(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】条件付き制御負荷および双方向分散型エネルギー貯蔵システムのランダム化されたパケットベースの電力管理のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20221007BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20221007BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20221007BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
H02J3/32
H02J7/35 K
H02J3/38 110
(21)【出願番号】P 2019537051
(86)(22)【出願日】2017-09-21
(86)【国際出願番号】 US2017052828
(87)【国際公開番号】W WO2018057818
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-17
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519097168
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ バーモント アンド ステイト アグリカルチャー カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】フロリック、ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ、ポール
(72)【発明者】
【氏名】アルマサルクヒ、マッズ
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0380936(US,A1)
【文献】特表2010-512727(JP,A)
【文献】特開2013-169137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/32
H02J 7/35
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信エポック中にコーディネーターから電力を要求するノードであって、
少なくとも1の確率状態を備え、
前記少なくとも1の確率状態は、ノード条件の関数として変化する要求確率を定義する要求確率関数を有し、前記ノードが同じ前記確率状態である間に前記ノードの動的エネルギーレベルに従って前記ノードの要求確率を調整し、
前記要求確率は、前記ノードが通信エポック中にエネルギーパケットの引き出しまたは放電を要求する確率であり、
前記ノードは、
前記ノード条件の値を受信し、
「前記少なくとも1の確率状態の前記要求確率関数」と「受信した前記ノード条件の前記値」とに応じて決定される、通信エポックの要求確率を決定し、
決定された前記要求確率に従って、前記コーディネーターからのエネルギーパケットを要求するように構成される、
ノード。
【請求項2】
前記ノード条件は、ローカルに感知された温度、ローカルに感知された圧力、回転速度、充電状態、および、時間ベースの期限のうちの1つまたは複数である、
請求項1に記載のノード。
【請求項3】
前記要求確率関数は、前記ノード条件が第1閾値に到達するにつれて1に近づくと共に前記ノード条件が第2閾値に近づくと0に近づく単調関数である、
請求項1に記載のノード。
【請求項4】
前記ノードは、前記ノード条件が前記第1閾値に到達すると、エネルギーパケットを要求することを止めると共に持続的にエネルギーを引き出し始めるように構成されている、
請求項3に記載のノード。
【請求項5】
前記少なくとも1の確率状態は、第1の確率状態と、第2の確率状態とを含み、
前記第1の確率状態は、前記ノード条件がnであるときのノード条件nの関数として変化する第1の要求確率関数P
1(n)に対応し、
前記第2の確率状態は、前記ノード条件nの関数として変化する第2の要求確率関数P
2(n)に対応し、
P
1(n)は、P
2(n)よりも大きい、
請求項1に記載のノード。
【請求項6】
前記少なくとも1の確率状態は、第1の確率状態であり、
前記ノードは、さらに、
前記要求に対する応答を受け取り、
受信した前記応答に基づいて、第2の確率状態を選択するように構成されており、
前記第2の確率状態は、第2の要求確率関数を有し、
前記第2の要求確率関数は、第1の要求確率関数とは異なっており、前記ノード条件の関数として変化する要求確率を定義する、
請求項1に記載のノード。
【請求項7】
前記ノードは、受信した前記応答に基づいて、電力を引き出すまたは放電するように構成されている、
請求項6に記載のノード。
【請求項8】
前記ノードは、前記コーディネーターから通信エポックパラメータを受信し、要求間の時間の長さを決定するように構成されている、
請求項1に記載のノード。
【請求項9】
前記ノードは、分散型エネルギー貯蔵システム(DESS)であり、
前記ノード条件は、前記DESSの充電状態であり、
前記要求確率関数は、充電要求確率関数であり、
前記ノードは、さらに
少なくとも1の放電要求確率関数
と前記充電状態とに従って
通信エポックについての放電要求確率を決定するように構成されており、
前記充電状態が充電閾値C
threshへと減少するにつれて、前記充電要求確率関数は、1に近づき、前記充電状態が放電閾値D
threshへと増加するにつれて、前記放電要求確率関数は、1に近づき、C
thresh<D
threshであり、
前記ノードは、さらに
前記充電要求確率関数と前記充電状態とに従って、通信エポックの充電要求確率を決定し
、
決定した前記充電要求確率に従って、前記コーディネーターからエネルギーパケットを要求し、
決定した前記
放電要求確率に従って、エネルギーパケットを放電することを要求するように構成される、
請求項1に記載のノード。
【請求項10】
前記ノードは、分散型エネルギーリソース(DER)と同じ場所に配置された物理デバイスである、
請求項1に記載のノード。
【請求項11】
前記ノードは、DERを遠隔管理するソフトウェアエージェントである、
請求項1に記載のノード。
【請求項12】
前記コーディネーターと有線および/または無線通信するコーディネーターインターフェースをさらに備える、
請求項1に記載のノード。
【請求項13】
前記コーディネーターインターフェースは、電力線通信(PLC)を使用して前記コーディネーターと通信する、
請求項12に記載のノード。
【請求項14】
前記少なくとも1の確率状態は、対応する要求確率関数を定義する複数の確率状態を含み、
前記ノードは、さらに、
前記複数の確率状態から通信エポックの現在の確率状態を決定し、
前記ノード条件の現在値に従って、前記ノードが前記複数の確率状態のうちの1つである間に、前記要求確率を変更するように構成される、
請求項1に記載のノード。
【請求項15】
前記ノードは、さらに、エネルギーパケットの要求に対する前記コーディネーターの応答に従って前記複数の確率状態の間を遷移するように構成される、
請求項14に記載のノード。
【請求項16】
電力を供給するためのシステムであって、
電源と通信し、各エネルギーパケットが有限の持続時間を有する複数の個別のエネルギーパケットとして、前記電源からの電力供給を許可するように構成されているコーディネーターと、
前記コーディネーターと通信すると共に、請求項1から15のいずれか1項に記載される1つまたは複数のノードと、を備え、
前記コーディネーターは、
1つ以上の前記ノードから要求を受信し、
前記電力の利用可能性に基づいて、各要求を許可するか拒否するかを決定するように構成されている、
システム。
【請求項17】
前記コーディネーターは、1つまたは複数の市場条件に基づいて各要求を許可するか拒否するかを決定するようにさらに構成される、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コーディネーターは、電力の利用可能性および/または1つ以上の市場条件を示す利用可能性信号をグリッドオペレーターから受信する、
請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記電源は、前記電力を電力グリッドに分配し、
前記コーディネーターは、前記電力グリッドの状態をモデル化することによって、電力の予測利用可能性を決定する、
請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
ノードが電力グリッドからの電力のコーディネーターと通信する通信エポック中に電力を要求するための方法であって、
ノード条件の関数として通信エポック中にエネルギーパケットの引き出しまたは放電を要求する確率を定義する要求確率関数を呼び出すステップと、
前記ノード条件の値を受信するステップと、
呼び出した前記要求確率関数と受信した前記ノード条件の前記値とに従って、通信エポックについての要求確率を決定するステップと、
決定した前
記要求確率に基づいて前記コーディネーターからエネルギーパケットを要求するステップと、
を備える方法。
【請求項21】
前記ノード条件は、温度、圧力、回転速度、充電状態、および、時間ベースの期限のうちの1つまたは複数である、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ノード条件は、充電状態であり、
前記要求確率は、充電要求確率であり、
前記ノード条件の関数として通信エポック中にエネルギーパケットを放電することを要求する確率を定義する放電要求確率関数を選択するステップと、
選択した前記放電要求確率関数と前記ノード条件に従って、通信エポックについての放電要求確率を決定するステップと、
前記放電要求確率に基づいて放電要求を送信するステップと、
をさらに備える、
請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記充電状態が充電閾値C
threshへと減少するにつれて、前記充電要求確率は、1に近づき、前記充電状態が放電閾値D
threshへと増加するにつれて、前記放電要求確率は1に近づき、C
thresh<D
threshである、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ノードが、同じ通信エポックにおいて充電要求および放電要求を送信することを決定する場合、充電要求も放電要求も送信されない、
請求項22に記載の方法。
【請求項25】
複数の要求確率関数から前記要求確率関数を選択するステップをさらに備える、
請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記要求確率関数を選択する前記ステップは、エネルギーパケットの前要求が許可されたか拒否されたかに従って前記要求確率関数を選択することを含む、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ノードは、複数の確率状態を含み、
少なくとも1の前記確率状態は、前記要求確率関数を含み、前記ノードが同じ前記確率状態である間に前記ノード条件に従って前記ノードの要求確率を調整し、
前記複数の確率状態から通信エポックの現在の確率状態を決定するステップをさらに備え、
要求確率関数を呼び出す前記ステップは、決定された前記現在の確率状態についての前記要求確率関数を呼び出すことを含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項28】
エネルギーパケットの要求に対する前記コーディネーターの応答に従って前記複数の確率状態の間を遷移するステップをさらに備える、
請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する声明
本発明は、米国科学財団によって付与された契約番号ECCS-1254549およびエネルギー省によって付与された契約番号DE-AR0001289-1509の下で政府支援されてなされたものである。
政府は本発明に対して一定の権利を有する。
関連出願への相互参照
【0002】
本出願は、2016年9月21日に出願された米国仮特許出願第62/397,393号に係る優先権を主張する。この出願には、参照によりその開示内容の全てが組み込まれる。
開示の分野
【0003】
本開示は、分散型エネルギーリソースの管理に関する。
【背景技術】
【0004】
高速ランプ昇圧発電機により、長い間、電力システムのための信頼性のある運転準備が実現されてきた。
しかしながら、再生可能エネルギーの比率が高い電力システムでは、この運用パラダイムの妥当性が疑問視されている。
再生可能エネルギーの比率が高い場合、風力発電や太陽光発電の変動に対処するための現在のアプローチでは、オンラインでより高速にランプ昇圧する従来型の発電機を用意する必要がある。
しかしながら、そのようにすると、より多くの発電機がアイドリングし、燃料を燃やし、そして有害な大気排出物を増加させることにつながり、これらはすべて「グリーン」エネルギーの未来の目標に反するものである。
したがって、運転準備を行うためにそのような技術を使用することを止めて、例えば、プラグイン電気自動車(PEV:plug-in electric vehicles)、サーモスタット制御負荷(TCLs:thermostatically-controlled loads)、分散型エネルギー貯蔵システム(DESS)、および、消費者レベルでの分散型発電のような柔軟に制御できる正味負荷エネルギーリソースについての積極的な役割を検討する必要がある。
【0005】
現在まで、需要側が関わることができたのは、ピーク時の需要を減らすために稀になされる要求に応答する負荷、開ループバイナリ制御、または、クリティカルピークプライシングのような間接的な金銭的インセンティブに大きく制限されてきた。
しかし、これらの方法では、分散型エネルギー資産の完全な柔軟性が発揮されるわけではなく、ローカルの消費者の制約を無視し、および/または、実行するために消費者からの些細ではない努力が必要となる。
したがって、最近の研究では、価格設定および制御信号を介した柔軟な分散型エネルギーリソース(DER)の自律的調整のためのフィードバックアルゴリズムの開発、上記ループから人間の消費者を効果的に取り出すこと、および、本当に反応性のよいグリッドを可能にすることに焦点を当てている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高度に分散された正味負荷リソースのための調整戦略は、一般に、2つの形態、すなわち、(1)設備中心型または(2)消費者中心型のうちの1つの形態をとる。
前者において、設備は、例えば、グリッドへの消費者のアクセスを遅延させるように設計された平均場戦略を用いて、「谷埋め」のようなシステム目標を満たすために利用可能なグリッド容量の使用を最小限にする。このようなことは、サービスの消費者品質(QoS)の観点から受容しがたい可能性がある。
消費者中心型のアプローチは、一般に、反復法(例えば、双対上昇法(デュアルアセント)、乗数法)またはコンセンサスアルゴリズムを介して導出される非集中型最適制御アルゴリズムに依存しており、どちらも、柔軟な正味負荷の大規模なセットのせいで収束が遅い(すなわち、時間ステップ当たり数十回の反復が必要である)。
収束速度は、QoSに影響を与える主要な問題において実行が不可能になってしまう原因となりうる(例えば、PEVが所望のレベルまで充電されない、あるいは、TCLが、指定のローカルのデッドゾーンの限界を超えてしまう)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、パケット化エネルギー管理(PEM)として知られている、分散型エネルギーリソースと、特に、(1)サーモスタット制御負荷(例えば、温水器、エアコンなど);(2)非サーモスタット条件付き制御負荷(例えば、電池、圧縮機など);(3)双方向分散型エネルギー貯蔵システム(例えば、バッテリー等)とについての需要応答に対する分散型の匿名のアプローチを提供する。
現在開示されているPEMアプローチの第1の態様において、各DERは、独立に、一定時間(すなわち、制御エポックの期間)スイッチをオンにする権限を要求する。
総合負荷を減少させる必要がある場合、これらの負荷要求は拒否されるという意味で、負荷は(厳密に制御されるのとは対照的に)管理される。
第2の態様では、DESSなどの双方向DERは、さらに、一定時間グリッドにエネルギーを戻すように要求することができる。
【0008】
本開示では、文献で提案されているトップダウンアプローチではなく、新規な分散型ボトムアップ制御アプローチを紹介する。
プライバシー、集中(コンバージェンス)、および、QoSの問題を克服し、再生可能エネルギーの大規模な普及を可能にするために、開示されたPEM負荷調整フレームワークは、DERの総消費電力を規制する。
具体的には、DERへの、または、DERからのエネルギーの送達(分配)は、複数の「エネルギーパケット」または「パケット化エネルギー」を使用して達成される。
本方法の装置ベースの(または、ボトムアップの)ランダム化の態様により、各負荷に対して統計的に同一のグリッドアクセスを提供することに関して特定の「公平性」特性が実現される。
【0009】
従来の技術および他の既存の技術とは対照的に、PEMは、調整層と負荷層との間で必要な情報を低減させる。すなわち、コーディネーターは、匿名で非同期の確率的に生成された、負荷からのアクセス要求と、所望の参照からの合計出力偏差のリアルタイム測定のみを必要とする。
PEMの非同期性により、通信と制御のために別々に定義された時間インターバルが可能になる。
さらに、ローカル制御層でオプトアウト制御機能を有する確率的オートマトンを使用することにより、ローカル状態変数に基づいて負荷要求にランダム化が注入される。これにより、同期を防ぎ、消費者QoSを保証し、グリッドへの公平なアクセスを促進する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の性質および目的をより完全に理解するために、添付の図面と共に以下の詳細な説明を参照すべきである。
【
図1】
図1は、DER調整スキームを示している。 複数の分散エネルギーリソース(DERs)は、集約されて仮想発電所(VPP)を形成する。 分散エネルギーリソースは、電力を供給する電力線を介して設備と物理的に接続されている。 分散エネルギーリソースは、コーディネーターを介した仮想接続を用いて管理される。 コーディネーターは、設備または他のソースからの情報(例えば、入手可能/予測される供給、価格設定信号など)を使用して、分散エネルギーソースが動作し得るかどうかを判断する。
【
図2】
図2は、パケット化エネルギー管理(PEM)の例示的な実施形態によって管理される温水器を示している。 左図は一連のイベントを示している。 時刻taにおいて、グリッドリソースが制約されていない場合、負荷は、エネルギーを確率的に要求するか(R)、あるいは、要求しない(N)。 tbにおいて、システムは、制約のある供給の期間に近づく。そしてその期間において、システムコーディネータは、要求をほとんど拒否し(D)、エポック長を短くする。 その結果、オートマトンは、より低い確率状態(例えば、P
1→P
2)に遷移する。 tcにおいて、温度がQoS限界値に達し、負荷が、パケット化エネルギー管理(PEM)がなされている状態から脱し(X)、温度をQoS許容範囲内となるように急速に回復しようとしている。そして、それは、tdで起きる(tdで達成されている)。 右図は、ローカル温度状態に対する応答に基づいて、要求確率(P
i(T))とエポック長を変化させるステートマシンを示している。 オートマトンには、状態遷移/生成要求間のエポック長も埋め込まれている。
【
図3】
図3は、PEMを実現するための例示的なサイバー物理インフラの図である。
【
図4】
図4は、ローカル温度が、PEMの下での3状態TCLの確率的アクセス要求率(太字)および平均要求時間(破線)に与える影響を示すグラフである。 グラフで示す目的のためだけに、平均所要時間は40分に切り詰められている。
【
図5】
図5は、グリッドオペレーターにより入力される基準r(t)、および、VPPによって測定された集約パケット化TCL出力応答y(t)とともに、PEM用の閉ループフィードバックシステムを示す図である。 基準r(t)は、電圧読み取り値、利用可能な供給信号、エネルギー価格設定情報などであり得る。
【
図6】
図6の上部は、DESSの動的状態(例えば、蓄電池システムにおける充電状態)の関数としての「充電」および「放電」オートマトンの要求確率曲線を示している。 本発明の実施形態の下では、充電および放電オートマトンの両方が要求を生成するか、または、要求を生成しないとき、「アイドル」または「待機」状態の確率曲線が自然な帰結となる。 オートマトンのうちの1つが要求になった場合にのみ、要求(リクエスト)は、VPPコーディネーターに転送される。
図6の下図は、DESSの動的状態(例えば、蓄電池システムの充電状態)の関数としての「充電」および「放電」オートマトンについての平均要求時間曲線を示している。
【
図7】
図7は、充電しきい値および放電しきい値(それぞれ、C
threshおよびD
thresh)に依存する状態フロー図である。
【
図8】
図8は、シミュレーションにおける外部可変負荷を示している。
【
図9】
図9は、
図8のシミュレーションについての60%ベース+40%DESSによる一定供給を示している。
【
図10】
図10は、
図8のシミュレーションについての経時的な1000個のエージェント当たりの充電状態(SOC)を示している。
【
図11】
図11は、
図8のシミュレーションについての公平性測定基準(SOCの平均および標準偏差)を示している。
【
図12】
図12は、
図8のシミュレーションにおける各エポックでのトランザクションを示している。
【
図13】
図13は、
図8のシミュレーションについての購入、売却、および、保有についての時間に対する統計である。
【
図14】
図14は、3種類の負荷タイプで構成される、8時間(480分)にわたるVPPの独立して管理された挙動を示すグラフである。当該3種類の負荷は、1000台の電気温水器、250台の電気自動車充電器、および、250台の蓄電池システムである。 VPPによって追跡される信号は160分でオンになる。 パケット化されたエネルギー管理アプローチを使用して負荷が管理されているので、VPP応答は信号をうまく追跡するように示されている。
【
図15】
図15は、異なる組のDERを用いてマルチモード基準信号を追跡している2つのVPPを示している。 多様なVPP(1000個のTCL、250個のPEV、および、250個のESSバッテリーを備えるVPP)は、すべてのDERタイプ間でQOSを維持しながらバッテリーの双方向機能を活用することで、1000個TCLのみを備えるVPPの性能を大幅に上回る。 TCLのみのVPPは、exit-ONの状態に入り、PEMから脱するTCLが多数あるため、追跡することができない。
【
図16B】
図16Bは、
図15の均一ネットワークの1500個の電気温水器に対するパケット化効果を示す図である。
【
図17】
図17は、本開示の別の実施形態によるシステムの図であり、本開示による3つのノードを含んでいる。
【
図18】
図18は、本開示の別の実施形態によるチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の第1の態様では、分散型エネルギーリソース(DER)のための匿名、非同期の、ランダム化ボトムアップ制御方式が提示される。そして、当該方式は、以下のものを含む。
(1)不完全な情報および消費者のQoS制約下でほぼ最適な追跡性能を提供するDERを管理するための新規のパケット化エネルギー管理(PEM)制御方式。
(2)シミュレーションに基づく分析を用いる本開示のPEMパラダイムの性能の説明。
当該分析では、電力系統における高度に分散されたボトムアップ負荷調整のための新しいフレームワークを示す。
【0012】
図1のシステムは、PEMを実現するために使用してもよい電力システムの一実施形態におけるサイバー物理的な相互作用を示している。
グリッドオペレーター(例えば、設備)、コーディネーター(例えば、DER管理プラットフォームまたは仮想発電所)、および、パケット化された負荷(例えば、WiFi対応ゲートウェイを介する)の機能は別々に説明される。
開示されたボトムアップアプローチのために、パケット化された負荷の概念を最初に説明する。
A.パケット負荷
【0013】
PEMは、プラグイン電気自動車(PEV)の協調充電のために以前に提案されている(参照により本願に組み込まれる、米国特許出願公開第2015/038936 A1号を参照)。
この以前の研究では、PEVは、確率的オートマトンにおけるPEVの状態に応じて特定の確率で充電する権限を非同期に要求する。
例えば、スリーステート有限状態機械について、状態iからグリッドに対してアクセスを要求する確率をPiとすると、P1>P2>P3である。
グリッドに容量がある場合、PEVは、制御エポックと呼ばれる固定期間(例えば、15分)の間だけ充電する権限を付与され、Pi→Pi-1の状態遷移が起こる。これにより、平均要求時間が短縮される。
一方、PEVに対して充電する権限が付与されていない場合、平均要求時間は、Pi→Pi+1の遷移とともに増加する。
【0014】
本開示は、ローカルに感知された条件に基づいてその動作(要求確率を含む)が変化する負荷とともに使用されるPEM技術を提供する。
例えば、以下の本開示のいくつかの実施形態では、その要求のランダム化を促進するためにTCLのローカル温度を使用することにより、サーモスタット制御負荷(TCL)を管理することができる。
他の例では、圧力は、圧縮機動作に使用されてもよく、電圧および充電状態は、蓄電池システム等に使用されてもよい。なお、TCLに関する例示的な実施形態は、本開示を説明するために提供されるものであるが、明示的な制限はなく、本開示の範囲はTCLに限定されるべきではない。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示は、通信エポック中にコーディネーター90から電力を要求するためのノード10として具現化されてもよい。
ノード10は、コーディネーター90と通信するためのコーディネーターインターフェース12を備える。
コーディネーターインターフェース12は、無線通信用、有線通信用、または、無線と有線の組み合わせたもの用に構成されてもよい。
いくつかの実施形態において、例えば、コーディネーターインターフェースは、コーディネーターとの電力線通信のために構成される。すなわち、電力線を介して送信/受信される通信プロトコルを使用するように構成される。
通信エポックは、ノードによって行われた要求(リクエスト)の間の時間の長さである。
いくつかの実施形態では、通信エポックは、固定されており、かつ、予め決められている。
他の実施形態では、通信エポックは可変であってもよい。
例えば、いくつかの実施形態において、通信エポックは、コーディネーターから1つ以上のノードに送信される。
そのような実施形態において、ノード10は、コーディネーターから通信エポックパラメータを受信し、ノードによってなされた要求(リクエスト)の間の時間の長さを決定するように構成されてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、ノード10は、対応するDERと同じ場所に配置される物理的な装置である。
例えば、ノードは、温水器の近くにある(または、温水器に組み込まれている、例えば、温水器の一部を構成している)装置であってもよい。
他の実施形態では、ノードは、ソフトウェア(「ソフトウェアエージェント」)で実装される。
例えば、ノードは、クラウド内に実装され、DERを遠隔管理するものであってもよい。
【0017】
ノード10は、ノード(i)の状態を記録するための状態レジスタ14を有する。
例えば、ノードは、第1の要求確率(P1)を有する第1の状態、または、第2の状態要求確率(P2)を有する第2の状態であってもよい。
ノードは、より多くの状態、例えば、第3の要求確率(P3)を有する第3の状態(または、3つより多い状態)を有するものであってもよい。
ノード10は、また、ノード条件(T)を有する。
ノード条件は、例えば、温度、圧力、回転速度、充電状態、時間のデッドライン、または、他の任意の条件であってもよい。
ノードは、例えば、温度や充電状態など、複数の条件を有するものであってもよい。
ノードは、対応するノード条件を測定するために1つ以上のセンサ16を含むものであってもよい。
例えば、ノードは、温度を測定するための温度センサを含んでいてもよい。例えば、温水加熱器ノードは、タンク内に貯蔵された温水の温度を測定するためのセンサを含んでいてもよい。
【0018】
ノード10は、ノードレジスタ14からノード状態を取得するように構成されている。
例えば、いくつかの実施形態において、ノードは、プロセッサを含んでいてもよく、ノードレジスタは、コンピュータメモリに実装されてもよい。
そのような実施形態において、プロセッサは、ノードレジスタからノード状態を取得するようにプログラムされていてもよい。
以下でさらに論じるように、要求確率Pi(T)がエポックについて決定される。
要求確率は、例えば、通信エポック中に要求(リクエスト)が送信される確率であってもよい。
より具体的な例において、要求確率は、エネルギーパケットの要求(充電要求)がコーディネーターに送信されることになる充電要求確率である。
要求確率は、取得されたノード状態およびノード条件に対応する(さらに後述する)。
【0019】
いくつかの実施形態において、条件Tが下限しきい値Tlowに近づくと、要求確率は1に近づき、Tが上限しきい値Thighに近づくと、要求確率は0に近づく。
ノードは、TがTlowに達したときに、エネルギーパケットを要求することを止めるように構成されてもよい。
他の実施形態において、TがThighに近づくと、要求確率は1に近づき、TがTlowに近づくと、要求確率は0に近づく。
ノードは、TがThighに達すると、エネルギーパケットを要求することを止めるように構成されてもよい。
【0020】
ノード10は、さらに、要求に対する応答を受信するように構成されてもよい。
例えば、いくつかの実施形態において、ノードは、コーディネーターからエネルギーパケットの要求の承認を受信する。
そして、ノードは、その応答に基づいて状態レジスタに記録されているノード状態を変更してもよい。
例えば、承認された要求に基づいて、ノードの状態は、第1の状態から第2の状態に変化してもよい。
別の例では、ノード状態は、第2の状態から第1の状態に変化してもよい。
3つ以上の状態を有するノードについて他のケースが存在し、それらのケースは、本開示に照らして明らかであろう。
ノード10は、さらに、受信した応答に基づいて、電力にアクセスするよう構成されてもよい。
例えば、要求されたエネルギーパケットの承認に基づいて、ノードは、パケット持続時間(所定の時間長)にわたって電力にアクセスしてもよい。
【0021】
別の実施形態において、本開示は、通信エポック中に電力を要求するための方法100として具現化されてもよい。
方法100は、第1の要求確率を有する第1の状態、または、第2の要求確率を有する第2の状態としてノード状態を決定するステップ103を含む。
エポックに対する充電要求確率が決定される(ステップ106)。
ステップ106で決定された充電要求確率は、(両方とも上述したように、そして、さらに後述されるように)ステップ103で取得されたノード状態およびノード条件に対応する。
ステップ106で決定された充電要求確率に基づいて、充電要求が送信される(ステップ109)。
【0022】
いくつかの実施形態において、方法100は、DESSであるノード上で実行されてもよい。
そのため、方法100は、ノード条件として充電状態を使用してもよい。
方法100は、第1の放電確率を有する第1の放電状態、または、第2の放電確率を有する第2の放電状態として、放電ノード状態を決定するステップ112をさらに含んでもよい。
エポックについて、ステップ112で取得された放電ノード状態およびノード条件に対応する放電要求確率が決定される(ステップ115)。
放電要求は、放電要求確率に基づいて送信される(ステップ118)。
いくつかの実施形態において、充電状態が充電閾値Cthreshへと減少するにつれて、充電要求確率は1に近づき、充電状態が放電閾値Dthreshへと増加するにつれて、放電要求確率は1に近づく。ここで、Cthresh<Dthreshである。
いくつかの実施形態において、要求確率および放電要求確率により、充電要求および放電要求の両方が送信されてしまう場合、充電要求も放電要求も送信されない。
1)伝統的なTCLの制御
【0023】
既存の伝統的なTCLの大多数は、バイナリ(ON/OFF)方式で動作し、単純ステートマシンによって制御される。たとえば、温度しきい値に基づいて状態を変化させるサーモスタットがこの例である。
局所的には、n番目のTCLは、所望の条件(すなわち、温度)、T
n
setを設定値とすると、温度不感帯内がT
n
set±T
n
set,DB/2、を維持するように制御される。これにより、下記のローカルの離散時間制御ロジックに従う、標準のTCLのヒステリシス温度応答を実現できる。
【数1】
【0024】
上記の完全分散型制御ロジックのもとでの総合的な応答は、本明細書において「制御なし」の場合という。
提案されたPEMスキームは、コーディネーターと相互作用する、より高度なもの(すなわち、ファームウェアアップグレードの同等物)を有する既存の状態機械(ステートマシン)を置換することだけを要求する。
2)TCLへのPEMの適用
【0025】
図2(右図)は、加熱を目的としたPEM下のTCLオートマトン(例えば、電気炉または温水器)を示す図である。
TCLのローカル温度TがPEM動作の上限温度と下限温度との間の値であるとき、TCLの要求時間は、例えば、その平均が上限に対するTに対して逆比例する指数分布によって決定されてもよい。
つまり、下限しきい値に非常に近い温度のTCLは、ほぼ確実に要求を出し(つまり、P
i(T→T
low)≒1)、上限温度に近い温度のTCLは、低い確率で要求を出す(つまり、P
i(T→T
high)≒0)。
要求を送信し、グリッドに容量がある場合、TCLは、固定制御エポック長δ
tについてONにする権限を与えられる(すなわち、t∈(t
0,t
0+σ
t)について、Z
n(t)=1)。そして、P
i(T)→P
i-1(T)の状態遷移が起こる。
要求が拒否された場合、TCL有限状態機械は、より短い低い平均要求時間Pを有する状態に遷移する(すなわち、P
i(T)→P
i+1(T))が、温度依存の確率ですぐに要求を再開する。
アクセスが繰り返し拒否されると、TはT
lowに達し、それによってTCLがPEMスキームを終了し(すなわち、PEMスキームから脱し)、温度範囲が満たされることを保証する。
パケット温水器の例示的なオン/オフのサイクルを
図2(左)に示す。
なお、ノードが冷却ノード(すなわち、例えば、冷凍庫などのような冷却DERを管理するノード)である場合、図に示される例示的なサイクルは逆になることに留意されたい。
【0026】
TCLが、要求に対する「許可/拒否」応答を受信することに加えて、TCLはまた、更新された(グローバル)制御エポック長δtを受信してもよい。これによって、集合体中のより厳密な追跡が可能になり、ランピング中に有用である。
TCLがONの間は、TCLは、要求を出さない。
さらに、δt>Δtである。
【0027】
すべてのTCLがこのように動作するので、オンにする権限を許可または拒否するDERコーディネーターは、特定のTCLの知識/追跡を必要としない。
さらに、コーディネーターは、どのTCLが特定の要求をしているのかさえ追跡しない。
各TCLは、同じオートマトンロジックを実行し、オンにする能力はリアルタイムのシステム容量にのみ依存するため、同じ時点で要求を行ったTCLは、コーディネーターによって同じように扱われる。
このように、PEMアプローチは、顧客に対する公平性を確保しつつ、本質的にプライバシーを維持する。
PEMアプローチとその結果として得られるシステムは、調整されているTCLの種類や組み合わせには依存しない。
つまり、電気温水器とエアコンを同じシステムで管理することができる。
顧客のサービス品質は、デバイスの条件が不感帯から外れたときに、一時的にPEMを「オプトアウト」する(PEMの管理下から脱する)デバイス機能によって保証される。
3)PEMによる確率的要求率
【0028】
PEMの離散時間での実装において、オートマトン状態iにおけるローカル温度T
n[k]を有するTCL nが時間ステップkの間(インターバルΔtにわたって)グリッドへのアクセスを要求する確率は、下記の累積指数分布関数によって定義される。
【数2】
ここで、速度パラメータμ(T
n[k],i)>0は、ローカル温度および確率的オートマトン機械状態iに依存する。この依存は、下記の境界条件を考慮することにより確立される。
1.P
i(TCL nがkにてアクセスを要求する|T
n[k]≦T
i
min)=1
2.P
i(TCL nがkにてアクセスを要求する|T
n[k]≧T
i
max)=0
これにより、下記の通り、PEMの速度パラメータの自然な設計がなされる。
【数3】
ここで、M
i>0[1/sec]は、TCLのオートマトン状態iに依存し、平均所要時間を表す設計パラメータである。
なお、数式(2)は、例示的なものであり、他の関数(例えば線形)も使用できることに留意されたい。
【0029】
T
n
min:=T
n
set-T
n
set,DB、および、T
n
max:=T
n
set+T
n
set,DBについての対称的な定義を考慮すると、T
n[k]=T
n
setを有するTCL nについての平均要求時間は、1/M
i(秒単位)により記述され、これは、有限状態機械の設計のための有用なパラメータを表す。
図4は、スリーステートオートマトンに対するTCLの確率的要求レートを示している。ここで、P
1(T
n[k])>P
2(T
n[k])>P
3(T
n[k])が、それぞれ、太い青の線、太い赤の線、太い緑字の線により定義されている。
さらに、確率P
i(T
n[k])は、T
n[k]で微分可能である。
4)PEM下で保証される最低限のサービス品質
【0030】
PEM下でのTCLの確率論的性質により、外乱(例えば、大きな温水回収率)がT
n[k]をT
n
minよりも低く駆動することが完全に可能である。
したがって、本開示のいくつかの実施形態において、消費者へのサービス品質を最大にする(すなわち、冷たいシャワーを回避する)ために、PEM下のTCLは、一時的にPEMから出て(すなわち、オプトアウトして(脱して))、伝統的なTCL制御下で動作することができる(例えば、ONにして、ON状態のまま維持する)。
これは、
図2(左)のイベントtc、および、
図2(右)のON/OFFオートマトン状態で示されている。
すなわち、一旦PEM下のTCLが温度限界を超えると、伝統的な制御ロジックが一時的に採用され、PEM制御ロジックに復帰するとき(すなわち、TCLがPEMに戻るとき)、ローカル温度が、T
n
set,PEM<T
n
set,DBを満たすPEMの「回復限界」T
n
set±T
n
set,PEM内となるように制御される。
回復限界は、最小/最大限界にて、過度に脱出/再エントリが循環されることを避けるのに役立つ。
冷たいシャワーは望ましくないが、温水ヒーターを過熱することは、消費者にとって危険であり、温水器を損傷する可能性がある。
このように、PEM下のTCLは、T
n[k]>T
n
maxの場合には、決して作動しないように構成されてもよい。
B.PEMを使用したTCLの調整:仮想発電所(VPP)
【0031】
図3の例示的な実施形態に示されるように、消費者所有のゲートウェイ(例えば、ホームWiFi)は、パケット化された負荷とクラウドベースのDERコーディネーター、すなわち、仮想発電所(VPP)との間の双方向通信を可能にし得る。
VPPは、上流グリッドオペレーターからバランス調整コマンドを受け取り、柔軟なエネルギーリソースを調整し、バランス調整コマンドを追跡する。
提案されたPEM方式内において、VPPは、実際の総計出力y(t)と、基準信号r(t)間のリアルタイム出力誤差に基づいて、「Yes」または「No」の通知をともなうダウンストリーム負荷アクセス要求(すなわち、ping)に応答することで、バランス調整信号を追跡する。
e(t):=r(t)-y(t)
これを
図5に示す。
e(t)>0であれば、「Yes」。そうでない場合、「No」である。したがって、VPPは、次の入力と出力によって要約される。
入力:バランス基準信号。
出力:Yes/Noのアクセス通知。エポック長を制御する。
C.PEMによるグリッドレベルのサービスの提供
【0032】
送電(例えば、ISO New England)または配電設備システムオペレーター(例えば、
図3のDSO制御室)は、電圧、周波数、および、電力の流れ等のグリッドの状態を測定または推定することができる。
再生可能エネルギーの普及率が高いシナリオでは、グリッドオペレーターは、需要と供給のバランスを取ることがますます困難になるため、顧客の家や産業/商業施設にある柔軟なパケット化DERを活用しようとする。
これは、今日4~5秒ごとに送信される自動発電機制御(AGC)信号と同じように、ほぼリアルタイムでグリッド上のVPPへの個々のバランス要求を信号伝送することによって実現される。
したがって、グリッドオペレーターは、次の入力と出力によって要約される。
入力:グリッド状態と正味負荷予測
出力:バランス要求信号
【0033】
要約すると、グリッドオペレーターから、グリッドまたは市場ベースのバランス信号を受信するVPPを介して、パケット化された負荷の匿名、公平、および非同期のpingを管理することによって、PEMは、本書類におけるTCLに適合されたボトムアップ分散制御方式を表す。
双方向リソースの制御
【0034】
本開示の別の態様では、DESSの双方向制御は、2つの異なる確率的オートマトンを使用して可能になる。
DESSのような双方向リソースは、VPPが(放電を介して)ランプダウンする能力を向上させる。
TCLは、停止するようにしか制御できないので(つまり、拒否することによってしか制御できないので)、それと同じ程度にしか制御することはできない。
・VPPは、TCLパケット要求を拒否する。 → ランプアップせず、応答遅延なしで、ランプダウンの速度を制御することはできない。
・VPPは、TCLパケット要求を受信する。 → ランプアップして、すべての要求に「YES」と返答することでランプアップの速度を制御し(十分な要求が入ってくると仮定して)、それにより、受信の速度でランプアップの速度を制御する。
・VPPは、DESS放電要求を受信する → ランプダウンして、放電要求を受信する速度でランプダウンの速度を制御できる
・VPPは、DESS充電要求を受信する。 → ランプアップして、充電要求を受信する速度でランプアップの速度を制御できる。
【0035】
したがって、エネルギーを貯蔵することで、VPPのランプダウンする能力が向上する。
そのように、PEMは、実際には、より異種の負荷を用いた場合に改善される。つまり、多様な負荷のもとで顕著な効果を奏する。
以下の実施形態では、電池による蓄電について考察するが、本開示の範囲は電池による蓄電に限定されない。
本開示の実施形態において、例えば、機械的貯蔵(例えば、空気圧および油圧ポンプ貯蔵)、電気化学的貯蔵プロセス(例えば、電気分解/燃料電池動作)等、および、異なる貯蔵タイプの組み合わせのような他の貯蔵タイプが使用されるものであってもよい。
同様に、本開示において使用される文言は、便宜上、バッテリーストレージシステムの専門用語(例えば、「充電状態」)を使用しているが、本開示は、バッテリーストレージシステムのみを使用する実施形態に限定されるべきではない。
【0036】
第1のオートマトンは、DESSがグリッドからエネルギーパケットを要求する確率(すなわち、「充電」)を決定する。上記に開示されたPEM方法と同様である。
第2のオートマトンは、DESSがグリッドにエネルギーパケットを提供することを要求する確率(すなわち「放電」)を決定する。
これらの確率は、DESSの充電状態(SOC)によって決定される。
最小SOCを確実に維持するために、その値よりも小さくなったときに、第1のオートマトンが常にエネルギーパケットを要求する充電閾値(Cthresh)を設定することができる(すなわち、確率が「1」に設定される)。
同様に、過剰なDESSエネルギーをグリッドに売り戻すことを可能にするために、その値を超えると、第2のオートマトンの確率が「1」に設定される放電閾値(Dthresh)があってもよい。
2つのしきい値の間において、DESSは、各エポックで、充電、放電、または、待機(すなわち、要求なし)を要求することができる。
第1オートマトンと第2オートマトンは、独立して動作するので、同じエポックで充電要求と放電要求との両方が望まれる場合、DESSは待機する(すなわち、どちらの要求も送信されない)。
【0037】
いくつかの実施形態において、ノード10は、DESSであり(例えば、DESSを管理し)、ノード状態(T)は、DESSの充電状態であってもよい。
要求確率は、充電要求確率(すなわち、ノードが通信エポックにおいて充電を要求する確率)である。
ノード10は、さらに、エポックについての放電要求確率を決定するようにさらに構成されてもよい。
ノード条件(充電状態)が放電閾値(Dthresh)へと増加するにつれて、放電要求確率は1に近づくものであってもよい。
ノード条件が充電閾値(Cthresh)へと減少するにつれて、充電要求確率は、1に近づくものであってもよい。
充電閾値は、放電閾値よりも小さい(Cthresh<Dthresh)。
ノード10は、充電要求確率および充電状態条件(ノード状態)に基づいて、充電要求を生成するようにさらに構成され得る。
ノード10は、放電要求確率および充電状態条件に基づいて、放電要求を生成するようにさらに構成され得る。
いくつかの実施形態において、充電要求確率および放電要求確率が、充電要求および放電要求の両方を送信するようなものである場合、ノードは、充電要求も放電要求も送信しないように構成してもよい。
言い換えれば、充電要求確率と放電要求確率とが、充電要求と放電要求の両方を生成するものである場合、ノードは、充電要求も放電要求も生成しないように構成される。
【0038】
いくつかの実施形態において、ノード10は、DESS(例えば、DESSを管理する)であり、ノード状態は、DESSの充電状態である。
ノードは、エポックの充電要求確率を決定するように構成されてもよく、充電状態が充電閾値Cthreshへと減少するにつれて、充電要求確率は1に近づき、充電状態が放電閾値Dthresh(ここで、Cthresh<Dthresh)へと増加するにつれて、放電要求確率は1に近づく。
ノードは、さらに、充電状態条件に基づいて決定された確率(充電要求確率)で充電要求を生成し、充電状態に基づいて決定された異なる確率(放電要求確率)で放電要求を生成するように構成されてもよい。
充電オートマトンと放電オートマトンの両方が要求を生成するか、または、両方とも要求を生成しない場合、要求(リクエスト)は、コーディネーターに転送されない。
オートマトンの1つのみが要求を生成すると、その要求(充電または放電)は、コーディネーターに転送される。
【0039】
双方向の実施形態を説明するために、シミュレートされた6日間の時間フレームにおいて、1000個のDESSについて、シミュレーションが行われた。
6日間にわたって、システムは、
図8に示す「外部」の可変負荷を調査する。
なお、負荷がピークで1.0を超えていることに注意されたい。これは、DESSからのエネルギーがその負荷を満たすために必要になることを示している。
1、2、5、および6日の負荷プロファイルは、住宅データに基づいている。
3日と4日の負荷プロファイルは、人為的に低く設定されており、DESSを最大SOCまで引き上げるために過剰供給をどのように使用できるかを示している。
ベース外部供給量は、1.0負荷の60%で一定であると仮定されている(
図9参照)。
【0040】
1000個のDESSエージェントを、少なくともSOCの0.4倍が維持されるように構成された制御オートマトンと共に用いた(
図10を参照)。
これは、所望のサービス品質に関するエンドユーザー定義のパラメータである。
なお、この閾値は、任意に設定でき、すべてのエージェントにわたって同じである必要はない。
1000個のDESSのSOCは、シミュレーションの開始時において、(0から1の値に)ランダムに割り当てられた。
【0041】
図12に示すように、DESSエージェントは、各エポックにおいて、充電している(濃い灰色)、放電している(中間の灰色)、または、保持している(薄い灰色)。
購入/売却/保持の各合計は、
図13に示されており、それらの全合計は、エージェントの数(1000)に等しくなる。
【0042】
図9の変化している線は、各エポックにおける、DESSからシステムへの正味の供給量を示している。
これは外部負荷と厳密には一致しない。低いSOCのDES(すなわちエージェント)を充電するときに、追加の負荷があるためである。
【0043】
負荷のより大きな変動は(
図8)、DESSエージェントのSOCのより大きな変動、および、不均衡をもたらす(
図10および
図11)。
【0044】
オートマトンの動作を
図6および
図7に示す。
エージェントのSOCが最小値(C
thresh、この例では0.4)を下回っている場合、エージェントは、確率1で充電を要求し、放電を要求しない。
エージェントのSOCが最小値の0.4倍よりも大きい場合、確率1で充電を要求する。すなわち、SOCで充電を要求し、かつ、(独立して)確率SOCで放電を要求する。
両方の動作が「真」の場合、エージェントは「保持」する(すなわち、スタンバイ(どちらの要求も発行しない))。
この例では、放電閾値を、SOC=1.0に設定した。したがって、事実上その特徴は、無効である(機能しない)。
例示的なケーススタディ:同種の負荷および異種の負荷の両方で動作するVPP
この例では、PEMの下で単一のVPPがどのようにして多様な集団の異種DERを動作させることができるかを示している。
具体的には、以下のケーススタディにおいて、1500個の異種のパケット化TCLデバイス(1000個)、PEVデバイス(250個)、および、ESSデバイス(250個)をすべて単一のVPPで調整し、参照信号を追跡するとともに、同時に、(ローカルの)QoSの制約を満たす方法を示す。
各負荷タイプに対する制御不可能なバックグラウンド要求は、局所的な動的状態へのランダムな摂動を表す。
・TCL:家庭用電気温水器1000台の場合、制御不能な需要は、シャワーや洗濯機や食器洗い機の運転など、家庭での温水の使用を表す。
この数値例では、電気温水器のエネルギー使用パターンに関する文献に記載されている統計に基づいてモデルが開発された。
・PEV:250個のプラグイン電気自動車バッテリーの場合のバックグラウンド需要は、バッテリーを放電する運転パターンを表す。
PEVの旅行パターンは、ニューイングランドの旅行調査データから無作為に抽出されたもので、住宅の到着時間と出発時間、および、走行距離の確率モデルを提供する。
想定した、150マイルの電気走行距離と6.7マイル/kWhの電気走行効率とから、SOCの総削減量は、(充電するために)家に着いたときに計算される。
・ESS:250個の家庭用電池は、大手電池メーカーに典型的な大手電池メーカーの住宅用エネルギー貯蔵ユニットを代表する仕様に基づいていた。そして、250個の家庭用電池は、それぞれ、13.5kWhの電池容量、約95%の充放電効率(往復で92%)、および、5.0kWの最大(連続)電力定格を有する。
バッテリーの所有者は、どちらの方向にも1.5kWの最小消費電力で、ガウス分布のランダムウォークに基づいてバッテリーを確率的に充電または放電すると仮定した。
これは、住宅用太陽光発電の過剰もしくは不足、または、短期間の単独運転条件を表している場合がある。
N=1500の多様なDERデバイスは、パケット化され、8時間(16:00から24:00)にわたって、VPPは、負荷と相互作用し、18:40から24:00において、VPPは、ISOからのバランス信号を表す平均再帰ランダム信号を追跡する。
トラッキングは、前述のように、参照値と、集約されたVPPの電力の出力との間のリアルタイム誤差に基づいて、パケット要求を拒否または受け入れることによって実現される。
追跡誤差は、δ=5分のパケットエポックについて5%未満である。
図14は、VPPの追跡性能を示しており、QOS要件が満たされていることも示している。
2つのVPPについて検討する。1つは、1000個のTCL、250個のPEV、および、250個のESSバッテリ(つまり、多様なVPP)で構成され、もう1つは、1500個のTCL(つまり、TCLのみのVPP)で構成されている。
図15は、これら2つのVPPが、ステップ的な変化、周期的な変化、および、ランプ的な変化からなる信号を追跡する際に、どのように機能するかを示している。
多様なVPPがTCLのみのVPPを上回ることは明らかである。
実際、多様なVPPのトラッキングエラーの二乗平均平方根は、TCLのみのVPPよりも4倍小さい(54kW vs 220kW)。
さらに、両方のVPPのTCLは、温度設定値(すなわち、2.4℃と2.5℃(同様の標準偏差を有するものとする))からの平均絶対偏差がほぼ同じであるため、このパフォーマンスの向上は、QoSを犠牲にすることなく実現される。
多様なリソース群の価値をさらに説明するために、
図16Aおよび16Bに、それぞれのVPP内の各デバイスのオン/オフ状態を示す。
VPPを注意深く比較すると、TCLのみのVPPでは、基準信号の低い部分を追跡できないことが分かる。これは、
図16Aおよび
図16BのTCLのみのVPPに関する非常に長い連続ON期間によって表されているように、多くのTCLがオプトアウトするためである(すなわち、脱ON状態への移行するためである)。
すなわち、分散型エネルギーリソースの多様性は、追跡能力を向上させるだけでなく、消費者に提供されるQoSも向上させる。
【0045】
本開示を1つまたは複数の特定の実施形態に関して説明してきたが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく本開示の他の実施形態を実現できることが理解されるであろう。
したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲、および、その合理的な解釈によってのみ限定されると考えられる。