(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】菌体量測定装置、分析装置および菌体量測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20221007BHJP
G01N 27/62 20210101ALN20221007BHJP
【FI】
G01N21/47 B
G01N21/47 Z
G01N27/62 V
(21)【出願番号】P 2017178341
(22)【出願日】2017-09-15
【審査請求日】2020-01-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【氏名又は名称】妹尾 明展
(74)【代理人】
【識別番号】100189566
【氏名又は名称】岸本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】川畑 慎一郎
【合議体】
【審判長】福島 浩司
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-053792(JP,A)
【文献】特開平11-37974(JP,A)
【文献】特開2005-58908(JP,A)
【文献】特開2017-44939(JP,A)
【文献】特開2001-194308(JP,A)
【文献】特開2017-122619(JP,A)
【文献】特開2002-310886(JP,A)
【文献】特許第5864009(JP,B1)
【文献】特開平11-258157(JP,A)
【文献】特開平6-242015(JP,A)
【文献】生物工学,第93巻,第3号(2015年),p.149~152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-21/01
G01N21/17-21/61
G01N27/62
G01N33/48-33/98
G01N35/00-35/10
C12Q1/00-1/70
C12M1/34
H01J49/26-49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌体量を測定する菌体量測定装置であって、
測定対象の細菌を含む試料を保持するためのサンプルプレートと、
前記サンプルプレートに保持された試料に光束を照射する第1の投光部と、
試料からの散乱光を受光し、受光量を示す受光信号を生成する受光部と、
前記受光部により生成された受光信号に基づいて試料による散乱光の強度を取得する強度取得部と、
散乱光の強度と菌体量との対応関係を示す変換情報を取得する変換情報取得部と、
前記強度取得部により取得された散乱光の強度および前記変換情報取得部により取得された変換情報に基づいて試料中の菌体量を特定する菌体量特定部とを備え、
前記受光部は、前記サンプルプレートにより正反射された光を受光することなく、試料中の細菌の表面の凹凸により反射されかつ試料を中心に放射状に散乱した光を受光するように
、前記第1の投光部および前記受光部は、前記第1の投光部の光軸と前記受光部の光軸とが前記サンプルプレートの表面に対する法線に関して非対称になるように配置される、菌体量測定装置。
【請求項2】
菌体量が既知の細菌を含む参照用試料が前記サンプルプレートに保持された状態で、前記強度取得部により取得された散乱光の強度と前記参照用試料中の菌体量とに基づいて変換情報を生成する変換情報生成部をさらに備える、請求項1記載の菌体量測定装置。
【請求項3】
前記第1の投光部の数、前記第1の投光部による出射光束の照射位置、出射光束の出射方向、出射光束の直径および出射光束の波長の少なくとも1つが変更可能に構成される、請求項1または2記載の菌体量測定装置。
【請求項4】
前記サンプルプレートは、試料を保持するウェルを含み、
前記第1の投光部による出射光束の直径は、前記ウェルを包含するように設定可能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の菌体量測定装置。
【請求項5】
前記受光部の数、前記受光部による受光位置、受光方向および波長依存性の少なくとも1つが変更可能に構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の菌体量測定装置。
【請求項6】
変換情報は、予め定められた測定条件における散乱光の強度と菌体量との対応関係を示し、
前記菌体量測定装置は、前記第1の投光部または前記受光部における測定条件に基づいて前記変換情報取得部により取得された変換情報を補正する変換情報補正部をさらに備え、
前記菌体量特定部は、前記強度取得部により取得された散乱光の強度および前記変換情報補正部により補正された変換情報に基づいて試料中の菌体量を特定する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の菌体量測定装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の菌体量測定装置と、
前記菌体量測定装置の前記サンプルプレートに保持された試料中の細菌の成分を分析する分析部とを備える、分析装置。
【請求項8】
前記菌体量測定装置の前記菌体量特定部により特定された試料中の菌体量を示す菌体量情報を取得する菌体量情報取得部と、
前記菌体量情報取得部により取得された菌体量情報に基づいて前記分析部の分析条件を設定する分析条件設定部とをさらに備える、請求項
7記載の分析装置。
【請求項9】
前記分析部は分析結果を示す信号を出力し、
前記分析装置は、前記分析部から出力される信号に基づいて分析データを生成するとともに、複数回の分析により生成される分析データを積算する分析データ処理部をさらに備え、
前記分析条件設定部は、前記分析条件として前記分析データ処理部における積算回数を設定する、請求項
8記載の分析装置。
【請求項10】
前記分析部は、前記サンプルプレートに保持された試料に光を照射する第2の投光部を含み、
前記菌体量測定装置の前記第1の投光部と前記第2の投光部とは共通の投光部により構成される、請求項8
または9に記載の分析装置。
【請求項11】
菌体量を測定する菌体量測定方法であって、
投光部によりサンプルプレートに保持された測定対象の細菌を含む試料に光束を照射するステップと、
受光部により試料からの散乱光を受光し、受光量を示す受光信号を生成するステップと、
前記受光部により生成された受光信号に基づいて試料による散乱光の強度を取得するステップと、
散乱光の強度と菌体量との対応関係を示す変換情報を取得するステップと、
取得された散乱光の強度および取得された変換情報に基づいて試料中の菌体量を特定するステップとを含み、
前記受光部は、前記サンプルプレートにより正反射された光を受光することなく、試料中の細菌の表面の凹凸により反射されかつ試料を中心に放射状に散乱した光を受光するように
、前記第1の投光部および前記受光部は、前記第1の投光部の光軸と前記受光部の光軸とが前記サンプルプレートの表面に対する法線に関して非対称になるように配置される、菌体量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌体量を測定する菌体量測定装置、それを備えた分析装置および菌体量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌を分析装置により分析する場合には、分析結果の適切な信号対強度比が得られるように、菌体量に関する情報に基づいて信号の積算回数が調整される。菌体量とは、試料中の細菌の濃度または試料中の細菌の個数をいう。また、分析データの定量的な評価を行う際には、菌体量に関する情報が用いられる。このように、細菌の分析においては、菌体量に関する情報が必要となる。非特許文献1には、細胞濃度を測定する方法として、乾燥菌体重量法および濁度法等の種々の方法が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】小西正朗、堀内淳一、「細胞の増殖を捉える―計測法から比速度算出まで―」、生物工学会誌、2015年、第93巻、第3号、p.149-152
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に紹介された方法においては、細胞濃度を測定するために、比較的多量(例えば0.5~1mL程度)の細菌の検体量が必要となる。一方で、分析装置により分析に必要な細菌の検体量は微量(例えば1μL程度)である。そのため、従来、菌体量が測定された比較的多量の試料が分注されることにより、測定対象の細菌を含む微量の試料が分析装置に導入されていた。しかしながら、残りの試料は分析に使用されずに廃棄されるため、廃棄物の量が増加する。
【0005】
本発明の目的は、微量の試料の菌体量を測定可能な菌体量測定装置、それを備えた分析装置および菌体量測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)第1の発明に係る菌体量測定装置は、菌体量を測定する菌体量測定装置であって、測定対象の細菌を含む試料を保持するためのサンプルプレートと、サンプルプレートに保持された試料に光束を照射する第1の投光部と、試料からの散乱光を受光し、受光量を示す受光信号を生成する受光部と、受光部により生成された受光信号に基づいて試料による散乱光の強度を取得する強度取得部と、散乱光の強度と菌体量との対応関係を示す変換情報を取得する変換情報取得部と、強度取得部により取得された散乱光の強度および変換情報取得部により取得された変換情報に基づいて試料中の菌体量を特定する菌体量特定部とを備え、受光部は、サンプルプレートにより正反射された光を受光することなく、試料中の細菌の表面の凹凸により反射されかつ試料を中心に放射状に散乱した光を受光するように配置される。
【0007】
この菌体量測定装置においては、サンプルプレートに保持された測定対象の細菌を含む試料に光束が照射されることにより、試料中の細菌の表面で光が散乱する。試料による散乱光の強度が取得され、散乱光の強度と菌体量との対応関係を示す変換情報が取得される。取得された散乱光の強度および変換情報に基づいて試料中の菌体量が特定される。この構成によれば、試料が微量である場合でも、試料による散乱光の強度を取得することができる。これにより、微量の試料の菌体量を測定することができる。
【0008】
(2)菌体量測定装置は、菌体量が既知の細菌を含む参照用試料がサンプルプレートに保持された状態で、強度取得部により取得された散乱光の強度と参照用試料中の菌体量とに基づいて変換情報を生成する変換情報生成部をさらに備えてもよい。この場合、変換情報を容易に生成することができる。また、生成された変換情報を用いて、参照用試料中の細菌と同種でかつ菌体量が未知の細菌を含む試料中菌体量を特定することができる。
【0009】
(3)第1の投光部の数、第1の投光部による出射光束の照射位置、出射光束の出射方向、出射光束の直径および出射光束の波長の少なくとも1つが変更可能に構成されてもよい。この場合、試料中の細菌の種類、形態および特性に応じて、第1の投光部の数、第1の投光部による出射光束の照射位置、出射光束の出射方向、出射光束の直径または出射光束の波長を変更することができる。
【0010】
(4)サンプルプレートは、試料を保持するウェルを含み、第1の投光部による出射光束の直径は、ウェルを包含するように設定可能であってもよい。この場合、試料中の細菌に確実かつ容易に出射光束を照射することができる。
【0012】
(5)受光部の数、受光部による受光位置、受光方向および波長依存性の少なくとも1つが変更可能に構成されてもよい。この場合、試料中の細菌の種類、形態および特性に応じて、受光部の数、受光部による受光位置、受光方向または波長依存性を変更することができる。
【0013】
(6)第1の投光部および受光部は、第1の投光部の光軸と受光部の光軸とがサンプルプレートの表面に対する法線に関して非対称になるように配置されてもよい。この場合、受光部は、サンプルプレートにより正反射された光を受光することなく、試料による散乱光を効率よく受光することができる。
【0014】
(7)変換情報は、予め定められた測定条件における散乱光の強度と菌体量との対応関係を示し、菌体量測定装置は、第1の投光部または受光部における測定条件に基づいて変換情報取得部により取得された変換情報を補正する変換情報補正部をさらに備え、菌体量特定部は、強度取得部により取得された散乱光の強度および変換情報補正部により補正された変換情報に基づいて試料中の菌体量を特定してもよい。この場合、予め定められた測定条件とは異なる測定条件においても、変換情報に基づいて試料中の菌体量を特定することができる。
【0015】
(8)第2の発明に係る分析装置は、第1の発明に係る菌体量測定装置と、菌体量測定装置のサンプルプレートに保持された試料中の細菌の成分を分析する分析部とを備える。この場合、共通のサンプルプレートを用いて試料中の菌体量の測定と試料中の細菌の成分の分析とを行うことができる。したがって、試料中の菌体量が菌体量測定装置により測定された後、成分の分析のために試料をサンプルプレートから他の試料台へ移す必要がない。これにより、分析装置の利便性が向上する。また、試料中の菌体量の測定と試料中の細菌の成分の分析とが同じ状態で行われるので、試料中の菌体量と試料の分析結果との関連性を正確に把握することができる。
【0016】
(9)分析装置は、菌体量測定装置の菌体量特定部により特定された試料中の菌体量を示す菌体量情報を取得する菌体量情報取得部と、菌体量情報取得部により取得された菌体量情報に基づいて分析部の分析条件を設定する分析条件設定部とをさらに備えてもよい。この場合、菌体量測定装置により測定された試料中の菌体量に基づいて分析条件が設定されるので、試料中の菌体量に関わらず、細菌の成分を適切に分析することができる。
【0017】
(10)分析部は分析結果を示す信号を出力し、分析装置は、分析部から出力される信号に基づいて分析データを生成するとともに、複数回の分析により生成される分析データを積算する分析データ処理部をさらに備え、分析条件設定部は、分析条件として分析データ処理部における積算回数を設定してもよい。この場合、試料中の菌体量に応じて分析データが適切な回数積算される。これにより、試料中の菌体量に関わらず、細菌の成分を適切に分析することができる。
【0018】
(11)分析部は、サンプルプレートに保持された試料に光を照射する第2の投光部を含み、菌体量測定装置の第1の投光部と第2の投光部とは共通の投光部により構成されてもよい。この場合、第1の投光部と第2の投光部とを別個に設ける必要がない。これにより、分析装置のコストを低減させることができる。また、分析部における投光部を設置するためのスペースをコンパクトにすることができる。
【0019】
(12)第3の発明に係る菌体量測定方法は、菌体量を測定する菌体量測定方法であって、投光部によりサンプルプレートに保持された測定対象の細菌を含む試料に光束を照射するステップと、受光部により試料からの散乱光を受光し、受光量を示す受光信号を生成するステップと、受光部により生成された受光信号に基づいて試料による散乱光の強度を取得するステップと、散乱光の強度と菌体量との対応関係を示す変換情報を取得するステップと、取得された散乱光の強度および取得された変換情報に基づいて試料中の菌体量を特定するステップとを含み、受光部は、サンプルプレートにより正反射された光を受光することなく、試料中の細菌の表面の凹凸により反射されかつ試料を中心に放射状に散乱した光を受光するように配置される。
【0020】
この菌体量測定方法によれば、試料が微量である場合でも、試料による散乱光の強度を取得することができる。これにより、微量の試料の菌体量を測定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、微量の試料の菌体量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る分析装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の菌体量測定部を含む菌体量測定装置の構成を示す図である。
【
図4】
図1の分析装置の詳細な構成を示す図である。
【
図5】菌体量測定プログラムにより行われる測定処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図6】質量分析プログラムにより行われる質量分析処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る菌体量測定装置、それを備えた分析装置および菌体量測定方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(1)分析装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る分析装置の構成を示す図である。
図1に示すように、分析装置1は、制御装置100、菌体量測定部200および分析部300を含む。
図1においては、主として分析装置1のハードウエアの構成が示される。
【0025】
制御装置100は、CPU(中央演算処理装置)110、RAM(ランダムアクセスメモリ)120、ROM(リードオンリメモリ)130、記憶装置140、操作部150、表示部160および入出力I/F(インターフェイス)170により構成される。CPU110、RAM120、ROM130、記憶装置140、操作部150、表示部160および入出力I/F170はバス101に接続される。
【0026】
RAM120は、CPU110の作業領域として用いられる。ROM130にはシステムプログラムが記憶される。記憶装置140は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、菌体量測定プログラム、質量分析プログラムおよび変換情報等を記憶する。変換情報については後述する。
【0027】
CPU110が記憶装置140に記憶された菌体量測定プログラムをRAM120上で実行することにより、後述する菌体量測定処理(以下、測定処理と略記する。)が行われる。また、CPU110が記憶装置140に記憶された質量分析プログラムをRAM120上で実行することにより、後述する質量分析処理が行われる。
【0028】
操作部150は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。表示部160は、液晶表示装置等の表示デバイスである。使用者は、操作部150を用いて制御装置100に各種指示を行うことができる。表示部160は、菌体量の測定結果または試料の分析の結果等を表示可能である。入出力I/F170は、菌体量測定部200および分析部300に接続される。本実施の形態においては、菌体量測定部200は、分析部300内に設けられる。なお、菌体量測定部200は、分析部300とは独立して設けられてもよい。
【0029】
(2)菌体量測定装置
図2は、
図1の菌体量測定部200を含む菌体量測定装置の構成を示す図である。
図2に示すように、菌体量測定装置2は、可動ステージ210、サンプルプレート(試料台)220、投光部230、受光部240および測定制御部250を含む。可動ステージ210、サンプルプレート220、投光部230および受光部240により菌体量測定部200が構成される。菌体量測定部200は、複数の投光部230を含んでもよいし、複数の受光部240を含んでもよい。
【0030】
可動ステージ210は、アクチュエータを含み、互いに直交する三方向に移動可能である。可動ステージ210上には、サンプルプレート220が載置される。サンプルプレート220は、複数のウェル(後述する
図3参照)が形成されたウェルプレートであり、MALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化)プレートとして
図1の分析装置1による菌体量の測定と試料の分析とに共通に用いられる。測定対象の細菌を含む微量の試料10がサンプルプレート220の所望のウェル内に滴下される。
【0031】
投光部230は、複数の光源およびアクチュエータを含む。複数の光源は、例えば異なる波長の光束を出射するレーザ光源である。以下、投光部230により出射される光束を出射光束と呼ぶ。投光部230は、出射光束の照射位置、出射光束の出射方向、出射光束の直径および出射光束の波長を変更可能に構成される。投光部230が試料10に光を照射することにより、試料10に照射された光は細菌の表面の凹凸により反射され、試料10を中心に放射状に散乱する。
【0032】
受光部240は、複数の受光素子およびアクチュエータを含む。複数の受光素子は、受光感度の異なる波長依存性を有する光電子増倍管またはフォトダイオード等である。受光部240は、受光位置、受光方向および波長依存性を変更可能に構成される。受光部240は、試料10からの散乱光を受光し、受光量に対応する電気信号(以下、受光信号と呼ぶ。)を生成する。
【0033】
測定制御部250は、ステージ制御部A、投光制御部B、受光制御部C、強度取得部D、変換情報取得部E、菌体量特定部F、測定結果出力部G、変換情報生成部Hおよび変換情報補正部Iを含む。
図1のCPU110が記憶装置140に記憶された菌体量測定プログラムを実行することにより、測定制御部250の構成要素(A~I)の機能が実現される。測定制御部250の構成要素(A~I)の一部または全てが電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0034】
上記のように、記憶装置140には、変換情報が予め記憶される。変換情報は、特定の測定条件における散乱光の強度と菌体量との対応関係を示す情報であり、測定条件および細菌の種類に応じて異なる。以下の測定処理は、変換情報における測定条件と同一の測定条件で行われる。
【0035】
使用者は、操作部150を操作することにより、可動ステージ210の位置を指定することができる。ステージ制御部Aは、使用者による操作部150の操作に基づいて、可動ステージ210が指定された位置に移動するように可動ステージ210を制御する。
【0036】
使用者は、操作部150を操作することにより、投光部230による出射光束の照射位置、出射光束の出射方向、出射光束の直径および出射光束の波長を指定することができる。投光制御部Bは、使用者による操作部150の操作に基づいて、投光部230による出射光束の照射位置、出射光束の出射方向、出射光束の直径および出射光束の波長を制御する。
【0037】
使用者は、操作部150を操作することにより、受光部240による受光位置、受光方向および波長依存性を指定することができる。受光制御部Cは、使用者による操作部150の操作に基づいて、受光部240による受光位置、受光方向および波長依存性を制御する。
【0038】
強度取得部Dは、受光部240により生成された受光信号に基づいて散乱光の強度を取得する。変換情報取得部Eは、試料10と同一の細菌についての変換情報を記憶装置140から取得する。なお、外部記憶媒体が
図1の制御装置100に接続される場合には、変換情報取得部Eは、外部記憶媒体に記憶された変換情報を取得してもよい。また、制御装置100がネットワークに接続される場合には、変換情報取得部Eは、ネットワークを介して他の記憶装置に記憶された変換情報を取得してもよい。
【0039】
菌体量特定部Fは、強度取得部Dにより取得された散乱光の強度および変換情報取得部Eにより取得された変換情報に基づいて試料10中の菌体量を特定する。測定結果出力部Gは、菌体量特定部Fにより特定された菌体量を示す菌体量情報を記憶装置140および表示部160に出力する。これにより、菌体量情報が記憶装置140に記憶される。また、菌体量情報に基づいて、菌体量情報が表示部160に表示される。
【0040】
変換情報は記憶装置140に予め記憶されているが、本発明はこれに限定されない。変換情報が使用者により生成され、記憶装置140に記憶されてもよい。これにより、以降の測定において、生成された変換情報を菌体量を特定するために利用することができる。
【0041】
具体的には、菌体量が既知の細菌を含む参照用試料がサンプルプレート220のウェル内に滴下される。その後、所定の測定条件の下で、投光部230により参照用試料に光が照射され、受光部240により散乱光が受光され、強度取得部Dにより散乱光の強度が取得される。変換情報生成部Hは、強度取得部Dにより取得された散乱光の強度と既知の菌体量とに基づいて変換情報を生成し、記憶装置140に記憶させる。
【0042】
なお、菌体量が異なる2種類以上の参照用試料が準備される場合、2種類以上の参照用試料における菌体量と、これらにそれぞれ対応する2以上の散乱光の強度とに基づいて変換情報が生成されてもよい。一方で、散乱光の強度と菌体量とは比例関係を有することが本願発明の発明者により確認されている。そのため、菌体量が既知の細菌を含む参照用試料が1種類のみ準備され、その参照用試料における菌体量とそれに対応する散乱光の強度との比例関係に基づいて変換情報が生成されてもよい。
【0043】
上記の測定処理は、変換情報の生成時における測定条件とは異なる測定条件で行われてもよい。投光部230による出射光束の強度または受光部240の受光感度等が変化した場合、強度取得部Dにより取得される散乱光の強度は出射光の強度または受光感度に比例して変化する。また、出射光束の波長が変化した場合、受光部240の量子効率が変化することにより、強度取得部Dにより取得される散乱光の強度が変化する。この場合、散乱光の強度と測定条件との間には所定の関係が存在する。
【0044】
そこで、散乱光の強度と測定条件との間の関係が予備実験により予め取得される。取得された関係に基づいて補正規則が生成される。使用者は、操作部150を用いて測定処理における測定条件を変換情報補正部Iに入力することができる。変換情報補正部Iは、変換情報取得部Eにより取得された変換情報を測定条件および補正規則に基づいて補正(較正)する。この場合、菌体量特定部Fは、変換情報補正部Iにより補正された変換情報に基づいて試料10中の細菌の菌体量を特定する。
【0045】
本実施の形態においては、試料10に含まれる細菌の種類、形態および特性に応じて投光部230の数、出射光束の照射位置、出射光束の出射方向、出射光束の直径および出射光束の波長を含む測定条件を任意に変更可能である。同様に、試料10に含まれる細菌の種類、形態および特性に応じて受光部240の数、受光位置、受光方向および波長依存性を含む測定条件を任意に変更可能である。
【0046】
図3は、好ましい測定条件の一例を示す図である。なお、
図3においては、サンプルプレート220が拡大された状態で図示されている。
図3に示すように、サンプルプレート220には、複数のウェル221が形成される。各ウェル221は、直径d1の円形状を有する。任意のウェル221内に試料10が滴下される。
【0047】
投光部230は、ウェル221内の試料10に直径d2の出射光束を照射する。ここで、出射光束の直径d2はウェル221の直径d1以上であることが好ましい。この場合、各ウェル221内の試料10の全面に出射光束を照射可能である。これにより、試料10に含まれる細菌に確実かつ容易に出射光束を照射することができる。また、出射光束は、紫外領域の波長(例えば337nm)を含むことが好ましい。これにより、投光部230を後述する分析部300のイオン化用の投光部として共通に用いることができる。そのため、投光部230は、第1および第2の投光部として機能する。
【0048】
さらに、投光部230の光軸231と受光部240の光軸241とがサンプルプレート220の法線に関して非対称になるように投光部230および受光部240が配置されることが好ましい。これにより、受光部240は、サンプルプレート220により正反射された光を受光することなく、試料10による散乱光を効率よく受光することができる。
【0049】
(3)分析装置
図4は、
図1の分析装置1の詳細な構成を示す図である。
図4の分析装置1は、MALDI法によるイオン源を用いたイオントラップ質量分析装置であり、イオン化部310、イオントラップ320、質量分析器330、検出部340および分析制御部350を含む。なお、分析装置1は、MALDI方式とは異なる方式による質量分析装置であってもよいし、質量分析装置以外の分析装置であってもよい。イオン化部310、イオントラップ320、質量分析器330および検出部340により分析部300が構成される。
【0050】
図2の菌体量測定部200は、イオン化部310に設けられる。イオン化部310は、菌体量測定部200と共通のサンプルプレート220および投光部230を含むとともに、引出電極311を含む。上記のように、サンプルプレート220上の試料10中の菌体量は、菌体量測定部200により測定される。その後、サンプルプレート220上の試料10にマトリックスが混合される。
【0051】
投光部230は、サンプルプレート220上の試料10に紫外領域のパルス状の光を照射する。これにより、試料10に含まれる各種成分がイオン化される。なお、イオン化部310には、測定処理に用いられる投光部230とは別個の投光部が設けられてもよい。引出電極311は、所定の電場を形成することにより、生成されたイオンをイオントラップ320に向けて引き出す。
【0052】
イオントラップ320は、四重極電場を形成することによりイオン化部310から引き出されたイオンを捕捉するとともに、捕捉されたイオンに冷却ガスを出射することによりイオンを冷却する。冷却ガスは、例えばヘリウムガスまたはアルゴンガスである。また、イオントラップ320は、冷却後のイオンに所定の電場を加えることによりイオンを放出する。イオントラップ320から放出されたイオンは、質量分析器330に導入される。
【0053】
本実施の形態では、質量分析器330は飛行時間型の質量分析器である。質量分析器330に導入されたイオンは、質量電荷比に応じた飛行速度で質量分析器330内の飛行空間を飛行し、質量電荷比が小さいイオンから順に検出部340に到達する。検出部340は、例えば二次電子増倍管である。検出部340は、質量分析器330を飛行したイオンを検出し、検出量に対応する信号(以下、検出信号と呼ぶ。)を生成する。
【0054】
分析制御部350は、菌体量情報取得部a、分析条件設定部b、投光制御部c、分析データ処理部dおよび分析結果出力部eを含む。
図1のCPU110が記憶装置140に記憶された質量分析プログラムを実行することにより、分析制御部350の構成要素(a~e)の機能が実現される。分析制御部350の構成要素(a~e)の一部または全てが電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0055】
菌体量情報取得部aは、記憶装置140に記憶された菌体量情報を取得する。分析条件設定部bは、菌体量情報取得部aにより取得された菌体量情報に基づいて分析条件を設定する。分析条件は、例えば検出信号の積算回数を含む。投光制御部cは、分析条件設定部bにより設定された分析条件に基づいて投光部230の動作を制御する。具体的には、投光制御部cは、投光部230による光の出射回数等を調整する。
【0056】
分析データ処理部dは、検出部340により生成された検出信号に基づいてマススペクトルを示すマススペクトルデータを生成する。また、分析データ処理部dは、生成されたマススペクトルデータを分析条件設定部bにより設定された回数積算する。分析結果出力部eは、分析データ処理部dにより積算されたマススペクトルデータを記憶装置140および表示部160に出力する。これにより、積算されたマススペクトルデータが記憶装置140に記憶される。また、マススペクトルデータに基づくマススペクトルが表示部160に表示される。
【0057】
(4)測定処理および質量分析処理
図5は、菌体量測定プログラムにより行われる測定処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。まず、使用者は操作部150を用いて測定条件を指定する。それにより、指定された測定条件がステージ制御部A、投光制御部Bおよび受光制御部Cに設定される。
【0058】
投光制御部Bは、投光部230により試料10に出射光束を照射する(ステップS1)。強度取得部Dは、受光部240により生成された受光信号に基づいて試料10からの散乱光の強度を取得する(ステップS2)。変換情報取得部Eは、記憶装置140から変換情報を取得する(ステップS3)。ステップS1,S2とステップS3とは、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0059】
次に、変換情報補正部Iは、変換情報の補正が指示されたか否かを判定する(ステップS4)。使用者は、操作部150を用いて変換情報の補正を指示することができる。なお、使用者により指定された測定条件が予め定められた測定条件とは異なる場合に、自動的に変換情報の補正が指示されてもよい。変換情報の補正が指示されない場合、変換情報補正部IはステップS6に進む。変換情報の補正が指示された場合、変換情報補正部Iは、使用者により指定された測定条件に基づいて変換情報を補正し(ステップS5)、ステップS6に進む。
【0060】
ステップS6において、菌体量特定部Fは、ステップS2で取得された散乱光の強度と、ステップS3,S5で取得または補正された変換情報とに基づいて、試料10中の菌体量を特定する(ステップS6)。測定結果出力部Gは、ステップS6で特定された菌体量を示す菌体量情報を記憶装置140および表示部160に出力し(ステップS7)、測定処理を終了する。
【0061】
測定処理の後、使用者は、サンプルプレート220を分析部300(菌体量測定部200)から取り出し、サンプルプレート220上の試料10にマトリックスを混合する。その後、使用者は、サンプルプレート220を分析部300に再度セットする。この状態で、質量分析処理が実行される。菌体量測定部200が分析部300とは独立して設けられた場合でも、測定処理と質量分析処理とで共通のサンプルプレート220を使用可能である。
【0062】
図6は、質量分析プログラムにより行われる質量分析処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。まず、菌体量情報取得部aは、記憶装置140から菌体量情報を取得する(ステップS11)。分析条件設定部bは、ステップS11で取得された菌体量情報に基づいて積算回数を設定する(ステップS12)。投光制御部cは、ステップS12で設定された回数に基づいて、分析動作を実行する(ステップS13)。分析動作は、投光部230による試料10への光の照射を含む。
【0063】
分析データ処理部dは、ステップS3の分析動作により検出部340により出力された検出信号に基づいてマススペクトルデータを生成する(ステップS14)。また、分析データ処理部dは、ステップS14で生成されたマススペクトルデータを積算する(ステップS15)。
【0064】
その後、分析データ処理部dは、積算回数がステップS12で設定された回数に達したか否かを判定する(ステップS16)。積算回数が設定された回数に達していない場合、分析データ処理部dはステップS13に戻る。積算回数が設定された回数に達するまで、ステップS13~S16が繰り返される。積算回数が設定された回数に達した場合、分析結果出力部eは、ステップS15で積算されたマススペクトルデータを記憶装置140および表示部160に出力し(ステップS17)、質量分析処理を終了する。
【0065】
(5)効果
本実施の形態に係る菌体量測定装置2においては、サンプルプレート220に保持された測定対象の細菌を含む試料10に光束が照射されることにより、試料10中の細菌の表面で光が散乱する。試料10による散乱光の強度が取得され、散乱光の強度と菌体量との対応関係を示す変換情報が取得される。取得された散乱光の強度および変換情報に基づいて試料10中の菌体量が特定される。
【0066】
この構成によれば、試料10が微量である場合でも、試料10による散乱光の強度を取得することができる。これにより、微量の試料の菌体量を測定することができる。
【0067】
分析装置1による質量分析処理においては、菌体量測定装置2により測定された試料10中の菌体量に基づいてマススペクトルデータが適切な回数積算される。そのため、試料10中の菌体量に関わらず、細菌の成分を適切に分析することができる。
【0068】
また、測定処理と質量分析処理とで共通のサンプルプレート220が用いることができるので、測定処理の後、質量分析処理のために試料10をサンプルプレート220から他の試料台へ移す必要がない。これにより、分析装置1の利便性が向上する。さらに、試料10の菌体量の測定と試料10中の細菌の成分の分析とが同じ状態で行われるので、試料10中の菌体量と試料10の分析結果との関連性を正確に把握することができる。
【0069】
また、測定処理における第1の投光部と質量分析処理における第2の投光部とが共通の投光部230により構成される。したがって、第1の投光部と第2の投光部とを別個に設ける必要がない。これにより、分析装置1のコストを低減させることができる。また、分析部300の引出電極311における投光部を設置するためのスペースをコンパクトにすることができる。
【0070】
(6)他の実施の形態
上記実施の形態において、投光部230は、設置数、出射光束の照射位置、出射光束の出射方向、出射光束の直径および出射光束の波長を含む測定条件を変更可能に構成されるが、本発明はこれに限定されない。投光部230の測定条件は、予め定められていてもよい。同様に、受光部240は、設置数、受光位置、受光方向および波長依存性を含む測定条件を変更可能に構成されるが、本発明はこれに限定されない。受光部240の測定条件は、予め定められていてもよい。
(7)参考形態
(7-1)第1の参考形態に係る菌体量測定装置は、菌体量を測定する菌体量測定装置であって、測定対象の細菌を含む試料を保持するためのサンプルプレートと、サンプルプレートに保持された試料に光束を照射する第1の投光部と、試料による散乱光の強度を取得する強度取得部と、散乱光の強度と菌体量との対応関係を示す変換情報を取得する変換情報取得部と、強度取得部により取得された散乱光の強度および変換情報取得部により取得された変換情報に基づいて試料中の菌体量を特定する菌体量特定部とを備える。
この菌体量測定装置においては、サンプルプレートに保持された測定対象の細菌を含む試料に光束が照射されることにより、試料中の細菌の表面で光が散乱する。試料による散乱光の強度が取得され、散乱光の強度と菌体量との対応関係を示す変換情報が取得される。取得された散乱光の強度および変換情報に基づいて試料中の菌体量が特定される。この構成によれば、試料が微量である場合でも、試料による散乱光の強度を取得することができる。これにより、微量の試料の菌体量を測定することができる。
(7-2)菌体量測定装置は、菌体量が既知の細菌を含む参照用試料がサンプルプレートに保持された状態で、強度取得部により取得された散乱光の強度と参照用試料中の菌体量とに基づいて変換情報を生成する変換情報生成部をさらに備えてもよい。この場合、変換情報を容易に生成することができる。また、生成された変換情報を用いて、参照用試料中の細菌と同種でかつ菌体量が未知の細菌を含む試料中菌体量を特定することができる。
(7-3)第1の投光部の数、第1の投光部による出射光束の照射位置、出射光束の出射方向、出射光束の直径および出射光束の波長の少なくとも1つが変更可能に構成されてもよい。この場合、試料中の細菌の種類、形態および特性に応じて、第1の投光部の数、第1の投光部による出射光束の照射位置、出射光束の出射方向、出射光束の直径または出射光束の波長を変更することができる。
(7-4)サンプルプレートは、試料を保持するウェルを含み、第1の投光部による出射光束の直径は、ウェルを包含するように設定可能であってもよい。この場合、試料中の細菌に確実かつ容易に出射光束を照射することができる。
(7-5)菌体量測定装置は、試料からの散乱光を受光し、受光量を示す受光信号を生成する受光部をさらに備え、強度取得部は、受光部により生成された受光信号に基づいて散乱光の強度を取得してもよい。この場合、強度取得部は散乱光の強度を容易に取得することができる。
(7-6)受光部の数、受光部による受光位置、受光方向および波長依存性の少なくとも1つが変更可能に構成されてもよい。この場合、試料中の細菌の種類、形態および特性に応じて、受光部の数、受光部による受光位置、受光方向または波長依存性を変更することができる。
(7-7)第1の投光部および受光部は、第1の投光部の光軸と受光部の光軸とがサンプルプレートの表面に対する法線に関して非対称になるように配置されてもよい。この場合、受光部は、サンプルプレートにより正反射された光を受光することなく、試料による散乱光を効率よく受光することができる。
(7-8)変換情報は、予め定められた測定条件における散乱光の強度と菌体量との対応関係を示し、菌体量測定装置は、第1の投光部または受光部における測定条件に基づいて変換情報取得部により取得された変換情報を補正する変換情報補正部をさらに備え、菌体量特定部は、強度取得部により取得された散乱光の強度および変換情報補正部により補正された変換情報に基づいて試料中の菌体量を特定してもよい。この場合、予め定められた測定条件とは異なる測定条件においても、変換情報に基づいて試料中の菌体量を特定することができる。
(7-9)第2の参考形態に係る分析装置は、第1の参考形態に係る菌体量測定装置と、菌体量測定装置のサンプルプレートに保持された試料中の細菌の成分を分析する分析部とを備える。この場合、共通のサンプルプレートを用いて試料中の菌体量の測定と試料中の細菌の成分の分析とを行うことができる。したがって、試料中の菌体量が菌体量測定装置により測定された後、成分の分析のために試料をサンプルプレートから他の試料台へ移す必要がない。これにより、分析装置の利便性が向上する。また、試料中の菌体量の測定と試料中の細菌の成分の分析とが同じ状態で行われるので、試料中の菌体量と試料の分析結果との関連性を正確に把握することができる。
(7-10)分析装置は、菌体量測定装置の菌体量特定部により特定された試料中の菌体量を示す菌体量情報を取得する菌体量情報取得部と、菌体量情報取得部により取得された菌体量情報に基づいて分析部の分析条件を設定する分析条件設定部とをさらに備えてもよい。この場合、菌体量測定装置により測定された試料中の菌体量に基づいて分析条件が設定されるので、試料中の菌体量に関わらず、細菌の成分を適切に分析することができる。
(7-11)分析部は分析結果を示す信号を出力し、分析装置は、分析部から出力される信号に基づいて分析データを生成するとともに、複数回の分析により生成される分析データを積算する分析データ処理部をさらに備え、分析条件設定部は、分析条件として分析データ処理部における積算回数を設定してもよい。この場合、試料中の菌体量に応じて分析データが適切な回数積算される。これにより、試料中の菌体量に関わらず、細菌の成分を適切に分析することができる。
(7-12)分析部は、サンプルプレートに保持された試料に光を照射する第2の投光部を含み、菌体量測定装置の第1の投光部と第2の投光部とは共通の投光部により構成されてもよい。この場合、第1の投光部と第2の投光部とを別個に設ける必要がない。これにより、分析装置のコストを低減させることができる。また、分析部における投光部を設置するためのスペースをコンパクトにすることができる。
(7-13)第3の参考形態に係る菌体量測定方法は、菌体量を測定する菌体量測定方法であって、投光部によりサンプルプレートに保持された測定対象の細菌を含む試料に光束を照射するステップと、試料による散乱光の強度を取得するステップと、散乱光の強度と菌体量との対応関係を示す変換情報を取得するステップと、取得された散乱光の強度および取得された変換情報に基づいて試料中の菌体量を特定するステップとを含む。
この菌体量測定方法によれば、試料が微量である場合でも、試料による散乱光の強度を取得することができる。これにより、微量の試料の菌体量を測定することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…分析装置,2…菌体量測定装置,10…試料,100…制御装置,101…バス,110…CPU,120…RAM,130…ROM,140…記憶装置,150…操作部,160…表示部,170…入出力I/F,200…菌体量測定部,210…可動ステージ,220…サンプルプレート,221…ウェル,230…投光部,240…受光部,250…測定制御部,300…分析部,310…イオン化部,311…引出電極,320…イオントラップ,330…質量分析器,340…検出部,350…分析制御部,A…ステージ制御部,a…菌体量情報取得部,B,c…投光制御部,b…分析条件設定部,C…受光制御部,D…強度取得部,d…分析データ処理部,E…変換情報取得部,e…分析結果出力部,F…菌体量特定部,G…測定結果出力部,H…変換情報生成部,I…変換情報補正部