、4を参照して説明する。
自在キャスターは、車輪支持枠1に車輪2を支持するためのフォーク体3と前記フォーク体を回動するための旋回軸4を付設し、前記フォーク体には車輪軸5を介して車輪2が取り付けてあり、前記旋回軸を旋回枠6に設けた軸受6-2に挿通して、車輪2を回転且つ回動可能に構成にしてある。
尚、前記車輪支持枠の前記フォーク体には後述する爪体10を支持するための軸受1-1、前記旋回軸には後述する上下軸12を挿通するための貫通穴4-1、前記旋回枠には台車等の車両に取り付けるための固定座6-1がそれぞれ付設してある。
【0011】
そして、自在キャスターの前記旋回枠にフレーム7をネジ8で取り付け、その後に車輪2に、円形の板に凹凸の歯を形成した停止体9を取り付けて、その上方に前記停止体の歯に噛み合う形状の爪体10を軸穴10-1と車輪支持枠1に設けた軸受1-1とに軸13を差して取り付けてある。
これにより、前記爪体は前記停止体との位置関係を維持した状態で車輪支持枠1の旋回動作に同期して回動できる構成になっている。
次に、上下軸12を前述の自在キャスターの旋回軸4に設けた貫通穴4-1を挿通して、下端を前記爪体の中央付近に設けた軸穴10-2に軸11を差して連結すると共に、前記上下軸の上端は上下枠14の吊り穴14-2に上カラー15と下カラー16で僅かな隙間を設けて挟み、回動可能な状態に装着してある。
そして、上下に軸穴を設けた左右一対の第1リンク板18の下側に付設の軸穴18-1と上下枠14の軸穴14-1にリンク軸17を挿通すると共に、前記第1リンク板の上側に付設の軸穴18-2と左右一対の第2リンク板19の下側に付設の軸穴19-1とに連結軸20を挿通し、この状態で前記第2リンク板の上側に付設の軸穴19-2に支持軸21を挿通して、前記支持軸の両端をフレーム枠7に支持し、第1リンク板18、第2リンク板19が前記連結軸で屈伸可能な状態で取り付けてある。
そして、前記連結軸の右側には、下部に軸受22-1と中央に突起体22-2と上部にワイヤー接続具22-3とが付設してある吊り板22が前記吊り板の軸受け22-1に吊り軸23を挿通して、前記突起体が前記連結軸に隣接する位置で回動可能な状態で上下枠14に取り付けてある。
また、前記連結軸とフレーム枠7に支持してあるバネ軸24とには弾性体25の両端をそれぞれ掛けて、第1リンク板18、第2リンク板19を伸長方向に付勢すると共に、前記吊り板も前記連結軸で突起体22-2が押されて右傾きの状態となっている。
尚、第1リンク板18と第2リンク板19は上下枠14を、より水平に昇降するために左右一対の形態を採っているが用途に応じて単列にしても構わない。
【0012】
続いて、ロック機構の動作について
図1、2、3、5、6を参照して説明する。
本願発明のロック機構は、掛け忘れを防ぐために
図1に示すようにワイヤーを引かない時はロックの状態となるように構成してある。
この状態からワイヤー接続具22-3にワイヤー27を接続して、操作レバーなどによりワイヤー27を上方に引くと、吊り板22が前記吊り板の下部に設けた軸受22-1を中心に反時計方向に回動し、吊り板22に付設の突起体22-2が連結軸20を押して弾性体25を引っ張り、第1リンク板18と第2リンク板19を「くの字」に屈曲させ、吊り板22は
図5に示すような起立した状態となる。
その状態から更にワイヤー27を引くと、第1リンク板18と第2リンク板19を更に屈曲させながら吊り板22を引き上げて、上下枠14と上下軸12を介して爪体10を上方に回動させて、前記爪体を停止体9から離脱して
図6に示すように車輪2はアンロックの状態となる。
そして、前述の状態からワイヤー27を緩めて行くと、吊り板22が降下し、上下軸12の下降端である停止体9と爪体10が噛み合った位置で降下を止めて
図5に示す状態となる。この状態から更にワイヤー27を緩めると、前記ワイヤーの緩み量に合せて、弾性体25の付勢力により第1リンク板18と第2リンク板19を伸長方向に引き、連結軸20が吊り板22の突起体22-2を押して前記吊り板を停止軸26に接触するまで時計方向に回動させて、
図1に示すように吊り板を右方向に傾けると共に、前記第1リンク板と前記第2リンク板とを一直線に伸長させ、車輪2の停止体9と爪体10も歯合してロックの状態となる。
つまり、このロックの状態においては爪体10を昇降する上下軸12、上下枠14と前記第1リンク板と前記第2リンク板がすべて一直線上に位置することになり、爪体10の浮上力である上方ベクトルを受ける力は無限大化し、頑強なロックが可能となる。
同時に、これによりロック力とは関係なく停止体9から爪体10を外すだけの小さい力でロック機構を操作することも可能となる。
また、本実施形態では停止体9と爪体10の歯合動作には弾性体25の力も使っているが、自重で行う場合は無くても構わない。
【符号の説明】
【0013】
1 車輪支持枠
1-1 軸受
2 車輪
3 フォーク体
4 旋回軸
4-1 貫通穴
5 車輪軸
6 旋回枠
6-1 固定座
6-2 軸受
7 フレーム枠
8 ネジ
9 停止体
10 爪体
10-1 軸受
10-2 軸穴
11 軸
12 上下軸
13 軸
14 上下枠
14-1 軸穴
14-2 吊り穴
15 上カラー
16 下カラー
17 リンク軸
18 第1リンク板
18-1 軸穴
18-2 軸穴
19 第2リンク板
19-1 軸穴
19-2 軸穴
20 連結軸
21 支持軸
22 吊り板
22-1 軸受
22-2 突起体
22-3 ワイヤー接続具
23 吊り軸
24 バネ軸
25 弾性体
26 停止軸
27 ワイヤー