(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】塗装欠陥の評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
G01N21/88 J
(21)【出願番号】P 2018124558
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】荒川 佳典
(72)【発明者】
【氏名】河本 一美
(72)【発明者】
【氏名】森 雅人
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-086049(JP,A)
【文献】特開2001-266121(JP,A)
【文献】特開2000-111326(JP,A)
【文献】特開2017-003358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装欠陥の
発生要因となる異物を撮像する撮像工程と、
過去の塗装欠陥の発生要因データを、前記過去の塗装欠陥の
発生要因となる異物の外観属性データと紐付けした状態でデータベース化するデータベース化工程と、
前記撮像工程で得た前記異物の画像に基づいて、前記異物の外観属性を取得する属性取得工程、及び
前記取得した外観属性と、前記データベース化されている外観属性データとに基づいて前記塗装欠陥の発生要因を特定する要因特定工程とを備えた塗装欠陥の評価方法。
【請求項2】
前記属性取得工程で、前記異物の外観形状、厚み方向位置、発泡の有無、及び色彩を前記外観属性として取得する請求項1に記載の塗装欠陥の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装欠陥の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車ボデーの塗装工程においては、塗装作業が完了した後に、塗装の良否判定を目的とした表面欠陥(塗装欠陥)の検査を行っている。
【0003】
この検査では、いわゆるブツと呼ばれる微小な欠陥を塗装欠陥として検出する必要があることから、従来、熟練の作業者により目視等で行われるのが一般的であった。一方で、世代交代等の事情もあることから、作業者の熟練度に依存することなく、上述した微小な塗装欠陥を検出するための方法が提案、検討されている。
【0004】
例えば特許文献1には、塗装面に存在する微小な塗装欠陥を自動的に検出するための方法が提案されている。この検出方法は、塗装面に対して、光度が暗から明に変化する検査光を照射して、塗装面からの反射光をカメラで撮影して受像画像を作成し、作成した受像画像中の明暗変化に基づき塗装欠陥の有無並びに塗装欠陥の種別(凸状欠陥か凹状欠陥かの種別)を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の塗装欠陥は、所定の期間に高い頻度で発生することがある。このような場合には、塗装欠陥の発生要因を早急に解明し、上記発生要因を取り除くための対策をできる限り早期に講じる必要がある。しかしながら、塗装欠陥の発生要因を解明するには、まず塗装欠陥の種類をこれまで以上に詳細に特定する必要があるため、特許文献1に記載の方法では不十分であった。また、上述の通り、ブツなどの塗装欠陥は極めて小さい(通常、1mm未満)ことから、詳細な種類の特定を含めた塗装欠陥の正確な評価には熟練の技術と豊富な経験が必要であり、作業者によっては特定に長時間を要するのが実情であった。
【0007】
以上の事情に鑑み、本明細書では、習熟度や経験に関係なく、誰にでも正確にかつ迅速に塗装欠陥の発生要因を解明できるようにすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の解決は、本発明に係る塗装欠陥の評価方法によって達成される。すなわち、この評価方法は、塗装欠陥の原因となる異物を撮像する撮像工程と、過去の塗装欠陥の発生要因データを、過去の塗装欠陥の原因となる異物の外観属性データと紐付けした状態でデータベース化するデータベース化工程と、撮像工程で得た異物の画像に基づいて、異物の外観属性を取得する属性取得工程、及び取得した外観属性と、データベース化されている外観属性データとに基づいて塗装欠陥の発生要因を特定する要因特定工程とを備えた点をもって特徴付けられる。
【0009】
このように、本発明では、熟練の技術と豊富な経験を兼ね備えた技術者の頭脳に蓄積されてきた塗装欠陥に関する知識、具体的には過去の塗装欠陥の発生要因データとその原因となった異物の外観属性データとを互いに紐付けした状態でデータベース化した。また、このデータベース化した異物の外観属性データと、評価すべき塗装欠陥の画像から得た異物の外観属性とに基づいて塗装欠陥の発生要因を特定するようにした。このように互いに紐付けしてデータベース化した塗装欠陥の発生要因データと異物の外観属性データとを利用して、塗装欠陥の発生要因を特定することによって、作業者は、評価すべき塗装欠陥の異物を撮像して得た画像から所定の外観属性を取得するだけで、当該塗装欠陥の発生要因を正確に特定することができる。また、予め決められた外観属性(データベース化されている外観属性データと対比可能な外観属性)だけに着目すればよいため、習熟度がそれほど高くない作業者であっても、比較的容易に要因特定に必要な外観属性を取得して、短時間で発生要因の特定が可能となる。従って、例えば要因特定に係る作業者が、塗装工程内の対応箇所にいる作業者に然るべき対策を早急に指示して塗装欠陥の発生要因を取り除くことで、塗装不良の発生を早期に防止することが可能となり、ひいては直行率の向上を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る塗装欠陥の評価方法においては、属性取得工程で、異物の外観形状、厚み方向位置、発泡の有無、及び色彩を外観属性として取得してもよい。
【0011】
本発明者らは、上述のように塗装欠陥の原因となる異物の外観属性をデータベース化して、当該外観属性を体系的に整理することによって、外観属性のうちでも、特に、外観形状、厚み方向位置、発泡の有無、及び色彩の四要件が要因特定に重要であるとの知見を得るに至った。従って、上述した外観属性を評価すべき異物の画像から取得し、対応する過去の外観属性データと対比することにより、さらに信頼性の高い発生要因の特定を行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る塗装欠陥の評価方法においては、データベース化工程で、過去の異物の画像データを外観属性データと紐付けした状態でデータベース化し、異物の画像と、データベース化されている画像データとの対比により、要因特定工程で特定した塗装欠陥の発生要因が適当であるか否かを判定してもよい。
【0013】
このように、評価対象となる異物の画像と、データベース化されている過去の異物の画像データとの対比により、特定した塗装欠陥の発生要因が適当であるか否かを判定するようにすれば、仮にデータベース化された塗装欠陥に分類されない新たな種類の塗装欠陥が現れた場合に、当該塗装欠陥を既にデータベース化された種類の塗装欠陥であると特定するミスを防止することができる。また、外観属性の総合的な比較により二枚の画像に係る異物の同一性(同種の塗装欠陥であるか否か)を判定することは、何も比較対象がない状態で異物の画像だけに基づいてその種類を特定するのに比べて容易であるから、作業者が発生要因の特定に長時間を要する心配もない。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、習熟度や経験に関係なく、誰にでも正確にかつ迅速に塗装欠陥の発生要因を解明することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る塗装欠陥の評価方法の流れを示すフローチャートである。
【
図2】
図1に示す評価方法を実施するための塗装欠陥評価システムを備えた塗装ラインの概略構成の一例を示す図である。
【
図3】
図2に示すデータ保管部における具体的なデータの保管形態について示した模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る塗装欠陥の評価方法の一工程であって、表示部の画面上で塗装欠陥の原因となる異物の外観属性を取得及び入力する動作の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る塗装欠陥の評価方法の一工程であって、入力した外観属性に一致する異物の画像データ及び発生要因データを表示部の画面に表示した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る塗装欠陥の評価方法の内容を図面に基づき説明する。本実施形態では、自動車用ボデーの表面に塗装を施す塗装ラインに本発明に係る評価方法を適用する場合を例にとって、以下にその内容を説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る塗装欠陥の評価方法の流れを説明するためのフローチャートである。同図に示すように、この評価方法は、(S1)塗装欠陥の原因となる異物を撮像する撮像工程と、(S2)過去の塗装欠陥の発生要因データを過去の塗装欠陥の原因となる異物の外観属性データと紐付けした状態でデータベース化するデータベース化工程と、(S3)撮像工程で得た異物の画像に基づいて、異物の外観属性を取得する属性取得工程と、(S4)取得した外観属性と、データベース化されている外観属性データとに基づいて塗装欠陥の発生要因を特定する要因特定工程とを備える。また、本実施形態では、(S0)塗装面を削り出して塗装欠陥の原因となる異物を露出させる露出工程を撮像工程S1の前に備えると共に、(S5)評価中の異物の画像と過去の異物の画像データとの対比により特定した発生要因が適当であるか否かを判定する判定工程を要因特定工程S4の後に備える。
【0018】
図2は、本発明が適用される塗装ライン1の一例と、この塗装ライン1に組み込まれる本発明に係る塗装欠陥の評価システム10の一例の概略構成を示す図である。まず、
図2に示すように、この塗装ライン1は、除塵ブース2と、除塵ブース2で除塵処理がなされたボデーBに塗装を施す塗装ブース3と、塗装ブース3を通過したボデーBの焼付けを行う焼付けブース4と、焼付けブース4を通過したボデーBに対して所定の検査を行う検査ブース5と、検査ブース5の下流側に配設される手直しブース6とを備える。
【0019】
このうち、塗装ブース3は、例えば下塗りブース3aと、中塗りブース3bと、上塗りブース3c、及びクリア塗装ブース3dとを有する。もちろん、塗装に係る一連の工程は上記構成には限定されない。例えば各塗膜層(下塗り塗膜層、中塗り塗膜層、上塗り塗膜層、及びクリア塗膜層)の形成と、焼付けないし乾燥とを交互に実施可能な構成など、公知の塗装工程を採ることが可能である。
【0020】
検査ブース5には、塗装欠陥を検出する作業者W1が配置されており、検査ブース5に搬入されたボデーBの表面に存在する塗装欠陥を例えば目視により検出する。なお、塗装欠陥の検出は目視に限らず、例えば後述する撮像装置11など種々の観察装置(好ましくは拡大観察が可能な装置)を利用して行ってもよい。
【0021】
本発明に係る塗装欠陥の評価システム10は、
図2に示すように、ボデーBの表面に露出した塗装欠陥の原因となる異物fを撮像する撮像装置11と、過去の塗装欠陥に関するデータが保管されるデータ保管部12と、撮像装置11で得た異物fの画像を表示する表示部13と、表示部13に表示された異物fの画像14(後述する
図4を参照)に基づいて取得された異物fの外観属性と、データ保管部12に保管されている過去の塗装欠陥に関するデータとに基づいて所定のデータ処理を行うデータ処理装置15とを備える。以下、まず、塗装欠陥の評価システム10の詳細な構成を説明した後、塗装欠陥の評価方法の各工程の詳細を説明する。
【0022】
撮像装置11は、ボデーBの表面に存在する塗装欠陥の原因となる異物fを撮像可能とするもので、撮像して得た異物fの画像データD0をデータ処理装置15に送信可能に構成されている。撮像装置11としては、例えばマイクロスコープなど拡大してモニタ(図示は省略)に表示可能な機器が好適に使用可能である。また、撮像装置11としてマイクロスコープを使用する場合、ボデーBの表面走査が容易なハンディタイプ(カメラ部が可動式)で、かつワイヤレス方式のマイクロスコープが特に好適である。
【0023】
データ保管部12は、例えばデータサーバで構成される。このデータ保管部12は、
図3に示すように、過去の塗装欠陥に関するデータ、具体的には過去の塗装欠陥の原因となる異物Fの外観属性に関するデータベースである外観属性データベース12aと、過去の塗装欠陥の発生要因に関するデータベースである発生要因データベース12bと、過去の異物Fの画像に関するデータベースである画像データベース12cとを有する。外観属性データベース12aには、過去の異物Fの外観属性データD1が蓄積され、発生要因データベース12bには、過去の塗装欠陥の発生要因データD2が蓄積され、画像データベース12cには、過去の異物Fの画像データD3が蓄積される。上記構成の外観属性データベース12aと、発生要因データベース12b、及び画像データベース12cは、データ処理装置15に接続され、各データベース12a~12c中のデータは何れも、データ処理装置15の処理のために供給され得る。
【0024】
ここで、外観属性データベース12a中に蓄積される外観属性データD1には、過去の異物Fの外観形状に関するデータである外観形状データD11と、異物Fの厚み方向位置に関するデータである厚み方向位置データD12と、異物Fの発泡の有無に関するデータである発泡存否データD13、及び異物Fの色彩に関するデータである色彩データD14が含まれる。また、本実施形態では、外観形状データD11は、異物Fの全体形状データD11aと、異物Fの詳細形状データD11bからなる。以上に述べた各データD11~D14は互いに紐付けされた状態で外観属性データベース12a内に蓄積されている。
【0025】
また、これら外観属性データベース12a中の外観属性データD1(D11~D14)は、発生要因データベース12b中の発生要因データD2と互いに紐付けされた状態で保管されている。本実施形態では、外観属性データD1(D11~D14)が、さらに画像データベース12c中の画像データD3と互いに紐付けされた状態で保管されている。これにより、データ処理装置15は、データ保管部12内の所定の外観属性データD1を参照することにより、外観属性データD1と紐付けされた発生要因データD2、又は画像データD3を参照することが可能となる。もちろん、
図3に示すように、発生要因データベース12b中の発生要因データD2が、さらに画像データベース12c中の画像データD3と互いに紐付けされた状態で保管されていてもよい。
【0026】
表示部13は、その画面13a上に、撮像装置11で撮像して得た異物fの画像データD0に基づく当該異物fの画像14を表示する(
図4を参照)。また、データ処理装置15による所定のデータ処理の結果、例えば参照した過去の塗装欠陥に係る異物Fの画像17を、同じ画面13a上に表示可能としている(
図5を参照)。同様に、データ処理装置15による所定のデータ処理の結果、例えば抽出した過去の塗装欠陥に係る発生要因の内容を、異物Fの画像17に隣り合う領域18に表示可能としている。
【0027】
また、この表示部13は、所定の入力装置を表示部13と一体又は別体に有し、画面13a上に表示された画像14中の異物fを所定の作業者が見て、その外観属性を入力することで、データ保管部12又はデータ処理装置15に、現在評価中の塗装欠陥に係る異物fの外観属性に関する各種データを供給可能としている。本実施形態では、
図4に示すように、表示部13は入力装置としてのタッチパネルを兼ねており、画面13a上に表示された異物fの外観属性の各種タブをタッチすることで、対応するプルダウンメニュー16がさらに表示され、データ保管部12に保管されている過去の塗装欠陥に係る異物Fの外観属性データD1の種類が一覧で表示されるようになっている。本実施形態でいえば、外観形状の「全体形状」のタブをタッチすると、外観属性データベース12aに蓄積された過去の異物Fの全体形状データD11a(
図3を参照)の全種類がプルダウンメニューに表示され、外観形状の「詳細形状」のタブをタッチすると、外観属性データベース12aに蓄積された過去の異物Fの詳細形状データD11bの全種類がプルダウンメニューに表示される。また、「厚み方向位置」のタブをタッチすると、外観属性データベース12aに蓄積された過去の異物Fの厚み方向位置データD12の全種類がプルダウンメニューに表示され、「発泡」のタブをタッチすると、外観属性データベース12aに蓄積された過去の異物Fの発泡存否データD13の全種類(発泡の有り、無し)がプルダウンメニューに表示されると共に、「色彩」のタブをタッチすると、外観属性データベース12aに蓄積された過去の異物Fの色彩データD14の全種類がプルダウンメニューに表示されるようになっている。よって、このプルダウンメニュー16中から画像14中の異物fに最も近い種類の外観属性をそれぞれタッチすることで、画像14中の異物fの外観属性(ここでは全体形状、詳細形状、厚み方向位置、発泡の有無、色彩)が入力される。なお、本実施形態では、タッチパネルを兼ねた表示部13を用いて、異物fの外観属性を表示部13の画面13aにタッチすることで入力した場合を例示したが、もちろん、タッチパネル以外の図示しない入力装置(キーボード、マウスなど)で異物fの外観属性を入力することも可能である。
【0028】
データ処理装置15は、
図2及び
図3に示すように、撮像装置11で得た異物fの画像データD0を受信可能であると共に、データ保管部12の各データベース12a~12cとの間で相互にデータ通信を可能としている。同様に、データ処理装置15は、表示部13(及び図示しない上記入力装置)との間で相互にデータ通信を可能としている。このデータ処理装置15は、表示部13を介しての入力された異物fの外観属性データに対応する外観属性データD1をデータ保管部12の外観属性データベース12aから参照し、抽出すると共に、外観属性データD1と紐付けした状態の発生要因データD2、及び画像データD3を各ベース12b,12cから参照し、抽出可能としている。また、表示部13を介して入力された異物fの外観属性データを、所定のデータ処理後、外観属性データベース12aに送信し、蓄積可能としている。
【0029】
以下、塗装欠陥の評価システム10を用いた塗装欠陥の評価方法の一例を、各工程(S0)~(S5)の順に説明する。
【0030】
(S0)異物露出工程
まず、撮像装置11で塗装欠陥の原因となる異物fの外観を撮像可能なように、異物fの表層側にある塗膜層を削り出して、異物fを露出させる。本実施形態では、検査ブース5でボデーB表面の塗装欠陥を検出する作業者W1が、この削り出しによる露出作業を続けて行う(
図2を参照)。当該作業者W1であれば微小な塗装欠陥(に内在する異物f)の位置を既に把握しているため、迅速に露出作業を実施できる。
【0031】
(S1)撮像工程
上述のようにして露出した異物fを撮像装置11で撮像して、異物fの画像データD0を得る。本実施形態では、作業の効率化のため、露出作業を行った作業者W1が引き続き異物fを撮像して、異物fの画像データD0を取得する。取得した画像データD0は、データ処理装置15に送信される(
図2を参照)。
【0032】
(S2)データベース化工程
この工程では、予め過去の塗装欠陥の発生要因に関するデータを、当該過去の塗装欠陥の原因となる異物F(例えば
図5を参照)の外観属性データD1と紐付けした状態でデータベース化する。具体的には、例えば表示部13に関連する入力装置を用いて、塗装ライン1で生じた過去の塗装欠陥の外観属性をデータ入力し、入力した外観属性データD1をデータ保管部12の外観属性データベース12aに保管、蓄積する。同様に、塗装ライン1で生じた過去の塗装欠陥の発生要因をデータ入力し、入力した発生要因データD2をデータ保管部12の発生要因データベース12bに保管、蓄積する。また、塗装ライン1で生じた過去の塗装欠陥の画像をデータ入力し、入力した画像データD3をデータ保管部12の画像データベース12cに保管、蓄積する。これら外観属性データD1と発生要因データD2、及び画像データD3は互いに紐付けされた状態で保管(データベース化)される。なお、データ保管部12へのデータ入力は、表示部13に関連する入力装置に限らず、例えばデータ保管部12と通信可能な他のデータ入力装置を用いて行うことも可能なことはもちろんである。
【0033】
(S3)属性取得工程
この工程では、撮像装置11で撮像して得た画像データD0に基づいて、異物fの外観属性を取得する。本実施形態では、撮像装置11で得てデータ処理装置15に送信された異物fの画像データD0を、表示部13の画面13a上に画像14として表示する(
図4を参照)。また、この画像14を見た作業者W2(本実施形態では、
図2に示すように異物fの検出に係る作業者W1とは別の場所にいる作業者)は、画像14に基づいて、表示部13の画面13a上に表示された外観属性の「全体形状」タブをタッチし、プルダウンメニュー16を表示させる。そして、表示されたプルダウンメニュー16に表示された全体形状の種類のうち画像14に現れている異物fの全体形状に最も近い種類を選択することで、異物fの全体形状の取得並びに入力が行われる。以下、同様にして、画像14に現れている異物fの残りの外観属性(詳細形状、厚み方向位置、発泡の有無、及び色彩)の取得並びに入力が行われる。
【0034】
(S4)要因特定工程
この工程では、属性取得工程S3で取得並びに入力した異物fの外観属性と、データ保管部12にデータベース化により保管されている外観属性データD1とに基づいて、塗装欠陥の発生要因を特定する。本実施形態では、データ処理装置15が、作業者W2が表示部13を介して入力した異物fの外観属性データと、データ保管部12に蓄積された過去の異物Fの外観属性データD1(ここでは全体形状データD11a、詳細形状データD11b、厚み方向位置データD12、発泡存否データD13、及び色彩データD14)との照合を行う。そして、例えば全ての項目で一致する各データD11~D14と紐付けされた発生要因データD2をデータ保管部12から抽出し、表示部13の画面13aに表示する。また、同時に、上記各データD11~D14と紐付けされた画像データD3をデータ保管部12から抽出し、表示部13の画面13aに表示する(何れも
図5を参照)。これにより、作業者W2は、今現在発生した塗装欠陥の発生要因を特定することが可能となる。
【0035】
(S5)適否判定工程
このようにして、作業者W2が評価対象となる異物fの外観属性を入力することにより、データ処理装置15が、対応する発生要因を特定する。また、上述のように、対応する異物Fの画像17を、評価対象となる異物fの画像14と隣り合う位置に表示する場合、作業者W2は、双方の画像14,17を対比することにより、要因特定工程S4で特定した発生要因が適当であるか否かを判定する。ここで、例えば図示は省略するが、画面13a上に「適当」と「不適」のタブを表示し、対比作業を終えた作業者W2が「適当」のタブをタッチすることで、データ処理装置15は、対比に係る異物fの外観属性データをデータ保管部12に送信し、既存の種類の外観属性データD1として外観属性データベース12aに追加する。あるいは、対比作業を終えた作業者W2が「不適」のタブをタッチした場合、データ処理装置15は、対比に係る異物fの外観属性が、データベース化された既存の何れの種類の外観属性データD1にも該当しないとして処理する。この場合、例えば改めて詳細な解析を行い、新たな種類の外観属性であると認定された場合、外観属性データD1に当該新たな種類を追加する(対応するプルダウンメニュー16に新たな種類を追加する)。以上のようにして、新規の塗装欠陥の発生要因が特定されると共に、特定結果がデータベース化される。
【0036】
また、上述のようにして塗装欠陥の発生要因が特定された場合、例えばデータ処理装置15は、特定された発生要因に対応する箇所の作業者(例えば塗装ブース3の作業者又はその管理者)に向けて当該発生要因の内容を送信し、視認可能な表示部(図示は省略)に表示する。これにより、塗装欠陥の原因となる例えば異物fの発生を抑制するための改善が成され、早期に同種の塗装欠陥の発生が防止可能となる。
【0037】
このように、本発明に係る塗装欠陥の評価方法では、互いに紐付けしてデータベース化した塗装欠陥の発生要因データD2と異物Fの外観属性データD1とを利用して、塗装欠陥の発生要因を特定するようにしたので、作業者W2は、評価すべき塗装欠陥の異物fを撮像して得た画像14から所定の外観属性を取得するだけで、当該塗装欠陥の発生要因を正確に特定することができる(
図4及び
図5)。また、予め決められた外観属性(データベース化されている外観属性データD1と対比可能な外観属性)だけに着目すればよいため、習熟度がそれほど高くない作業者W2であっても、比較的容易に要因特定に必要な外観属性を取得して、短時間で発生要因の特定が可能となる。従って、例えば要因特定に係る作業者W2が、塗装ブース3内の対応箇所にいる作業者に然るべき対策を早急に指示して塗装欠陥の発生要因を取り除くことで、塗装不良の発生を早期に防止することが可能となり、ひいては直行率の向上を図ることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、塗装欠陥の発生要因を特定する上で特に重要と思われる外観形状、厚み方向位置(どの塗膜層を形成した際に付着したのか)、発泡の有無、及び色彩の四要件を異物fの外観属性として取得、入力し、対応する過去の外観属性データD1(D11~D14)と対比可能とした。これにより、信頼性の高い発生要因データD2を取得でき、高精度に発生要因を特定することが可能となる。特に、本実施形態では、異物fの外観形状を全体形状と詳細形状とに分けてデータベース化すると共に、これら全体形状及び詳細形状を異物fの画像14から取得、入力し、全体形状データD11aと詳細形状データD11bを含む過去の外観属性データD1と対比可能としたので、より詳細に異物fを分類でき、さらに高精度に発生要因を特定することが可能となる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る塗装欠陥の評価方法並びに評価システムは、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0040】
例えば上記実施形態では、撮像装置11で得た異物fの画像14を表示部13の画面13aに表示し、表示された画像14を作業者W2が見て、異物fの外観属性を取得及び入力する場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば撮像装置11で得た異物fの画像データD0を所定のデータ処理装置(
図2に示すデータ処理装置15であってもよい)に送信し、当該データ処理装置において、画像データD0に対して所定の画像処理を施すことにより、画像データD0中の異物fの外観属性を取得並びにデータ化してもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、データ保管部12の外観属性データベース12aに蓄積される外観属性データD1として、外観形状データD11(全体形状データD11a、詳細形状データD11b)、厚み方向位置データD12、発泡存否データD13、及び色彩データD14の五項目を例示したが、もちろん、これら以外の外観属性に関わるデータをさらにデータベース化することも可能である。あるいは、塗装ラインによっては、上記例示したうち一部の種類の外観属性データD1のみをデータベース化し、対比に利用してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、データ処理装置15が、取得及び入力した異物fの外観属性と一致する外観属性データD1と紐付けされた発生要因データD2を抽出し、表示部13に表示したが、もちろん、これには限られない。例えば作業者W2による判定(適否判定工程S5)を省略できるのであれば、発生要因データD2を特定した時点で、表示部13の画面13aに表示することなく、当該発生要因データD2に係る発生要因の内容を、対応する箇所の作業者が視認可能な表示部(図示は省略)に直接表示してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 塗装ライン
2 除塵ブース
3 塗装ブース
4 焼付けブース
5 検査ブース
6 手直しブース
10 塗装欠陥の評価システム
11 撮像装置
12 データ保管部
12a 外観属性データベース
12b 発生要因データベース
12c 画像データベース
13 表示部
13a 画面
14 画像
15 データ処理装置
16 プルダウンメニュー
17 データベース化された異物の画像
B ボデー
D0 画像データ
D1 外観属性データ
D11 外観形状データ
D11a 全体形状データ
D11b 詳細形状データ
D12 厚み方向位置データ
D13 発泡存否データ
D14 色彩データ
D2 発生要因データ
D3 画像データ
F 異物(データベース化済み)
f 異物(未データベース化)
S1 撮像工程
S2 データベース化工程
S3 属性取得工程
S4 要因特定工程
S5 適否判定工程
W1,W2 作業者