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特許7153972疼痛の予防、治療または緩和のための薬剤における化合物の使用
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  • 特許-疼痛の予防、治療または緩和のための薬剤における化合物の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】疼痛の予防、治療または緩和のための薬剤における化合物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/675 20060101AFI20221007BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20221007BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20221007BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221007BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
A61K31/675
A61P25/04
A61P29/02
A61P35/00
A61P43/00 123
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021500604
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 CN2019084604
(87)【国際公開番号】W WO2020010900
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】201810745871.4
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517319271
【氏名又は名称】アセンタウィッツ ファーマシューティカルズ リミテッド
【住所又は居所原語表記】Room 1003, 10th Floor, Building 10, Biomedical Innovation Industrial Park, No.14 Jinhui Road,Jinsha Community, Kengzi Street, Pingshan District,Shenzhen,Guangdong 518118,China
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】デュアン、ジャンーシン
(72)【発明者】
【氏名】リ、アンロン
(72)【発明者】
【氏名】モン、ファンイン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ドナルド ティー
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517710(JP,A)
【文献】特表2014-527994(JP,A)
【文献】特表2017-526721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 25/04
A61P 29/02
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物もしくはその薬学的に許容される塩、またはそれぞれの溶媒和物を含む、疼痛の予防、治療または緩和のための医薬品。
【化I】
式中、
10は、Oあり;
Aは、C-C10アリール5~15員ヘテロアリールまたは-N=CRであり;
は、C -C アルキルまたはCNであり;
は、C 6- 10 アリールであり;
各X、Y、およびZは、独立に、水素、CN、ハロまたは-Cアルキルあり;
Rは、水素または-Cアルキルあり
Tは、OP(O)(N(CH CH )) であり
アルキル基アリール基およびヘテロアリール基、置換されていてもよい。
【請求項2】
式Iの化合物が、下記化合物からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の医薬品。
【化I-01】
【化I-02】
【化I-03】
【化I-04】
【化I-05】
【化I-06】
【化I-07】
【化I-08】
【化I-09】
【化I-10】
【請求項3】
式Iの化合物が、
【化I-1】
である、請求項1または2に記載の医薬品。
【請求項4】
前記塩が、塩基性塩または酸性塩である、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項5】
前記溶媒和物が、水和物またはアルコール酸塩である、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項6】
前記疼痛が、がんや炎症によって引き起こされる疼痛である、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項7】
がんまたは炎症によって引き起こされる疼痛の予防、治療または緩和のための、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の医薬品を投与する工程と、
AKR1C3抗体を使用して患者のがん細胞のAKR1C3レダクターゼの含有量を測定する工程とを含み、
AKR1C3レダクターゼの含有量が所定の値以上であると測定されると、請求項1から17のいずれか一項に記載の医薬品を患者に投与する、がんまたは炎症によって引き起こされる疼痛の治療方法に使用する、1からのいずれか一項に記載の医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許出願PCT/US2016/021581号、特許出願PCT/US2016/025665号、および特許出願PCT/US2016/062114号に開示されている化合物の、疼痛の予防、治療または緩和のための医薬品の製造における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、実際の組織損傷または潜在的な組織損傷によって引き起こされる痛みを伴う感覚である。それは身体の防御反応であり、多くの疾患に共通の臨床症状である。
【0003】
疼痛の治療は医療において非常に重要である。伝統的な鎮痛薬には、主にオピオイドおよび非ステロイド性抗炎症薬が含まれる。オピオイドはアヘン(アヘンケシ)やin vitroおよびin vivoの誘導体から抽出されるアルカロイドで、特定の中枢受容体と相互作用することにより、疼痛を緩和し、強い鎮痛効果をもたらすことができる。それにもかかわらず、オピオイドの長期使用は容易に耐性、依存および嗜癖を引き起こし、呼吸抑制および中枢神経鎮静のような有害反応につながる可能性がある。現在、オピオイドは急性の鋭い痛みやがんによる激しい痛みに使用されている。非ステロイド性抗炎症薬は、ステロイド構造を含まない抗炎症薬の一種である。それらは、とりわけ、抗炎症、抗リウマチ、鎮痛、解熱、および抗凝固作用を有し、そして、変形性関節症、関節リウマチ、種々の発熱および種々の疼痛症状の緩和のために広く臨床的に使用されている。それにもかかわらず、このような薬剤は中等度の鎮痛作用しかなく、軽度および中等度の慢性鈍痛に適しているが、感覚終末の直接刺激によって生じる鋭い痛みには効果がない。また、消化管出血や心毒性などの副作用がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、当技術分野では、新しい鎮痛薬を開発する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本発明は、特許出願PCT/US2016/021581号(国際公開第2016/145092号)、特許出願PCT/US2016/025665号(国際公開第2016/161342号)、および特許出願PCT/US2016/062114号(国際公開第2017/087428号)に開示されている化合物またはその薬学的に許容される塩、または溶媒和物に基づいて、疼痛の予防、治療または緩和のための薬剤の製造におけるこれらの化合物またはその薬学的に許容される塩、または溶媒和物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0006】
特許出願PCT/US2016/021581号、PCT/US2016/025665号、およびPCT/US2016/062114号に開示された化合物は、腫瘍選択性の高い国際的にオリジナルの低分子標的治療薬として、様々な前臨床細胞および動物モデルにおいて優れた抗がん効果を示すことが証明された。これらの化合物は、アルド-ケトレダクターゼAKR1C3の特異的基質として、AKR1C3を過剰発現するがん細胞においてのみ迅速かつ効果的に還元され、それによって細胞毒素を放出し、高度に選択的ながん細胞殺傷効果をもたらすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
研究グループは、前記特許出願に開示された化合物は、アルド-ケトレダクターゼAKR1C3の特異的基質(以下、特異的基質という)として使用されるため、実際にはアルド-ケトレダクターゼAKR1C3の作用により特異的に活性化され、代謝されて細胞傷害性アルキル化剤を産生する抗がん性アルキル化剤プロドラッグであると考えている。AST-2870(前記PCT/US2016/021581号に開示された化合物TH-2870)を例に挙げる。
【0008】
【化1】
【0009】
明らかに、アルド-ケトレダクターゼAKR1C3は、特異的基質に結合する必要がある。
【0010】
研究文献(Samad T A, Moore K A, Sapirstein A, et al. Interleukin-1[beta]-mediated induction of Cox-2 in the CNS contributes to inflammatory pain hypersensitivity[J]. Nature, 2001, 410(6827):471-5.; Baojian Z, Yanbing Y, Gele A, et al. Tanshinone IIA Attenuates Diabetic Peripheral Neuropathic Pain in Experimental Rats via Inhibiting Inflammation[J]. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, 2018, 2018:1-8.; Lovering A, Ride J, Bunce C, et al. Crystal Structures of Prostaglandin D 11-Ketoreductase (AKR1C3) in Complex with the Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs Flufenamic Acid and Indomethacin[J]. Cancer Research, 2004, 64(5):1802-1810.; Matsuura K, Shiraishi H, Hara A, et al. Identification of a principal mRNA species for human 3alpha-hydroxysteroid dehydrogenase isoform (AKR1C3) that exhibits high prostaglandin D 11-ketoreductase activity.[J]. Journal of Biochemistry, 1998, 124(5):940-6)によると、アルド-ケトレダクターゼAKR1C3が、プロスタグランジンH2/D2からプロスタグランジンE2/F2への変換の生化学的経路において重要な触媒的役割を果たすことが知られている。
【0011】
【化2】
【0012】
本発明者らは、特異的基質がアルド-ケトレダクターゼAKR1C3に結合できるので、それはアルド-ケトレダクターゼAKR1C3の阻害剤になることができ、それによってプロスタグランジンE2/F2のレベルを低下させ、がんまたは炎症によって引き起こされる疼痛を予防、治療または緩和すると考えている。
【0013】
【化3】
【0014】
上記の仮定に関して、本発明者らは前記特異的基質、すなわち、過剰発現されたアルド-ケトレダクターゼAKR1C3を標的とするDNAアルキル化剤が、アルド-ケトレダクターゼAKR1C3の活性を阻害することができることを証明する実験を設計した。さらに、動物実験は、特異的基質が血中のプロスタグランジンE2/F2含有量を減少させることができることを証明した。従って、前記特異的基質は鎮痛作用を有することが判明した。
【0015】
前記化合物の鎮痛効果、特にがんまたは炎症によって引き起こされる疼痛を予防、治療または緩和するための医薬品の製造におけるその使用に関して、本発明は、以下の技術的解決策を提供する。
【0016】
一態様では、本明細書で提供されるのは、疼痛の予防、治療または緩和のための医薬品の製造における、式Iの化合物もしくはその薬学的に許容される塩、またはそれぞれの溶媒和物の使用である:
【化I】
式中、
10は、O、S、SOまたはSOであり;
Aは、C-C10アリールまたは置換アリール、5~15員ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリール、または-N=CRであり;
各RおよびRは、独立に、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C6-10アリール、4~15員複素環、5~15員ヘテロアリール、エーテル、-CONR1314、または-NR13COR14であり;
各X、Y、およびZは、独立に、水素、CN、ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、4~15員複素環、5~15員ヘテロアリール、エーテル、-CONR1314、または-NR13COR14であり;
Rは、水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、4~15員複素環、5~15員ヘテロアリール、エーテル、-CONR1314、または-NR13COR14であり;
各R13およびR14は、独立に、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、4~15員複素環、5~15員ヘテロアリール、またはエーテルであり、またはR13およびR14は、それらが結合している窒素原子と一緒に5~7員複素環基を形成し;
Tは、ホスホルアミデートアルキル化剤を含み;
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ヘテロアリール基、エーテル基は、置換されていてもよい。
【0017】
好ましくは、化合物は、式I-A:
【化I-A】

の化合物であり、
式中、残りの変数は前述のように定義される。
【0018】
あるいは、X10はSである。
【0019】
より好ましくは、前記化合物において、Tは、OP(Z)(NR30CHCH、OP(Z)(NR30 )(N(CHCH)、OP(Z)(N(CH、またはOP(Z)(N(CHCH(式中、各R30は、独立に、水素、もしくはC-Cアルキルもしくは2個のR30基であり、それらが結合している窒素原子と一緒に5~7員複素環基を形成し、Zは、OもしくはSであり、Xは、Cl、BrもしくはOMsもしくは別の脱離基である)である。
【0020】
さらに好ましくは、前記化合物において、Tは、OP(Z)(NHCHCHCl)、OP(Z)(NHCHCHBr)、OP(Z)(NH)(N(CHCH)、OP(Z)(N(CHまたはOP(Z)(N(CHCHCl)(式中、ZはOまたはSおよびXはCl、BrまたはOMsである)である。
【0021】
本発明の特定の実施形態によれば、前記化合物において、Zは、OまたはSである。
【0022】
本発明の特定の実施形態によれば、化合物において、Tは、OP(O)(N(CHCH))、OP(O)(NHCHCHCl)、OP(O)(NHCHCHBr)またはOP(O)(NH)(N(CHCHCl))である。
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、前記化合物において、Zは、水素である。
【0024】
本発明の特定の実施形態によれば、前記化合物において、Xは、水素である。
【0025】
本発明の特定の実施形態によれば、前記化合物において、Yは、水素またはハロである。
【0026】
好ましくは、前記化合物において、Aは、置換されていてもよいC-C10アリールである。
【0027】
より好ましくは、前記化合物において、Aは、置換されていてもよいフェニルである。
【0028】
好ましくは、前記化合物において、Aは、置換されていてもよい5~15員ヘテロアリールである。
【0029】
より好ましくは、前記化合物において、Aは、置換されていてもよいピリジルである。
【0030】
より好ましくは、前記化合物において、Aは-N=CR(式中、RおよびRは前述のように定義される)である。
【0031】
本発明の特定の実施形態によれば、前記化合物において、各Rは、水素である。
【0032】
好ましくは、前記化合物において、Rは、C-Cアルキルである。
【0033】
本発明の特定の実施形態によれば、前記化合物において、Rはメチルである。本明細書で記載される使用に関し、化合物は、個々のジアステレオマーおよび他の幾何異性体、およびエナンチオマー、ならびにエナンチオマーとジアステレオマーと幾何異性体(ジアステレオマー以外)との混合物を含む。
【0034】
本特許において前記式Iの化合物はPCT出願第PCT/US2016/021581号(国際公開第2016/145092号:中国特許出願第CN201680015078.8号(中国特許出願公開第107530556号明細書)に対応)に開示されており、その開示の全てをここに取り込む。本PCT出願においては、化合物の一般構造、ラジカル置換、望ましい一般構造、好ましい特定化合物等が全て詳細に記述されており、その開示の全てをここに取り込む。したがって、本発明における疼痛の予防、治療または緩和のための医薬品の製造における、前記の化合物もしくは医薬的に許容される塩、またはその溶媒和物の使用は、PCT出願第PCT/US2016/021581号に規定されている化合物もしくは医薬的に許容される塩、またはその溶媒和物に関するすべての内容を包含する。
【0035】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、疼痛の予防、治療または緩和のための医薬品の製造における、式IIの化合物もしくはその薬学的に許容される塩、またはそれぞれの溶媒和物の使用である:
【化II】
式中、
10は、O、S、SO、またはSOであり;
Aは、C-C10アリールまたは置換アリール、5~15員ヘテロアリールまたは置換アリール、または-N=CRであり;
各RおよびRは、独立に、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C6-10アリール、4~15員複素環、5~15員ヘテロアリール、エーテル、-CONR1314、または-NR13COR14であり;
各X、Y、およびZは、独立に、水素、CN、ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、4~15員複素環、5~15員ヘテロアリール、エーテル、-CONR1314、または-NR13COR14であり;
各Rは、独立に、水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、4~15員複素環、5~15員ヘテロアリール、エーテル、-CONR1314、または-NR13COR14であり;
各R13およびR14は、独立に、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、4~15員複素環、5~15員ヘテロアリール、またはエーテルであり、またはR13およびR14は、それらが結合している窒素原子と一緒に5~7員複素環基を形成し;
およびDは、以下のように定義され:
は、
【化L1-1】

(R40およびR41は、独立に、水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、4~15員複素環、または5~15員ヘテロアリールであり;R42は、1~3個のC-Cアルキルで置換されていてもよいC-Cアルキレンまたはヘテロアルキレンであり;V(-)は、任意の陰イオン、好ましくは、薬学的に許容される陰イオンである)から選択され、
Dは、D-OH(式中、OHは、脂肪族またはフェノールのヒドロキシ基であり、または本明細書で提供されているリン原子に結合するOH部分である)が抗がん剤であるような部分である;つまり、Dは、ヒドロキシル基が除去された後の抗がん剤D-OHの残りの基である;
あるいは
は、
【化L1-2】
式中、R40は、前述のように定義されたものであり、R43は、水素であり、またはDと一緒に複素環を形成し、かつフェニレン部分は置換されていてもよく、
Dは、D-NR43Hが抗がん剤であるような部分であり;つまり、Dは、アミノまたはアミンが除去された後の抗がん剤D-NR43Hの残りの基である;
あるいは、
は、結合、-O-C(R4041-、-O-C(R4041)-NR4041(+)-C(R4041)-、もしくは
【化L1-3】
式中、R40、R41、およびVは、前述のように定義されたものであり、
Dは、第一級もしくは第二級アミンを含有する抗がん剤(第一級または第二級アミンは、Lに結合している)であり;
アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、複素環、ヘテロアリール、およびエーテルの各基は、置換されていてもよい。
【0036】
好ましくは、化合物は、式II-A:
【化II-A】
の化合物であり、
式中、残りの変数は前述のように定義される。
【0037】
別の例では,X10はSである。
【0038】
より好ましくは、前記化合物は、式IIA-1:
【化IIA-1】

の化合物であり、
式中、残りの変数は前述のように定義され、かつ、Dは、第一級または第二級アミノ基を含有する細胞毒性薬HNR43-Dの部分であり、つまり、Dは、第一級または第二級アミン基が除去された後の細胞毒性薬HNR43-Dの残りの基である。
【0039】
あるいは、より好ましくは、前記化合物は、式IIA-2またはIIA-3:
【化IIA-2】
【化IIA-3】
の化合物であり、
式中、残りの変数は前述のように定義され、かつ、Dは、少なくとも一つのヒドロキシル基を含有する細胞毒性薬HO-Dの部分であり、つまり、Dは、ヒドロキシル基が除去された後の細胞毒性薬HO-Dの残りの基である。
【0040】
あるいは、より好ましくは、前記化合物は、式IIA-4、IIA-6またはIIA-6-i:
【化IIA-4】
【化IIA-6-i】
【化IIA-6】
の化合物であり、
式中、残りの変数は前述のように定義され、かつ、式IIA-4において、HO-Dは、少なくとも一つのヒドロキシル基を含有する細胞毒性薬であり、つまり、Dは、少なくとも一つのヒドロキシル基を含有する細胞毒性薬HO-Dの部分であり、または、Dは、ヒドロキシル基が除去された後の細胞毒性薬HO-Dの残りの基であり;式IIA-6-iにおいて、DNR4041は薬剤であり、つまり、Dは、DNR4041が抗がん剤であるような部分、または、Dは、NR4041が除去された後の抗がん剤DNR4041の残りの部分であり;かつ、式IIA-6において、Dは、第二級アミンを含有する薬剤(第二級アミンは、メチレン基に結合している)であり、つまり、Dは、第二級アミンを含有する薬剤であり、そこに含まれる第二級アミンを介してメチレン基に結合し、上記のように-NR4041に結合する。
【0041】
あるいは、より好ましくは、前記化合物は、式IIA-5またはIIA-7:
【化IIA-5】
【化IIA-7】
の化合物であり、
式中、残りの変数は前述のように定義され、かつ式IIA-5において、DNR4041は薬剤であり;つまり,Dは、DNR4041が抗がん剤であるような部分、または、Dは、NR4041が除去された後の抗がん剤DNR4041の残りの部分であり;式IIA-7において、Dは、第二級アミンを含有する薬剤(第二級アミンは、上記のようにメチレン基に結合している)である。
【0042】
本発明の特定の実施形態によれば、前記化合物において、Zは、水素である。
【0043】
本発明の特定の実施形態によれば、前記化合物において、Xは、水素である。
【0044】
本発明の特定の実施形態によれば、前記化合物において、Yは、水素またはハロである。
【0045】
好ましくは、前記化合物において、Aは、置換されていてもよいC-C10アリールである。
【0046】
より好ましくは、前記化合物において、Aは、置換されていてもよいフェニルである。
【0047】
好ましくは、前記化合物において、Aは、置換されていてもよい5~15員ヘテロアリールである。
【0048】
より好ましくは、前記化合物において、Aは、置換されていてもよいピリジルである。
【0049】
より好ましくは、前記化合物において、Aは-N=CR(式中、RおよびRは前述のように定義される)である。
【0050】
本発明の特定の実施形態によれば、前記化合物において、各Rは、水素である。
【0051】
好ましくは、前記化合物において、R基の一つは水素であり、他のR基はC-Cアルキルであるか、または両方のR基は前述で定義された非水素置換基である。
【0052】
本発明の特定の実施形態によれば、前記化合物において、Rはメチルである。
【0053】
好ましくは、前記化合物において、各R40、R41、およびR43は、独立に、水素またはメチルであり、R42は、-CH-CH-またはCH-C(Me)-である。
【0054】
特に、本発明で使用されるとき、Dには、-P(Z)(NR30CHCH、-P(Z)(NR30 )(N(CHCH)、-P(Z)(N(CHCH))または-P(Z)(N(CHCH(式中、各R30は、独立に、水素、もしくはC-Cアルキルもしくは二個のR30基であり、それらが結合している窒素原子と一緒に5~7員複素環基を形成し、Zは、OもしくはSであり、Xは、Cl、BrもしくはOMsもしくは別の脱離基である)等のホスホルアミデートアルキル化剤が除かれる。
【0055】
本明細書で記載される使用に関し、化合物は、個々のジアステレオマーおよび他の幾何異性体、およびエナンチオマー、ならびにエナンチオマーとジアステレオマーと幾何異性体(ジアステレオマー以外)との混合物を含む。
【0056】
本特許において前記式IIの化合物はPCT出願第PCT/US2016/025665号(国際公開第2016/161342号:中国特許出願第201680020013.2号(中国特許出願公開第108136214号明細書)に対応)に開示されており、その開示の全てをここに取り込む。本PCT出願においては、化合物の一般構造、ラジカル置換反応、望ましい一般構造、好ましい特定化合物等が全て詳細に記述されており、その開示の全てをここに取り込む。したがって、本発明における疼痛の予防、治療または緩和のための医薬品の製造における、前記の化合物もしくは医薬的に許容される塩、またはその溶媒和物の使用は、PCT出願第PCT/US2016/025665号に規定されている化合物もしくは医薬的に許容される塩、またはその溶媒和物に関するすべての内容を包含する。
【0057】
本発明の特定の実施形態によれば,化合物Iは、下記の化合物AST-3424:
【化AST-3424】
である。
【0058】
本明細書中に記載される使用のための化合物はまた、それらの塩の形で使用してもよい。言い換えれば、本発明は、疼痛の予防、処理または緩和のための医薬品の製造における、本明細書に示される化合物の薬学的に許容される塩の使用を提供する。ここで、塩は、無機塩基(アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物など)または有機塩基(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、またはトリエタノールアミンなど)との化合物の塩を含む塩基性塩であってもよい。あるいは、塩は、無機酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、過塩素酸、硫酸、またはリン酸など)または有機酸(メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フマル酸、シュウ酸、マレイン酸、およびクエン酸など)との化合物の塩を含む酸性塩であってもよい。化合物の許容される塩、溶媒和物などを選択し、調製することは、当技術分野で周知の技術である。
【0059】
本明細書中に記載される使用のための化合物は、また、溶媒和物の形で使用してもよい。言い換えれば、本発明は、疼痛の予防、処理、または緩和のための医薬品の製造における、本明細書に示される化合物の薬学的に許容される溶媒和物の使用を提供する。ここで、溶媒和物は、水和物、アルコラート等である。
【0060】
本明細書に記載される使用に関して、疼痛を引き起こすがんは、特に限定されないが、
肺がん、非小細胞肺がん、肝がん、膵がん、胃がん、骨がん、食道がん、乳がん、前立腺がん、精巣腫瘍、結腸がん、卵巣がん、膀胱がん、子宮頸がん、黒色腫、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭状がん、乳頭状腺がん、嚢胞性腺がん、嚢胞がん、髄様がん、気管支がん、骨細胞がん、上皮がん、胆管がん、じゅう毛がん、胎児性がん、セミノーマ、ウィルムス腫瘍、膠芽腫、星状膠細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫瘍、血球芽細胞腫、声帯神経腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、視神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経線維腫、線維肉腫、線維芽細胞腫、線維腫、線維腺腫、線維軟骨腫、線維嚢腫、線維粘液腫、線維骨腫、線維粘液肉腫、線維乳頭腫、粘液肉腫、粘液性嚢腫、粘液軟骨腫、粘液性軟骨肉腫、粘液軟骨線維肉腫、粘液腺腫、粘液芽腫、脂肪肉腫、脂肪腫、脂肪腺腫、脂肪芽細胞腫、脂肪軟骨腫、脂肪線維腫、脂肪線血管腫、粘液脂肪腫、軟骨肉腫、軟骨腫、軟骨筋腫、脊索腫、じゅう毛がん、じゅう毛上皮腫、じゅう毛芽細胞腫、骨芽細胞腫、骨軟骨線維腫、骨軟骨肉腫、骨軟骨腫、骨嚢腫、骨象牙質腫、骨線維腫、骨線維肉腫、血管肉腫、血管腫、血管脂肪腫、血管軟骨腫、血管芽細胞腫、被角血管腫、血管腫、血管内皮腫、血管線維腫、血管筋腫、血管脂肪腫、血管リンパ管腫、血管脂肪平滑筋腫、血管筋脂肪腫、血管筋神経腫、血管粘液腫、血管細網腫、リンパ管肉腫、リンパ肉芽腫、リンパ管腫、リンパ腫、リンパ粘液腫、リンパ肉腫、血管イボロマ、リンパ球腫、リンパ上皮腫、リンパ芽球腫、内皮腫、内芽細胞腫、滑膜腫、滑膜肉腫、中皮腫、結合組織腫瘍、ユーイング腫瘍、平滑筋腫、平滑筋肉腫、平滑筋芽細胞腫、平滑筋線維腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、横筋ミクソマ、急性、リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性疾患細胞、赤血球増加症、リンパ腫子宮内膜がん、神経膠腫、大腸がん、甲状腺がん、尿路上皮がん、または多発性骨髄腫などである。
【0061】
本出願の発明者が行った前記実験および関連する研究文献から、本明細書に記載の使用に関して、疼痛は炎症によって引き起こされることが明らかに知られている。
【0062】
本明細書中に記載される使用に関して、調製された医薬品は、本明細書中に示される化合物と組み合わせて使用される他の化合物または薬剤をさらに含んでもよい。他の化合物または薬剤はまた、疼痛の予防、治療または緩和のために使用することができる。
【0063】
本明細書中に記載される使用に関して、調製された医薬品は示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物の特定の投与量域を含み、そして/または調製された医薬品は特定の剤形であり、そして特定の投与様式を使用して投与される。
【0064】
疼痛の予防、治療または緩和のために使用される医薬品の投与量、または医薬品に含まれるその化合物もしくは塩もしくは溶媒和物の投与量は通常、適用される特定の化合物、患者、特定の疾患または状態およびその重症度、投与の経路および頻度などに依存し、特定の状態に従って主治医によって決定される必要がある。例えば、本発明によって提供される化合物または医薬品が経口経路によって投与される場合、投薬量は0.1~30mg/7日、好ましくは1~10mg/7日、より好ましくは5mg/日でもよく;前記投薬量を7日毎に1回投与しても前記投薬量を二分割して7日毎に2回投与してもよいが、好ましくは前記投薬量を7日毎に1回投与する。
【0065】
本明細書中に記載される使用に関して、調製された医薬品は、また、薬学的に許容される補助剤または賦形剤を含んでもよい。医薬品は、錠剤、座薬、分散性錠剤、腸溶性錠剤、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、カプセル、糖衣剤、顆粒、乾燥粉末、経口溶液、注射用小針、注射用凍結乾燥粉末、または注入溶液などの臨床投与のための任意の剤形であり得る。特定の剤形および投与様式によれば、医薬品中の薬学的に許容される補助剤または賦形剤は、希釈剤、可溶化剤、崩壊剤、懸濁液、潤滑剤、接着剤、充填剤、香料、甘味料、抗酸化剤、界面活性剤、防腐剤、包装剤、および顔料のうちの一つ以上を含んでもよい。
【0066】
本発明において提供される使用に基づいて、本発明はまた、疼痛の予防、治療または緩和のための方法に関し、この方法は、抑制、治療および緩和有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を、それを必要とする被験者に投与することを含む。好ましくは、被験者は哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。疼痛を引き起こすがんは、特に限定されないが、肺がん、非小細胞肺がん、肝がん、膵がん、胃がん、骨がん、食道がん、乳がん、前立腺がん、精巣腫瘍、結腸がん、卵巣がん、膀胱がん、子宮頸がん、黒色腫、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭状がん、乳頭状腺がん、嚢胞性腺がん、嚢胞がん、髄様がん、気管支がん、骨細胞がん、上皮がん、胆管がん、じゅう毛がん、胎児性がん、セミノーマ、ウィルムス腫瘍、膠芽腫、星状膠細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫瘍、血球芽細胞腫、声帯神経腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、視神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経線維腫、線維肉腫、線維芽細胞腫、線維腫、線維腺腫、線維軟骨腫、線維嚢腫、線維粘液腫、線維骨腫、線維粘液肉腫、線維乳頭腫、粘液肉腫、粘液性嚢腫、粘液軟骨腫、粘液性軟骨肉腫、粘液軟骨線維肉腫、粘液腺腫、粘液芽腫、脂肪肉腫、脂肪腫、脂肪腺腫、脂肪芽細胞腫、脂肪軟骨腫、脂肪線維腫、脂肪線血管腫、粘液脂肪腫、軟骨肉腫、軟骨腫、軟骨筋腫、脊索腫、じゅう毛がん、じゅう毛上皮腫、じゅう毛芽細胞腫、骨芽細胞腫、骨軟骨線維腫、骨軟骨肉腫、骨軟骨腫、骨嚢腫、骨象牙質腫、骨線維腫、骨線維肉腫、血管肉腫、血管腫、血管脂肪腫、血管軟骨腫、血管芽細胞腫、被角血管腫、血管腫、血管内皮腫、血管線維腫、血管筋腫、血管脂肪腫、血管リンパ管腫、血管脂肪平滑筋腫、血管筋脂肪腫、血管筋神経腫、血管粘液腫、血管細網腫、リンパ管肉腫、リンパ肉芽腫、リンパ管腫、リンパ腫、リンパ粘液腫、リンパ肉腫、血管イボロマ、リンパ球腫、リンパ上皮腫、リンパ芽球腫、内皮腫、内芽細胞腫、滑膜腫、滑膜肉腫、中皮腫、結合組織腫瘍、ユーイング腫瘍、平滑筋腫、平滑筋肉腫、平滑筋芽細胞腫、平滑筋線維腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、横筋ミクソマ、急性、リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性疾患細胞、赤血球増加症、リンパ腫子宮内膜がん、神経膠腫、大腸がん、甲状腺ガン、尿路上皮がん、または多発性骨髄腫などである。
【0067】
本発明において提供される使用に基づいて、本発明はさらに、がんまたは炎症によって引き起こされる疼痛の予防、治療または緩和に有用な、上記で定義される式Iまたは式IIの化合物を含む医薬品を提供する。
【0068】
本発明において提供される使用に基づいて、本発明はさらに、がんまたは炎症によって引き起こされる疼痛の治療方法であって、前述の医薬品を投与する工程と、AKR1C3抗体を使用して、患者のがん細胞のAKR1C3レダクターゼの含有量を測定する工程とを含み、AKR1C3レダクターゼの含有量が所定の値以上であると測定されると、前述の医薬品を患者に投与する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1は、還元プロゲステロンの産生に対するAST-3424の適用の効果を示す実験を示す。
【0070】
以下、本発明を具体例を用いて説明する。当業者は、これらの例が本発明を説明するためにのみ使用され、いかなる形でも本発明の範囲を限定しないことを理解し得る。
【0071】
以下の例における実験方法は、特に明記しない限り、全て従来の方法である。以下の例で用いられる医薬品、試薬等の原料は、特に明記しない限り、全て市販品である。
【0072】
本発明に示される化合物およびその合成方法は、特許出願PCT/US2016/021581号(国際公開第2016/145092号)、特許出願PCT/US2016/025665号(国際公開第2016/161342号)、および特許出願PCT/US2016/062114号(国際公開第2017/087428号)に開示されている。
【0073】
以下の定義は、読む人を助けるために付与される。別の定義がなされない限り、技術分野、表記法、および本明細書で使用される他の科学的または医学的な専門語または述語の、すべての用語は、化学的および医学的な技術における当業者によって通常理解される意味を有すると企図される。いくつかの事例では、通常理解される意味を有する用語は、明快さのためおよび/または手早い参照のために本明細書において定義され、こうした定義を
の本質的な相違を表していると解釈されるべきではない。
【0074】
すべての数値的な呼称、例えばpH、温度、時間、濃度および質量は、それらのそれぞれの範囲を含んで、典型的には、適当な場合に、0.1、1.0または10.0の単位で(+)または(-)に変化してもよい近似値である。すべての数の呼称は、用語「約」が前に付くと理解されうる。本明細書で記載される試薬は、例示的なものであり、このようなものの等価物が、当技術分野において既知でありうる。
【0075】
基の前の「C-C」または「Cx-y」は、その基の中に存在する炭素原子の数の範囲を指す。例えば、C-Cアルキルは、少なくとも1個であって6個までである炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0076】
「アルコキシ」は、-O-アルキルを指す。
【0077】
「アミノ」は、NR(式中、RおよびRは、独立に、水素またはC-Cアルキルであり、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に4~15員複素環を形成する)を指す。
【0078】
「アリール」は、6~14個の炭素原子を有して環ヘテロ原子を有さず、かつ単環(例えばフェニル)または複数の縮合環(例えばナフチルもしくはアントリル)を有する芳香族基を指す。環ヘテロ原子を有していない芳香族および非芳香族の環を有する、縮合した、架橋した、かつスピロの環系を含む複数の環系では、結合点が芳香族炭素原子にあるときに、用語「アリール」または「Ar」が当てはまる(例えば5,6,7,8テトラヒドロナフタレン-2-イルは、その結合点が芳香族フェニル環の2位にあるので、アリール基である)。
【0079】
本出願の特定の実施形態によれば、C-C10アリールは、フェニル、ナフチル、および様々な置換フェニルまたはナフチルであり得る。
【0080】
「ヘテロアリール」は、1~14個の炭素原子、および酸素、窒素および硫黄からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子を有して単環(例えばイミダゾリル-2-イルおよびイミダゾール5-イル)ならびに複数の環系(例えばイミダゾピリジル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイミダゾール-2-イルおよびベンズイミダゾール-6-イル)を含む芳香族基を指す。芳香族および非芳香族の環を有する、縮合した、架橋した、スピロの環系を含む複数の環系では、少なくとも一つの環ヘテロ原子があってその結合点が芳香族環の原子にある場合に、用語「ヘテロアリール」が当てはまる(例えば1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イルおよび5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル)。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基の、窒素および/または硫黄の環原子は、酸化されてN-オキシド(N→O)、スルフィニルまたはスルホニル部分を付与してもよい。用語ヘテロアリールまたは5~15員のヘテロアリールには、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾイミダゾリニル、カルバゾリル、NH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、ジチアジニル、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾピリジル、イミダゾリル、インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾリル、ピリドイミダゾリル、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、チアジアジニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニルおよびキサンテニルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0081】
「アルキル」は、1~10個の炭素原子、いくつかの実施形態では1~6個の炭素原子を有する一価の飽和の脂肪族ヒドロカルビル基を指す。「Cx-yアルキル」は、x~y個の炭素原子を有するアルキル基を指す。この用語は、例を介して、直鎖状および分枝状のヒドロカルビル基、例えばメチル(CH-)、エチル(CHCH-)、n-プロピル(CHCHCH-)、イソプロピル((CHCH-)、n-ブチル(CHCHCHCH-)、イソブチル((CHCHCH-)、sec-ブチル((CH)(CHCH)CH-)、tert-ブチル((CHC-)、n-ペンチル(CHCHCHCHCH-)およびネオペンチル((CHCCH-)を含む。
【0082】
「シクロアルキル」は、3~14個の炭素原子を有して環ヘテロ原子を含まず、かつ単環、または縮合した、架橋した、スピロの環系を含む複数の環を有する、飽和のまたは部分的に飽和の環状基を指す。環ヘテロ原子を有していない芳香族および非芳香族の環を有する複数の環系では、結合点が非芳香族炭素原子にあるときに、用語「シクロアルキル」が当てはまる(例えば5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-5-イル)。用語「シクロアルキル」または「C-Cシクロアルキル」は、シクロアルケニル基を含む。シクロアルキル基またはC-Cシクロアルキル基の例には、例えばアダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。「シクロアルキレン」は、適当な水素含有量を有する二価シクロアリール基を指す。
【0083】
「複素環の」または「複素環」または「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクリル」は、1~14個の炭素原子、および窒素、硫黄または酸素からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子を有し、かつ単環、および縮合した、架橋した、およびスピロの環系を含む複数の環系を含む、飽和のまたは部分的に飽和の環状基を指す。芳香族および/または非芳香族の環を有する複数の環系では、少なくとも一つの環ヘテロ原子があってその結合点が非芳香族環の原子にあるときに、用語「複素環の」、「複素環」、「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクリル」が当てはまる(例えば1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-3-イル、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-6-イル、およびデカヒドロキノリン-6-イル)。いくつかの実施形態では、本明細書における複素環基は、3~15員、4~14員、5~13員、7~12員または5~7員複素環である。いくつかの実施形態では、複素環は、4個のヘテロ原子を含有する。いくつかの他の実施形態では、複素環は、3個のヘテロ原子を含有する。別の実施形態では、複素環は、2個までのヘテロ原子を含有する。いくつかの実施形態では、複素環基の窒素原子および/または硫黄原子は、場合によって酸化されてN-オキシド、スルフィニル、スルホニル部分を付与する。ヘテロシクリルには、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、N-メチルピペリジン-3-イル、ピペラジニル、N-メチルピロリジン-3-イル、3-ピロリジニル、2-ピロリドン-l-イル、モルホリニルおよびピロリジニルが挙げられるがこれらに限定されない。炭素原子の数を示す接頭辞(例えばC3-10)は、ヘテロシクリル基の部分における炭素原子の総数を指し、ヘテロ原子の数は除く。二価複素環基は、適当に調整された水素含有量を有する。
【0084】
「エーテル」は、1~3つのC-Cアルコキシ基(式中、アルコキシは、-O-アルキルを指す)で置換されているC-Cアルキル基を指す。
【0085】
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードのうちの1種または複数を指す。
【0086】
「アルケニル」は、2~10個の炭素原子、いくつかの実施形態では2~6個の炭素原子または2~4個の炭素原子を有し、かつビニル不飽和(>C=<)の少なくとも一つの部位を有する、直鎖状または分枝状のヒドロカルビル基を指す。例えば、Cx-yアルケニルは、x~y個の炭素原子を有するアルケニル基を指し、例えば、エテニル、プロペニル、1,3-ブタジエニル等を含むことが意味される。
【0087】
「アルキニル」は、2~10個の炭素原子、いくつかの実施形態では2~6個の炭素原子または2~4個の炭素原子を有し、かつ少なくとも一つの三重結合を含有する、直鎖状の一価炭化水素基、または分枝状の一価炭化水素基を指す。用語「アルキニル」はまた、一つの三重結合および一つの二重結合を有するこれらのヒドロカルビル基を含むことも意味される。例えば、C2-6アルキニルは、エチニル、プロピニル等を含む。
【0088】
「ホスホルアミデートアルキル化剤」は、-O-P(Z1)部分に結合されている一つまたは複数のZ-X-Y部分(式中、Zは、窒素、硫黄または酸素等のヘテロ原子であり、Xは、置換されていてもよいエチレンであり、Yは、ハロまたは別の脱離基であり、またはZ-X-Yは、一緒にアジリジニル(NCHCH)部分を形成し、Zは、前述のように定義される)を含むアルキル化剤を指す。こうしたアルキル化剤は、DNAもしくは別の核酸、またはタンパク質と反応することができる。いくつかの事例では、アルキル化剤は、DNAを架橋結合することができる。
【0089】
用語「置換されていてもよい」は、置換されているまたは置換されていない基を指す。基は、一つまたは複数の置換基、例えば1、2、3、4または5つの置換基で置換されてもよい。好ましくは、置換基は、オキソ、ハロ、-CN、NO、-N+、-CO100、-OR100、-SR100、-SOR100、-SO100、-NR100SO100、-NR101102、-CONR101102、-SONR101102、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、-CR100=C(R100、-CCR100、C-C10シクロアルキル、C-C10ヘテロシクリル、C-C12アリールおよびC-C12ヘテロアリール、または-O-(CH)-O-、-O-(CH-O、およびそれらの1~4個のメチル置換型等の二価置換基からからなる群から選択され、式中、各R100、R101およびR102は、独立に、水素、またはC-Cアルキル、C-C12シクロアルキル、C-C10ヘテロシクリル、C-C12アリールもしくはC-C12ヘテロアリールであり、またはR100およびR102は、それらが結合している窒素原子と一緒に5~7員複素環を形成し、式中、各アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリールは、1~3つのハロ基、1~3つのC-Cアルキル基、1~3つのC-Cハロアルキル基もしくは1~3つのC1-アルコキシ基で置換されていてもよい。好ましくは、置換基は、クロロ、フルオロ、-OCH、メチル、エチル、iso-プロピル、シクロプロピル、-COHおよび塩、ならびにそれらのC-Cアルキルエステル、CONMe、CONHMe、CONH、-SOMe、-SONH、-SONMe、-SONHMe、-NHSOMe、-NHSOCF、-NHSOCHCl、-NH、-OCF、-CFおよび-OCHFからなる群から選択される。
【0090】
「アルキレン」は、1~10個の炭素原子、いくつかの実施形態では1~6個の炭素原子を有する二価の飽和の脂肪族ヒドロカルビル基を指す。「Cu-vアルキレン」は、u~v個の炭素原子を有するアルキレン基を指す。アルキリデン基およびアルキレン基は、分枝鎖および直鎖のヒドロカルビル基を含む。例えば、「C1-6アルキレン」は、メチレン、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレン等を含む。
【0091】
「ヘテロアルキレン」は、鎖炭素原子が、O、S、NまたはP等のヘテロ原子、または置換基を含有するヘテロ原子で置き換えられているアルキレンを指す。
【0092】
本明細書において利用されるDに関する「薬剤」には、ゲムシタビン(gemcitibine)、エルロチニブ、メツレデパ、ウレデパ、アルトレタミン、イマチニブ、トリエチレンメラミン、トリメチロロメラミン、クロラムブシル、クロルナファジン、エストラムスチン、ゲフィチニブ、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、6-ジアゾ-5-オキソ-l-ノルロイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、デノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキセート、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン、5-フルオロウラシル、テガフール、L-アスパラギナーゼ、プルモザイム、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、デフォファミド、デメコルシン、ジアジクォン、エルフォニチン、酢酸エリプチニウム、エトグルシド、フルタミド、ヒドロキシウレア、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、レンチナン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、パクリタキセル、タモキシフェン、エルロトニブ、テニポシド、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンブラスチンおよびビンクリスチンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0093】
薬剤を患者へ「投与する」、または薬剤の患者へ「の投与」(およびこの句の文法的同義語)は、医療専門家による患者への投与であってもよくまたは自己投与であってもよい直接的投与、および/または薬剤の処方行動であってもよい非直接的投与を指す。例えば、患者に薬剤を自己投与することを指導する、および/または患者に薬剤についての処方を提供する内科医が、薬剤を患者に投与している。
【0094】
「がん」は、浸潤により局所的に、かつ転移により全身的に拡大しうる、潜在的に無制限に増殖する、白血病、リンパ腫、がん腫、および他の悪性腫瘍を指し、固形腫瘍を含む。がんの例には、副腎、骨、脳、胸部、気管支、結腸および/または直腸、胆嚢、頭頸部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、神経組織、膵臓、前立腺、上皮小体、皮膚、胃ならびに甲状腺のがんが挙げられるがこれらに限定されない。がんの特定の他の例には、急性および慢性のリンパ性および顆粒球の腫瘍、腺がん、腺腫、基底細胞がん、子宮頸部異形成および上皮内がん、ユーイング肉腫、類表皮がん、巨細胞腫、多形神経膠芽細胞腫、有毛細胞腫瘍、腸神経節細胞腫、過形成性角膜神経腫瘍、島細胞がん、カポジ肉腫、平滑筋腫、白血病、リンパ腫、悪性カルチノイド、悪性黒色腫、悪性カルシウム過剰血、マルファン症候群様体質腫瘍、髄様がん、転移性皮膚がん、粘膜神経腫、骨髄腫、菌状息肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、骨肉腫および他の肉腫、卵巣腫瘍、褐色細胞腫、真性赤血球増多症、原発性脳腫瘍、小細胞型肺腫瘍、潰瘍性型および乳頭状型の双方の扁平上皮がん、過形成、精上皮腫、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、腎細胞腫瘍、局所的な皮膚病変、細網肉腫、ならびにウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0095】
「炎症」は、好ましくは、前記のアラキドン酸-シクロオキシゲナーゼ-プロスタグランジン経路からのプロスタグランジンE2/F2に起因する痛みを引き起こす炎症である。
【0096】
「患者」および「被験者」は、交換可能で使用されて、がん治療を必要とする哺乳動物を指す。一般に、患者は、ヒトである。一般に、患者は、がんと診断されたヒトである。特定の実施形態では、「患者」または「被験者」は、薬剤および治療法をスクリーニングする、特徴づけるおよび評価することにおいて使用されるヒトではない哺乳動物、例えばヒトではない霊長類、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、マウスまたはラットを指すことができる。
【0097】
「プロドラッグ」は、投与後に、代謝される、またはそうでなければ少なくとも一つの特性に関して生物学的に活性なもしくはより活発な化合物( もしくは薬剤)に転換される、化合物を指す。プロドラッグは、薬剤に対して、それを薬剤に対して低活性または不活性にするように化学的に変性されるが、この化学的変性は、対応する薬剤が、プロドラッグが投与された後の代謝のまたは他の生物学的方法によって発生されるようなものである。プロドラッグは、活性な薬剤と比較して、変更された代謝的安定性もしくは輸送特性、より少ない副作用もしくはより低い毒性、または改善された芳香を有することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれている参照文献、Nogrady,1985,Medicinal Chemistry A Biochemical Approach, Oxford University Press,New York,pages388-392を参照されたい)。プロドラッグは、対応する薬剤以外の反応物質を使用して合成されてもよい。
【0098】
「固形腫瘍」は、骨、脳、肝臓、肺、リンパ節、膵臓、前立腺、皮膚および軟部組織(肉腫)における転移性腫瘍が挙げられるがこれらに限定されない固形腫瘍を指す。
【0099】
薬剤の「治療有効量」は、がん患者に投与されるときに、企図された治療効果、例えば、患者におけるがんの一つまたは複数の症状発現の、緩和、改善、寛解または除去の効果を有することになる薬剤の量を指す。治療効果は、必ずしも1回の投与量の投与によって起こるものではなく、一連の投与量の投与後にのみ起こることがある。このため、治療有効量は、1回または複数回の投与において投与されうる。
【0100】
症状または患者「の治療」は、臨床結果を含む、有益なまたは望ましい結果を得るためのステップを取ることを指す。本発明の目的では、有益なまたは望ましい臨床結果には、がんの一つもしくは複数の徴候の緩和もしくは改善;疾患の程度の軽減;疾患進行の遅延もしくは緩慢化;疾患の状態の改善、寛解もしくは安定化;または他の有益な結果が挙げられるがこれらに限定されない。がん治療は、いくつかの事例では、部分的応答または安定な疾患に帰着することがある。
【0101】
「腫瘍細胞」は、任意の適当な種、例えば、ネズミ科、イヌ科、ネコ科、馬またはヒト等の哺乳動物の腫瘍細胞を指す。
【0102】
なお、以上の本発明の実施の形態の説明は、本発明を限定するものではない。当業者は本発明に従って様々な修正および変更を行うことができ、本発明の精神内の任意の修正および変更は、本発明に添付された特許請求の範囲に含まれるものとする。
【実施例
【0103】
カニクイザルにおけるin vitro実験およびin vivo実験を以下に示し、化合物の鎮痛効果を検証する。
【0104】
In vitroの実験
【0105】
実験装置:Xevo G2-XS Q Tof HRMS四重極飛行時間型高分解能質量分析計を搭載したWaters Acquity I クラス UPLC超高性能液体クロマトグラフ
【0106】
緩衝液および材料:
1.PBSリン酸緩衝生理食塩水、
2.20mMのNADPHのPBSリン酸緩衝生理食塩水
3.250μg/mLのAKR1C3のPBSリン酸緩衝生理食塩水
4.250μMのAST-3424の50%のMeOH/H2O溶液
5.250μMのプロゲステロンの50%のMeOH/H2O溶液
6.1μg/mLのプロプラノロールの100%のアセトニトリル溶液
【0107】
実験手順
【0108】
工程1において、反応混合物を以下の表に従って4連(n=4)でエッペンドルフチューブ中に調製し、穏やかに混合した。
【0109】
【表1】
【0110】
工程2において、前記混合物を37℃で30分間と60分間で2回プレインキュベートした。
【0111】
工程3において、20mMのNADPHのPBSリン酸緩衝生理食塩水10μLおよび250μMのプロゲステロンの50%のMeOH/HO溶液2μLを各エッペンドルフチューブに添加し、穏やかに混合した。
【0112】
工程4において、前記工程の混合物50μLを、1μg/mLのプロプラノロールの100%のアセトニトリル溶液100μLに直ちに移した(内部標準(IS))。
【0113】
工程5において、残りのサンプルを37℃で30分間インキュベートし、1μg/mLのプロプラノロールの100%アセトニトリル溶液100μLを添加した(内部標準(IS))。
【0114】
工程6において、試薬水100μLを全てのサンプルに添加し、1,100rpmで5分間ボルテックスし、15,000rpmで10分間室温で遠心分離した。
【0115】
工程7において、全てのサンプルをLC/MSにロードして、還元プロゲステロン、すなわち20α-ジヒドロプロゲステロンの含有量を決定した。
【0116】
LC-MS装置の試験条件を以下に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
液相の溶出勾配
【0119】
【表3】
【0120】
四重極飛行時間質量分析計のパラメータ
【0121】
【表4】
【0122】
工程9において、還元プロゲステロン(20α‐ジヒドロプロゲステロン)を計算する:各サンプルの還元プロゲステロン、すなわち20α‐ジヒドロプロゲステロンおよびプロプラノロールのピーク面積をLC/MSにより測定した。プロプラノロールに対する還元プロゲステロンのピーク面積比(すなわち、前記表中の比)を計算し、時間が0の場合、その比を0%に設定した。
【0123】
AKR1C3活性(%)=[(サンプルの正規化後の還元プロゲステロンの量)30分-(サンプルの正規化後の還元プロゲステロンの量)0分]/[(ネガティブコントロール群の正規化後の還元プロゲステロンの量)30分-(ネガティブコントロール群の正規化後の還元プロゲステロンの量)0分]*100。
【0124】
前記表中のAKR1C3活性の結果は、前記式に従って計算した。
【0125】
実験結果
【0126】
【表5】
実験結果の解析と概要
【0127】
表:AST-3424のAKR1C3活性に及ぼす効果
【0128】
【表6】
【0129】
還元プロゲステロンの産生に対するAST-3424の効果を図1に示す。
【0130】
前述のIn vitroの実験は、30分間および60分間のプレインキュベーション後、5μMの濃度でのAST-3424が基本的にAKR1C3活性を阻害したことを証明し:ネガティブコントロール群と比較して、還元プロゲステロン、すなわち20α-ジヒドロプロゲステロンの産生はそれぞれ3.9%および9.2%に減少し、化合物AST-3424ならびに特許出願PCT/US2016/021581号、PCT/US2016/025665号およびPCT/US2016/062114号に開示された類似の化合物がAKR1C3酵素の阻害剤であることを証明した。
【0131】
II.In vivo実験
【0132】
3匹のカニクイザルを用いた実験を、以下の表に従って行った。
【0133】
【表7】
【0134】
4匹の雄カニクイザルを、Guangxi Xiongsen Primate Development and Experiment社から入手した。それらの全ては、身体検査に合格し、異常を有さない健康なカニクイザルであった。これらのうち、3匹のカニクイザルを投与実験に使用し、残りの1匹をブランク血漿の調製に使用した。
【0135】
投与前と投与開始の6、24、48、および72時間後に、大腿静脈又は他の適当な静脈から1mLの血液を採取し、抗凝固剤を含まない採血管に入れた。採取後、血液サンプルを氷上に置き、30~60分間放置した後、3,500rpmで10分間2~8℃で遠心分離して血清を分離した。採取した血清を-80℃で保存した後、分析した。
【0136】
血清サンプル中のプロスタグランジンE2およびF2を、従来のELISA法によって分析した。測定結果は以下の通りである。
【0137】
カニクイザル静脈内単回投与時の血清中プロスタグランジンE2およびF2濃度
【0138】
【表8】
【0139】
【表9】
【0140】
0.58mg/kgのAST3424をカニクイザルに投与した後、プロスタグランジンE2とF2の両方が減少した;それらは24時間で変動的に増加したが、これはカニクイザル自身によるプロスタグランジンE2とF2の分泌の時間特性に関連すると推測された。これは、AST3424がカニクイザルによるプロスタグランジンE2およびF2の分泌を阻害できることを実証する。
【0141】
腫瘍や骨浸潤・転移から直接生じる疼痛の原因には、直接的な骨の関与と局所侵害受容器の直接的な活性化、腫瘍による隣接する神経・血管・軟部組織の圧縮、腫瘍の骨浸潤によるPGE1・PGF2の放出などがある。PGF2は強い発痛因子である。前述の動物実験はAST-3424化合物がPGF2の含有量を大幅に減少させることができ、それによってがんまたは腫瘍によって引き起こされる疼痛を治療/緩和する効果を実現することを示す。
【0142】
III.実験結果
【0143】
前述のIn vitroおよびIn vivo実験は、前記特異的基質、すなわち、過剰発現されたアルド-ケトレダクターゼAKR1C3を標的とするDNAアルキル化剤が、アルド-ケトレダクターゼAKR1C3の活性を阻害し得ることを証明する。さらに、特異的基質は血中のプロスタグランジンE2/F2含有量を減少させることができることを証明した。したがって、前記化合物AST-3424および特許出願PCT/US2016/021581号、PCT/US2016/025665号およびPCT/US2016/062114号に開示されている同様の化合物はプロスタグランジンE2/F2の産生を遮断でき、その含有量を減少させることができ、鎮痛効果を有するAKR1C3酵素の阻害剤であることが証明できる。
図1