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特許7154037アンダーフィル材、アンダーフィルフィルム、及びこれを用いた半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】アンダーフィル材、アンダーフィルフィルム、及びこれを用いた半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20221007BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221007BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
H01L23/30 R
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018094387
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2018195823
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2017097537
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】本村 大助
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-503220(JP,A)
【文献】特開2016-183317(JP,A)
【文献】特開平09-296105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 23/29
C09J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと回路基板との間に配置され、硬化すると前記半導体チップを前記回路基板に固定する未硬化のアンダーフィル材であって、
アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とから成る主組成物と、
上記マレイミド化合物を硬化させるアリル化ビスフェノール化合物とを含み、
上記アクリルポリマーは上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、
上記マレイミド化合物は、上記主組成物の100質量部中に20質量部以上70質量部以下の範囲で含有され
上記アクリルモノマーは、上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、
上記アリル化ビスフェノール化合物は、上記主組成物の質量部と前記アリル化ビスフェノール化合物の質量部とを合計した100質量部中に、2.1質量部以上15質量部以下の範囲で含有されたアンダーフィル材。
【請求項2】
上記主組成物中の上記アクリルポリマーは、重量平均分子量Mwが、100000以上1200000以下の範囲である請求項記載のアンダーフィル材。
【請求項3】
上記アクリルモノマーは、フルオレン系アクリレートを含む請求項1記載のアンダーフィル材。
【請求項4】
上記マレイミド化合物は、1分子中にマレイミド基を2つ以上含む請求項1記載のアンダーフィル材。
【請求項5】
上記マレイミド化合物は、ビスマレイミドである請求項1記載のアンダーフィル材。
【請求項6】
半導体チップと回路基板との間に配置され、硬化すると前記半導体チップを前記回路基板に固定する未硬化のアンダーフィルフィルムであって、
アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とから成る主組成物と、
上記マレイミド化合物を硬化させるアリル化ビスフェノール化合物とを含有し、
上記アクリルポリマーは上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲にされ、
上記マレイミド化合物は上記主組成物の100質量部中に20質量部以上70質量部以下の範囲にされ
上記アクリルモノマーは上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、
硬化前の状態での引張破断強度の値が0.01MPa以上5.0MPa以下の範囲に含まれるアンダーフィルフィルム。
【請求項7】
上記主組成物中の上記アクリルポリマーは、重量平均分子量Mwが100000以上1200000以下の範囲である請求項記載のアンダーフィルフィルム。
【請求項8】
上記アクリルモノマーは、フルオレン系アクリレートを含む請求項記載のアンダーフィルフィルム。
【請求項9】
上記マレイミド化合物は、1分子中にマレイミド基を2つ以上含む請求項記載のアンダーフィルフィルム。
【請求項10】
上記マレイミド化合物は、ビスマレイミドである請求項記載のアンダーフィルフィルム。
【請求項11】
半導体チップのバンプが設けられた表面と回路基板の表面との間にアンダーフィルフィルムを配置して、前記アンダーフィルフィルムによって前記半導体チップと前記回路基板とを接着させて半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
上記アンダーフィルフィルムは、アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とから成る主組成物と、
上記マレイミド化合物を硬化させるアリル化ビスフェノール化合物とを含有し、
上記アクリルポリマーは上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、
上記マレイミド化合物は、上記主組成物の100質量部中に20質量部以上70質量部以下の範囲で含有され
上記アクリルモノマーは上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、
硬化前の状態での上記アンダーフィルフィルムの引張破断強度の値が0.01MPa以上5.0MPa以下の範囲に含まれる半導体装置の製造方法。
【請求項12】
上記半導体チップと上記回路基板との間に上記アンダーフィルフィルムが配置された状態で上記半導体チップを加熱しながら上記回路基板に押圧し、上記半導体チップと上記回路基板との間に位置する上記アンダーフィルフィルムの一部を上記半導体チップと上記回路基板との間から押し出し、上記半導体チップのバンプを上記回路基板の基板電極に接触させる仮固定工程と、
上記仮固定工程で昇温した温度よりも高い温度に上記半導体チップと上記回路基板と上記アンダーフィルフィルムとを昇温させ、上記バンプを溶融させた後、上記半導体チップと上記アンダーフィルフィルムと上記回路基板とを降温させ、溶融された上記バンプを上記基板電極と接触した状態で固化させる搭載工程と、
を有する請求項11記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーフィル材、アンダーフィルフィルム、及びこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップの実装方法において、工程短縮を目的に、半導体IC(lntegrated Circuit)の電極上にアンダーフィルフィルムを貼り付ける「先供給型アンダーフィルフィルム(PUF:Pre-applied Underfill Film)」の使用が検討されている。この先供給型アンダーフィルフィルムを使用した実装方法は、例えば、以下のように行われる(特許文献1参照)。
【0003】
工程A:ウエハにアンダーフィルフィルムを貼り付け、ウエハをダイシングして半導体チップを得る。
工程B:アンダーフィルフィルムが貼り合わされた状態で、半導体チップを位置合わせして回路基板上に配置する。
工程C:半導体チップを熱圧着し、ハンダバンプの金属結合による導通確保、及びアンダーフィルフィルムの硬化による接着を行う。
【0004】
半導体チップの実装方法において、ハンダバンプを接合する接着剤としては、例えばエポキシ樹脂を用いた熱硬化接着剤が提案されている(特許文献2参照)。また、低吸湿性、良好な硬化性、及び長期の可使時間(pot life)の観点から、ビスマレイミド類などの硬化性樹脂の検討もされている(特許文献3参照)。
【0005】
アンダーフィル技術については、近年では、低圧実装及びボイドレス実装が実現できるアンダーフィルフィルムが得られるアンダーフィル材が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-028734号公報
【文献】特開2006-335817号公報
【文献】特開2014-169450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本技術は、このような従来の実情に鑑みて創作されたものであり、低圧実装及びボイドレス実装を行うことができるできるアンダーフィル材、アンダーフィルフィルム、及びこれを用いた半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者等は、アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とを主組成物として含有するアンダーフィル材中の、アクリルポリマーとマレイミド化合物の含有量を特定範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
本発明は、半導体チップと回路基板との間に配置され、硬化すると前記半導体チップを前記回路基板に固定する未硬化のアンダーフィル材であって、アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とから成る主組成物と、上記マレイミド化合物を硬化させるアリル化ビスフェノール化合物とを含み、上記アクリルポリマーは上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、上記マレイミド化合物は、上記主組成物の100質量部中に20質量部以上70質量部以下の範囲で含有され、上記アクリルモノマーは、上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、上記アリル化ビスフェノール化合物は、上記主組成物の質量部と前記アリル化ビスフェノール化合物の質量部とを合計した100質量部中に、2.1質量部以上15質量部以下の範囲で含有されたアンダーフィル材である
本発明は、上記主組成物中の上記アクリルポリマーは、重量平均分子量Mwが、100000以上1200000以下の範囲であるアンダーフィル材である。
本発明は、上記アクリルモノマーは、フルオレン系アクリレートを含むアンダーフィル材である。
本発明は、上記マレイミド化合物は、1分子中にマレイミド基を2つ以上含むアンダーフィル材である。
本発明は、上記マレイミド化合物は、ビスマレイミドであるアンダーフィル材である
本発明は、半導体チップと回路基板との間に配置され、硬化すると前記半導体チップを前記回路基板に固定する未硬化のアンダーフィルフィルムであって、アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とから成る主組成物と、上記マレイミド化合物を硬化させるアリル化ビスフェノール化合物とを含有し、上記アクリルポリマーは上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲にされ、上記マレイミド化合物は上記主組成物の100質量部中に20質量部以上70質量部以下の範囲にされ、上記アクリルモノマーは上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、硬化前の状態での引張破断強度の値が0.01MPa以上5.0MPa以下の範囲に含まれるアンダーフィルフィルムである
本発明は、上記主組成物中の上記アクリルポリマーは、重量平均分子量Mwが100000以上1200000以下の範囲であるアンダーフィルフィルムである。
本発明は、上記アクリルモノマーは、フルオレン系アクリレートを含むアンダーフィルフィルムである。
本発明は、上記マレイミド化合物は、1分子中にマレイミド基を2つ以上含むアンダーフィルフィルムである。
本発明は、上記マレイミド化合物は、ビスマレイミドであるアンダーフィルフィルムである
【0010】
本発明は、半導体チップのバンプが設けられた表面と回路基板の表面との間にアンダーフィルフィルムを配置して、前記アンダーフィルフィルムによって前記半導体チップと前記回路基板とを接着させて半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、上記アンダーフィルフィルムは、アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とから成る主組成物と、上記マレイミド化合物を硬化させるアリル化ビスフェノール化合物とを含有し、上記アクリルポリマーは上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、上記マレイミド化合物は、上記主組成物の100質量部中に20質量部以上70質量部以下の範囲で含有され、上記アクリルモノマーは上記主組成物の100質量部中に10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、硬化前の状態での上記アンダーフィルフィルムの引張破断強度の値が0.01MPa以上5.0MPa以下の範囲に含まれる半導体装置の製造方法である。
本発明は、上記半導体チップと上記回路基板との間に上記アンダーフィルフィルムが配置された状態で上記半導体チップを加熱しながら上記回路基板に押圧し、上記半導体チップと上記回路基板との間に位置する上記アンダーフィルフィルムの一部を上記半導体チップと上記回路基板との間から押し出し、上記半導体チップのバンプを上記回路基板の基板電極に接触させる仮固定工程と、上記仮固定工程で昇温した温度よりも高い温度に上記半導体チップと上記回路基板と上記アンダーフィルフィルムとを昇温させ、上記バンプを溶融させた後、上記半導体チップと上記アンダーフィルフィルムと上記回路基板とを降温させ、溶融された上記バンプを上記基板電極と接触した状態で固化させる搭載工程と、を有する半導体装置の製造方法である。


【0011】
本発明に用いられたマレイミド化合物とアクリルモノマーとは、加熱や紫外線照射によって共重合反応を進行させて共重合体を形成することができる。アクリルポリマーと共重合体とはポリマー相溶性があり、長期間性能劣化の無い安定したアンダーフィル材とアンダーフィルフィルムを得ることができる。
マレイミド化合物とアクリルモノマーとの共重合体は耐熱性に優れ、また、共重合体と半導体チップとの間の密着力や、共重合体と回路基板との間の密着力も高いので半導体チップの剥離が無い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アンダーフィル材は加熱によって流動化し、押圧力が小さい実装を行うことができる。また、共重合反応が気泡を発生させないので、半導体チップと回路基板の間に気泡を含ませずに半導体チップを搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1はダイシングフィルムに治具とウエハを貼付した状態を説明するための斜視図である。
図2図2はウエハ上にアンダーフィルフィルムを貼り付ける工程の一例を説明するための斜視図である。
図3図3はウエハをダイシングする工程の一例を説明するための斜視図である。
図4図4は半導体チップを回路基板に搭載する工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図5図5はピックアップ工程を説明するための斜視図である。
図6図6は半導体装置の斜視図である。
図7図7(a)は組成物を塗布する工程を説明するための断面図であり、同図(b)は塗布された組成物層を乾燥させる工程を説明するための断面図である。
図8図8(a)~(d)は半導体装置を製造する工程を説明するための断面図である。
図9図9(a)~(d)は搭載工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
<アンダーフィル材>
本発明のアンダーフィル材はアンダーフィルフィルムを構成する材料であり、アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とを含む主組成物を含有している。
【0016】
[アクリルポリマー]
アクリルポリマーは、(メタ)アクリレート成分に由来する構成単位を含むポリマーであり、アンダーフィル材のタック性が強くなりすぎず、半導体の実装工程で作業性を害するおそれが少ないものが好ましい。(メタ)アクリレート成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0017】
アクリルポリマーは、上述した(メタ)アクリレート成分以外に、上述した(メタ)アクリレート成分と共重合可能な他のモノマー成分に対応する構成単位をさらに含んでいてもよい。他のモノマー成分としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸)、エポキシ基含有モノマー(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート)、ニトリル基含有モノマー(例えば、アクリロニトリル等)を用いることができる。
【0018】
例えば、アクリルポリマーとしては、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸、グリシジルメタクリレート及びアクリロニトリルに対応する構成単位を含むものを用いることができる。
【0019】
アクリルポリマーは、上述した(メタ)アクリレート成分や他のモノマー成分を重合することにより得ることができる。重合方法は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等が挙げられる。アクリルポリマーの重合反応の種類としては、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合、配位重合等が挙げられる。
【0020】
アクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、100000以上1200000以下の範囲に含まれるようにすることができ、500000以上1000000以下の範囲に含まれるようにすることもできる。
【0021】
アンダーフィル材中のアクリルポリマーとアクリルモノマーとマレイミド化合物とを主組成物と称することにすると、アクリルポリマーは、100質量部の主組成物の中に、10質量部以上60質量部以下の範囲に含有され、好ましくは10質量部以上45質量部以下の範囲に含有され、さらに好ましくは15質量部以上40質量部以下の範囲に含有される。アクリルポリマーの含有量が10質量部未満であると、ボイドの排除が困難となる傾向にある。また、アクリルポリマーの含有量が60質量部を超えると、低圧実装を実現することが困難な傾向にあり、接続性も悪化する傾向にある。
【0022】
アクリルポリマーは、1種類のアクリルポリマーを単独で主組成物に含有させてもよいし、2種類以上のアクリルポリマーを併用して含有させてもよい。アクリルポリマーを2種類以上併用する場合、アンダーフィル材中のアクリルポリマーの含有量の合計は、上述した範囲内が好ましい。
【0023】
[アクリルモノマー]
アクリルモノマーとしては、単官能(メタ)アクリレート、2官能以上の(メタ)アクリレートを用いることができる。アクリルモノマーとしては、例えば、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(東亞合成株式会社製)、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(東亞合成株式会社製)、ジペンタエリスリトール及びテトラアクリレート(東亞合成株式会社製)、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(東亞合成株式会社製)、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村化学工業株式会社製)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製)、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業株式会社製)、フルオレン系アクリレート(例えば、製品名:オグソールEA0200、EA0300、大阪ガスケミカル株式会社製)等が挙げられる。これらのアクリルモノマーの中でも、耐熱性等を考慮すると、高耐熱性であるフルオレン系アクリレートが好ましい。
【0024】
アンダーフィル材中のアクリルモノマーは、100質量部の主組成物の中で、10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、好ましくは10質量部以上55質量部以下の範囲で含有され、より好ましくは10質量部以上50質量部以下の範囲で含有されるようにすることができる。アクリルモノマーの含有量が10質量部未満であると、接続性が悪化する傾向にある。また、アクリルモノマーの含有量が60質量部を超えると、ボイドの排除が困難となる傾向にある。
【0025】
アクリルモノマーは、1種類のアクリルモノマーを単独で含有させてもよいし、2種類以上のアクリルモノマーを併用して含有させてもよい。アクリルモノマーを2種類以上併用する場合、アンダーフィル材中のアクリルモノマーの含有量の合計は、上述した範囲内が好ましい。
【0026】
[マレイミド化合物]
マレイミド化合物としては、例えば、1分子中にマレイミド基を2つ以上有する化合物を用いることができ、ビスマレイミドが好ましい。マレイミド化合物としては、例えば、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、4,4-ビスマレイミドジフェニルメタン、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5'-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド等が挙げられる。これらの中でも、芳香族ビスマレイミドが好ましく、特に、アンダーフィルフィルムの製造工程における作業性を考慮すると、溶剤溶解性やフロー性が良好な3,3’-ジメチル-5,5'-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドが好ましい。
【0027】
アンダーフィル材中のマレイミド化合物は、100質量部の主組成物の中で、20質量部以上70質量部以下の範囲で含有され、好ましくは20質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、より好ましくは20質量部以上55質量部以下の範囲で含有される。マレイミド化合物の含有量が20質量部未満であると、低圧実装を実現することが困難な傾向にあり、接続性も悪化する傾向にある。また、マレイミド化合物の含有量が70質量部を超えると、低圧実装及びボイドレス実装が困難となる傾向にある。
【0028】
アンダーフィル材に用いる組成物は、目的に応じて、上述した主組成物を構成する成分以外の他の成分をさらに含有してもよい。他の成分としては、例えば、フェノール化合物、フィラー等が挙げられる。
【0029】
[フェノール化合物]
フェノール化合物は、上述したマレイミド化合物用の硬化剤として用いることができるが、フェノールを含有しなくても熱硬化反応を開始させることができる。フェノール化合物としては、例えば、アリル化ビスフェノールを用いることができ、具体的には、2,2’-ジアリルビスフェノールA(製品名:DABPA)、4,4’-(ジメチルメチレン)ビス[2-(2-プロペニル)フェノール]、4,4’-メチレンビス[2-(2-プロペニル)フェノール]、4,4’-(ジメチルメチレン)ビス[2-(2-プロペニル)-6-メチルフェノール]などを用いることができる。これらの中でも、2,2’-ジアリルビスフェノールAが好ましい。
【0030】
フェノール化合物を含有させる場合のフェノール化合物の含有量は、例えば、アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物と、フェノール化合物との合計100質量部に対して15質量部以下とすることができる。フェノール化合物は、1種類のフェノール化合物を単独で含有させてもよいし、2種類以上のフェノール化合物を併用して含有させてもよい。フェノール化合物を2種類以上併用する場合、アンダーフィル材中のフェノール化合物の含有量の合計は、上述した範囲内が好ましい。
【0031】
[フィラー]
フィラーとしては、無機充填剤、有機充填剤、導電性粒子などを用いることができる。特に、線膨張率の低減や信頼性の向上の観点から、無機充填剤(例えばシリカフィラー)を用いることが好ましい。
【0032】
フィラーを用いる場合、フィラーの含有量は、例えば、アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物と、フィラーとの合計100質量部に対して30質量部以下とすることができる。フィラーは、1種類のフィラーを単独で含有させてもよいし、2種類以上のフィラーを併用して含有させてもよい。フィラーを2種類以上併用する場合、アンダーフィル材中のフィラーの含有量の合計は、上述した範囲内が好ましい。
【0033】
以上のように、本実施の形態に係るアンダーフィル材は主組成物を含有し、100質量部の主組成物の中には、アクリルポリマーが、10質量部以上60質量部以下の範囲で含有されるようにする。さらに、アンダーフィル材は、マレイミド化合物が、主組成物の100質量部に対して、20質量部以上70質量部以下の範囲で含有されるようにする。アクリルモノマーは、100質量部の主組成物の中で、10質量部以上60質量部以下の範囲で含有されるようにすることができる。
【0034】
このようなアンダーフィル材を用いることにより、低圧実装及びボイドレス実装を実現することができ、接続性を良好にすることができる。また、低圧実装の実現により、チップの低反り化や、実装時にハンダが流れてしまう現象を抑制することができる。また、チップの多ピン(多バンプ)化に対して、汎用ボンダーの押圧力で対応することができる。なお、低圧実装及びボイドレス実装を実現するために、例えば、アンダーフィル材を低弾性率化(低粘度化)する方法も考えられる。しかし、この方法ではボイドの除去性が悪化する傾向にある。
【0035】
上述したアンダーフィル材は、例えばアンダーフィル材が膜状に形成されたアンダーフィルフィルムとして用いることができる。このようなアンダーフィルフィルムの製造方法の一例について説明する。まず、上述したアクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とを含む組成物を、溶剤に溶解させ、アンダーフィル材を作製する。溶剤は、例えば、トルエン、酢酸エチル、又はこれらの混合溶剤などを用いることができる。
【0036】
次に、作製したアンダーフィル材を剥離基材上に塗布する。図7(a)の符号22は剥離基材であり、塗布によって形成された膜状のアンダーフィル材層18が形成されている。アンダーフィル材の塗布は、例えばコーティング装置を用いて行うことができる。剥離基材22は、例えば、シリコーンなどの剥離剤をPET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene-1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などに塗布した積層構造からなり、組成物の乾燥を防ぐとともに、組成物の形状を維持する。
【0037】
次に、剥離基材22上に塗布されたアンダーフィル材層18を、熱オーブン、加熱乾燥装置などにより乾燥させる。これにより、図7(b)に示す様に、剥離基材22の表面に所定厚さのアンダーフィルフィルム12が形成される。
【0038】
本実施の形態に係るアンダーフィル材を用いたアンダーフィルフィルム12は、常温(5℃以上35℃以下:JIS Z 8703)で固体であるため、装置汚染や厚みの不均一化等が発生することを抑制でき、取り扱いが容易となるとともに、接着信頼性も良好である。一方、上述した特許文献2,3に記載された技術では、常温で液体の硬化性樹脂を用いているため、装置汚染や厚みの不均一化等が発生し、取り扱い困難な傾向にある。また、上述した特許文献2,3に記載された技術では、半導体素子を個片化するためのダイシング工程において、接着剤が飛散・変形してしまい、接着信頼性が損なわれる。
【0039】
また、本実施の形態に係るアンダーフィルフィルム12は、硬化前の状態での引張破断強度の値が0.01MPa以上5.0MPa以下の範囲に含まれるようにすることができ、0.1MPa以上3.0MPa以下の範囲に含まれるようにすることもでき、また、0.3MPa以上1.0MPa以下の範囲に含まれるようにすることもできる。引張破断強度は、後述するフィルム破断強度の評価方法で測定した値をいう。
【0040】
<半導体装置の製造方法>
次に、上述したアンダーフィルフィルム12を用いた半導体装置の製造方法の一例について説明する。半導体装置の製造方法は、例えば、ウエハ上にアンダーフィルフィルム12を貼り付け、ウエハをダイシングし、半導体チップをピックアップし、半導体チップを回路基板に搭載することである。
【0041】
図1の符号13は、リング形形状の枠体である治具であり、治具13の裏面にはダイシングフィルム21が貼付されている。治具13のリング形形状の内側には、ダイシングフィルム21の接着面が露出されている。治具13の内側のダイシングフィルム21上には、治具13の内周よりも小径のウエハ11が貼付されてウエハ11が治具13に固定されている。治具13とウエハ11とはダイシングフィルム21に貼付された状態で台20上に配置されている。
図8(a)は、ダイシングフィルム21とウェハ11との断面図であり、ウェハ11には、複数のIC(Integrated Circuit)の回路部4が形成されており、各回路部4は、スクライブライン10によって区分けされている。
回路部4の所定の場所の表面上には、回路部4に形成された電気回路と電気的に接続されたバンプ6が設けられている。回路部4の内部の電子回路のうち、バンプ6に接続される部分以外の箇所は、絶縁膜5によってバンプ6と絶縁されている。図1図5では、バンプ6とスクライブライン10とは省略されている。
このようなウェハ11の二表面のうち、バンプ6が形成された表面にアンダーフィルフィルム12が貼付される。
図2の符号19は、フィルム状の剥離基材22と、剥離基材22に接着されたアンダーフィルフィルム12とから成る剥離紙付きアンダーフィルフィルム23が巻き取られたローラであり、このローラ19から剥離紙付きアンダーフィルフィルム23を巻き出し、アンダーフィルフィルム12が露出された面を治具13とウエハ11とに接触させて押圧し、アンダーフィルフィルム12をウェハ11に貼付する。図8(b)は、ダイシングフィルム21と剥離紙付きアンダーフィルフィルム23が貼付されたウエハ11との断面図である。
なお、ダイシングフィルム21に代えてウエハ11の裏面にアンダーフィルフィルム12を接着させ、アンダーフィルフィルム12を、ウエハ11のダイシング時にウエハ11を保護・固定し、ピックアップ時に保持するダイシングフィルムとして機能させることもできる。
図8(c)は、ウエハ11に貼付した剥離紙付きアンダーフィルフィルム23を切断してロール19から分離させた後、ウエハ11に貼付した剥離紙付きアンダーフィルフィルム23から剥離基材22を除去した状態が示されており、アンダーフィルフィルム12が貼付されたウエハ11は、ダイシングフィルム21に貼付された状態でダイシング装置の台33上に移動されている。
【0042】
次に、図3は、ウエハ11を分割するためのダイシング工程の一例を説明するための斜視図であり、切断器具25に設けられた円盤状のブレード14を回転させながらアンダーフィルフィルム12の表面に接触させ、押圧してアンダーフィルフィルム12を切断しながらブレード14を降下させ、ウエハ11のスクライブライン10に接触させる。その状態から更にブレード14を押圧し、ウエハ11をアンダーフィルフィルム12と共に切断しながらブレード14を降下させる。ブレード14の降下は、ウエハ11を貫通するとダイシングフィルム21が切断される前に停止され、ウエハ11のスクライブライン10が形成された直線状の場所を、ダイシングフィルム21と平行な状態でスクライブライン10に沿って移動してウエハ11を切断する。符号26a、26bは、ウエハ11の切断によって形成された切断面である。
このようなブレード14による切断により、図4に示すように、複数の平行な切断面26aと、その切断面26aと直角に交叉する複数の切断面26bとが形成されると、ウエハ11は、複数の半導体チップ15に分割される。半導体チップ15は、4個の切断面26a、26bによって取り囲まれておりそれぞれ直角四辺形形状の半導体チップ15にされている。図8(d)はウエハ11が半導体チップ15に分割された状態の断面図である。
【0043】
アンダーフィルフィルム12はウエハ11と一緒に切断されており、半導体チップ15の表面には切断されたアンダーフィルフィルム12が貼付されている。各半導体チップ15の裏面は切断されていない状態のダイシングフィルム21に貼付されている。
図5は、そのような半導体チップ15のピックアップ工程を説明するための斜視図である。ピックアップ装置27の下端に設けられた吸着パッド28を、切断された一個の半導体チップ15上のアンダーフィルフィルム12と接触させ、アンダーフィルフィルム12を吸着し、ダイシングフィルム21の底面下に配置されたピンを上昇させるとピンの上端がダイシングフィルム21を貫通してチップ15の底面と接触し、ピンに半導体チップ15を上方に押圧させると共に、ピックアップ装置27を上方に移動させると吸着パッド28に吸着された半導体チップ15がダイシングフィルム21から剥離して上方に移動される。
符号24は、上方に移動された半導体チップ15によって形成された空洞であり、底面にはダイシングフィルム21が露出され、側面にはダイシングフィルム21上に位置する半導体チップ15の切断面とアンダーフィルフィルム12の切断面とが露出されている。
【0044】
次に、半導体チップ15表面のアンダーフィルフィルム12を、半導体チップ15が搭載される回路基板の表面と対面させ、アンダーフィルフィルム12を回路基板と接触させる。
図9(a)の符号16は半導体チップ15が搭載される回路基板であり、回路基板16は基板本体35と基板本体35の表面に設けられた金属配線29とを有している。金属配線29の一部は、バンプ6と電気的に接続される基板電極7にされている。
基板電極7は、バンプ6が配置されたパターンに対応した位置に配置されており、半導体チップ15は、バンプ6がアンダーフィルフィルム12を介して基板電極7と対面するように位置合わせがされた後、アンダーフィルフィルム12と回路基板16とが接触されている。アンダーフィルフィルム12は、その一部が基板本体35と接触され、他の一部が金属配線29に接触されている。
このとき、バンプ6と基板電極7との間にはアンダーフィルフィルム12が位置しており、バンプ6と基板電極7とは非接触の状態にある。
【0045】
次に、バンプ6と基板電極7とを接触させる仮固定工程を説明すると、図9(b)の符号32は、ダイボンダー装置が有する加熱片32であり、加熱片32は加熱用電源によって通電され、発熱するように構成されている。通電によって発熱し、昇温した加熱片32を半導体チップ15の裏面に接触させ、押圧すると半導体チップ15が加熱され、昇温し、半導体チップ15に接触しているアンダーフィルフィルム12が加熱され、昇温する。
アンダーフィルフィルム12に含有されるアクリルポリマーは昇温すると軟化する性質を有しており、昇温したアンダーフィルフィルム12の粘度は、昇温前の粘度よりも小さくなる。
アンダーフィルフィルム12の粘度が小さくなると、加熱片32が半導体チップ15を押圧する押圧力(「押圧力」は押圧する力であり「荷重」とも言う)により、半導体チップ15と基板電極7との間のアンダーフィルフィルム12が、半導体チップ15と基板電極7との間から半導体チップ15の外側に押し出され、その結果、半導体チップ15と回路基板16との間の距離が小さくなり、バンプ6が基板電極7に接触する。
加熱片32によって半導体チップ15を加熱する際には、バンプ6は、バンプ6が溶融する温度よりも低温に昇温されており、従ってバンプ6は溶融しない。
アンダーフィルフィルム12は、主組成物中のモノマーが硬化反応を発生させる温度よりも低い温度に昇温されているが、アンダーフィルフィルム12の表面には接着力が発現しており、半導体チップ15は、アンダーフィルフィルム12の接着力によって回路基板16の表面に貼付される。
アンダーフィルフィルム12の軟化による貼付を仮固定工程と称すると、仮固定工程の温度は例えば60℃以上150℃以下の温度範囲である。また、半導体チップ15と回路基板16との間に印加する押圧力の条件は印加する押圧力の値を、例えば90N以下とすることができ、70N以下とすることもでき、40N以下とすることもできる。
また、仮固定のためには加熱ボンダーによる加熱しながら押圧力を印加する時間条件は、例えば、1秒以上120秒以下の時間範囲にすることができる。これにより、加熱ボンダーが加熱・圧力を印加する仮固定工程の間にバンプ6が溶融せずに基板電極7と接している状態とすることができ、且つ、アンダーフィルフィルム12が硬化していない状態とすることができる。図9(c)は仮固定された状態を示している。
仮固定工程では、低い温度で半導体チップ15を回路基板16に仮固定するため、半導体チップ15を回路基板16に接着する際のボイドの発生を抑制し、半導体チップ15へのダメージを低減することができる。
【0046】
仮固定工程の後では半導体チップ15を回路基板16に本固定する搭載工程を行う。バンプ6は低温で溶融する金属で構成されており、搭載工程では、例えばアンダーフィルフィルム12によって仮固定された半導体チップ15と回路基板16とを昇温されたリフロー炉の内部に搬入し、リフロー炉によって半導体チップ15とアンダーフィルフィルム12と回路基板16とを加熱して仮固定で昇温された温度よりも高い温度に昇温させ、バンプ6を溶融させる。溶融したバンプ6は基板電極7と接触されており、接触した状態でリフロー炉から取り出し、降温させるとバンプ6は、基板電極7との間に金属結合を形成した状態で固化される。リフロー炉中では、昇温したアンダーフィルフィルム12の組成物は化学反応し、アンダーフィルフィルム12が硬化し、加熱された回路基板16と半導体チップ15とが冷却されると、半導体チップ15が回路基板16に固定されると共に、半導体チップ15と回路基板16とが電気的に接続された半導体装置が得られる。図9(d)の符号9は半導体装置を示しており、符号24は硬化したアンダーフィルフィルムを示している。図6は半導体装置9の斜視図である。
搭載工程の加熱温度条件は、ハンダ等のバンプに用いられた金属の種類にもよるが、例えば、200℃以上280℃以下の温度範囲にバンプ6を昇温させて本固定することができる。また、加熱時間の条件は、例えば、5秒以上500秒以下の時間範囲にすることができる。バンプ6と基板電極7との間の金属結合によって、バンプ6と基板電極7とが電気的、機械的に接続されるともに、半導体チップ15と回路基板16とを接着した状態でアンダーフィルフィルム12が硬化されることで、半導体チップ15を回路基板16に固定させると共に電気的に接続させる本固定を行う。
【0047】
このように本実施の形態に係る半導体装置9の製造方法は、上述したアンダーフィルフィルム12を介して、バンプ6を有する半導体チップ15を回路基板16上に仮固定する仮固定工程と、半導体チップ15を回路基板16に本固定する搭載工程とを有する。仮固定工程と搭載工程の二工程によって半導体チップ15を回路基板16に搭載するため、半導体チップ15を比較的低押圧力(例えば90N以下)で搭載することができる。すなわち低圧実装を実現できるため、半導体チップ15へのダメージを低減することができる。
【実施例
【0048】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
[評価]
本発明のアンダーフィル材はアンダーフィルフィルムを構成する組成物であり、アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とを含有する。
本発明の実施例のアンダーフィル材の組成と評価結果を下記表1に記載し、比較例のアンダーフィル材の組成と評価結果を下記表2に記載する。
[フィルム破断強度]
表1、2の組成で作製されたアンダーフィルフィルム(厚み40μm)を1cm×3cmの大きさに切断し、引張・圧縮試験機(テンシロン)で引張速度300mm/minでアンダーフィルフィルムを引っ張り、アンダーフィルフィルムが破断した際の荷重を計測し、荷重/断面積を破断強度として測定した。実用上、破断強度の値が0.01MPa以上5.0MPa以下の範囲であることが好ましく、破断強度がこの範囲内である場合を合格と評価し、それ以外を不合格と評価した。
【0050】
[実装押圧力]
実装開始から終了までの間における、フリップチップボンダーの最大の押圧力(バンプ数20000)を、仮固定する押圧力とした。実用上、仮固定する押圧力は90N以下が好ましく、40N以下がより好ましい。
【0051】
[ボイド]
超音波映像装置(SAT:Scanning Acoustic Tomography)を用いて非破壊でボイドの有無を評価した。具体的には、260℃の加熱温度、表1、2に記載した押圧力で半導体チップをテスト用の基板電極(TEG:Test Element Group)に仮固定した後、200℃に昇温させたオーブンキュアによって4時間加熱した後降温させて本固定し、サンプルを作成し、超音波映像装置によって撮影した超音波画像を観察した。画像を観察した結果、画像中に白色がないと判断したサンプルを合格と評価し、白色が観察されたサンプルを不合格と評価した。下記表1、2の「ボイドレス/SAT画像」の欄には、評価結果が合格の場合を「OK」と記載し、不合格の場合を「NG」と記載した。
【0052】
[接続性(導通)]
テスト用の基板電極には、半導体チップのバンプの電気的接続を確認できるデイジーチェーンの配線パターンがTEGとして設けられており、半導体チップをTEGに搭載し、バンプの接続状態の確認を行った。全ての導通経路の接続が確認できた場合を合格と評価し、1ヶ所でも接続できていない場合を不合格と評価した。表1,2の「接続性(導通)」の欄には、評価結果が合格の場合に「OK」と記載し、不合格の場合に「NG」と記載した。
【0053】
[判定]
総合判定を以下の基準で行った。
A:上述したフィルム破断強度、ボイド、接続性の評価結果が合格であり、かつ、押圧力が40N以下。
B:上述したフィルム破断強度、ボイド、接続性の評価評価が合格であり、かつ、押圧力が40Nより大きく90N以下。
C:上述したフィルム破断強度、ボイド、接続性の評価結果のうち少なくとも1つが不合格であるか、又は、押圧力が90Nより大きい。
【0054】
<実施例1>
[組成物の調製]
アクリルポリマー(Mw=1000000)と、アクリルモノマー(製品名:オグソールEA0200、大阪ガスケミカル株式会社製)と、マレイミド化合物(製品名:BMI5100、大和化成工業株式会社製)と、ビスフェノール(製品名:DABPA、大和化成工業株式会社製)と、フィラー(シリカフィラー、製品名:MEK-AC-2140Z、日産化学工業株式会社製)と、メチルエチルケトンとを、表1に示す質量部(又は含有量wt%)となるように秤量し、この組成物を常温のボールミルで12時間以上24時間以下の時間範囲で混合・分散し、均一に溶解混合された組成物を得た。
【0055】
[アンダーフィルフィルムの作製]
得られた組成物を、所定のシート厚となるようギャップ調整されたコンマコーター(登録商標)で剥離基材に塗布し、連続して70℃のオーブンで乾燥させてアンダーフィルフィルムを作製した。乾燥時間は、約3分以上5分以下の時間範囲とし、作製したアンダーフィルフィルムの溶剤残分が2wt%以下になるように乾燥時間を調整した。
【0056】
[実装工程]
作製したアンダーフィルフィルムをウエハに接着するために、ダイヤフラム式ラミネーター(株式会社名機製作所)を用いて、60秒間、真空にて、加温(60℃)貼り合わせを行い、アンダーフィルフィルム付きウエハを作製した。
【0057】
アンダーフィルフィルム付きウエハを、ウエハダイシング装置(株式会社ディスコ製)を使用して、各チップサイズにダイシングして、アンダーフィルフィルム付きチップを作製した。
【0058】
アンダーフィルフィルム付きチップにつき、フリップチップボンダー(パナソニック株式会社製)にて回路基板ヘアライメン卜調整を実施した後、所定の場所にボンディング、実装し、ハンダ接合させた。
【0059】
<実施例2~8、比較例1~9>
表1,2に示す含有量で組成物を調製したこと以外は、表1、2に記載した条件により、実施例1と同じ製造工程で、実施例2~8、比較例1~9のアンダーフィルフィルムを作製した。なお、下記表中、アクリルポリマー、アクリルモノマー及びマレイミド化合物の欄の上段に記載した数値(例えば実施例1のアクリルポリマーでは100)と、フィラー及びフェノール化合物の欄に記載した数値は、各成分の配合量(質量部)を表す。また、下記表1,2中、アクリルポリマー、アクリルモノマー及びマレイミド化合物の欄の下段に記載した数値(例えば実施例1のアクリルポリマーでは30.3wt%)は、アンダーフィル材中の、アクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とを合計した質量部の値に対する各成分の質量部の値である含有量(wt%)を表す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
比較例1~9は、100質量部の主組成物の中に、アクリルポリマーが10質量部以上60質量部以下の範囲で含有させる条件と、100質量部の主組成物の中に、マレイミド化合物が20質量部以上70質量部以下の範囲に含有させる条件とのうち、少なくともいずれか一条件を満たさないアンダーフィル材を用いたため、低圧実装やボイドレス実装を実現することができなかった。
【0063】
一方、実施例1~8は100質量部の主組成物の中にアクリルポリマーが10質量部以上60質量部以下の範囲で含有され、かつ、100質量部の主組成物の中にマレイミド化合物が20質量部以上70質量部以下の範囲で含有されたアンダーフィル材を用いたため、低圧実装及びボイドレス実装を実現することができた。
【符号の説明】
【0064】
6 バンプ、7 基板電極、9 半導体装置、11 ウエハ、12 アンダーフィルフィルム、13 治具、15 半導体チップ、16 回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9