(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ステータユニットの製造方法及びステータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 3/52 20060101AFI20221007BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20221007BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
H02K3/52 E
H02K15/04 E
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2020159630
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 将志
(72)【発明者】
【氏名】大森 絵理
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-146299(JP,A)
【文献】特開2020-137312(JP,A)
【文献】中国実用新案第212114956(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/52
H02K 15/04
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコイルを覆うカバーの外周から第1の方向に突出した複数本の端子ピンに、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って延在する複数本のリード線の被覆部から露出した芯線を、それぞれ所定の長さにわたって沿わせて、はんだ付けする工程と、
筐体状の遮蔽体に備えた絶縁体を、隣接する前記端子ピンの間に挿入する工程と、
前記遮蔽体の内部空間の少なくとも一部を充填物で満たす工程と、を有する、
ことを特徴とするステータユニットの製造方法。
【請求項2】
前記絶縁体は、前記遮蔽体内部において、前記遮蔽体を前記カバーに組み付ける方向に沿って延在する、
ことを特徴とする請求項1に記載のステータユニットの製造方法。
【請求項3】
前記端子ピンの先端部と、前記リード線の被覆部から露出した芯線のうち少なくとも一方を折り曲げて互いに当接させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のステータユニットの製造方法。
【請求項4】
前記端子ピンのうち少なくとも2本の端子ピンを、短絡部材を介して短絡する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のステータユニットの製造方法。
【請求項5】
前記端子ピンのうち少なくとも2本の端子ピンを、前記リード線の芯線を介して短絡する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のステータユニットの製造方法。
【請求項6】
ステータコイルを覆うカバーの外周から第1の方向に突出した複数本の端子ピンと、
前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って延在する複数本のリード線と、
前記第1の方向及び前記第2の方向に沿って延在する板状の絶縁体を内部に備えた筐体状の遮蔽体と、を有し、
前記端子ピンの先端部と、前記リード線の被覆部から露出した芯線のうち少なくとも一方が折り曲げられ、所定の長さにわたって、はんだ付けされており、
前記絶縁体は、隣接する前記端子ピンの間に挿入されており、
前記遮蔽体の内部空間の少なくとも一部が充填物で満たされている、
ことを特徴とするステータユニット。
【請求項7】
前記端子ピンのうち少なくとも2本の端子ピンを短絡する短絡部材を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のステータユニット。
【請求項8】
前記端子ピンのうち少なくとも2本の端子ピンが、前記リード線の芯線を介して短絡する、
ことを特徴とする請求項6に記載のステータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータユニットの製造方法及びステータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、流体の配管系統の途中に配置し、流体の流路の開閉や流量制御を行う電動弁などを駆動するために、ボビンにコイルを巻回したステータユニットが用いられている。
【0003】
特許文献1には、コイルと導通接続されたピン端子と、リード線とが、リード線接続用配線基板を介して接続されたステータユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電動弁において、ピン端子とリード線との接続のためにリード線接続用配線基板を使用すると、はんだ付け箇所が多くなり、コストの増大やステータユニットの大型化を招くという問題がある。
【0006】
本発明は、コストを抑制するとともに、ステータユニットの小型化を図ることができるステータユニットの製造方法及びステータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるステータユニットの製造方法は、
ステータコイルを覆うカバーの外周から第1の方向に突出した複数本の端子ピンに、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って延在する複数本のリード線の被覆部から露出した芯線を、それぞれ所定の長さにわたって沿わせて、はんだ付けする工程と、
筐体状の遮蔽体に備えた絶縁体を、隣接する前記端子ピンの間に挿入する工程と、
前記遮蔽体の内部空間の少なくとも一部を充填物で満たす工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明にかかるステータユニットは、
ステータコイルを覆うカバーの外周から第1の方向に突出した複数本の端子ピンと、
前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って延在する複数本のリード線と、
前記第1の方向及び前記第2の方向に沿って延在する板状の絶縁体を内部に備えた筐体状の遮蔽体と、を有し、
前記端子ピンの先端部と、前記リード線の被覆部から露出した芯線のうち少なくとも一方が折り曲げられ、所定の長さにわたって、はんだ付けされており、
前記絶縁体は、隣接する前記端子ピンの間に挿入されており、
前記遮蔽体の内部空間の少なくとも一部が充填物で満たされている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コストを抑制するとともに、ステータユニットの小型化を図ることができるステータユニットの製造方法及びステータユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施の形態にかかるステータユニットを示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態にかかるステータユニットを底面視した図である。
【
図3】
図3は、
図1のA-A線における断面を平面視した図である。
【
図4】
図4は、
図3のB-B線における断面を側面視した図である。
【
図5】
図5は、ステータユニットの製造工程を説明するための図である。
【
図6】
図6は、ステータユニットの製造工程を説明するための図である。
【
図7】
図7は、ステータユニットの製造工程を説明するための図である。
【
図8】
図8は、ステータユニットの製造工程を説明するための図である。
【
図9】
図9は、ステータユニットの製造工程を説明するための図である。
【
図10】
図10は、ステータユニットの製造工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明のステータユニットは、例えば電動弁の駆動用として用いることができるが、用途はそれに限られない。
【0012】
(ステータユニットの構造)
図1は、ステータユニット10を示す縦断面図であり、
図2は、ステータユニット10を底面視した図であるが、充填用のエポキシ樹脂は省略している。ステータユニット10は、例えば自動車等の冷凍サイクル等における冷媒(流体)の流量制御を行う電動弁の駆動用として用いられる。ここで、ステータユニット10の上下方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する方向をY軸方向とし、Z軸方向及びY軸方向に直交する方向をX軸方向とする。
【0013】
ステータユニット10は、一対のボビン12とステータコイル13を囲うヨーク11を樹脂モールド部14によってモールドされている。樹脂モールド部14の外周の取り付け部14aに、筐体状である樹脂製の遮蔽体20が取り付けられている。また、樹脂モールド部14には、電動弁のキャンに装着されたときにキャンの上端部を覆う天井部14bが形成されている。
【0014】
遮蔽体20は、上壁21と、上壁21の三辺から
図1でZ軸方向下方に延在する側壁22とを連設してなる。このため、遮蔽体20は、樹脂モールド部14側(Y軸方向左側)の側壁と、底壁とを有しない形状である。遮蔽体20を取り付け部14aに取り付けることで、上壁21及び側壁22の側縁が取り付け部14aに当接し、それにより遮蔽体20は底側のみが開口することとなる。
【0015】
また、矩形板状である5枚のリブ23が、取り付け部14aに対向する側壁22及び上壁21の一部に連設されており、互いに平行にZ軸方向及びY軸方向に沿って延在している。リブ23が板状の絶縁体を構成する。
【0016】
図3は、
図1のA-A線における断面を平面視した図である。
図4は、
図3のB-B線における断面を側面視した図である。
【0017】
樹脂モールド部14(
図1)には、ステータコイル13に連結された6本の端子ピン15の一端側が埋設されている。端子ピン15の他端側は、Y軸方向に沿って取り付け部14aから遮蔽体20の内部へと突出している。各リブ23は、隣接する端子ピン15の間に非接触で配置されている。端子ピン15は角筒状の断面形状を有し、その先端部15aは
図1に示すようにZ軸方向上方に折り曲げられている。
【0018】
図3において、並び方向(X軸方向)において最も内側の2本の端子ピン15に対し、金属製の短絡部材16の両端が、先端部15a以外の位置に当接し、はんだ付けされている。短絡部材16は、短絡した2本の端子ピン15を同電位に維持するためのものである。
【0019】
図4において、リード線17は、樹脂製の被覆部17aと、被覆部17aに覆われる金属製の芯線17bとを有し、芯線17bの端部は被覆部17aが除去されて露出している。露出した芯線17bの端部が、折り曲げられた端子ピン15の先端部15aと所定距離にわたって接触し、はんだ付けされている。これにより高い接合強度を確保できる。リード線17は外部電源に接続され、ステータコイル13を励磁するために使用される。
【0020】
(ステータユニットの構造工程)
以下、ステータユニット10の製造工程について説明する。
図5~10は、ステータユニット10の製造工程を説明するための図である。
【0021】
まず、
図1を参照して、ボビン12、各端子ピン15を連結したステータコイル13、およびヨーク11を、不図示の型内に設置し、さらに型内に溶融した樹脂を注入して樹脂モールド部14を固化させることで、これらの部材を一体にする。このとき、
図5に示すように、ストレートの端子ピン15の端部が、取り付け部14aからY軸方向(第1の方向)に突出するようにして、樹脂モールド部14内に端子ピン15の一部を埋設する。さらに、短絡部材16を、2本の端子ピン15にはんだ付けする(
図5~10において不図示)。
【0022】
次に、
図6に示すように、端子ピン15の先端を、Z軸方向上方(第2の方向)に直角に折り曲げて先端部15aを形成する。なお、樹脂モールド部14を形成する前に、端子ピン15を折り曲げて先端部15aを形成してもよい。
【0023】
その後、
図7に示すように、端子ピン15に向かってZ軸方向下方から5本のリード線17を接近させ、露出した芯線17bをそれぞれ、端子ピン15の先端部15aに沿わせて、所定距離にわたってはんだ付けする。この動作は、ロボットにより行うことができる。一例として、不図示のロボットハンドでリード線17の芯線17bと先端部15aとを把持した状態で、上方より溶融したはんだを流して固化させることにより、はんだ付けを行うことができる。
【0024】
このとき、短絡部材16を接続した2本の端子ピン15の一方のみ、リード線17の芯線17bをはんだ付けする(
図4参照)。
【0025】
次に、
図8に示すように、取り付け部14aに向かって、Y軸方向右側より遮蔽体20を接近させる。ただし、取り付け部14aに向かって、Z軸方向上方より、又はY軸方向とZ軸方向とで形成される面に沿って遮蔽体20を接近させてもよい。
【0026】
このとき
図3に示すように、隣接するリード線17の被覆部17aの間にリブ23が挿入されることにより、リード線17の位置決めを行うことができる。また、隣接する端子ピン15の先端部15aの間にリブ23が挿入されることにより、後述するエポキシ樹脂の充填時に外力を受けた場合でも、端子ピン15同士の接触を阻止することができる。このため、リブ23は、少なくとも先端部15aよりも取り付け部14a側に位置すると好ましい。
【0027】
図9に示すように、遮蔽体20を取り付け部14aに溶着する。これにより、端子ピン15とリード線17を収容する遮蔽体20の内部は、上壁21によりZ軸方向上方側が遮蔽され、また側壁22によりX軸方向両側及びY方向右側が遮蔽された状態となる。なお、遮蔽体20と取り付け部14aとは接着剤などを介して接着してもよい。
【0028】
その後、
図10に示すように、ステータユニット10の天地を逆転させ、上方から遮蔽体20の内部に溶融したエポキシ樹脂RSを流し込み、内部空間の一部(または全部)を充填し(充填物としてのエポキシ樹脂RSで満たし)た後に固化させる。以上によりステータユニット10が完成する。なお、充填物としてウレタン樹脂を使用してもよい。
【0029】
本実施形態によれば、端子ピン15とリード線17とを、はんだ付けにより直接接続しているため、基板などを用いる必要がなく、はんだ付け箇所が少なくなるため、コストや接点不良を低減でき、ステータユニット10の小型化も図れる。また、遮蔽体20は、内部にリブ23を有するため、遮蔽体20を樹脂モールド部14に設置するのみで、端子ピン15同士の意図しない短絡を阻止できる。
【0030】
(変形例)
図11は、変形例にかかるステータユニット10Aの
図3と同様な図である。
図12は、変形例にかかるステータユニット10Aの
図4と同様な図である。
【0031】
変形例のステータユニット10Aは、別部品としての短絡部材を有していない。その代わりに、5本のリード線のうち1本のリード線17Aの露出した芯線17Abが、上記実施形態よりも長く形成され、リード線17Aと一体の短絡部材を構成している。それ以外の構成は、上述した実施の形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0032】
図12に示すように、芯線17Abは、被覆部17Aaに近い側の近端部17cと、被覆部17Aaから遠い側の遠端部17dと、近端部17cと遠端部17dとの間に形成された中間部17eとを有する。
【0033】
近端部17cは、一方の先端部15aに沿ってZ軸方向上方に向かって延在した後に、ヘアピン状に折り返して一方の先端部15aに沿ってZ軸方向下方に向かう形状を有する。遠端部17dは、他方の先端部15aに沿ってZ軸方向上方に向かって延在する。近端部17cが一方の先端部15aにはんだ付けされ、遠端部17dが他方の先端部15aにはんだ付けされる。
【0034】
中間部17eは、
図11に示すように、X軸方向とY軸方向とで形成される面に沿ってU字形状を描き、その端部を近端部17cと遠端部17dとに連結している。
【0035】
芯線17Abの中間部17eがU字形状を有しているため、遮蔽体20を設置する際に、隣接する端子ピン15の先端部15aの間に進入したリブ23との干渉を回避できる。
【0036】
(他の変形例)
図13は、他の変形例にかかるステータユニット10Bの
図10と同様な図であるが、天地を逆に示している。本変形例においては、端子ピン15Bがストレートである代わりに、リード線17Bの露出した芯線17Bbの端部が直角に折り曲げられて、端子ピン15Bに沿ってはんだ付けされている。それ以外の構成は、上述した実施の形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0037】
図14は、他の変形例にかかるステータユニット10Cの
図10と同様な図であるが、天地を逆に示している。本変形例においては、端子ピン15Cの先端部15CaがZ軸方向下方に折り曲げられ、リード線17の露出した芯線17bにはんだ付けされている。それ以外の構成は、上述した実施の形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0038】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上述の実施形態の任意の構成要素の変形が可能である。また、上述の実施形態において任意の構成要素の追加または省略が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10、10A、10B、10C ステータユニット
11 ヨーク
12 ボビン
13 ステータコイル
14 樹脂モールド部
15、15B、15C 端子ピン
16 短絡部材
17、17A、17B リード線
RS エポキシ樹脂