(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、それを含有する感光性樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/16 20060101AFI20221007BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C08G59/16
G03F7/027 515
(21)【出願番号】P 2019044508
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加賀 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 和義
(72)【発明者】
【氏名】内藤 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】鍔本 麻衣
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-269162(JP,A)
【文献】特開2018-123311(JP,A)
【文献】特開2016-199631(JP,A)
【文献】特開2018-188623(JP,A)
【文献】特開平09-080749(JP,A)
【文献】特開2009-116110(JP,A)
【文献】JIN Yin et al.,Synthesis and Properties of A Novel Modified Epoxy Acrylates Pre-Polymer,PAINT & COATINGS INDUSTRY,2012年11月,Vol.42, No.11,p.13-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/16
G03F 7/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)と分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)を反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(R)に下記式(1)
【化1】
(式中、Xは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
で表される多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)
であって、
前記分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)が、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂(f)もしくは、下記式(3)で表されるエポキシ樹脂(g)であり、
【化2】
(式中、nは平均値を示し、0~20の値を示す。)
【化3】
(式中、Arはそれぞれ独立して(I)又は(II)のいずれかであり、(I)と(II)のモル比率は(I)/(II)=1~3である。Gはグリシジル基を表す。mは繰り返し数の平均値であり、0<m≦5の正数である。)
前記分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)が、(メタ)アクリル酸である不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)。
【請求項2】
分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)、分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)を反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(R’)に下記式(1)
【化4】
(式中、Xは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
で表される多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A’)
であって、
前記分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)が、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂(f)もしくは、下記式(3)で表されるエポキシ樹脂(g)であり、
【化5】
(式中、nは平均値を示し、0~20の値を示す。)
【化6】
(式中、Arはそれぞれ独立して(I)又は(II)のいずれかであり、(I)と(II)のモル比率は(I)/(II)=1~3である。Gはグリシジル基を表す。mは繰り返し数の平均値であり、0<m≦5の正数である。)
前記分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)が、(メタ)アクリル酸である不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A’)。
【請求項3】
請求項1に記載の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)に分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(e)を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(B)。
【請求項4】
請求項2に記載の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A’)に分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(e)を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(B’)。
【請求項5】
固形分酸価が、40~160mg・KOH/gである請求項1~
請求項4のいずれか一項に記載の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂。
【請求項6】
請求項1~
請求項5のいずれか一項に記載の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)、(A’)、(B)又は(B’)、光重合開始剤(C)、架橋剤(D)及び硬化剤(E)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物の層を有する基材。
【請求項9】
請求項8に記載の基材を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、それを含有する感光性樹脂組成物及びその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は携帯機器の小型軽量化や通信速度の向上をめざし、高精度、高密度化が求められており、それに伴いその回路自体を被覆するソルダーレジストへの要求も増々高度となり、従来の要求よりも、さらに耐熱性、熱安定性を保ちながら基板密着性、高絶縁性、無電解金メッキ性に耐えうる性能が要求されており、より強靭な硬化物性を有する皮膜形成用材料が求められている。
【0003】
これら材料として、一般的なエポキシ樹脂に、カルボン酸と水酸基を有する化合物とアクリル酸を併せて反応せしめて得られるカルボキシレート化合物が、低酸価でありながら優れた現像性を有する材料として公知であり、これらの例として、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、もしくはクレゾール型エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応物に酸無水物を反応させて得られた樹脂を使用した組成物の提案がされている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3)。
【0004】
一方、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸との反応物に反応させる酸無水物種を変えることにより、硬化後に耐熱性や現像性を向上させる検討が行われている(特許文献4)。
プリント配線板が車載等に搭載された内燃機関やバッテリー等の近傍に設置される場合には、硬化塗膜には高温放置後でも、クラックが発生することなくプリント配線回路基板に密着する特性が要求される場合があり、現在検討されているソルダーマスクでは、これら要求に十分に対応できていない。
【0005】
【文献】特公平7-67008号公報
【文献】特公平7-17737号公報
【文献】特許第2598346号公報
【文献】特開2018-188623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、今日のプリント配線板の高機能に対応し得る微細な画像を形成できる程に活性エネルギー線に対する感光性に優れ、アルカリ水溶液による現像によりパターン形成できると共に、得られる硬化膜がソルダーマスクに要求される耐熱性及び高温放置後の密着性を満足する樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前述の課題を解決するため、鋭意研究の結果、特定の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を含む樹脂組成物が、高温放置後の密着性、耐熱分解性に優れた硬化物を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
【0008】
(1)分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)と分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)を反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(R)に下記式(1)
【化1】
(式中、Xは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
で表される多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)、
(2)分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)、分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)を反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(R’)に下記式(1)
【化2】
(式中、Xは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
で表される多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A’)、
(3)前記
(1)に記載の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)に分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(e)を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(B)、
(4)前記
(2)に記載の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A’)に分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(e)を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(B’)、
(5)前記分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)が下記式(2)で表されるエポキシ樹脂(f)である
前記(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、
【化3】
(式中、nは平均値を示し、0~20の値を示す。)
(6)前記
分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)が下記式(3)で表されるエポキシ樹脂(g)である
前記(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、
【化4】
(式中、Arはそれぞれ独立して(I)又は(II)のいずれかであり、(I)と(II)のモル比率は(I)/(II)=1~3である。Gはグリシジル基を表す。
mは繰り返し数の平均値であり、0<m≦5の正数である。)
(7)固形分酸価が、40~160mg・KOH/gである前記(1)ないし(6)のいずれか一項に記載の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、
(8)前記(1)ないし(7)いずれか一項に記載の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)、(A’)、(B)又は(B’)、光重合開始剤(C)、架橋剤(D)及び硬化剤(E)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物、
(9)
前記(8)に記載の感光性樹脂組成物の硬化物、
(10)前記9に記載の硬化物の層を有する基材、
(11)前記10に記載の基材を有する物品、
を提供することにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)、(A’)、(B)又は(B’)、光重合開始剤(C)、架橋剤(D)及び硬化剤(E)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物は、感光性に優れ、アルカリ水溶液による現像によりパターン形成できると共に、耐熱性、高温放置後の密着性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)、(A’)、(B)又は(B’)を製造するために用いる分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)は、特にエポキシ当量が、100~900g/当量のエポキシ化合物(a)であることが望ましい。エポキシ当量が100未満の場合、得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂((A)、(A’)、(B)又は(B’))の分子量が小さく成膜が困難となる恐れやフレキシブル性が十分得られなくなる場合が有り、またエポキシ当量が900を超える場合、エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)の導入率が低くなり感光性が低下する恐れがある。
【0011】
分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール-A型エポキシ樹脂、ビスフェノール-F型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール-Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、グリオキサール型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0012】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN-770(DIC(株)製)、D.E.N438(ダウ・ケミカル社製)、エピコート154(三菱化学(株)製)、EPPN-201、RE-306(日本化薬(株)製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN-695(DIC(株)製)、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S(日本化薬(株)製)、UVR-6650(ユニオンカーバイド社製)、ESCN-195(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0013】
トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えばEPPN-503、EPPN-502H、EPPN-501H(日本化薬(株)製)、TACTIX-742(ダウ・ケミカル社製)、エピコートE1032H60(三菱化学(株)製)等が挙げられる。ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンEXA-7200(DIC(株)製)、TACTIX-556(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0014】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピコート828、エピコート1001(三菱化学製)、UVR-6410(ユニオンカーバイド社製)、D.E.R-331(ダウ・ケミカル社製)、YD-8125(新日化エポキシ製造(株)製)、NER-1202、NER-1302(日本化薬製)等のビスフェノール-A型エポキシ樹脂、UVR-6490(ユニオンカーバイド社製)、YDF-8170(新日化エポキシ製造(株)製)、NER-7403、NER-7604(日本化薬製)等のビスフェノール-F型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0015】
ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、NC-3000、NC-3000-H、NC-3500(日本化薬(株)性)等のビフェノール型エポキシ樹脂、YX-4000(三菱化学(株)製)のビキシレノール型エポキシ樹脂、YL-6121(三菱化学(株)製)等が挙げられる。ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN-880(DIC(株)製)、エピコートE157S75(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
【0016】
ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えばNC-7000(日本化薬社製)、EXA-4750(DIC(株)製)等が挙げられる。グリオキサール型エポキシ樹脂としては、例えばGTR-1800(日本化薬製)等が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、例えばEHPE-3150((株)ダイセル製)等が挙げられる。複素環式エポキシ樹脂としては、例えばTEPIC(日産化学(株)製)等が挙げられる。
【0017】
これらのうち、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)としては下記式(2)又は下記式(3)で表されるエポキシ樹脂が良好な耐熱性を有しているために好適である。
【0018】
【化5】
(式中、nは平均値を示し、0~20の値を示す。)
【0019】
【化6】
(式中、Arはそれぞれ独立して(I)又は(II)のいずれかであり、(I)と(II)のモル比率は(I)/(II)=1~3である。Gはグリシジル基を表す。nは繰り返し数の平均値であり、0<m≦5の正数である。)
【0020】
本発明の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)、(A’)、(B)又は(B’)を製造するために用いる分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としては、例えばアクリル酸類やクロトン酸、α-シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは飽和または不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物が挙げられる。アクリル酸類としては、例えば(メタ)アクリル酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸、飽和または不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられるが、感光性樹脂組成物としたときの感度の点で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε-カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸が特に好ましい。
【0021】
本発明の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A’)又は(B’)を製造するために用いる分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)の具体例としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸等のポリヒドロキシカルボン酸類をあげることができる。特に好ましいものとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等をあげることができる。
【0022】
本発明の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(B)又は(B’)を製造するために用いるエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(e)の具体例としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル化物、4 - ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル化物、ペンタエリスリトールトリアクリレートのグリシジルエーテル化物、マレイミドカプロン酸のグリシジルエステル化物、桂皮酸のグリシジルエステル化物等が挙げられ、特に好ましくは、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル化物が挙げられ、市販品としては、グリシジルメタクリレート(和光純薬工業製)、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成(株)製)等が挙げられる。
【0023】
前述の分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)と分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)との反応、及び分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)と分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)と分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)との反応は、無溶剤もしくは有機溶媒、具体的には例えば、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、γ-ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤、更には後述する架橋剤(D)等の単独または混合有機溶媒中で反応させることにより得ることができる。
【0024】
分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)と分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)を反応させ反応性エポキシカルボキシレート化合物(R)を得る反応において、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)の添加割合は、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)1当量に対し0.8~1.2当量であることが好ましい。この範囲を逸脱した場合、反応中にゲル化を引き起こす恐れや、最終的に得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の熱安定性が低くなる恐れがある。
【0025】
分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)と分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)と分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)を反応させ反応性エポキシカルボキシレート化合物(R’)を得る反応において、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)と分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)の添加割合は、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)1当量に対し分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)と分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)の合計が80~120当量%であることが好ましい。また、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)と分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)の割合は5:95~95:5の範囲であることが好ましい。この範囲を逸脱した場合、反応中にゲル化を引き起こす恐れや、最終的に得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の熱安定性が低くなる恐れがある。
【0026】
反応時には熱重合反応を抑えるため熱重合禁止剤を加えることが好ましく、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)、及び場合により分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)、溶剤を加えた反応物の総量100質量部に対して0.1~10質量部である。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、2-メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ第三ブチル-p-クレゾール等があげられる。
【0027】
また、反応時には反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)、及び場合により分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)、溶剤を加えた反応物の総量100質量部に対して0.1~10質量部である。その際の反応温度は60~150℃であり、また反応時間は、好ましくは3~60時間である。この反応で使用する触媒としては、例えばジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、2-エチルへキサン酸クロム、オクタン酸クロム、2-エチルへキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、オクタン酸ジルコニウム、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィド等があげられる。
【0028】
反応は酸価(固形分酸価)が3mg・KOH/g以下になるまで進行させることが好ましい。固形分酸価とは、樹脂1g中のカルボン酸の酸性を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)であり、また、酸価とは樹脂を含む溶液1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)であり、JIS K0070に準じて、通常の中和滴定法により測定される。また、溶液中の該樹脂の濃度がわかれば、溶液の酸価から固形分酸価を計算して求めることもできる。
【0029】
分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)と分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)を反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(R)又は分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)、分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)を反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(R’)の好ましい分子量範囲としては、GPCにおけるポリスチレン換算重量平均分子量が500から50,000の範囲であり、より好ましくは1,000から30,000であり、特に好ましくは1000~10,000である。
【0030】
本発明の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)、(A’)、(B)又は(B’)を製造するために用いる下記式(1)で表される多塩基酸無水物(c)中の炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
【0031】
【化7】
(式中、Xは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
【0032】
これらのうち、下記式(4)で表される化合物が好ましく、市販品として入手可能であり、例えば富士フィルム和光純薬株式会社製のアリルコハク酸無水物(ASA)が挙げられる。
【0033】
【0034】
多塩基酸無水物(c)は単独でも使用することができるが、本発明の感光性樹脂組成物の現像性、タック発生等の調節のために、他の多塩基酸無水物との組み合わせでも使用することができる。他の多塩基酸無水物との組み合わせとしては、例えば、分子中に酸無水物構造を有する化合物であればすべて用いることができるが、アルカリ水溶液現像性、耐熱性、加水分解耐性等に優れた無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、3-メチル-テトラヒドロ無水フタル酸、4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸または、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0035】
多塩基酸無水物(c)を付加させる反応は、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)と分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)及び必要に応じて分子中に少なくとも2個の水酸基を有するモノカルボン酸化合物(d)との反応物を得た反応液に多塩基酸無水物(c)を加えることにより行うことができる。添加量は最終的に得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の固形分酸価が40~160mg・KOH/gとなる計算値を仕込むことが好ましい。このときの固形分酸価が40mg・KOH/g未満の場合、本発明の感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液現像性が著しく低下し、最悪の場合現像できなくなるおそれがあり、また、固形分酸価が160mg・KOH/gを越える場合、現像性が高くなりすぎ、パターニングができなくなるおそれがある。反応温度としては、例えば、60~150℃であり、また、反応時間は好ましくは2~8時間である。
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じて光重合開始剤(C)を使用することができる。光重合開始剤(C)の具体例としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オンなどのアセトフェノン類;2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等があげられる。
【0037】
これらは、単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の促進剤などと組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物おいては、必要に応じて架橋剤(D)を使用することができる。架橋剤(D)の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)と多カルボン酸化合物の酸無水物(例えば、無コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等)の反応物であるハーフエステル,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX-220、HX-620、等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε-カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、モノ又はポリグリシジル化合物(例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリエトキシグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリエトキシポリグリシジルエーテル等と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等をあげることができる。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物おいては、必要に応じて硬化剤(E)を使用することができる。硬化剤(E)としては、例えば、エポキシ化合物、オキサジン化合物等があげられる。硬化剤(E)は、光硬化後の樹脂塗膜に残存するカルボキシル基や水酸基と加熱により反応し、さらに強固な薬品耐性を有する硬化塗膜を得ようとする場合に特に好ましく用いられる。
【0040】
硬化剤(E)としてのエポキシ化合物の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール-A型エポキシ樹脂、ビスフェノール-F型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール-Aノボラック型エポキシ樹脂、グリオキサール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0041】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN-770(DIC(株)製)、D.E.N438(ダウ・ケミカル社製)、エピコート154(三菱化学(株)製)、RE-306(日本化薬(株)製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN-695(DIC(株)製)、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S(日本化薬(株)製)、UVR-6650(ユニオンカーバイド社製)、ESCN-195(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0042】
トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えばEPPN-503、EPPN-502H、EPPN-501H(日本化薬(株)製)、TACTIX-742(ダウ・ケミカル社製)、エピコートE1032H60(三菱化学(株)製)等が挙げられる。ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンEXA-7200(DIC(株)製)、TACTIX-556(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0043】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピコート828、エピコート1001(三菱化学(株)製)、UVR-6410(ユニオンカーバイド社製)、D.E.R-331(ダウ・ケミカル社製)、YD-8125(新日化エポキシ製造(株)製)、NER-1202、NER-1302(日本化薬(株)製)等のビスフェノール-A型エポキシ樹脂、UVR-6490(ユニオンカーバイド社製)、YDF-8170(新日化エポキシ製造(株)製)、NER-7403、NER-7604(日本化薬(株)(株)製)等のビスフェノール-F型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0044】
ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、NC-3000、NC-3000H(日本化薬(株)製)等のビフェノール型エポキシ樹脂、YX-4000(三菱化学(株)製)のビキシレノール型エポキシ樹脂、YL-6121(三菱化学(株)製)等が挙げられる。ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN-880(DIC(株)製)、エピコートE157S75(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
【0045】
ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えばNC-7000、NC-7300(いずれも日本化薬(株)製)、EXA-4750(DIC(株)製)等が挙げられる。グリオキサール型エポキシ樹脂としては、例えばGTR-1800(日本化薬(株)製)等が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、例えばEHPE-3150((株)ダイセル製)等が挙げられる。複素環式エポキシ樹脂としては、例えばTEPIC-L,TEPIC-H、TEPIC-S(いずれも日産化学(株)製)等が挙げられる。
【0046】
硬化剤(E)としてのオキサジン化合物の具体例としては例えば、B-m型ベンゾオキサジン、P-a型ベンゾオキサジン、B-a型ベンゾオキサジン(いずれも四国化成工業(株)製)が挙げられる。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(A)、(A’)もしくは(B)、(C)、(D)及び(E)成分の量は、感光性樹脂組成物の不揮発分を100重量%とした場合、(A)、(A’)もしくは(B)成分は、10~80重量%、(C)成分は、0~40重量%、(D)成分は、0~70重量%、(E)成分は、0~40重量%であり、さらに(C)成分は、0.5~30重量%が好ましく、(D)成分は、5~60重量%が好ましく、(E)成分は、5~30重量%が好ましい。
【0048】
さらに必要に応じて各種の添加剤、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、クレーなどの充填剤、アエロジルなどのチキソトロピー付与剤;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタンなどの着色剤、シリコーン、フッ素系のレベリング剤や消泡剤;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどの重合禁止剤などを組成物の諸性能を高める目的で添加することが出来る。
【0049】
なお、前述の硬化剤(E)は、予め本発明の感光性樹脂組成物に混合してもよいが、プリント配線板への塗布前に混合して用いることもできる。すなわち、前記、(A)、(A’)又は(B)成分を主体とし、これにエポキシ硬化促進剤等を配合した主剤溶液と、硬化剤(E)を主体とした硬化剤溶液の二液型に配合し、使用に際してこれらを混合して用いる方法である。
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂組成物が支持フィルムと保護フィルムでサンドイッチされた構造からなるドライフィルム型のソルダーマスクとしても用いることもできる。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物を使用したドライフィルムは、例えば次のようにして得ることができる。即ち、液状の樹脂組成物を使用する場合、支持フィルムに、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により5~160μmの膜厚で本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、塗膜を通常50~110℃、好ましくは60~100℃の温度で乾燥させることにより、塗膜を形成せしめる。その後、この塗膜上に保護フィルムを貼り付け、ドライフィルムを得ることができる。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物(液状又はフィルム状)は、電子部品の層間の絶縁材、光部品間を接続する光導波路やプリント基板用のソルダーマスク、カバーレイ等のレジスト材料として有用である他、カラーフィルター、印刷インキ、封止剤、塗料、コーティング剤、接着剤等としても使用できる。
【0053】
本発明の硬化物とは、紫外線、電子線等のエネルギー線照射により上記の本発明の樹脂組成物を硬化させたものである。紫外線等のエネルギー線照射により硬化は常法により行うことができる。例えば紫外線を照射する場合、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、紫外線発光レーザー(エキシマーレーザー等)等の紫外線発生装置を用いればよい。
【0054】
本発明の硬化物は、例えばレジスト膜、ビルドアップ工法用の層間絶縁材や光導波路としてプリント基板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光部品に利用される。これらの具体例としては、例えば、コンピューター、家電製品、携帯機器等が挙げられる。この硬化物層の膜厚は0.5~160μm程度で、1~100μm程度が好ましい。
【0055】
本発明の感光性樹脂組成物を使用したプリント配線板は、例えばドライフィルムから、又は液状の樹脂組成物から得ることができる。ドライフィルムを使用する場合、本発明の感光性樹脂組成物を使用したドライフィルムはプリント基板に、温度50~100℃の加熱ロールを用いて、保護フィルムを剥離しながら樹脂層を基板全面に貼り付ける。次いで、回路パターンを形成したフォトマスクを通して塗膜に直接または間接に紫外線等の高エネルギー線を通常10~2000mJ/cm2程度の強さで照射し、未露光部分を後述する現像液を用いて、例えばスプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッビング等により現像する。必要に応じて水洗乾燥した後、必要に応じてさらに紫外線を照射し、次いで通常100~200℃、好ましくは140~180℃の温度で加熱処理をすることにより、後述する、金メッキ性に優れ、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、密着性、屈曲性等の諸特性を満足するプリント配線板が得ることができる。液状の樹脂組成物を使用する場合、プリント配線用基板に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により5~160μmの膜厚で本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、塗膜を通常50~110℃、好ましくは60~100℃の温度で乾燥させることにより、塗膜を形成せしめる。その後、ネガフィルム等の露光パターンを形成したフォトマスクを通して塗膜に直接または間接に紫外線等の高エネルギー線を通常10~2000mJ/cm2程度の強さで照射し、未露光部分を後述する現像液を用いて、例えばスプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッビング等により現像する。その後、必要に応じてさらに紫外線を照射し、次いで通常100~200℃、好ましくは140~180℃の温度で加熱処理をすることにより、金メッキ性に優れ、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、密着性等の諸特性を満足する永久保護膜を有するプリント配線板が得ることができる。
【0056】
上記、現像に使用される、アルカリ水溶液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機アルカリ水溶液やテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が使用できる。
【0057】
本発明の硬化物の層を有する基材とは、例えばレジスト膜、ビルドアップ工法用の層間絶縁膜やドライフィルム、光導波路膜を有する、プリント基板、フレキシブル基板、光電子基板や光基板が挙げられる。
【0058】
本発明の基材を有する物品とは、例えば、自動車、コンピューター、液晶ディスプレイ等の家庭電化製品、携帯電話等の携帯機器等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでない。
【0060】
合成例1
攪拌装置、還流管をつけた1Lフラスコ中に、反応溶媒として、カルビトールアセテートを298.8g、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)として、NC-3500(日本化薬(株)製、軟化点71℃ 、エポキシ当量207g/eq.)を513.1g、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としてアクリル酸(分子量:72.06)を184.0g、熱重合禁止剤として2,6-ジ第三ブチル-p-クレゾールを2.1g、及び反応触媒としてトリフェニルフォスフィンを2.1g仕込み120℃の温度で反応液の酸価が、3mg・KOH/g以下になるまで反応させ、反応性エポキシカルボキシレート化合物(R)の溶液を得た。この樹脂溶液をA-1とする。このときの反応時間は10時間であった。
【0061】
合成例2
攪拌装置、還流管をつけた1Lフラスコ中に、反応溶媒として、カルビトールアセテートを298.8g、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)として、NC-6000(日本化薬(株)製、軟化点71℃、エポキシ当量208g/eq.)を513.7g、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としてアクリル酸(分子量:72.06)を183.3g、熱重合禁止剤として2,6-ジ第三ブチル-p-クレゾールを2.1g、及び反応触媒としてトリフェニルフォスフィンを2.1g仕込み120℃の温度で反応液の酸価が、3mg・KOH/g以下になるまで反応させ、反応性エポキシカルボキシレート化合物(R)の溶液を得た。この樹脂溶液をA-2とする。このときの反応時間は17時間であった。
【0062】
合成例3
合成例1で得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(A-1)溶液75.5gに、多塩基酸無水物(c)としてASA(富士フィルム和光純薬(株)製)を12.1g、カルビトールアセテートを12.3g加え、100℃の温度で4時間反応させ、本発明の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)を65%含む樹脂溶液を得た。樹脂溶液の酸価は50.1mg・KOH/g(固形分酸価:77.1mg・KOH/g)であった。この樹脂溶液をA-3とする。
【0063】
合成例4
合成例2で得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(A-2)溶液75.5gに、多塩基酸無水物(c)としてASA(富士フィルム和光純薬(株)製)を12.1g、カルビトールアセテートを12.3g加え、100℃の温度で4時間反応させ、本発明の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)を65%含む樹脂溶液を得た。樹脂溶液の酸価は49.2mg・KOH/g(固形分酸価:75.7mg・KOH/g)であった。この樹脂溶液をA-4とする。
【0064】
合成例5
合成例2で得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(A-2)溶液62.0gに、多塩基酸無水物(c)としてASA(富士フィルム和光純薬(株)製)を14.0g、カルビトールアセテートを12.3g加え、100℃の温度で4時間反応させた。次いで、カルビトールアセテートを4.1g、分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(e)としてグリシジルメタクリレート7.6g加え、120℃の温度で7時間反応させ、本発明の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(B)を65%含む樹脂溶液を得た。樹脂溶液の酸価は27.6mg・KOH/g(固形分酸価:42.4mg・KOH/g)であった。この樹脂溶液をA-5とする。
【0065】
合成例6
合成例1で得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(A-1)溶液82.8gに、多塩基酸無水物(c)としてTHPA(1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、新日本理化(株)製)を7.0g、カルビトールアセテートを10.3g加え、100℃の温度で4時間反応させ、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を65%含む樹脂溶液を得た。樹脂溶液の酸価は26.7mg・KOH/g(固形分酸価:41.1mg・KOH/g)であった。この樹脂溶液をA-6とする。
【0066】
合成例7
合成例2で得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(A-2)溶液65.1gに、多塩基酸無水物(c)としてTHPA(1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、新日本理化(株)製)を16.4g、カルビトールアセテートを13.8g加え、100℃の温度で4時間反応させた。次いで、カルビトールアセテートを1.6g、分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(e)としてグリシジルメタクリレート3.0g加え、120℃の温度で7時間反応させ、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を65%含む樹脂溶液を得た。樹脂溶液の酸価は50.3mg・KOH/g(固形分酸価:77.4mg・KOH/g)であった。この樹脂溶液をA-7とする。
【0067】
合成例8
合成例1で得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(A-1)溶液67.8gに、多塩基酸無水物(c)としてHTMA(1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸-1,2-無水物、三菱ガス化学(株)製)を9.9g、カルビトールアセテートを10.53g加え、100℃の温度で4時間反応させた。次いで、カルビトールアセテートを4.1g、分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(e)としてグリシジルメタクリレート7.6g加え、120℃の温度で10時間反応させ、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を65%含む樹脂溶液を得た。樹脂溶液の酸価は29.0mg・KOH/g(固形分酸価:44.6mg・KOH/g)であった。この樹脂溶液をA-8とする。
【0068】
合成例9
合成例2で得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(A-2)溶液80.6gに、多塩基酸無水物(c)としてHTMA(1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸-1,2-無水物、三菱ガス化学(株)製)を8.6g、カルビトールアセテートを10.8g加え、100℃の温度で4時間反応させ、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を65%含む樹脂溶液を得た。樹脂溶液の酸価は67mg・KOH/g(固形分酸価:103mg・KOH/g)であった。この樹脂溶液をA-9とする。
【0069】
実施例1、比較例1
前記合成例3~8で得られた本発明の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)又は(B)を含む樹脂溶液を6.0g、光重合開始剤(C)としてイルガキュアー907(チバスペシャリチィーケミカルズ製)を0.27g及びカヤキュアーDETX-S(日本化薬(株)製)を0.01g、架橋剤(D)としてDPCA-20(商品名:日本化薬(株)製)1.2g、熱硬化触媒としてTPPを0.01g及び濃度調整溶媒としてジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを加え、固形分濃度を60%に調整した。その後、硬化剤(E)としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD-134、新日鉄住金(株)製)をカルボキシ基に対して120%となるように加え、均一に分散させ、レジスト樹脂組成物を得た。
【0070】
評価項目のそれぞれの項目について詳述する。
【0071】
光感度評価(表中略称:光感度)
レジスト樹脂組成物をアプリケーターにて20μmの厚さになるように圧延銅箔 BHY-82F-HA-V2(JX金属製)に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥機で30分乾燥させた。乾燥後の塗膜にステップタブレット(Stouffer製:21段)を置き、紫外線照射器(USHIO製(超高圧水銀灯))を用いて照射量を振り硬化を行った。その後、現像液として1%炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー現像を行った。ステップタブレットで7段まで硬化するときの照射量を光感度の評価とした。
○ ・・150mJ/cm2 以下
× ・・150mJ/cm2 以上
【0072】
現像性評価(表中略称:現像性)
現像性は、紫外線照射前の塗膜に、現像液として1%炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー現像を行った。塗膜が完全に溶解するまでの時間、所謂ブレイクタイムをもって現像性の評価とした(単位 : 秒)。
× ・・膨潤剥離
【0073】
耐熱分解性評価(表中略称:耐熱分解性)
レジスト樹脂組成物をアプリケーターにて20μmの厚さになるように圧延銅箔 BHY-82F-HA-V2(JX金属製)に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥機で30分乾燥させた後、紫外線照射器(GS YUASA製:CS 30L-1)を用いて、500mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した。次にオーブン内で150℃で30分硬化させ、硬化物を得た。銅箔を塩化鉄(III)45°ポーメ(純正化学製)で除去した。作製した硬化物を作成したサンプル3mgを、毎分100mlの空気流中でMETTLER製TGA/DSC1を用いて重量が5%減少する温度を測定した。
【0074】
耐熱密着性評価(表中略称:耐熱密着性)
レジスト樹脂組成物をアプリケーターにて20μmの厚さになるように銅張り積層板 ELC-4762(住友ベークライト製)に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥機で30分乾燥させた後、紫外線照射器(USHIO製(超高圧水銀灯))を用いて、ステップタブレット(Stouffer製:21段)で7段となるエネルギーで紫外線を照射した。次にオーブン内で150℃で30分硬化させ、硬化物を得た。作製した硬化物を165℃で500時間加熱した後に基盤目剥離試験を用い剥離具合を評価した。
評価基準:前基盤目数(100)を分母にし、残った升目の数を分子にした。
【0075】
【0076】
上記の結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物は高感度で優れた現像性であり、その硬化膜も高温放置後の密着性、耐熱分解性等に優れているので、特にプリント基板用感光性樹脂組成物に適している。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の感光性樹脂組成物は、紫外線により露光硬化することによる塗膜の形成において、現像性、光感度に優れ、得られた硬化物は、高温放置後の密着性、耐熱分解性等も十分に満足するものであり、光硬化型塗料、光硬化型接着剤等に好適に使用でき、特にプリント基板用感光性樹脂組成物に適している。