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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】壁紙
(51)【国際特許分類】
   D06N 7/00 20060101AFI20221007BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221007BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221007BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20221007BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20221007BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221007BHJP
   D21H 27/20 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
D06N7/00
B32B27/00 E
B32B27/30 101
E04F13/07 B
B32B5/18
B32B27/18 Z
D21H27/20 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018148586
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020023765
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000010010
【氏名又は名称】ロンシール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 宗樹
(72)【発明者】
【氏名】朝日 憲章
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-143024(JP,A)
【文献】特開2015-124317(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005476(WO,A1)
【文献】特開2011-236703(JP,A)
【文献】特開平01-311139(JP,A)
【文献】国際公開第2007/058152(WO,A1)
【文献】特開平04-299132(JP,A)
【文献】特開平02-215523(JP,A)
【文献】特開昭54-144458(JP,A)
【文献】特開昭52-046912(JP,A)
【文献】特開2009-001944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D06N1/00-7/06
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材上に積層されるポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂層と前記樹脂層の上側に積層されるフィルム層とを備え、前記樹脂層にオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤が添加され、実質的にアゾジカルボンアミド系発泡剤が添加されず、前記基材の幅および前記フィルム層の幅が前記樹脂層の幅よりも広く、前記基材と前記フィルム層とが両端部において直接接着されていることを特徴とする壁紙。
【請求項2】
基材と前記基材上に積層されるポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂層と前記樹脂層の上側に積層されるフィルム層とを備え、前記樹脂層にオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤が添加され、実質的にアゾジカルボンアミド系発泡剤が添加されず、前記樹脂層の幅(R)、前記フィルム層の幅(F)について、
「フィルム層の幅(F)-樹脂層の幅(R)≦4mm」を満たすことを特徴とする壁紙。
【請求項3】
基材と前記基材上に積層されるポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂層と前記樹脂層の
上側に積層されるフィルム層とを備え、前記樹脂層にオキシビスベンゼンスルホニルヒド
ラジド系発泡剤が添加され、実質的にアゾジカルボンアミド系発泡剤が添加されず、前記基材の幅(P)について
「基材の幅(P)-フィルム層の幅(F)>0mm」を満たすことを特徴とする壁紙。
【請求項4】
基材の上側にポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂層を積層する工程と、
前記樹脂層の上側にフィルム層を積層するフィルム積層工程とを備え、
前記フィルム層の幅が前記樹脂層の幅よりも広く、前記フィルム積層工程において前記基材と前記フィルム層の両端部を直接接着する請求項1から請求項の何れか1項に記載の壁紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床、壁、天井等の建築物内装材等の用途に用いる壁紙、及びその壁紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙は比較的安価で且つ大量生産可能であり更に意匠も多様であることから、室内装飾材料として国内外問わず幅広く普及している。
【0003】
壁紙には、ポリ塩化ビニル系樹脂やオレフィン系樹脂が多く用いられている。特にポリ塩化ビニル系樹脂は安価で諸物性に優れ、表面に微細な凹凸を形成するエンボス加工を施すことでさらに意匠性を付与できることから専ら採用されている。しかし、食事、煙草、手垢、落書き等による汚染、及びペットや過失の接触等による損傷を受け易いと云う問題があった。
【0004】
そこで従来、壁紙に汚れ防止性及び耐傷付き性を付与させる目的でフィルムを積層する手法が知られており、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルムを用いた壁紙が特許文献1に開示されている。またポリプロピレンフィルムを用いた壁紙が例えば特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-282834号公報
【文献】特開2006-096021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
壁紙に意匠性を付与する目的で施されるエンボス加工は特に凹部と凸部の厚み差に大きくすると立体感が向上するため、往々にして樹脂層等に発泡剤が使用される。中でも安価でありガス発生量が大きいことからアゾジカルボンアミド系発泡剤が汎用されている。しかしながらこの発泡剤は黄色であり、加熱分解より脱色するものの、未分解残渣により製品が黄味を帯びる。即ち、黄色度が高くなり青白い色調を表現できないという課題があった。
【0007】
すなわち、本発明は汚れ防止性及び耐傷付き性に優れ、且つ黄色度の低い壁紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題に対して鋭意検証した結果、本発明が用いた手段は、基材と基材上に積層されるポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂層と樹脂層の上側に積層されるフィルム層とを備え、樹脂層にオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤が添加され、実質的にアゾジカルボンアミド系発泡剤が添加されず、前記基材の幅および前記フィルム層の幅が前記樹脂層の幅よりも広く、前記基材と前記フィルム層とが両端部において直接接着されている壁紙とすることである。また、基材と基材上に積層されるポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂層と樹脂層の上側に積層されるフィルム層とを備え、樹脂層にオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤が添加され、実質的にアゾジカルボンアミド系発泡剤が添加されず、樹脂層の幅(R)、フィルム層の幅(F)について、「フィルム層の幅(F)-樹脂層の幅(R)≦4mm」を満たす壁紙であり基材と基材上に積層されるポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂層と樹脂層の上側に積層されるフィルム層とを備え、樹脂層にオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤が添加され、実質的にアゾジカルボンアミド系発泡剤が添加されず、基材の幅(P)について「基材の幅(P)-フィルム層の幅(F)>0mm」を満たす壁紙である
さらに、基材の上側にポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂層を積層する工程と、樹脂
層の上側にフィルム層を積層するフィルム積層工程とを備え、フィルム層の幅が前記樹脂層の幅よりも広く、フィルム積層工程において基材とフィルム層の両端部を直接接着する壁紙の製造方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は黄色度が低く、且つ汚れ防止性及び耐傷付き性にも優れる壁紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の壁紙の一実施形態に係る断面図である。
図2】本発明の壁紙の一実施形態に係る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の要諦は、基材と基材上に積層されるポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂層と樹脂層の上側に積層されるフィルム層とを備え、樹脂層にオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤が添加され、実質的にアゾジカルボンアミド系発泡剤が添加されない壁紙とすることである。ここで実質的にアゾジカルボンアミド系発泡剤が添加されないとはオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤の発泡性に影響を及ぼす範囲でアゾジカルボンアミド系発泡剤が添加されないことを意味する。これにより黄色度の低い壁紙を得ることが可能となる。
【0012】
「樹脂層」
樹脂層に用いるオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤としては、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが好ましい。その発泡性に影響を及ぼさない範囲に於いて添加剤を用いてもよい。
【0013】
ここで、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤のみを用いることが好ましい。アゾジカルボンアミド系発泡剤を用いると黄変が大きくなり好ましくない。アゾジカルボンアミド系発泡剤とはアゾジカルボンアミドからなる発泡剤であり、それ単体や物性向上のために添加物を含有するものを含む。本発明においては、アゾジカルボンアミド系発泡剤を発泡剤として有効な添加量を添加しないこととなる。すなわち、アゾジカルボンアミド系発泡剤を実質的に添加せず、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤を用いることで黄色度の低い壁紙が得られる。
【0014】
樹脂層に用いるポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを主たる構成成分とすればよいが、塩化ビニル以外の共重合成分を含んでもよい。具体的にはポリ塩化ビニル、エチレン-塩化ビニル共重合体、プロピレン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-アクリル系樹脂共重合体、塩化ビニル-ウレタン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。また、塩化ビニル系樹脂としては、ペースト加工用ポリ塩化ビニル系樹脂やサスペンジョンポリ塩化ビニル系樹脂を用いることができる。さらにこれらポリ塩化ビニル系樹脂を1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。特にペースト加工用ポリ塩化ビニル系樹脂を用いるとペーストコーティングが可能となり、安価な設備で多様な配合剤の多量配合による多様な発泡製品が可能となり、更に少量多品種製品に適するなど好ましい。耐傷付き性に限って言及すればサスペンジョンポリ塩化ビニル系樹脂を用いたカレンダー加工の方が達成し易いが、本発明では敢えて耐傷つき性に不利なペースト加工用ポリ塩化ビニル系樹脂を用いても、樹脂層とフィルム層を強固に接着させることで、耐傷付き性に優れ且つ樹脂層とフィルム層との接着性にも優れる壁紙を提供できることを見出した。
【0015】
ペースト加工用ポリ塩化ビニル系樹脂とは、主に乳化重合法やミクロ懸濁重合法により得られる、1次粒子の平均粒子径が例えば0.02~20.0μmである微細なポリマー粒子であり、可塑剤の添加によりペースト状になるのが一般的な特徴である。サスペンジョンポリ塩化ビニル系樹脂とは、主に懸濁重合法により得られる、1次粒子の平均粒子径が例えば50~200μmでポーラスな不定形状の塩化ビニル系樹脂のことである。このポーラスな形状を有することで可塑剤等の液体を吸収できるため、ペースト状とならないのが特徴であり、押出加工やカレンダー加工で主に用いられる。
【0016】
樹脂層に過塩素酸金属塩を用いることでさらに黄色度の低い発泡壁紙を得ることができる。これは、過塩素酸金属塩が発泡ポリ塩化ビニル樹脂層のポリ塩化ビニル系樹脂の安定剤として作用するとともに、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤による黄変を抑制していると推定している。オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤はそれ自体白色であるが、高温によって着色を呈し、また分解残渣が酸性であり且つ分解時の発熱量が多いためポリ塩化ビニル系樹脂の変色に関与するおそれがある。過塩素酸金属塩はオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤に起因する黄変を抑制すると考えられる。
【0017】
さらに発泡ポリ塩化ビニル樹脂層には過塩素酸金属塩以外の安定剤を使用することでより黄色度低下させることが可能となる。安定剤としては、例えばバリウム系安定剤、カルシウム系安定剤、スズ系安定剤、亜鉛系安定剤、カリウム系安定剤等が挙げられ、これら2種以上を併用してもよい。特に、バリウム系安定剤、カルシウム系安定剤、カリウム系安定剤と亜鉛系安定剤を併用することで黄色度を低減させつつ充分な加工性が得られるため好ましい。
【0018】
過塩素酸金属塩としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸アンモニウムなどが挙げられる。中でも過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウムが好適に用いられる。これらの過塩素酸塩類は無水物でも含水塩でもよく、ブチルジグリコール、ブチルジグリコールアジペート等のアルコール系およびエステル系の溶剤に溶かしたものおよびその脱水物でもよい。また、ハイドロタルサイトを過塩素酸で処理した過塩素酸含有ハイドロタルサイトでもよい。
【0019】
樹脂層に使用されるオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、0.01~4重量部含有することが好適である。0.01重量部未満では発泡性が十分でない場合があり、4重量部超では発泡倍率が高くなり十分な耐傷付き性が得られないことがある。安定剤として過塩素酸金属塩を使用すると黄変を抑制でき、発泡剤の添加量を上げても低い黄色度を保ち易く好適である。
アゾジカルボンアミド系発泡剤は添加しないことが好ましいが、0.1重量部未満であれば黄変への影響が比較的少なく、0.01重量部未満であればより黄変への影響が少なくなり好ましい。
【0020】
樹脂層には酸化チタンをポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1~50重量部含有すると隠蔽性と耐候性が向上するため好適である。1重量部未満では隠蔽性又は耐候性向上効果が得られ難く、50重量部超では加工性低下や黄色度増加をもたらすことがある。
【0021】
本発明に用いる樹脂層の坪量は隠ぺい性と防火性の点から100g/m~220g/mであることが好ましい。100g/m未満であると隠蔽性に欠ける場合がある。220g/mを超過すると防火性が低下する場合がある。さらに、樹脂層の坪量を制限することで耐傷つき性は向上し、220g/m以下とすることが好ましく、160g/m以下がより好ましい。
よって、隠ぺい性と耐傷つき性の点からも、100g/m~220g/mであることが好ましく、120g/m~160g/mがより好ましい。
【0022】
樹脂層には課題解決に支障を来さない限りにおいて、安定剤、可塑剤、充填剤、発泡剤、着色剤、加工助剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、防炎剤、脱泡剤等の各種添加剤を適宜加えてもよい。
【0023】
可塑剤としては特に限定されないが、例えばジー2-エチルヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレート、ジイソノニルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、トリオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、塩素化脂肪酸エステル、塩素化パラフィン、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸エステル、ポリエステル系等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0024】
「基材」
本発明に用いる基材としては、普通紙(パルプ主体で公知のサイズ剤により処理したもの)、難燃紙(パルプ主体でスルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン等の難燃剤により処理したもの)、無機質紙(水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機添加剤を含むもの)、フリース紙(パルプとポリエステル等の合成繊維等を混合して抄紙したもの)が挙げられる。特に普通紙を用いると耐傷付き性、施工性が向上するため好ましい。
【0025】
基材の坪量としては特に限定されないが、隠ぺい性と施工性から50g/m~170g/mであると好ましい。50g/m未満であると隠蔽性に欠けたり、施工性が低下したりする場合がある。170g/mを超過すると防火性が低下する場合がある。
【0026】
「フィルム層」
本発明のフィルム層に用いる樹脂としては特に限定されないが、ポリエチレン系やポリプロピレン系等のポリオレフィン系、ポリブチレン系、エチレン-ビニルアルコール系共重合体、メタクリル系、熱可塑性ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンテレフチレート系、ポリ乳酸系、ポリ塩化ビニル系、ポリテトラフルオロエチレン系、エチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体、ポリカーボネート系、シリコーン系が挙げられる。特にポリオレフィン系、エチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂が汚れ防止性、耐傷付き性、耐カール性、経済性の観点から好適である。
【0027】
フィルム層の厚さは特に限定されないが、10μm~25μmであると好ましい。10μm未満であると耐傷付き性が欠ける場合がある。25μmを超過すると施工性や防火性が低下する場合がある。
【0028】
本発明では樹脂層よりフィルム層の幅を大きくすることが好ましい。これを壁紙の幅方向の断面図である図1、2を用いて説明する。壁紙4は基材1の上に樹脂層2、フィルム層3が積層されている。そして、フィルム層3が樹脂層2よりも幅が広く、フィルム層3が基材1よりも幅が狭い。また、壁紙4の端部5-1、5-2においてフィルム層3が基材1と接着されている。すなわち、フィルム層3と基材1とが両端部5において接着されている。
これにより樹脂層2の端部までフィルム層3が積層され樹脂層2の端部においてもフィルム層3が樹脂層2に充分に接合されることとなる。そのため、壁紙の端部5-1、5-2においてフィルム層3が樹脂層2から剥離しにくくなり好ましい。
さらにフィルム層3と基材1とが壁紙4の両端部5において接着されるようにすることにより、壁紙4の全幅においてフィルム層3と樹脂層2とが強く接着されることになる。これにより壁紙4として樹脂層とその上側に積層されるフィルム層との接着性に優れることとなる。またこのように樹脂層とフィルム層との接着性が優れることで、フィルム層が剥がれにくくなるため耐傷付き性に優れる壁紙4が得られるため好ましい。
【0029】
樹脂層2とフィルム層3との幅の差を大きくし過ぎないことが好ましい。この差を大きくし過ぎなければ、施工時に排除する部分を少なくすることができ経済的に好ましい。具体的には樹脂層2の幅(R)とフィルム層3の幅(F)との差を4mm以下とすること(「フィルム層の幅(F)」-「樹脂層の幅(R)」≦「4mm」)が好ましい。
【0030】
また、基材の幅(P)がフィルム層(F)よりも大きいことが好ましい。これによりフィルム層は基材よりも内側に入ることとなり、フィルム層が引っ掛かりフィルム層が剥離されるとの不具合を低減することができる。
【0031】
さらに、フィルム層と樹脂層との密着性をあげるために両層間に接着層を施しても良い。接着層を付与する手段としては特に限定されず公知の方法を用いることができるが、例えば溶剤塗工法等で塗布により得る方法として、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等の有機溶剤に溶かした接着剤をグラビア印刷機やドライラミネート機にて等によりフィルム層または樹脂層に塗布する方法を挙げることができる。
【0032】
本発明の発泡壁紙は「JIS K 7373」で定義される黄色度は3.0未満がより好ましく更に2.5未満が更に好ましい。
【0033】
本発明の壁紙には、課題解決に支障を来さない限りに於いて樹脂層上に印刷層を設けてもよい。印刷層を付与する方法としては公知の方法を用いることができ、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等が挙げられる。また印刷層の塗着性向上や低艶化の目的で、各種表面処理剤を併用してもよい。その顔料やバインダー樹脂としては公知のものを用いることができる。
また、印刷層を樹脂層とフィルム層の間に設ける場合には、フィルム層は樹脂層、印刷層との充分に接合されていることを要する。印刷層を設ける場合、樹脂層を完全に覆うように前面に印刷を行うより柄上に印刷を行うことが多く、この場合には樹脂層と印刷層の双方にフィルム層が充分に接合されることがより好ましい。また、樹脂層を覆うように前面に印刷を行う場合でも、例えばグラビア印刷においてはグラビア印刷ロールのメッシュ形状に沿って印刷が施されるため、樹脂層の表面を完全に覆うように印刷層が設けられる場合はまれであり、このような場合にも樹脂層と印刷層にフィルム層が充分に接合されることがより好ましい態様となる。さらにフィルム層と樹脂層及び印刷層との密着性を向上させるためにフィルム層と樹脂層または印刷層の間に接着層を施しても良い。
【0034】
本発明の壁紙には、課題解決に支障を来さない限りに於いて樹脂層上に機能性付与処理層を設けてもよい。機能性付与層により付加される機能としては特に制限されないが、例えば消臭性、帯電防止性、マイナスイオン性、リラックス効果が挙げられ、2種以上を併用してもよい。尚、機能性付与処理層に加え印刷層を付与する場合は、印刷層の上に機能性付与処理層を付与することが好ましい。
【0035】
本発明の壁紙の製造方法としては公知の方法が用いることができるが、基材の上側にポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂層を積層する工程と、樹脂層の上側にフィルム層を積層するフィルム積層工程を有していればよい。例えば基材上にペーストコーティング法又はカレンダー法にて樹脂層を積層した後、ヒーターエンボス機または発泡エンボス機にて樹脂層を発泡させ、メカニカルエンボスを得、さらにフィルム層を積層させることが挙げられる。特にメカニカルエンボスを施す場合、ヒーターエンボス機を使用すると黄色度増加を抑制しやすく好ましい
ここで、樹脂層を発泡させる発泡工程とメカニカルエンボスを行うメカニカルエンボス工程とフィルムを積層するフィルム積層工程は、これらの3工程を連続的に行っても良いし、2つまたは3つの工程に分け逐次的に行っても良いし、複数の工程を同時に行っても良い。また、発泡を行う必要がない場合は発泡工程を用いなくても良い。
また基材に樹脂層を積層する際にペーストコーティングを用いると多様な配合剤の多量配合にも適応可能となり望ましい。樹脂層上に印刷層を付与する場合はグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等を用いることができる。
【実施例
【0036】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0037】
「黄色度評価」
得られた発泡壁紙の黄色度を「JIS K 7373」に準拠しスガ試験機(株)製SMカラーコンピューターを用いて測定した。
【0038】
「汚れ防止性」
壁紙工業会規定の規格「汚れ防止壁紙性能規定」に準拠した試験とした。汚染物はコーヒー、醤油、水性ペン(黒色)、クレヨン(赤色)とした。コーヒー及び醤油は45度に傾斜した試験台に試験体(A4サイズ)を貼付し、その上から汚染物100mLを汚染状態が約10cm幅になるように振り掛けた。水性ペンは試験体(30mm×220mm)上を長さ10cmの直線を約2mm間隔で5本平行に書いた。クレヨンはJIS L 0849で規定する摩擦試験機II型の摩擦子に取り付け、試験体(30mm×220mm)上120mmの間を荷重200gで毎分30回往復の速度で5往復摩擦した。室温で24時間静置後、水を含ませた布で拭き取った。なお、水性ペン、クレヨンの除去については、水を含ませた布で拭き取った後、中性洗剤を含ませた布を用いて拭き取った。各汚染物の除去について、JIS L 0805の汚染用グレースケールを用いて汚れが4~5号程度であれば良、1~3号程度の場合は不可とした。
【0039】
「耐傷付き性」
壁紙工業会規定の規格「表面強化壁紙性能規定」に準じるが、30mm×250mmの試験体表面を荷重400gfとした摩擦子を装備したJIS L 0849で規定する摩擦試験機II型を用いて毎分30回往復の速度で引掻き、樹脂層が破れて基材が明らかに見えるまでの引掻き回数が100回以上であれば良、同じく荷重200gfとした摩擦子を用いて毎分30回往復の速度で5回引掻きで比較的大きな表面層の破れ等が見られなければ可、表面層の破れが明確に見えれば不可とした。
【0040】
「接着性」
試験体をA4サイズとし基材裏面に刷毛で水を任意量塗布して裏面同士を合わせて5分間養生した後、長手方向に対し半分となるように且つ裏面が内側または外側になるように折り畳み、硝子板で1.74kgの荷重を均等に掛け室温で1時間静置した。その後、裏面内側、裏面外側の両方の試験体について折り畳み部の表面状態を目視にて観察し、裏面内側及び裏面外側に折り畳んだ両方に於いてフィルム層の剥離及びシワが無ければ良、両方とも剥離は無いが何れかでもシワがあれば可、何れかでも剥離があれば不可とした。
【0041】
実施例1では、基材として普通紙を用い、表1に示す如く所定量でペースト加工用ポリ塩化ビニル樹脂、p,p‘-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジー2-エチルヘキシルフタレート、バリウム-亜鉛系安定剤、過塩素酸ナトリウム系安定剤、炭酸カルシウム及び二酸化チタンを混合したペーストゾルを、ペーストコーターで塗布することで基材上に樹脂層を付与した。その後、ヒーターエンボス機を用いてエチレン-ビニルアルコール系共重合体から成るフィルム層を積層しメカニカルエンボスを施した。基材の幅及びフィルム層の幅を樹脂層の幅よりも広くし、且つ基材とフィルム層を両端部で接着させた。
【0042】
実施例2では過塩素酸ナトリウム系安定剤を不使用とした他は実施例1に準拠した。
【0043】
実施例3ではp,p‘-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの配合量を変更した他は実施例1に準拠した。
【0044】
実施例4では二酸化チタンの配合量及び坪量を変更した他は実施例1に準拠した。
【0045】
実施例5では端部での基材とフィルム層の接着を阻止した他は実施例1に準拠した。
【0046】
実施例6では基材を無機質紙(水酸化アルミ紙)に変更した他は実施例1に準拠した。
【0047】
実施例7ではポリプロピレン系樹脂から成るフィルム層を積層し、フィルム層と樹脂層の幅差及び基材と樹脂層の幅差を変更した他は実施例1に準拠した。
【0048】
実施例8では樹脂層の坪量を変更し、グラビア印刷にて印刷層を施した他は実施例1に準拠した。
【0049】
【表1】
【0050】
比較例1では発泡剤をp,p‘-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドからアゾジカルボンアミドに変更し、基材の幅よりフィルム層の幅を大きくし基材とフィルム層の端部での接着を阻止した他は実施例1に準拠した。
【0051】
比較例2では発泡剤としてp,p‘-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドとアゾジカルボンアミドを併用し、樹脂層の幅よりフィルム層の幅を小さくし基材とフィルム層の端部での接着を阻止した他は実施例1に準拠した。
【0052】
【表2】
【0053】
なお、表1、表2において、「フィルム層」、「基材」、「印刷層」の欄の「○」はその該当の層を有することを示し、「-」はその該当の層を有していないことを示す。また、「基材とフィルム層の接着」の欄の「○」は基材とフィルム層とが接着されていることを示し、「×」は基材とフィルム層とが接着されていないことを示す。例えば、実施例1では、エチレン-ビニルアルコール系共重合体のフィルム層および普通紙である基材を有し、印刷層を有せず、基材とフィルム層とが接着されていることを表している。
また、「F-R」欄はフィルム層の幅(F)-樹脂層の幅(R)の値、すなわちフィルム層の幅(F)と樹脂層の幅(R)との差を表している。同様に「幅差」の「P-F」欄は基材の幅(P)-フィルム層の幅(F)の値、すなわち基材の幅(P)とフィルム層の幅(F)との差を表している。
【0054】
「評価結果」
実施例1乃至8は黄色度を3.0未満に低減し、汚れ防止性、耐傷付き性及び接着性にも優れることを示している。特に実施例1、2及び4は何れも優れており、本発明の望ましい形態である。
【0055】
これに対し、比較例1及び2ではアゾジカルボンアミドを含有するため4.0以上の高い黄色度となり、さらに基材とフィルム層の接着がないため特に接着性が乏しい。
図1
図2