(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/26 20060101AFI20221007BHJP
B65D 47/06 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
B65D47/26 100
B65D47/06
(21)【出願番号】P 2017146946
(22)【出願日】2017-07-28
【審査請求日】2020-03-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】山田 研
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】當間 庸裕
【審判官】山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-20256(JP,U)
【文献】実開昭60-62049(JP,U)
【文献】国際公開第2017/074195(WO,A1)
【文献】特開2012-51584(JP,A)
【文献】実開平3-69657(JP,U)
【文献】特公昭48-36657(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D47/06
B65D47/20
B65D47/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部と連通する第1液流路を有するキャップ本体と、
一端側で前記第1液流路と連通可能であり他端側に排出口が形成された第2液流路を有し、前記キャップ本体に所定の軸線周りに揺動可能に設けられ前記排出口が外部に露出する露出位置と、前記排出口が前記キャップ本体に遮蔽される遮蔽位置との間で移動可能なトグルボタンとを備え、
前記第1液流路における、流路長さをL1、前記容器内部側端部の最大径をD1aとし、
前記第2液流路側端部の最大径をD1bとし、
前記第2液流路における、流路長さをL2、前記第1液流路側端部の最大径をD2aと
し、前記排出口の最大径をD2bとすると、
(L1/D1a)で表される値が5以上、10以下であり、
(L2/D2a)で表される値が4以上、15以下であ
り、
D1b>D1a 及び D2b>D2a
の関係をそれぞれ満足するトグル式キャップ
と、
前記トグル式キャップが装着される口部を有し洗口剤を収納する容器本体と、を備えることを特徴とする
容器。
【請求項2】
(D1b/D1a)で表される値が
1.2以上、1.9以下であり、
(D2b/D2a)で表される値が
1.2以上、2.1以下であることを特徴とする請求項
1に記載の
容器。
【請求項3】
前記第1液流路における最大径D1aは、1.0mm以上、2.0mm以下であり、
前記第2液流路における最大径をD2aは、0.5mm以上、1.5mm以下であり、
(D1a/D2a)で表される値が1.0以上、2.5以下であることを特徴とする請求項
1または2に記載の
容器。
【請求項4】
前記キャップ本体は、前記第1液流路を有し前記トグルボタンと接したときに前記第1液流路が閉塞される通液管部を備え、
前記第2液流路における前記第1液流路側端部には、前記第2液流路を局所的に絞るオリフィス状の絞り部が設けられ、
前記露出位置において、オリフィス状の前記絞り部は前記第2液流路における前記第1液流路との連通部に位置し、
前記遮蔽位置において、前記絞り部は前記通液管部の外周面で閉塞されることを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の
容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗口剤等の液剤をボトルから取り出すキャップとしては、スクリューキャップ、トグル式キャップ、プッシュプルキャップやポンプなどが挙げられるが、その中でも適量を加減して取り出しやすいキャップとしてはトグル式キャップが多く用いられている。
【0003】
トグル式キャップは、キャップ本体に例えば、ピボット式に取り付けられたトグルボタンを有している。キャップ本体は、容器内部と連通する液流路を有し、トグルボタンは液剤を排出する排出口と、当該排出口とキャップ本体の液流路とを接続する液流路とを有している。トグル式キャップにおいては、トグルボタンを操作して排出口が外部に露出する位置と、排出口が遮蔽される位置とを切り換えることにより、容器内の液剤の排出と排出停止とを切り換えることが可能である(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭49-114015号公報
【文献】特表平8-510978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液剤を円滑に排出するためには、キャップ本体及びトグルボタンにおける流路の断面積を大きくすることが考えられる。一方、液剤がフッ素洗口剤等の要指導医薬品の場合には、安全性の観点から多量の液剤が一度に排出されすぎないようにすることが求められる。また、キャップ本体における流動抵抗とトグルボタンにおける流動抵抗との組み合わせが適切でない場合には、トグルボタン周囲から液剤が漏れ出たり、排出時に液剤の流れがばらつくといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、トグルボタン周囲からの液漏れを生じさせず、排出時に液剤の流れがばらつくという問題も生じさせずに、液剤の円滑な排出を確保しつつ、安全性の観点で適量の液剤を排出可能な容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、容器内部と連通する第1液流路を有するキャップ本体と、一端側で前記第1液流路と連通可能であり他端側に排出口が形成された第2液流路を有し、前記キャップ本体に所定の軸線周りに揺動可能に設けられ前記排出口が外部に露出する露出位置と、前記排出口が前記キャップ本体に遮蔽される遮蔽位置との間で移動可能なトグルボタンとを備え、前記第1液流路における、流路長さをL1、前記容器内部側端部の最大径をD1aとし、前記第2液流路における、流路長さをL2、前記第1液流路側端部の最大径をD2aとすると、(L1/D1a)で表される値が5以上、10以下であり、(L2/D2a)で表される値が4以上、15以下であることを特徴とするトグル式キャップが提供される。
【0008】
また、上記本発明の一態様に係るトグル式キャップにおいて、前記第1液流路における、前記第2液流路側端部の最大径をD1bとし、前記第2液流路における、前記排出口の最大径をD2bとすると、D1b≧D1a 及び D2b≧D2aの関係をそれぞれ満足することを特徴とする。
【0009】
また、上記本発明の一態様に係るトグル式キャップにおいて、(D1b/D1a)で表される値が1.0以上、2.0以下であり、(D2b/D2a)で表される値が1.0以上、2.5以下であることを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係るトグル式キャップにおいて、前記第1液流路における最大径D1aは、1.0mm以上、2.0mm以下であり、前記第2液流路における最大径をD2aは、0.5mm以上、1.5mm以下であり、(D1a/D2a)で表される値が1.0以上、2.5以下であることを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係るトグル式キャップにおいて、前記第2液流路における前記第1液流路側端部には、前記第2液流路を局所的に絞るオリフィス状の絞り部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の態様に従えば、本発明の第1の態様のトグル式キャップと、前記トグル式キャップが装着される口部を有し内容物を収納する容器本体と、を備えることを特徴とする容器が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、トグルボタン周囲からの液漏れを生じさせず、排出時に液剤の流れがばらつくという問題も生じさせずに、液剤の円滑な排出を確保しつつ、安全性の観点で適量の液剤を排出可能なトグル式キャップ及び容器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態を示す図であって、排出状態(トグルボタンが露出位置)の容器1の部分斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態を示す図であって、停止状態(トグルボタンが遮蔽位置)の容器1の部分斜視図である。
【
図3】排出状態のトグル式キャップ3を軸直方向を含む面で切断した断面図である。
【
図4】停止状態のトグル式キャップ3を軸直方向を含む面で切断した断面図である。
【
図5】停止状態のトグルボタン30を排出口51の軸線を含む水平面で切断した下面図である。
【
図6】トグルボタン30が排出状態(露出位置)となったときの第1液流路FR1及び第2液流路FR2の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のトグル式キャップ及び容器の実施の形態を、
図1ないし
図6を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0016】
図1及び
図2は、容器1の部分斜視図である。
容器1は、例えば、洗口剤等の液剤が収容された容器本体2と、この容器本体2の口部2aに装着されるトグル式キャップ3とを備えている。
【0017】
以下の説明では、容器本体2に対してトグル式キャップ3が装着される側を軸直方向の上側(上方)とし、逆側を下側(下方)として適宜称する。これは、説明の便宜のために上下方向を定義したに過ぎず、本発明に係る容器1の使用時の向きを限定しない。
【0018】
容器本体2は、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂材料をブロー成形によりボトル状に成形したものからなる。この容器本体2の底部から筒状に起立した胴部の上端部には、略円筒状に縮径された口部2aが設けられている。また、口部2aの外周面には、トグル式キャップ3を螺合により装着するためのネジ部(図示せず)が形成されている。
【0019】
トグル式キャップ3は、容器本体2に収容された液剤を排出可能となる状態と、液剤の排出が停止されている状態とを切り替え可能である。
図1には、容器本体2に収容された液剤を排出可能となる状態(適宜、排出状態と称する)が示され、
図2には、液剤の排出が停止されている状態(適宜、停止状態と称する)が示されている。
【0020】
図3は、排出状態のトグル式キャップ3を軸直方向を含む面で切断した断面図である。
図4は、停止状態のトグル式キャップ3を軸直方向を含む面で切断した断面図である。
図3及び
図4に示されるように、トグル式キャップ3は、キャップ本体10とトグルボタン30とを有している。キャップ本体10及びトグルボタン30は、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの合成樹脂材料からなる。
【0021】
図5は、停止状態のトグルボタン30を排出口51の軸線を含む水平面で切断した下面図である。
図5に示されるように、トグルボタン30は、長径部及び短径部を有し長径方向における両側の曲率が異なる略卵状の外径輪郭を有している。排出口51は、長径方向において端部の曲率が大きい先鋭側に形成されている。トグルボタン30は、長径方向において端部の曲率が小さい側に、短径方向の中央に位置してガイド部52が突出して設けられている。以下の説明では、トグルボタン30の長径方向において排出口51が配置された側を排出側と称し、排出側と逆側でガイド部52が配置された側をガイド側と称する。
【0022】
トグルボタン30は、短径方向の両側の外周面に半球状の嵌合突部31を有している。嵌合突部31は、短径方向に延びる同一軸線J上に配置されている。軸線Jの位置は、長径方向において中央よりもガイド側に配置されている。長径方向における軸線Jの位置は、例えば、トグルボタン30の重心を通る位置である。
【0023】
トグルボタン30は、排出側の上面30aと、ガイド側で上面30aよりも下側に段差をもって形成された上面30bとを有している。
図3乃至
図5に示されるように、トグルボタン30の下面側には、円筒状に突出する内側嵌合部32と、内側嵌合部32の径方向外側に同心で配置された外側嵌合部33と、外側嵌合部33よりも径方向外側、且つ、排出側に設けられた流路壁部34とを有している。外側嵌合部33は、内側嵌合部32よりも大きな突出量で形成されている。
【0024】
流路壁部34には、短径方向の中央に位置し、長径方向に沿って排出側に延びる第2液流路FR2が形成されている。第2液流路FR2の排出側の開口部は、排出口51である。第2液流路FR2のガイド側端部には、当該第2液流路FR2を局所的に絞るオリフィス状の絞り部53が設けられている。第2液流路FR2の流路径、及び絞り部53における流路径等については後述する。
【0025】
ガイド部52は、トグルボタン30のガイド側端部から下方に向けて延びている。ガイド部52の外側の面は、側面視で外側に膨出する略円弧形状の外形輪郭を有している。
【0026】
キャップ本体10は、軸直方向と直交して配置された閉塞壁部11と、軸直方向に延びる筒壁部12とを有している。閉塞壁部11は、筒壁部12の軸直方向中途に配置されている。閉塞壁部11は、上方に突出する通液管部20を有している。通液管部20は、上下方向に延びて貫通する第1液流路FR1を有している。第1液流路FR1は、トグル式キャップ3が口部2aに装着されたときに、下端が容器本体2の内部空間に臨む位置に配置されている。
【0027】
筒壁部12は、閉塞壁部11よりも下側に位置する第1筒部13と、閉塞壁部11よりも上側に位置する第2筒部14とを有している。
【0028】
第1筒部13は、円筒状に形成されている。第1筒部13の内周面には、口部2aのネジ部に螺合するネジ部13aが形成されている。また、閉塞壁部11の下面には、口部2aの内周面に嵌合する嵌合筒部15が形成されている。ネジ部13aが口部2aのネジ部に螺合したときに嵌合筒部15が口部2aの内周面に嵌合するとともに、口部2aの上端に閉塞壁部11の下面が当接することにより、口部2aの開口部が閉塞(シール)される。
【0029】
図5に示されるように、第2筒部14は、トグルボタン30の外周面に沿った略卵状の外径輪郭を有している。第2筒部14の内周面14aには、ガイド側端部に上下方向に延びるガイド溝19が形成されている。第2筒部14の内周面14aは、ガイド溝19を除いて停止状態において、トグルボタン30の外周面と近接する位置に配置されている。
【0030】
第2筒部14の内周面14aには、嵌合突部31と対向する位置にトグルボタン30が軸線J周りに揺動可能に嵌合するように嵌合凹部16が形成されている。トグルボタン30は、嵌合突部31が嵌合凹部16に嵌合することにより、軸線J周りに揺動可能である。
【0031】
図3及び
図4に示されるように、排出側における内周面14aには、径方向内側に突出する支持部17が設けられている。支持部17は、閉塞壁部11から上方に突出している。支持部17の高さは、
図4に示されるように、トグルボタン30が軸線J周り(
図3及び
図4では反時計周り)に揺動して、流路壁部34の下面が支持部17に当接したときに、
図4に示されるように、上面30aが略水平となり排出口51が第2筒部14で遮蔽される値に設定されている。
すなわち、トグルボタン30は、軸線J周りに揺動して支持部17に当接して支持されたときに排出口51の遮蔽位置となり液剤の排出が停止状態となる。
【0032】
トグルボタン30の上面30aを下方に押圧して軸線Jを中心としてトグルボタン30を反時計周りに揺動させ、トグルボタン30が遮蔽位置となった際には、トグルボタン30の内側嵌合部32が通液管部20の内周面に嵌合するとともに、トグルボタン30の外側嵌合部33が通液管部20の外周面に嵌合することにより、トグルボタン30の遮蔽位置(停止状態)が保持される。
【0033】
ガイド溝19は、上側に開口し、ガイド部52を幅方向に保持してトグルボタン30を軸線J周りに揺動自在にガイドする。ガイド溝19の下方には、径方向内側に突出する支持部18が設けられている。支持部18は、閉塞壁部11から上方に突出している。支持部18の高さは、
図3に示されるように、トグルボタン30が軸線J周り(
図3及び
図4では時計周り)に揺動してガイド部52の下端部が支持部18に当接したときに、排出口51が外部に露出する値に設定されている。
すなわち、トグルボタン30は、軸線J周りに揺動してガイド部52の下面が支持部18に当接して支持されたときに排出口51が露出位置となり液剤を排出可能な排出状態となる。
【0034】
また、ガイド溝19の径方向外側に位置する底面は、トグルボタン30が露出位置となったときにガイド部52の径方向外側の面と係合し、トグルボタン30を露出位置に保持する係合面21である。
【0035】
トグルボタン30の上面30bを下方に押圧して軸線Jを中心としてトグルボタン30を時計周りに揺動させ、トグルボタン30が露出位置となった際には、トグルボタン30の内側嵌合部32による通液管部20の内周面への嵌合が解除される。トグルボタン30が露出位置となった際には、トグルボタン30の外側嵌合部33による通液管部20の外周面への嵌合は保持される。また、トグルボタン30が露出位置となった際には、ガイド部52の径方向外側の面が係合面21と係合することにより、排出状態が保持される。
【0036】
トグルボタン30が露出位置となった際には、第1液流路FR1の第2液流路FR2側端部(上端部)と、第2液流路FR2における排出口51と逆側の端部とが連通する。より詳細には、第1液流路FR1の第2液流路FR2側端部と、第2液流路FR2における絞り部53の開口部とが連通する。
【0037】
図6は、トグルボタン30が露出位置となったときの第1液流路FR1及び第2液流路FR2の詳細を示す図である。
図6に示すように、第1液流路FR1は、容器本体2の内部側端部(下端部)から上方に向かうに従って最大径が漸次大きくなっている。すなわち、第1液流路FR1における容器本体2の内部側端部の最大径をD1aとし、第2液流路FR2側端部(上端部)の最大径をD1bとすると、本実施形態のトグル式キャップ3は以下の関係を満足する。
D1b≧D1a …(1)
【0038】
また、第2液流路FR2における第1液流路FR1側端部の最大径をD2aとし、排出口51側端部の最大径をD2bとすると、本実施形態のトグル式キャップ3は以下の関係を満足する。
D2b≧D2a …(2)
【0039】
上記の関係(1)及び関係(2)を満足することにより、本実施形態のトグル式キャップ3においては、第1液流路FR1及び第2液流路FR2のそれぞれで下流側端部の断面積が上流側端部の断面積以上となる。そのため、本実施形態のトグル式キャップ3においては、容器本体2の内部から排出口51に向けて流動する液剤が第1液流路FR1及び第2液流路FR2を流動する際にそれぞれ流速を低下させることが可能となる。そのため、その後に液剤が排出口51から勢いよく吐出されることを抑制可能になるとともに、排出口51から一定の方向に直線的、且つ、連続的に液剤を排出することが可能になる。
【0040】
上記の効果を発揮するためには、以下の関係(3)及び関係(4)を満足することが好ましい。
1.0 ≦(D1b/D1a)≦ 2.0 …(3)
1.0 ≦(D2b/D2a)≦ 2.5 …(4)
関係(3)及び関係(4)を満足することにより、関係(1)及び関係(2)を満足する効果に加えて、関係(3)及び関係(4)の上限値を超えた場合に生じる、排出口51から排出された液剤の流れのばらつきを抑制することが可能になる。
【0041】
また、第1液流路FR1の流路長さをL1とし、第2液流路FR2の流路長さをL2とすると、本実施形態のトグル式キャップ3は以下の関係を満足する。
5≦(L1/D1a)≦10 …(5)
4≦(L2/D2a)≦15 …(6)
【0042】
(L1/D1a)で表される値が関係(5)に示される上限値を超え、且つ、(L2/D2a)で表される値が関係(6)に示される上限値を超えた場合には、トグル式キャップ3においては流路抵抗が高くなりすぎるため、液剤が第1液流路FR1及び第2液流路FR2を通過するまで時間が掛かりすぎ円滑な液剤排出が困難になるという不具合が生じる可能性がある。
【0043】
また、(L1/D1a)で表される値が関係(5)に示される下限値を下回り、且つ、(L2/D2a)で表される値が関係(6)に示される下限値を下回った場合には、トグル式キャップ3においては、流路抵抗が低くなって排出口51から一度に液剤が排出されすぎる不具合が生じる可能性がある。
【0044】
上記の関係(5)、(6)のうち、関係(5)のみを満足する場合には、(L2/D2a)で表される値によっては、液剤の流れがばらつく不具合が生じる可能性がある。また、上記の関係(5)、(6)のうち、関係(6)のみを満足する場合には、(L1/D1a)で表される値によっては、第2筒部14の内周面14aと、トグルボタン30の外周面との近接部から液漏れが生じるという不具合が生じる可能性がある。
上述したように、トグルボタン30が露出位置となった際には、トグルボタン30の外側嵌合部33による通液管部20の外周面への嵌合が保持されることにより、キャップ本体10とトグルボタン30の液密性が確保される。ところが、関係(6)を満足し、関係(5)を満足しない場合、例えば、(L1/D1a)で表される値が関係(5)に示される下限値を下回る場合には、第1液流路FR1における流動抵抗が第2液流路FR2における流動抵抗よりも小さくなる。その結果、第2液流路FR2からの液剤の排出量よりも第1液流路FR1から第2液流路FR2との連通部に供給される液剤の供給量が大きくなることで当該連通部における液圧が高くなり、トグルボタン30の外側嵌合部33による通液管部20の外周面への嵌合部から漏れ出た液剤がキャップ本体10とトグルボタン30との近接部から漏れ出る可能性がある。
【0045】
また、本実施形態のトグル式キャップ3においては、最大径D1aが、1.0mm以上、2.0mm以下であり、最大径D2aが、0.5mm以上、1.5mm以下であり、(D1a/D2a)で表される値が1.0以上、2.5以下であることが液剤の排出量を安全性を伴って制御し、円滑な液剤排出を可能とする観点から好ましい。
【0046】
ここで、安全性の観点からの好ましい排出量(目標とする排出量)としては、一例として、1秒間に排出される液剤が平均1.25mL以下である。これは、薬剤10mLを排出するために要する時間が8秒以上となる排出量である。また、円滑な液剤排出を可能とする観点からの好ましい排出量(目標とする排出量)としては、一例として、1秒間に排出される液剤が平均0.67mL以上である。これは、薬剤10mLを排出するために要する時間が15秒以下となる排出量である。なお、上述した一度に液剤が出過ぎるという不具合は、一例として、1秒間に排出される液剤が平均2mL以上である。これは、薬剤10mLを排出するために要する時間が5秒以下となる排出量である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0048】
(実施例1~5、比較例1~4)
表1に示す仕様に従い、ポリプロピレン樹脂製のキャップ本体10及びトグルボタン30を射出成形により作製し、トグルボタン30の嵌合突部31をキャップ本体10の嵌合凹部16に嵌合させることにより各例のトグル式キャップ3を得た。得られたトグル式キャップ3をポリエチレン樹脂製の容器本体2に装着することにより容器1を得た。
【0049】
(評価方法)
各例の容器1について、容器1を傾けて容器本体2に収容された液剤を排出口51から排出し、1秒間に排出される液剤の排出量、排出性(ばらつき)及びトグル式キャップ3における液漏れについて評価した。
【0050】
<1秒間に排出される液剤の排出量>
1秒間に排出される液剤の排出量は、0.67mL以上、1.25mL以下である場合を適合とし、0.67mL以上、1.25mL以下でない場合を非適合とした。
【0051】
<排出性(ばらつき)>
排出性(ばらつき)は、液がばらつかずスムーズに排出される場合に「◎」と判定し、液が若干ばらつくが概ねスムーズに排出される場合に「○」と判定し、液がばらつきスムーズに排出されない場合に「×」と判定した。
【0052】
<液漏れ>
液漏れは、キャップ本体10とトグルボタン30の嵌合部から液漏れしない場合に「○」と判定し、キャップ本体10とトグルボタン30の嵌合部から液漏れする場合に「×」と判定した。
【0053】
【0054】
表1に示されるように、(L1/D1a)で表される値が5以上、10以下、(L2/D2a)で表される値が4以上、15以下のいずれの関係も満足しない比較例1~2は、1秒間に排出される液剤の排出量が非適合となり、(L1/D1a)で表される値が5以上、10以下、(L2/D2a)で表される値が4以上、15以下の一方を満足しない比較例3~4は、排出性または液漏れについて非適合となった。
【0055】
これに対して、(L1/D1a)で表される値が5以上、10以下であり、(L2/D2a)で表される値が4以上、15以下である実施例1~5は、円滑な液剤排出を可能としつつ、一度に液剤が出過ぎることなく安全性の観点からの好ましい排出量で液剤を排出可能なトグル式キャップであることが確認できた。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…容器、 2…容器本体、 2a…口部、 3…トグル式キャップ、 10…キャップ本体、 30…トグルボタン、 51…排出口、 FR1…第1液流路、 FR2…第2液流路