(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】段ボール箱の供給装置
(51)【国際特許分類】
B65B 43/26 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
B65B43/26 A
(21)【出願番号】P 2018091656
(22)【出願日】2018-05-10
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】南部 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 圭介
(72)【発明者】
【氏名】宮本 喬行
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-505785(JP,A)
【文献】特開2017-170624(JP,A)
【文献】特表2005-534583(JP,A)
【文献】特開平7-290608(JP,A)
【文献】特開平2-139227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 43/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた状態の折り畳み段ボール箱を展開して筒状にする段ボール箱の供給装置であって、前記折り畳み段ボール箱の
上面に位置する一の面を保持する保持部と、前記保持部によって宙吊り状態にされた折り畳み段ボール箱の自重により、前記一の面と、折り畳まれた状態で前記一の面と重なり合い前記一の面に隣接する面とのなす角度が、大きくなるように前記保持部を
傾斜させる制御部とを備えた段ボール箱の供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳まれた状態の折り畳み段ボール箱を展開して筒状にする段ボール箱の供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
折り畳み段ボール箱を展開して筒状にする段ボール箱の供給装置として、ロボットを用いて作業を行うものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この供給装置は、平らな状態で積まれた折り畳み段ボール箱の上面側に複数の吸着パッドを密接させて、折り畳み段ボール箱を持ち上げる。複数の吸着パッドは、回転動作可能なフレームに保持され、上面側の2面に配置される。そして、2面が近付く方向にフレームを移動させることにより、折り曲げ部に沿ってほぼ90°に折り曲げられた筒状の段ボール箱が得られる。筒状になった段ボール箱は、前面を吸着パッドに保持されて、進行方向側に引っ張られるとともに、側面を吸着パッドに保持されて左右位置が規定されながら製函装置を進んでいく。これにより、段ボール箱の底が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した段ボールの供給装置は、非常に優れたものであるが、製函装置の進行方向側に吸着パッドが位置するため、吸引力の大きい、比較的大きなロボットを使用する必要がある。そのため、折り畳み段ボール箱、ロボット、製函装置のレイアウトに制約が生じることがあり、特に、狭い場所にこのような機械を導入する際に問題となっていた。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目したもので、折り畳み段ボール箱や製函装置のレイアウトの制約を緩和できる段ボール箱の供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の段ボール箱の供給装置は、折り畳まれた状態の折り畳み段ボール箱を展開して筒状にする段ボール箱の供給装置であって、前記折り畳み段ボール箱の上面に位置する一の面を保持する保持部と、前記保持部によって宙吊り状態にされた折り畳み段ボール箱の自重により、前記一の面と、折り畳まれた状態で前記一の面と重なり合い前記一の面に隣接する面とのなす角度が、大きくなるように前記保持部を傾斜させる制御部とを備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、折り畳み段ボール箱や製函装置のレイアウトの制約を緩和できる段ボール箱の供給装置を提供できる。
【0008】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の段ボール箱の供給システムを示す概略平面図である。
【
図2】同実施形態にかかる段ボール箱の供給装置の動作説明図である。
【
図3】同実施形態にかかる段ボール箱の供給装置の動作説明図である。
【
図4】同実施形態にかかる段ボール箱の供給装置の動作説明図である。
【
図5】同実施形態にかかる段ボール箱の供給装置の動作説明図である。
【
図6】同実施形態にかかる段ボール箱の供給システムの他の使い方を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図6を用いて説明する。
【0011】
本実施形態にかかる段ボール箱の供給システム10は、
図1に示すように、折り畳み段ボール箱のストック装置1と、段ボール箱の供給装置2と、製函装置3とを主体に構成されている。
【0012】
ストック装置1は、
図1~
図3に示すように、複数枚の折り畳み段ボール箱Bが上下方向に重ねて置かれる場所である。
【0013】
段ボール箱の供給装置2は、
図1に示すように、折り畳まれた状態の折り畳み段ボール箱Bを展開して筒状にする。段ボール箱の供給装置2は、保持部21と、制御部22とを備える。本実施形態では段ボール箱の供給装置2として、ヘッドが任意に作動する慣用の多関節ロボット(例えば、6軸垂直多関節ロボット)を用いるが、X、Y、Z軸に対してヘッドが任意に移動することができるロボットや装置など種々のものが採用できる。ヘッドは、ストック装置1と製函装置3との間で移動可能なものである。ヘッドには保持部21が設けられている。
【0014】
保持部21は、
図2~
図5に示すように、折り畳み段ボール箱Bの一の面B1を保持する。本実施形態では一の面B1が、ストック装置1に置かれた状態で上面に位置する。保持部21は、メイン吸着部23と、サブ吸着部24とを備える。メイン吸着部23は、一の面B1を吸着する。メイン吸着部23は、フレーム25と、一の面B1を吸着する複数の吸着パッド26とを備える。各吸着パッド26は、フレーム25に取り付けられ、真空機構(図示せず)に接続されている。サブ吸着部24は、メイン吸着部23の端部に設けられた軸29を中心に回転動作可能なものである。サブ吸着部24は、一の面B1に隣接する面B2を吸着する。隣接する面B2は、折り畳まれた状態で一の面B1と重なり合い、一の面B1に連続する面である。サブ吸着部24は、フレーム27と、一の面B1に隣接する面B2を吸着する複数の吸着パッド28とを備える。各吸着パッド28は、フレーム27に取り付けられ、真空機構(図示せず)に接続されている。メイン吸着部23のフレーム25とサブ吸着部24のフレーム27とは、軸29を介して連結されている。
【0015】
制御部22は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換部等の専用ないし汎用のコンピュータにより構成されている。そして、内部メモリに格納されたプログラムにしたがって、CPUやその他の周辺機器が協働することによって、制御部22としての機能が発揮される。本実施形態の制御部22は、保持部21によって宙吊り状態にされた折り畳み段ボール箱Bの自重により、一の面B1と、一の面B1に隣接する面B2とのなす角度αが、大きくなるように保持部21を傾ける。また、制御部22は、メイン吸着部23に対してサブ吸着部24がほぼ直角に位置するように、サブ吸着部24のフレーム27を回転させる。
【0016】
製函装置3は、
図1に示すように、筒状に展開された段ボール箱Bの底側のフラップB5、B6を折り畳んで底面を形成するもので、前後方向に位置する内フラップB5を折り畳むための案内部31と、左右方向に位置する外フラップB6を折り畳むための案内部32とを備えている。製函装置3は、この分野でよく知られたものであるため詳細な説明を省略する。なお、本明細書における前、後、左、右は、段ボール箱Bの進行方向を前として説明する。
【0017】
次に、段ボール箱Bの供給システム10の作動の一例について、
図1~
図5を用いて説明する。
【0018】
まず、
図1及び
図2に示すように、メイン吸着部23とサブ吸着部24とが直線状に並んだ状態の保持部21を、ストック装置1の一番上に載せられた段ボール箱Bに近付ける。その際、メイン吸着部23が段ボール箱Bの端部B10に配置され、サブ吸着部24は、折り畳み段ボール箱Bの外側に配置される。言い換えれば、保持部21は、鋭角の折り曲げ部B9に沿って配置される。
【0019】
メイン吸着部23は、折り畳み段ボール箱Bの一の面B1を吸着して、そのまま上方へと移動する。
図3に示すように、メイン吸着部23に保持された折り畳み段ボール箱Bは、平板の状態から一の面B1が持ち上げられて、一の面B1と隣接する面B2とのなす角度αが大きくなり、側面視で平行四辺形の筒状になる。具体的には、ストック装置1で上面側に位置していた二つの面B1、B4は、保持部21による持ち上げと折り畳み段ボール箱Bの自重により、折り曲げ部B7で屈曲する。折り曲げ部B7は、ほぼ180°から直角に近付いていく。一方、ストック装置1で下面側に位置していた二つの面B2、B3も、保持部21による持ち上げと折り畳み段ボール箱Bの自重により、折り曲げ部B8で屈曲する。折り曲げ部B8は、ほぼ180°から直角に近付いていく。
【0020】
次に、
図4に示すように、制御部22は、保持部21を屈曲させる。具体的には、メイン吸着部23のフレーム25に対してサブ吸着部24のフレーム27を、約90°回転させる。この際、折り畳み段ボール箱Bの鋭角の折り曲げ部B9は、直角まで開ききっていないため、サブ吸着部24は折り畳み段ボール箱Bに接触しない。
【0021】
この状態から、
図5に示すように、制御部22は、保持部21を傾ける。具体的には、サブ吸着部24がメイン吸着部23の下側に位置するように、メイン吸着部23を水平方向から斜めに傾けるように制御する。別の言い方をすれば、制御部22は、保持部21で持ち上げた状態で側面視平行四辺形だった、折りぐせに沿った状態の折り畳み段ボール箱Bを反対向きの、折りぐせに反する状態の平行四辺形にする方向に傾ける。
【0022】
すると、保持部21によって宙吊り状態にされた折り畳み段ボール箱Bの自重により、一の面B1と隣接する面B2とのなす角度αが大きくなり、隣接する面B2が一の面B1から離れる方向に向かって移動する。また、一の面B1に対向する他の面B3も、一の面B1から離れる方向に向かって移動する。これにより、鋭角の折り曲げ部B9は、直角に近付いていき、一の面B1に隣接する面B2がサブ吸着部24に到達する。サブ吸着部24は、その状態で一の面B1に隣接する面B2を吸着する。
【0023】
メイン吸着部23とサブ吸着部24に保持されて4つの角がほぼ直角になった筒状の段ボール箱Bは、そのまま製函装置3へと移動される。筒状になった段ボール箱Bは、
図1の二点鎖線で示すように、後面(隣接する面B2)をサブ吸着部24で押されるとともに、側面(一の面B1)をメイン吸着部23で左右位置が規定されながら製函装置3を進んでいく。そして、メイン吸着部23とサブ吸着部24によって保持された状態のまま、案内部31、32を利用して底が形成される。その後、メイン吸着部23とサブ吸着部24の吸着状態が解除され、メイン吸着部23とサブ吸着部24とが元の一直線状に並んだ状態へと戻る。
【0024】
また、本実施形態にかかる段ボール箱Bの供給システム10は、
図6に示すようなレイアウトにも対応可能である。
【0025】
保持部21は、段ボール箱Bの中央付近に配置される。メイン吸着部23は、折り畳み段ボール箱Bの一の面B1を吸着し、サブ吸着部24は、外側に露出する面B4を吸着し、そのまま上方へと移動する。制御部22は、メイン吸着部23とサブ吸着部24とを互いに近付く方向に移動させることにより、折り曲げ部B7は、ほぼ180°から直角に近付いていく。メイン吸着部23とサブ吸着部24に保持されて4つの角がほぼ直角になった筒状の段ボール箱Bは、そのまま製函装置3へと移動される。筒状になった段ボール箱Bは、
図6の二点鎖線で示すように、後面(面B4)をサブ吸着部24で押されるとともに、側面(一の面B1)をメイン吸着部23で左右位置が規定されながら製函装置3を進んでいく。
【0026】
以上に説明したように、折り畳まれた状態の折り畳み段ボール箱Bを展開して筒状にする段ボール箱の供給装置2は、折り畳み段ボール箱Bの一の面B1を保持する保持部21と、保持部21によって宙吊り状態にされた折り畳み段ボール箱Bの自重により、一の面B1と、折り畳まれた状態で一の面B1と重なり合い一の面B1に隣接する面B2とのなす角度αが、大きくなるように保持部21を傾ける制御部22とを備え、
図6のようなレイアウトのみならず
図1のようなレイアウトにおいても、段ボール箱Bを後ろから押しながら製函装置3を移動できる。この供給装置2によれば、従来よりも小型のロボットを用いることが可能となり、また、製函装置3付近のレイアウトのバリエーションへの対応が容易になる。
【0027】
保持部21は、一の面B1を吸着するメイン吸着部23と、このメイン吸着部23の端部B10に設けられた軸29を中心に回転動作可能なサブ吸着部24とを備え、サブ吸着部24は、折り畳み段ボール箱Bの外側に配置される。そのため、簡単な方法で折り畳み段ボール箱Bを扱うことができる。さらに、段ボール箱Bの隣接する2面B1、B2を吸着した状態でその2面B1、B2間の角度を変更することがないので好ましい。
【0028】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
【0029】
保持部21は、折り畳み段ボール箱Bを宙吊り状態にすることができるものであればどのようなものであってもよく、吸着パッドを備えたものには限られない。保持部21で保持される前の折り畳まれた状態の段ボール箱Bは、上下方向に重ねられたものであってもよいし、立てた状態で前後または左右方向に重ねられたものであってもよい。
【0030】
上述した実施形態では、サブ吸着部24を回転動作させてメイン吸着部23に対してサブ吸着部24を所定の位置に位置付けた後に、メイン吸着部23及びサブ吸着部24を傾けるようにしていたが、逆に、サブ吸着部24を回転動作させる前に、メイン吸着部23及びサブ吸着部24を傾けるようにしてもよい。すなわち、本発明は、保持部21により折り畳み段ボール箱Bを宙吊り状態にする工程と、折り畳み段ボール箱Bの2面を保持可能に保持部21を位置付ける工程と、保持部21を傾ける工程とを備えたものであればどのようなものであってもよく、各工程の順番は相互に入れ替え可能である。
【0031】
本発明は、折り畳み段ボール箱の一の面を保持する保持部と、保持部によって宙吊り状態にされた折り畳み段ボール箱の自重により、一の面と、折り畳まれた状態で一の面と重なり合い前記一の面に隣接する面とのなす角度が、大きくなるように保持部を傾ける制御部とを備えたものであればよい。そのため、上述した実施形態で示したような、段ボール箱Bを後ろから押しながら製函装置3を移動できるように段ボール箱を供給するもののみならず、段ボール箱を前から引っ張りながら製函装置3を移動できるように段ボール箱を供給する方法に用いられるものであってもよいのはもちろんである。
【0032】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、折り畳まれた状態の折り畳み段ボール箱を展開して筒状にする段ボール箱の供給装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
2…段ボール箱の供給装置
21…保持部
22…制御部
B…折り畳み段ボール箱
B1…一の面
B2…隣接する面
α…角度