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  • 特許-スライドベルトの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】スライドベルトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 29/00 20060101AFI20221007BHJP
   B26D 3/02 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
B29D29/00
B26D3/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018189074
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020055263
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】515110122
【氏名又は名称】有限会社飯田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】野渡 透一
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-223361(JP,A)
【文献】特開2006-305946(JP,A)
【文献】特開昭53-144982(JP,A)
【文献】特開昭59-190838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 29/00-29/10
B26D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂からなる円筒体を一つの回転体に装着する工程と、
前記円筒体の円周方向に沿って一つの切断刃により前記円筒体を切断する処理を、前記円筒体の軸方向の一端側から他端側に向かって、隣接する各切断線の位置で行い断面が台形となるリング状の無端ベルトを作製する工程と、
前記回転体に配置された前記無端ベルトの幅方向の一箇所を軸方向に沿って切断して、少なくとも一つのスライドベルトを得る工程と、を備え、
前記無端ベルトを作製する工程において、前記切断刃は、前記円筒体の軸方向と直交する垂線に対して傾斜するように刃先の角度が設定され、前記切断刃の前記刃先が傾斜する方向は、前記円筒体を円周方向に沿って一箇所切断する毎に交互に逆方向となるように切り替えられるスライドベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を少ない労力で搬送するための方法として、物品をスライドベルトの上で滑らせながら搬送することが行われている。このようなスライドベルトは、樹脂からなる円筒体を円周方向に切断して無端ベルトとし、この無端ベルトの一箇所を幅方向に切断することにより製造される。無端ベルトの製造方法として、各種の方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-94530号公報
【文献】特開2004-58326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なスライドベルトの断面は、そのほとんどが長方形である。しかし、スライドベルトの用途は様々であるため、断面が長方形以外、例えば、台形となることもある。断面が台形となるスライドベルトを製造する方法として、例えば、断面が四角形のスライベルトの両側面を切断工具で斜めに切断する方法が考えられる。しかし、この方法では、切断によりスライドベルトの一部を除去するため、材料の無駄が多くなる。また円筒形の樹脂部材から断面が四角形のスライドベルトを製造した後、更にスライドベルトの両側面を切断する工程が必要となるため、生産性が悪くなる。
【0005】
本発明は、材料の無駄が少なく、生産性にも優れたスライドベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フッ素樹脂からなる円筒体を円周方向に沿って切断刃により切断して、リング状の無端ベルトを作製する工程と、前記無端ベルトを軸方向に切断して、少なくとも一つのスライドベルトを得る工程と、を備え、前記無端ベルトを作製する工程において、前記切断刃は、前記円筒体の軸方向と直交する垂線に対して傾斜するように刃先の角度が設定されるスライドベルトの製造方法に関する。
【0007】
また、前記刃先が傾斜する方向は、前記円筒体を円周方向に沿って一箇所切断する毎に交互に逆方向に設定されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、材料の無駄が少なく、生産性にも優れたスライドベルトの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)~(C)は、実施形態におけるスライドベルト10の製造方法を説明する図である。
図2】スライドベルト10の斜視図である。
図3】(A)は、円筒体1と切断刃3を鉛直方向から見たときの平面図である。(B)及び(C)は、円筒体1と切断刃3を水平方向から見たときの側面図である。
図4】切断刃3による円筒体1の切断方向を説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本明細書に添付した各図面は、いずれも模式図又は概念図であり、理解しやすさを考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から適宜に変更又は誇張している。本明細書中に記載する数値、形状、材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜に選択して使用してよい。
【0011】
以下の説明においては、円筒体1(後述)の軸方向をX方向とする。説明の便宜上、X方向を水平方向に配置する。また、X方向と直交する水平方向をY方向とする。すなわち、XY方向は共に水平方向となる。更に、XY方向と直交する鉛直方向をZ方向とする。なお、スライドベルト10の製造過程における円筒体1の軸方向は、水平方向に限らず、鉛直方向でもよいし、水平方向に対して傾斜していてもよい。
【0012】
図1(A)~(C)は、実施形態におけるスライドベルト10の製造方法を説明する図である。
図2は、スライドベルト10の斜視図である。
図3は、円筒体1と切断刃3との位置関係を説明する図である。図3(A)は、円筒体1と切断刃3を鉛直方向から見たときの平面図である。図3(B)及び(C)は、円筒体1と切断刃3を水平方向から見たときの側面図である。図3の各分図では、回転体2の図示を省略する。
図4は、切断刃3による円筒体1の切断方向を説明する部分断面図である。
【0013】
まず、図1(A)に示すように、フッ素樹脂からなる円筒体1を回転体2に装着する。円筒体1は、後述する無端ベルト4のベースとなる部材である。円筒体1を形成するフッ素樹脂としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等が挙げられる。
【0014】
円筒体1の厚みは、例えば、1mm以下である。円筒体1の軸方向の長さは、最終製品となるスライドベルト10(後述)の幅、1つの円筒体1から製造されるスライドベルト10の数に応じて設定される。円筒体1の直径は、スライドベルト10の長さに応じて設定される。例えば、1つの無端ベルト4(後述)から1本のスライドベルト10を製造する場合、スライドベルト10が2mであれば、円筒体1の直径は、およそ640mm程度となる。
【0015】
回転体2は、スライドベルト10の製造時における円筒体1の支持部材であり、駆動用モータ(不図示)により回転する。回転体2の表面には、切断刃3(後述)の刃先を損傷しないように、ゴム等の柔軟性のある材質の層(不図示)が形成されている。図1(A)において、円筒体1の軸方向を示す軸中心線L1は、回転体2の軸中心線と一致する。
【0016】
次に、図1(B)に示すように、回転体2を矢印方向に回転させながら、切断刃3により、円筒体1を円周方向に沿って切断する。円筒体1は、切断線L2で示される位置で切断される。切断線L2の間隔S1、S2は、円筒体1を交互に逆方向から切断するため、S1<S2の関係となる(図4参照)。円筒体1は、図中のX方向において、右側から左側に向かって、各切断線L2の位置で切断される。
後述するように、切断刃3は、切断線L2において円筒体1を一箇所切断する毎に、刃先の傾斜する方向が交互に逆方向となる。図1(B)は、切断刃3を左斜め方向に傾斜させた例を示している。
なお、回転体2を回転させる方向は、図1(B)と逆方向でもよい。また、切断刃3により、図中のX方向において、円筒体1を左側から右側に向かって切断してもよい。
【0017】
ここで、円筒体1と切断刃3との位置関係について説明する。
切断刃3は、図3(A)に示すように、鉛直方向からの平面視において、円筒体1の軸中心線L1に対して、切断方向を示す切断線L2が直交するように刃先の向き(長手方向の向き)が設定される。なお、図3(A)において、図中の右側に示す切断刃13は、後述する無端ベルト4を切断する切断刃を示している。
【0018】
また、切断刃3は、図3(B)に示すように、側面視において、円筒体1の軸中心線L1と直交する垂線L3に対して、刃先の中心線L4が角度θ1で交差するように角度が設定される。更に、切断刃3は、図3(C)に示すように、側面視において、円筒体1の軸中心線L1と直交する垂線L3に対して、刃先の中心線L4が角度θ2で交差するように角度が設定される。図3(B)は、切断刃3の刃先を、垂線L3に対して左斜め方向に傾斜させた場合を示している。図3(C)は、切断刃3の刃先を、垂線L3に対して右斜め方向に傾斜させた場合を示している。本実施形態において、角度θ1と角度θ2は、同じである。
【0019】
図4に示すように、切断刃3は、切断線L2において円筒体1を一箇所切断する毎に、刃先の傾斜する方向が交互に逆方向となるように切り替えられる。図4の最も右端の切断線L2において、切断刃3の刃先は、右斜め方向に傾斜する。次の左側の切断線L2において、切断刃3の刃先は、左斜め方向に傾斜する。以後、同様に、切断刃3の刃先は、左斜め方向と右斜め方向とに交互に傾斜する。なお、本実施形態では、円筒体1の軸方向の位置が固定された状態で回転し、切断刃3が軸方向に移動する例について説明する。図4では、同じ切断刃3が円筒体1の軸方向(X方向)に沿って、右側から左側に向けて移動する様子を示している。
【0020】
再び、図1に戻ってスライドベルト10の製造方法を説明する。
円筒体1を各切断線L2の位置で切断することにより、図1(C)に示すように、円筒体1は、複数のリング状の無端ベルト4に分割される。すなわち、円筒体1は、軸方向に複数の無端ベルト4が配置された状態となる。この円筒体1に配置された各無端ベルト4の幅方向の一箇所を、円筒体1の軸方向(X方向)に沿って切断刃13を移動させることにより切断する。切断刃13は、図3(A)に示すように、円筒体1の軸中心線L1と平行となるように刃先の向きが設定される。切断刃13による切断の後、各無端ベルト4は、回転体2から取り外される。
【0021】
次に、図2に示すように、回転体2から取り外した無端ベルト4を直線状に引き延ばすことにより、断面が台形のスライドベルト10が得られる。なお、1つの無端ベルト4から複数のスライドベルト10を作製する場合、直線状に引き延ばした無端ベルト4を、必要な本数分だけ幅方向に切断すればよい。
【0022】
上述した本実施形態のスライドベルト10の製造方法によれば、円筒体1を、その軸方向に対して傾斜させた切断刃3で切断することにより、断面が台形のスライドベルト10を製造できる。切断刃3で円筒体1を切断する場合、円筒体1の軸方向の両端部では材料を斜めに切断して除去するが、その他の部位では、材料を除去することがない。そのため、材料の無駄を少なくできる。また、無端ベルト4を作製した後、更に断面を台形に加工する工程が不要となるため、生産性にも優れている。したがって、本実施形態のスライドベルト10の製造方法は、材料の無駄が少なく、生産性にも優れている。
【0023】
また、本実施形態のスライドベルト10の製造方法によれば、円筒体1を一箇所切断する毎に、刃先の傾斜する方向が交互に逆方向となるように切り替えられるため、切断刃3を円筒体1の軸方向に沿って連続的に移動させることができる。これによれば、切断刃3を円筒体1の軸方向に沿って往復させることがないので、円筒体1の切断を、より速やかに且つ効率良く行うことができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0025】
(変形形態)
実施形態において、フッ素樹脂からなる円筒体1は、フッ素樹脂からなる円柱状のブロックの中心部を切削することにより製造してもよい。
実施形態において、切断刃3の刃先の向き、角度の設定及び切断は、機械的に行ってもよいし、作業者の手作業により行ってもよい。作業者による手作業では、例えば、治具等を用いることにより、切断刃3の刃先の向き、角度の設定及び切断をより正確に行うことができる。
【0026】
実施形態では、円筒体1の位置を固定して、切断刃3を軸方向に移動させる例について説明したが、これに限定されない。切断刃3の位置を固定し、円筒体1を回転させながら、軸方向に移動させてもよい。その場合、切断刃3は、同じ位置において、刃先の傾斜する方向が交互に逆方向となるように切り替えられる。
【0027】
実施形態では、切断刃3の刃先を傾斜させる方向を交互に逆方向とする例について説明したが、これに限定されない。1つおきに各切断線L2の位置で切断刃3の刃先を左斜め方向に傾斜させて円筒体1を切断した後、切断していない各切断線L2の位置で切断刃3の刃先を右斜め方向に傾斜させて円筒体1を切断するようにしてもよい。この場合は、切断刃3を円筒体1の軸方向に沿って往復させる必要がある。
【符号の説明】
【0028】
1 円筒体
2 回転体
3、13 切断刃
4 無端ベルト
10 スライドベルト
図1
図2
図3
図4