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  • 特許-横笛及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】横笛及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10D 9/08 20200101AFI20221007BHJP
   G10D 7/026 20200101ALI20221007BHJP
   G10D 9/00 20200101ALI20221007BHJP
   G10D 9/10 20200101ALI20221007BHJP
【FI】
G10D9/08
G10D7/026
G10D9/00 130
G10D9/10
G10D9/00 120
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018079855
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2019191210
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】518137128
【氏名又は名称】株式会社リッツ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水落 立平
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-132253(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01188481(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 9/00
G10D 7/026
G10D 9/08
G10D 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の半割筒と第二の半割筒とが合体され、内筒壁が管尻側に向かって先細りとなっている筒本体の管頭近傍に反射壁となる隔壁が設けられ、管尻が開放されているとともに、
前記第一の半割筒には前記隔壁の位置と前記管尻との間に歌口と複数の指孔が適切な大きさで適切な位置に配置されて設けられている横笛の製造方法において、
自然の竹から一品生産的に竹製基準模型横笛を作り、
この竹製基準模型横笛を歌口及び各指孔のある第一の半割筒と第二の半割筒とに縦方向に分割し、
前記第一の半割筒と、前記第二の半割筒と、それぞれの分割された分割端面を含めた全体形状を実測し、それぞれの金型製作用のデータを取り、
前記分割端面に合体させる位置決めと密封できる凹凸形状のデータを加え、
これらデータから金型製作図面を経てあるいは直接に金型加工をして前記第一の半割筒側と前記第二の半割筒側との二種類の樹脂成形金型を作り、
これらの樹脂成形金型に樹脂を注入して前記第一の半割筒側と前記第二の半割筒側とを製作し、それぞれの端面に接着剤を塗布して合体して製作することを特徴とする横笛の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の横笛の製造方法において、
前記横笛の第一及び第二の前記半割筒は、合成樹脂製であり、合体する分割端面には互いに噛みあう凹凸が形成されていることを特徴とする横笛の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横笛及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自然の篠竹を使用することなく、経験則から直接に設計・製造された、アルミニウム等金属或いはプラスチックからなる円筒体により横笛が大量生産されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-132253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の合成樹脂製の管を本体とする横笛では、音色や音質、音の豊かさ、音の表現力といったものが、いわゆる、一品製作による竹製の物に比べて格段に劣るという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、合成樹脂材を用いた大量生産による横笛でも、聴感上優れた音を得ることのできる横笛及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る横笛は、第一の半割筒と第二の半割筒とが合体され、内筒壁が管尻側に向かって先細りとなっている筒本体の管頭近傍に反射壁となる隔壁が設けられ、管尻が開放されているとともに、前記第一の半割筒には前記隔壁の位置と前記管尻との間に歌口と複数の指孔が適切な大きさで適切な位置に配置されて設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る横笛の製造方法は、自然の竹から一品生産的に竹製基準模型横笛を作り、この竹製基準模型横笛を歌口及び各指孔のある第一の半割筒と、第二の半割筒とに縦方向に分割し、前記第一の半割筒と、前記第二の半割筒と、それぞれの分割された分割端面を含めた全体形状を実測し、それぞれの金型製作用のデータを取り、前記分割端面に合体させる位置決めと密封できる凹凸形状のデータを加え、これらデータから金型製作図面を経てあるいは直接に金型加工をして前記第一の半割筒側と前記第二の半割筒側の二種類の樹脂成形金型を作り、この樹脂成形金型に樹脂を注入して前記第一の半割筒側と前記第二の半割筒側を製作し、それぞれの分割端面に接着剤を塗布して合体して製作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、合成樹脂材を用いた横笛が大量生産できるとともに、一品生産で得られる仕上がりでもって、聴感上優れた音を得ることができる横笛を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例を示す横笛の全体斜視図である。
図2】第一の半割筒を内側から見た状態を示す全体斜視図である。
図3】第一の半割筒を管頭側から見た状態を示す部分斜視図である。
図4】第二の半割筒を管頭側から見た状態を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその実施形態を示す添付の図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示す横笛1は、長手方向に分割された第一の半割筒2と第二の半割筒3とが合体されて形成されている。
【0012】
また、図2に示すように、横笛1は、内壁が管尻4側に向かって先細りとなっている筒本体の管頭近傍に反射壁となる隔壁6が設けられ、管尻4が開放されている。
【0013】
図2に示す第一の半割筒2には、隔壁6と管尻4との間に歌口7と複数の指孔8~14が適切な大きさで適切な位置に配置されて設けられている。
【0014】
なお、第一の半割筒2及び第二の半割筒3の内筒壁19には、適切な大きさの、適切な間隔に設けられた歌口7、指孔8~14が図面上に明確に表されていない。けれども、隔壁6、歌口7、指孔8~14の隣接する相互間には、チューニングにより最適音調(音程調整)となるべく削られて容積に対応した歌口7、指孔8~14を含む内筒壁19の形状が形成されている。
【0015】
隔壁6は、第一の半割筒2に一体でもよく、別体で切込溝17に差し込まれていてもよい。
【0016】
第一の半割筒2及び第二の半割筒3は、合成樹脂製であり、合体する分割端面15、16には互いに噛みあう凹凸が形成されている。
【0017】
第一の半割筒2及び第二の半割筒3は、その管頭部分が、図3図4に示されている。この管頭部分の開放端には端末栓5が設けられ、端末を蓋している。
【0018】
端末栓5は第一の半割筒2あるいは第二の半割筒3のいずれかに一体でもよく、別体で切込溝18に差し込まれていてもよい。そして、第一の半割筒2と第二の半割筒3とが、分割端面15、16に塗布された接着剤で合体され、図1のように横笛1となっている。
【0019】
ここで、横笛の製造方法の一例としては、以下に示す各工程を順に行うことができる。
【0020】
すなわち、適当と思われる篠竹から必要長さを切り取り、管頭から管尻に至る節を図示しない突き鉋などの道具で抜いて貫通させ、外筒部を削り滑らかにする。
【0021】
図示しない柄付きの紙やすりを使用して内筒壁19を開放端から差し込んで滑らかとなるように削る。
【0022】
このとき、内筒壁19の径を略均一にし、まず、歌口7を経験則から位置とやや小さめに形成する。次に、複数の指孔8~14をやや小さめの大きさでそれぞれの位置を経験則から形成する。管頭側に反射壁である隔壁6を作り、管尻側を先細りにする。
【0023】
隔壁6と歌口7、歌口7と第一の指孔8及び各指孔9~14の大きさを大きくし、相互間の内筒壁19を削り、それぞれチューニングしながら音程を調整して適切な容積となるような形状にさらに内筒壁19を全体として先細りにする。柄付き鉋で削り、チューニングしながら微調整を繰り返して最適な音となる竹製の横笛を作る。
【0024】
柄付き鉋で削ることで形成されたこの篠笛の状態のものを、製作金型を作るための竹製基準模型横笛とする。
【0025】
この竹製基準模型横笛を歌口及び指孔がある側の第一の半割筒と、その反対側の第二の半割筒とに縦方向に二分割する。
【0026】
第一の半割筒と、その反対側の第二の半割筒と、それぞれの分割した分割端面を含めて全体形状を実測し、それぞれの金型製作用のデータを取る。
【0027】
第一の半割筒と第二の半割筒との合わせ分割端面に合体させる際に位置決めがしっかりできることと密封性を良くすることの目的でかみ合い凹凸形状のデータを加える。
【0028】
これらのデータから金型製作図面を経てあるいは直接に金属加工をして第一の半割筒側と第二の半割筒側の二種類の樹脂成形用の製作金型を作る。この樹脂成形金型は射出成形用である。
【0029】
第一の半割筒の雌金型と雄金型からなる射出成形型に樹脂を溶融射出し、樹脂製の第一の半割筒2を大量に作る。同様に樹脂製の第二の半割筒3を大量に作る。
【0030】
第一の半割筒2及び第二の半割筒3の樹脂成形に用いる合成樹脂は、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、PP(Polypropylene)樹脂、PE(Polyethylene)樹脂のいずれかである。
【0031】
合成樹脂には、グラスファイバ、カーボンファイバ、竹繊維及び炭化竹粉末のいずれか一つが混練されていてもよい。製造時に樹脂に竹繊維、カーボンファイバ、グラスファイバを短繊維にして混入することによって、質感、重量感、色調感、音質に影響を与える。また、竹のような細かいテクスチャを金型に施して竹模様を出してもよい。
【0032】
このように、第一の半割筒2及び第二の半割筒3はそれぞれ樹脂成形型を用いて合成樹脂にて大量に樹脂成形される。
【0033】
その後、大量に生産された中から、任意な第一の半割筒2及び第二の半割筒3を取り出して、それぞれの合体する分割端面15、16に接着剤を塗布して接着合体され、筒本体とされた樹脂製横笛が作られる。
【0034】
これにより、第一の半割筒2と第二の半割筒3とが合体され、内壁が管尻4側に向かって先細りとなっている筒本体の管頭近傍に反射壁となる隔壁6が設けられ、管尻4が開放されるとともに、第一の半割筒2には隔壁6と管尻4との間に歌口7と複数の指孔8~14が適切な大きさで適切な位置に配置され設けられている横笛1とすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 横笛
2 第一の半割筒
3 第二の半割筒
4 管尻
5 端末栓
6 隔壁(反射壁)
7 歌口
8、9、10、11、12,13、14 指孔
15、16 分割端面
17、18 切込溝
19 内筒壁
図1
図2
図3
図4