(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20221007BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221007BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20221007BHJP
A61K 8/898 20060101ALI20221007BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221007BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221007BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/06
A61K8/25
A61K8/898
A61K8/81
A61K8/37
A61Q1/12
(21)【出願番号】P 2017228457
(22)【出願日】2017-11-28
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】新家 万葉
(72)【発明者】
【氏名】小河 頌子
(72)【発明者】
【氏名】大澤 友
(72)【発明者】
【氏名】池田 智子
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/209077(WO,A1)
【文献】特開2010-163375(JP,A)
【文献】特開2007-302800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(a1)と(a2)を含むエラストマー被覆層を有する無機粉末0.5~20質量%と、(B)油分20~80質量%
を含むことを特徴とする乳化化粧料。
(a1)下記一般式(1)からなるアミノ基を有するシリコーンポリマーと、
(a2)下記一般式(2)からなるカルボキシル基を有するシリコーンポリマー又は下記一般式(3)からなるカルボキシル基を有するアクリルポリマー
からなるエラストマーであって、
アミノ基とカルボキシル基のモル比が、Y/X=0.1~1.2 (Yは、(a2)成分に含まれるカルボキシル基のモル量、Xは、(a1)成分に含まれるアミノ基のモル量)の範囲にあることを特徴とするエラストマー。
化粧料中の(B)油分に対して、(b1)シリコーン油が50質量%以上又は(b2)極性油分が60質量%以上であることを特徴とする。
(一般式(1)中、Xは炭素数1~18のアルキル基、R,R’はアルキレン基である(ただし、Rがメチレン基の時を除く)。mは20~2000、nは1~100である。)
(一般式(1)中、Xは炭素数1~18のアルキル基、R,R’はアルキル基である。)
(式中R1及びR2は、メチル基若しくは下記の(4)で表される基を示し、該基を1分子中に1~100含有し、yは1~50,000の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の乳化化粧料において、エラストマーの量が(A)タルクの量に対して0.5~20質量%であることを特徴とする乳化化粧料。
【請求項3】
請求項1に記載の乳化化粧料において、(b1)シリコーン油が、鎖状ポリシロキサン、環状ポリシロキサンから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする乳化化粧料。
【請求項4】
請求項1に記載の乳化化粧料において、(b2)極性油が、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチル、2-エチルヘキサン酸セチル、ネオペンタン酸イソドデシルから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化化粧料に関し、特にエラストマーで被覆した無機粉末を用いることで、肌への使用感触の向上と、乳化化粧料の皮膚に塗布した際の自然な仕上がりを維持したままカバー力を向上することに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションや化粧下地等のメーキャップ化粧料に求められる機能を得るために、様々な粉末処理がされている。
たとえば、疎水性に優れるとともに、洗い流し性の改善をするために、基粉体表面上に、疎水化処理剤と、特定構造のアクリル系モノマー(11-メタクリルアミドウンデカン酸など)を構成モノマーとして含有するポリマーを被覆した粉体が知られていた(特許文献1)
【0003】
また、化粧持ち(化粧崩れ防止)に優れた粉末化粧料、特に、ファンデーション又は化粧下地等の粉末メーキャップ化粧料を提供するために、特定の処理粉末を配合することで、化粧持ち(化粧崩れ防止)に優れた粉末化粧料を提供することは知られていた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2007-277167
【文献】特開2008-184399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や2に教示される処理された無機粉末は、乳化化粧料に配合し、肌に塗布すると、きしきしとした感触を肌へ与え、粉っぽい感触を肌へ与えてしまうという場合があるという問題があった。
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、特定のエラストマーを表面を被覆したタルクを使用することで、乳化化粧料の肌への感触を向上し、しっとりとして粉っぽくない感覚をもたせることを目的としている。また、皮膚に塗布した際の自然な仕上がりを維持したままカバー力に優れた乳化化粧料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アミノ基を有するシリコーンポリマーとカルボキシル基を有するシリコーンポリマー又はカルボキシル基を有するアクリルポリマーとを複合したエラストマー状の性質を有する組成物で、無機粉末を被覆した。そして、乳化化粧料に該エラストマーで被覆した無機粉末を使用することにより、乳化化粧料が、肌への感触を向上させ、しっとりとして粉っぽくない感覚となることを見出した。さらに、皮膚に塗布した際の自然な仕上がりを維持したままカバー力に優れた化粧料を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係る乳化化粧料は、(A)下記(a1)と(a2)を含むエラストマー被覆層を有する無機粉末0.5~20質量%と、(B)油分20~80質量%を含むことを特徴とする。
また、(a1)アミノ基を有するシリコーンポリマーと、(a2)カルボキシル基を有するシリコーンポリマー又はカルボキシル基を有するアクリルポリマーと、からなるエラストマーであって、アミノ基とカルボキシル基のモル比が、Y/X=0.1~1.2 (Yは、(a2)成分に含まれるカルボキシル基のモル量、Xは、(a1)成分に含まれるアミノ基のモル量)の範囲にあることを特徴とする。
また、前記乳化化粧料おいて、エラストマーの量が無機粉末の量に対して0.5~20質量%が好適である。
また、前記乳化化粧料おいて、(b1)シリコーン油が、化粧料中の油分に対して、50質量%以上であることが好適である。
また、前記乳化化粧料おいて、(b1)シリコーン油が、鎖状ポリシロキサン、環状ポリシロキサンから選ばれる1種または2種以上であることが好適である。
また、前記乳化化粧料おいて、(b2)極性油分が、化粧料中の油分に対して、50質量%以上であるこが好適である。
また、前記乳化化粧料おいて、(b2)極性油が、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチル、2-エチルヘキサン酸セチル、ネオペンタン酸イソドデシルから選ばれる1種または2種以上であることが好適である。
また、前記乳化化粧料において、(a1)成分が、下記一般式(1)からなるアミノ基を有するシリコーンポリマーと、
(a2)下記一般式(2)からなるカルボキシル基を有するシリコーンポリマー又は下記一般式(3)からなるカルボキシル基を有するアクリルポリマー
であることを特徴とする乳化化粧料。
(A)下記一般式(1)からなるアミノ基を有するシリコーンポリマーと、
(B)下記一般式(2)からなるカルボキシル基を有するシリコーンポリマー又は下記一般式(3)からなるカルボキシル基を有するアクリルポリマーと、
からなるエラストマーであって、アミノ基とカルボキシル基のモル比が、Y/X=0.1~1.2 (Yは、(B)成分に含まれるカルボキシル基のモル量、Xは、(A)成分に含まれるアミノ基のモル量)の範囲にあることを特徴とするエラストマー。
(一般式(1)中、Xは炭素数1~18のアルキル基、R,R’はアルキル基である。)
(式中R1及びR2は、メチル基若しくは下記の(4)で表される基を示し、該基を1分子中に1~100含有し、yは1~50,000の整数を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乳化化粧料に該エラストマー被覆層を有する無機粉末を使用すると肌への感触を向上させ、しっとりとして粉っぽくない感覚を有する。そして、皮膚に塗布した際の自然な仕上がりを維持したままカバー力に優れた化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
(A)エラストマー被覆層を有する無機粉末
本発明に用いるエラストマー被覆層を有する無機粉末は、(a1)アミノ基を有するシリコーンポリマーと、(a2)カルボキシル基を有するシリコーンポリマーとを混合し、加熱することによって製造されるエラストマーで、タルクの表面を被覆したものである。まず、本発明に用いるエラストマーの構成成分(a1)、(a2)について説明する。
【0009】
(a1)アミノ基を有するシリコーンポリマー
本発明に使用される(a1)アミノ基を有するシリコーンポリマーは、下記一般式(1)で示される側鎖型アミノ変性シリコーンである。
【0010】
【化1】
(一般式(1)中、Xは炭素数1~18のアルキル基、R,R’はアルキル基である。)
【0011】
一般式(1)中、mは、20~2000であると、得られるエラストマーの硬さが好適という理由で好ましい。20未満であると、エラストマーを形成しない場合がある点で好ましくない。また、2000を超えると、ハンドリングの困難さ、製造の困難さを生じる場合がある点で好ましくない。
【0012】
一般式(1)中、nは、1~100であると、得られるエラストマーの硬さが好適という理由で好ましい。1未満であると、エラストマーを形成しない場合がある点で好ましくない場合がある。また、100を超えると、エラストマーが硬すぎる場合がある点で好ましくない場合がある。
【0013】
一般式(1)中、Rは、アルキル鎖が好適に用いられ、プロピル基が量産性という理由で好ましい。
一般式(1)中、R’は、アルキル鎖が好適に用いられ、エチル基が量産性という理由で好ましい。
【0014】
(a1)アミノ基を有するシリコーンポリマーのアミノ基当量は、500g/mol~20000g/molであると、得られるエラストマーの硬さが好適という理由で好ましい。アミノ基当量が500未満であると、エラストマーが硬すぎる場合がある点で好ましくない。また、アミノ基当量が20000を超えると、エラストマーを形成しない場合がある点で好ましくない。
【0015】
(a1)アミノ基を有するシリコーンポリマーの市販品としては、例えば、KF-8004、KF-8005S、KF-867S(信越化学工業社製)、XF42-B1989(MOMENTIVE社製)、ADM1650、ADM1370(旭化成ワッカーシリコーン社製)、SF8452C、SS3551(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0016】
上記アミノ基当量とは、アミノ基を含む物質に対して、1モルのアミノ基あたりのその物質の重量を表す数値を表す。
【0017】
(a2)カルボキシル基を有するシリコーンポリマー又はカルボキシル基を有するアクリルポリマー
本発明に使用される(a2)カルボキシル基を有するシリコーンポリマーとしては、下記一般式(2)で示されるカルボキシル基当量が1000g/mol~40000g/molである側鎖型カルボキシル変性シリコーンである。
本発明に使用される(a2)カルボキシル基を有するアクリルポリマーとしては、下記一般式(3)で示されるカルボキシル基当量が200g/mol~1000g/molである側鎖型カルボキシル変性アクリルポリマーである。
【0018】
上記カルボキシル基当量とは、カルボキシル基を含む物質に対して、1モルのカルボキシル基あたりのその物質の重量を表す数値を表す。
【0019】
一般式(2)は、次の化学式2と化学式3からなる。
【0020】
【化2】
(式中R1及びR2は、メチル基若しくは下記の[化3]で表される基を示し、該基を1分子中に1~100含有し、yは1~50,000の整数を表す。)
【0021】
【0022】
一般式(3)は、次の化学式4からなる。
【0023】
【化4】
(一般式(3)中、m/(m+n) = 0~0.5である。)
【0024】
一般式(2)で示されるカルボキシル基を有するシリコーンポリマーの市販品としては、例えば、センサシルPCA(クローダ社製)等が挙げられる。
【0025】
一般式(3)で示されるカルボキシル基を有するアクリルポリマーは、公知の方法を用いて合成できる。
具体例を挙げれば、12-メタクリルアミドドデカン酸(MAD)/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(90/10)、12-メタクリルアミドドデカン酸(MAD)18.50g(65.37mmol)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ-アルドリッチ・ジャパン社製)1.50g(7.24mmol)、水酸化ナトリウム0.29g(7.25mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.30g(1.83mmol)を、メタノール60.0gに溶解した。アゾビスイソブチロニトリルは、定法に従い、メタノールから再結晶して用いた。60分間アルゴンをバブルして脱気を行い、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のジエチルエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAD/AMPSコポリマー(90/10)15.2gを得た(収率:75.1%)。重量平均分子量は50000だった。
【0026】
(a2)成分のカルボキシル基当量は、200~40000であると、得られるエラストマーの硬さが好適という理由で好ましい。200未満であると、エラストマーが硬すぎる場合がある点で好ましくない。また、40000を超えると、エラストマーを形成しない場合がある点で好ましくない。
【0027】
(a1)アミノ基を有するシリコーンポリマー中のアミノ基と、(a2)カルボキシル基を有するシリコーンポリマー又はカルボキシル基を有するアクリルポリマーのカルボキシル基のモル比は、Y/X=0.1~1.2(Yは、(a2)成分に含まれるカルボキシル基のモル量、Xは(a1)成分に含まれるアミノ基のモル量)である必要がある。より好ましくは、0.1~0.8である。0.1未満であると、エラストマーを形成しない場合があるため好ましくない。また、1.2より大きいと、エラストマーを形成しない場合があるため好ましくない。
【0028】
上記のエラストマーをタルクの表面に被覆する。そして、エラストマーで被覆したタルクを化粧料に使用すると、肌への感触を向上させ、しっとりとして粉っぽくない感覚を有する。また、皮膚に塗布した際の自然な仕上がりを維持したままカバー力に優れた化粧料を得ることができる。
【0029】
上記エラストマーの量は、無機粉末に対して、0.5~20質量%、より好ましくは1~15質量%である。20質量%を超えて配合すると、無機粉末の融着や乳化化粧料の成形性の低下を生じる場合がある点で好ましくない。また、配合量が0.5質量%未満であると、感触の改善効果が得られない場合がある点で好ましくない。
【0030】
エラストマー被覆層を有する無機粉末の配合量は、乳化化粧料に対して、0.5~20質量%、より好ましくは、2~20質量%である。20質量%を超えて配合すると、のびが重くなる場合がある点で好ましくない。また、配合量が0.5質量%未満であると、使用感触の改善効果が得られない場合がある点で好ましくない。
【0031】
エラストマーで被覆する無機粉末としては、化粧料において使用可能な粉体素材が選択される。これらのうち、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等が好ましく用いられる。
【0032】
タルクは、市販品としては、JET-Rシリーズ(浅田製粉社製)、ミクロエースシリーズ(日本タルク社製)、富士タルク社製のFL108、FG106、MG115
RL217などが挙げられる。マイカは、市販品としては、PDM-9WA(トピー工業社製) などが挙げられる。
【0033】
タルクと、(a1)アミノ基を有するシリコーンポリマーを混合する工程と、(a2)カルボキシル基を有するシリコーンポリマーを混合し、加熱する工程によって本発明に用いる(A)エラストマー被覆層を有する無機粉末を得ることができる。
【0034】
(A)エラストマー被覆層を有する無機粉末は、公知の被覆粉末の製造方法で得ることができる。具体例を挙げると、ヘンシャルミキサーに、タルクと、(a1)アミノ基を有するシリコーンポリマーを加え、低速にて、10分間混合する。そして、そこに、(a2)カルボキシル基を有するシリコーンポリマーを加えて、低速にて10分間混合し、加熱することで、本発明に用いるエラストマー被覆タルクを得ることができる。
また、(a1)成分と(a2)成分の添加順序は、逆でも本発明に用いるエラストマー被覆層を有する無機粉末を得ることができる。
【0035】
(B)油分
本発明には、(B)油分を配合することが必須である。油分としては、シリコーン油、極性油分、エステル油分、炭化水素油、脂肪酸、高級アルコールなどが挙げられる。これらの中でもシリコーン油、極性油分が好適に用いられる。
配合量としては、特には限定されないが、20~80質量%であると好ましい。
【0036】
(b1)シリコーン油
本発明では、シリコーン油を用いることが好適である。シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
【0037】
(b1)シリコーン油の配合量は、乳化化粧料の全油分中50質量%以上、より好ましくは、60質量%以上であると、みずみずしく、伸びがなめらかで粉っぽさの無い化粧料が得られる。配合量が50質量%未満であると、使用感触の改善効果が得られない場合がある点で好ましくない。
【0038】
(b1)シリコーン油は、市販品としては、エキセコールD-5(信越化学社製)、シリコーンKF-96L-1.5CS(信越化学社製)、シリコーンKF-96A-6T(信越化学社製)などが挙げられる。
【0039】
(b2)極性油分
本発明では、極性油分を用いることが好適である。極性油分とは、IOB値が0.05~0.80である油分のこと表す。
【0040】
(b2)極性油分としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(IOB値:0.28)、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル(IOB値:0.33)、ジピバリン酸トリプロピレングリコール(IOB値:0.52)、オクタン酸セチル(IOB値:0.13)、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(IOB値:0.31)、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタンエリスリット(IOB値:0.35)、安息香酸(炭素原子数12~15)アルキル(IOB値:0.19)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン(IOB値:0.36)、フェネチルベンゾエート(IOB値:0.30)、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール(IOB値:0.32)、コハク酸ジ2-エチルヘキシル(IOB値:0.32)、トリオクタノイン(IOB値:0.36)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB値:0.36)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、セスキイソステアリン酸ソルビタン等が挙げられる
【0041】
(b2)極性油分の配合量は、乳化化粧料の全油分中60質量%以上であると、弾力感がありながら伸びの重さを感じず、粉っぽさの無い化粧料が得られる。配合量が60質量%未満であると、使用感触の改善効果が得られない場合がある点で好ましくない
【0042】
(b2)極性油分は、市販品としては、RA-G-308(日本精化社製)、RA-PE-408(日本精化社製)、CIO(日本サーファクタント工業社製)、ピバリン酸イソドデシル(高級アルコール工業社製)などが挙げられる。
【0043】
本発明に使用される(A)エラストマー被覆層を有する無機粉末と(B)油分以外に、化粧料において使用可能な無機粉体や有機粉末を配合しても構わない。
【0044】
無機粉末は、例えば、セリサイト、天然マイカ、焼成マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、アルミナ、マイカ、カオリン、ベントナイト、スメクタイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化鉄、酸化イットリウム、酸化クロム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化クロム、紺青、群青、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ストロンチウム、炭化ケイ素、フッ化マグネシウム、タングステン酸金属塩、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、クロルヒドロキシアルミニウム、クレー、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、スピネル、ムライト、コージェライト、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ケイ素、ランタン、サマリウム、タンタル、テルビウム、ユーロピウム、ネオジウム、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、シリコーンカーバイート、チタン酸コバルト、チタン酸バリウム、チタン酸鉄、リチウムコバルトチタネート、アルミン酸コバルト、アンチモン含有酸化スズ、スズ含有酸化インジウム、マグネタイト、アルミニウム粉、金粉、銀粉、白金粉、銅粉、貴金属コロイド、鉄粉、亜鉛粉、コバルトブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、低次酸化チタン、微粒子酸化チタン、バタフライ状硫酸バリウム、花びら状酸化亜鉛、テトラポッド状酸化亜鉛、微粒子酸化亜鉛、パール顔料としては酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆タルク、酸化亜鉛被覆シリカ、酸化チタン被覆着色雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、コンジョウ被覆雲母チタン等が挙げられる。
これらのうち、マイカ、セリサイト、カオリン、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等が好ましく用いられる。
【0045】
これら無機粉末の市販品としては、例えば、MERCK社のIRIODIN(登録商標)シリーズ、TIMIRON(登録商標)シリーズ、COLORONAシリーズ(登録商標)シリーズ、DICHRONA(登録商標)シリーズ、XIRONA(登録商標)シリーズ、RONASTAR(登録商標)シリーズ、BASF社のDESERTREFLECTIONSシリーズ、TIMICAシリーズ、FLAMENCOシリーズ、CLOIZONNEシリーズ、DUOCROMEシリーズ、GEMTONEシリーズ、CELLINIシリーズ、MEARLMAIDシリーズ、REFLECKSシリーズ、CHROMA-LITEシリーズ、COSMICAシリーズ、ECKART社のPRESTIGE(登録商標)シリーズ、VISIONAIRE(登録商標)シリーズ、MIRAGEシリーズ、日本板硝子社のメタシヤイン(登録商標)、日本光研社のPROMINENCE(登録商標)、CQV社のCosmetica White Pear1シリーズ、Sharon Pear1シリーズ、Taizu社のPrecioso White Peartescent Pigmentsシリーズ等が挙げられる。アルミフレーク、シリカフレーク、アルミナフレーク、ガラスフレーク等のエフェクト顔料、ベンガラ被覆雲母、カルミン、酸化チタン被覆ホウケイ酸(ナトリウム/カルシウム)、酸化チタン被覆ホウケイ酸(カルシウム/アルミニウム)、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ステンレスパウダー、トルマリン粉末、サファイアやルビー等の宝石を粉砕したパウダー、マンゴバイオレット、ガラスファイバー、カーボンファイバー、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、βーウォラストナイト、ゾノライト、チタン酸カリウム繊維、硼酸アルミニウム繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、窒化ケイ素繊維等が挙げられる。
【0046】
有機粉末(例えば、シリコーンエラストマー粉末、シリコーン粉末、シリコーンレジン被覆シリコーンエラストマー粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末(例えばメタクリル酸メチルクロスポリマー)、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、等が挙げられる。
【0047】
〈製造方法〉
油相成分を混合し、そこにホモミキサーなどにより粉末を混合する工程、得られた油相成分にホモミキサーなどにより水相成分を乳化させる工程を経て、本発明のエラストマー被覆層を有する無機粉末を配合した乳化化粧料を得ることができる。
【0048】
本技術は、化粧料中に配合されるすべての無機粉末や有機粉末に一括してエラストマー被覆を施し、そこに他の油分を加えて化粧料を得ることもできる。すなわち、化粧料中のすべての無機粉末、有機粉末をあらかじめ混合し、得られた混合粉末にエラストマー形成油分を加え加熱し、エラストマー被覆混合粉末を得てから、これを乳化化粧料に使用しても良い。
【0049】
一方、本技術で用いられるエラストマー形成油分(a1)と(a2)を他の油分とともに加えてしまい、加熱する工程では本発明の目的の機能は得られない。
すなわち、化粧料中の無機粉末、有機粉末を混合し、ここに(a1)と(a2)および他の油分を混合して添加し、加熱した場合、使用感触、隠避力ともに劣後する化粧料になってしまう。
【0050】
(a1)と(a2)、(B)以外の油分としては、本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で含有させることが可能である。液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤形に応じて常法により製造することが出来る。
【0051】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0052】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0053】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、アルキレンオキシド誘導体、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
【0054】
紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルメトキシシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'- ジヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4'-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4'-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、ジモルホリノピリダジノ;2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート;2,4-ビス-{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン等が挙げられる。
【0055】
本発明のエラストマー被覆層を有する無機粉末を配合した乳化化粧料は、必要に応じて、水、上記以外の粉末、界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、保湿剤、防腐剤、高分子(被膜剤を含む)、酸化防止剤、香料、その他の各種薬剤等を本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で含有させることが可能である。
【0056】
本発明の乳化化粧料としては、美白用美容液、乳液、クリーム、パック、化粧下地、BBクリーム、サンスクリーン、ファンデーション、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、洗顔料、スプレー、ムース、ヘアーリンス、シャンプー等の製品任意の製品形態とすることができ、特に、ファンデーションとしての使用が好適である。
【0057】
また本発明は、容器形態を限定されるものではない。たとえばこの化粧料を含浸体に含浸させて、気密性を備えたコンパクト容器内に収容することも可能である。含浸体としては、樹脂、パルプ、綿等の単一又は混合素材からなる不織布、樹脂加工した繊維体、スポンジなどの発泡体、連続気孔を備えた多孔質体などが挙げられる。また含浸体の素材としては、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NR(天然ゴム)、ウレタン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、EVA(エチレン酢酸ビニル)、PVA(ポリビニルアルコール)、シリコン、エラストマーなどの例が挙げられるが、化粧料を含むことのできる含浸体であればこれらの素材に限られるものではない。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明について詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
まず、以下の試験で用いた評価方法及び評価基準について説明する。
【0059】
<エラストマー被覆試験>
試験方法は目視での観察および触感で元粉末とエラストマーが分離していないことを確認した。また元素分析で仕込み量に対して適切な量のエラストマーが被覆されていること、水に浮かべて撥水性を示すことを確認して被覆が適切であるか確認した。
○:エラストマーで粉末が被覆されている
×:エラストマーで粉末が被覆されていない
【0060】
まず、本発明に用いる組成物が、(a1)アミノ基を有するシリコーンポリマーと、(a2)カルボキシル基を有するシリコーンポリマーが、混合した際に、エラストマーとなる配合量について検討した。
【0061】
下記各表に記載する処方の本発明に用いるエラストマーは、下記製造方法に従って調製した。
<製造方法>
カルボキシル基を有するシリコーンポリマーと、アミノ基を有するシリコーンポリマーを加えて撹拌し、105℃にて12時間加熱することで、本発明に用いるエラストマーを得た。
【0062】
まず、本発明者は、(a1)アミノ基を有するシリコーンポリマーと、(a2)カルボキシル基を有するシリコーンポリマーがエラストマー状の性質を示すアミノ基とカルボキシル基のモル比Y/X(Yは、(a2)成分に含まれるカルボキシル基のモル量、Xは、(a1)成分に含まれるアミノ基のモル量)について検討した。Y/Xは、NMRから求めたカルボキシル基当量、ジアミノ基当量から算出したカルボキシル基量(mmol)/アミノ基量(mmol)である。
以下の表1と表2に掲げる試験例の処方は以下の通りである。
【0063】
【0064】
【0065】
(*1)KF-8004(信越化学工業株式会社)
KF-8004の1H NMRを測定し、CH3由来のシグナルと、-CH2-由来のシグナルのそれぞれの積分値から、ジアミン当量を算出したところ、3090.4g/molであった。
(*2)センサシルPCA(クローダ社)
センサシルPCAの1H NMRを測定し、CH3由来のシグナルと、-CH2-由来のシグナルのそれぞれの積分値から、カルボキシル当量を算出したところ、5631g/molであった。
【0066】
試験例1―4から1-9の範囲で、エラストマーとなることがわかった。
したがって、アミノ基とカルボキシル基のモル比が、Y/X=0.1~1.2が優れていることがわかった。
【0067】
次に、本発明者は、その他の(a2)成分として、カルボキシル基を有するアクリルポリマーに置き換えることが可能であるか検討した。
【0068】
【0069】
(*3)COOH含有アクリルポリマーは、以下の方法により得た。
12-メタクリルアミドドデカン酸(MAD)/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(90/10)、12-メタクリルアミドドデカン酸(MAD)18.50g(65.37mmol)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ-アルドリッチ・ジャパン社製)1.50g(7.24mmol)、水酸化ナトリウム0.29g(7.25mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.30g(1.83mmol)を、メタノール60.0gに溶解した。アゾビスイソブチロニトリルは、定法に従い、メタノールから再結晶して用いた。
60分間アルゴンをバブルして脱気を行い、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のジエチルエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。
減圧乾燥の後、ランダム状のCOOH含有アクリルポリマーを15.2g得た(収率:75.1%)。得られたCOOH含有アクリルポリマーは、重量平均分子量は50000だった。
【0070】
このことから、カルボキシル基を有するアクリルポリマーでも、本発明に用いるエラストマーが得られることがわかった。
【0071】
〈エラストマー被覆無機粉末〉
さらに、本発明者は、以下において、本発明に用いるエラストマーを様々な無機粉末に被覆できるかどうか検討した。
【0072】
<製造方法>
ヘンシャルミキサーに、(C)各種無機粉末と、カルボキシル基を有するシリコーンポリマーを加え、低速にて、10分間混合する。そして、そこに、アミノ基を有するシリコーンポリマーを加えて、低速にて10分間混合し、加熱することで、本発明に用いるエラストマー被覆層を有する無機粉末を得た。
【0073】
【0074】
表4中の各種無機粉体
タルク:タルクJA-68R(浅田製粉社製)
マイカ:PDM-9WA(トピー工業社製)
合成金雲母鉄:PDM-FE(トピー工業社製)
【0075】
試験例3-1~3-4より、本発明に係るエラストマーは、様々な無機粉体を被覆することができると分かった。
【0076】
〈乳化化粧料〉
本発明者は、本発明に係る乳化化粧料に、エラストマー被覆層を有する無機粉末を化粧料に配合することについて以下の評価基準に基づき使用感触とカバー力などの検討を行った。
【0077】
<カバー力>
各試験例組成物を掌上に載せ、肌に塗布した際のカバー力について、10名の専門パネルにより下記の基準で評価した。
◎:10名中9名以上が、カバー力が良いと回答した。
○:10名中7名以上9名未満が、カバー力が良いと回答した。
○△:10名中5名以上7名未満が、カバー力が良いと回答した。
△:10名中3名以上5名未満が、カバー力が良いと回答した。
×:10名中3名未満が、カバー力が良いと回答した。
【0078】
<なめらかさ>
各試験例組成物を掌上に載せ、肌に塗布した際のなめらかさについて、10名の専門パネルにより下記の基準で評価した。
◎:10名中9名以上が、なめらかさが良いと回答した。
○:10名中7名以上9名未満が、なめらかさが良いと回答した。
○△:10名中5名以上7名未満が、なめらかさが良いと回答した。
△:10名中3名以上5名未満が、なめらかさが良いと回答した。
×:10名中3名未満が、なめらかさが良いと回答した。
【0079】
<粉っぽさのなさ>
各試験例組成物を掌上に載せ、肌に塗布した際の粉っぽさのなさについて、10名の専門パネルにより下記の基準で評価した。
◎:10名中9名以上が、粉っぽさのなさが良いと回答した。
○:10名中7名以上9名未満が、粉っぽさのなさが良いと回答した。
○△:10名中5名以上7名未満が、粉っぽさのなさが良いと回答した。
△:10名中3名以上5名未満が、粉っぽさのなさが良いと回答した。
×:10名中3名未満が、粉っぽさのなさが良いと回答した。
【0080】
<弾力感>
各試験例組成物を掌上に載せ、肌に塗布した際の弾力感について、10名の専門パネルにより下記の基準で評価した。
◎:10名中9名以上が、弾力感が良いと回答した。
○:10名中7名以上9名未満が、弾力感が良いと回答した。
○△:10名中5名以上7名未満が、弾力感が良いと回答した。
△:10名中3名以上5名未満が、弾力感が良いと回答した。
×:10名中3名未満が、弾力感が良いと回答した。
【0081】
〈エラストマー被覆無機粉末配合乳化化粧料の製造方法〉
油相成分を混合し、そこにホモミキサーなどにより粉末を混合する工程、得られた油相成分にホモミキサーなどにより水相成分を乳化させる工程を経て、本発明のエラストマー被覆層を有する無機粉末を配合した乳化化粧料を得ることができる。
【0082】
次に、本発明者は、本発明に用いるエラストマー被覆層を有するタルクを乳化化粧料に配合した場合に、得られた化粧料の使用感およびカバー力などについて検討を行った。
【0083】
【0084】
(*1)シリコーンKF-96L-1.5CS(信越化学社製)
(*2)シリコン KF56(信越化学社製)
(*4)シリコーンSC9450N(信越化学社製)
(*5)エステモール 182V(日清オイリオグループ社製)
(*6)オクチル メトキシシンナメート(ジボダン社製)
(*7)KSG-210(信越化学社製)
(*8)ベントン38VCG(エレメンティススペシャリティーズ社製)
(*9)OTS-RC402P(大東化成工業社製)
(*13)酸化チタンMT-014V(テイカ社製)
(*14)ナイロン SP-500(日興理化学産業社製)
(*15)エラストマー処理タルク(タルクJA-68R(A:2%、B:3%))
【0085】
本発明者は、これらの試験例4-1~4-2から、通常の顔料級の酸化チタンの配合量を増やすことでは、隠蔽力は向上したが、白浮きがあり不自然な仕上がりになったり、使用感が悪くなってしまうことが分かった。試験例4-3では、ナイロン粉末で隠蔽力を向上するか検討したが、隠蔽力に差が見られず、使用感も向上しなかった。
一方で、試験例4-4では、エラストマー被覆層を有するタルクを用いたところ、カバー力を維持したまま、使用感が向上することが分かった。
【0086】
そこで、本発明者は、ナイロン粉末と、エラストマー被膜層を有するタルクについてさらに検討した。
【0087】
【0088】
試験例5-1~5-3から分かるように、(A)エラストマー被覆層を有するタルクとを用いずに、ナイロン粉末を使用しても、カバー力は向上していくが、使用感は悪化していくことが分かった。
【0089】
【0090】
試験例5-4~5-6から分かるように、(A)エラストマー被覆層を有する無機粉末を用いると、カバー力が向上しつつ、使用感が更に良くなることが分かった。
【0091】
次に、発明者は、タルクにエラストマー被覆層を作らないで、乳化化粧料に添加することについて検討した。
【0092】
【0093】
(*16) エキセコールD5(信越化学社製)
(*17) RA-G-308(日本精化社製)
(*18) シリコーンSC9450N(信越化学社製)
(*19) エステモール182V(日清オイリオグループ社製)
(*20) シリコーン8004(信越化学工業株式会社)
(*21) モナシルPCA(クローダ社)
【0094】
試験例6-1から分かるように、エラストマー被覆層を有するタルクを用いないと、本発明の効果は得られない。
試験例6-2から分かるように、エラストマー形成油分(a1)と(a2)で、エラストマーを形成してから、製造する工程では、本発明の目的の機能は得られない。
また、試験例6-3から分かるように、本技術で用いられるエラストマー形成油分(a1)と(a2)を他の油分とともに加えてしまい、製造する工程では本発明の目的の機能は得られない。また、
【0095】
【0096】
試験例7-1~7-5より分かるように、極性油分の配合量は、乳化化粧料の全油分中60質量%以上であると、弾力感がありながら伸びの重さを感じず、粉っぽさの無い化粧料が得られる。配合量が60質量%未満であると、使用感触の改善効果が得られない場合がある点で好ましくない。
また、シリコーン油の配合量は、乳化化粧料の全油分中50質量%以上、より好ましくは、60質量%以上であると、みずみずしく、伸びがなめらかで粉っぽさの無い化粧料が得られる。配合量が50質量%未満であると、使用感触の改善効果が得られない場合がある点で好ましくない。
【0097】
次に、本発明者らは、タルク以外のエラストマー被覆層を有する無機粉末を用いた場合でも、使用感触が向上するかどうか検討した。
【0098】
【0099】
試験例8-1~8-4から、タルク以外のエラストマー被覆層を有する無機粉末を用いた場合でも、使用感触が向上することが分かった。