(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】酒造用精米機
(51)【国際特許分類】
B02B 3/06 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
B02B3/06 104
(21)【出願番号】P 2019025570
(22)【出願日】2019-02-15
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】592154721
【氏名又は名称】新中野工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】為久 博文
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-209608(JP,A)
【文献】特開2007-061943(JP,A)
【文献】特開2001-062316(JP,A)
【文献】特開2008-173585(JP,A)
【文献】特開平06-099088(JP,A)
【文献】特開平02-131144(JP,A)
【文献】特開昭61-050773(JP,A)
【文献】特開平01-262949(JP,A)
【文献】特開平03-021350(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106311379(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 1/00 - 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環式堅型の酒造用精米機であって、
内筒内に竪配置された精白ロールと、
前記精白ロールの回転中心軸となる主軸と、
前記精白ロールを前記主軸に支持するために前記精白ロールの上側から前記精白ロールを押える押し盤と、
前記精白ロールを前記主軸に支持するために前記精白ロールの下側で前記精白ロールを受ける受け盤と、
前記押し盤の上側に設け、米粒を送るための螺旋溝が前記内筒の内周面と対向するように形成された螺旋溝付側面を有す
る螺旋部材とを備えており、
前記精白ロールは外周に沿った円環状の溝が形成されており、
前記受け盤は、前記精白ロールの外周面から延出した延出部を有しており、
前記精白ロールの外周面と前記内筒の内周面との間に隙間が形成され、
前記隙間に、米粒が繰り返し供給されて米粒が回転中の前記精白ロールで研削され、
前記精白ロールの外周面と、前記押し盤、前記受け盤の前記延出部の前記隙間に接する面及び前記螺旋溝付側面に、ダイヤモンド砥粒が固着されており、
前記精白ロール、前記押し盤及び前記受け盤に、前記ダイヤモンド砥粒が固着された部分に隣接して、前記ダイヤモンド砥粒が固着されていない帯状部を有していることを特徴とする酒造用精米機。
【請求項2】
前記内筒の内周面に前記ダイヤモンド砥粒が固着されている請求項1に記載の酒造用精米機。
【請求項3】
前記内筒の内周面に、米粒の流動に抵抗を加える抵抗片が固定されており、前記抵抗片の表面に前記ダイヤモンド砥粒が固着されている請求項1又は2に記載の酒造用精米機。
【請求項4】
前記内筒の内周面に、米粒の流動に抵抗を加える円環状の上円筒が固定されており、前記上円筒の表面に前記ダイヤモンド砥粒が固着されている請求項1から3のいずれかに記載の酒造用精米機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粒を竪配置された精白ロールで繰り返し研削して精米する循環式堅型の酒造用精米機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、精白ロールの回転により米粒を研削する精米機が知られている。精米機には、飯米用精米機と酒造用精米機とがある。酒造用の米粒は飯米用の米粒に比べ、精米歩合を高める必要があることから、酒造用精米機は、米粒を精白ロールで繰り返し研削することを前提とした構造になっている。具体的には、酒造用精米機は、循環式堅型が一般的であり(例えば特許文献1)、米粒を竪配置された精白ロールで多数回かつ長時間に亘り繰り返し研削する。このように米粒を繰り返し研削することにより、米粒の精米歩合が高められる。
【0003】
このように、米粒を長時間に亘り繰り返し研削する酒造用精米機においては、高い研削効率(単位時間当たりの研削質量)が求められる。特許文献1に記載の酒造用精米機においては、精白ロールの外周面にダイヤモンド砥粒を固着することにより、精白ロールの米粒に対する切れを向上させて研削効率を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のとおり、酒造用精米機においては、高い研削効率が求められ、特許文献1に記載の酒造用精米機のように、精白ロールの外周面にダイヤモンド砥粒を固着して研削効率を高めたものについても、より一層研削効率を高めることが望まれる。しかし、精白ロールの外周面にダイヤモンド砥粒を固着した特許文献1に記載の酒造用精米機においては、より一層の研削効率の向上には限界があり、特許文献1には、より一層の研削効率の向上を図るための技術は示唆されていなかった。
【0006】
本発明は、前記の問題に鑑み、研削効率をより一層高めた酒造用精米機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の酒造用精米機は、循環式堅型の酒造用精米機であって、内筒内に竪配置された精白ロールと、前記精白ロールの回転中心軸となる主軸と、前記精白ロールを前記主軸に支持するために前記精白ロールの上側から前記精白ロールを押える押し盤と、前記精白ロールを前記主軸に支持するために前記精白ロールの下側で前記精白ロールを受ける受け盤とを備えており、前記受け盤は、前記精白ロールの外周面から延出した延出部を有しており、前記精白ロールの外周面と前記内筒の内周面との間に隙間が形成され、前記隙間に、米粒が繰り返し供給されて米粒が回転中の前記精白ロールで研削され、前記精白ロールの外周面と、前記押し盤及び前記受け盤の前記延出部の前記隙間に接する面に、ダイヤモンド砥粒が固着されていることを特徴とする。この構成によれば、特別に部品を追加したり、形状や材質を変更することなく、研削面積を増やして研削効率を高めることができる。
【0008】
前記本発明の酒造用精米機においては、下記の各構成とすることが好ましい。前記精白ロール、前記押し盤及び前記受け盤に、前記ダイヤモンド砥粒が固着されていない帯状部を有していることが好ましい。この構成によれば、研削効率をより高めることができる。
【0009】
米粒を送るための螺旋溝が前記内筒の内周面と対向するように形成された螺旋溝付側面を有する螺旋部材を前記押し盤の上側に設けており、前記螺旋溝付側面に前記ダイヤモンド砥粒が固着されていることが好ましい。この構成によれば、研削面積の増大により研削効率をより高めることができる。
【0010】
前記内筒の内周面に前記ダイヤモンド砥粒が固着されていることが好ましい。この構成によっても、研削面積の増大により研削効率を高めることができる。
【0011】
前記内筒の内周面に、米粒の流動に抵抗を加える抵抗片が固定されており、前記抵抗片の表面に前記ダイヤモンド砥粒が固着されていることが好ましい。この構成によっても、研削面積の増大により研削効率を高めることができる。
【0012】
前記内筒の内周面に、米粒の流動に抵抗を加える円環状の上円筒が固定されており、前記上円筒の表面に前記ダイヤモンド砥粒が固着されていることが好ましい。この構成によっても、研削面積の増大により研削効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果は前記のとおりであり、特別に部品を追加したり、形状や材質を変更することなく、研削面積を増やして研削効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る酒造用精米機の概略構成図。
【
図2】
図1に示した酒造用精米機の精白室内部の要部を示す拡大断面図。
【
図3】
図2に示した精白ロール及びその付属部品の外観斜視図。
【
図6】本発明の別の実施形態に係る精白ロール及びその付属部品の側面図。
【
図7】本発明の別の実施形態に係る精白室内部の要部を示す拡大断面図。
【
図8】本発明の別の実施形態に係る内筒単体の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る酒造用精米機1の概略構成図を示している。
図2は
図1に示した酒造用精米機1の精白室3内部の要部を示す拡大断面図である。最初に
図1及び
図2を参照しながら、酒造用精米機1の概略構成について説明する。
図1において、酒造用精米機1は、米粒を蓄積する精米タンク2、精米タンク2から落下した米粒を精白する精白室3、精白室3で精白された米粒を下方に導く万石4、万石4からの米粒を精米タンク2に向けて搬送する昇降機5を主要部としている。
【0016】
酒造用精米機1の運転開始時には、昇降機5に取り付けられた供給口6から精米対象の米粒が昇降機5内に供給される。昇降機5はベルト9を備えており、ベルト9には多数のバケット7が取り付けられている。ベルト9の下降と一体に、バケット7が昇降機5の下部に順次送られてくる。バケット7は開口8を備えており、バケット7はベルト9と一体に移動しつつ、米粒を開口8側からすくい上げる。このことにより、バケット7内に米粒が充填される。
【0017】
米粒が充填されたバケット7は、ベルト9の移動と一体に上昇する。ベルト9の上部において、バケット7の開口8から米粒が昇降機5に取り付けられた供給筒10に向けて投入される。供給筒10に投入された米粒は精米タンク2に供給され、精米タンク2内に米粒が一時的に蓄積される。
【0018】
精米タンク2内に蓄積された米粒は、自重により精白室3に向けて落下する(矢印a)。精白室3内には、竪配置された精白ロール11及び内筒15が配置されている。
図2の拡大図に示したように、精白ロール11は内筒15内に包み込まれように配置されている。精白ロール11は主軸17に取り付けられている。主軸17にはプーリー18(
図1参照)が固定されており、プーリー18に掛け合わされたベルト(図示せず)による駆動により、プーリー18及び主軸17が回転し、これと一体に精白ロール11が回転する。
【0019】
精白ロール11の外周面と内筒15の内周面との間には、隙間16が形成されている。この隙間16に、精米タンク2から落下した米粒が投入される。詳細は後に説明するが、
図2において、精白ロール11の外周面と、螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20の隙間16に接する面にダイヤモンド砥粒31(
図5参照)を含むダイヤモンド砥粒層30(
図4及び
図5参照)が被覆されている。精白ロール11の回転により、螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20も回転し、米粒は隙間16において、ダイヤモンド砥粒31により研削される。
【0020】
隙間16を通過し研削された米粒は、排出口25を通過して精白室3から排出される。
図1において、排出口25からの米粒は、排出筒23を経て万石4に供給される。万石4は、昇降機5の下部に向けて傾斜して配置されている。このため、万石4上の米粒は、万石4に沿って下方に運ばれて行く(矢印b)。万石4の底部は網状になっており、糠は網状の底部から落下する。落下した糠は、万石4の下部に設置された回収筒26を経て回収される。万石4によって下方に運ばれた米粒は、昇降機5に取り付けられた投入筒24を経て、昇降機5の下部に移送される。
【0021】
前記の一連の工程を経て、米粒は酒造用精米機1内を1循環し、米粒の1回分の研削が終了する。2回目の循環移動の経路は、1回目の循環移動の経路と同じであり、2回目の循環移動により、米粒に対し2回目の研削が実行される。
【0022】
以後、循環移動を繰り返す度に、米粒の研削回数が増して行く。精白ロール11による研削の効果で、玄米の糠が除去され玄米が白米になる。以後、研削回数が増すにつれて、白米の質量が減少し精米歩合が高まって行く。精米歩合は、白米のその玄米に対する質量の割合のことである。精米完了時における白米の質量が、精米当初に投入された玄米の質量の半分になっていれば、精米歩合は50%となる。
【0023】
飯米用の米粒の精米では、玄米から糠を除去して白米にするが、白米にした後の研削量は少なくても足りる。これに対し、酒造用の米粒は、玄米から糠を除去した程度の精米では足りず蛋白質や脂肪を減らし、米粒の中心部にある澱粉質の割合を高めたものとする必要がある。このため、酒造用の米粒は飯米用の米粒に比べ、精米歩合を高める必要がある。具体的には、飯米用の米粒の精米歩合は90%程度であるが、酒造用の米粒では30~70%程度であり、30%未満とする場合もある。
【0024】
このことから、飯米用精米機と酒造用精米機とでは装置の仕様が異なっている。飯米用精米機では、精白ロールに相当する研削ロールは玄米の表面部分を削るに止まり、続く摩擦ロールにより糠を除去して白米にする。飯米用の米粒は精米歩合を高める必要はなく、通常は米粒を研削ロール及び摩擦ロールに供給する回数は一回で足りる。
【0025】
これに対し、酒造用精米機では本実施形態の酒造用精米機1のように、米粒は酒造用精米機1内を循環しつつ、繰り返し研削される。すなわち、酒造用精米機1では、必要量の米粒を投入した後は、新たな米粒が投入されるのではなく、初期投入時と同じ米粒に対し、必要な精米歩合となるまでの研削が繰り返えされる。このことにより、精米歩合を高め酒造に適した米粒が得られ、酒造用精米機1では、米粒は精白ロール11で多数回かつ長時間に亘り研削される。
【0026】
このため、酒造用精米機1のような循環式堅型の酒造用精米機では、高い研削効率(単位時間当たりの研削質量)が求められ、例えば精白ロールに金剛砂(炭化ケイ素)を焼き固めて形成した金剛ロールが用いられる。金剛ロールは硬度が高く、米粒に対する研削による切れも良好である。また。前記特許文献1に記載の酒造用精米機においては、精白ロールの外周面にダイヤモンド砥粒を固着することにより、精白ロールの米粒に対する切れを向上させて研削効率を高めるようにしている。
【0027】
しかしながら、金剛ロールを用いる場合も、ダイヤモンド砥粒を固着した精白ロールを用いる場合も、研削を目的とした精白ロールの研削効率を高めることに着眼したに留まり、精白ロールの付属部品で研削を行うという着眼はなかった。本願発明者は、詳細は後に説明するとおり、精白ロールの付属部品で研削を行えば、研削面積が大幅に増え研削効率を向上できることを見出した。
【0028】
以下、本実施形態の精白ロール11及びその周辺の構造について、さらに具体的に説明する。
図2において、精白ロール11は中空の円筒体であり外周に沿った円環状の溝19が形成されている。精白ロール11の外周面は、前記の金剛ロールと同様の形状であるが、後に説明するとおり、外周面にダイヤモンド砥粒31(
図5参照)が固着されている点が通常の金剛ロールと異なっている。
【0029】
本実施形態の精白ロール11を構成する円筒体は薄肉体であり、後に説明するとおり、外周面にダイヤモンド砥粒層30(
図3~
図5参照)を電着により形成するため、金属で形成している。薄肉体にすることにより、軽量化を図ることができるが、薄肉体に限るものではなく、厚肉体であってもよい。円筒体の形成方法としては、例えば鋳物や削り出しが挙げられる。
【0030】
図2において、精白ロール11は上側が押し盤13で押さえられ、下側は受け盤20で受けている。押し盤13は、内側形状を精白ロール11の上面形状に合わせた傘状部材であり、精白ロール11を上側から直接押圧する部材である。受け盤20は、精白ロール11の底面を受ける座部21と精白ロール11の外周面から延出した延出部22を有している。隙間16の下方は延出部22で空間が閉ざされており、隙間16を流動する米粒は排出口25へ案内されていく。
【0031】
螺旋部材12は、中央の軸穴に主軸17を挿通させて主軸17を支持しており、米粒を送るための螺旋溝27が内筒15の内周面と対向するように形成された螺旋溝付側面を有している。
図2では、押し盤13と螺旋部材12はそれぞれ独立した部品であるが、これらが一体となった1部品であってもよい。
【0032】
主軸17は受け盤20の中央の軸穴と精白ロール11の中央の軸穴に固定されている。主軸17の上端部分にナット28が締め付けられている。このことにより、精白ロール11は押し盤13と受け盤20とで挟まれた状態で主軸17に支持されており、主軸17の回転と一体に精白ロール11、螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20が回転する。
【0033】
図3は、
図2に示した精白ロール11及びその付属部品の斜視図を示している。
図4は
図2の断面図において、精白ロール11近傍の拡大図である。
図5は
図4のA部の拡大図を示している。
図3~
図5では、
図2において図示を省略したダイヤモンド砥粒層30を図示している。本実施形態では、精白ロール11の外周面と、螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20の延出部22の隙間16に接する面に、ダイヤモンド砥粒層30を被覆して研削面を形成している。
【0034】
ダイヤモンド砥粒層30は電着により形成されており、精白ロール11を例にとると、
図5に示したように、精白ロール11の外周面に形成した金属メッキ層32により、ダイヤモンド砥粒31が精白ロール11に固着されている。この固着は、螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20についても同様である。
【0035】
本実施形態では、ダイヤモンド砥粒層30を、精白ロール11だけでなく、精白ロール11の付属部品である螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20にも形成している。螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20は、精白ロール11を主軸17に支持する部品であり、本来は米粒を研削する部品ではない。また、螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20は、砥石の金剛ロールに比べると、薄肉体であり、形状が複雑であることから、強度確保や加工を考慮すると、金剛ロールのように砥石での製作には適していなかった。このため、押し盤13及び受け盤20で米粒を研削するという着眼は従来からなかった。
【0036】
本願発明者は、研削効率を高めるための検討過程において、螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20についても精白ロール11と同様に、米粒の圧力を受ける部分であり、これらの部位においても研削を行えば、研削面積が大幅に増え研削効率を向上できることに着眼した。
【0037】
具体的には、
図2において、精白ロール11の外周面と内筒15の内周面は、隙間16を介して対向しており、隙間16において米粒が回転中の精白ロール11で研削されるが、螺旋部材12及び押し盤13についても、螺旋部材12及び押し盤13の外周面と内筒15の内周面は、隙間16を介して対向している。このことから、螺旋部材12及び押し盤13の隙間16と接する部分については、研削面になり得るものであることに想到した。
【0038】
特に、螺旋部材12の螺旋溝27は米粒を送るためのものであり、米粒の研削を目的としたものではないが、内筒15の内周面と対向しており、研削面になり得るものである。
【0039】
他方、
図2において、受け盤20の延出部22については、内筒15の内周面と対向する部分ではないが、その上側の米粒全体の自重による圧力が垂直方向に作用するので、高い圧力が加わる。このことから、受け盤20の延出部22の隙間16と接する部分についても、研削面になり得るものであることに想到した。
【0040】
以上のような検討の結果、本願発明者は、
図4に示したように、精白ロール11の外周面に加え、螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20の延出部22の隙間16に接する面に、ダイヤモンド砥粒層30を被覆してこれらの面を研削面とすることに想到するに至った。
【0041】
本実施形態と同様の構造(
図1~
図5)の実機を設計製作し、ダイヤモンド砥粒層30の被覆面の面積を確認したところ、精白ロール11の被覆面積が32406.7mm
2であったのに対し、螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20の延出部22の被覆面も加えた全体の被覆面積は53333.6mm
2となり、精白ロール11の被覆面積に比べ1.65倍となった。すなわち、本実施形態においては、精白ロール11のみにダイヤモンド砥粒層30を被覆したものに比べて、被覆面積すなわち研削面積が大幅に増えることが確認でき、あわせて研削効率の向上も確認できた。
【0042】
前記実施形態において、螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20は、本来は精白ロール11を主軸17に支持させるために必要な付属部品であり、前記実施形態はこれらの付属部品にあえて研削効果を発揮させるようにしたものである。すなわち、本発明に係る精米機は、特別に部品を追加したり、形状や材質を変更することなく、研削面積を増やして研削効率を高めた精米機ということができる。
【0043】
前記実施形態において、螺旋部材12、押し盤13及び受け盤20の全てにダイヤモンド砥粒層30を被覆した例で説明したが、螺旋部材12を備えていない酒造用精米機については、精白ロール11に加え押し盤13及び受け盤20にダイヤモンド砥粒層30を被覆すればよい。また、螺旋部材12を有している酒造用精米機であっても、押し盤13及び受け盤20にダイヤモンド砥粒層30が被覆されていれば、研削面積が増えるので研削効率を高めることができる。
【0044】
また、内筒15の内周面は、米粒が接する部分であり、内筒15の内周面にダイヤモンド砥粒層30を被覆することによっても、研削面積の増大により研削効率を高めることができる。
【0045】
図6は本発明の別の実施形態に係る精白ロール11及びその付属部品の側面図を示している。本図に示した精白ロール11は、ダイヤモンド砥粒層30が被覆されておらず、ダイヤモンド砥粒31が固着されていない帯状部29を有している点が前記実施形態と異なっている。帯状部29は精白ロール11だけでなく、押し盤13及び受け盤20にも形成されている。帯状部29は、例えば幅5mm、本数6本である。帯状部29を有することにより研削面積は減少するが僅かなものであり、実験の結果、研削効率がより高まることが確認できた。
【0046】
図7は、本発明の別の実施形態に係る精白室内部の要部を示す拡大断面図である。本図に示した構造は、
図2に示した構造に比べ、抵抗片33~35及び上円筒35を有している点が、
図2に示した構造と異なっている。他の各部の構造は、
図2に示した構造と異なっているもののあるが、基本構造は同じであり、同一符号を付して説明は省略する。
【0047】
図7において、内筒15の内周面には、抵抗片33~35及び上円筒36が固定されている。
図8は、内筒15単体の斜視図である。抵抗片33~35及び上円筒36は、米粒の流動に抵抗を加えて米粒を研削され易くするためのものである。抵抗片33~35は、形状に特に限定はないが、本実施形態では
図8に示したように矩形状の小片である。上円筒36は、
図7に示したように、内筒15の内周面に沿って固定された円環状部材であり、周方向において厚みが徐々に変化しており、米粒を流動させながら米粒に抵抗を加えることができる。
【0048】
図7及び
図8に示した実施形態では、抵抗片33~35及び上円筒34の表面にもダイヤモンド砥粒層を被覆しており、ダイヤモンド砥粒が固着されており、研削面積の増大による研削効率の研削効率の向上を一層高めるようにしている。ダイヤモンド砥粒層の被覆は、抵抗片33~35及び上円筒34の全てでもよく一部であってもよい。
【0049】
前記実施形態においては、ダイヤモンド砥粒層30を電着により形成した例で説明したが、ダイヤモンド砥粒31を精白ロール11の外周面に固着できればよく、他の手段を用いてもよい。また、
図1に示した酒造用精米機1の全体構成は一例であり、循環式堅型の酒造用精米機であれば他の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 酒造用精米機
3 精白室
11 精白ロール
12 螺旋部材
13 押し盤
15 内筒
16 隙間
17 主軸
20 受け盤
22 延出部
27 螺旋溝
29 帯状部
30 ダイヤモンド砥粒層
31 ダイヤモンド砥粒
32 金属メッキ層
33,34,35 抵抗片
35 上円筒