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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
F23N5/24 107Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018194284
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020063856
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】長濱 智弘
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-057037(JP,A)
【文献】特開平05-026440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 1/00-5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置において、
前記バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサと、
前記バーナでの燃焼を制御し、前記COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づき、前記バーナでの燃焼を停止させるエラー停止処理を実行可能な制御部と
を備え、
前記基準値として、第1基準値と、該第1基準値よりも高い第2基準値とが設定されており、
前記制御部は、
前記COセンサの計測値が前記第2基準値を超えた場合は元より、前記第1基準値を超えた場合も前記エラー停止処理を実行することを前提として、
前記バーナでの連続燃焼時間が所定時間を越えている場合には、前記第1基準値を無効とし、前記COセンサの計測値が該第1基準値を超えていても前記第2基準値を超えていなければ、前記バーナでの燃焼を継続させる
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼装置において、
前記制御部は、
前記COセンサの計測値が前記第1基準値を超えて第1判定時間以上継続するか、前記COセンサの計測値が前記第2基準値を超えて前記第1判定時間と同等あるいは該第1判定時間よりも短い第2判定時間以上継続すると、前記エラー停止処理を実行することを前提として、
前記バーナでの連続燃焼時間が所定時間を越えている場合には、前記第1基準値を無効とし、前記COセンサの計測値が該第1基準値を超えて前記第1判定時間以上継続しても、前記バーナでの燃焼を継続させる
ことを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサを有する燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器や暖房機などに搭載され、燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置が知られている。燃焼装置では、ガス通路を通じて燃料ガスがバーナに供給されると共に、燃料ガスの供給量に応じて燃焼ファンを回転させることでバーナに向けて燃焼用空気が送られるようになっている。そして、バーナで生じた燃焼排ガスは、熱交換器などを通過した後、排気通路を通って外部に排出される。
【0003】
こうした燃焼装置では、バーナで不完全燃焼が起こると、燃焼排ガス中の一酸化炭素の濃度(以下、CO濃度)が高くなる。そこで、CO濃度を計測可能なCOセンサを排気通路などに設置しておくことが提案されている(例えば、特許文献1)。COセンサとしては、白金製のコイルに酸化アルミなどの触媒を担持した検知片と触媒を担持しない補償片とを対比する構成の接触燃焼式が一般的であり、燃焼排ガス中の一酸化炭素が触媒と反応すると、反応熱で検知片の抵抗値が上昇するため電位差が生じる。この電位差とCO濃度との間には比例関係があり、電位差に基づいてCO濃度を計測することが可能である。バーナで燃焼中はCOセンサでCO濃度を監視し、COセンサの計測値が所定の基準値を超えたことに基づきバーナの不完全燃焼を検知すると、バーナでの燃焼を強制的に停止させる。また、特許文献1では、CO濃度の基準値として第1基準値と、第1基準値よりも高い第2基準値とが設定されており、COセンサの計測値が第2基準値を超えた場合だけでなく、第1基準値を超えた状態が所定時間にわたって継続した場合にも、バーナでの燃焼を停止させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-26440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のようなCOセンサを備えた燃焼装置では、バーナでの燃焼中にCOセンサのゼロ点がずれていき、実際のCO濃度よりもCOセンサの計測値が高くなるドリフト現象が起こることがあり、実際のCO濃度は基準値に達していないのに、ドリフト現象の影響でCOセンサの計測値が基準値を超えたことに基づきバーナでの燃焼が強制的に停止されてしまうという問題があった。
【0006】
この発明は従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、COセンサのドリフト現象に起因するバーナの燃焼停止を抑制することが可能な燃焼装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の燃焼装置は次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置において、
前記バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサと、
前記バーナでの燃焼を制御し、前記COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づき、前記バーナでの燃焼を停止させるエラー停止処理を実行可能な制御部と
を備え、
前記基準値として、第1基準値と、該第1基準値よりも高い第2基準値とが設定されており、
前記制御部は、
前記COセンサの計測値が前記第2基準値を超えた場合は元より、前記第1基準値を超えた場合も前記エラー停止処理を実行することを前提として、
前記バーナでの連続燃焼時間が所定時間を越えている場合には、前記第1基準値を無効とし、前記COセンサの計測値が該第1基準値を超えていても前記第2基準値を超えていなければ、前記バーナでの燃焼を継続させる
ことを特徴とする。
【0008】
このような本発明の燃焼装置では、COセンサの計測値が第1基準値を超えたことに基づき、主に燃焼用空気よりも燃料ガスが過多となるガスリッチなどのバーナでの燃焼状態に起因する不完全燃焼を検知し、バーナでの燃焼を停止させることが可能である。ただし、前述したようにCOセンサではバーナでの燃焼中にゼロ点がずれていくことでドリフト現象が起こることがあり、このドリフト現象の影響が疑われる所定条件が成立した場合は、COセンサの計測値が第1基準値を超えていても第2基準値を超えていなければ、バーナでの燃焼を継続させる(第1基準値を無効にする)ことによって、COセンサのドリフト現象に起因するバーナの燃焼停止を抑制することができる。
【0009】
また、主に排気通路の急激な閉塞や、火炎がバーナの内部に潜り込む逆火などに起因する突発的な不完全燃焼が起こって実際のCO濃度が高まると、所定条件の成立の有無にかかわらず、COセンサの計測値が第1基準値よりも高い第2基準値を超えたことに基づき、バーナでの燃焼を停止させることによって、安全性を確保することができる。
【0011】
そして、バーナでの連続燃焼時間が長くなり所定時間にわたって燃焼を継続しているのであれば、バーナでの燃焼状態自体に問題はなく、むしろCOセンサのゼロ点校正を行う機会がないことからドリフト現象の影響でCOセンサの計測値が第1基準値を超えた疑いが強い。そのため、バーナで所定時間以上連続して燃焼中は、COセンサの計測値が第1基準値を超えていても第2基準値を超えていなければ、バーナでの燃焼を継続させることによって、COセンサのドリフト現象に起因するバーナの燃焼停止を抑制することができる。
【0012】
また、こうした本発明の燃焼装置では、次のようにしてもよい。まず、COセンサの計測値が第1基準値を超えて第1判定時間以上継続するか、COセンサの計測値が第2基準値を超えて第1判定時間と同等あるいは第1判定時間よりも短い第2判定時間以上継続すると、エラー停止処理を実行することを前提とする。そして、バーナでの連続燃焼時間が所定時間を越えている場合には、第1基準値を無効とし、COセンサの計測値が第1基準値を超えて第1判定時間以上継続しても、バーナでの燃焼を継続させる。
【0013】
このような本発明の燃焼装置では、COセンサの計測値が第1基準値を超えても第2基準値を超えていなければ、緊急性が低く、ドリフト現象の影響も疑われることから、第1判定時間を長く確保しておくことによってバーナの燃焼停止の判断を遅らせる(様子を見る)ことを可能としつつ、COセンサの計測値が第2基準値を越えた場合は、第2判定時間を第1判定時間以下としておくことによってバーナの燃焼停止を早めに判断することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施例の燃焼装置としての給湯器10を複数搭載した給湯システム1の全体構成を示した説明図である。
図2】本実施例の給湯器10の構成を示した説明図である。
図3】本実施例のCO濃度監視処理の一部を示すフローチャートである。
図4】本実施例のCO濃度監視処理の残りの部分を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施例の燃焼装置としての給湯器10を複数搭載した給湯システム1の全体構成を示した説明図である。図示した給湯システム1は、主に業務用としてホテルなどの屋内に設置され、2台の給湯器10a,10bを搭載していると共に、上水を給湯器10a,10bに供給する給水通路2や、給湯器10a,10bで生成された湯を導く出湯通路3や、燃料ガスを給湯器10a,10bに供給するガス通路4や、給湯器10a,10bで生じた燃焼排ガスを屋外に排出する排気通路5などを備えている。
【0016】
2台の給湯器10a,10bは、互いに並列に連結されている。すなわち、上水を供給する給水通路2は、2つに分岐して給湯器10a,10bの各々に接続されており、給湯器10a,10bの各々に接続された2つの出湯通路3は、1つに合流して湯を導く。また、燃料ガスを供給するガス通路4は、2つに分岐して給湯器10a,10bの各々に接続されており、給湯器10a,10bの各々から延設された2つの排気通路5は、1つにまとめられて燃焼排ガスを屋外に排出する。
【0017】
さらに、給湯システム1は、システム全体を制御するコントローラ7を備えており、2台の給湯器10と電気的に接続されている。コントローラ7は、必要とされる給湯能力に応じて給湯器10a,10bにおける燃焼を制御すると共に、後述するように不完全燃焼を防止するために燃焼排ガス中の一酸化炭素の濃度(以下、CO濃度)を監視している。尚、2台の給湯器10a,10bは、基本的には同じ仕様であり、同様に動作するため、以下では、特に区別する必要がなければ、単に給湯器10と表記することがある。
【0018】
図2は、本実施例の給湯器10の構成を示した説明図である。図示されるように給湯器10には、缶体11内に収容されて燃料ガスを燃焼させる複数(本実施例では16本)のバーナ12が設置されている。燃料ガスを供給するガス通路4には、ガス通路4を開閉する元弁13や、元弁13の下流側でガス通路4を通過する燃料ガスの流量を調節する比例弁14が設けられている。また、本実施例の給湯器10では、複数(16本)のバーナ12が3つのバーナ群に分けられていることと対応して、比例弁14の下流側でガス通路4が3つに分岐しており、3本のバーナ12で構成される第1バーナ群に対応する分岐路を開閉する第1切換弁15aと、5本のバーナ12で構成される第2バーナ群に対応する分岐路を開閉する第2切換弁15bと、8本のバーナ12で構成される第3バーナ群に対応する分岐路を開閉する第3切換弁15cとを備えている。尚、元弁13、比例弁14、切換弁15a~15cはコントローラ7と電気的に接続されている。尚、本実施例のコントローラ7は、本発明の「制御部」に相当している。
【0019】
本実施例の給湯器10では、3つの切換弁15a~15cの開閉を制御して燃料ガスを供給するバーナ群を選択すると共に、比例弁14の開度を制御することによって、生成熱量(給湯能力)を変更することが可能である。例えば、必要とされる熱量が最小の場合は、3つの切換弁15a~15cのうち第1切換弁15aのみを開弁する。一方、必要とされる熱量が最大の場合は、3つの切換弁15a~15cの全てを開弁する。そして、その間の熱量が必要な場合は、3つの切換弁15a~15cの中から適宜に1つまたは2つを選択して開弁する。
【0020】
また、給湯器10には、バーナ12に向けて下方から燃焼用空気を送る燃焼ファン20や、高電圧の放電によってバーナ12に火花を飛ばす点火プラグ21や、バーナ12の火炎(着火)を検知するフレームロッド22が設けられており、コントローラ7と電気的に接続されている。燃焼ファン20の回転数を比例弁14の開度(燃料ガスの供給量)に応じて制御することで、所定の空燃比に調節することが可能である。尚、給湯器10の前面を覆う図示しない前板には、燃焼用空気を取り込む給気窓が設けられている。
【0021】
バーナ12の上方には、第1熱交換器23が設けられており、第1熱交換器23の上方には、第2熱交換器24が設けられている。バーナ12で生じた燃焼排ガスは、燃焼ファン20の送風によって上方に送られ、第1熱交換器23および第2熱交換器24を通過する。このとき、第1熱交換器23では、燃焼排ガスから顕熱を回収し、第2熱交換器24では、燃焼排ガスから潜熱を回収する。
【0022】
そして、第1熱交換器23および第2熱交換器24を通過した燃焼排ガスは、缶体11の上部に接続された排気通路5を通って屋外に排出される。排気通路5の接続部分には、COセンサ25が設置されて、燃焼排ガス中のCO濃度を計測可能になっており、このCOセンサ25は、コントローラ7と電気的に接続されている。本実施例のCOセンサ25には、一般的な接触燃焼式センサを採用しており、白金製のコイルに酸化アルミなどの触媒を担持した検知片と、触媒を担持しない補償片とを対比してブリッジ回路を構成している。CO濃度の低い正常な雰囲気でブリッジ回路が平衡状態となるように可変抵抗を調節しておけば、燃焼排ガス中の一酸化炭素が触媒と反応すると、その反応熱で検知片の抵抗値が上昇することによってブリッジ回路の平衡が崩れて電位差が生じる。この電位差とCO濃度との間には比例関係があるため、電位差に基づいてCO濃度を計測することが可能である。
【0023】
また、第2熱交換器24で燃焼排ガスから潜熱を回収するのに伴い、燃焼排ガスに含まれる蒸気が凝縮してドレンが生じるため、第2熱交換器24の下方には、ドレンを受けるドレン受け26が設けられている。このドレン受け26に溜まった酸性のドレンは、排液管27を通じて中和器28に送られ、中和された後、外部に排出される。
【0024】
上水を供給する給水通路2は、第2熱交換器24の上流側に接続されており、この給水通路2には、給湯器10に流入する上水の流量を計測する水量センサ30や、上水の温度を計測する給水温度センサ31が設けられている。第2熱交換器24の下流側は、第1熱交換器23の上流側と接続されており、第1熱交換器23の下流側には出湯通路3が接続されている。給水通路2を通じて第2熱交換器24に供給される上水は、第2熱交換器24で予備加熱された後に第1熱交換器23で加熱されて湯となり、出湯通路3に流出する。出湯通路3には、第1熱交換器23から流出した直後の湯の温度を計測する缶体温度センサ32が設けられている。
【0025】
また、本実施例の給湯器10では、給水通路2と出湯通路3とがバイパス通路33で接続されており、給湯器10に流入した上水は、一部が第2熱交換器24に供給されることなくバイパス通路33を通り、残りが第2熱交換器24に供給される。そして、第2熱交換器24および第1熱交換器23で加熱された湯は、バイパス通路33を通った上水と混合されて給湯器10から流出する。第1熱交換器23で加熱された湯と、バイパス通路33を通った上水との混合比は、バイパスサーボ34によって変更することが可能である。
【0026】
バイパス通路33の接続位置よりも出湯通路3の下流側には、給湯器10から流出する湯の温度を計測する出湯温度センサ35や、給湯器10から流出する湯の流量を調節する湯量サーボ36が設けられている。上述したようにバイパス通路33を有することから、出湯温度センサ35の計測温度は、缶体温度センサ32の計測温度よりも低くなり、バイパスサーボ34で混合比を調節することによって、給湯器10から流出する湯の温度変動を抑制することができる。尚、本実施例の給湯器10に設置された各種温度センサ31,32,35には、温度の変化に応じて電気抵抗が変化するサーミスタを用いている。また、各種温度センサ31,32,35、水量センサ30、バイパスサーボ34、湯量サーボ36は、コントローラ7と電気的に接続されている。
【0027】
このような燃焼装置としての給湯器10では、バーナ12で不完全燃焼が起こると、燃焼排ガス中のCO濃度が高くなる。不完全燃焼の原因としては、排気通路5の急激な閉塞や、火炎がバーナ12の内部に潜り込む逆火や、空燃比が適切でなく燃料ガスが過多であるガスリッチなどが考えられる。そこで、不完全燃焼を検知するために、COセンサ25を設置して燃焼排ガス中のCO濃度を監視するようになっており、コントローラ7が以下のようなCO濃度監視処理を実行している。
【0028】
図3および図4は、本実施例のコントローラ7が実行するCO濃度監視処理のフローチャートである。このCO濃度監視処理は、給湯システム1の電源をONにすると実行される。CO濃度監視処理を開始すると、まず、COセンサ25のヒートアップ処理を行う(STEP1)。COセンサ25が有機物の付着などで汚れていると、CO濃度を正確に計測できないため、ヒートアップ処理では、COセンサ25を加熱することで付着物を除去する。COセンサ25には通常2Vの電圧を印加しているが、一時的に2.74Vに印加電圧を上げることでCOセンサ25を加熱する。
【0029】
ヒートアップ処理に続いて、COセンサ25のゼロ点校正を行う(STEP2)。このゼロ点校正は、バーナ12で燃焼を開始する前のCO濃度が低い正常な雰囲気(大気)に対して行われる。ゼロ点校正が終了すると、バーナ12で燃焼を開始したか否かを判断し(STEP3)、燃焼を開始していない場合は(STEP3:no)、燃焼を開始するまで待機状態となる。
【0030】
その後、バーナ12で燃焼を開始した場合は(STEP3:yes)、COセンサ25の計測値に基づいて不完全燃焼を判定する条件(エラー判定条件)が成立したか否かを判断する(STEP4)。本実施例では、エラー判定条件として、CO濃度の基準値や継続時間が異なる以下の4つが設定されている。
(1)CO濃度が2000ppm以上となって、5秒以上継続。
(2)CO濃度が1300ppm以上となって、20秒以上継続。
(3)CO濃度が800ppm以上となって、40秒以上継続。
(4)CO濃度が600ppm以上となって、225秒以上継続。
【0031】
尚、本実施例のエラー判定条件3,4におけるCO濃度の基準値800ppm,600ppmは、本発明の「第1基準値」に相当し、継続時間40秒,225秒は、本発明の「第1判定時間」に相当している。また、本実施例のエラー判定条件1,2におけるCO濃度の基準値2000ppm,1300ppmは、本発明の「第2基準値」に相当し、継続時間5秒,20秒は、本発明の「第2判断時間」に相当している。
【0032】
上記のエラー判定条件1~4のうち、CO濃度の基準値が比較的に高いエラー判定条件1,2は、主に排気通路5の急激な閉塞や、バーナ12での逆火などに起因する突発的な不完全燃焼を検知するために設定されている。これに対して、CO濃度の基準値が比較的に低いエラー判定条件3,4は、主に空燃比がガスリッチであるなどバーナ12での燃焼状態の不良に起因する不完全燃焼を検知するために設定されている。STEP4では、エラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かを判断する。
【0033】
何れのエラー判定条件も成立していない場合は(STEP4:no)、使用者の操作によってバーナ12での燃焼を停止したか否かを判断する(STEP5)。燃焼を停止していない場合は(STEP5:no)、STEP4へと戻り、エラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かの判断(STEP4)、および燃焼を停止したか否かの判断(STEP5)を繰り返す。
【0034】
そして、何れのエラー判定条件も成立することのないまま、バーナ12での燃焼を停止した場合は(STEP5:yes)、続いて、使用者の操作によってバーナ12での燃焼を再開したか否かを判断し(STEP6)、燃焼を再開していない場合は(STEP6:no)、バーナ12の消火から所定の清浄時間(本実施例では30分)が経過したか否かを判断する(STEP7)。未だ消火から30分が経過していない場合は(STEP7:no)、次に、給湯システム1の電源がOFFにされたか否かを判断し(STEP9)、電源がOFFにされた場合は(STEP9:yes)、図3および図4のCO濃度監視処理を終了する。
【0035】
これに対して、給湯システム1の電源がOFFにされていない場合は(STEP9:no)、STEP6に戻って、バーナ12で燃焼を再開したか否かを判断し、燃焼を再開した場合は(STEP6:yes)、STEP4へと戻り、エラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かを再び判断する。
【0036】
一方、バーナ12で燃焼を再開することなく(STEP6:no)、バーナ12の消火から30分(清浄時間)が経過した場合は(SEP7:yes)、COセンサ25のゼロ点校正を行う(STEP8)。COセンサ25は、バーナ12での燃焼中にゼロ点がずれていき、実際のCO濃度よりもCOセンサ25の計測値が高くなるドリフト現象が起こることがある。また、本実施例の清浄時間には、缶体11内の燃焼排ガスが排出されるのに十分な時間を設定しており、バーナ12の消火から30分が経過していれば、COセンサ25の周囲では、バーナ12で燃焼を開始する前と同等の雰囲気(大気)に戻り、温度も室温に戻っている。そこで、COセンサ25のゼロ点校正を行うことにより、実際のCO濃度とCOセンサ25の計測値との乖離をなくして、ドリフト現象の影響を排除することができる。
【0037】
尚、バーナ12の消火から30分が経過するのを待つのではなく、燃焼ファン20の送風で所定の掃気時間(例えば5分)にわたって燃焼排ガスを排出させる掃気処理を行うようにすれば、COセンサ25のゼロ点校正の実行を早めることが可能である。ただし、何れのエラー判定条件も成立しないまま正常にバーナ12での燃焼を停止すると、直ぐにバーナ12での燃焼を再開することがあり、その場合には、掃気処理によってバーナ12や熱交換器23,24が冷却されるので、熱効率が大きく低下してしまうことになる。そこで、本実施例では、バーナ12での燃焼の再開に備えて、掃気処理は行わず、燃焼が再開されることなく30分が経過してからCOセンサ25のゼロ点校正を実行することとしている。
【0038】
こうしてCOセンサ25のゼロ点校正を行った後、給湯システム1の電源がOFFにされることなく(STEP9:no)、バーナ12で燃焼を再開すると(STEP6:yes)、エラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かを再び判断することになる(STEP4)。
【0039】
そして、処理を繰り返すうちに、エラー判定条件1~4の何れかが成立した場合は(STEP4:yes)、エラー判定条件1~4のうち、CO濃度の基準値が比較的に低いエラー判定条件3,4の何れかであるか否かを判断する(図4のSTEP10)。このとき、成立したエラー判定条件が、CO濃度の基準値が比較的に高いエラー判定条件1,2の何れかであった場合は(STEP10:no)、エラー停止処理を実行する(STEP11)。本実施例のエラー停止処理では、エラー判定条件が成立した給湯器10の元弁13を閉弁(燃料ガスの供給を遮断)してバーナ12での燃焼を強制的に停止すると共に、湯量サーボ36を閉じて給湯器10からの湯の流出を停止する。
【0040】
また、エラー停止処理に続いて、バーナ12で不完全燃焼が起きている旨のエラー報知を行うと(STEP12)、図3および図4のCO濃度監視処理を終了する。本実施例の給湯システム1では、エラー報知を、図示しないリモコンの液晶画面に表示することで行うようになっているが、これに限らず、音声で報知するようにしてもよい。
【0041】
これに対して、エラー判定条件3,4の何れかが成立した場合は(STEP10:yes)、エラー判定条件の成立時にバーナ12で所定時間(本実施例では3時間)以上連続して燃焼中であったか否かを判断する(STEP13)。前述したようにCOセンサ25は、バーナ12での燃焼中にゼロ点がずれていき、3時間以上の長時間にわたってバーナ12で燃焼を継続していると、図3のSTEP8でCOセンサ25のゼロ点校正を行う機会がないことから、ドリフト現象の影響が疑われる。特にCO濃度の基準値が比較的に低いエラー判定条件3,4が成立した場合は、実際のCO濃度は基準値に達していなくても、ドリフト現象によってCOセンサ25の計測値が基準値以上になってしまうことがある。また、前述したようにエラー判定条件3,4は、主にガスリッチなどのバーナ12での燃焼状態に起因する不完全燃焼を検知するために設定されている。仮にバーナ12での燃焼状態に問題がある場合は、燃焼開始から3時間が経過する前にエラー判定条件3,4が成立するはずであり、バーナ12で燃焼を3時間以上継続しているのであれば、バーナ12での燃焼状態自体に問題はないと考えられる。
【0042】
そのため、本実施例では、バーナ12での連続燃焼時間が3時間未満であった場合は(STEP13:no)、ドリフト現象の影響は小さく、実際のCO濃度が基準値に達していると判断して、エラー停止処理を行った後(STEP11)、エラー報知を行うと(STEP12)、図3および図4のCO濃度監視処理を終了する。尚、本実施例では、バーナ12での連続燃焼時間をコントローラ7で計時することが可能になっている。また、コントローラ7は、バーナ12での燃焼を停止しても、計時した連続燃焼時間を直ぐにはリセットしないようにしてもよい。すなわち、バーナ12での燃焼を一旦停止しても、直ぐに(例えば、バーナ12の温度が所定温度以下に冷める前に)燃焼を再開した場合には、燃焼の停止前と一連の連続燃焼時間として計時することとしてもよい。
【0043】
これに対して、バーナ12での連続燃焼時間が3時間以上であった場合は(STEP13:yes)、ドリフト現象の影響があると判断して、例外的にエラー判定条件3,4の成立を無効とし、エラー停止処理を行うことなく、バーナ12での燃焼を継続したまま(STEP14)、図3のSTEP4へと戻り、エラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かを再び判断する。
【0044】
以上に説明したように本実施例の燃焼装置としての給湯器10では、CO濃度の基準値や継続時間が異なるエラー判定条件1~4が設けられており、このうちCO濃度の基準値が比較的に低いエラー判定条件3,4の成立によって、主にガスリッチなどのバーナ12での燃焼状態に起因する不完全燃焼を検知し、バーナ12での燃焼を停止させることが可能である。ただし、バーナ12で3時間以上の長時間にわたって燃焼を継続していれば、バーナ12での燃焼状態自体に問題はなく、むしろCOセンサ25のゼロ点校正を行う機会がないことからドリフト現象の影響でエラー判定条件3,4が成立した疑いが強い。そのため、バーナ12で3時間以上連続して燃焼中は、エラー判定条件3,4が成立しても、バーナ12での燃焼を継続する(エラー判定条件3,4の成立を無効にする)ことによって、COセンサ25のドリフト現象に起因するバーナ12の燃焼停止を抑制することができる。
【0045】
また、主に排気通路5の急激な閉塞や、バーナ12での逆火などに起因する突発的な不完全燃焼で実際のCO濃度が高まると、バーナ12での連続燃焼時間にかかわらず、CO濃度の基準値が比較的に高いエラー判定条件1,2の成立によってバーナ12での燃焼を停止させるので、安全性を確保することができる。
【0046】
以上、本実施例の給湯システム1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0047】
例えば、前述した実施例のCO濃度監視処理(図3および図4)では、エラー判定条件3,4の何れかが成立した場合に(STEP4:yes,STEP10:yes)、バーナ12での連続燃焼時間を確認して3時間以上であると(STEP13:yes)、バーナ12での燃焼を継続する(エラー判定条件3,4の成立を無効にする)ようになっていた。しかし、STEP4の前にバーナ12での連続燃焼時間を確認することとして、3時間以上であった場合は、STEP4でエラー判定条件3,4を除外するようにしてもよい。
【0048】
また、前述した実施例では、バーナ12での連続燃焼時間が所定時間(3時間)を超えている場合に、エラー判定条件3,4が成立しても、バーナ12での燃焼を継続する(エラー判定条件3,4の成立を無効にする)ようになっていた。しかし、エラー判定条件3,4が成立しても、バーナ12での燃焼を継続する所定条件としては、これに限られず、ドリフト現象の影響が疑われるような条件であればよい。前述したようにドリフト現象は、バーナ12での燃焼中にCOセンサ25のゼロ点がずれていくことで起こり、例えば、バーナ12での燃焼と停止とを繰り返して累積燃焼時間が所定時間を越えている場合や、前回のゼロ点校正から所定時間以上経過している場合や、バーナ12からの燃焼排ガスで加熱されるCOセンサ25の温度が所定温度以上である状態が所定時間以上継続している場合などにもドリフト現象の影響が疑われることから、エラー判定条件3,4が成立しても、バーナ12での燃焼を継続するようにしてもよい。
【0049】
また、前述した実施例では、エラー判定条件(1~4)毎にCO濃度の基準値が異なると共に、各基準値に対応する継続時間(判定時間)が異なっていた。しかし、継続時間は、必ずしも異なっていなければならないわけではなく、異なる基準値に対して同じ継続時間が設定されていてもよい。加えて、エラー判定条件として継続時間の設定は必須ではなく、CO濃度の基準値を設定しておくだけでもよい。尚、前述した実施例のようにエラー判定条件として継続時間を設定しておけば、エラー判定条件3,4では、エラー判定条件1,2に比べて緊急性が低く、ドリフト現象の影響も疑われることから、継続時間を長く確保しておくことによってバーナ12の燃焼停止の判断を遅らせる(様子を見る)ことを可能としつつ、エラー判定条件1,2では、エラー判定条件3,4よりも継続時間を短く設定しておくことによって、バーナ12の燃焼停止を早めに判断することができる。
【0050】
また、前述した実施例では、2台の給湯器10を並列に連結した給湯システム1について説明したが、給湯器10の単体にも本発明を好適に適用することができる。また、3台以上の給湯器10を連結してもよい。複数台の給湯器10を搭載した業務用の給湯システム1では、バーナ12での連続燃焼時間が長くなる傾向にあり、COセンサ25のゼロ点校正を行う機会を確保し難いため、ドリフト現象が影響することが多く、本発明を好適に適用することができる。
【0051】
また、前述した実施例では、燃焼装置として給湯器10を例に説明したが、本発明の燃焼装置の適用は給湯器10に限られず、加熱した熱媒を循環させて暖房に用いる暖房機などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…給湯システム、 2…給水通路、 3…出湯通路、
4…ガス通路、 5…排気通路、 7…コントローラ、
10…給湯器、 11…缶体、 12…バーナ、
13…元弁、 14…比例弁、 15a…第1切換弁、
15b…第2切換弁、 15c…第3切換弁、 20…燃焼ファン、
21…点火プラグ、 22…フレームロッド、 23…第1熱交換器、
24…第2熱交換器、 25…COセンサ、 26…ドレン受け、
27…排液管、 28…中和器、 30…水量センサ、
31…給水温度センサ、 32…缶体温度センサ、 33…バイパス通路、
34…バイパスサーボ、 35…出湯温度センサ、 36…湯量サーボ。
図1
図2
図3
図4