(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】培地抜出機構を有する培養装置及びこの培養装置の培地の交換方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/12 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
C12M1/12
(21)【出願番号】P 2018188950
(22)【出願日】2018-10-04
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹マルチミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好一
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-188413(JP,A)
【文献】特開2016-021908(JP,A)
【文献】特開平01-199584(JP,A)
【文献】特開2003-235539(JP,A)
【文献】特開平04-325083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養物と培地とが容れられる培養容器と、
該培養容器内に設けられた、培養物は通過せず、培地のみを通過するろ過膜と、該ろ過膜によりろ過された培地を貯留可能な部屋とよりなる培地抜出室と、
前記ろ過膜の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の高さより上に前記培地抜出室内の液面を上昇させる液面上昇手段と、
該培地抜出部内の、前記ろ過膜によりろ過された培地を抜出す
培地抜出手段とよりな
り、
前記ろ過された培地を貯留可能な部屋は、上下が開口した上下方向に延びる筒状の筒体部よりなり、前記ろ過膜は、前記筒体部の下部を塞ぐように構成され、
前記液面上昇手段により、前記ろ過膜の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の高さより上に前記培地抜出室内の液面を上昇させ、前記ろ過された培地を抜き出し交換するように構成したことを特徴とする培地抜出機構を有する培養装置。
【請求項2】
前記液面上昇手段は、前記培養容器内に培地を供給する培地供給手段よりなることを特徴とする請求項1に記載の培地抜出機構を有する培養装置。
【請求項3】
前記液面上昇手段は、
前記培養容器内の、前記培地抜出室を除く前記培養容器内に、所望量容れられる内容物の液面よりも上の空間に形成された培養容器側空間部を気密になるよう前記培養容器を形成すると共に、該培養容器側空間部内に、体積が膨張又は収縮可能な膨張収縮手段を設け、
また、前記培地抜出室内の、前記ろ過膜よりも上の空間に形成された培地抜出室側空間部
の上端開口部を密閉して前記培地抜出室を形成する
と共に、前記培地抜出室の下端に、常時、培養容器内の内容物の液面よりも下方に延びる所望の長さの延長筒体部を形成し、
前記体積膨張収縮手段より体積を膨張させて、前記培養容器側空間部の気圧を、前記培地抜出室側空間部内の気圧より高めることにより、前記培地抜出室内の液面を上昇させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の培地抜出機構を有する培養装置。
【請求項4】
前記膨張収縮手段は、前記培養容器の天井部の開口部を貫通して垂下した、上下動する駆動軸と、
該駆動軸と、前記培養容器とを気密に連結された、前記開口部を気密に塞ぐ伸縮自在なベローズとよりなることを特徴とする請求項3に記載の培地抜出機構を有する培養装置。
【請求項5】
前記駆動軸の下端に撹拌翼が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の培地抜出機構を有する培養装置。
【請求項6】
前記液面上昇手段は、前記培養容器内に設けられた、上下動する駆動軸が設けられ、
該駆動軸に前記培地抜出室が固定されていることよりなることを特徴とする請求項1に記載の培地抜出機構を有する培養装置。
【請求項7】
前記駆動軸の下端に撹拌翼が設けられたことを特徴とする請求項6に記載の培地抜出機構を有する培養装置。
【請求項8】
培養物と培地とが容れられる培養容器と、
該培養容器内に設けられた、培養物は通過せず、培地のみを通過するろ過膜と、該ろ過膜によりろ過された培地を貯留可能な部屋とよりなる培地抜出室と、
前記ろ過膜の下端の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の下端より上に前記培地抜出室内の液面を上昇させる液面上昇手段と、
該培地抜出部内の、前記ろ過膜によりろ過された培地を抜出す培地抜出手段とよりなり、
前記液面上昇手段は、前記培養容器内に設けられた、上下動する駆動軸が設けられ、該駆動軸に前記培地抜出室が固定されて構成され、
該培地抜出室は、上端開口が下端開口よりも大となる、上下が開口した円錐台状に形成されたろ過膜によりなり、前記培地抜出室の下端開口部を前記駆動軸に液密に固定して形成され、
前記駆動軸が下方に移動することにより、前記培地抜出室が下方に移動し、前記ろ過膜の下端の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の高さより上に、相対的に、前記培地抜出室内の液面を上昇させ、前記培地抜出手段により、前記ろ過された培地を抜き出し交換するように構成したことを特徴とする培地抜出機構を有する培養装置。
【請求項9】
培養物と培地とが容れられる培養容器と、該培養容器内に設けられた、培養物は通過せず、培地のみを通過するろ過膜と、該ろ過膜によりろ過された培地を貯留可能な部屋とよりなる培地抜出室と、前記ろ過膜の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の高さより上に前記培地抜出室内の液面を上昇させる液面上昇手段と、該培地抜出部内の、前記ろ過膜によりろ過された培地を抜出す培地抜出手段とよりなり、前記ろ過された培地を貯留可能な部屋は、上下が開口した上下方向に延びる筒状の筒体部よりなり、前記ろ過膜は、前記筒体部の下部を塞ぐように構成された培養装置の
前記培養容器内に、前記ろ過膜の高さまで、または、下の位置まで入れられた培養物と培地とからなる内容物を培養する工程と、
前記液面上昇手段により、前記ろ過膜の高さより上に前記培地抜出室内の液面を上昇させる工程と、
前記培地抜出手段により、前記培地抜出室内のろ過された培地を抜き出し交換する工程とよりなることを特徴とする培養装置の培地の交換方法。
【請求項10】
前記液面上昇手段は、前記培養容器内に培地を供給する培地供給手段よりなることを特徴とする請求項9に記載の培養装置の培地の交換方法。
【請求項11】
前記液面上昇手段は、
前記培養容器内の、前記培地抜出室を除く前記培養容器内に、所望量容れられる内容物の液面よりも上の空間に形成された培養容器側空間部を気密になるよう前記培養容器を形成すると共に、該培養容器側空間部内に、体積が膨張又は収縮可能な膨張収縮手段を設け、
また、前記培地抜出室内の、前記ろ過膜よりも上の空間に形成された培地抜出室側空間部の上端開口部を密閉して前記培地抜出室を形成すると共に、前記培地抜出室の下端に、常時、培養容器内の内容物の液面よりも下方に延びる所望の長さの延長筒体部を形成し、
前記体積膨張収縮手段より体積を膨張させて、前記培養容器側空間部の気圧を、前記培地抜出室側空間部内の気圧より高めることにより、前記培地抜出室内の液面を上昇させることを特徴とする請求項9に記載の培養装置の培地の交換方法。
【請求項12】
培養物と培地とが容れられる培養容器と、該培養容器内に設けられた、培養物は通過せず、培地のみを通過するろ過膜と、該ろ過膜によりろ過された培地を貯留可能な部屋とよりなる培地抜出室と、前記ろ過膜の下端の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の下端より上に前記培地抜出室内の液面を上昇させる液面上昇手段と、該培地抜出部内の、前記ろ過膜によりろ過された培地を抜出す培地抜出手段とよりなり、前記液面上昇手段は、前記培養容器内に設けられた、上下動する駆動軸が設けられ、該駆動軸に前記培地抜出室が固定されて構成され、該培地抜出室は、上端開口が下端開口よりも大となる、上下が開口した円錐台状に形成されたろ過膜によりなり、前記培地抜出室の下端開口部を前記駆動軸に液密に固定して形成された培養装置の
前記培地抜出室の下端の高さまで、または、下の位置まで容れられた培養物と培地とからなる内容物を培養する工程と、
前記液面上昇手段により、前記駆動軸を下方に移動して、前記培地抜出室を下方に移動させて、相対的に、前記培地抜出室内の液面を上昇させる工程と、
前記培地抜出手段により、前記ろ過された培地を抜き出し交換するように構成したことを特徴とする培養装置の培地の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養容器内に容れられた、例えば、細胞などの培養物と培養液等の培地からなる内容物から、該培養容器内の培地のみを連続して該培養容器外に抜出できる培地抜出機構を有する培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
培養容器内で、例えば、動植物の細胞や菌体等の培養物を高密度で培養するためには、該培養物を培養液等の培地内で培養を行いながら、フレッシュな培地と老廃物を含む培地との交換が必要となる。
【0003】
従来の培養装置においては、例えば、
図7に示すよう、培養容器aに、培地供給管bと培地排出管cとを設けると共に、該培地排出管cの下端に、前記培養容器a内の内容物中、培養物は通過せず、培地のみを通過するろ過膜d(フィルタ)を設け、例えば、上下動撹拌手段eにより、前記培養容器a内を撹拌しながら、培養物を培養した後、前記培地排出管cを吸引ポンプ等により吸引し、前記ろ過膜dを介して、前記培養容器a中の老廃物を含む培地のみを、前記培養容器a外に抜出し、また、前記培地供給管bからフレッシュな培地を前記培養容器a内に供給するようにして、培地の交換を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の培養装置においては、培地を吸引によりろ過しているので、培養物がろ過膜に吸い込まれ、詰まりが発生し、定期的に、培地の吸引を停止して、逆洗を行う必要があり、連続した培地の抜出ができないという問題点があった。
【0006】
本発明はこれらの問題点を解消する培養装置を提供できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成すべく、本発明の培地抜出機構を有する培養装置は、培養物と培地とが容れられる培養容器と、該培養容器内に設けられた、培養物は通過せず、培地のみを通過するろ過膜と、該ろ過膜によりろ過された培地を貯留可能な部屋とよりなる培地抜出室と、前記ろ過膜の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の高さより上に前記培地抜出室内の液面を上昇させる液面上昇手段と、該培地抜出部内の、前記ろ過膜によりろ過された培地を抜出す培地抜出手段とよりなり、前記ろ過された培地を貯留可能な部屋は、上下が開口した上下方向に延びる筒状の筒体部よりなり、前記ろ過膜は、前記筒体部の下部を塞ぐように構成され、前記液面上昇手段により、前記ろ過膜の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の高さより上に前記培地抜出室内の液面を上昇させ、前記ろ過された培地を抜き出し交換するように構成したことを特徴とする。
また、本発明の培地抜出機構を有する培養装置の培地の抜出方法は、培養物と培地とが容れられる培養容器と、該培養容器内に設けられた、培養物は通過せず、培地のみを通過するろ過膜と、該ろ過膜によりろ過された培地を貯留可能な部屋とよりなる培地抜出室と、前記ろ過膜の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の高さより上に前記培地抜出室内の液面を上昇させる液面上昇手段と、該培地抜出部内の、前記ろ過膜によりろ過された培地を抜出す培地抜出手段とよりなり、前記ろ過された培地を貯留可能な部屋は、上下が開口した上下方向に延びる筒状の筒体部よりなり、前記ろ過膜は、前記筒体部の下部を塞ぐように構成された培養装置の前記培養容器内に、前記ろ過膜の高さまで、または、下の位置まで入れられた培養物と培地とからなる内容物を培養する工程と、
前記液面上昇手段により、前記ろ過膜の高さより上に前記培地抜出室内の液面を上昇させる工程と、前記培地抜出手段により、前記培地抜出室内のろ過された培地を抜き出し交換する工程とよりなることを特徴とする。
【0008】
また、前記液面上昇手段は、前記培養容器内に培地を供給する培地供給手段よりなることを特徴とする。
【0009】
また、前記液面上昇手段は、前記培養容器内の、前記培地抜出室を除く前記培養容器内に、所望量容れられる内容物の液面よりも上の空間に形成された培養容器側空間部を気密になるよう前記培養容器を形成すると共に、該培養容器側空間部内に、体積が膨張又は収縮可能な膨張収縮手段を設け、また、前記培地抜出室内の、前記ろ過膜よりも上の空間に形成された培地抜出室側空間部の上端開口部を密閉して前記培地抜出室を形成すると共に、前記培地抜出室の下端に、常時、培養容器内の内容物の液面よりも下方に延びる所望の長さの延長筒体部を形成し、前記体積膨張収縮手段より体積を膨張させて、前記培養容器側空間部の気圧を、前記培地抜出室側空間部内の気圧より高めることにより、前記培地抜出室内の液面を上昇させるように構成したことを特徴とする。
【0010】
また、前記膨張収縮手段は、前記培養容器の天井部の開口部を貫通して垂下した、上下動する駆動軸と、該駆動軸と、前記培養容器とを気密に連結された、前記開口部を気密に塞ぐ伸縮自在なベローズとよりなることを特徴とする。
また、前記駆動軸の下端に撹拌翼が設けられたことを特徴とする。
【0011】
また、前記液面上昇手段は、前記培養容器内に設けられた、上下動する駆動軸が設けられ、該駆動軸に前記培地抜出室が固定されていることよりなることを特徴とする。
また、前記駆動軸の下端に撹拌翼が設けられたことを特徴とする。
また、本発明の培地抜出機構を有する培養装置は、培養物と培地とが容れられる培養容器と、該培養容器内に設けられた、培養物は通過せず、培地のみを通過するろ過膜と、該ろ過膜によりろ過された培地を貯留可能な部屋とよりなる培地抜出室と、前記ろ過膜の下端の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の下端より上に前記培地抜出室内の液面を上昇させる液面上昇手段と、該培地抜出部内の、前記ろ過膜によりろ過された培地を抜出す培地抜出手段とよりなり、前記液面上昇手段は、前記培養容器内に設けられた、上下動する駆動軸が設けられ、該駆動軸に前記培地抜出室が固定されて構成され、該培地抜出室は、上端開口が下端開口よりも大となる、上下が開口した円錐台状に形成されたろ過膜によりなり、前記培地抜出室の下端開口部を前記駆動軸に液密に固定して形成され、前記駆動軸が下方に移動することにより、前記培地抜出室が下方に移動し、前記ろ過膜の下端の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の高さより上に、相対的に、前記培地抜出室内の液面を上昇させ、前記培地抜出手段により、前記ろ過された培地を抜き出し交換するように構成したことを特徴とする。
また、培地抜出機構を有する培養装置の培地の交換方法は、培養物と培地とが容れられる培養容器と、該培養容器内に設けられた、培養物は通過せず、培地のみを通過するろ過膜と、該ろ過膜によりろ過された培地を貯留可能な部屋とよりなる培地抜出室と、前記ろ過膜の下端の高さと同じ、または、下から、前記ろ過膜の下端より上に前記培地抜出室内の液面を上昇させる液面上昇手段と、該培地抜出部内の、前記ろ過膜によりろ過された培地を抜出す培地抜出手段とよりなり、前記液面上昇手段は、前記培養容器内に設けられた、上下動する駆動軸が設けられ、該駆動軸に前記培地抜出室が固定されて構成され、該培地抜出室は、上端開口が下端開口よりも大となる、上下が開口した円錐台状に形成されたろ過膜によりなり、前記培地抜出室の下端開口部を前記駆動軸に液密に固定して形成された培養装置の前記培地抜出室の下端の高さまで、または、下の位置まで容れられた培養物と培地とからなる内容物を培養する工程と、前記液面上昇手段により、前記駆動軸を下方に移動して、前記培地抜出室を下方に移動させて、相対的に、前記培地抜出室内の液面を上昇させる工程と、前記培地抜出手段により、前記ろ過された培地を抜き出し交換するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、培養容器内の培地のみを連続して該培養容器外に抜出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1の培地抜出機能を有した培養装置の縦断面図である。
【
図2】本発明の実施例1の培地抜出機能を有した培養装置の縦断面図である。
【
図3】本発明の実施例2の培地抜出機能を有した培養装置の縦断面図である。
【
図4】本発明の実施例2の培地抜出機能を有した培養装置の縦断面図である。
【
図5】本発明の実施例3の培地抜出機能を有した培養装置の縦断面図である。
【
図6】本発明の実施例3の培地抜出機能を有した培養装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0015】
【0016】
1は、本発明の培養装置を示し、2は、該培養装置1の培養容器であり、該培養容器2には、例えば、動植物の細胞や菌体等の培養物と、培養液等の培地とが容れられている。
【0017】
また、前記培養容器2内には、例えば、該培養容器内2の培養物と培地とからなる内容物を撹拌する撹拌手段が設けられ、例えば、
図1に示すように、撹拌翼が駆動軸方向に上下動する上下動撹拌装置3が設けられる。
【0018】
なお、前記撹拌手段として、撹拌翼が駆動軸周りに回転する回転撹拌装置を用いてもよく、また、撹拌手段を省略してもよい。
【0019】
4は、培地抜出室を示し、該培地抜出室4は、培養物は通過せず、培地のみを通過するろ過膜と、該ろ過膜によりろ過された培地を貯留可能な部屋とよりなり、該培地抜出室4は、例えば、上下が開口した上下方向に延びる筒状の筒体部4aと、該筒体部4a内の下端を塞ぐ、培養物は通過せず、培地のみを通過するろ過膜(フィルタ)5とよりなり、前記培養容器2内の上部に固定される。
【0020】
なお、前記ろ過膜5の位置は、例えば、前記培養容器2内に、所望量容れられる内容物の液面高さと同じ高さ、あるいは、それよりも上に設定される。
【0021】
6は、前記培地抜出室4外の培養容器2内に、例えば、フレッシュな培地を供給するための培地供給手段を示す。
【0022】
該培地供給手段6は、例えば、前記培養容器2外から、前記培養容器2の天井部2aを貫通して、前記培養容器2内の下方まで延びて形成された培地供給管7と、前記培地供給管7に接続された、培地が貯められたタンク8と、該タンク8又は前記培地供給管7に接続された、前記タンク8内の培地を、前記培養容器2内に供給するポンプ9と、該ポンプ9を駆動して、所望量の培地を前記培養容器2内に供給するよう制御する制御装置10とよりなり、該培地供給手段6により、所望量の培地等が、前記培養容器2内に供給されるようになる。
【0023】
そして、前記培地供給手段6により、前記培養容器2内の内容物の液面を高めることにより、前記培地抜出室4内の内容物の液面を高めることができるので、後述するように、該培地供給手段6が、前記培地抜出室4内の内容物の液面上昇手段を形成し、そして、該培地供給手段6により、前記培地抜出室4内に前記ろ過膜5を介して、培地のみを浸入させることができ、連続して、培地を抜出せるようになる。
【0024】
11は、前記培地抜出室4内に浸入した培地を、前記培養容器2外に抜出す培地抜出手段を示し、該培地抜出手段11は、例えば、一端が、前記ろ過膜5の下面の下側から、前記ろ過膜5に形成された開口部5aに液密に連結して設けられ、他端が、前記培養容器2の壁を貫通して、前記培養容器2の外部に延びて形成された培地排出管12よりなる。
【0025】
また、前記培地排出管12は、例えば、前記培地抜出室4内に、前記ろ過膜5を介して浸入した培地が、前記開口部5aから、自由落下により、下方に流れるように、前記培地排出管12の他端は、前記一端よりも低くなるように形成される。
【0026】
なお、前記培地排出管12は、重力を利用して、培地を排出する方法であるが、例えば、後述する実施例3のように、前記培地抜出室4の上部から、前記培地抜出室4内に、培地排出管(図示せず)を垂下して、ポンプ等を利用して、培地抜出室4内の培地を吸い上げて、前記培養容器2外に抜出すようにしても良い。
【0027】
また、前記上下動撹拌装置3は、例えば、前記培養容器2内に垂設された駆動軸13と、該駆動軸13を上下方向に往復動させる往復動装置(図示せず)と、前記駆動軸13の下端に設けられた、例えば、楕円形状の撹拌翼14とよりなり、該駆動軸14は、前記培養容器2の天井部2aの中央の開口部15を貫通して、前記培養容器2内に挿入される。
【0028】
なお、前記往復動撹拌装置3の撹拌翼14の往復動(振動)は、超振動撹拌のような高周波数による振動ではなく、例えば、5Hz以下、好ましくは、2Hz以下の撹拌翼14の上下動に基づく、低せん断作用により往復動させるようにする。
【0029】
なお、3aは、前記駆動軸13を前記培養容器2に支持するための、前記開口部15に設けられた、駆動軸シール部又はスラスト軸受部などの支持部を示す。
【0030】
次に、本発明の培養装置の作動及びその効果について説明する。
【0031】
例えば、前記培地供給手段6の培地供給管7から、培養物と培地との内容物を、前記培養容器2内に供給し、例えば、前記培地抜出室4のろ過膜5の高さまで容れられる。なお、前記供給される内容物の液面は、ろ過膜5よりも下の位置であってもよい。
【0032】
そして、前記培養容器2内の内容物を、例えば、前記撹拌手段により撹拌しながら、所望の時間、培養物を培養する。そして、フレッシュな培地と老廃物を含む培地とを培地交換をするために、前記培養容器2内の内容物を前記上下動撹拌装置3により撹拌しながら、又は、撹拌を停止した後、前記培地供給手段6により、所望量の培地を前記培養容器2内に供給する。
【0033】
前記培養容器2内に、前記ろ過膜5の高さより高い位置まで、培地が容れられると、前記培地抜出室4内の培地の液面は、前記培養容器2(培地抜出室を除く)内の内容物の液面と同じ高さになるように作用するため、
図2に示すように、培地が前記ろ過膜5を通過して、前記培地抜出室4内に浸入するようになる。
【0034】
すなわち、培地抜出室4の液面上昇手段である培地供給手段6により培地を供給することにより、培地をろ過膜5を通じてろ過させることができるようになる。
【0035】
そして、該培地抜出室4に浸入した培地は、前記ろ過膜5の開口部5aから、自由落下により、前記培地排出管12内に流れ、前記培養容器2外に排出される。そして、前記培養容器2内の液面と前記培地抜出室4内の液面とが同じ高さになるまで、すなわち、前記ろ過膜5の開口部5aの高さになるまで、培地がろ過され、培養容器2外に抜出するようになる。
【0036】
前記ろ過された培地は、液体の上昇圧力により、前記培地抜出室4内に浸入するものであって、吸引により前記培地抜出室4内に浸入させるものではないので、培養物が、ろ過膜5に吸い込まれるようなことがなく、また、ろ過膜5の下面に当接した培養物は、自然に下方に沈んでいき、ろ過膜5が目詰まりする事はない。
【0037】
なお、前記培地抜出室4内の培地を、上方から吸引する場合でも、培地を吸引によりろ過膜5を通過させるものではないので、ろ過膜5が目詰まりする事はない。
【0038】
従って、目詰まりしないので、前記培地供給手段6により、前記培養容器2内に培地を連続して供給することにより、逆洗せずに、連続して、培地の交換を行うことができるようになる。
【実施例2】
【0039】
本発明の実施例2においては、前記実施例1の培養装置1において、前記培地抜出室4内の液体の液面上昇手段として、前記培地供給手段6を用いる代わりに、前記培養容器2内の、前記培地抜出室4を除く前記培養容器2内に所望量容れられる内容物の液面よりも上の空間に形成される培養容器側空間部を気密に形成し、該培養容器側空間部内に、体積が膨張又は収縮可能な体積膨張収縮手段を設けると共に、前記培地抜出室4内の、前記ろ過膜5よりも上の空間に形成される培地抜出室側空間部を気密し形成するようにする。
【0040】
該液面上昇手段として、例えば、
図3に示すように、前記培養容器2内の、前記培地抜出室4を除く前記培養容器2内の内容物の液面よりも上の空間に形成される培養容器側空間部18を気密に形成すると共に、該空間部18に、体積が膨張又は収縮可能な体積膨張収縮手段19を設け、また、前記培地抜出室4の筒体部4aの上端開口を天井部16により密閉すると共に、前記培地抜出室4の筒体部4aの下端に、下方に延びる所望の長さの延長筒体部17を形成し、該培地抜出室4内の、前記ろ過膜5よりも上の空間に形成される培地抜出室側空間部20を気密に形成する。
【0041】
そして、前記体積膨張収縮手段19により体積を膨張させて、前記培養容器側空間部18の気圧を、前記培地抜出室側空間部20内の気圧よりも高めることにより、前記培地抜出室4内の液体の液面を上昇させるようにする。
【0042】
なお、前記延長筒体部17は、前記培養容器2内の液面が、前記ろ過膜5よりも下がった場合でも、前記培地抜出室側空間20内を、前記培養容器側空間部18に対して気密にするために設けられる。
【0043】
なお、前記体積膨張収縮手段19は、例えば、前記上下動駆動装置3と、該上下動撹拌装置3の駆動軸13と前記培養容器2の天井部2aと気密に連結した、前記天井部2aの開口部15を気密に塞ぐ伸縮自在なベローズ21とにより構成する。
【0044】
また、実施例2の前記培地抜出室4内に浸入した培地を、前記培養容器2外に抜出す培地抜出手段は、実施例1の培地抜出手段11と同様であるが、例えば、前記培地排出管12の他端は、前記培地抜出室4の延長筒体部17の壁を貫通させたのち、培養容器2内の壁を貫通させる以外に、例えば、前記培地抜出室4の延長筒体部17の下端の開口部を通じてから、培養容器2の壁を貫通させるようにしてもよい。
【0045】
また、該培地抜出手段11には、例えば、抜き出した培地の量を計測する、流量計などの培地抜出量測定装置22を設け、該培地抜出量測定装置22の情報に基づき前記制御装置10により、抜き出した培地の量だけ、前記培地供給手段6により培養容器2内に培地を供給できるようにする。
【0046】
次に、本発明の実施例2の培養装置の作動及びその効果について説明する。
【0047】
例えば、前記培地供給7から、培養物と培地との内容物が、前記培養容器2内に供給され、例えば、前記培地抜出室4のろ過膜5の高さまで容れられる。なお、容れられる量は、ろ過膜の高さより若干下であってもよい。
【0048】
なお、例えば、前記培養容器2には、外気導入可能な開閉弁(図示せず)が設けられ、また、例えば、前記培地排出管12の他端は外気に連通するよう形成されると共に、該培地排出管12には、開閉弁(図示せず)が設けられる。
【0049】
そして、前記上下動撹拌装置3の駆動軸13を、上方、例えば、上端に位置させて、前記ベローズ21を縮小し、該ベローズ21の体積を収縮させた状態で、前記培養容器2の開閉弁を開き、前記培養容器側空間部18の気圧を、前記培養容器2外の気圧と同じ気圧とすると共に、前記培地排出管12の開閉弁を開き、前記培地抜出室側空間部20の圧力を、前記培養容器2外の気圧と同じ気圧にし、両者を同じ圧力になるように調整する。なお、両者の圧力を同じに調整する際、前記駆動軸13の位置は、かならずしも上端でなくてもよく、下端よりも上の位置であればよい。
【0050】
そして、前記培養容器2の開閉弁と、前記培地排出管12の開閉弁をそれぞれ閉じて、前記空間部18と空間部20とをそれぞれ密閉状態とし、前記培養容器2内の内容物を、前記上下動駆動装置3により撹拌しながら、所望の時間、培養物を培養する。
【0051】
この際、前記上下動撹拌装置3の駆動軸13を、上端に位置した時から、下端に移動することにより、
図4に示すように、前記ベローズ21が伸び、前記上下動撹拌装置の撹拌軸16が上端に位置した時のベローズ21の体積よりも、大きくなり、これにより、前記培養容器2内の培養容器側空間部18の気圧が上昇し、前記培地抜出室4の培地抜出室側空間部20内の気圧より高くなるので、前記培地抜出室4を除いた前記培養容器2内の内容物の液面が下降すると共に、培地抜出室4内の液体の液面が上昇し、培地がろ過膜5を通過して、前記培地抜出室4内に浸入するようになる。
【0052】
なお、前記ベローズ21は、伸張した時に、縮小した時に比べて、全体の体積が膨張するよう、例えば、剛性のある部材で形成される。
【0053】
従って、前記培地抜出室4の液面上昇手段である体積膨張収縮手段19により、培地をろ過膜5を通じてろ過させることができるようになる。
【0054】
そして、該培地抜出室4に浸入した培地は、前記ろ過膜5の開口部5aから、自由落下により、前記培地排出管12内に流れ、前記培養容器2外に排出されるようになる。
【0055】
そして、前記実施例1と同様、ろ過された培地は、液体の上昇圧力により、前記培地抜出室4内に浸入するものであって、吸引により前記培地抜出室4内に浸入させるものではないので、培養物が、ろ過膜に吸い込まれることがなく、ろ過膜の下面に当接した培養物は、自然に下方に沈んでいき、ろ過膜5が目詰まりする事はない。
【0056】
そして、例えば、前記駆動軸13を下端から上端まで上昇させる時に、前記培地抜出測定装置22により測定された抜き出された培地の量だけ、前記培地供給手段6により、前記培養容器2内に供給することにより、次に、前記駆動軸13を下端まで移動させることにより、前記と同様に培地を抜き出すことができ、これを繰り返すことにより、逆洗等を必要とせず、連続して、培地の交換をすることができるようになる。
【実施例3】
【0057】
本発明の実施例3においては、前記実施例1の培養装置1において、前記培地抜出室4の液体の液面上昇手段として、前記培地供給手段6を用いる代わりに、前記培地抜出室4を、前記上下動撹拌装置3の駆動軸13に固定し、前記培地抜出室4を、前記培養容器2内の内容物の液面から下方に移動することにより、前記培養容器2内の内容物の液面を押し上げると共に、相対的に、前記培地抜出室4内の液体の液面を、前記培養容器2内の液面より下げ、前記培地抜出室4の液面を上昇させるようにする。
【0058】
なお、本発明の実施例3においては、前記筒状の培地抜出室4を、例えば、
図5に示すように、上端開口が下端開口よりも大となる、上下が開口した円錐台状に形成された、ろ過膜により形成し、前記培地抜出室4の下端開口部を前記駆動軸13に液密に固定して形成するようにする。
【0059】
また、前記培地抜出手段11としての培地排出管12を、前記培養容器2外から、該培養容器2の天井部2aを貫通して、培養容器2内に垂下し、前記培地抜出室4の上端開口部を通じて、該培地抜出室4内の下部まで延びるように形成し、ポンプ等を利用して、前記培地抜出室4内の培地を吸い上げ、培養容器2外に排出するようにする。
【0060】
また、該培地抜出管12には、例えば、抜き出した培地の量を計測する、流量計などの培地抜出量測定装置23を設け、該培地抜出量測定装置23の情報に基づき前記制御装置10により、抜き出した培地の量だけ、前記培地供給手段6により前記培養容器2内に培地を供給できるようにする。
【0061】
次に、本発明の実施例3の培養装置の作動及びその効果について説明する。
【0062】
例えば、前記培地供給管7から、培養物と培地との内容物が、前記培養容器2内に供給され、例えば、前記駆動軸13が上端に位置する時に、前記培地抜出室4の下端の高さまで容れられる。なお、下端の高さより若干下であってもよい。
【0063】
そして、前記培養容器2内の内容物を、例えば、前記上下動撹拌装置3により撹拌しながら、所望の時間、培養物を培養する。
【0064】
その際、前記上下動撹拌装置の撹拌軸13が上端の位置から、下方に移動することにより、前記培地抜出室4の下部が、前記培養容器2内の液体内の下方に移動し、前記培養容器2内の液体を押し上げると共に、相対的に、前記培地抜出室4の液面が、前記培養容器2内の液面より下がり、そして、前記培地抜出室4内の培地の液面が、前記培養容器2内の内容物の液面と同じ高さになるように作用するため、培地がろ過膜を通過して、前記培地抜出室4内に浸入するようになる。
【0065】
すなわち、培地抜出室4の液面上昇手段である前記上下動撹拌装置3の駆動軸13に固定した培地抜出室4を下方に移動させることにより、培地をろ過膜を通じてろ過させることができるようになる。
【0066】
そして、該培地抜出手段により、培地を抜き出すようにする。
【0067】
そして、前記ろ過された培地は、相対的な、液体の上昇圧力により、前記培地抜出室4内に浸入するものであって、吸引により前記培地抜出室4内に浸入させるものではないので、培養物が、ろ過膜に吸い込まれることがなく、そして、ろ過膜の下面に当接した培養物は、自然に下方に沈んでいき、ろ過膜が目詰まりする事はない。
【0068】
そして、例えば、前記駆動軸13を下端から上端まで上昇させる時に、例えば、前記培地抜出測定装置23により測定された抜き出された培地の量だけ、前記培地供給手段6により、前記培養容器2内に供給することにより、次に、前記駆動軸13を下端まで移動させることにより、前記と同様に培地を抜き出すことができ、これを繰り返すことにより、逆洗等を必要とせず、連続して、培地の交換をすることができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の培地抜出機能を有した往復動撹拌培養装置は、医療品関係、食品関係等における培養装置に利用される。
【符号の説明】
【0070】
1 培養装置
2 培養容器
2a 天井部
3 上下動撹拌装置
3a 支持部
4 培地抜出室
4a 筒体部
5 ろ過膜
5a 開口部
6 培地供給手段
7 培地供給管
8 タンク
9 ポンプ
10 制御装置
11 培地抜出手段
12 培地排出管
13 駆動軸
14 撹拌翼
15 開口部
16 天井部
17 延長筒体部
18 培養容器側空間部
19 体積膨張収縮手段
20 培地抜出室側空間部
21 ベローズ
22 培地抜出量測定装置
23 培地抜出量測定装置