(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】カテーテルの製造方法、及びこの製造方法で製造されたカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20221007BHJP
A61M 25/18 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
A61M25/00 506
A61M25/18
(21)【出願番号】P 2018179812
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2018028006
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【復代理人】
【識別番号】100225440
【氏名又は名称】門山 廣大
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 太輝人
(72)【発明者】
【氏名】松下 俊
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 祐八
(72)【発明者】
【氏名】羽室 皓太
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-180802(JP,A)
【文献】米国特許第05167647(US,A)
【文献】特開2017-064067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00 - 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、前記シャフトの基端に設けられる筒状のハブと、をインサート成形によって相互に固定するカテーテルの製造方法であって、
製造装置の金型に設けられたキャビティ内に前記シャフトを配置する配置ステップと、
前記配置ステップ後に、前記キャビティを構成する内壁に設けられたゲートから成形材料を射出する射出ステップと、
射出した前記成形材料を前記キャビティ内で固化して、前記シャフトに密着するハブを成形する成形ステップと、を有し、
前記金型は、前記成形材料を前記ゲートに向かって流動させるランナを有し、
前記配置ステップでは、前記ランナの延在方向に対して前記シャフトの延在方向がねじれの位置となり、且つ、前記シャフトの延在方向に平行な前記金型の側面断面視で、前記ゲートが前記シャフトの先端と基端の間となるように前記シャフトを位置決めする
ことを特徴とするカテーテルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルの製造方法において、
前記ハブは、筒状のハブ本体と、前記ハブ本体の外周面から突出するウイングと、を有し、
前記キャビティは、前記ハブ本体を成形する第1空間と、前記ウイングを成形する第2空間と、を有し、
前記配置ステップでは、前記シャフトを前記第1空間の軸に沿って配置する
ことを特徴とするカテーテルの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のカテーテルの製造方法において、
前記ランナの延在方向が前記第2空間と交差している
ことを特徴とするカテーテルの製造方法。
【請求項4】
シャフトと、前記シャフトの基端にインサート成形によって固定された筒状のハブと、を備えるカテーテルであって、
前記ハブは、該ハブの肉部分に残留応力を有し、且つ前記シャフトの先端と基端の間の所定位置における残留応力が、前記所定位置から前記ハブの軸方向にずれた他位置における残留応力よりも大きく、
前記肉部分は、前記ハブの軸心を基点として一方側に位置する第1肉部分と、他方側に位置する第2肉部分と、を有し、
前記所定位置における前記第1肉部分と前記第2肉部分との前記残留応力の差は、前記他位置における前記第1肉部分と前記第2肉部分との前記残留応力の差よりも大きい
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項5】
シャフトと、前記シャフトの基端にインサート成形によって固定された筒状のハブと、を備えるカテーテルであって、
前記ハブは、筒状のハブ本体と、前記ハブ本体の外周面から突出する一対のウイングと、を有し、
一対の前記ウイングは、前記シャフトの先端と基端の間の所定位置において第1形状を有する第1のウイングと、前記ハブの軸心を基点とする前記第1のウイングの線対称位置において該第1形状とは異なる第2形状を有する第2のウイングと、でなり、
前記第2形状は、前記第2のウイングの厚み方向の一方側の表面から突出するゲート痕を有
し、
前記第2形状が前記ゲート痕を有するのに対して前記第1形状がゲート痕を有していないことによって前記第1形状と前記第2形状が異なる
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項6】
請求項
5に記載のカテーテルにおいて、
前記ゲート痕は、前記ハブの射出成形時に形成される
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項7】
請求項
5又は
6に記載のカテーテルにおいて、
一対の前記ウイングは、前記所定位置における前記ハブの軸方向に直交する断面視で、残留応力が相互に異なる
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項8】
請求項
4に記載のカテーテルにおいて、
前記シャフトは、前記先端と前記基端の間で一方向に湾曲し、
前記ハブは、筒状のハブ本体と、前記ハブ本体の外周面から突出する一対のウイングと、を有し、
一対の前記ウイングの少なくとも一方が、前記シャフトの湾曲方向を示すマーカを有する
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項9】
請求項
5~
7のいずれか1項に記載のカテーテルにおいて、
前記シャフトは、前記先端と前記基端の間で一方向に湾曲し、
一対の前記ウイングの少なくとも一方が、前記シャフトの湾曲方向を示すマーカを有する
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項10】
請求項
8又は
9に記載のカテーテルにおいて、
前記マーカは、前記シャフトの中心軸に対して前記シャフトの湾曲の外側と同じ側に配置されている
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項11】
請求項
8又は
9に記載のカテーテルにおいて、
前記マーカは、前記シャフトの中心軸に対して前記シャフトの湾曲の内側と同じ側に配置されている
ことを特徴とするカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトにハブをインサート成形するカテーテルの製造方法、及びこの製造方法で製造されたカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用途で使用されるカテーテルは、患者に挿入される柔軟なシャフトと、シャフトの基端に設けられシャフトよりも硬質なハブと、を備える。この種のカテーテルは、接着、かしめ、インサート成形等の固着方法により、シャフトとハブを一体化している。例えば、特許文献1には、金型のキャビティにシャフトを配置し成形材料を射出することにより、シャフトに密着するハブをインサート成形する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているようなインサート成形を行う製造方法では、金型のキャビティ内に成形材料を高圧・高速で射出する。このため、成形材料の当たり方によっては、シャフトが変形したり、シャフトが金型に対し相対的に移動したりする可能性がある。つまり、インサート成形では、シャフトとハブとの接合位置が意図しない箇所にずれ易く、これによりカテーテル全体の軸方向長さが変わってしまう等、製品の品質低下につながっていた。
【0005】
なお、特許文献1に開示の製造方法では、シャフトの端部にフランジを設け、金型にフランジに係合する凹部を設けることで、シャフトのずれを防止している。しかしながら、シャフトにフランジを形成し、フランジを金型の適宜の位置に配置する作業は、製造工程の複雑化やコストの増加を招く要因となる。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でインサート成形時のシャフトの移動を抑止することにより、製品の品質を高めることができるカテーテルの製造方法、及びこの製造方法で製造されたカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、シャフトと、前記シャフトの基端に設けられる筒状のハブと、をインサート成形によって相互に固定するカテーテルの製造方法であって、製造装置の金型に設けられたキャビティ内に前記シャフトを配置する配置ステップと、前記配置ステップ後に、前記キャビティを構成する内壁に設けられたゲートから成形材料を射出する射出ステップと、射出した前記成形材料を前記キャビティ内で固化して、前記シャフトに密着するハブを成形する成形ステップと、を有し、前記配置ステップでは、前記シャフトの延在方向に平行な前記金型の側面断面視で、前記ゲートが前記シャフトの先端と基端の間となるように前記シャフトを位置決めすることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記金型は、前記成形材料を前記ゲートに向かって流動させるランナを有し、前記配置ステップでは、前記ランナの延在方向に対して前記シャフトの延在方向がねじれの位置となるように前記シャフトを配置する構成であるとよい。
【0009】
また、前記ハブは、筒状のハブ本体と、前記ハブ本体の外周面から突出するウイングと、を有し、前記キャビティは、前記ハブ本体を成形する第1空間と、前記ウイングを成形する第2空間と、を有し、前記配置ステップでは、前記シャフトを前記第1空間の軸に沿って配置するとよい。
【0010】
上記構成に加えて、前記ランナの延在方向が前記第2空間と交差している構成であることが好ましい。
【0011】
ここで、前記配置ステップ後且つ前記射出ステップ前に、前記金型を型締めする型締めステップを有し、前記型締めステップでは、前記金型の型締め状態で、前記金型に設けられた1以上のピンにより前記シャフトを押さえるとよい。
【0012】
さらに、前記射出ステップ及び前記成形ステップでは、前記ピンにより前記ハブに凹部を形成することが好ましい。
【0013】
またさらに、前記ピンは、前記配置ステップで配置される前記シャフトの軸方向に沿って複数並設されてもよい。
【0014】
さらにまた、前記成形ステップ後に、前記金型を型開きする型開きステップを有し、前記成形ステップと前記型開きステップの間に、前記キャビティから前記ピンを離脱させる離脱ステップを有してもよい。
【0015】
また前記の目的を達成するために、本発明は、シャフトと、前記シャフトの基端にインサート成形によって固定された筒状のハブと、を備えるカテーテルであって、前記ハブは、該ハブの肉部分に残留応力を有し、且つ前記シャフトの先端と基端の間の所定位置における残留応力が、前記所定位置から前記ハブの軸方向にずれた位置における残留応力よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
さらに前記目的を達成するために、本発明は、シャフトと、前記シャフトの基端にインサート成形によって固定された筒状のハブと、を備えるカテーテルであって、前記ハブは、前記シャフトの先端と基端の間の所定位置において、前記ハブの軸心を基点とする線対象位置に、第1形状と、該第1形状とは異なる第2形状と、を有することが好ましい。
【0017】
具体的には、前記第2形状は、前記ハブの射出成形時に形成され表面から突出するゲート痕を有するとよい。
【0018】
また、前記ハブは、筒状のハブ本体と、前記ハブ本体の外周面から突出する一対のウイングと、を有し、前記一対のウイングは、前記所定位置における前記ハブの軸方向に直交する断面視で、前記残留応力が相互に異なっていてもよい。
【0019】
さらに、前記シャフトは、前記先端と前記基端の間で一方向に湾曲し、前記ハブは、筒状のハブ本体と、前記ハブ本体の外周面から突出する一対のウイングと、を有し、前記ウイングの少なくとも一方に前記シャフトの湾曲方向を示すマーカを有する構成でもよい。
【0020】
この場合、前記マーカは、前記シャフトの中心軸に対して前記シャフトの湾曲の外側と同じ側に配置されているとよい。
【0021】
或いは、前記マーカは、前記シャフトの中心軸に対して前記シャフトの湾曲の内側と同じ側に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るカテーテルの製造方法によれば、配置ステップにおいてゲートがシャフトの先端と基端の間となるようにシャフトを位置決めすることで、インサート成形時にシャフトが移動することを抑止することができる。すなわち、成形材料の射出時には、成形材料がゲートから射出されて高圧になるが、射出された成形材料はゲートから基端方向に積極的に流動する。このため、シャフトを先端方向に押し出す力が大幅に減少し、キャビティ内の所定位置にシャフトを維持してハブを成形することが可能となる。その結果、この製造方法で製造されたカテーテルは、品質が大幅に高まり、製造時の歩留まり等を向上することができる。
【0023】
また、本発明に係るカテーテルのハブは、インサート成形時にゲートが存在していた箇所の肉部分に大きな残留応力が生じる。すなわち、シャフトの先端と基端の間の所定位置における残留応力が、所定位置からハブの軸方向にずれた位置における残留応力よりも大きければ、ゲートがシャフトの先端と基端の間に位置していたことになる。従って、カテーテルは、インサート成形時にシャフトの移動が抑制されてハブが密着固定されるため、高い品質を有するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1Aは、本発明の第1実施形態に係るカテーテルの基端側を示す部分平面図である。
図1Bは、
図1Aのカテーテルの側面断面図である。
【
図2】
図2Aは、カテーテルの製造装置を示す側面断面図である。
図2Bは、第1成形型をパーテーション面から臨んだ平面図である。
【
図3】シャフトに対するゲートの配置位置を示す3次元座標図である。
【
図4】カテーテルの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6Aは、本発明の第2実施形態に係るカテーテルの製造装置の金型を示す側面断面図である。
図6Bは、第1成形型のゲート及びピンの位置を示す平面図である。
図6Cは、
図6Aの金型の型締め状態を示す側面断面図である。
【
図8】
図8Aは、変形例に係るカテーテルの製造装置の金型を示す側面断面図である。
図8Bは、
図8Aの製造装置の動作を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係るカテーテルは、患者の生体管腔内(例えば、血管、胆管、気管、食道、尿道、鼻腔、或いはその他の臓器等)に挿入されるインターベンション用の医療機器である。以下では、本発明の理解の容易化のため、まずカテーテルの構成を説明し、次にこのカテーテルの製造方法を説明する。
【0027】
図1A及び
図1Bに示すように、カテーテル10は、可撓性を有するシャフト12と、シャフト12の一端(基端)に設けられシャフト12よりも硬質性を有するハブ14と、ハブ14の先端に設けられるストレインリリーフ16と、を備える。シャフト12とハブ14は、本実施形態に係る製造方法によってインサート成形され、相互に一体化している。
【0028】
カテーテル10のシャフト12は、先端12a及び基端12bを有する長尺な管体に形成され、医療従事者等のユーザの操作下に、患者の外部から生体管腔内に挿入される。シャフト12の内側には、該シャフト12の軸方向に沿って内腔18が形成されている。内腔18は、シャフト12の先端12aに設けられた先端開口18aと、シャフト12の基端に設けられた基端開口18bと、にそれぞれ連通している。例えば、患者の治療時に、内腔18は、基端開口18bから供給された薬剤を先端方向に流動させ、この薬剤を先端開口18aから流出させる。
【0029】
カテーテル10のシャフト12は、適用する患者の体型、生体管腔の治療対象部位や検査対象等に対応する軸方向長さに形成されることが好ましい。シャフト12の軸方向長さは、特に限定されないが、例えば、300~3000mm、好ましくは1200~2800mm、より好ましくは1500~2400mm程度の範囲に設定される。
【0030】
また、シャフト12は、軸方向に沿って略一定の太さで延在している。シャフト12の外径は、特に限定されず、目的の生体管腔に挿入可能な太さに形成されればよい。例えば、シャフト12の外径は、0.5~3.0mm、好ましくは1.0~2.8mm、より好ましくは2.3~2.6mm程度の範囲に設定される。また、シャフト12の内径も、シャフト12の外径に応じて適切な寸法に設計されればよい。
【0031】
なお、シャフト12は、軸方向に沿って外径及び内径が変化していてもよい。例えば、シャフト12の内腔18にハブ14の中空部24が連通するカテーテル10は、カテーテル10の中心軸に対して角度を有するように基端方向へ向かって内径が大きくなるシャフト傾斜面(不図示)を、シャフト12の基端部の内周面に有してもよい。その場合、中空部24を構成するハブ14の内面には、中心軸に対してシャフト傾斜面がなす角度と同じ傾斜角度でシャフト傾斜面から連続するハブ傾斜面が設けられていてもよい。これにより、外径が大きい治療デバイスを、シャフト12に対して容易に挿入又は送出することができる。
【0032】
或いは、シャフト12の基端部は、カテーテル10の中心軸に対して角度が大きく設定され、ハブ14の内面に埋め込まれた形態でもよい。この場合、ハブ14の樹脂がシャフト12の内面に流入して、シャフト12の内層の基端部を部分的に覆うことができる。ハブ14の樹脂は、中心軸と平行になる部位まで流入してもよく、シャフト傾斜面の一部を覆ってもよく、或いはシャフト基端断面のみ覆ってもよい。さらに、カテーテル10の中心軸に対してシャフト傾斜面とハブ傾斜面は、それぞれ同じでもよく異なってもよい。
【0033】
また、シャフト12が、外層と、金属材料の補強体からなる中間層と、内層とで構成される場合に、それぞれの端部は基端部で一致してもよく、或いは外層の一部を除去して補強体が拡径するように広がったものでもよい。これによりシャフト12の基端部とハブ14の密着性が向上する。
【0034】
シャフト12を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂もしくはそれらのポリオレフィン系エラストマー、フッ素系樹脂もしくはフッ素系エラストマー、メタクリル樹脂、ポリフェニレンオキサイド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、環状ポリオレフィン、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミドもしくはポリアミド系エラストマー、ポリカーボネート、ポリアセタール、スチレン系樹脂もしくはスチレン系エラストマー、熱可塑性ポリイミド等があげられる。なお、シャフト12は、複数層で構成されてもよく、例えば、異なる樹脂材料からなる内層及び外層を有し、その間に金属材料からなるブレード等の中間層を有する構成でもよい。
【0035】
一方、カテーテル10のハブ14は、他の医療機器(他のカテーテル、シリンジ等)をカテーテル10に接続するコネクタ、又はカテーテル10の使用時にユーザが把持操作するための把持部として機能する。このため、ハブ14は、上述したようにシャフト12よりも硬質に形成され、またシャフト12よりも太く形成されている。
【0036】
本実施形態に係るハブ14は、シャフト12に固定されるハブ本体20と、ハブ本体20の外周面に設けられた一対のウイング22と、を有する。
【0037】
ハブ本体20は、中空部24を内部に有する円筒状に形成されている。ハブ本体20の基端側外周面には、径方向外側に突出し環状に周回するフランジ26が設けられている。フランジ26は、種々の医療機器を接続可能な規格に対応しており、その外周部にネジ山が形成されている。
【0038】
また、ハブ本体20の先端部には、ストレインリリーフ16を装着及び保持する被装着部28が設けられている。被装着部28周方向の一部又は外周には、ストレインリリーフ16を接続するための突起が設けられているとよい。なお、ハブ14は、ハブ本体20の先端部が徐々に柔軟になっていくことにより、ストレインリリーフ16の代替する機能を有していてもよい。
【0039】
ハブ本体20(被装着部28を含む)の内部の先端側は、シャフト12の基端側部分を密着固定する被固定部30となっている。被固定部30は、ハブ本体20の軸方向に沿って所定長さ延在し、インサート成形によってシャフト12に対し強固に密着する部分である。ハブ本体20の中空部24は、被固定部30の基端側に設けられ、ハブ本体20の軸方向に沿って延在している。中空部24の先端部分は、テーパ部24aに形成され、被固定部30に固定されたシャフト12の基端開口18bに連通している。中空部24の基端は、ハブ本体20の開口部24bに連通している。従って、ハブ14は、開口部24bを介して流入した液体を、シャフト12の基端開口18bに流動させる。
【0040】
ハブ14のウイング22は、ハブ本体20の外周面に一対で一体形成されている。一対のウイング22は、ハブ14の軸心を挟んだ反対位置(位相が180°ずれる位置)に配置されている。各ウイング22は、ハブ本体20の径方向外側に向かって短く突出する一方で、ハブ本体20の軸方向に沿って長く延在する板状に形成されている。なお、ウイング22は、ハブ本体20に一対設けられるだけでなく、1つ又は3以上設けられてもよい。またハブ14は、ウイング22を備えない構成でもよい。
【0041】
また、一方のウイング22の所定位置(平坦状の表面)には、ハブ14を射出成形した際における金型42のゲート74の位置が示されるゲート痕32が形成されている。ゲート痕32は、ウイング22の表面から僅かに突出する程度で、ユーザによるハブ14の操作に影響を及ぼすものではない。このゲート痕32は、後述するカテーテル10の製造方法によって、ウイング22の先端寄りに設けられる。なお、ハブ14のゲート痕32は、ユーザが非認識となるように、研磨等の適宜の処理によって消されていてもよい。
【0042】
ハブ14を構成する材料は、射出成形により充分な精度で成形されるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を適用するとよい。
【0043】
また、ストレインリリーフ16は、シャフト12とハブ14の接続部分に応力が集中することでシャフト12が折れ曲がるキンク現象を抑制するために設けられる。このストレインリリーフ16は、被装着部28に固定される基端から先端側に向かって、徐々に小径となる錐状に形成され、シャフト12が挿通する空間である挿通部34を内部に有する。挿通部34を構成する内面の基端には、被装着部28に連結可能な突起部36が形成されている。このストレインリリーフ16は、例えば、エラストマーやシリコン樹脂等の弾性材料により構成される。なお、カテーテル10は、ストレインリリーフ16を備えていなくてもよい。
【0044】
以上のカテーテル10は、製造において、先に成形したシャフト12を金型42に配置した状態で、ハブ14の成形材料を金型42内に射出することにより、シャフト12とハブ14を接合(インサート成形)する。次に
図2A及び
図2Bを参照して、インサート成形する製造装置40(射出成形装置)について、説明する。
【0045】
製造装置40は、ハブ14を成形するキャビティ44を内部に有する金型42と、キャビティ44に溶融材料を供給する射出部46と、金型42及び射出部46の動作を制御する制御部48と、を有する。制御部48は、図示しないプロセッサ、メモリ、入出力インターフェース等を有する周知のコンピュータにより構成される。
【0046】
金型42は、複数の成形型(例えば、第1成形型42a、第2成形型42b)を有する。金型42は、アクチュエータ49を介して、制御部48により動作制御可能に接続される。制御部48は、第1及び第2成形型42a、42bの一方又は両方が相互に近接及び接触することで型締めを行い、型締め状態で、射出部46により金型42内のキャビティ44に溶融材料を射出する。その後、溶融材料が凝固することでハブ14が成形される。また第1及び第2成形型42a、42bは、型締め状態から相互に離間することでキャビティ44を露出し、成形されたカテーテル10を取り出させる。
【0047】
キャビティ44は、型締め状態で、ハブ本体20を成形する第1空間50と、第1空間50に連なり一対のウイング22を成形する第2空間52とを有する。例えば、第1空間50及び第2空間52は、第1及び第2成形型42a、42bの各々に半分ずつ形成される。なお、ハブ14にウイング22を形成しない場合には、第2空間52が設けられていなくてもよい。また第1空間50は、基端側から先端側にかけて幅が狭くなるように、一部がスロープ状に形成されてもよい。
【0048】
また、第1及び第2成形型42a、42bの接触面には、シャフト12と、該シャフト12を支持する支持棒60とを配置可能な配置部54が形成されている。配置部54は、第1及び第2成形型42a、42bのそれぞれに設けられた断面視で半円状の溝であり、型締め状態で相互の溝同士が合わさることで、シャフト12及び支持棒60を固定する。
【0049】
支持棒60は、硬質且つ直線状に延在する中実部材であり、先端側においてシャフト12の内腔18に挿入される挿入部62と、挿入部62の基端に連なり第1空間50に配置される中子部64と、を有する。挿入部62は、その外径が内腔18の直径に対して一致又は若干大きく、或いは小さく形成されており、シャフト12の挿入状態でシャフト12を適度な係合力で支持する。中子部64は、金型42と協働してハブ14の中空部24を形成する部分を構成している。この中子部64は、挿入部62よりも太く形成され、また挿入部62と連結する先端部分がテーパ状に形成されている。
【0050】
支持棒60は、金型42と同様の金属材料により構成されるとよい。支持棒60は、型締め状態で、シャフト12と共に金型42の配置部54に配置されることで、その間の部分(挿入部62、中子部64)がキャビティ44の軸心を架橋するように位置決めされる。なお、軸心は第1成形型42a又は第2成形型42bのいずれか一方に偏って配置されてもよい。
【0051】
一方、射出部46は、溶融材料を貯留又は生成すると共に適宜の流動力で溶融材料を供給する供給源70と、金型42に設けられ供給源70から供給される溶融材料を流動させるランナ72と、ランナ72とキャビティ44を連通させるゲート74と、を有する。例えば、ランナ72は、第1成形型42aの外面からキャビティ44まで延在し、ゲート74は、このキャビティ44とランナ72の境界に設けられる。以下、ランナ72及びゲート74を合わせて流動部76という。
【0052】
また、本実施形態において、ゲート74は、第1成形型42aの第2空間52を臨む位置に設けられている。詳細には、ゲート74は、第2空間52を囲う金型42のパーテーション面に対向する平面部56に配置されている。
【0053】
そして、金型42においてシャフト12の配置側を先端側、支持棒60の中子部64の配置側を基端側とした場合、ゲート74は、キャビティ44に配置されるシャフト12の基端12bよりも先端側に設けられている。例えば、ゲート74は、シャフト12の基端12bよりも0.5~10mm、より好ましくは1~6mm程度先端側の範囲に位置する。換言すれば、ゲート74は、シャフト12の軸線上で見た場合に、シャフト12の先端12aと基端12bの間に配置される。
【0054】
さらに、シャフト12と流動部76(ランナ72及びゲート74)の配置関係について、
図3の3次元座標図を参照して説明する。インサート成形において、シャフト12は
図3中のX軸方向に沿って配置される。この場合、シャフト12の基端12bの中心が3次元座標のS0=(0、0、0)の位置にあり、シャフト12に接合されるハブ14の先端箇所が3次元座標のS1=(xs、0、0)の位置にあるとする。つまり、X軸上において0からxsまでの範囲は、シャフト12に対しハブ14が接合される部分である。
【0055】
このシャフト12の延在方向に対して金型42に設けられるゲート74の中心は、3次元座標のG=(xg、yg、zg)に位置する。そしてX軸上の座標点xgは0~xsの範囲内に位置し、且つY軸上の座標点yg及びZ軸上の座標点zgは、0以外に位置する(つまり(yg、zg)≠(0、0)となる)。換言すれば、ゲート74は、シャフト12が存在するX軸から、Y軸方向且つZ軸方向にオフセットした位置に配置されている。なお、ゲート74は、Y軸上の座標点yg≠0であれば、Z軸上の座標点zgは特に限定されず、zg=0となっていてもよい。
【0056】
また、ゲート74に連なるランナ72は、Z軸方向に沿って延在するように金型42に設けられる。すなわち、シャフト12とランナ72は、相互に離間した位置にあり、また側面視で相互の延在方向がねじれの位置となっている。換言すれば、流動部76の延在部分は、シャフト12の延在部分に対し、非接触且つねじれの位置にあって、ハブ14の成形材料である溶融材料をキャビティ44に吐出する。これにより、溶融材料の射出時に、溶融材料の射出方向にシャフト12が存在せず、ゲート74から射出した溶融材料は、キャビティ44を構成する内壁にあたった後にキャビティ44内に拡散してシャフト12に向かうことになる。その結果、溶融材料によるシャフト12の溶融が抑制される。特に
図3に示すように、本実施形態に係るシャフト12とランナ72は、相互に離間した位置にあり、また側面視で相互の延在方向が直交している。なお、金型42のパーテーション面は、
図3中のX-Y平面にあるだけでなく、型締めや型開きを邪魔しない範囲で
図3中の3次元(XYZ)空間内のあらゆる方向に設計され得る。つまり、パーテーション面と流動部76は相互に直交していなくてもよい。
【0057】
本実施形態に係るカテーテル10及びその製造装置40は、基本的には以上のように構成され、次にカテーテル10の製造方法について説明する。
【0058】
本実施形態に係るカテーテル10の製造では、シャフト12に対しハブ14のインサート成形を実施する。このため、製造方法では、まずシャフト12を得るシャフト提供ステップを行う(ステップS1)。例えば、公知のシャフト形成装置(不図示)を適用して管状に連続するシャフト12を形成してもよく、別途提供されたシャフト12を用いてもよい。
【0059】
シャフト提供ステップの後、提供されたシャフト12の内腔18に支持棒60の挿入部62を差し込み、製造装置40の金型42(第2成形型42b)の配置部54にこのシャフト12及び支持棒60を配置する配置ステップを行う(ステップS2)。これにより、第2成形型42bのパーテーション面(キャビティ44の軸心)を延在するようにシャフト12及び支持棒60が配置される。
【0060】
また、配置ステップにおいて、第2成形型42bの配置部54は、シャフト12及びハブ14の側面断面視で、シャフト12の基端12bを金型42のゲート74よりも基端側に位置させる。すなわち、シャフト12の基端12bよりも先端側(シャフト12の先端12aと基端12bの間)にゲート74が位置し、またシャフト12の延在方向と流動部76の延在方向とが相互にねじれの位置に配置される。
【0061】
配置ステップの後、シャフト12及び支持棒60が配置された第2成形型42bに対し、第1成形型42aを相対的に移動して金型42の型締めを行う(型締めステップ:ステップS3)。この型締めステップにより、シャフト12及び支持棒60が金型42に固定される。
【0062】
そして、型締めステップの完了後に、製造装置40は、射出部46を動作させ、ランナ72を通してゲート74からキャビティ44に溶融材料を射出する射出ステップを行う(ステップS4)。
図3に示すように、ゲート74は、第2空間52を臨んでおり、キャビティ44内に流入した溶融材料は、第2空間52を構成する金型42の内壁にあたってキャビティ44内に拡散する。このため、ゲート74から射出した溶融材料がシャフト12に直接当たることがなく、シャフト12の溶融が抑制される。
【0063】
また射出ステップにおいて、溶融材料は、キャビティ44に高圧且つ高速で射出される。ここで、従来の金型(例えば、特許文献1参照)では、ゲートがシャフトの基端よりも基端側に配置されていた。このため、キャビティに溶融材料が射出されると、溶融材料の圧力がシャフトを先端方向に押し出すように働き、支持棒に対してシャフトが先端方向に移動してしまうことがあった。そしてシャフトが移動した場合には、ハブから露出するシャフトの長さが変動する。
【0064】
これに対し、本実施形態に係る製造装置40は、シャフト12の基端12bよりも先端側にゲート74(流動部76)が位置する。このため、ゲート74から射出される溶融材料の圧力が基端方向に積極的に向かうようになり、支持棒60に対するシャフト12の相対移動を防ぐことができる。特に、ゲート74は、シャフト12の基端12bよりも1~3mm程度先端側の位置に設けられることで、キャビティ44内で溶融材料の圧力を均等に分散させて、第2空間52から第1空間50に溶融材料を満遍なく流動させることが可能である。従って、ゲート74から射出された溶融材料は、シャフト12を動かさずに、キャビティ44内にスムーズに充満する。
【0065】
射出ステップにおいて射出された溶融材料は、金型42内で凝固することにより、シャフト12に密着した状態で、ハブ14の形状に成形される(成形ステップ:ステップS5)。これによりシャフト12とハブ14が一体化した、図示しない成形後カテーテルが形成される。
【0066】
成形ステップの後、製造装置40は、第1成形型42aと第2成形型42bを型開きする型開きステップを実施する(ステップS6)。そして、インサート成形された成形後のカテーテルを取り出す。さらに、この成形後のカテーテルに対し、シャフト12の先端12aからストレインリリーフ16を挿入してハブ14の被装着部28に係合させることで、カテーテル10が完成する。
【0067】
以上の製造方法で製造されたカテーテル10のハブ14は、
図1Aに示すように、溶融材料を射出したゲート74に対応する位置(一方のウイング22の平面)に、ちょうどゲート痕32が表れる。このゲート痕32は、シャフト12の軸線上で見た場合に、シャフト12の基端12bよりも先端側(つまりシャフト12の先端12aと基端12bの間)に位置することになる。
【0068】
また射出成形時に、
図5Aに示すように、ゲート痕32が設けられた箇所のハブ14の軸方向に直交する断面視で、ハブ14を構成する成形材料の肉部分に残留応力(残留ひずみ)が生じる。このハブ14の残留応力は、製造後に、公知の計測手段(例えば、偏光計測装置やX線応力測定装置)により計測することで確認することが可能である。
【0069】
具体的には、
図5A中において、一対のウイング22のうち金型42のゲート74が無かった一方側の残留応力と、ゲート74があった他方側の残留応力とは、シャフト12の中心軸を線対象の基点として非対称となっている(相互に異なっている)。つまり、ゲート74が無かった一方のウイング22は、残留応力が突出端部側に向かうような第1形状80を有し、ゲート74があった他方のウイング22は、残留応力がゲート74から離れるように向かう第2形状82を有する。特に、ゲート74があった他方の残留応力は、他のハブ14の肉部分に比べて冷却が遅くなるので、残留応力が大きくなる。また上述したように、他方のウイング22には、第2形状82としてゲート痕32が形成されていてもよい。
【0070】
このゲート74があった所定位置のハブ14の肉部分に対して、
図5Bに示す所定位置からハブ14の軸方向にずれた位置のハブ14の肉部分は、ハブ本体20及び一対のウイング22が同形状でも、残留応力の差が小さい(概ね線対象の残留応力を有する)。また、溶融材料が射出されるゲート74から離れた位置では、分散された溶融材料がキャビティ44内をスムーズに流れることで、凝固時に残留応力が均等化されるため、ゲート74の位置に比べて残留応力も小さくなる。
【0071】
従って、インサート成形により成形されたハブ14は、製造後に肉部分の残留応力を計測することで、たとえゲート74が消えた状態になっていたとしても、ゲート74の位置を確認することが可能である。そして、上述した製造方法で製造されたハブ14は、測定において、残留応力が非対称で且つ大きい箇所がゲート74のあった位置を示すことになり、この位置は、シャフト12の先端12aと基端12bの間に存在することになる。
【0072】
以上のように、第1実施形態に係るカテーテル10の製造方法、及びカテーテル10は、以下の効果を奏する。
【0073】
カテーテル10の製造方法では、配置ステップにおいてゲート74がシャフト12の先端12aと基端12bの間となるようにシャフト12を位置決めすることで、インサート成形時にシャフト12が移動することを抑止することができる。すなわち、成形材料の射出時には、成形材料がゲート74から射出されて高圧になるが、射出された成形材料はゲート74から基端方向に積極的に流動する。このため、シャフト12を先端方向に押し出す力が大幅に減少し、キャビティ44内の所定位置にシャフト12を維持してハブ14を成形することが可能となる。その結果、この製造方法で製造されたカテーテル10は、品質が大幅に高まり、製造時の歩留まり等を向上することができる。
【0074】
そして、この製造方法で製造されたカテーテル10のハブ14は、インサート成形時にゲート74が存在していた肉部分に大きな残留応力が生じる。すなわちシャフト12の先端12aと基端12bの間の所定位置における残留応力が、所定位置からハブ14の軸方向にずれた位置における残留応力よりも大きければ、ゲート74がシャフト12の先端12aと基端12bの間に位置していたことになる。従って、カテーテル10は、インサート成形時にシャフト12の移動が抑制されてハブ14が密着固定されるため、高い品質を有するようになる。
【0075】
その結果、カテーテル10は、目的の長さのシャフト12を有する高品質なものとなる。よって、ユーザは、このカテーテル10を使用することで、治療や検査等を良好に行うことができる。
【0076】
また配置ステップにおいて、ランナ72の延在方向とシャフト12の延在方向がねじれの位置となっていることで、成形材料の射出時に、ゲート74から射出される成形材料がシャフト12に直進して直接当たることを防ぐことができる。従って、射出時におけるシャフト12の溶融を効果的に減らすことができ、カテーテル10の品質が一層高まる。
【0077】
さらに、製造方法では、シャフト12を第1空間50の軸に沿って配置することで、シャフト12に固定されるハブ本体20を良好に成形することができる。また、成形されたハブ14にウイング22が設けられていることで、ユーザの操作性を向上させることができる。
【0078】
またさらに、製造方法では、ランナ72の延在方向が第2空間52と交差していることで、ランナ72を流動した成形材料が第2空間52に射出され、キャビティ44の内壁にあたる。これにより射出された成形材料は、シャフト12の溶融等を抑えて、第2空間52から先端方向や基端方向に流動し、キャビティ44内に迅速に充填される。直角に交差するように配置することが好ましい。
【0079】
そして、製造されたカテーテル10は、ハブ14の所定位置において第1形状80と、第1形状80とは異なる第2形状82とを有することで、インサート成形時のゲート74の位置をより簡単に確認させることができる。
【0080】
特に、カテーテル10は、ハブ14の所定位置においてゲート痕32があることで、インサート成形時のゲート74の位置をより一層簡単に確認させることができる。
【0081】
さらに、カテーテル10は、一対のウイング22の一方と他方とで残留応力の大きさ及び方向が異なることで、ウイング22の一方にインサート成形時のゲート74の位置があることを確認させることができる。また、ハブ14は、ハブ本体20の先端の厚みを基端の厚みよりも小さくしてスロープ状に形成することで、指で挟んでもすべらずに力を伝えやすくなる。
【0082】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、カテーテル10のハブ14の形状は、任意に設計することができる。一例として、カテーテル10は、一対のウイング22を備えないハブ(ハブ本体20のみで構成されたもの)を有していてもよい。この場合でも、
図3に示すように、シャフト12の先端12aと基端12bの間に金型42のゲート74を位置させて、インサート成形を行うことができる。さらに、製造装置40は、ハブ本体20のみで構成されたハブ14においても、シャフト12の延在方向に対してねじれの位置に流動部76(ランナ72及びゲート74)を配置することができる。
【0083】
また他の例として、ハブ14は、ハブ本体20に別のポート(不図示)を一体成形した構成とすることもできる。この場合、シャフト12の延在方向に対してねじれの位置に流動部76(ランナ72及びゲート74)を配置するため、例えば、別のポートを形成する空間にゲート74を位置させるとよい。
【0084】
また、カテーテル10は、
図1B中の2点鎖線で示すように、ハブ14から露出されているシャフト13が先端12aと基端12bの間で一方向に湾曲している形状でもよい。なお、
図1B中においてシャフト13は、先端12a付近のみが湾曲しているが、例えば、シャフト13は、軸方向全長(先端12aと基端12bの間)の少なくとも半分以上が一方向に湾曲している構成とすることができる。
【0085】
上記のように構成されたシャフト13に対して、ハブ14に形成されたゲート痕32(
図1A参照)はシャフト13の湾曲方向を示すマーカとして機能することができる。つまり
図1B中では、ゲート痕32(マーカ)は、シャフト13の中心軸に対してシャフト13の湾曲の外側と同じ側に配置されている。このように構成されたカテーテル10は、ユーザの使い勝手を向上させることができる。すなわちユーザは、シャフト13を患者の体内に挿入した状態でも、手元側のハブ14のゲート痕32を確認することで、シャフト13の湾曲方向を良好に認識することができる。
【0086】
なお、シャフト13の湾曲方向を示すマーカは、ゲート痕32に限定されず、ゲート痕32を切削して凹部等を形成してもよく、ハブ14の成形時において適宜の形状(凹部、凸部)を一体成形してもよい。或いは、マーカは、別加工(レーザ加工や印刷等)でハブ14に設けてもよい。
【0087】
また、ゲート痕32(マーカ)は、シャフト13の中心軸に対してシャフト13の湾曲の内側と同じ側に配置されていてもよい。つまり、
図1B中におけるシャフト13の湾曲方向と逆方向(紙面上方向)にシャフトが湾曲していてもよい。ユーザは、マーカの有無とシャフト13の湾曲方向の関係を認識していれば、体内にシャフト13が挿入された状態で、ハブ14を視認することによりシャフト13の湾曲方向を把握することができる。
【0088】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係るカテーテル10Aの製造方法、及びこの製造方法で製造されたカテーテル10Aについて説明する。なお、以降の説明において、上述の実施形態と同じ構成又は同じ機能を有する要素には、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0089】
第2実施形態に係るカテーテル10Aの製造装置40Aは、
図6A~
図6Cに示すように、金型42Aのキャビティ44Aを構成する内壁に、キャビティ44Aの軸心部に向かって突出するピン90を設けた点で、第1実施形態に係る製造装置40と異なる。ピン90は、第1及び第2成形型42a、42bのそれぞれに(すなわち2つ)設けられ、キャビティ44Aの軸心部に配置されるシャフト12の基端12bよりも先端側に位置して相互に対向している。例えば、ピン90は、シャフト12の基端12bよりも1~3mm程度先端側の位置に設けられるとよい。或いは、ピン90は、シャフト12の軸線上で見た場合に、金型42Aのゲート74と重なる位置に配置されてもよい。
【0090】
そして、第2成形型42bのピン90は、シャフト12がキャビティ44Aに配置された配置ステップにおいて、シャフト12に接触して該シャフト12を支持する。同様に、第1成形型42aのピン90は、型締めステップの実施に伴い、シャフト12に接触して第2成形型42bのピン90と協働してシャフト12を挟み込む。これにより各ピン90は、型締め状態でシャフト12を押さえることになり、ゲート74から成形材料を射出した際にシャフト12の移動を効果的に防いで、カテーテル10の品質をさらに高めることができる。なお、ピン90は、金型42A(例えば、第2成形型42b)の内壁に1つ設けられているだけでもよい。1つのピン90は、支持棒60と協働してシャフト12を押さえることが可能である。またピン90は、金型42Aに3以上設けられてもよく、第1成形型42aと第2成形型42bで数が異なってもよい。
【0091】
そして、この製造装置40Aで製造されたハブ14Aには、
図7A及び
図7Bに示すように、キャビティ44Aに設けられたピン90に対応する位置に凹部92が形成されている。この凹部92は、成形されたハブ14Aの外周面からシャフト外面まで到達する貫通孔であり、ハブ14A内のシャフト12を確認可能な窓として機能する。すなわち、凹部92を通してシャフト12を視認できた場合には、シャフト12が先端方向に移動していないことを認識することができる。その一方で、凹部92を通してシャフト12が視認できない場合には、シャフト12が先端方向に移動したこと、すなわちカテーテル10Aの成形不良であることを認識することができる。
【0092】
また、第2実施形態の変形例として、製造装置40Bは、
図8A及び
図8Bに示すように、金型42Bに対してシャフト12を支持するピン90を進退自在に備えていてもよい。例えば、ピン90は、キャビティ44Bの軸心に向かって突出し合い、射出ステップにおいてシャフト12を押さえる。これにより、溶融材料の射出時にシャフト12の移動が抑制され、ハブ14Aの側面に凹部92を形成する。
【0093】
そして、成形ステップ後に型開きステップを実施する前には、複数のピン90をそれぞれキャビティ44Bから金型42Bの内壁に後退(離脱)させる離脱ステップを行う(
図4中のステップS6α参照)。この離脱ステップによって、金型42Bの型開き前に、ハブ14Aの凹部92からピン90をスムーズに抜くことができる。これにより型開きステップの実施に伴い、成形されたハブ14Aをキャビティ44Bから容易に離型させることができる。
【0094】
なお、ピン90を進退自在とした構成では、
図4中のステップS4αに示すように、ピン90の後退タイミング(離脱ステップ)を溶融材料の射出中に実施してもよい。すなわち、溶融材料の射出初期には、ピン90によりシャフト12を押さえる一方で、溶融材料の射出中の適宜のタイミングでピン90が後退することで、ピン90があった位置に溶融材料が流れ込んで、ハブ14に凹部92を形成しない構成(
図1に示す形状)とすることができる。
【0095】
また、他の変形例として、金型42Aは、
図6C中の2点鎖線で示すように、シャフト12の軸方向に沿って複数並ぶようにピン90を備えていてもよい。複数並んだピン90は、その一部がシャフト12の基端12bよりも基端側に配置される構成とすることができる。これにより、インサート成形されたハブ14Aには、軸方向に沿って複数の凹部92が設けられる(
図7A及び
図7B中の2点鎖線参照)。従って例えば、シャフト12を支持していなかった基端側の凹部92を介してシャフト12を視認した場合には、シャフト12が基端方向に移動したこと、すなわち成形不良であることを認識することができる。
【0096】
なお、ハブ14Aに設けられる凹部92(すなわち、金型42Aのピン90)の数や位置は、特に限定されるものではなく、種々の構成をとり得る。例えば、ピン90は、金型42Aのパーテーション面に対して斜め又は水平に突出する構成でもよく、また第1成形型42aと第2成形型42bとで(ハブ14Aの両面で)相互に異なる数で設けられてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10、10A…カテーテル 12、13…シャフト
12a…先端 12b…基端
14、14A…ハブ 20…ハブ本体
22…ウイング 32…ゲート痕
40、40A、40B…製造装置 42、42A、42B…金型
44、44A、44B…キャビティ 50…第1空間
52…第2空間 72…ランナ
74…ゲート 76…流動部
80…第1形状 82…第2形状
90…ピン 92…凹部