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特許7153941電源ユニット、移動式電源設備及び電力供給方法
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  • 特許-電源ユニット、移動式電源設備及び電力供給方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】電源ユニット、移動式電源設備及び電力供給方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04302 20160101AFI20221007BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20221007BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20221007BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20221007BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20221007BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20221007BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20221007BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20221007BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221007BHJP
【FI】
H01M8/04302
B60P3/00 U
C01B3/38
H01M8/04 Z
H01M8/04225
H01M8/04701
H01M8/04858
H01M8/0612
H01M8/10 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020098098
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021190404
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-05-26
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】520199484
【氏名又は名称】三矢 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】三矢 昌俊
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-315802(JP,A)
【文献】特開2009-199787(JP,A)
【文献】特開平03-284104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0190053(US,A1)
【文献】特開2004-178962(JP,A)
【文献】特開2003-164063(JP,A)
【文献】特開2016-192282(JP,A)
【文献】特開2007-258061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04- 8/0668
C01B 3/00- 6/34
B60P 3/00- 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池部と、蓄電池部と、前記蓄電池部から供給される電力によって前記燃料電池部の改質部を昇温するヒータと、を含む電源ユニットと、
前記電源ユニットが載置される荷台を備えた車両と、
を有する 移動式電源設備を用いて電力の供給を行う電力供給方法であって、
電力必要地域に向かって前記車両を走行させる走行時間中に、前記ヒータを用いて前記改質部を昇温することを特徴とする電力供給方法。
【請求項2】
前記移動式電源設備は、前記荷台と前記電源ユニットとの間に配設される緩衝体を有することを特徴とする請求項1に記載の電力供給方法。
【請求項3】
前記改質部が目標温度に到達して前記燃料電池部による発電が可能となった後に、前記燃料電池部で発電された電力を、前記電力必要地域に供給する主用途と、前記蓄電池を充電する副用途とに用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ユニット、移動式電源設備及び電力供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、台風、大雨などの自然災害によって、電柱が倒壊したり、電源設備が浸水する等災害地域の電源インフラが一時的にダウンするケースが発生している。電源インフラがダウンしたとき、ディーゼル発電機、ガソリン発電機等の化石燃料を動力源とする発電機を使って電力を補う方法が知られている。しかしながら、軽油やガソリンは、危険物に相当し、容器の容量、販売、運搬、貯蔵等種々の点で制約があるため、災害が長期化したときに、燃料不足により電力を供給できなくなるおそれがある。また、ディーゼル発電機等の化石燃料を必要とする発電機には、発電時にNO等の有害な排気ガスが発生したり、発電時の騒音が大きい等の問題がある。
【0003】
ここで、クリーンなエネルギ源として、水素と酸素との電気化学反応により電力を生成する燃料電池が知られている。燃料電池には、改質器が設けられており、この改質器は改質触媒の作用により約300℃以上の温度で水蒸気(メタノールと水の混合液を気化した水蒸気)を改質する処理を行い、水素を発生させる。水蒸気の改質処理を行うためには、改質器を昇温する必要があるとところ、従来は電線などの固定電源インフラから引き回した電力を用いて、改質器を昇温していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-2508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電源インフラがダウンした災害地域では、そもそも電線から電力を引き回すことができないため、改質器の昇温が困難である。また、山奥等ではそもそも電線などのインフラが整備されていない場合もあるため、改質器を昇温することができない。ディーゼル発電機を用いて改質器を昇温する方法も考えられるが、ディーゼル発電機には上述した種々の問題がある。
【0006】
また、改質器の昇温には少なくとも1時間以上の時間が必要となるため、災害地域で燃料電池を早期に活用できないという課題がある。すなわち、燃料電池を災害地域に移動させた後1時間以上の時間をかけて昇温する必要があるため、早期に電力供給できないといった問題が懸念されていた。
【0007】
ここで、特許文献1には、改質器に抵抗加熱式のシースヒータを配置する技術が開示されているが、シースヒータに提供される電力は商用電源であるため、上述した課題を解決することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、ディーゼル発電機等の化石燃料を必要とする発電機を使用することなく、災害地域などに早期に電力供給し得る方法を構築することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本本発明に係る電源ユニットは、燃料電池部と、蓄電池部と、前記蓄電池部から供給される電力によって前記燃料電池部の改質部を昇温するヒータと、を含む。
【0010】
(2)上記(1)に記載の電源ユニットと、前記電源ユニットが載置される荷台を備えた車両と、を有する移動式電源設備。
【0011】
(3)前記荷台と前記電源ユニットとの間に配設される緩衝体を有する上記(2)に記載の移動式電源設備。
【0012】
(4)上記(2)及び(3)のうちいずれか一項に記載の移動式電源設備を用いて電力の供給を行う電力供給方法であって、電力必要地域に向かって前記車両を走行させる走行時間中に、前記ヒータを用いて前記改質部を昇温することを特徴とする電力供給方法。
【0013】
(5)前記改質部が目標温度に到達して前記燃料電池部による発電が可能となった後に、前記燃料電池部で発電された電力を、前記電力必要地域に供給する主用途と、前記蓄電池を充電する副用途とに用いることを特徴とする上記(4)に記載の電力供給方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ディーゼル発電機等の化石燃料を必要とする発電機を使用することなく、災害地域などに早期に電力供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】移動式電源設備の概略図である。
図2】電源ユニットのブロック図である。
図3】移動式電源設備の代表的使用例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、移動式電源設備の概略図である。同図を参照して、移動式電源設備100は、車両1と電源ユニット2を有する。車両1は、キャビンの車両後方側に開放式の荷台11が設けられたピックアップトラックである。ただし、本発明の車両は、ピックアップトラックに限定されるものではなく、電源ユニット2を載せる荷台を備えた他の車両であってもよい。車両1には、ガソリン自動車、電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド自動車等種々の車両を用いることができる。
【0017】
車両1は、電源ユニット2を目的地に向かって搬送する。目的地は、例えば、自然災害により電線などの固定電源設備がダウンした地域の他、屋外イベント(例えば、コンサート)の会場等平常時に電源設備が必要とされる他の施設も含まれる。
【0018】
図2を参照しながら、電源ユニット2について詳細に説明する。図2は、電源ユニット2のブロック図である。図1及び図2を参照して、電源ユニット2は、燃料電池部20及び蓄電池部30を有する。燃料電池部20は、タンク21、ポンプ22、改質部24、ヒータ25、燃料電池セルスタック26及びコントローラ27を含む。これらの要素は、図1に図示するように直方体状に形成された燃料電池ボックス20aの中に配設されている。
【0019】
タンク21には、水及びメタノールを含む混合液が貯留されている。混合液全体を100質量%としたとき、メタノールの濃度は、例えば、55質量%に設定することができる。タンク21と改質部24との間には、ポンプ22が配設されている。このポンプ22を作動させることにより、タンク21に貯留された混合液を改質部24に向かって送液することができる。なお、本実施形態では、水及びメタノールの混合液をタンク21に貯留したが、本発明はこれに限るものではなく、水及びメタノールの貯留タンクを夫々別に準備し、これらの貯留タンクから送液された水及びメタノールを管路内で混合してから、改質部24に送液する方法であってもよい。
【0020】
改質部24では、メタノール及び水の混合液を加熱,気化するとともに、この気化した混合気体を改質触媒と接触させることにより水蒸気改質反応(CHOH+HO→CO+3H)を行わせ、水素を生成する。触媒には、Ni系の触媒、或いはRu系の触媒を用いることができる。
【0021】
ヒータ25は、改質部24に実装されている。ヒータ25には、例えば、抵抗加熱式のシースヒータを用いることができる。ヒータ25を作動させることにより、メタノール及び水の混合液の温度を速やかに目標温度に到達させることができる。ここで、目標温度は、好ましくは300℃以上であり、より好ましくは470℃以上である。ヒータ25に投下される電力は、蓄電池部30から供給されるが、詳細については後述する。
【0022】
燃料電池セルスタック26には、例えば、固体分子型燃料電池(以下、PEFCと記載する場合がある)セルを用いることができる。PEFCセルは、電解質を燃料極及び空気極によって挟み込むことにより構成されており、隣接するPEFCセルの間にはセパレータが配設されている。複数のPEFCセルを積層して互いに直列に接続することにより燃料電池セルスタック26を構成することができる。本実施形態では、燃料電池セルスタック26の個数を一つとしたが、本発明はこれに限るものではなく、複数であってもよい。
【0023】
燃料電池セルスタック26は、発電動作として、燃料極に送り込まれた水素を触媒によって水素イオン及び電子に分解するとともに、水素イオンを電解質を介して空気極に移動させ、電子を外部回路を介して空気極に移動させる。空気極に移動した水素イオンが、送り込まれた酸素及び電子と結合することにより、水が生成される。燃料電池セルスタック26の発電時に発生した水は、水排出部26aから排水される。
【0024】
コントローラ27は、燃料電池部20全体の制御を司り、具体的には、ポンプ22の作動を制御したり、ヒータ25の発熱モードを制御したり、燃料電池セルの空気極に向かって空気を送風するポンプ(不図示)の作動制御等を行う。ヒータ25の発熱モードには、改質部24を昇温させる昇温モードと、改質部24の保温を行う保温モードとが含まれており、コントローラ27は、改質部24が目標温度に到達すると昇温モードから保温モードにヒータ25の発熱モードを変更する。改質部24の温度は、温度センサ(例えば、サーミスタ)によって検出することができる。
【0025】
また、コントローラ27は、蓄電池部30から供給される電力を、ポンプ22、ヒータ25等に供給する制御を行う。なお、燃料電池セルスタック26とコントローラ27との間には、不図示のDC/DCコンバータが設けられており、コントローラ27はDC/DCコンバータにおいて電圧調整された電力を蓄電池部30等に供給する。
【0026】
なお、コントローラ27によって行われる指示の一部は、作業者が不図示の操作ボタンを操作することによって、開始される。
【0027】
蓄電池部30は、複数の二次電池を直列に接続した組電池によって構成されている。組電池は、図1に示すように直方体状に形成された蓄電池ボックス30aの中に配設されている。組電池の個数は1個であってもよいし、複数個であってもよい。複数個の組電池は、例えば、バスバーを用いて互いに接続することができる。二次電池は、充放電可能なバッテリであればよく、その種類は特に限定しない。例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、キャパシタ、鉛蓄電池を用いることができる。また、電池の形状は、角型であってもよいし、円筒型であってもよい。
【0028】
燃料電池部20はオス端子20bを有しており、蓄電池部30はメス端子30bを有しており、これらのオス端子20b及びメス端子30bを接続することにより、燃料電池部20及び蓄電池部30を電気的に接続することができる。なお、オス端子20b及びメス端子30bをそれぞれメス端子及びオス端子に変更してもよいことは、言うまでもない。
【0029】
蓄電池部30は、燃料電池部20から出力される電力によって充電することができる。ただし、商用電源、太陽光パネルなど他の電源を用いて充電することもできる。
【0030】
燃料電池ボックス20a及び蓄電池ボックス30aと、荷台11との間には、車両走行時の振動を軽減する緩衝体(不図示)を配設することができる。緩衝体の種類は特に限定しないが、例えば、高分子材料からなるエラストマー等の緩衝シートを用いることができる。また、スプリング、ダンパなどの緩衝機構を備えた緩衝体を用いることもできる。燃料電池ボックス20a及び蓄電池ボックス30aと、荷台11との間に緩衝体を介在させることにより、車両振動が燃料電池部20及び蓄電池部30に伝搬することを抑制できる。これにより、燃料電池部20及び蓄電池部30を振動から保護することができる。
【0031】
次に、図3のフローチャートを参照しながら、移動式電源設備100の代表的な使用例について説明する。なお、初期状態において、蓄電池部30は満充電状態にチャージされているものとする。ステップS101において、車両1の荷台11に燃料電池ボックス20a及び蓄電池ボックス30aを載せる。これらの作業は、複数の作業者が協働して行ってもよいし、クレーンやフォークリフトなどを使って機械的に行ってもよい。なお、上述した通り、燃料電池ボックス20a及び蓄電池ボックス30aと、荷台11との間に緩衝体を配設してもよい。
【0032】
ステップS102において、オス端子20b及びメス端子30bを接続して、燃料電池部20及び蓄電池部30を電気的に接続する。ステップS103において、操作ボタン(発熱開始ボタン)を操作することにより、ヒータ25に対して昇温モードによる発熱動作を指示する。これにより、改質部24の温度上昇が開始される。
【0033】
ステップS104において、車両1のイグニッションスイッチをオンして、車両1を電源インフラが失われた災害地域に向かって移動させる。このように車両走行を開始する直前にヒータ25の発熱動作を開始させることにより、災害地に到着するまでの時間を利用して改質部24の昇温処理を行うことができる。
【0034】
コントローラ27は、改質部24の温度を温度センサに基づき常時監視しており、改質部24の温度が目標温度に到達すると、ヒータ25の発熱モードを昇温モードから保温モードに切り替える(ステップS105)。ここで、目的地までの距離が長距離の場合には、車両1の走行中に改質部24の温度が目標温度に到達し、目的地までの距離が短距離の場合には、車両1が目的地に到達した後に改質部24の温度が目標温度に到達する。目標温度に到達したか否かは、例えば、燃料電池部20に設けられたランプ(不図示)を点灯させることにより、報知することができる。
【0035】
ステップS106において、燃料電池部20を災害地域の電源として用いるために、燃料電池部20による発電を開始する。具体的には、公民館などの避難施設の主電源に燃料電池部20を接続することによって、照明を発光させたり、エアコンを作動させること等ができる。また、災害地域にある通信施設に対して燃料電池部20で発電された電力を提供してもよい。
【0036】
燃料電池部20で発電された電力の一部を、蓄電池部30の充電に利用してもよい。充電された蓄電池部30は、災害地域の電源として用いることができる。これにより、燃料電池部20及び蓄電池部30からなる二つの電源を災害地域に提供することができる。
【0037】
本実施形態で使用される燃料電池部20は、メタノール型の燃料電池であり、化石燃料を必要とする発電機と比べて以下の利点を有する。
・化石燃料である軽油やガソリンの場合、保管容量が所定量未満に規制されているのに対して、メタノール型燃料電池では燃料(希釈メタノール)の保管容量に対する規制がない。したがって、災害が長期化した場合でも、電力供給を継続的に行うことができる。なお、希釈メタノールには、長期保管による劣化が小さいというメリットもある。
・ディーゼル発電機等の化石燃料を必要とする発電機では発電時にPM2.5、NO等の有害な排気ガスが発生する場合があるのに対して、メタノール型燃料電池では排気ガスがCOであるため、環境に与える影響が小さい。
・ディーゼル発電機等の化石燃料を必要とする発電機では発電時の動作音が非常に大きくなるのに対して、メタノール型燃料電池では発電時の動作音が非常に小さくなるため、発電に伴う騒音を軽減することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 車両
11 荷台
20 燃料電池部
21 タンク
22 ポンプ
24 改質部
25 ヒータ
26 燃料電池セルスタック
27 コントローラ
30 蓄電池部
100 移動式電源設備
図1
図2
図3