IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-モータ 図1
  • 特許-モータ 図2
  • 特許-モータ 図3
  • 特許-モータ 図4
  • 特許-モータ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 29/08 20060101AFI20221007BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20221007BHJP
【FI】
H02K29/08
H02K11/215
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017025623
(22)【出願日】2017-02-15
(65)【公開番号】P2018133899
(43)【公開日】2018-08-23
【審査請求日】2019-06-17
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117499
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 誠
(72)【発明者】
【氏名】阪本 光則
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 哲志
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-22072(JP,U)
【文献】国際公開第2017/002869(WO,A1)
【文献】特開昭61-76055(JP,A)
【文献】特開平2-223361(JP,A)
【文献】特開平1-170778(JP,A)
【文献】特開平1-110036(JP,A)
【文献】特開昭62-18960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K11/215,29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を有するロータと、コイルが巻き回されたステータとを備え、前記永久磁石はステータが生成する回転磁界との間での磁気的相互作用により前記ロータを回転させるモータであって、
前記永久磁石の磁束を検知するためのセンサを備え、
前記センサは、前記永久磁石の軸方向端面と対向し、かつ、前記コイルのコイルエンドの径方向内側に配置され、
前記ロータと一体的に回転するロータ軸と、
前記ロータ軸の反負荷側部分を支持する反負荷側軸受と、
前記ロータと前記反負荷側軸受との間に配置され、前記センサを保持するセンサ基板と、を備え、
前記センサ基板は、前記ロータ軸が挿通される挿通孔を有し、
前記挿通孔は、前記反負荷側軸受が軸方向に挿通不能な形状であり、かつ、前記ロータ軸が径方向に通過可能な形状であるモータ。
【請求項2】
前記反負荷側軸受を支持する反負荷側カバーと、
前記反負荷側カバーから前記ロータ側に向かって突設された複数のスペーサと、を備え、
前記センサ基板は、前記スペーサの先端部に固定される請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
永久磁石を有するロータと、コイルが巻き回されたステータとを備え、前記永久磁石はステータが生成する回転磁界との間での磁気的相互作用により前記ロータを回転させるモータであって、
前記永久磁石の磁束を検知するためのセンサを備え、
前記センサは、前記永久磁石の軸方向端面と対向し、かつ、前記コイルのコイルエンドの径方向内側に配置され、
前記ロータと一体的に回転するロータ軸と、
前記ロータ軸の反負荷側部分を支持する反負荷側軸受と、
前記センサを保持するセンサ基板と、を備え、
前記センサ基板は、前記ロータ軸が挿通される挿通孔を有し、
前記挿通孔は、前記反負荷側軸受が軸方向に挿通不能な形状であり、かつ、前記ロータ軸が径方向に通過可能な形状であり、
前記反負荷側軸受を支持する反負荷側カバーと、
前記反負荷側カバーから前記ロータ側に向かって突設された複数のスペーサと、を備え、
前記センサ基板は、前記スペーサの先端部に固定され、
前記スペーサは、
前記反負荷側カバーに固定される第1スペーサと、
前記第1スペーサに連結され、前記センサ基板が固定される第2スペーサと、を有するモータ。
【請求項4】
前記反負荷側軸受を支持する反負荷側カバーを備え、
前記反負荷側軸受は、前記反負荷側カバーに隙間嵌めで嵌合される請求項1から3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記反負荷側軸受は、前記ロータ軸に締まり嵌めで嵌合される請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記ロータ軸を反負荷側軸受を介して支持する反負荷側カバーと、
前記ロータ軸を負荷側軸受を介して支持する負荷側カバーと、を備え、
前記負荷側カバーに対する前記負荷側軸受の軸方向の遊び量よりも、前記反負荷側カバーに対する前記反負荷側軸受の軸方向の遊び量が大きい請求項1から5のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記反負荷側軸受を支持する反負荷側カバーと、
前記センサ基板を支持する基板支持ケーシングと、を備え、
前記反負荷側カバーと前記基板支持ケーシングとは別部材である請求項1から6のいずれかに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータ等のモータでは、コイルに対する通電状態を適切に制御できるように、ロータの回転位置を検出するセンサを用いる場合がある。この一例として、特許文献1には、回転子永久磁石とは別体のセンサ磁石を回転シャフトに装着し、そのセンサ磁石の回転位置を検出する磁気感応素子を設けたモータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-145320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のモータでは、ステータと反負荷側カバーの間にセンサ磁石が配置されており、その軸方向寸法が余計に増大してしまう。本発明者は、モータの小型化を図る観点から、改良の余地があるとの認識を得た。
【0005】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサを用いるモータに関して、その軸方向寸法の小型化を図れる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様はモータに関する。モータは、永久磁石を有するロータと、コイルが巻き回されたステータとを備えるモータであって、前記永久磁石の磁束を検知するためのセンサを備え、前記センサは、前記永久磁石の軸方向端面と対向し、かつ、前記コイルのコイルエンドの径方向内側に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、センサを用いるモータに関して、その軸方向寸法の小型化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のモータが用いられるギヤモータを示す断面図である。
図2】第1実施形態のモータの一部の拡大断面図である。
図3】第1実施形態のセンサ基板を負荷側から見た図である。
図4】軸付アセンブリにセンサアセンブリを組み付ける工程の途中状態を示す図である。
図5】第2実施形態のモータの一部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態、変形例では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、構成要素の寸法を適宜拡大、縮小して示す。
【0010】
図1は、第1実施形態のモータ12が用いられるギヤモータ10を示す断面図である。ギヤモータ10は、モータ12と、減速機14を備え、これらが一体化されている。本明細書では、モータ12の軸方向、周方向、径方向に関して、単に「軸方向」、「周方向」、「径方向」ともいう。モータ12の軸方向は、後述するロータ32の回転中心線に沿った方向でもある。モータ12の軸方向の両側のうち、減速機14がある側を負荷側といい、減速機14とは反対側を反負荷側という。
【0011】
減速機14は、減速機ケーシング16と、入力軸18と、出力軸20と、減速機構22と、を備える。減速機ケーシング16は、減速機14の筐体となる。本実施形態の入力軸18は、モータ12のロータ軸36(後述する)が兼用している。
【0012】
減速機構22は、入力軸18の回転動力を減速して出力軸20に伝達するためのものである。本実施形態の減速機構22は1段のギヤセット24のみを有するが、その段数は特に限られない。本実施形態のギヤセット24はハイポイドギヤセット24である。ハイポイドギヤセット24は、入力側歯車となるハイポイドピニオン26と、出力側歯車となるハイポイドギヤ28とを有する。ハイポイドピニオン26は、ロータ軸36の負荷側端部にロータ軸36と一体的に形成される。ハイポイドギヤ28は、ロータ軸36と直交する面と平行なギヤ軸に取り付けられ、ハイポイドピニオン26と噛み合う。本実施形態のギヤ軸は出力軸20である。
【0013】
本実施形態のモータ12はブラシレスDCモータである。モータ12は、モータケーシング30と、ロータ32と、ステータ34と、ロータ軸36と、負荷側軸受38と、反負荷側軸受40と、センサ42と、センサ基板44と、複数のスペーサ46と、を備える。
【0014】
モータケーシング30は、筒状のモータフレーム48と、モータフレーム48の負荷側開口部を覆う負荷側カバー50と、モータフレーム48の反負荷側開口部を覆う反負荷側カバー52とを備える。本実施形態の負荷側カバー50は、減速機ケーシング16の一部と一体的に形成されている。モータフレーム48、負荷側カバー50、反負荷側カバー52は長ボルト54により固定される。
【0015】
本実施形態のロータ32はステータ34の内周側に配置されるインナーロータである。本実施形態のロータ32は筒状をなす。ロータ32は永久磁石56を有する。永久磁石56は、ステータ34が生成する回転磁界との間での磁気的相互作用によりロータ軸36を回転させるためのものである。永久磁石56は、ロータ軸36の外周面に貼着等によりロータ軸36と一体的に回転可能に設けられる。永久磁石56は周方向に交互に異なる磁極が設けられるように着磁される。
【0016】
ステータ34は、ステータコア58と、コイル60とを有する。ステータコア58は、たとえば、複数の積層鋼板等を用いて構成される。ステータコア58は、モータケーシング30にボルト62又は圧入等により固定される。ステータコア58には複数のティース部(不図示)が周方向に間を空けて形成され、そのティース部には回転磁場を生成するためのコイル60が巻き回される。コイル60は、その折り返し部分として、ステータコア58の軸方向端面から軸方向に突出するコイルエンド60aを有する。ステータコア58より反負荷側にあるコイルエンド60aは、ロータ32より反負荷側にオフセットした位置にあるように設けられる。
【0017】
ロータ軸36は、ロータ32の内側に挿通されるロータ挿通部36aと、ロータ32より負荷側にある負荷側部分36bと、ロータ32より反負荷側にある反負荷側部分36cとを有する。負荷側部分36bは、負荷側軸受38を介して負荷側カバー50に回転可能に支持される。反負荷側部分36cは、反負荷側軸受40を介して反負荷側カバー52に回転可能に支持される。ロータ挿通部36aと反負荷側部分36cとの間には反負荷側に臨む段差状の第1肩部36dが設けられる。
【0018】
負荷側軸受38は、ロータ軸36の負荷側部分36bを回転可能に支持する。本実施形態の負荷側軸受38は、潤滑油(不図示)が内部に封入された転がり軸受である。負荷側軸受38は、反負荷側軸受40の外径より大きい外径で、かつ、反負荷側軸受40の内径より大きい内径に設定される。
【0019】
負荷側軸受38の内輪は、ロータ軸36の負荷側部分36bに締まり嵌めにより嵌合されることで、その負荷側部分36bに固定される。ロータ軸36の負荷側部分36bには、負荷側軸受38に負荷側から当接することで、負荷側軸受38の負荷側への変位を規制する第1段差部36eが設けられる。本実施形態の第1段差部36eは、ロータ軸36の負荷側部分36bに取り付けられる止め輪に設けられる。また、ロータ軸36の負荷側部分36bには、負荷側軸受38に反負荷側から当接することで、負荷側軸受38の反負荷側への変位を規制する第2段差部36fが設けられる。負荷側軸受38は、第1段差部36eと第2段差部36fの間に挟み込まれている。
【0020】
負荷側カバー50は、反負荷側に臨む内面として反負荷側面50aを有する。負荷側カバー50の反負荷側面50aの中央部には、負荷側に窪む第1嵌込部50bが形成される。第1嵌込部50bには負荷側軸受38が隙間嵌めで嵌め込まれる。
【0021】
第1嵌込部50bは、負荷側軸受38に負荷側から当接することにより、負荷側軸受38の負荷側への変位を規制するための段差状の変位規制面50cを有する。負荷側カバー50の反負荷側面50aには、負荷側軸受38に反負荷側から当接することにより、負荷側軸受38の反負荷側への変位を規制するための押さえ部材50dが固定される。押さえ部材50dは、ボルト50eを用いて反負荷側面50aに着脱可能に固定される。押さえ部材50dは、板状かつリング状(周状)をなしており、その内側にはロータ軸36が挿通される。押さえ部材50dの一部は負荷側軸受38の外輪と軸方向に対向する。
【0022】
図2は、モータ12の一部の拡大断面図である。反負荷側軸受40は、ロータ軸36の反負荷側部分36cを回転可能に支持する。本実施形態の反負荷側軸受40は、潤滑油(不図示)が内部に封入された転がり軸受である。反負荷側軸受40の内輪の内側には、ロータ軸36の反負荷側端部が挿通される。反負荷側軸受40の内輪は、ロータ軸36の反負荷側端部に締まり嵌めにより嵌合されることで固定される。ロータ軸36の反負荷側部分36cには反負荷側に臨む段差状の第2肩部36gが設けられる。第2肩部36gは、反負荷側軸受40に負荷側から当接することで、反負荷側軸受40の負荷側への変位を規制する。
【0023】
反負荷側カバー52は、負荷側に臨む内面として負荷側面52aを有する。反負荷側カバー52の負荷側面52aの中央部には反負荷側に窪む第2嵌込部52bが形成される。反負荷側カバー52の負荷側面52aには、負荷側に突出する筒状の突出壁部52cが形成される。反負荷側カバー52の第2嵌込部52bは、その突出壁部52cの内周側に形成される。第2嵌込部52bには、反負荷側軸受40が隙間嵌めで嵌め込まれる。反負荷側軸受40は、反負荷側カバー52に隙間嵌めで嵌合されることになる。
【0024】
図3は、センサ基板44を負荷側から見た図である。図2図3に示すように、センサ42は、センサ基板44の板厚方向の片面に実装される。センサ42は、センサ基板44のセンサ実装面44aに予め定められた角度ピッチ(本例では120°ピッチ)で複数実装される。
【0025】
センサ42は、コイル60のコイルエンド60aとロータ軸36の間に形成される隙間空間64に配置され、永久磁石56の軸方向端面56aと対向する。センサ42は、コイルエンド60aの径方向内側に配置されることになる。換言すると、コイルエンド60aとセンサ42は径方向から見て重なっている。本実施形態では、センサ42の全体がコイルエンド60aの径方向内側に配置されているが、センサ42の一部がコイルエンド60aの径方向内側に配置されてもよい。この隙間空間64は、ロータ32やロータ軸36の第1肩部36dより反負荷側にて環状に広がるように形成される。
【0026】
センサ42は、ホール素子、ホールIC等の磁気感応素子である。センサ42は、永久磁石56の磁束を検知することでロータ32の回転位置を検出するためのものである。詳しくは、センサ42は、軸方向に対向する永久磁石56の磁束を検知し、その永久磁石56の磁極の極性に応じた検出信号を生成する。複数のセンサ42が生成する検出信号の組み合わせは、ロータ32の回転位置を表しており、この検出信号によりロータ32の回転位置が検出される。センサ42は、センサ基板44から配線(不図示)を介して外部制御装置(不図示)に検出信号を出力する。外部制御装置は、センサ42から出力される検出信号を用いて、コイル60に対する通電状態を制御し、ロータ32を回転させる。
【0027】
センサ基板44は、センサ42を保持するものであり、センサ42と同様、コイルエンド60aとロータ軸36の間の隙間空間64に配置される。センサ基板44のセンサ実装面44aは永久磁石56の軸方向端面56aやロータ軸36の第1肩部36dと軸方向に対向する。
【0028】
センサ基板44は、ロータ軸36が挿通される挿通孔44bを有する。挿通孔44bはセンサ基板44を板厚方向に貫通する。挿通孔44bは、ロータ軸36が軸方向に挿通される軸挿通部44cと、軸挿通部44cを径方向に開放させる切欠部44dとを有する。センサ基板44は、全体として、リングの一部を切り欠いた周状をなす。
【0029】
挿通孔44bは、反負荷側軸受40が軸方向に挿通不能な形状である。別の観点から見ると、挿通孔44bは、軸方向から見て、挿通孔44bに内接する内接円であって、反負荷側軸受40の軸心Gと同心の内接円の外径が、反負荷側軸受40の外径より小さくなるように設定されるともいえる。挿通孔44bは、その切欠部44dを通して、ロータ軸36が径方向に沿った方向Paに通過可能な形状である。挿通孔44bは、センサ基板44の外部と軸挿通部44cとの間でロータ軸36を径方向に沿った方向Paに挿抜可能な形状であるともいえる。
【0030】
スペーサ46は、反負荷側カバー52からロータ32側に向かって突設される。スペーサ46は、ロータ軸36周りに角度をずらして複数(本例では二つ)突設される。本実施形態のスペーサ46は、反負荷側カバー52の突出壁部52cの先端面から突設される。
【0031】
スペーサ46は、第1スペーサ66と、第2スペーサ68とを有する。第1スペーサ66と第2スペーサ68はいずれも軸方向に延びる柱状をなす。
【0032】
第1スペーサ66は反負荷側カバー52に固定される。本実施形態の第1スペーサ66は、反負荷側カバー52と同じ部材の一部として一体的に設けられる。第1スペーサ66の負荷側の端面には負荷側に向かって開く雌ねじ孔66aが形成される。
【0033】
第2スペーサ68の反負荷側端部には雄ねじ部68aが形成される。第2スペーサ68は、第1スペーサ66の雌ねじ孔66aに第2スペーサ68の雄ねじ部68aをねじ込むことにより、第1スペーサ66に連結される。第2スペーサ68の外周面は、作業者が回転力を付与し易くなるように多角形状に形成される。
【0034】
第2スペーサ68の負荷側端部には雌ねじ孔68bが形成される。第2スペーサ68の雌ねじ孔68bにはセンサ基板44を貫通する固定ボルト70がねじ込まれる。センサ基板44は、この固定ボルト70により第2スペーサ68の先端部に固定される。
【0035】
次に、ギヤモータ10の組み立て方法の一例を説明する。本例は、モータ12の組み立て方法でもある。
【0036】
まず、負荷側軸受38の内側にロータ軸36の負荷側部分36bを圧入し、締まり嵌めによりロータ軸36に負荷側軸受38を固定する。また、反負荷側軸受40の内側にロータ軸36の反負荷側部分36cを圧入し、締まり嵌めによりロータ軸36に反負荷側軸受40を固定する。これらのロータ軸36の圧入作業は、負荷側軸受38や反負荷側軸受40を加熱せずに常温環境のもとで行う。これにより、各軸受38、40内の潤滑油の加熱に伴う劣化等の悪影響を防止できる。なお、ロータ軸36のロータ挿通部36aにはロータ32を固定しておく。また、反負荷側軸受40は、隙間嵌めによりロータ軸36に固定してもよい。
【0037】
次に、負荷側カバー50の第1嵌込部50bに負荷側軸受38を嵌め込むように、ロータ軸36の負荷側部分36bを負荷側カバー50内に挿通させる。このとき、負荷側カバー50は、予め組み立てておいた減速機14と一体化させておき、その減速機14のハイポイドギヤ28にロータ軸36のハイポイドピニオン26を噛み合わせる。負荷側カバー50に負荷側軸受38を嵌め込んだら、負荷側カバー50の反負荷側面50aに押さえ部材50dを固定する。
【0038】
次に、予めステータ34が固定されたモータフレーム48を負荷側カバー50に組み付ける。これにより、ロータ軸36がモータケーシング30の一部に組み付けられた軸付アセンブリを得られる。ここでのモータケーシング30の一部とは、モータフレーム48と負荷側カバー50である。軸付アセンブリのロータ軸36には負荷側軸受38と反負荷側軸受40が一体化されている。
【0039】
次に、反負荷側カバー52に複数のスペーサ46を固定し、予めセンサ42が実装されたセンサ基板44を複数のスペーサ46の先端部に固定する。これにより、センサ基板44が反負荷側カバー52に組み付けられたセンサアセンブリを得られる。
【0040】
次に、前述のように得られた軸付アセンブリにセンサアセンブリを組み付ける。図4は、この組み付け工程の途中状態を示す図である。まず、センサアセンブリ72のセンサ基板44と反負荷側カバー52の間に軸付アセンブリ74の反負荷側軸受40が配置されるように、両者の軸方向での位置を大まかに合わせる。
【0041】
次に、センサ基板44の挿通孔44bの切欠部44d内を軸付アセンブリ74のロータ軸36が通過するように、センサアセンブリ72と軸付アセンブリ74を径方向(図3の方向Pa)に相対移動させる。このとき、センサアセンブリ72の第1スペーサ66と軸付アセンブリ74の反負荷側軸受40が干渉しないように、複数の第1スペーサ66の位置や形状が設定されている。このための一つの条件として、第1スペーサ66は、モータ12が組み立て状態にあるときに、反負荷側軸受40と軸方向に重ならない位置に設けられる。
【0042】
センサ基板44の挿通孔44bの軸挿通部44cにロータ軸36が位置するまで両アセンブリ72、74を相対移動させたら、反負荷側カバー52の第2嵌込部52bに反負荷側軸受40を嵌め込むように、両アセンブリ72、74を軸方向Pbに相対移動させる。この後、長ボルト54により、負荷側カバー50、モータフレーム48、反負荷側カバー52を固定する。
【0043】
以上のモータ12の効果を説明する。
モータ12は、ロータ32の永久磁石56の磁束を検知するセンサ42を備える。よって、ロータ32の回転位置を検出するために、センサ42用のセンサ磁石が不要となる。このため、ステータ34と反負荷側カバー52の間にセンサ磁石用のスペースを確保せずともよくなる。また、センサ42は、コイル60のコイルエンドの径方向内側に配置される。よって、コイル60より反負荷側にセンサ42用のスペースを確保する必要がなくなるか、若しくは小さいスペースでよくなる。これらが相まって、モータ12の軸方向寸法の小型化を図れる。
【0044】
また、かりに、永久磁石56の内周側にセンサ42を配置する場合、永久磁石56の内周側にセンサ42用のスペースを確保するため、永久磁石56の一部を反負荷側に突出させた構造となる。このため、永久磁石56に余分な突出代を確保しなければならず、永久磁石56の素材コストの増大を招く。この点、本実施形態のセンサ42は、永久磁石56の軸方向端面56aと対向している。よって、永久磁石56にセンサ42用の余分な突出代を確保せずともよくなり、永久磁石56の素材コストの増大を防止できる。
【0045】
また、センサ基板44の挿通孔44bは反負荷側軸受40が軸方向に挿通不能な形状である。これは、反負荷側軸受40として、センサ基板44の挿通孔44bの内径よりも外径の大きいものを採用できることを意味する。よって、反負荷側軸受40のサイズの大型化により、反負荷側軸受40の耐久性を向上させる設計が許容される。
【0046】
このように、センサ基板44の挿通孔44bが反負荷側軸受40を軸方向に挿通不能な形状の場合、次の問題がある。前述の軸付アセンブリ74にセンサアセンブリ72を組み付けるケースを考える。このケースのもとでは、両アセンブリ72、74を軸方向に相対変位させるのみでは、軸付アセンブリ74の反負荷側軸受40が、センサアセンブリ72のセンサ基板44と干渉してしまい、両者を組み付け不能になる。
【0047】
ここで、本例のセンサ基板44の挿通孔44bは、ロータ軸36が径方向に通過可能な形状である。よって、前述のように、両アセンブリ72、74を径方向に相対変位させてから軸方向に相対変位させることで、軸付アセンブリ74にセンサアセンブリ72を組み付け可能となる。このため、本実施形態によれば、反負荷側軸受40のサイズの大型化を図りつつも、反負荷側軸受40と一体化されたロータ軸36に対して、負荷側カバー50と一体化されたセンサ基板44を組み付け可能になる利点がある。
【0048】
また、センサ基板44は、反負荷側カバー52から突設するスペーサ46の先端部に固定される。よって、コイル60のコイルエンド60aとロータ軸36の間のような奥まった隙間空間64でも、これらとの干渉を避けつつセンサ基板44を配置し易くなる。また、このスペーサ46は、複数の第1スペーサ66、68を用いて構成されるため、その軸方向寸法を容易に調整できる利点がある。
【0049】
また、本実施形態では、反負荷側軸受40と一体化されたロータ軸36を負荷側カバー50に組み付けたが、かりに、負荷側カバー50へのロータ軸36の組み付け後、反負荷側軸受40をロータ軸36に組み付ける場合を考える。この場合、反負荷側軸受40とロータ軸36が締まり嵌めで嵌合されるため、反負荷側軸受40の内側へのロータ軸36の圧入に伴いロータ軸36にスラスト荷重が付与され、負荷側軸受38の負担が過度に増大する恐れがある。
【0050】
ここで、本実施形態では、反負荷側軸受40と一体化されたロータ軸36を負荷側カバー50に組み付けた後、反負荷側軸受40を反負荷側カバー52の第2嵌込部52bに嵌合させる手順を経ている。また、本実施形態では、反負荷側軸受40が反負荷側カバー52に隙間嵌めにより嵌合されている。よって、前述の手順を経て反負荷側カバー52に反負荷側軸受40を嵌合させるとき、ロータ軸36にスラスト荷重が付与され難くなり、そのスラスト荷重による負荷側軸受38への負担を軽減できる。
【0051】
なお、前述のように、第1スペーサ66は、モータ12が組み立て状態にあるとき、反負荷側軸受40と軸方向に重ならない位置に設けられる。一方、第2スペーサ68は、モータ12が組み立て状態にあるとき、反負荷側軸受40と一部が軸方向に重なる位置に設けられる。これは、第1スペーサ66と比べて第2スペーサ68を大型化する設計が許容されることを意味している。これに伴い、第2スペーサ68の大型化により、第2スペーサ68に対するセンサ基板44の固定度を高められる。よって、センサ基板44が振動したときでも永久磁石56に対するセンサ基板44の位置の変化を抑えられ、センサ42による永久磁石56の検知精度を確保し易くなる。
【0052】
次に、モータ12の他の特徴を説明する。
図1に示すように、減速機構22にハイポイドギヤセット24を用いた場合、ロータ軸36の回転方向に応じて、軸方向の向きが異なるスラスト荷重がロータ軸36に反力として付与される。たとえば、ロータ軸36が周方向の一方側に回転したとき、ロータ軸36には、ハイポイドギヤ28からハイポイドピニオン26を通して負荷側に向かうスラスト荷重が付与される。一方、ロータ軸36が周方向の他方側に回転したとき、ロータ軸36には、ハイポイドギヤ28からハイポイドピニオン26を通して反負荷側に向かうスラスト荷重が付与される。本実施形態のモータ12は、このようなスラスト荷重を反負荷側軸受40ではなく負荷側軸受38で受けられるようにするため、次の工夫をしている。
【0053】
負荷側カバー50に対する負荷側軸受38の軸方向での遊び量を負荷側遊び量L1とする。この負荷側遊び量L1は、負荷側カバー50に対する負荷側軸受38の軸方向での許容される相対変位量である。この負荷側遊び量L1は、たとえば、負荷側軸受38が負荷側カバー50の変位規制面50cと当接する基準位置にロータ軸36があるとき、負荷側軸受38と押さえ部材50dの間にある隙間の軸方向寸法で表される。
【0054】
反負荷側カバー52に対する反負荷側軸受40の軸方向での遊び量を反負荷側遊び量L2とする。この反負荷側遊び量L2は、反負荷側カバー52に対する反負荷側軸受40の軸方向での許容される相対変位量である。この反負荷側遊び量L2は、たとえば、前述の基準位置にロータ軸36があるとき、反負荷側軸受40と反負荷側カバー52の間にある隙間であって、反負荷側軸受40の軸方向での相対変位を許容する隙間の軸方向寸法で表される。
【0055】
本実施形態のモータ12は、負荷側軸受38の負荷側遊び量L1よりも反負荷側軸受40の反負荷側遊び量L2が大きくなるように設定される。これにより、ロータ軸36に負荷側に向かうスラスト荷重が付与されたときは、ロータ軸36とともに負荷側に変位した負荷側軸受38が負荷側カバー50に当接して変位が規制される。この結果、ロータ軸36の負荷側へのスラスト荷重を負荷側軸受38により受けられる。このとき、反負荷側軸受40は反負荷側カバー52との当接により変位が規制されず、その負荷側へのスラスト荷重は反負荷側軸受40により受けられない。
【0056】
また、ロータ軸36に反負荷側に向かうスラスト荷重が付与されたときは、ロータ軸36とともに反負荷側に変位した負荷側軸受38が押さえ部材50dに当接して変位が規制される。この結果、ロータ軸36の反負荷側へのスラスト荷重が負荷側軸受38により受けられる。このとき、反負荷側軸受40は反負荷側カバー52との当接により変位が規制されず、ロータ軸36のスラスト荷重は反負荷側軸受40により受けられない。
【0057】
つまり、ロータ軸36とともに反負荷側軸受40や負荷側軸受38が軸方向のいずれに変位したときでも、負荷側カバー50や押さえ部材50dとの当接により負荷側軸受38の変位のみが規制され、反負荷側カバー52との当接により反負荷側軸受40の変位が規制されない。別の観点からみると、ロータ軸36の軸方向両側の何れのスラスト荷重でも、反負荷側軸受40ではなく負荷側軸受38を通してモータケーシング30(負荷側カバー50)に伝達可能になる。
【0058】
これにより、ロータ軸36の軸方向両側のスラスト荷重を負荷側軸受38により受けられるようになる。負荷側軸受38は、モータ12の組み立て時、反負荷側軸受40と比べて、モータ12の他の内部部品との干渉が起き難く、反負荷側軸受40より容易にサイズを大型化できる。このような反負荷側軸受40よりサイズの大きい負荷側軸受38によって、ロータ軸36の軸方向両側のスラスト荷重を受けられるため、スラスト荷重に対する強度の向上を図れる。
【0059】
(第2の実施の形態)
図5は、第2実施形態のモータ12を用いたギヤモータ10である。第2実施形態のモータ12は、主には、第1実施形態と比べて、モータケーシング30、センサ基板44、スペーサ46の点で異なる。
【0060】
モータケーシング30は、モータフレーム48と、負荷側カバー50(不図示)と、反負荷側カバー52の他に、基板支持ケーシング76を有する。基板支持ケーシング76は、センサ基板44を支持するためのものであり、モータフレーム48と反負荷側カバー52の間に配置される。基板支持ケーシング76は、モータフレーム48や反負荷側カバー52とは別部材である。
【0061】
基板支持ケーシング76は、モータフレーム48と反負荷側カバー52の間に挟み込まれる環状部76aを有する。環状部76aは、モータ12の外部に露出する外周面を形成している。
【0062】
基板支持ケーシング76は、環状部76aの内周側部分から負荷側に突出する第1嵌合固定部76bを有する。第1嵌合固定部76bは、全体として環状をなしており、その内側にはロータ軸36が挿通される。第1嵌合固定部76bは、モータフレーム48の反負荷側開口部内に圧入された状態で嵌合されることで、モータフレーム48に固定される。第1嵌合固定部76bの内周側部分には第2スペーサ68の雄ねじ部68aをねじ込むための雌ねじ孔76cが形成される。
【0063】
基板支持ケーシング76は、環状部76aの内周側に形成される第2嵌合固定部76dを有する。反負荷側カバー52は、基板支持ケーシング76の第2嵌合固定部76dに対して、その一部が圧入された状態で嵌合されることで、基板支持ケーシング76に固定される。
【0064】
センサ基板44は、第1実施形態と異なり、リング状をなしている。スペーサ46は、第1実施形態と異なり、第2スペーサ68のみを有している。
【0065】
モータ12の組み立て方法の一例を説明する。
負荷側軸受38の内側にロータ軸36の負荷側部分36bを圧入し、締まり嵌めによりロータ軸36に負荷側軸受38を固定する。負荷側カバー50の第1嵌込部50bに負荷側軸受38を嵌め込むように、ロータ軸36の負荷側部分36bを負荷側カバー50内に挿通させる。予めステータ34が固定されたモータフレーム48を負荷側カバー50に組み付ける。これにより、ロータ軸36がモータケーシング30の一部に組み付けられた軸付アセンブリを得られる。ここでのモータケーシング30の一部とは、モータフレーム48と、負荷側カバー50である。軸付アセンブリ74のロータ軸36には、第1実施形態と異なり、負荷側軸受38のみが一体化され、反負荷側軸受40が一体化されていない。
【0066】
次に、基板支持ケーシング76に複数のスペーサ46を固定し、予めセンサ42が実装されたセンサ基板44を複数のスペーサ46の先端部に固定する。この後、基板支持ケーシング76の第1嵌合固定部76bをモータフレーム48の反負荷側開口部に圧入させて、基板支持ケーシング76をモータフレーム48に固定する。このとき、センサ基板44の挿通孔44b内をロータ軸36の反負荷側部分36cが挿通されるように、センサ基板44と一体化された基板支持ケーシング76と軸付アセンブリを軸方向に相対移動させる。
【0067】
この後、反負荷側軸受40の内側にロータ軸36の反負荷側部分36cを圧入し、締まり嵌めによりロータ軸36に反負荷側軸受40を固定する。この後、基板支持ケーシング76の第2嵌合固定部76d内に反負荷側カバー52の一部を圧入させて、基板支持ケーシング76に反負荷側カバー52を固定する。
【0068】
本実施形態によれば、センサ基板44を支持する基板支持ケーシング76と、反負荷側軸受40を支持する反負荷側カバー52が別部材である。よって、センサ基板44を支持する基板支持ケーシング76の組み付け後、反負荷側軸受40を支持する反負荷側カバー52を組み付けられるようになる。このため、センサ基板44の寸法の影響を受けることなく反負荷側軸受40の寸法を設計できるようになる。よって、反負荷側軸受40のサイズの大型化により、反負荷側軸受40の耐久性を向上させる設計が許容されるようになる。
【0069】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0070】
センサ42は、センサ基板44に保持される例を説明したが、これに限られず、他部材に保持されていてもよい。また、センサ42やセンサ基板44は、複数のスペーサ46により反負荷側カバー52に固定される例を説明したが、この固定手段や固定先はこれに限られない。たとえば、センサ42やセンサ基板44はモータフレーム48等に固定されてもよい。
【0071】
ロータ32は永久磁石56のみを有する例を説明したが、これに限られず、ロータコア等を他に有してもよい。ロータ32の種類は特に限られず、埋込磁石型ロータ、表面磁石型ロータ等でもよい。
【0072】
モータ12は減速機14と一体化される例を説明したが、減速機14と一体化されていなくともよい。減速機構22のハイポイドギヤセット24は、ロータ軸36の回転方向に応じて、軸方向の向きが異なるスラスト荷重をロータ軸36に付与するギヤセット24の一例として説明した。このような機能を発揮するギヤセット24の種類はこれに限られないし、このような機能を発揮しないギヤセット24が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0073】
12…モータ、32…ロータ、34…ステータ、36…ロータ軸、38…負荷側軸受、38…軸受、40…反負荷側軸受、42…センサ、44…センサ基板、44b…挿通孔、46…スペーサ、50…負荷側カバー、52…反負荷側カバー、56…永久磁石、56a…軸方向端面、60…コイル、60a…コイルエンド、66…第1スペーサ、68…第2スペーサ、76…基板支持ケーシング。
図1
図2
図3
図4
図5