IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三井ハイテックの特許一覧

<>
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図1
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図2
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図3
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図4
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図5
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図6
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図7
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図8
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図9
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図10
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図11
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図12
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図13
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図14
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図15
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体の製造装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】積層体の製造方法及び積層体の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20221007BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20221007BHJP
   B32B 37/16 20060101ALI20221007BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
H02K15/02 F
B32B15/01 A
B32B37/16
H01F41/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018078379
(22)【出願日】2018-04-16
(65)【公開番号】P2019187173
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小谷川 隆義
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 雄介
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-027205(JP,A)
【文献】特開2010-143125(JP,A)
【文献】特開2018-007421(JP,A)
【文献】特開2013-115982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
B32B 15/01
B32B 37/16
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁鋼板を積層して積層ブロックを形成し、前記電磁鋼板の積層方向に沿って複数の前記積層ブロックを重ねて一つの仮積層体を形成することと、
前記仮積層体の厚さを示す第一積厚情報を取得することと、
前記第一積厚情報が予め設定された第一積厚下限値を下回った場合に、前記第一積厚情報を前記第一積厚下限値以上にするように前記電磁鋼板の積層枚数を増やすことと、
前記仮積層体の前記複数の積層ブロックの少なくとも一つを前記複数の積層ブロックの他の一つに対して前記積層方向に沿う軸線まわりに回した転積積層体を形成することとを含む、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記積層方向に並ぶ二つの挟持体によって前記仮積層体を挟持した状態で、前記積層方向に直交する軸線まわりに前記二つの挟持体を反転させることを更に含み、
前記仮積層体を挟持した前記二つの挟持体の間隔を前記第一積厚情報として取得する、請求項記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
記転積積層体の厚さを示す第二積厚情報を取得することと、
前記仮積層体の前記第一積厚情報が前記第一積厚下限値以上であり、当該仮積層体から得られた前記転積積層体の前記第二積厚情報が予め設定された第二積厚下限値を下回った場合に、前記第二積厚情報を前記第二積厚下限値以上にするように前記積層枚数を増やすこととを更に含む、請求項又は記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記仮積層体の前記第一積厚情報が前記第一積厚下限値を下回った場合に、当該仮積層体以降に形成される前記仮積層体を、前記第一積厚情報が前記第一積厚下限値以上となるまで除外することを更に含む、請求項記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記仮積層体において、少なくとも厚さが最大となる箇所を測定対象とした前記第一積厚情報を取得し、
前記転積積層体において、厚さが最大となる箇所及び厚さが最小となる箇所の両方を測定対象とした前記第二積厚情報を取得する、請求項又は記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第二積厚情報の測定手法に比較してプラス側のマージンが加算される測定手法にて測定された前記第一積厚情報を取得する、請求項のいずれか一項記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第二積厚情報が予め設定された第二積厚上限値を上回った場合に、前記第二積厚情報を前記第二積厚上限値以下にするように前記積層枚数を減らすことを更に含む、請求項のいずれか一項記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
複数の電磁鋼板を積層して積層ブロックを形成し、前記電磁鋼板の積層方向に沿って複数の前記積層ブロックを重ねて一つの仮積層体を形成する積層装置と、
前記仮積層体の厚さを示す第一積厚情報を取得する第一積厚センサと、
前記第一積厚情報が予め設定された第一積厚下限値を下回った場合に、前記第一積厚情報を前記第一積厚下限値以上にするように前記電磁鋼板の積層枚数を増やす制御装置と、
前記仮積層体の前記複数の積層ブロックの少なくとも一つを他の前記積層ブロックに対して前記積層方向に沿う軸線まわりに回した転積積層体を形成する転積装置と、を備え積層体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体の製造方法及び積層体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの積層鉄心の製造方法が開示されている。この製造方法は、電磁鋼板の打抜部材を積層して積層体を構成することと、積層体の積厚が適正範囲となるように、打抜部材を取り除いて積層体の積厚を修正することとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-7421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、積層体の積厚の精度向上と、積層体の製造効率との両立を図るのに有効な積層体の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る積層体の製造方法は、複数の電磁鋼板を積層して積層ブロックを形成し、電磁鋼板の積層方向に沿って複数の積層ブロックを重ねて一つの仮積層体を形成することと、仮積層体の複数の積層ブロックの少なくとも一つを複数の積層ブロックの他の一つに対して積層方向に沿う軸線まわりに回した転積積層体を形成することと、転積積層体の厚さに関する厚さ情報に基づいて、積層ブロックの形成における電磁鋼板の積層枚数を調節することと、を含み、厚さ情報に基づいて積層枚数を調節することは、転積積層体の形成前の厚さ情報である転積前厚さ情報を取得することと、転積前厚さ情報が予め設定された転積前下限値を下回った場合に、厚さ情報を転積前下限値以上にするように積層枚数を増やすこととを含む。
【0006】
本開示の他の側面に係る積層体の製造装置は、複数の電磁鋼板を積層して積層ブロックを形成し、電磁鋼板の積層方向に沿って複数の積層ブロックを重ねて一つの仮積層体を形成する積層装置と、仮積層体の複数の積層ブロックの少なくとも一つを複数の積層ブロックの他の一つに対して積層方向に沿う軸線まわりに回した転積積層体を形成する転積装置と、転積積層体の厚さに関する厚さ情報に基づいて、積層ブロックの形成における電磁鋼板の積層枚数を調節する制御装置と、を備え、厚さ情報に基づいて積層枚数を調節することは、転積積層体の形成前の厚さ情報である転積前厚さ情報を取得することと、転積前厚さ情報が予め設定された転積前下限値を下回った場合に、転積前厚さ情報を転積前下限値以上にするように積層枚数を増やすこととを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、積層体の積厚のばらつき抑制と、積層体の製造効率向上との両立を図るのに有効な積層体の製造方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】積層鉄心を例示する斜視図である。
図2】(a)は積層体の分解斜視図であり、(b)は電磁鋼板同士の接続部を示す断面図である。
図3】積層体の製造装置の構成を例示する模式図である。
図4】反転装置の構成を例示する模式図である。
図5】(a)は二つの挟持体が積層体を挟持した状態を示す図であり、(b)は加圧プレートが積層体を加圧している状態を示す図である。
図6】(a)及び(b)は除外装置の模式図である。
図7】転積装置の構成を例示する模式図である。
図8】コントローラの機能的な構成を例示するブロック図である。
図9】コントローラのハードウェア構成を例示するブロック図である。
図10】積層手順を例示するフローチャートである。
図11】反転手順を例示するフローチャートである。
図12】積層体を挟持する際の反転装置の動作を示す模式図である。
図13】積層体を反転させて送出する際の反転装置の動作を示す模式図である。
図14】転積手順を例示するフローチャートである。
図15】転積手順を例示するフローチャートである。
図16】転積手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
〔積層体〕
本実施形態に係る積層体1Aは、モータ用の積層鉄心1又はその製造過程における中間生成物である。図1に示すように、積層鉄心1は、例えばモータのステータ用のコアであり、環状のヨーク2と、複数のティース3とを有する。複数のティース3は、ヨーク2に沿って等間隔に並び、それぞれヨーク2の内周面からヨーク2の中心側に突出している。積層鉄心1は、ヨーク2の中心軸線に垂直な複数の電磁鋼板4の積層体1Aにより構成される。
【0011】
図2の(a)に示すように、積層体1Aは、ヨーク2の中心軸線に沿って重なった複数の積層ブロック5を有する。それぞれの積層ブロック5は、複数の電磁鋼板4の積層体である。図2の(b)に示すように、積層ブロック5の複数の電磁鋼板4は、互いに積層された複数の第一電磁鋼板6と、複数の第一電磁鋼板6に更に積層された第二電磁鋼板7とを含む。第二電磁鋼板7は、積層ブロック5の最外層(例えば図示の最下層)に位置している。
【0012】
第一電磁鋼板6は、カシメ部6aを有する。カシメ部6aは、第一電磁鋼板6の主面6bに形成された凹部6dと、第一電磁鋼板6の主面6cに形成された凸部6eとを含む。第一電磁鋼板6同士は、主面6b,6cが対向するように積層されている。第一電磁鋼板6同士の境界においては一方の第一電磁鋼板6の凸部6eが他方の第一電磁鋼板6の凹部6dに嵌まり込んでいる。これにより、第一電磁鋼板6同士が接続されている。
【0013】
第二電磁鋼板7は、第一電磁鋼板6のカシメ部6aを貫通孔7aに変更したものである。第二電磁鋼板7は、第一電磁鋼板6に対して主面6c側に積層されている。第一電磁鋼板6と第二電磁鋼板7との境界においては、第一電磁鋼板6の凸部6eが第二電磁鋼板7の貫通孔7aに嵌まり込んでいる。これにより、第一電磁鋼板6と第二電磁鋼板7とが接続されている。
【0014】
第二電磁鋼板7は、カシメ部6aによる積層ブロック5同士の接続を防止する。具体的に、第二電磁鋼板7は、積層ブロック5同士の境界において、一方の積層ブロック5の凸部6eと他方の積層ブロック5の凹部6dとの嵌合を防止する。複数の積層ブロック5は、溶接又は接着などにより互いに固定されている。なお、積層鉄心1は、必ずしもステータ用のコアでなくてもよく、ロータ用のコアであってもよい。
【0015】
〔積層体製造装置〕
続いて、積層体1Aの製造装置10について説明する。図3に示すように、製造装置10は、帯状の電磁鋼板である帯状鋼板W1から積層体1Aを製造するための装置である。製造装置10は、アンコイラー20と、送出装置30と、打抜装置40と、反転装置50と、転積装置60と、コンベヤ70,80,90と、コントローラ100とを備える。
【0016】
アンコイラー20は、帯状鋼板W1の巻重体が装着された状態で、巻重体を回転自在に保持する。巻重体を構成する帯状鋼板W1の長さは例えば500~10000mであってもよい。巻重体を構成する帯状鋼板W1の厚さは0.1~0.5mm程度であってもよく、積層鉄心1のより優れた磁気的特性を達成する観点から、0.1~0.3mm程度であってもよい。巻重体を構成する帯状鋼板W1の幅は50~500mm程度であってもよい。
【0017】
送出装置30は、巻重体から引き出された帯状鋼板W1を、打抜装置40に向けて送り出す。打抜装置40(積層装置)は、順送り金型41及びプレス部42を有する。順送り金型41は、プレス部42により駆動され、帯状鋼板W1に対して打抜き加工を行う。具体的に、順送り金型41は、打抜き加工によって得た複数の電磁鋼板4を積層して積層ブロック5を形成し、これを繰り返して複数の積層ブロック5を形成し、電磁鋼板4の積層方向に沿って複数の積層ブロック5を重ねて仮積層体1Bを形成する。打抜装置40は、順送り金型41により形成された仮積層体1Bをコンベヤ70に送出する。
【0018】
コンベヤ70は、仮積層体1Bを反転装置50側に搬送する。例えばコンベヤ70は、図4に示すように、コンベヤ本体710及び搬入装置720を有する。コンベヤ本体710は、例えばベルトコンベヤであり、打抜装置40側から反転装置50側に仮積層体1Bを搬送する。搬入装置720は、コンベヤ70上から反転装置50に仮積層体1Bを搬入する。例えば搬入装置720は、電動式のリニアアクチュエータ又はエアシリンダなどを動力源として、仮積層体1Bをコンベヤ70から反転装置50内に押し込む。
【0019】
反転装置50は、コンベヤ70,80の間に設けられており、コンベヤ70から搬入された仮積層体1Bの上下を反転させてコンベヤ80に送り出す。例えば、仮積層体1Bは、凸部6eを有する主面6cを下に向けた状態でコンベヤ70から搬入される。反転装置50は、この仮積層体1Bの上下を反転させることで、凹部6dを有する主面6bを下に向ける。
【0020】
反転装置50は、挟持ユニット510と、反転駆動部520と、積厚センサ530とを有する。挟持ユニット510は、コンベヤ70から搬入された仮積層体1Bを保持する。例えば挟持ユニット510は、ベース511と、ベース511に設けられた二つの挟持体512,513及び挟持駆動部514とを有する。
【0021】
二つの挟持体512,513は、電磁鋼板4の積層方向D1に並んで仮積層体1Bを挟持する。例えば二つの挟持体512,513は、主面6cを下に向けて搬入された仮積層体1Bを上下から挟持する。挟持体512は挟持体513に面する挟持面512aを有し、挟持体513は挟持体512に面する挟持面513aを有する。挟持面512a,513aは互いに平行である。なお、ここでの平行は、実質的な平行を意味し、部材の撓み等による微小なずれは平行の範囲に含まれるものとする。
【0022】
挟持駆動部514は、挟持体512,513が仮積層体1Bを挟持する状態と、挟持体512,513が仮積層体1Bを解放する状態とを切り替えるように、挟持面512a,513aの間隔を変更する。例えば挟持駆動部514は、エアシリンダ等を動力源とし、挟持面513aに対して挟持面512aを平行に保ちながら挟持体512を昇降させる。
【0023】
反転駆動部520は、積層方向D1(挟持体512,513が挟持する仮積層体1Bの積層方向D1)に直交する軸線521まわりに挟持ユニット510のベース511を反転させる。これにより、挟持体512,513の上下が反転する。なお、図示の例において、軸線521は、コンベヤ70,80の間に位置しており、挟持ユニット510は軸線521の周囲に位置している。このため、反転駆動部520は、挟持ユニット510の反転に際して、軸線521及びコンベヤ70の間のエリア(以下、「受入エリアA1」という。)と、軸線521及びコンベヤ80の間のエリア(以下、「送出エリアA2」という。)との間で挟持ユニット510を移動させる。挟持ユニット510が受入エリアA1に位置する際には挟持体512が挟持体513の上に位置し、挟持ユニット510が送出エリアA2に位置する際には挟持体513が挟持体512の上に位置する。
【0024】
積厚センサ530は、仮積層体1Bの厚さを示す第一積厚情報を測定する。例えば積厚センサ530は、挟持体512,513の間隔を第一積厚情報として測定する。積厚センサ530の具体例としては、レーザ変位計又はリニアスケール等が挙げられる。図はリニアスケールを採用した場合を例示している。例えば積厚センサ530は、挟持体512に固定されたスケール531と、ベース511に固定された読取部532とを含んでいる。読取部532は、例えば光学式のセンサであり、スケール531に刻まれた変位情報を読み取る。なお、スケール531がベース511に固定され、読取部532が挟持体512に固定されていてもよい。
【0025】
積厚センサ530は、仮積層体1Bにおいて少なくとも厚さが最大となる箇所を測定対象として第一積厚情報を測定するように構成されていてもよい。なお、「測定対象」とは、測定の基準となる部材(例えば挟持体512,513)があてられる部位、又は測定の基準となる非接触信号(例えば超音波又はレーザ光線)があてられる部位を意味する。上述したように、挟持駆動部514は、挟持面513aに対して挟持面512aを平行に保ちながら挟持体512を昇降させる。これにより、仮積層体1Bにおいて厚さが最大となる箇所(以下、「最大積厚部P11」という。)が挟持体512,513に挟持され、仮積層体1Bにおいて厚さが最小となる箇所(以下、「最小積厚部P12」という。)は挟持体512,513に挟持されない(図5の(a)参照)。このため、挟持体512,513の間隔を第一積厚情報として測定する積厚センサ530によれば、最大積厚部P11が第一積厚情報の測定対象となり、最小積厚部P12は第一積厚の測定対象とならない。
【0026】
送出装置540は、挟持体512,513の間からコンベヤ80に仮積層体1Bを送出する。例えば送出装置540は、挟持体512に設けられている。送出装置540は、電動式のリニアアクチュエータ又はエアシリンダ等を動力源として、挟持体512,513の間からコンベヤ80に仮積層体1Bを押し出す。
【0027】
コンベヤ80は、「通常モード」及び「除外モード」の二種類の搬送モードでの搬送を実行する。通常モードの場合、コンベヤ80は、仮積層体1Bを反転装置50から転積装置60に搬送する。除外モードの場合、コンベヤ80は、仮積層体1Bを転積装置60への搬送対象から除外する。
【0028】
例えば図6の(a)及び図7に示すように、コンベヤ80は、コンベヤ本体810と、除外装置820と、搬入装置830とを有する。コンベヤ本体810は、例えばベルトコンベヤであり、反転装置50側から転積装置60側に仮積層体1Bを搬送する。除外装置820は、除外対象とされた仮積層体1Bをコンベヤ80から除外する。例えば除外装置820は、電動式のリニアアクチュエータ又はエアシリンダなどを動力源として、仮積層体1Bをコンベヤ80の周囲の回収部823に押し出す。搬入装置830は、コンベヤ80上から転積装置60に仮積層体1Bを搬入する。例えば搬入装置830は、電動式のリニアアクチュエータ又はエアシリンダなどを動力源として、仮積層体1Bをコンベヤ80から転積装置60内に押し込む。
【0029】
転積装置60は、仮積層体1Bの複数の積層ブロック5の少なくとも一つを複数の積層ブロック5の他の一つに対して積層方向D1に沿う軸線まわりに回した転積積層体1C(例えば、仮積層体1Bの複数の積層ブロック5のそれぞれを積層方向D1に沿う軸線まわりに回して再積層した転積積層体1C)を形成する。例えば転積装置60は、受入サイト601と、再積層サイト602と、測定サイト603と、積替装置610と、送出装置620と、測定装置630とを有する。受入サイト601は、コンベヤ80から搬入された仮積層体1Bが配置されるサイトである。再積層サイト602は、転積積層体1Cを形成するためのサイトである。測定サイト603は、転積積層体1Cの厚さを示す第二積厚を測定するためのサイトである。
【0030】
積替装置610は、受入サイト601に配置された仮積層体1Bの積層ブロック5を一つずつ再積層サイト602に搬送し、積層方向D1に沿う軸線まわりに所定の角度ピッチで回して再積層する。角度ピッチは、例えば上記ティース3の角度ピッチの倍数となるように予め設定されている。なお、ティース3の角度ピッチは、隣り合う二つのティース3が、ヨーク2の中心まわりになす角度である。
【0031】
例えば積替装置610は、保持部611と、昇降駆動部612と、搬送駆動部613と、回転駆動部614とを有する。保持部611は、積層ブロック5を電磁吸着等により保持する。昇降駆動部612は、電動式のリニアアクチュエータ又はエアシリンダ等を動力源とし、保持部611を昇降させる。搬送駆動部613は、電動式のリニアアクチュエータ等を動力源とし、受入サイト601と再積層サイト602との間で保持部611を搬送する。回転駆動部614は、例えば電動式の回転アクチュエータを動力源として、再積層サイト602に配置された積層ブロック5を上記角度ピッチで回転させる。なお、回転駆動部614は、再積層サイト602において再積層される積層ブロック5同士を相対的に回転させるように構成されていればよいので、再積層サイト602に配置された積層ブロック5に代えて保持部611を回転させるように構成されていてもよい。
【0032】
送出装置620は、測定サイト603を経る経路に沿って、再積層サイト602からコンベヤ90に転積積層体1Cを送出する。例えば送出装置620は、電動式のリニアアクチュエータ又はエアシリンダなどを動力源として、再積層サイト602からコンベヤ90に転積積層体1Cを押し出す。
【0033】
測定装置630は、上記第二積厚を測定する。例えば測定装置630は、圧下駆動部640と、加圧プレート650と、積厚センサ660とを含む。加圧プレート650は、第二積厚の測定基準となる部材であり、測定サイト603に配置された転積積層体1Cの上に配置される。
【0034】
圧下駆動部640は、例えばエアシリンダを動力源とし、加圧プレート650を下降させて転積積層体1Cに押し付ける。例えば圧下駆動部640は、下方に突出した圧下ロッド641を有する。圧下ロッド641の先端部は加圧プレート650に接続されている。圧下駆動部640は、例えば空圧等により圧下ロッド641を下降させて加圧プレート650を転積積層体1Cに押し付ける。
【0035】
積厚センサ660は、上記第二積厚情報を測定する。例えば積厚センサ660は、加圧プレート650の高さを第二積厚情報として測定する。積厚センサ660の具体例としては、レーザ変位計又はリニアスケール等が挙げられる。図はリニアスケールを採用した場合を例示している。
【0036】
例えば積厚センサ660は、圧下駆動部640の圧下ロッド641に固定されたスケール661と、圧下駆動部640の本体側(圧下ロッド641を押し出す側)に固定された読取部662とを含んでいる。読取部662は、例えば光学式のセンサであり、スケール661に刻まれた変位情報を読み取る。なお、スケール661が圧下駆動部640の本体側に固定され、読取部662が圧下駆動部640の圧下ロッド641に固定されていてもよい。
【0037】
測定装置630は、転積積層体1Cにおいて、厚さが最大となる箇所及び厚さが最小となる箇所の両方を測定対象として第二積厚情報を測定するように構成されていてもよい。例えば、圧下ロッド641の先端部は、可動ジョイント651を介して加圧プレート650に接続されている。可動ジョイント651は、例えばボールジョイントであり、全方位への加圧プレート650の傾動を可能にする。このため、圧下駆動部640が加圧プレート650を転積積層体1Cに押し付けると、加圧プレート650は転積積層体1Cの上面の傾きに倣う(図5の(b)参照)。これにより、加圧プレート650が、転積積層体1Cにおいて厚さが最大となる箇所(以下、「最大積厚部P21」という。)及び厚さが最小となる箇所(以下、「最小積厚部P22」という。)の両方に接触する。したがって、最大積厚部P21及び最小積厚部P22の両方が測定対象となる。なお、ここでの接触は実質的な接触を意味し、転積積層体1Cの上面形状に起因して最大積厚部P21又は最小積厚部P22から僅かにずれた位置に接触する場合を含む。
【0038】
ここで、上述したように、第一積厚情報の測定においては、最大積厚部P11が測定対象となり、最小積厚部P12は測定対象とならない。このため、測定対象が同一であれば、積厚センサ530による第一積厚情報の測定結果は積厚センサ660による第二積厚情報の測定結果よりも大きくなる。このように、積厚センサ530は、第二積厚情報の測定手法に比較してプラス側のマージンが加算される測定手法にて第一積厚情報を測定するように構成されていてもよい。
【0039】
なお、第二積厚情報の測定手法に比較してプラス側のマージンが加算される測定手法は、必ずしも最大積厚部P11を測定対象として最小積厚部P12を測定対象としない手法に限られない。例えば積厚センサ530は、最大積厚部P11及び最小積厚部P12の両方を測定対象としつつ、測定結果に所定のマージンを加算して第一積厚を測定するように構成されていてもよい。
【0040】
コンベヤ90は、「通常モード」及び「除外モード」の二種類の搬送モードでの搬送を実行する。通常モードの場合、コンベヤ90は、転積積層体1Cを転積装置60の後段の装置に搬送する。転積装置60の後段の装置としては、積層ブロック5同士を溶接又は接着等により接合する装置等が挙げられる。除外モードの場合、コンベヤ90は、転積積層体1Cを後段の装置への搬送対象から除外する。
【0041】
図6の(b)に示すように、コンベヤ90は、コンベヤ本体910と、除外装置920とを有する。コンベヤ本体910は、例えばベルトコンベヤであり、転積装置60側から後段の装置側に転積積層体1Cを搬送する。除外装置920は、除外対象とされた転積積層体1Cをコンベヤ90から除外する。除外装置920は、電動式のリニアアクチュエータ又はエアシリンダなどを動力源として、転積積層体1Cをコンベヤ90の周囲の回収部923に押し出す。
【0042】
図3に戻り、コントローラ100(制御装置)は、転積積層体1Cの厚さに関する情報(以下、「厚さ情報」という。)に基づいて、積層ブロック5の形成における電磁鋼板4の積層枚数(例えば第一電磁鋼板6の積層枚数)を調節する。厚さ情報に基づいて電磁鋼板4の積層枚数を調節することは、転積積層体1Cの形成前の厚さ情報(以下、「転積前厚さ情報」という。)を取得することと、転積前厚さ情報が予め設定された転積前下限値を下回った場合に、転積前厚さ情報を転積前下限値以上にするように電磁鋼板4の積層枚数を増やすこととを含む。
【0043】
転積前厚さ情報を取得することは、仮積層体1Bの厚さを示す第一積厚情報を取得することを更に含み、転積前厚さ情報が転積前下限値を下回った場合に、転積前厚さ情報を転積前下限値以上にするように電磁鋼板4の積層枚数を増やすことは、第一積厚情報が予め設定された第一積厚下限値を下回った場合に、第一積厚情報を第一積厚下限値以上にするように電磁鋼板4の積層枚数を増やすことを含んでもよい。
【0044】
厚さ情報に基づいて電磁鋼板4の積層枚数を調節することは、転積積層体1Cの形成後の厚さ情報として、転積積層体1Cの厚さを示す第二積厚情報を取得することと、転積積層体1Cに関する厚さ情報である第一積厚情報が第一積厚下限値以上であり、当該転積積層体1Cの第二積厚情報が予め設定された第二積厚下限値を下回った場合に、第二積厚情報を第二積厚下限値以上にするように電磁鋼板4の積層枚数を増やすこととを更に含んでもよい。
【0045】
転積積層体1Cの厚さに関する情報に基づいて電磁鋼板4の積層枚数を調節することは、第二積厚情報が予め設定された第二積厚上限値を上回った場合に、第二積厚情報を第二積厚上限値以下にするように電磁鋼板4の積層枚数を減らすことを更に含んでもよい。
【0046】
図8に例示するように、コントローラ100は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、積層条件保持部111と、モード保持部117,123と、積層制御部112と、搬送制御部113と、反転制御部114と、積厚情報取得部115と、積層枚数補正部116と、搬送制御部118と、転積制御部119と、積厚情報取得部121と、積層枚数補正部122と、搬送制御部124とを備える。
【0047】
積層条件保持部111は、積層ブロック5を形成するための第一電磁鋼板6及び第二電磁鋼板7の積層条件を記憶する。この積層条件は、電磁鋼板4の積層枚数(第一電磁鋼板6の積層枚数)を含む。モード保持部117,123は、コンベヤ80,90による上記搬送モードをそれぞれ記憶する。
【0048】
積層制御部112は、複数の電磁鋼板4を積層して積層ブロック5を形成し、電磁鋼板4の積層方向に沿って複数の積層ブロック5を重ねて一つの仮積層体1Bを形成するように打抜装置40を制御する。積層ブロック5の形成に際し、積層制御部112は、積層条件保持部111の積層条件に従った積層枚数にて電磁鋼板4を積層する。より具体的に、積層制御部112は、一枚の第二電磁鋼板7に対し、積層条件保持部111の積層条件に従った積層枚数にて第一電磁鋼板6を積層して積層ブロック5を形成する。
【0049】
搬送制御部113は、コンベヤ本体710により打抜装置40側から反転装置50側に搬送した仮積層体1Bを、搬入装置720により反転装置50に搬入するようにコンベヤ70を制御する。
【0050】
反転制御部114は、コンベヤ70から搬入された仮積層体1Bの上下を反転させてコンベヤ80に送り出すように反転装置50を制御する。例えば反転制御部114は、挟持ユニット510を受入エリアA1に配置した状態にて仮積層体1Bの搬入を待機し、主面6cを下に向けて挟持体512,513の間に搬入された仮積層体1Bを挟持体512,513により上下から挟持するように挟持駆動部514を制御する。その後反転制御部114は、挟持体512,513によって仮積層体1Bを挟持した状態で、軸線521まわりにベース511を反転させて挟持体512,513の上下を反転させるように反転駆動部520を制御する。これにより、挟持ユニット510は送出エリアA2に配置される。その後反転制御部114は、仮積層体1Bをコンベヤ80に送り出すように送出装置540を制御する。
【0051】
積厚情報取得部115は、上記第一積厚情報を積厚センサ530から取得する。例えば積厚情報取得部115は、仮積層体1Bを挟持した挟持体512,513の間隔を第一積厚情報として取得する。
【0052】
積層枚数補正部116は、積厚情報取得部115が取得した第一積厚情報が上記第一積厚下限値を下回っている場合に、モード保持部117が記憶する搬送モード(以下、「第一搬送モード」という。)を通常モードから除外モードに変更することと、第一積厚情報を第一積厚下限値以上にするように、積層ブロック5の形成における電磁鋼板4の積層枚数を増やすこととを実行する。例えば積層枚数補正部116は、第一積厚下限値と第一積厚情報との差分を電磁鋼板4の厚さで除算した値以上の増数を設定し、当該増数を積層条件保持部111が記憶する積層条件における第一電磁鋼板6の積層枚数に加算する(以下、これを「第一加算処理」という。)。その後積層枚数補正部116は、第一加算処理後の仮積層体1Bが反転装置50に搬入されるまでは第一加算処理を行わずに第一搬送モードを除外モードに維持する。第一加算処理後の仮積層体1Bが反転装置50に搬入され、当該仮積層体1Bの第一積厚情報が第一積厚下限値以上となっている場合、積層枚数補正部116は、第一搬送モードを除外モードから通常モードに戻す。当該仮積層体1Bの第一積厚情報が第一積厚下限値を下回っている場合、積層枚数補正部116は、第一搬送モードを除外モードに維持しつつ、再度第一加算処理を実行する。このため、第一積厚情報が第一積厚下限値を下回った後の第一搬送モードは、第一積厚情報が第一積厚下限値以上となるまで除外モードに保たれる。
【0053】
搬送制御部118は、コンベヤ本体810により反転装置50側から転積装置60側に搬送した仮積層体1Bを、搬入装置830により転積装置60に搬入するようにコンベヤ80を制御する(以下、これを「通常搬送制御」という。)。また、搬送制御部118は、仮積層体1Bの第一積厚情報が第一積厚下限値を下回った場合に、当該仮積層体1B以降に形成される仮積層体1Bを、第一積厚情報が第一積厚下限値以上となるまで除外装置820により除外するようにコンベヤ80を制御する(以下、これを「除外制御」という。)。例えば搬送制御部118は、第一搬送モードが通常モードである場合に通常制御を実行し、第一搬送モードが除外モードである場合に除外制御を実行する。上述のとおり、第一積厚情報が第一積厚下限値を下回った後の第一搬送モードは、第一積厚情報が第一積厚下限値以上となるまで除外モードに保たれる。このため、第一搬送モードが除外モードである場合に除外制御を実行すれば、第一積厚情報が第一積厚下限値以上となるまで除外制御が継続される。
【0054】
転積制御部119は、仮積層体1Bの複数の積層ブロック5のそれぞれを電磁鋼板4の積層方向に沿う軸線まわりに回して再積層して転積積層体を形成するように転積装置60を制御する。例えば転積制御部119は、受入サイト601の積層ブロック5のそれぞれを電磁鋼板4の積層方向に沿う軸線まわりに回して再積層サイト602に再積層する(積み替える)ように積替装置610を制御する。積み替えが完了すると、転積制御部119は、再積層サイト602の転積積層体1Cをコンベヤ90に送出するように送出装置620を制御する。
【0055】
積厚情報取得部121は、上記第二積厚情報を測定するように測定装置630を制御し、積厚センサ660から第二積厚情報を取得する。例えば積厚情報取得部121は、再積層サイト602からコンベヤ90への移動過程で測定サイト603に転積積層体1Cが配置されたときに、当該転積積層体1Cの加圧プレート650を押し付けるように圧下駆動部640を制御する。その後、積厚情報取得部121は、積積層体1Cに加圧プレート650が押し付けられた状態にて、積厚センサ660から第二積厚情報を取得する。
【0056】
積層枚数補正部122は、積厚情報取得部121が取得した第二積厚情報が第二積厚下限値を下回っている場合又は第二積厚上限値を上回っている場合に、モード保持部123が記憶する搬送モード(以下、「第二搬送モード」という。)を通常モードから除外モードに変更することと、第二積厚情報を第二積厚下限値以上、第二積厚上限値以下にするように、積層ブロック5の形成における電磁鋼板4の積層枚数を調節することとを実行する。上述のように、仮積層体1Bの第一積厚情報が第一積厚下限値を下回っている場合、第一搬送モードは除外モードに保たれ、当該仮積層体1Bは除外装置820により除外される。このため、当該仮積層体1Bについては、積厚情報取得部121及び積層枚数補正部122による処理が実行されない。換言すると、仮積層体1Bの第二積厚情報の取得と、これに応じた電磁鋼板4の積層枚数の調節は、第一積厚情報が第一積厚下限値以上である場合に実行される。
【0057】
積層枚数補正部122は、第二積厚情報が予め設定された第二積厚下限値を下回った場合に、第二積厚情報を第二積厚下限値以上にするように、積層ブロック5の形成における電磁鋼板4の積層枚数を増やす。例えば積層枚数補正部122は、第二積厚下限値と第二積厚情報との差分を電磁鋼板4の厚さで除算した値以上の増数を設定し、当該増数を積層条件保持部111が記憶する積層条件における第一電磁鋼板6の積層枚数に加算する(以下、これを「第二加算処理」という。)。
【0058】
また、積層枚数補正部122は、第二積厚情報が予め設定された第二積厚上限値を上回った場合に、第二積厚情報を第二積厚上限値以下にするように、積層ブロック5の形成における電磁鋼板4の積層枚数を減らす。例えば積層枚数補正部122は、第二積厚情報と第二積厚上限値との差分を電磁鋼板4の厚さで除算した値以上の減数を設定し、当該減数を積層条件保持部111が記憶する積層条件における第一電磁鋼板6の積層枚数から減算する(以下、これを「減算処理」という。)。その後積層枚数補正部122は、第二加算処理又は減算処理後の転積積層体1Cが転積装置60に搬入されるまでは第二加算処理及び減算処理を行わずに第二搬送モードを除外モードに維持する。
【0059】
第二加算処理又は減算処理後の転積積層体1Cが転積装置60に搬入され、当該転積積層体1Cの第二積厚情報が第二積厚下限値以上、第二積厚上限値以下となっている場合、積層枚数補正部122は、第二搬送モードを除外モードから通常モードに戻す。当該転積積層体1Cの第二積厚情報が第二積厚下限値を下回っている場合又は第二積厚上限値を上回っている場合、積層枚数補正部122は、第二搬送モードを除外モードに維持しつつ、再度第二加算処理又は減算処理を実行する。このため、第二積厚情報が第二積厚下限値を下回った後、又は第二積厚情報が第二積厚上限値を上回った後の第二搬送モードは、第二積厚情報が第二積厚下限値以上、第二積厚上限値以下となるまで除外モードに保たれる。
【0060】
搬送制御部124は、コンベヤ本体910により転積装置60側から後段の装置側に転積積層体1Cを搬送するようにコンベヤ90を制御する(以下、これを「通常搬送制御」という。)。また、搬送制御部124は、転積積層体1Cの第二積厚情報が第二積厚下限値を下回った場合又は第二積厚上限値を上回った場合に、当該転積積層体1C以降に形成される転積積層体1Cを、第二積厚情報が第二積厚下限値以上、第二積厚上限値以下となるまで除外装置920により除外するようにコンベヤ90を制御する(以下、これを「除外制御」という。)。例えば搬送制御部124は、第二搬送モードが通常モードである場合に通常制御を実行し、第二搬送モードが除外モードである場合に除外制御を実行する。上述のとおり、第二積厚情報が第二積厚下限値を下回った後、又は第二積厚情報が第二積厚上限値を上回った後の第二搬送モードは、第二積厚情報が第二積厚下限値以上、第二積厚下限値以下となるまで除外モードに保たれる。このため、第二搬送モードが除外モードである場合に除外制御を実行すれば、第二積厚情報が第二積厚下限値以上、第二積厚上限値以下となるまで除外制御が継続される。
【0061】
コントローラ100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。例えばコントローラ100は、図9に示す回路190を有する。回路190は、一つ又は複数のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、タイマー125とを有する。ストレージ193は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、後述の積層体1Aの製造手順を製造装置10に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ192は、ストレージ193の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。入出力ポート194は、プロセッサ191からの指令に従って、打抜装置40、反転装置50、転積装置60及びコンベヤ70,80,90との間で電気信号の入出力を行う。なお、コントローラ100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えばコントローラ100の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0062】
〔積層体製造手順〕
続いて、積層体の製造方法の一例として、製造装置10が実行する積層体1Aの製造手順を説明する。この手順は、複数の電磁鋼板4を積層して積層ブロック5を形成し、電磁鋼板4の積層方向D1に沿って複数の積層ブロック5を重ねて一つの仮積層体1Bを形成することと、仮積層体の複数の積層ブロック5のそれぞれを積層方向に沿う軸線まわりに回して再積層した転積積層体1Cを形成することと、転積積層体1Cの厚さに関する厚さ情報に基づいて、積層ブロック5の形成における電磁鋼板4の積層枚数を調節することと、を含み、厚さ情報に基づいて積層枚数を調節することは、転積積層体1Cの形成前の厚さ情報である転積前厚さ情報を取得することと、転積前厚さ情報が予め設定された転積前下限値を下回った場合に、厚さ情報を転積前下限値以上にするように積層枚数を増やすこととを含む。
【0063】
転積前厚さ情報を取得することは、仮積層体1Bの厚さを示す第一積厚情報を取得することを更に含み、転積前厚さ情報が転積前下限値を下回った場合に、転積前厚さ情報を転積前下限値以上にするように積層枚数を増やすことは、第一積厚情報が予め設定された第一積厚下限値を下回った場合に、第一積厚情報を第一積厚下限値以上にするように積層枚数を増やすことを含んでいてもよい。
【0064】
厚さ情報に基づいて積層枚数を調節することは、転積積層体1Cの形成後の厚さ情報として、転積積層体1Cの厚さを示す第二積厚情報を取得することと、第二積厚情報が予め設定された第二積厚下限値を下回った場合に、第二積厚情報を第二積厚下限値以上にするように積層枚数を増やすこととを更に含んでいてもよい。
【0065】
厚さ情報に基づいて積層枚数を調節することは、第二積厚情報が予め設定された第二積厚上限値を上回った場合に、第二積厚情報を第二積厚上限値以下にするように積層枚数を減らすことを更に含んでいてもよい。
【0066】
一例として、積層体1Aの製造手順は、積層手順と、反転手順と、転積手順とを含む。以下、各手順を詳細に例示する。
【0067】
(積層手順)
積層手順は、複数の電磁鋼板4を積層して積層ブロック5を形成し、電磁鋼板4の積層方向に沿って複数の積層ブロック5を重ねて一つの仮積層体1Bを形成する手順である。例えば図10に示すように、コントローラ100は、まずステップS01を実行する。ステップS01では、打抜装置40が帯状鋼板W1から打ち抜く電磁鋼板4(以下、「打ち抜き対象の電磁鋼板4」という。)が、積層ブロック5の最下層であるか否かを積層制御部112が確認する。
【0068】
ステップS01において、打ち抜き対象の電磁鋼板4が積層ブロック5の最下層であると判定した場合、コントローラ100はステップS02を実行する。ステップS02では、積層制御部112が、帯状鋼板W1から第二電磁鋼板7を打ち抜くように打抜装置40を制御する。
【0069】
ステップS01において、打ち抜き対象の電磁鋼板4が積層ブロック5の最下層でないと判定した場合、コントローラ100はステップS03を実行する。ステップS03では、積層制御部112が、帯状鋼板W1から第一電磁鋼板6を打ち抜いて、先に打抜いた電磁鋼板4に当該第一電磁鋼板6を積層するように打抜装置40を制御する。
【0070】
ステップS02又はステップS03を実行した後、コントローラ100はステップS04を実行する。ステップS04では、積層制御部112が、積層条件保持部111に記憶された積層条件に含まれる積層枚数(以下、「設定枚数」という。)の電磁鋼板4の積層が完了したか否かを確認する。ステップS04において、設定枚数の電磁鋼板4の積層が完了していないと判定した場合、コントローラ100は、処理をステップS01に戻す。以後、コントローラ100は、設定枚数の電磁鋼板4の積層が完了するまで、ステップS01~S04の手順を繰り返す。
【0071】
ステップS04において設定枚数の電磁鋼板4の積層が完了したと判定した場合、コントローラ100はステップS05を実行する。ステップS05では、積層制御部112が、全ての積層ブロック5の積層が完了したか否かを確認する。ステップS05において、全ての積層ブロック5の積層が完了していないと判定した場合、コントローラ100は、処理をステップS01に戻す。以後、コントローラ100は、全ての積層ブロック5の積層が完了するまで、ステップS01~S05の手順を繰り返す。
【0072】
ステップS05において全ての積層ブロック5の積層が完了したと判定した場合、コントローラ100は、ステップS06,S07を実行する。ステップS06では、積層制御部112が、積層ブロック5の積層により形成された仮積層体1Bをコンベヤ70に送出するように打抜装置40を制御する。ステップS07では、搬送制御部113が、コンベヤ本体710により搬送された仮積層体1Bを搬入装置720により反転装置50に搬入するようにコンベヤ70を制御する。以上で積層手順が完了する。コントローラ100は、以上の処理を繰り返し実行する。
【0073】
(反転手順)
反転手順は、仮積層体1Bの上下を反転させる手順である。この手順は、転積積層体1Cの厚さに関する情報として、仮積層体1Bの厚さを示す第一積厚情報を測定することと、第一積厚情報が予め設定された第一積厚下限値を下回った場合に、第一積厚情報を第一積厚下限値以上にするように積層枚数を増やすこととを含む。反転手順は、仮積層体1Bの第一積厚情報が第一積厚下限値を下回った場合に、当該仮積層体1B以降に形成される仮積層体1Bを、第一積厚情報が第一積厚下限値以上となるまで除外することを更に含んでいてもよい。
【0074】
例えば図11に示すように、コントローラ100は、ステップS11,S12,S13を実行する。ステップS11では、反転制御部114が、仮積層体1Bがコンベヤ70から搬入されるのを待機する。ステップS12では、反転制御部114が、挟持体512,513によって仮積層体1Bを挟持するように挟持駆動部514を制御する(図12の(a)及び(b)参照)。ステップS13では、積厚情報取得部115が、第一積厚情報を反転装置50の積厚センサ530から取得する。上述したように、積厚センサ530は、仮積層体1Bを挟持した二つの挟持体512,513の間隔を第一積厚情報として測定してもよい。積厚センサ530は、仮積層体1Bにおいて、少なくとも厚さが最大となる箇所を測定対象として第一積厚情報を測定してもよく、第二積厚情報の測定手法に比較してプラス側のマージンが加算される測定手法にて第一積厚情報を測定してもよい。
【0075】
次に、コントローラ100は、ステップS14を実行する。ステップS14では、モード保持部117が記憶する搬送モードが通常モードであるか否かを積層枚数補正部116が判定する。
【0076】
ステップS14において、モード保持部117が記憶する搬送モードが通常モードであると判定した場合、コントローラ100はステップS15を実行する。ステップS15では、ステップS13で積厚情報取得部115が取得した第一積厚情報が第一積厚下限値を下回っているか否かを積層枚数補正部116が判定する。
【0077】
ステップS15において第一積厚情報が第一積厚下限値を下回っていると判定した場合、コントローラ100はステップS16,S17を実行する。ステップS16では、積層枚数補正部116が、モード保持部117が記憶する搬送モードを、通常モードから除外モードに変更する。ステップS17では、積層枚数補正部116が、第一積厚情報を第一積厚下限値以上にするように、積層ブロック5の形成における電磁鋼板4の積層枚数を増やす。例えば、積層枚数補正部116は、上記第一加算処理を実行する。即ち、積層枚数補正部116は、第一積厚下限値と第一積厚情報との差分を電磁鋼板4の厚さで除算した値以上の増数を設定し、当該増数を積層条件保持部111が記憶する積層条件における第一電磁鋼板6の積層枚数に加算する。
【0078】
ステップS14において、モード保持部117が記憶する搬送モードが除外モードであると判定した場合、コントローラ100はステップS18を実行する。ステップS18では、第一積厚情報の測定対象の仮積層体1Bが第一加算処理後の仮積層体1Bであるか否かを積層枚数補正部116が判定する。
【0079】
ステップS18において第一積厚情報の測定対象の仮積層体1Bが第一加算処理後の仮積層体1Bであると判定した場合、コントローラ100はステップS19を実行する。ステップS19では、ステップS13で積厚情報取得部115が取得した第一積厚情報が第一積厚下限値以上であるか否かを積層枚数補正部116が判定する。
【0080】
ステップS19において第一積厚情報が第一積厚下限値以上であると判定した場合、コントローラ100はステップS21を実行する。ステップS21では、積層枚数補正部116が、モード保持部117が記憶する搬送モードを、除外モードから通常モードに変更する。ステップS19において第一積厚情報が第一積厚下限値を下回っていると判定した場合、コントローラ100は処理をステップS17に移行させる。この場合、積層枚数補正部116は、モード保持部117が記憶する搬送モードを除外モードに維持しながら、ステップS17の第一加算処理を再び実行する。
【0081】
ステップS17又はS21を実行した後、コントローラ100は、ステップS22,S23を実行する。ステップS15において第一積厚情報が第一積厚下限値を下回っていないと判定した場合、コントローラ100は、ステップS16,S17を省略してステップS22,S23を実行する。ステップS18において第一積厚情報の測定対象の仮積層体1Bが第一加算処理後の仮積層体1Bではないと判定した場合、コントローラ100は、ステップS19,S21を省略してステップS22,S23を実行する。ステップS22では、反転制御部114が、積層方向D1に並ぶ二つの挟持体512,513によって仮積層体1Bを挟持した状態で、積層方向D1に直交する軸線521まわりにベース511を反転させて、二つの挟持体512,513の上下を反転させる(図13の(a)参照)。ステップS23では、反転制御部114が、仮積層体1Bをコンベヤ80に送り出すように送出装置540を制御する(図13の(b)、(c)参照)。
【0082】
コントローラ100は、次にステップS24を実行する。ステップS24では、モード保持部117が記憶する搬送モードが通常モードであるか否かを搬送制御部118が判定する。
【0083】
ステップS24において、搬送モードが通常モードであると判定した場合、コントローラ100はステップS25を実行する。ステップS25では、搬送制御部118が、コンベヤ本体810により反転装置50側から転積装置60側に搬送した仮積層体1Bを、搬入装置830により転積装置60に搬入するようにコンベヤ80を制御する。
【0084】
ステップS24において、搬送モードが通常モードでない(即ち除外モードである)と判定した場合、コントローラ100はステップS26を実行する。ステップS26では、搬送制御部118が、除外装置820により仮積層体1Bを除外するようにコンベヤ80を制御する。以上で反転手順が終了する。コントローラ100は、以上の処理を繰り返し実行する。
【0085】
(転積手順)
転積手順は、仮積層体1Bの複数の積層ブロック5のそれぞれを積層方向D1に沿う軸線まわりに回して再積層した転積積層体1Cを形成する手順である。転積手順は、転積積層体1Cの形成後の厚さ情報として、転積積層体1Cの厚さを示す第二積厚情報を取得することと、第二積厚情報が予め設定された第二積厚下限値を下回った場合に、第二積厚情報を第二積厚下限値以上にするように積層枚数を増やすこととを更に含んでいてもよい。転積手順は、第二積厚情報が予め設定された第二積厚上限値を上回った場合に、第二積厚情報を第二積厚上限値以下にするように積層枚数を減らすことを更に含んでいてもよい。
【0086】
図14に示すように、コントローラ100は、まずステップS31,S32,S33を実行する。ステップS31では、転積制御部119が、搬入装置830がコンベヤ80上から転積装置60の受入サイト601に仮積層体1Bを搬入するのを待機する。ステップS32では、転積制御部119が、受入サイト601に配置された仮積層体1Bの積層ブロック5を一つずつ再積層サイト602に搬送し、積層方向D1に沿う軸線まわりに所定の角度ピッチで回して再積層して転積積層体1Cを形成する(即ち積み替える)ように積替装置610を制御する。ステップS33では、仮積層体1Bの全ての積層ブロック5の転積積層体1Cへの積み替えが完了したか否かを転積制御部119が判定する。
【0087】
ステップS33において全ての積層ブロック5の積み替えが完了していないと判定した場合、コントローラ100は処理をステップS32に戻す。以後、全ての積層ブロック5の積み替えが完了するまでコントローラ100はステップS32,S33を繰り返す。
【0088】
次に、コントローラ100は、ステップS34,S35を実行する。ステップS34では、転積制御部119が、再積層サイト602から測定サイト603へ転積積層体1Cを移送するように送出装置620を制御する。ステップS35では、積厚情報取得部121が、第二積厚情報を転積装置60の積厚センサ660から取得する。例えば、転積制御部119は、第二積厚情報を測定するように測定装置630を制御して、積厚センサ660から第二積厚情報を取得する。測定装置630は、例えば、転積積層体1Cにおいて、厚さが最大となる箇所である最大積厚部P21及び厚さが最小となる箇所である最小積厚部P22の両方を測定対象として第二積厚情報を測定してもよい。
【0089】
図15に示すように、コントローラ100は、次にステップS36を実行する。ステップS36では、モード保持部123が記憶する搬送モードが通常モードであるか否かを積層枚数補正部122が判定する。
【0090】
ステップS36において、モード保持部123が記憶する搬送モードが通常モードであると判定した場合、コントローラ100はステップS37を実行する。ステップS37では、第二積厚情報が第二積厚下限値以上、第二積厚上限値以下であるか否かを積層枚数補正部122が判定する。
【0091】
ステップS37において、第二積厚情報が第二積厚下限値を下回っているか、又は第二積厚上限値を上回っていると判定した場合、コントローラ100はステップS38,S39を実行する。ステップS38では、積層枚数補正部122が、モード保持部123が記憶する搬送モードを通常モードから除外モードに変更する。ステップS39では、第二積厚情報が下限値を下回っているか否かを積層枚数補正部122が判定する。
【0092】
ステップS39において、第二積厚情報が第二積厚下限値を下回っていると判定した場合、コントローラ100はステップS41を実行する。ステップS41では、積層枚数補正部122が、第二積厚情報を第二積厚下限値以上にするように、積層ブロック5の形成における電磁鋼板4の積層枚数を増やす。例えば、積層枚数補正部122は、上記第二加算処理を実行する。即ち、積層枚数補正部122は、第二積厚下限値と第二積厚情報との差分を電磁鋼板4の厚さで除算した値以上の増数を設定し、当該増数を積層条件保持部111が記憶する積層条件における第一電磁鋼板6の積層枚数に加算する。
【0093】
ステップS39において、第二積厚情報が第二積厚下限値を下回っていないと判定した場合(還元すれば、ステップS37及びステップS39において、第二積厚情報が第二積厚上限値を上回っていると判定した場合)、コントローラ100はステップS42を実行する。ステップS42では、積層枚数補正部122が、第二積厚情報を第二積厚上限値以下にするように、積層ブロック5の形成における電磁鋼板4の積層枚数を減らす。例えば、積層枚数補正部122は、上記減算処理を実行する。即ち、積層枚数補正部122は、第二積厚情報と第二積厚上限値との差分を電磁鋼板4の厚さで除算した値以上の減数を設定し、当該減数を積層条件保持部111が記憶する積層条件における第一電磁鋼板6の積層枚数から減算する。
【0094】
ステップS36において、積層枚数補正部122が、モード保持部123が記憶する搬送モードが通常モードでない(即ち、除外モードである)と判定した場合、積層枚数補正部122はステップS43を実行する。ステップS43では、積層枚数補正部122が、第二積厚情報の測定対象となっている転積積層体1Cが、第二加算処理又は減算処理後の転積積層体1Cであるか否かを判定する。
【0095】
ステップS43において、第二積厚情報の測定対象となっている転積積層体1Cが、第二加算処理又は減算処理後の転積積層体1Cであると判定した場合、コントローラ100はステップS44を実行する。ステップS44では、第二積厚情報が第二積厚下限値以上、第二積厚上限値以下であるか否かを積層枚数補正部122が判定する。
【0096】
ステップS44において、第二積厚情報が第二積厚下限値以上、第二積厚上限値以下であると判定した場合、コントローラ100はステップS45を実行する。ステップS45では、積層枚数補正部122が、モード保持部123が記憶する搬送モードを除外モードから通常モードに変更する。
【0097】
ステップS44において、第二積厚情報が第二積厚下限値を下回っているか、又は第二積厚上限値を上回っていると判定した場合、コントローラ100は、処理をステップS39に移行させる。この場合、積層枚数補正部122は、モード保持部123が記憶する搬送モードを除外モードに維持しながら、ステップS39,S41(又はステップS39,S42)の処理を再び実行する。
【0098】
ステップS41,S42又はS45を実行した後、コントローラ100はステップS46を実行する。ステップS37において、第二積厚情報が第二積厚下限値以上、第二積厚上限値以下であると判定した場合、コントローラ100は、ステップS38,S39,S41,S42を省略してステップS46を実行する。ステップS43において、電磁鋼板4の積層枚数の調節が行われていないと判定した場合、コントローラ100は、ステップS44,S45を省略してステップS46を実行する。ステップS46では、転積制御部119が、転積積層体1Cをコンベヤ90に送出するように送出装置620を制御する。
【0099】
図16に示すように、コントローラ100は、次にステップS47を実行する。ステップS47では、モード保持部123が記憶する搬送モードが通常モードであるか否かを搬送制御部124が判定する。
【0100】
ステップS47において搬送モードが通常モードであると判定した場合、コントローラ100はステップS48を実行する。ステップS48では、搬送制御部124が、コンベヤ本体910により転積装置60側から後段の装置側に転積積層体1Cを搬送するようにコンベヤ90を制御する。
【0101】
ステップS48において搬送モードが通常モードでない(即ち、除外モードである)と判定した場合、コントローラ100はステップS49を実行する。ステップS49では、搬送制御部124が、転積積層体1Cを除外装置920により除外するようにコンベヤ90を制御する。以上で転積手順が完了する。コントローラ100は、以上の処理を繰り返し実行する。
【0102】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、本開示の一側面に係る積層体1Aの製造方法は、複数の電磁鋼板4を積層して積層ブロック5を形成し、電磁鋼板4の積層方向D1に沿って複数の積層ブロック5を重ねて一つの仮積層体1Bを形成すること(以下、「積層工程」という。)と、仮積層体1Bの複数の積層ブロック5の少なくとも一つを複数の積層ブロック5の他の一つに対して積層方向D1に沿う軸線まわりに回した転積積層体1Cを形成すること(以下、「転積工程」という。)と、転積積層体1Cの厚さに関する厚さ情報に基づいて、積層ブロック5の形成における電磁鋼板4の積層枚数を調節することと、を含み、厚さ情報に基づいて積層枚数を調節することは、転積積層体1Cの形成前の厚さ情報である転積前厚さ情報を取得することと、転積前厚さ情報が予め設定された転積前下限値を下回った場合に、厚さ情報を転積前下限値以上にするように積層枚数を増やすこととを含む。
【0103】
本製造方法によれば、転積工程が行われるので、積層体1Aの一個体における部位ごとの積厚のばらつきが抑制される。転積工程は、積層工程の途中ではなく、積層工程の後に実行される。更に、転積工程における再積層は積層ブロック5単位で行われるので、電磁鋼板4単位で再積層を行うのに比べ転積工程を迅速に実行可能である。このため、仮積層体1Bの転積工程と、他の仮積層体1Bの積層工程とを、並行して高速に実行することができる。
【0104】
また、本製造方法によれば、転積積層体1Cの厚さに関する情報に基づいて、積層ブロック5の形成における電磁鋼板4の積層枚数が調節される。このため、積層体1Aの個体ごとの積厚のばらつきも抑制される。しかも、この積層枚数の調節は、転積積層体1Cの形成前に取得される転積前厚さ情報が転積前下限値を下回った場合に、転積前厚さ情報を転積前下限値以上にするように積層枚数を増やすことを含む。転積前厚さ情報に基づいて積層枚数を増やすことで、積厚が過小となる積層体1Aの発生数を低減することができる。ここで、積厚が過大となる場合には電磁鋼板4の除去により積厚を事後調節し得るのに対し、積厚が過小となる場合には積厚の事後調節が困難となる傾向がある。このため、積厚が過小となる転積積層体1Cの発生数を低減することは、製造効率向上に大きく寄与する。
【0105】
このように、本製造方法によれば、積層体1Aの一個体における部位ごとの積厚のばらつき抑制と、積層体1Aの製造効率との両立を図ることができる。更に、積層体1Aの個体ごとの積厚のばらつき抑制と、積層体1Aの製造効率との両立も図ることができる。したがって、本製造方法は、積層体の積厚のばらつき抑制と、積層体の製造効率との両立を図るのに有効である。
【0106】
転積前厚さ情報を取得することは、仮積層体1Bの厚さを示す第一積厚情報を取得することを更に含み、転積前厚さ情報が転積前下限値を下回った場合に、転積前厚さ情報を転積前下限値以上にするように積層枚数を増やすことは、第一積厚情報が予め設定された第一積厚下限値を下回った場合に、第一積厚情報を第一積厚下限値以上にするように積層枚数を増やすことを含んでいてもよい。この場合、仮積層体1Bの段階で取得可能な第一積厚情報に基づいて積層枚数を増やすことで、積厚が過小となる積層体1Aの発生数を更に低減することができる。
【0107】
積層体1Aの製造方法は、積層方向D1に並ぶ二つの挟持体512,513によって仮積層体を挟持した状態で、積層方向に直交する軸線まわりに二つの挟持体512,513を反転させることを更に含み、仮積層体1Bを挟持した二つの挟持体512,513の間隔を第一積厚情報として取得してもよい。この場合、仮積層体1Bを挟持する二つの挟持体512,513を利用して第一積厚情報を容易に取得することができる。したがって、製造効率の更なる向上を図ることができる。
【0108】
厚さ情報に基づいて積層枚数を調節することは、転積積層体1Cの形成後の厚さ情報として、転積積層体1Cの厚さを示す第二積厚情報を取得することと、転積積層体1Cに関する厚さ情報である第一積厚情報が第一積厚下限値以上であり、当該転積積層体1Cの第二積厚情報が予め設定された第二積厚下限値を下回った場合に、第二積厚情報を第二積厚下限値以上にするように積層枚数を増やすこととを更に含んでいてもよい。この場合、転積積層体1Cの厚さを示す第二積厚情報が第二積厚下限値を下回った場合に、第二積厚情報を第二積厚下限値以上にするように電磁鋼板4の積層枚数を増やすことを更に実行することで、積厚が過小となる積層体1Aの発生をより確実に抑制することができる。
【0109】
積層体1Aの製造方法は、仮積層体1Bの第一積厚情報が第一積厚下限値を下回った場合に、当該仮積層体1B以降に形成される仮積層体1Bを、第一積厚情報が第一積厚下限値以上となるまで除外することを更に含んでいてもよい。この場合、第一積厚情報に基づく積層枚数の調節と、第二積厚情報に基づく積層枚数の調節との重複に起因する積層枚数の不要な変動を抑制し、製造効率の更なる向上を図ることができる。
【0110】
積層体1Aの製造方法は、仮積層体1Bにおいて、少なくとも厚さが最大となる箇所である最大積厚部P11を測定対象とした第一積厚情報を取得し、転積積層体1Cにおいて、厚さが最大となる箇所である最大積厚部P21及び厚さが最小となる箇所である最小積厚部P22の両方を測定対象とした第二積厚情報を取得してもよい。積層体1Aの部位ごとの厚さの最小値は、転積工程の実行により大きくなる可能性がある。このため、仮に厚さが最小となる箇所である最小積厚部P12のみを測定対象として第一積厚情報を測定すると、第一積厚情報が過小であっても第二積厚情報は過小にならない可能性がある。換言すると、第一積厚情報が過小であることに基づいて積層枚数を増やすことが、本来不要な枚数変更を含んでしまう可能性がある。これに対し、少なくとも厚さが最大となる箇所である最大積厚部P11を測定対象として第一積厚情報を測定することによって、本来不要な枚数変更を避け、製造効率の更なる向上を図ることができる。
【0111】
積層体1Aの製造方法は、第二積厚情報の測定手法に比較してプラス側のマージンが加算される測定手法にて測定された第一積厚情報を取得してもよい。積層体1Aの同一個体について、第一積厚情報が第二積厚情報よりも小さくなり得る場合、第一積厚情報が過小であっても第二積厚情報は過小にならない可能性がある。換言すると、第一積厚情報が過小であることに基づいて積層枚数を増やすことが、本来不要な枚数変更を含んでしまう可能性がある。これに対し、第二積厚情報の測定手法に比較してプラス側のマージンが加算される測定手法にて第一積厚情報を測定することによって、本来不要な枚数変更を避け、製造効率の更なる向上を図ることができる。
【0112】
厚さ情報に基づいて積層枚数を調節することは、第二積厚情報が予め設定された第二積厚上限値を上回った場合に、第二積厚情報を第二積厚上限値以下にするように積層枚数を減らすことを更に含んでいてもよい。この場合、積厚が過大となる積層体1Aの発生も抑制することができる。なお、第一積厚情報と第二積厚情報とには差異が生じ得るので、第一積厚情報が過大となっていても第二積厚情報は過大とならない可能性がある。特に、第二積厚の測定手法に比較してプラス側のマージンが加算される測定手法にて第一積厚情報を測定する場合には、第一積厚情報が過大となっていても第二積厚は過大とならない可能性が大きくなる。このため、転積工程後の第二積厚情報に基づいて積層枚数の削減を行うことで、本来不要な枚数変更を避け、積層体1Aの個体ごとの積厚のばらつきをより確実に抑制することができる。
【0113】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば製造装置10は、転積前厚さ情報を必ずしも反転装置50から取得しなくてもよい。製造装置10は、少なくとも転積装置60の再積層サイト602よりも上流から転積前厚さ情報を取得するように構成されていればよい。例えば製造装置10は、受入サイト601から再積層サイト602に搬送される積層ブロック5の厚さ情報を転積前厚さ情報として取得するように構成されていてもよい。製造装置10は、上記積層ブロック5の厚さ情報の取得に際して、積層ブロック5における部位ごとの厚さのばらつき情報をも取得し、これに基づいて回転駆動部614による回転角度を調節するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1A…積層体、1B…仮積層体、1C…転積積層体、4…電磁鋼板、5…積層ブロック、10…製造装置、40…打抜装置(積層装置)、60…転積装置、100…コントローラ(制御装置)、512,513…挟持体、D1…積層方向、P11…最大積厚部、P12…最小積厚部、P21…最大積厚部、P22…最小積厚部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16