(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】アルケニル基含有化合物、硬化性樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08F 212/00 20060101AFI20221007BHJP
C08F 234/00 20060101ALI20221007BHJP
C07C 43/205 20060101ALI20221007BHJP
C07C 43/215 20060101ALI20221007BHJP
C07D 251/34 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C08F212/00
C08F234/00
C07C43/205 C
C07C43/215
C07D251/34 N
C07D251/34 P
(21)【出願番号】P 2020513229
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2019014919
(87)【国際公開番号】W WO2019198606
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2018074454
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018074456
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠島 隆行
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】松浦 一貴
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-109810(JP,A)
【文献】特開昭63-077986(JP,A)
【文献】特開平01-144410(JP,A)
【文献】特開平04-330066(JP,A)
【文献】特開平04-306244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 212/00
C08F 234/00
C07C 43/205
C07C 43/215
C07D 251/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるアルケニル基含有化合物。
【化1】
(式(1)中、Xは
下記式(2-2)で表される構造である。Yはアルケニル基を表し、Yが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。Zは水素原子、炭素数1~15の炭化水素基、または炭素数1~15のアルコキシ基を表し、Zが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。lは1~6の自然数を表す。mおよびnはそれぞれ0以上の整数であり、m+n=1~5を満たし、l個あるmのうち少なくとも1つは1以上である。)
【化2】
(式(2-2)中、*は式(1)の酸素原子への結合を表す。)
【請求項2】
請求項
1に記載のアルケニル基含有化合物と、マレイミド樹脂とを含有する、硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、ラジカル重合開始剤を含有する、請求項
2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項
2又は
3に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させた、硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケニル基含有化合物、硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関するものであり、半導体素子用封止材、液晶表示素子用封止材、有機EL素子用封止材、プリント配線基板、ビルドアップ積層板等の電気・電子部品や、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等の軽量高強度構造材用複合材料に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子部品を搭載する積層板は、その利用分野の拡大により、要求特性が広範かつ高度化している。従来の半導体チップは金属製のリードフレームに搭載されることが主流であったが、中央処理装置(以下、CPUと表す。)などの処理能力の高い半導体チップは、高分子材料で作られる積層板に搭載されることが多くなってきている。CPU等の素子の処理速度の高速化が進み、クロック周波数が高くなるにつれ、信号伝搬遅延や伝送損失が問題となっていることから、積層板は、低誘電率化、低誘電正接化が求められている。また、素子の処理速度の高速化に伴い、チップの発熱が大きくなるため、耐熱性の向上も同時に求められている。
【0003】
特にスマートフォンなどに使用されている半導体パッケージ(以下、PKGと表す。)の小型化、薄型化および高密度化に伴い、PKG基板の薄型化が求められているが、PKG基板が薄くなると、剛性が低下するため、PKGをマザーボード(PCB)に半田実装する際の加熱によって、大きな反りが発生するなど不具合が発生する。これを低減するために、半田実装温度以上の高Tg(例えば、260℃以上、近年では288℃以上)のPKG基板材料が求められている。
【0004】
また、一方で近年の大容量・高速通信化に伴い、情報通信機器で扱う電気信号の周波数は年々高くなる傾向にあるが、信号周波数が高くなるほど、電気信号が回路中で熱に変換されるため、伝送損失が増加し、信号を効率よく伝送することが難しくなる。これを低減するために、誘電正接が低い基板材料も求められている。
【0005】
特に現在開発が加速している第5世代通信システム「5G」では、スマートフォンをはじめとした様々な機器のデータ通信において、さらなる大容量化と高速通信が進むことが予想されている。低誘電正接材料のニーズがますます高まってきており、少なくとも1GHzで0.005以下の誘電正接が求められており、この耐熱性、誘電特性(誘電正接)を達成できる材料が求められている。更に、自動車分野においては電子化が進み、エンジン駆動部付近に精密電子機器が配置されることもあるため、より高水準での耐熱・耐湿性が求められる。加えて、電車やエアコン等にはSiC半導体が使用され始めており、半導体素子の封止材には極めて高い耐熱性が要求されるため、従来のエポキシ樹脂封止材では対応できなくなっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1は全てプロペニル基で置換されたフェノール樹脂を用いているため、電気特性が不十分である。また特許文献2では全てアリル基で置換されたフェノール樹脂を用いているため反応性に乏しく、耐熱性の観点から性能として満足できるものとは言い難く、高い耐熱性と電気特性を両立できる材料や硬化系の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開平04-359911号公報
【文献】国際公開2016/002704号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、硬化させた場合に優れた耐熱性と電気特性を示すアルケニル基含有化合物及び硬化性樹脂組成物、並びにその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決するため誠心誠意検討した結果、特定のアルケニル基含有化合物を用いることにより、その硬化物が耐熱性、電気特性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の[1]~[6]に関する。
[1]
下記式(1)で表されるアルケニル基含有化合物。
【0010】
【0011】
(式(1)中、Xは任意の有機基を表す。Yはアルケニル基を表し、Yが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。Zは独立して水素原子、炭素数1~15の炭化水素基、または炭素数1~15のアルコキシ基を表し、Zが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。lは1~6の自然数を表す。mおよびnはそれぞれ0以上の整数であり、m+n=1~5を満たし、l個あるmのうち少なくとも1つは1以上である。)
[2]
前記式(1)中のXが、下記式(2-1)~(2-4)で表される構造のうちいずれか1種を含有する、前項[1]に記載のアルケニル基含有化合物。
【0012】
【0013】
(式(2-1)~(2-4)中、*は式(1)の酸素原子への結合を表す。)
[3]
前記式(1)中のXが、前記式(2-2)で表される、前項[2]に記載のアルケニル基含有化合物。
[4]
前項[1]~[3]のいずれか一項に記載のアルケニル基含有化合物と、マレイミド樹脂とを含有する、硬化性樹脂組成物。
[5]
さらに、ラジカル重合開始剤を含有する、前項[4]に記載の硬化性樹脂組成物。
[6]
前項[4]又は[5]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させた、硬化物。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアルケニル基含有化合物を用いた硬化性樹脂組成物は優れた硬化性を有し、その硬化物は電気特性、耐熱性に優れる。また、本発明のアルケニル基含有化合物は、マレイミド基との反応性が高く、フェノール性水酸基に起因する電気特性の低下はほとんどない。そのため、電気電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)及び積層板(プリント配線板、ボールグリッドアレイ(BGA)基板、ビルドアップ基板など)、液晶封止材、有機EL封止材、接着剤(導電性接着剤等)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を始めとする各種複合材料、塗料等の用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例4の化合物の
1H-NMRチャートである。
【
図2】本発明の実施例5の化合物の
1H-NMRチャートである。
【
図3】本発明の実施例6の化合物の
1H-NMRチャートである。
【
図4】本発明の実施例8の化合物の
1H-NMRチャートである。
【
図5】本発明の実施例9の化合物の
1H-NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明に使用するアルケニル基含有化合物は、下記式(1)で表される。
なお、本明細書において、「~」は上下限を含む範囲を表す(例えば、1~3としたときは1以上3以下を表す)。
【0017】
【0018】
式(1)中、Yはアルケニル基を表し、Yが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。Yのアルケニル基としては、特に限定はされないが、硬化性及び電気特性の観点から、炭素数1~5のアルケニル基が好ましく、炭素数1~3のアルケニル基がより好ましく、アリル基、メタリル基、1-プロペニル基、又は2-メチルプロペニル基がさらに好ましく、アリル基または1-プロペニル基が特に好ましい。
Zは水素原子、炭素数1~15の炭化水素基、または炭素数1~15のアルコキシ基を表し、Zが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。Zは、電気特性の観点から、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、又は炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のアルコキシ基である。
lは1~6の自然数を表す。mおよびnはそれぞれ0以上の整数であり、m+n=1~5を満たし、l個あるmのうち少なくとも1つは1以上である。
【0019】
式(1)中、Xは任意の有機基を表す。Xは有機基であれば特に限定されないが、ビフェニレン構造、フェニレン構造、S-トリアジン構造、ジフェニルスルホン構造を有する化合物が好ましく、下記式(2-1)~式(2-4)で表される構造で例示される。
【0020】
【0021】
式(2-1)~式(2-4)中、*は式(1)の酸素原子への結合を表す。
式(2-1)~式(2-4)中、*を2つ有する構造のとき上記式(1)のlは2となり、*を3つ有する構造のとき上記式(1)のlは3となる。
【0022】
前記式(1)中のXとして、更に好ましい構造は、式(2-1)~式(2-3)で表される構造であり、式(2-2)または式(2-3)で表される構造であるときが特に好ましい。
【0023】
本発明のアルケニル基含有化合物は、反応性基としてフェノール性水酸基を持たない。そのため、フェノール性水酸基に起因する電気特性の悪化がなく、ラジカル重合性にも優れるため高い耐熱性を示す。
【0024】
次に、本発明に使用するアルケニル基含有化合物の製造方法について説明する。
本発明に使用するアルケニル基含有化合物は、例えば、下記式(3)で表されるフェノール性水酸基を有する化合物、および任意のハロゲン化合物を原料として製造できる。
【0025】
【0026】
式(3)中、Y、Z、m、nは式(1)と同様である。
式(3)で表されるフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、2-アリルフェノール、2-メタリルフェノール、2-(2-プロペニル)フェノール、2-(1-プロペニル)フェノール、オイゲノール、イソオイゲノール等が挙げられるが、これに限定されない。
【0027】
任意のハロゲン化合物としては公知のものであれば如何なるものを用いても良い。好ましくは、前記式(2-1)~式(2-4)で表される構造を分子中に含有するものが挙げられ、例えば、о-キシリレンジフルオライド、m-キシリレンジフルオライド、p-キシリレンジフルオライド、о-キシリレンジクロリド、m-キシリレンジクロリド、p-キシリレンジクロリド、о-キシリレンジブロミド、m-キシリレンジブロミド、p-キシリレンジブロミド、о-キシリレンジアイオダイド、m-キシリレンジアイオダイド、p-キシリレンジアイオダイド、4,4’-ビスフルオロメチレンビフェニル、4,4’-ビスクロロメチレンビフェニル、4,4’-ビスブロモメチレンビフェニル、4,4’-ビスヨードメチレンビフェニル、2,4’-ビスフルオロメチレンビフェニル、2,4’-ビスクロロメチレンビフェニル、2,4’-ビスブロモメチレンビフェニル、2,4’-ビスヨードメチレンビフェニル、2,2’-ビスフルオロメチレンビフェニル、2,2’-ビスクロロメチレンビフェニル、2,2’-ビスブロモメチレンビフェニル、2,2’-ビスヨードメチレンビフェニルが挙げられ、合成時の原料の反応性の観点から、クロライド系化合物、ブロマイド系化合物、アイオダイド系化合物が好ましく、より好ましくはクロライド系化合物、ブロマイド系化合物が挙げられる。
【0028】
また、上記以外の任意のハロゲン化合物としては、2,2’-ジフルオロジフェニルスルホン、2,3’-ジフルオロジフェニルスルホン、2,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’-ジフルオロジフェニルスルホン、3,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、2,2’-ジクロロジフェニルスルホン、2,3’-ジクロロジフェニルスルホン、2,4’-ジクロロジフェニルスルホン、3,3’-ジクロロジフェニルスルホン、3,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、2,2’-ジブロモジフェニルスルホン、2,3’-ジブロモジフェニルスルホン、2,4’-ジブロモジフェニルスルホン、3,3’-ジブロモジフェニルスルホン、3,4’-ジブロモジフェニルスルホン、4,4’-ジブロモジフェニルスルホン、2,2’-ジヨードジフェニルスルホン、2,3’-ジヨードジフェニルスルホン、2,4’-ジヨードジフェニルスルホン、3,3’-ジヨードジフェニルスルホン、3,4’-ジヨードジフェニルスルホン、4,4’-ジヨードジフェニルスルホン、シアヌルフルオライド、シアヌルクロリド、シアヌルブロミド、シアヌルアイオダイド等が挙げられ、合成時の原料の反応性と原料の入手しやすさの観点から、フルオライド系化合物、クロライド系化合物、ブロマイド系化合物が好ましく、より好ましくはフルオライド系化合物、クロライド系化合物が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0029】
前記式(3)で表されるフェノール性水酸基を有する化合物、および任意のハロゲン化合物との反応は公知の方法で行うことができ、一般的にアルカリ金属水酸化物等の塩基を用いてハロゲン化合物とフェノール性水酸基を有する化合物を反応させてエーテル化する。
この際、メタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン等の極性の高い溶剤を使用することが好ましい。極性溶剤の使用量は通常、原料(フェノール性水酸基を有する化合物と任意のハロゲン化合物)の総量100質量部に対して50~400質量部、好ましくは70~300質量部である。またこれらの高極性溶剤は単独で用いても併用しても良く、またトルエン、キシレンなどの極性の低い溶剤を併用しても良い。低極性溶剤の使用量は通常、原料(フェノール性水酸基を有する化合物と任意のハロゲン化合物)の総量100質量部に対して50~400質量部、好ましくは70~300質量部である。
より詳細には、フェノール性水酸基含有化合物を前記のジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシドなどに溶解させた後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を添加し、30~250℃で任意のハロゲン化合物を1~10時間かけて添加し、その後30~250℃で1~30時間反応させる。反応終了後、トルエン、メチルイソブチルケトンなどを加え、副生した塩をろ過、水洗などにより除去し、さらに加熱減圧下でトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶媒を留去することにより、本発明に使用されるアルケニル基含有化合物を得ることができる。
【0030】
本発明に使用するアルケニル基含有化合物は、不純物として合成に使用した原料を含有することができる。不純物を全く含有しない場合、溶解性が低下する恐れがある。一方で、不純物を多量に含有している場合では、硬化反応時に残存原料に揮発が起き、臭気や作業委環境への悪影響が懸念される。不純物としては、合成に使用する原料および溶剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、前記式(3)で表されるフェノール性水酸基を有する化合物、および合成に使用した任意のハロゲン化合物等が挙げられる。不純物の含有量としては0.0001~5%が好ましく、より好ましくは0.0001~3%、さらに好ましくは0.0001~1%である。
【0031】
本発明の硬化性樹脂組成物はマレイミド樹脂を含有してもよい。
マレイミド樹脂としては従来公知のマレイミド樹脂を使用することができる。マレイミド樹脂の具体例としては、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、ポリフェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2’-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。溶剤溶解性の観点から、ポリフェニルメタンマレイミドや、日本国特開2009-001783号公報、日本国特開平01-294662号公報に記載されているマレイミド樹脂のような分子量分布を有するマレイミド樹脂が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。マレイミド樹脂の配合量は、前記式(1)で表されるアルケニル基含有化合物に対して、質量比で好ましくは0.5~5倍、より好ましくは1~3倍の範囲である。
また、日本国特開2009-001783号公報、日本国特開平01-294662号公報に記載されているマレイミド樹脂は、低吸湿性、難燃性、誘電特性に優れているため特に好ましい。
【0032】
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルケニル基含有化合物のアルケニル基同士や、アルケニル基とマレイミド基を反応させるために、ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。用い得るラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)-ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネート類、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシオクトエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物の公知の硬化促進剤が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類等が好ましく、ジアルキルパーオキサイド類がより好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量としては、硬化性樹脂組成物の質量100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.01~3質量部が特に好ましい。用いるラジカル重合開始剤の量が多いと、重合反応時に分子量が十分に伸長しない恐れがある。
【0033】
本発明の硬化性樹脂組成物においてはエポキシ樹脂を含有させても良い。エポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂のいずれも使用することができる。エポキシ樹脂の具体例としては、フェノール類と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類とケトン類との重縮合物、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物及びアルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキシドや3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシラートなどを代表とする脂環式エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)やトリグリシジル-p-アミノフェノールなどを代表とするグリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
また、フェノール類と、ビスハロゲノメチルアラルキル誘導体またはアラルキルアルコール誘導体とを縮合反応させることにより得られるフェノールアラルキル樹脂を原料とし、エピクロルヒドリンと脱塩酸反応させることにより得られるエポキシ樹脂は、低吸湿性、難燃性、誘電特性に優れているため、エポキシ樹脂として特に好ましい。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含有する場合、必要に応じて様々なエポキシ樹脂硬化剤やエポキシ樹脂硬化用の触媒(硬化促進剤)を配合することができる。
エポキシ樹脂硬化剤としては、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ-ル系化合物、活性エステル樹脂などが使用できる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビスフェノール類、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類と芳香族ジメチロールとの重縮合物、ビフェノール類及びこれらの変性物、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられる。
硬化剤として活性エステル樹脂を使用する場合は、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及びチオカルボン酸化合物の少なくともいずれかの化合物と、ヒドロキシ化合物及びチオール化合物の少なくともいずれかの化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及びナフトール化合物の少なくともいずれかの化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましい。
エポキシ樹脂硬化剤の使用量は、エポキシ基(またはグリシジル基)1当量に対して0.5~1.5当量が好ましく、0.6~1.2当量が特に好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.5当量に満たない場合、あるいは1.5当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり、良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0035】
上記エポキシ樹脂硬化用の触媒(硬化促進剤)としては、例えば2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン等のアミン類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン類などが挙げられる。硬化用の触媒の配合量は、硬化性樹脂組成物の合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下の範囲である
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物においてはシアネートエステル樹脂を含有させても良い。本発明の硬化性樹脂組成物に配合し得るシアネートエステル化合物としては、従来公知のシアネートエステル化合物を使用することができる。シアネートエステル化合物の具体例としては、フェノール類と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類とケトン類との重縮合物、及びビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物などをハロゲン化シアンと反応させることにより得られるシアネートエステル化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。
上記フェノール類としては、フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
上記各種アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等が挙げられる。
上記各種ジエン化合物としては、ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
上記ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
シアネートエステル化合物の具体例としては、ジシアナートベンゼン、トリシアナートベンゼン、ジシアナートナフタレン、ジシアンートビフェニル、2、2’ービス(4ーシアナートフェニル)プロパン、ビス(4ーシアナートフェニル)メタン、ビス(3,5ージメチルー4ーシアナートフェニル)メタン、2,2’ービス(3,5-ジメチルー4ーシアナートフェニル)プロパン、2,2’ービス(4ーシアナートフェニル)エタン、2,2’ービス(4ーシアナートフェニル)ヘキサフロロプロパン、ビス(4ーシアナートフェニル)スルホン、ビス(4ーシアナートフェニル)チオエーテル、フェノールノボラックシアナート、フェノール・ジシクロペンタジエン共縮合物の水酸基をシアネート基に変換したもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、日本国特開2005-264154号公報に合成方法が記載されているシアネートエステル化合物は、低吸湿性、難燃性、誘電特性に優れているため、シアネートエステル化合物として特に好ましい。
【0037】
本発明の硬化性樹脂組成物がシアネート樹脂を含む場合、必要に応じてシアネート基を三量化させてsym-トリアジン環を形成するために、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、鉛アセチルアセトナート、ジブチル錫マレエート等の触媒を本発明の硬化性樹脂組成物に含有させることもできる。触媒は、硬化性樹脂組成物の合計質量100質量部に対して、通常0.0001~0.10質量部、好ましくは0.00015~0.0015質量部使用する。
【0038】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて溶融シリカ、結晶シリカ、多孔質シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、石英粉、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、グラファイト、フォルステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、酸化鉄アスベスト、ガラス粉末等の粉体、またはこれらを球形状あるいは破砕状にした無機充填材を添加することができる。また、特に半導体封止用の硬化性樹脂組成物を得る場合、上記の無機充填材の使用量は、硬化性樹脂組成物中、通常80~92質量%、好ましくは83~90質量%の範囲である。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコーンゲル、シリコーンオイル、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。これら添加剤の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは700質量部以下の範囲である。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を添加してワニス状の組成物(以下、単にワニスという。)とすることができる。溶剤添加により硬化性樹脂組成物の調製時における粘度が下がり、ハンドリング性が向上するとともに、ガラスクロス等の基材への含浸性がより向上する傾向にある。用いられる溶剤としては、例えばγ-ブチロラクトン類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。また、積層板を作成する際は、使用する溶剤の沸点が高すぎると残溶剤として残ってしまう可能性がある。使用する溶剤の沸点としては、200℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以下である。溶剤は、得られたワニス中の溶剤を除く固形分濃度が、通常10~80質量%、好ましくは20~70質量%となる範囲で使用する。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化反応として、不飽和二重結合と反応しうる公知の反応全てを適応することができる。例えば、ラジカル重合、ene反応、Diels-Alder反応などが挙げられる。これらの反応を用いて硬化を行った場合、エポキシ基の開環反応を利用する硬化反応とは異なり、硬化過程において極性基が発生しないため、耐熱性の向上に伴う吸水性や電気特性の悪化が少なくて済む。
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、任意のアルケニル基含有化合物を組成物中に含有することができる。硬化時には、本発明記載のアルケニル化合物と任意のアルケニル基含有化合物との組み合わせによるラジカル重合を利用することができる。任意のアルケニル基としては、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基が挙げられ、公知のものであれば特に限定されないが、好ましい具体例としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、エイコセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロノネニル基、シクロデセニル基、シクロウンデセニル基、シクロドデセニル基、シクロトリデセニル基、シクロテトラデセニル基、シクロペンタデセニル基、シクロヘキサデセニル基、シクロヘプタデセニル基、シクロオクタデセニル基、シクロノナデセニル基、シクロエイコセニル基等が挙げられ、さらにノルボルニル基等の多環式化合物もこの範疇に含まれる。また、任意のアルケニル基としては、C6~C20の1~4環のアルケニル基がより好ましい。また、任意のアルケニル基における任意の数の水素原子が、それぞれハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基で置換されていてもよい。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物の調製方法は、公知の方法に従い実施することができるが、これに限定されるものではない。例えば、各成分を均一に混合するだけでも、あるいはプレポリマー化してもよい。具体的には、前記式(1)で表されるアルケニル基含有化合物とマレイミド樹脂とを、触媒の存在下または不存在下、溶剤の存在下または不存在下において加熱することによりプレポリマー化する。同様に、前記式(1)で表されるアルケニル基含有化合物とマレイミド樹脂に、必要によりエポキシ樹脂、アミン化合物、マレイミド系化合物、シアネートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物化合物及びその他添加剤を追加して、プレポリマー化してもよい。各成分の混合またはプレポリマー化は、溶剤の不存在下では、例えば、押出機、ニーダ、ロールなどを用い、溶剤の存在下では、攪拌装置つきの反応釜などを使用する。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、上記各成分を所定の割合で均一に混合することにより得られる。また、例えば、通常130~180℃で30~500秒の範囲で本発明の硬化性樹脂組成物を予備硬化し、更に、150~200℃で2~15時間の範囲で後硬化することにより、充分な硬化反応が進行し、本発明の硬化物が得られる。又、硬化性樹脂組成物の成分を溶剤等に均一に分散または溶解させ、溶媒を除去した後で、硬化させることもできる。
【0044】
こうして得られる本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、耐湿性、耐熱性、高接着性を有する。従って、本発明の硬化性樹脂組成物は、耐湿性、耐熱性、高接着性の要求される広範な分野で用いることが出来る。具体的には、絶縁材料、積層板(プリント配線板、BGA用基板、ビルドアップ基板など)、封止材料、レジスト等あらゆる電気・電子部品用材料として有用である。又、成形材料、複合材料の他、塗料材料、接着剤等の分野にも用いることが出来る。特に半導体封止においては、耐ハンダリフロー性が有益なものとなる。
半導体装置は、本発明の硬化性樹脂組成物で封止されたものを有する。半導体装置としては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)、SOP(スモールアウトラインパッケージ)、TSOP(シンスモールアウトラインパッケージ)、TQFP(シンクワッドフラットパッケージ)等が挙げられる。
【0045】
本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱溶融し、低粘度化して、ガラス繊維、カ-ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維などの強化繊維に含浸させることにより、プリプレグを得ることもできる。その具体例としては、例えば、Eガラスクロス、Dガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、球状ガラスクロス、NEガラスクロス、及びTガラスクロス等のガラス繊維、更にガラス以外の無機物の繊維やポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、全芳香族ポリアミド、ポリエステル;並びに、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリイミド及び炭素繊維などの有機繊維が挙げられるが、これらに特に限定されない。基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマットなどが挙げられる。また、織布の織り方としては、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、織布を開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01~0.4mm程度である。
さらに、上記プリプレグを所望の形に裁断し、必要により銅箔などと積層後、積層物にプレス成形法やオートクレーブ成形法、シートワインディング成形法などで圧力をかけながら硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることにより、電気電子用積層板(プリント配線板)や、炭素繊維強化材を得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例において、各物性は以下の条件で測定した。
<融点>
DSCにより測定。吸熱ピークトップの値を融点とした。
装置:Q-2000 TA-instruments社製
モード:M(モジュレート)DSCモード
昇温速度:10℃/min
測定温度範囲:30℃から300℃
<1H-NMR>
装置:JNM-ECS400 日本電子株式会社製
【0047】
(実施例1)
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、シアヌルクロリド15.0質量部、トルエン40.8質量部、ジメチルホルムアミド4.1質量部、2-アリルフェノール32.9質量部、炭酸カリウム67.6質量部を加え、内温を100℃まで昇温した。100℃で6時間反応を行い、放冷後、トルエン200質量部を加え水洗し、減圧濃縮することにより、下記式(4)で表されるシアヌルクロリドと2-アリルフェノールのエーテル化反応物(AP-CC)37.9質量部(収率98%)を得た。得られた反応物の融点は110℃であった。
【0048】
【0049】
(実施例2)
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、シアヌルクロリド18.4質量部、トルエン50質量部、ジメチルホルムアミド5.0質量部、2-(1-プロペニル)フェノール40.3質量部、炭酸カリウム82.9質量部を加え、内温を100℃まで昇温した。100℃で6時間反応を行い、放冷後、トルエン200質量部を加え水洗し、減圧濃縮することにより、下記式(5)で表されるシアヌルクロリドと2-(1-プロペニル)フェノールのエーテル化反応物(PP-CC)39.2質量部(収率82%)を得た。得られた反応物の融点は131℃であった。
【0050】
【0051】
(実施例3)
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、アセトン100質量部、シアヌルクロリド18.4質量部、オイゲノール49.3質量部を加え撹拌を開始し、内温を30℃まで昇温した。水酸化ナトリウム12.6質量部を1.5時間かけて添加し、30℃で6時間反応を行った。減圧濃縮によりアセトンを取り除いた後、トルエン100gを加え、水洗を行い、減圧濃縮することにより、下記式(6)で表されるシアヌルクロリドとオイゲノールのエーテル化反応物(Eu-CC)47.6質量部(収率84%)を得た。得られた反応物の融点は125℃であった。
【0052】
【0053】
(実施例4)
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、2-アリルフェノール40.3質量部、ジメチルスルホキシド117質量部、水58.8質量部を加え撹拌を開始した。水酸化ナトリウム24.6gを1時間かけて分割添加し、内温を70℃へ昇温した。p-キシリレンジクロリド26.3質量部を1時間かけて添加し、70℃で2時間反応させた。放冷後、析出した結晶を濾過で濾別し、下記式(7)で表されるp-キシレンジクロリドと2-アリルフェノールのエーテル化反応物(AP-XLC)49.1質量部(収率88%)で得た。得られた反応物の融点は46℃であった。測定した
1H-NMRチャートは
図1に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6);δ(ppm)4.98-5.08(m,4H),5.13(s,4H),5.97(tt,2H),6.89(t,2H),7.03(d,2H),7.10-7.21(m,4H),7.48(s,4H)
【0054】
【0055】
(実施例5)
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、2-(1-プロペニル)フェノール40.3質量部、ジメチルスルホキシド117質量部、水58.8質量部を加え撹拌を開始した。水酸化ナトリウム24.6gを1時間かけて分割添加し、内温を70℃へ昇温した。p-キシリレンジクロリド26.3質量部を1時間かけて添加し、70℃で2時間反応させた。放冷後、析出した結晶を濾過で濾別し、下記式(8)で表されるp-キシレンジクロリドと2-(1-プロペニル)フェノールのエーテル化反応物(PP-XLC)49.0質量部(収率88%)を得た。得られた反応物の融点は53℃であった。測定した
1H-NMRチャートは
図2に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6);δ(ppm)1.72-1.89(m,6H),5.10-5.18(m,6H),5.70-7.52(m,14H)
【0056】
【0057】
(実施例6)
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、p-キシリレンジクロリド35.0質量部、オイゲノール65.7質量部、炭酸カリウム66.3質量部、ジメチルホルムアミド210mLを仕込み、室温で6時間反応後、70℃に昇温し6時間反応させた。水500質量部を加え、固体を析出させ、濾過によりこの固体を分取した。濾別した固体を多量の水で洗浄後、多量のメタノールで洗浄し、80℃で12時間乾燥させることにより、下記式(9)で表されるp-キシレンジクロリドとオイゲノールのエーテル化反応物(Eu-XLC)78.6質量部(収率91%)を得た。得られた反応物の融点は106℃であった。測定した
1H-NMRチャートは
図3に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6);δ(ppm)3.29(d,4H),3.73(s,6H),4.99-5.12(m,8H),5.94(dq,2H),6.68(d,2H),6.80(s,2H),6.92(d,2H),7.44(s,4H)
【0058】
【0059】
(実施例7)
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、p-キシリレンジクロリド35.0質量部、イソオイゲノール65.7質量部、炭酸カリウム66.3質量部、ジメチルホルムアミド210mLを仕込み、室温で6時間反応後、70℃に昇温し6時間反応させた。水500質量部を加え、固体を析出させ、濾過によりこの固体を分取した。濾別した固体を多量の水で洗浄後、多量のメタノールで洗浄し、80℃で12時間乾燥させることにより、下記式(10)で表されるp-キシレンジクロリドとイソオイゲノールのエーテル化反応物(IEu-XLC)76.0質量部(収率88%)を得た。得られた反応物の融点は145.8℃であった。
【0060】
【0061】
(実施例8)
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、2-アリルフェノール40.3質量部、ジメチルスルホキシド230質量部、水58.8質量部を加え、撹拌を開始した。水酸化ナトリウム24.6gを1時間かけて分割添加し、内温を70℃へ昇温した。p-ビスクロロメチレンビフェニル37.7質量部を1時間かけて添加し、70℃で2時間反応させた。析出した結晶を濾過で濾別し、下記式(11)で表されるp-ビスクロロメチレンビフェニルと2-アリルフェノールのエーテル化反応物(AP-BCMB)60.9質量部(収率91%)であった。得られた反応物の融点は105℃であった。測定した
1H-NMRチャートは
図4に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6);δ(ppm)3.4(d,4H),5.01-5.09(m,4H),5.18(s,4H),5.99(tt,2H),6.91(t,2H),7.05-7.25(m,6H),7.65(dd,8H)
【0062】
【0063】
(実施例9)
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、2-(1-プロペニル)フェノール20.2質量部、ジメチルスルホキシド230質量部、水29.4質量部を加え、撹拌を開始した。水酸化ナトリウム12.3gを1時間かけて分割添加し、内温を70℃へ昇温した。p-ビスクロロメチレンビフェニル18.8質量部を1時間かけて添加し、70℃で2時間反応させた。析出した結晶を濾過で濾別し、下記式(12)で表されるp-ビスクロロメチレンビフェニルと2-(1-プロペニル)フェノールのエーテル化反応物(PP-BCMB)31.3質量部(収率93%)を得た。得られた反応物の融点は164℃であった。測定した
1H-NMRチャートは
図5に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6);δ(ppm)1.73-1.89(m,2H),3.10-3.22(m,10H),4.05-4.18(m,4H),5.12-5.22(m,2H),5.72-7.78(m,12H)
【0064】
【0065】
(実施例10)
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、オイゲノール24.6質量部、ジメチルスルホキシド250質量部、水29.4質量部を加え、撹拌を開始した。水酸化ナトリウム12.3gを1時間かけて分割添加し、内温を70℃へ昇温した。p-ビスクロロメチレンビフェニル18.8質量部を1時間かけて添加し、70℃で2時間反応させた。析出した結晶を濾過で濾別し、下記式(13)で表されるp-ビスクロロメチレンビフェニルとオイゲノールのエーテル化反応物(Eu-BCMB)31.9質量部(収率84%)を得た。得られた反応物の融点は102℃であった。
【0066】
【0067】
(実施例11~19、比較例1)
実施例1、2、4、5及び9で得られたアルケニル基含有化合物、マレイミド樹脂、ラジカル重合開始剤を表1の割合(重量部)で配合し、金属容器中で加熱溶融混合してそのまま金型に流し込み、220℃で2時間硬化させた。
比較例1は、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂などを表1の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールで混練、タブレット化後、トランスファー成形で樹脂成形体を調製し、200℃で2時間、更に220℃で6時間硬化させた。
このようにして得られた硬化物の物性を下記項目について測定した結果を表1に示す。
【0068】
<耐熱性試験>
・ガラス転移温度:動的粘弾性試験機により測定し、tanδが最大値のときの温度。
測定装置:TA-instruments製、Q-800
測定温度範囲:30℃~350℃
昇温速度:2℃/min
試験片サイズ:5mm×50mm×0.8mm
<誘電率試験・誘電正接試験>
・(株)関東電子応用開発製の1GHz空洞共振器を用いて、空洞共振器摂動法にてテストを行った。ただし、サンプルサイズは幅1.7mm×長さ100mmとし、厚さは1.7mmで試験を行った。
【0069】
【0070】
BMI:4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン(東京化成工業社製)
MIR:日本国特開2009-001783号公報実施例4に記載のマレイミド樹脂
エポキシ樹脂:NC-3000-L(日本化薬社製)
フェノール樹脂:GPH-65(日本化薬社製)
2E-4MZ:2-エチル-4-メチルイミダゾール(東京化成工業社製)
DCP:ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ社製)
【0071】
表1の結果より、本発明のアルケニル基含化合物を用いた実施例11~19は、優れた誘電特性と高い耐熱性を有することが確認された。
【0072】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本願は、2018年4月9日付で出願された2つの日本国特許出願(特願2018-74454、特願2018-74456)に基づいており、それらの全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
したがって、本発明のアルケニル基含化合物は、電気電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)、積層板(プリント配線板、BGA用基板、ビルドアップ基板など)、接着剤(導電性接着剤など)、CFRPを始めとする各種複合材料用、及び塗料等の用途に有用である。