IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミクロン電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-抵抗素子及びこれを用いた抵抗器 図1
  • 特許-抵抗素子及びこれを用いた抵抗器 図2
  • 特許-抵抗素子及びこれを用いた抵抗器 図3
  • 特許-抵抗素子及びこれを用いた抵抗器 図4
  • 特許-抵抗素子及びこれを用いた抵抗器 図5
  • 特許-抵抗素子及びこれを用いた抵抗器 図6
  • 特許-抵抗素子及びこれを用いた抵抗器 図7
  • 特許-抵抗素子及びこれを用いた抵抗器 図8
  • 特許-抵抗素子及びこれを用いた抵抗器 図9
  • 特許-抵抗素子及びこれを用いた抵抗器 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】抵抗素子及びこれを用いた抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 3/00 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
H01C3/00 W
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018054050
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019169505
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591181908
【氏名又は名称】ミクロン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】杉本 憲治
(72)【発明者】
【氏名】野田 拓成
(72)【発明者】
【氏名】大塚 彰生
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-200401(JP,A)
【文献】特開2015-095529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0278599(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻付部と、該巻付部の両端面に形成される凹部又は凸部とを有する柱状の芯と、
一部が該芯の前記凹部に各々圧入もしくは係合されるか、又は一部が前記凸部の側面に各々圧入もしくは係合される2枚の端子板と、
前記巻付部に巻回され、両端が前記2枚の端子板の各々に接合される抵抗線とを備えることを特徴とする抵抗素子。
【請求項2】
前記2枚の端子板の前記抵抗線の両端部との接合部は、前記巻付部に沿って延設され、 前記端子板の接合部の各々は、前記巻付部に延設される溝部、又は凹部に収まり、前記巻付部との段差を小さくしていることを特徴とする請求項1に記載の抵抗素子。
【請求項3】
前記端子板は、該抵抗素子を収容する溝を有する絶縁ケースの内壁に当接する膨出部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗素子。
【請求項4】
前記芯の軸線に垂直な断面は、楕円形であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の抵抗素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の抵抗素子を備えることを特徴とする抵抗器。
【請求項6】
該抵抗器は、
前記抵抗素子を収容する溝を有する絶縁ケースを備え、
前記抵抗素子を前記溝に収容した状態で該溝の中にセメントを充填して硬化させたセメント抵抗器であることを特徴とする請求項5に記載の抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状の芯に巻回される抵抗線を備える抵抗素子、及びこの抵抗素子をセメントで封入した抵抗器等に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗器は広く一般的に用いられており、この抵抗器に用いられる抵抗素子として、例えば、特許文献1には、図10に示すように、断面が楕円形状の芯42と、芯42の巻付部42aに巻回される抵抗線43と、芯42のキャップ装着部42bに圧入されるキャップ部44aを有する端子板44とを備える抵抗素子41が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-95529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の抵抗素子41は、長手方向寸法が大きいため、この抵抗素子を用いたセメント抵抗器も大きくなり、その結果、この抵抗器の設置スペースが大きくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、製造コストの上昇を招くことなく、小型の抵抗素子及び抵抗器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る抵抗素子は、巻付部と、該巻付部の両端面に形成される凹部又は凸部とを有する柱状の芯と、一部が該芯の前記凹部に各々圧入もしくは係合されるか、又は一部が前記凸部の側面に各々圧入もしくは係合される2枚の端子板と、前記巻付部に巻回され、両端が前記2枚の端子板の各々に接合される抵抗線とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、キャップを用いずに、圧入や係合によって芯に端子板を装着するため、芯の両端部にキャップが圧入される部分を設ける必要がなく、芯の長手方向寸法を小さくして抵抗素子を小型化することができる。
【0008】
前記抵抗素子において、前記2枚の端子板の前記抵抗線の両端部との接合部を、前記巻付部に沿って延設し、前記端子板の接合部の各々を、前記巻付部との段差が小さくなるように構成すれば、抵抗線を端子板に接合し易くなる。
【0009】
前記抵抗素子において、前記端子板に、該抵抗素子を収容する溝を有する絶縁ケースの内壁に当接する膨出部を設ければ、セメント抵抗器を構成する際に抵抗素子を絶縁ケース内で位置決めや保持し易い。
【0010】
前記抵抗素子において、前記芯の軸線に垂直な断面を楕円形にすれば、抵抗器の設置スペースを小さくすることができる。
【0011】
また、本発明の抵抗器は、上記いずれかの抵抗素子を備え、小型である。
【0012】
さらに、上記抵抗器は、前記抵抗素子を収容する溝を有する絶縁ケースを備え、前記抵抗素子を前記溝に収容した状態で該溝の中にセメントを充填して硬化させ、小型のセメント抵抗器とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、製造コストの上昇を招くことなく、小型の抵抗素子及び抵抗器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る抵抗素子の第1の実施形態を示す図であって、(a)は一部破断正面図、(b)は側面図である。
図2図1に示す抵抗素子の芯を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図3図1に示す抵抗素子の端子板を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。
図4図1に示す抵抗素子を備える抵抗器のセメント封止前の状態を示す図であって、(a)は一部破断正面図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
図5図1に示す抵抗素子を備える抵抗器のセメント封止後の状態を示す図である。
図6図2に示す芯の変形例を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図7】本発明に係る抵抗素子の第2の実施形態を示す図であって、(a)は一部破断正面図、(b)は側面図である。
図8図7に示す抵抗素子の芯を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図9図7に示す抵抗素子の端子板を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。
図10】従来の抵抗素子の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、本発明に係る抵抗素子をセメント抵抗器に適用した場合を例にとって説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る抵抗素子1の第1の実施形態を示し、この抵抗素子1は、柱状の芯3と、芯3に巻回される抵抗線2と、芯3に装着される2枚の端子板4とで構成される。
【0017】
芯3は、図2に示すように、抵抗線2を巻き付ける巻付部3aと、巻付部3aの両端面から水平方向に貫通する貫通孔3bと、巻付部3aの中央部に水平方向に延設される溝部3cとを備える。この芯3は、セラミックス等の絶縁体からなり、複数個分の芯3を一度に押出成形し、成形物を1つの芯3の長さに切断した後、切断後の成形物を焼結して製造される。
【0018】
巻付部3aの軸線に垂直な断面、すなわち横断面は楕円形であり、楕円形とすることで、横断面を円形とした場合に比較し、芯3の横断面の外周長さを減少させないで、すなわち抵抗器の抵抗値を維持しながら、芯3の投影面積(図2(b)において芯3を上方から下方に投影した場合の面積)を減少させることができる。これにより、抵抗素子1を用いて製造される抵抗器の設置スペースを小さくすることができる。
【0019】
端子板4は、図3に示すように、2本の爪部4aと、抵抗線2が接合される爪状の2本の接合部4bと、帯板状の端子4cと、後述するセメント抵抗器を構成する際に機能する膨出部4dとで構成される。尚、符号4e、4fは各々孔及び開口を示す。
【0020】
図1に示すように、2枚の端子板4の爪部4aを芯3の貫通孔3bに各々圧入し、芯3の溝3c上に位置する端子板4の接合部4bに抵抗線2の両端部を各々接合することで、抵抗素子1が組み立てられる。
【0021】
本実施の形態によれば、キャップを用いずに、芯3の貫通孔3bに端子板4の爪部4aを圧入することで芯3に端子板4を装着するため、芯3の端部にキャップが圧入される部分を設ける必要がなく、芯3の長手方向寸法を小さくすることができる。その結果、抵抗素子1を小型化することができる。また、接合部4bを溝3cに納め、巻付部3aとの段差を小さくしたため、接合部4bに抵抗線2を接合し易くなる。
【0022】
尚、本実施の形態において、端子板4の爪部4aを芯3の貫通孔3bに圧入する代わりに、これら爪部4a及び貫通孔3bの形状を調節して爪部を貫通孔に係合させてもよい。
【0023】
次に、上記抵抗素子1を備えるセメント抵抗器について、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0024】
図4に示すように、磁器ケース12に抵抗素子1を収容した後、図5に示すように、抵抗素子1をセメント13で封止してセメント抵抗器11が製造される。尚、図5は、磁器ケース12の内壁付近から見た断面図を各々描いている。
【0025】
図4に示すように、磁器ケース12は、上方に開口する溝12aを有する箱状に形成され、溝12aに端子板4の端子4cの一部を除く抵抗素子1全体が収容される。ここで、端子板4の膨出部4dが磁器ケース12の内壁に当接するため、抵抗素子1を磁器ケース12内で位置決めや保持しやすい。
【0026】
図5に示すセメント抵抗器11では、セメント13から端子板4の一対の端子4cが突出し、これらの端子4cを相手方の基板や雌端子等に係合させて使用する。
【0027】
以上のように、本実施の形態では、抵抗素子1を小型化することができるため、これに伴って抵抗器11も小型化することができる。
【0028】
次に、図2に示す芯3の変形例について、図6を参照しながら説明する。この芯21は、上記芯3と同様に構成される巻付部3aと、巻付部3aの両端面から形成される凹部21aと、巻付部3aの中央の両端部に形成される凹部21bとを備える。この芯21は、セラミックス等の絶縁体からなり、芯21を1つずつプレス成形した後、プレス後の成形物を焼結して製造される。
【0029】
この芯21についても、凹部21bに上記端子板4の接合部4bを収容しながら、凹部21aに端子板4の爪部4aを圧入することで、上記抵抗素子1と同様に、芯21に端子板4を装着することができる。
【0030】
次に、本発明に係る抵抗素子1の第2実施形態について、図7図9を参照しながら説明する。この抵抗素子31は、柱状の芯32と、芯32に巻回される抵抗線2と、芯32に装着される2枚の端子板33とで構成される。尚、図1図3に示す抵抗素子1の構成要素と同様のものについては、同様の参照番号を付して説明を省略する。
【0031】
芯32は、図8に示すように、巻付部3aと、巻付部3aの両端面に形成される凹部32aと、巻付部3aの中央の両端部に形成される凹部32bと、巻付部3aの両端面の中央から突出する凸部32cとを備える。この芯32は、上記芯21と同様に、プレス成形によって製造される。
【0032】
端子板33は、図9に示すように、2本の爪部4aと、抵抗線2が接合される爪状の2本の接合部4bと、帯板状の端子4cと、膨出部4dと、貫通孔33aと、貫通孔33aの周りに形成される環状凸部33bとで構成される。
【0033】
図7に示すように、2枚の端子板33の環状凸部33bの内側に、貫通孔33aを介して芯32の凸部32cを圧入しながら、爪部4aを芯32の凹部32aに各々圧入し、芯32の凹部32b上に位置する端子板4の接合部4bに抵抗線2の両端部を各々接合することで、抵抗素子31が組み立てられる。ここで、2枚の端子板33の環状凸部33bの内側に芯32の凸部32cを圧入したため、上記第1の実施形態よりも、芯32に端子板33をより強固に装着することができる。
【0034】
本実施の形態においては、芯32に凹部32aと凸部32cの両方を設け、端子板33に爪部4aと貫通孔33aの両方を設けた場合について説明したが、芯32に凸部32cだけを設け、端子板33に貫通孔33aを設けるだけでも、芯32に端子板33を装着することができる。ここで、凸部32cの側面(左端面又は右端面を除く面)を貫通孔33aに圧入し、端子板33は凸部32cの左端面及び右端面を覆わないようにしたため、従来のようにキャップを有する端子板を用いる場合と比較して、少なくとも端子板のキャップの厚み分だけ芯の長手方向寸法を小さくして抵抗素子を小型化することができる。
【0035】
また、凸部32aの芯32の軸線に垂直な断面を方形や楕円形等にし、この凸部32aの形状に合わせて端子板33に貫通孔33aを穿設すれば、端子板33の回転を確実に防止することができる。さらに、端子板33に貫通孔33aを穿設せず、端子板33の一部を芯32の凸部32cの側面に係合させてもよい。
【0036】
尚、上記実施の形態では、抵抗素子1、31をセメント抵抗器に適用した場合を例示したが、それ以外の抵抗器に用いて同様の作用効果を奏することもできる。
【0037】
さらに、従来のセメント抵抗器では、芯の巻付部の両端部に端子板のキャップを直接圧入固定するため、芯の円形横断面の直径が変化すると、それに応じて異なる内径のキャップを備えた端子板を用意する必要がある。しかし、本発明では、抵抗素子1、31の芯3の巻付部3aの横断面の形状が変化しても、貫通孔3bや、凹部21a、32a、凸部32cの形状を一定にすることで、これに対応する爪部4aや貫通孔33a等を備えた端子板4、33を用意するだけで済み、製造コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 抵抗素子
2 抵抗線
3 芯
3a 巻付部
3b 貫通孔
3c 溝部
4 端子板
4a 爪部
4b 接合部
4c 端子
4d 膨出部
4e 孔
4f 開口
11 セメント抵抗器
12 磁器ケース
12a 溝
13 セメント
21 芯
21a、21b 凹部
31 抵抗素子
32 芯
32a、32b 凹部
32c 凸部
33 端子板
33a 貫通孔
33b 環状凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10