(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】気液分離装置及び低沸点化合物の検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 31/00 20060101AFI20221007BHJP
G01N 33/00 20060101ALI20221007BHJP
B01D 61/36 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
G01N31/00 Y
G01N31/00 Q
G01N31/00 V
G01N33/00 D
B01D61/36
(21)【出願番号】P 2018194343
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2021-06-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年 6月12日に、メタウォーター株式会社が、福岡地区水道企業団に、長谷川 絵里、山口 太秀及び青樹 和彦が発明した気液分離装置に係る部品(保護材)を販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 絵里
(72)【発明者】
【氏名】山口 太秀
(72)【発明者】
【氏名】青樹 和彦
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特許第4861145(JP,B2)
【文献】特開2009-014382(JP,A)
【文献】特開2008-157791(JP,A)
【文献】特開2005-154198(JP,A)
【文献】特開2005-296746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00-31/22
G01N 33/00
G01N 1/00-1/44
G01N 33/48-33/98
B01D 61/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリハロメタンを含有する試料液の通路をなす第1の溝を内面に有する第1の板状部材と、
前記試料液から気化した
トリハロメタンを含む分離ガスの通路をなす第2の溝を有する第2の板状部材と、
前記分離ガスが溶解するキャリア液の通路をなす第3の溝を内面に有する第3の板状部材と、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に挟持された
、前記試料液を通さず前記分離ガスが通過可能な第1気液分離膜と、
前記第2の板状部材と前記第3の板状部材との間に挟持された
、前記キャリア液を通さず前記分離ガスが通過可能な第2気液分離膜と、を備え、
前記第1の溝、前記第2の溝、及び前記第3の溝は、互いに整合するように形成されていて、前記第2の溝は、前記第1の溝及び前記第3の溝に前記気液分離膜を介して連通するように、前記第2の板状部材を貫通して形成されており、
前記第1の板状部材又は前記第3の板状部材のうちの一方の板状部材の外側から
、該一方の板状部材
及び該一方の板状部材に隣接する気液分離膜を貫通して、前記第2の溝の一端に連通するパージガス流入孔と、
前記第1の板状部材又は前記第3の板状部材のうちの一方の板状部材の外側から
、該一方の板状部材
及び該一方の板状部材に隣接する気液分離膜を貫通して、前記第2の溝の他端に連通するパージガス流出孔と、が設けられており、
前記第2の溝の一端には、前記パージガス流入孔に対向
して配置された前記気液分離膜
を覆って、前記パージガスの流入を受け止める、気液分離膜の保護材が配置されていることを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
前記第2の溝の他端には、前記パージガス流出孔に対向
して配置された前記気液分離膜
を覆って、もう1つの気液分離膜の保護材が配置されている、請求項1に記載の気液分離装置。
【請求項3】
前記保護材は、前記第2の溝の前記パージガス流出孔又は前記パージガス流入孔に対向する
前記気液分離膜を覆うように配置された底部と、該底部の両側から前記第2の溝の前記の流路方向の内壁に沿って設けられた両側部とを有する、請求項1又は2に記載の気液分離装置。
【請求項4】
前記保護材は、前記両側部が一端に向けて次第に近づくテーパ状をなしており、前記保護材の
前記底部の一端が
、前記パージガス流出孔又は前記パージガス流入孔
に対向する前記気液分離膜を覆うように配置される、請求項3に記載の気液分離装置。
【請求項5】
前記保護材は、フッ素樹脂からなる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の気液分離装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載された気液分離装置と、
前記キャリア液に含まれる成分を分析する検出部と、
を有することを特徴とする
トリハロメタンの検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低沸点化合物を含む液体から当該低沸点化合物を分離するための気液分離装置、及び当該気液分離装置を用いた低沸点化合物の検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低沸点化合物を含む液体から当該低沸点化合物を分離して分析をすることが行われている。このような分析の一例に、水に含まれているトリハロメタンの分析がある。トリハロメタンを分析する装置としては、トリハロメタンが含まれている試料液を加熱することによりトリハロメタンを気化させ、気化させたトリハロメタンガスをキャリア溶液に溶解させ、キャリア溶液中のトリハロメタンを測定することにより試料液に含まれるトリハロメタンを分析するトリハロメタン分析装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のトリハロメタン分析装置は、試料液からトリハロメタンを気化させて分離する分離溶解構造を有する。当該分離溶解構造は、試料液流路を備えた試料液用の平板と、キャリア液流路を備えたキャリア液用の平板と、トリハロメタンガス流路を備えたガスチャンバ用の平板と、を有する。また、分離溶解構造は、試料液用の平板とガスチャンバ用の平板との間にガス分離用平膜が設けられている。また、分離溶解構造は、ガスチャンバ用の平板とキャリア液用の平板との間にガス溶解用平膜が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、所定の試料液に含まれるトリハロメタンの分離と溶解を行う際にトリハロメタンガス流路に前回測定した試料液からのトリハロメタンが残留していると、試料液に含まれるトリハロメタンの量は実際の量よりも多く検出されてしまい、測定誤差が生じる。そこで、所定の試料液に含まれるトリハロメタンの分析を行う前に、トリハロメタンガス流路をパージすることが必ず行われている。
【0006】
トリハロメタンガス流路には、当該流路内にパージガスを導入する流入孔及び当該流路内のパージガスと流路内の残留気体を外部に排出する排出孔が設けられている。前記流入孔からパージガスを流入させ、前記排出孔からトリハロメタンガス流路内の残留気体をパージガスと共に外部に排出させることが行われている。
【0007】
パージガスがトリハロメタンガス流路に流入する際、流入孔の近傍のガス分離用平膜が前記パージガスの風圧の影響を受ける。具体的には、パージガスは、ガス分離用平膜の平板と対向する面に対して垂直方向に流入し、ガス分離用平膜の当該面に対して垂直方向に力が作用する。
【0008】
ガス分離用平膜は、このように一の方向から力が継続的に加わり続けられることによって徐々に変形が進む、いわゆるクリープ現象が生じる。クリープ現象は、トリハロメタンガス流路の気密性に影響を与える。このため、ガス分離用平膜の交換サイクルが短くなることが問題視とされている。
【0009】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、ガス分離用平膜のクリープ現象を抑制することによりガス分離用平膜の交換作業の作業性を向上することが可能な気液分離装置及び低沸点化合物の検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の気液分離装置は、試料液の通路をなす第1の溝を内面に有する第1の板状部材と、前記試料液から気化した分離ガスの通路をなす第2の溝を有する第2の板状部材と、前記分離ガスが溶解するキャリア液の通路をなす第3の溝を内面に有する第3の板状部材と、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に挟持された第1気液分離膜と、前記第2の板状部材と前記第3の板状部材との間に挟持された第2気液分離膜と、を備え、前記第1の溝、前記第2の溝、及び前記第3の溝は、互いに整合するように形成されていて、前記第2の溝は、前記第1の溝及び前記第3の溝に前記気液分離膜を介して連通するように、前記第2の板状部材を貫通して形成されており、前記第1の板状部材又は前記第3の板状部材のうちの一方の板状部材の外側から、前記第1の板状部材又は前記第3の板状部材のうちの前記一方の板状部材を貫通して、前記第2の溝の一端に連通するパージガス流入孔と、前記第1の板状部材又は前記第3の板状部材のうちの一方の板状部材の外側から、前記第1の板状部材又は前記第3の板状部材のうちの前記一方の板状部材を貫通して、前記第2の溝の他端に連通するパージガス流出孔と、が設けられており、前記第2の溝の一端には、前記パージガス流入孔に対向する前記気液分離膜に隣接した面に、前記パージガスの流入を受け止める、気液分離膜の保護材が配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の気液分離装置によれば、第1の溝を通る試料液中に含まれる低沸点化合物が、分離ガスとして第1気液分離膜を通して第2の溝に移動する。そして、この分離ガスは、第2気液分離膜を通して第3の溝を通るキャリア液に溶解する。平衡状態になった時点の当該分離ガスが溶解したキャリア液を分析することによって、試料液中に含まれる低沸点化合物の含量又は濃度を分析することができる。
【0012】
また、第2の溝の一端に設けられているパージガス流入孔からパージガスを流入させて、第2の溝の他端に設けられているパージガス流出孔から流出させることにより、第2の溝に残留する分離ガスを外部に排出させることができる。
【0013】
そして、第2の溝の一端には、パージガス流入孔の対向面に、パージガスの流入を受け止める気液分離膜の保護材が配置されている。この保護材が配置されていることにより、パージガスの流入方向に配置された第1気液分離膜又は第2気液分離膜に、パージガスが直接的に当たることが防止される。その結果、気液分離膜のクリープ現象が抑制され、気液分離膜の交換頻度が少なくなり、作業性を向上させることができる。
【0014】
本発明の気液分離装置においては、前記第2の溝の他端には、前記パージガス流出孔に対向する前記気液分離膜に隣接した面にもう1つの気液分離膜の保護材が配置されていることが好ましい。
【0015】
上記態様によれば、保護材によって、パージガス流出孔から流出するパージガスが、パージガス流出孔と対向する方向に配置された気液分離膜に直接接触することが防止される。これにより、気液分離膜のクリープ現象を更に抑制して、気液分離膜の寿命をより効果的に長くさせることができる。
【0016】
本発明の気液分離装置においては、前記保護材は、前記第2の溝の前記パージガス流出孔又は前記パージガス流入孔に対向する面を覆うように配置された底部と、該底部の両側から前記第2の溝の前記の流路方向の内壁に沿って設けられた両側部とを有することが好ましい。
【0017】
上記態様によれば、保護材の両側部を第2の溝の内壁に沿って挿入することにより、保護材を第2の溝内に仮保持させることができるので、組立て作業がしやすくなる。また、底部から延出された両側部によって、底部の浮き上がりを防止できる。
【0018】
本発明の気液分離装置においては、前記保護材は、前記両側部が一端に向けて次第に近づくテーパ状をなしており、前記保護材の一端が前記第2の溝の端部に配置された前記パージガス流出孔又は前記パージガス流入孔を覆うように配置されることが好ましい。
【0019】
上記態様によれば、保護材を第2の溝の端部に装着する際に、保護材の幅狭とされた一端から第2の溝の端部に向けて挿入することによって、保護材を挿入しやすくすることができる。
【0020】
本発明の気液分離装置においては、前記保護材は、フッ素樹脂からなることが好ましい。
【0021】
上記態様によれば、フッ素樹脂は、耐熱性があるので、試料液中の揮発性成分を揮発しやすくするために気液分離装置を比較的高温に加熱しても、耐久性を維持できる。また、フッ素樹脂は、撥水性及び撥油性があるので、防汚性に優れている。
【0022】
一方、本発明の低沸点化合物の検出装置は、上記のいずれかに記載された気液分離装置と、前記キャリア液に含まれる成分を分析する検出部と、を有することを特徴とする。
【0023】
本発明の低沸点化合物の検出装置によれば、気液分離装置により、試料液中の揮発成分を分離ガスとして取出し、この分離ガスをキャリア液に溶解させ、反応部にてニコチン酸アミドとトリハロメタンから蛍光物質を生成させ、検出部によって蛍光物質を分析することにより、試料液中の揮発成分を、精度よく分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施例に係る低沸点化合物の検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】保護材を取り付けたガスチャンバ用平板の平面図である。
【
図6A】
図5のガスチャンバ用平板のB-B線に沿った拡大断面図である。
【
図6B】
図5のガスチャンバ用平板のC-C線に沿った拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る気液分離装置を低沸点化合物の検出装置に設けた一実施形態について説明する。具体的には、低沸点化合物としてトリハロメタンを対象としたトリハロメタン分析装置について説明する。
【0026】
図1は本発明の実施形態に係るトリハロメタン分析装置10の構成を示している。トリハロメタン分析装置10は、試料液に含まれているトリハロメタンの濃度を定量する装置である。
【0027】
図1に示すように、トリハロメタンを含む試料液及びトリハロメタンを溶解させるキャリア液が送液部20から分離部30に送液される。
【0028】
分離部30においては、試料液からトリハロメタンを気化させて試料液からトリハロメタンが分離される。気化したトリハロメタンはキャリア液に溶解する。トリハロメタンが溶解したキャリア液は、反応部40に送液される。
【0029】
反応部40において、トリハロメタンはキャリア液の成分と反応して蛍光物質が生成される。
【0030】
検出部50は、蛍光物質に対して励起光を照射し、蛍光物質が発する光量を測定することにより、試料液が含有するトリハロメタンの濃度を定量分析する。
【0031】
送液部20から送液される試料液は、トリハロメタンを含む試料水及び硫酸ヒドラジン溶液を含んでいる。試料水は、例えば、上水道水である。硫酸ヒドラジン溶液は、試料水に含有される化合物を還元する還元剤である。端的にいえば、硫酸ヒドラジン溶液は、試料水に含まれている塩素を除去し、有機物と塩素によってトリハロメタンが生成する反応を停止するために試料水に加えられる。
【0032】
試料水を貯蔵するタンクから分離部30に向かって形成されている流路上には電磁弁が設けられている。当該電磁弁は、当該流路に導入される試料水が流れるか流れないかを切り替える。当該流路上には、試料水を吸引し、押し出すためのチューブポンプが設けられている。試料水はチューブポンプによって吸引、押し出されて分離部30に接続されている流路に導入される。
【0033】
硫酸ヒドラジン溶液を貯蔵するタンクから分離部30に向かって形成されている流路上には電磁弁が設けられている。当該電磁弁は、硫酸ヒドラジン溶液が当該流路に導入されるか導入されないかを切り替える。当該流路上には、硫酸ヒドラジン溶液を吸引し、押し出すためのチューブポンプが設けられている。硫酸ヒドラジン溶液はチューブポンプによって吸引、押し出され分離部30に接続されている流路に導入される。
【0034】
このように、送液部20は、試料水と硫酸ヒドラジン溶液とを混合した試料液を分離部30に供給するように構成されている。なお、試料水の他に、標準液や、精製水も同様に供給できるようになっている。標準液は、後述する検出部50の受光部52の測定値から目的化合物の濃度を求めるための標準曲線の作成等に用いられる。精製水は、分離部30での試料水の流路を洗浄するために用いられる。
【0035】
キャリア液は、ニコチン酸アミド溶液及び水酸化ナトリウム溶液を含んでいる。ニコチン酸アミドは、トリハロメタンと、いわゆる藤原反応をして蛍光物質を生成する。藤原反応は、塩基性条件下で行われることが好ましく、キャリア溶液には、水酸化ナトリウム溶液が含まれている。
【0036】
ニコチン酸アミド溶液を貯蔵するタンクから分離部30に向かって形成されている流路上には電磁弁が設けられている。電磁弁は、当該流路に導入されるニコチン酸アミド溶液を当該流路に導入されるか導入されないかを切り替える。当該流路上には、ニコチン酸アミド溶液を吸引し、押し出すためのチューブポンプが設けられている。ニコチン酸アミド溶液はチューブポンプによって分離部30に接続されている流路に導入される。
【0037】
水酸化ナトリウム溶液は、分離溶解部30に向かって形成されている流路に導入される。水酸化ナトリウム溶液を貯蔵するタンクから分離部30に向かって形成されている流路上には電磁弁が設けられている。電磁弁は、当該流路に導入される水酸化ナトリム溶液を当該流路に導入されるか導入されないかを切り替える。当該流路上には、水酸化ナトリウム溶液を吸引し、押し出すためのチューブポンプが設けられている。水酸化ナトリウム溶液はチューブポンプによって分離部30に接続されている流路に導入される。
【0038】
このように、送液部20は、ニコチン酸アミド溶液と水酸化ナトリウム溶液とを混合したキャリア液を分離部30に供給するように構成されている。
【0039】
分離部30は、試料液を流すための試料液流路、試料液から気化したトリハロメタン(THM)の通路となるガスチャンバ及びキャリア液を流すためのキャリア液流路が設けられている。
【0040】
試料液流路の試料液は、クロロホルムの沸点以上の温度、例えば、75℃までヒータHT1によって加熱される。加熱によって試料液から気化したトリハロメタンは、ガスチャンバを介して、キャリア液流路のキャリア液に溶解する。キャリア液は、HT2により試料液よりも低い温度、例えば65℃に加熱されている。キャリア液流路は、反応部40に接続されている。キャリア液流路のキャリア液は、反応部40に向かって送液される。
【0041】
反応部40では、キャリア液中のトリハロメタンがニコチン酸アミドと反応する。当該反応は、いわゆる藤原反応である。反応部40は、キャリア液を加温するヒータHT3を有する。このヒータHT3は、藤原反応に適した温度にキャリア液を加温する。例えば、キャリア液は、ヒータHT3によって86℃程度に加温される。反応部40は、検出部50に接続されているキャリア液流路を有する。藤原反応後のキャリア液は、キャリア液流路を介して検出部50に向かって送液される。
【0042】
検出部50は、キャリア液に含まれるトリハロメタンの定量分析をする。具体的には、検出部50は、藤原反応の生成物である蛍光物質が発する蛍光の光量を測定する。検出部50は、当該光量に応じて試料液に含有されるトリハロメタンの濃度、含有量を定量分析する。
【0043】
検出部50は、当該藤原反応の生成物に励起光を照射する投光部51を有する。投光部51は、例えば、365nmにピーク波長を有する紫外発光LED(Light Emitting Diode)である。投光部51は、例えば、蛍光物質に対して励起光を照射する発光装置であればよく、例えば、水銀ランプであってもよい。また、励起光のピーク波長は、反応生成物に応じて適宜変更するとよい。
【0044】
検出部50は、投光部51が照射した励起光を当該生成物が受けて発する458nmの蛍光を受光する受光部52を有する。受光部52は、例えば、光電子増倍管、フォトダイオード検出器などを含む分光光度計を含む。
【0045】
以上の検出部50を通過した排水及び分離部30を通過した試料水は、共通配管で合流し、トリハロメタン分析装置10の外部に廃液として排出される。
【0046】
図2は、本発明の気液分離装置の一実施形態をなす分離部30の分解斜視図を示している。
図2に示すように、分離部30は、第1の板状部材としての試料液流路板SP、第2の板状部材としてのガスチャンバ板GP及び第3の板状部材としてのキャリア液流路板CPを有する。具体的には、ガスチャンバ板GPは、試料液流路板SP上に設けられている。キャリア液流路板CPは、ガスチャンバ板GP上に設けられている。
【0047】
試料液流路板SPは、試料液の通路をなす第1の溝GR1をガスチャンバ板GPと対向する内面IS1に有する。試料液流路板SPは、熱伝導性が高い素材で平板に形成されている。試料液流路板SPに用いられる熱伝導性が高い素材は、金属であることが好ましく、例えば、耐腐食性を有するステンレスであることが好ましい。第1の溝GR1は、試料液流路板SPの内面IS1において、試料液流路板SPの一端から当該一端と対向する他端に向かって蛇行して形成されている。
【0048】
分離部30のガスチャンバ板GPは、試料液から気化した分離ガスの通路をなす第2の溝GR2を有する。ガスチャンバ板GPは、熱伝導性が高い素材で平板に形成されている。当該素材は、試料液流路板SPと同様に金属であることが好ましく、例えば、耐腐食性を有するステンレスであることが好ましい。
【0049】
第2の溝GR2は、ガスチャンバ板GPの試料液流路板SPと対向する内面IS2からキャリア液流路板CPと対向する外面OSにかけて貫通して形成されている。具体的には、第2の溝GR2は、ガスチャンバ板GPの内面IS2に対して垂直方向に貫通している。第2の溝GR2は、第1の溝GR1が形成されている位置に対応して形成されている。すなわち、第2の溝GR2は、ガスチャンバ板GPの一端から当該一端と対向する他端に向かって蛇行して形成されており、第2の溝GR2は、試料液流路板SPの内面IS1に対して垂直方向において第1の溝GR1と重なる位置、すなわち同一の位置に形成されている。
【0050】
分離部30のキャリア液流路板CPは、分離ガスが溶解するキャリア液の通路をなす第3の溝GR3を有する。キャリア液流路板CPは、熱伝導性が高い素材で平板に形成されている。当該素材は、試料液流路板SPと同様に金属であることが好ましく、例えば、耐腐食性を有するステンレスであることが好ましい。
【0051】
第3の溝GR3は、キャリア液流路板CPのガスチャンバ板GPと対向する内面IS3において、キャリア液流路板CPの一端から当該一端と対向する他端に向かって蛇行して形成されている。第3の溝GR3は、試料液流路板SPの内面IS1に対して垂直方向において第1の溝GR1及び第2の溝GR2と重なる位置、すなわち同一の位置に形成されている。言い換えれば、第1の溝GR1、第2の溝GR2及び第3の溝GR3は、互いに整合するように形成されている。
【0052】
試料液流路板SPとガスチャンバ板GPとの間には、第1気液分離膜SF1が挟持されている。ガスチャンバ板GPとキャリア液流路板CPとの間には、第2気液分離膜SF2が挟持されている。
【0053】
第1気液分離膜SF1及び第2気液分離膜SF2は、例えば、PTFE(polytetrafluoroethylene)等の樹脂製の多孔質膜で形成されている。
【0054】
従って、第1の溝GR1が第1気液分離膜SF1によって覆われていることにより、試料液流路が形成されている。また、第2の溝GR2が第1気液分離膜SF1及び第2気液分離膜SF2によって覆われていることにより、ガスチャンバが形成されている。さらに、第3の溝GR3が第2気液分離膜SF2によって覆われていることにより、キャリア液流路が形成されている。
【0055】
また、第2の溝GR2は、第1の溝GR1及び第3の溝GR3に第1気液分離膜SF1並びに第2気液分離膜SF2を介して連通するように、ガスチャンバ板GPを貫通して形成されている。より具体的には、第2の溝GR2は、第1の溝GR1に第1気液分離膜SF1を介して連通するように、ガスチャンバ板GPを貫通して形成されている。また、第2の溝GR2は、第3の溝GR3に第2気液分離膜SF2を介して連通するように、ガスチャンバ板GPを貫通して形成されている。
【0056】
試料液流路板SP、ガスチャンバ板GP及びキャリア液流路板CPは、キャリア液流路側押え板LPと試料液流路押え板RPとの間に配置されている。具体的には、キャリア液流路側押え板LPと試料液流路押え板RPとの間に、キャリア液流路板CP、第2気液分離膜SF2、ガスチャンバ板GP、第1気液分離膜SF1、試料水流路板SPが、それぞれ配置され、ボルト等の締結部材によって各々が締結されている。尚、試料液流路押え板RPと試料液流路板SPとの間には、シート状のフッ素ゴムFG1が設けられている。同様に、キャリア液流路側押え板LPとキャリア液流路板CPとの間にも、シート状のフッ素ゴムFG2が設けられている。
【0057】
試料液流路押え板RPの外面には、試料液を加熱するためのヒータHT1が設けられている。キャリア液流路側押え板LPの外面には、キャリア液を加熱するためのヒータHT2が設けられている。
【0058】
こうして、第1の溝GR1を通る試料液中に含まれるトリハロメタンは、分離ガスとして第1気液分離膜SF1を通過して第2の溝GR2に移動する。そして、この分離ガスは、第2気液分離膜SF2を通過して第3の溝GR3を通るキャリア液に溶解する。検出部50は、平衡状態になった時点の当該分離ガスが溶解したキャリア液を分析することによって、試料液中に含まれるトリハロメタンの含量又は濃度を分析する。
【0059】
そして、試料液流路押え板RPには、試料液流路板SPと対向する内面に対して垂直方向に貫通する第1の試料液流入孔SH1と、第1の試料液流出孔SH2が設けられている。
【0060】
第1の溝GR1の試料液流路板SPの一端側には、試料液が流入する第2の試料液流通孔SH3が設けられている。第1の溝GR1の試料液流路板SPの他端側には、試料液が流出する第2の試料液流出孔SH4が設けられている。
【0061】
第1の試料液流入孔SH1は、試料液流路押え板RPの内面に対して垂直方向において、試料液流路板SPの第2の試料液流入孔SH3と重なる位置すなわち、同一の位置に形成されている。第1の試料液流出孔SH2は、試料液流路押え板RPの内面に対して垂直方向において、試料液流路板SPの第2の試料液流出孔SH4と重なる位置すなわち、同一の位置に形成されている。尚、試料液流路押え板RPと試料液流路板SPとの間に配置されたフッ素ゴムFG1にも、第1の試料液流入孔SH1及び第2の試料液流入孔SH3に連通する孔と、第1の試料液流出孔SH2及び第2の試料液流出孔SH4に連通する孔とが形成されている。
【0062】
従って、送液部20から送液された試料液は、試料液流路押え板RPの第1の試料液流入孔SH1を介して試料液流路板SPの第2の試料液流入孔SH3に導かれる。試料液流路板SPの第2の試料液流入孔SH3に導かれた試料液は、試料液流路を構成する第1の溝GR1を通って試料液流路板SPの第2の試料液流出孔SH4から試料液流路押え板RPの第1の試料液流出孔SH2に向かって排出される。
【0063】
また、試料液流路押え板RPには、その内面に対して垂直方向に貫通する第1のパージガス流入孔GH1と、第1のパージガス流出孔GH2が設けられている。試料液流路板SPには、その内面IS1に対して垂直方向に貫通する第2のパージガス流入孔GH3と、第2のパージガス流出孔GH4が設けられている。
【0064】
第2の溝GR2のガスチャンバ板GPの一端側には、パージガスが流入する第3のパージガス流入孔GH5が設けられている。第2の溝GR2のガスチャンバ板GPの他端側には、パージガスが流出する第3のパージガス流出孔GH6が設けられている。
【0065】
試料液流路押え板RPの第1のパージガス流入孔GH1と、試料液流路板SPの第2のパージガス流入孔GH3と、ガスチャンバ板GPの第3のパージガス流入孔GH5とは、相互に連通するように互いに整合して配置されており、それによってパージガス流入孔GHinを構成している。
【0066】
同様に、試料液流路押え板RPの第2のパージガス流出孔GH2と、試料液流路板SPの第2のパージガス流出孔GH4と、ガスチャンバ板GPの第3のパージガス流出孔GH6とは、相互に連通するように互いに整合して配置されており、それによってパージガス流出孔GHoutが構成されている。
【0067】
尚、詳しい説明を省略するが、試料液流路押え板RPと試料液流路板SPとの間に配置されたフッ素ゴムFG1と、試料液流路板SPとガスチャンバ板GPとの間に配置された第1気液分離膜SF1にも、パージガス流入孔GHin及びパージガス流出孔GHoutに連通する孔がそれぞれ形成されている。
【0068】
また、パージガス流入孔GHinは、ガスチャンバ内にエアを供給するエアポンプ(図示せず)に接続されている。従って、エアポンプから送風されたパージガスは、試料液流路押え板RPの第1のパージガス流入孔GH1及び試料流路板SPの第2のパージガス流入孔GH3を介してガスチャンバ板GPの第3のパージガス流入孔GH5に導かれる。ガスチャンバ板GPの第3のパージガス流入孔GH5に導かれたパージガスは、ガスチャンバを構成する第2の溝GR2を通ってガスチャンバ板GPの第3のパージガス流出孔GH6から試料液流路押え板RPの第1のパージガス流出孔GH2に向かって排出される。すなわち、第2の溝GR2の一端に設けられているパージガス流入孔GH5からパージガスを流入させて、第2の溝GR2の他端に設けられているパージガス流出孔GH6から流出させることにより、第2の溝GR2に残留する分離ガスを外部に排出させることができる。
【0069】
キャリア液流路押え板LPには、その内面に対して垂直方向に貫通する第1のキャリア液流入孔CH1と、第1のキャリア液流出孔CH2が設けられている。
【0070】
第3の溝GR3のキャリア液流路板CPの一端側には、キャリア液が流入する第2のキャリア液流入孔CH3が設けられている。第3の溝GR3のキャリア液流路板CPの他端側には、第2のキャリア液流入孔CH3から流入したキャリア液が流出する第2のキャリア液流出孔CH4が設けられている。
【0071】
第1のキャリア液流入孔CH1は、キャリア液流路押え板LPの内面に対して垂直方向において、キャリア液流路板CPの第2のキャリア液流入孔CH3と重なる位置すなわち、同一の位置に形成されている。第1のキャリア液流出孔CH2は、キャリア液流路押え板LPの内面に対して垂直方向において、キャリア液流路板CPの第2のキャリア液流出孔CH4と重なる位置すなわち、同一の位置に形成されている。
【0072】
尚、キャリア液流路押え板LPとキャリア液流路板CPとの間に配置されたフッ素ゴムFG2にも、第1のキャリア液流入孔CH1及び第2のキャリア液流入孔CH3に連通する孔と、第1のキャリア液流出孔CH2及び第2のキャリア液流出孔CH4に連通する孔とが形成されている。
【0073】
従って、送液部20から送液されたキャリア液は、キャリア液流路押え板LPの第1のキャリア液流入孔CH1を介してキャリア液流路板CPの第2のキャリア液流入孔CH3に導かれる。キャリア液流路板CPの第2のキャリア液流入孔CH3に導かれたキャリア液は、キャリア液流路を構成する第3の溝GR3を通ってキャリア液流路板CPの第2のキャリア液流出孔CH4からキャリア液流路押え板CPの第1のキャリア液流出孔CH2に向かって排出される。
【0074】
分離部30において、試料液流路を構成する第1の溝GR1を通る試料液はヒータHT1によって75℃程度に加熱され、試料液に含まれているトリハロメタンが気化する。尚、トリハロメタンの沸点は62.5℃である。
【0075】
気化したトリハロメタンは、分離ガスとして第1気液分離膜SF1を通過してガスチャンバを構成する第2の溝GR2に流入する。ガスチャンバを構成する第2の溝GR2に流入した分離ガスは、第2気液分離膜SF2を通ってキャリア液流路を構成する第3の溝GR3を通るキャリア液に溶解する。キャリア液は65℃程度に加熱されている。トリハロメタンが溶解したキャリア液は、反応部40に向かって送液される。
【0076】
図3Aは、ガスチャンバ板GPの内面IS2の反対側の外面OS、すなわちキャリア液流路板CPと対向する面を拡大した平面を示している。
図3Bは、ガスチャンバ板GPの内面IS2、すなわち試料液流路板SPと対向する面を拡大した平面を示している。
【0077】
図3A及び3Bに示すように、第2の溝GR2の第3のパージガス流入孔GH5及び第3のパージガス流出孔GH6の近傍には、ガスチャンバの流路方向に沿って試料液側の流路と合致して延在する閉塞部BLが形成されている。保護材は閉塞部BLに設置される。
【0078】
この閉塞部BLは、パージガス流入孔GHinの形成方向に対向するガスチャンバ板GPの内面IS2において開口する第2の溝GRの一部を塞ぐように形成されている。言い換えれば、閉塞部BLは、パージガス流入孔GHinに対向する第1気液分離膜SF1に隣接したガスチャンバ板GPの面、すなわち内面IS2に開口する第2の溝GR2の一部を塞ぐように形成されている。
【0079】
図4Aは、ガスチャンバ板GPの第2の溝GR2に設けられる保護材60の平面を示している。
図4Bは、
図6Aの保護材60のA-A線に沿った断面を示している。
図4A及び4Bに示すように、保護材60は、パージガス流入孔GH
inに対向する第2気液分離膜SF2に隣接したガスチャンバ板GPの面、すなわち外面OSにおいてパージガスの流入を受け止める第2気液分離膜SF2の保護材60が第2の溝GR2の一端(パージガス流入孔GH
in側)に配置されている。
【0080】
第2の溝GR2の他端(パージガス流出孔GHout側)には、パージガス流出孔GHoutに対向する第2気液分離膜SF2に隣接した面にもう1つの第2気液分離膜SF2の保護材60が配置されている。
【0081】
保護材60は、耐熱性を有する素材であることが好ましい。保護材60が耐熱性を有することで、試料液中の揮発性成分を揮発しやすくするために分離部30を比較的高温に加熱しても保護材60の耐久性を維持できるためである。耐熱性を有する素材としては、例えば、フッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂は、撥水性及び撥油性があるので、防汚性に優れている。
【0082】
保護材60は、パージガス流出孔GHout又はパージガス流入孔GHinに対向する面を覆うように配置された底部61と、当該底部61の両側から第2の溝GR2の流路方向の内壁に沿って設けられた両側部62とを有する。すなわち、保護材60は、流路横断方向に対する断面がコ字(U字)状に形成されている。
【0083】
底部61のパージガス流入孔GHin側又はパージガス流出孔GHoutは、第2の溝GR2の内壁形状に沿うように形成されている。具体的には、底部61のパージガス流入孔GHin側又はパージガス流出孔GHoutは、ガスチャンバ板GPの内面IS2に垂直な方向から見て円弧状に形成されている。
【0084】
また、保護材60の両側部62は、上記底部61の円弧状をなす端部に向けて、互いに次第に近づくテーパ状をなしている。例えば、保護材60の両側部62の幅は、第2の溝GR2の溝幅に対して、パージガス流入孔GHin側又はパージガス流出孔GHoutを僅かなマイナス公差、他端側を僅かなプラス公差で形成するとよい。
【0085】
このように保護材60を形成することで、保護材60の幅狭に形成された一端側(パージガス流入孔GHin側又はパージガス流出孔GHout側)から第2の溝GR2の端部に挿入することによって、保護材60を第2の溝GR2に容易に装着することできる。また、保護材60の幅広に形成された他端側の両側部62は、第2の溝GR2の内壁と密着する。これにより、保護材60が第2の溝GR2から抜けにくくすることができる。
【0086】
したがって、保護材60の両側部62を第2の溝の内壁に沿って挿入することにより、保護材60を第2の溝GR2内に仮保持させることができるため、組立て作業がしやすくなる。また、底部61から延出された両側部62によって、底部61の浮き上がりを防止できる。
【0087】
図5は、ガスチャンバを構成する第2の溝GR2においてパージガスが流れる態様を示している。図中の破線矢印は、パージガスの進行方向を示している。
図5に示すように、ガスチャンバの流路横断方向からパージガス流入孔GH
inを介して流入したパージガスは、パージガス流入孔GH
in側の保護材60によってガスチャンバの流路伸長方向に風向が変更される。したがって、第2の溝GR2に流入したパージガスは、ガスチャンバの流路伸長方向に沿って流れる。ガスチャンバを流れるパージガスは、パージガス流出孔GH
outから外部に排出される。
【0088】
図6Aは、
図5のB-B線に沿ったガスチャンバ板GPのパージガス流入孔GHin側の拡大断面を示している。図中の破線矢印は、パージガスの進行方向を示している。
図6Aに示すように、パージガスは、保護材60の底部61に対して垂直方向に流入する。すなわち、保護材60は、パージガスの流入によって第2気液分路膜SF2に作用する正圧の力を受け止めている。
【0089】
このように保護材60が配置されていることにより、パージガスの流入方向に配置された第2気液分離膜SF2に、パージガスが直接的に当たることが防止される。その結果、第2気液分離膜SF2にクリープ現象が生じることによる劣化が抑制され、第2気液分離膜SF2の交換頻度が少なくなり、作業性を向上させることができる。
【0090】
図6Bは、
図5のC-C線に沿ったガスチャンバ板GPのパージガス流出孔GH
out側の拡大断面を示している。図中の破線矢印は、パージガスの進行方向を示している。
図6Bに示すように、パージガスは、保護材60の底部61に対して垂直方向に流出する。すなわち、保護材60は、パージガスの流入によって第2気液分路膜SF2に作用する負圧の力を受け止めている。
【0091】
このように保護材60が配置されていることにより、パージガスの流出方向に配置された第2気液分離膜SF2に、パージガスによる負圧が直接的に作用することが防止される。その結果、第2気液分離膜SF2にクリープ現象が生じることによる劣化が抑制され、第2気液分離膜SF2の交換頻度が少なくなり、作業性を向上させることができる。
【0092】
尚、本実施例に係るトリハロメタン分析装置10について、気液分離膜の寿命について比較試験を行った。本比較試験は、気液分離膜のクリープ現象によりガスチャンバの気密性が保たれなくなるまで、すなわち気液分離膜から気体のリークが生じるまでの期間を計測した。具体的には、検出部50におけるトリハロメタンの測定値が0である場合及び当該測定値の波形が乱れている場合を検知するまでの期間を計測した。その結果、保護材60を設けた本実施例に係るトリハロメタン分析装置10の気液分離膜は、保護材60を設けていないトリハロメタン分析装置の気液分離膜と比べて4.5倍以上の寿命を有していた。
【0093】
以上のように、本願発明の気液分離装置によれば、気液分離膜の寿命を長くすることができる。このため、長期に亘ってガスチャンバの気密性を維持することが可能な気液分離装置を提供することが可能となる。
【0094】
また、本発明の低沸点化合物の検出装置によれば、試料液中の低沸点化合物を、試料液中に含まれる雑多な成分から分離して、精度よく分析することができる。すなわち、気液分離装置が長期に亘ってガスチャンバの気密性を維持することが可能であることにより、長期に亘って高い分析精度を維持することが可能となる。
【0095】
尚、本実施例においては、試料液流路押え板RP側からパージガスの流入と流出を行うようにした。しかし、パージガスが流入及び流出する方向は特には限定されず、例えば、キャリア液流路側押え板LP側からパージガスを流入及び流出させてもよい。キャリア液流路側押え板LP側からパージガスを流入及び流出させる場合、キャリア液流路板CPの外側から、キャリア液流路板CPを貫通して、第2の溝GR2の一端に連通するパージガス流入孔GHinが形成されているようにするとよい。同様に、キャリア液流路板CPの外側から、キャリア液流路板CPを貫通して、第2の溝GR2の一端に連通するパージガス流出孔GHoutが形成されているようにするとよい。このようにすることで、第1の気液分離膜の寿命を長くすることができる。
【0096】
また、本実施例においては、保護材60は、パージガス流入孔GHin側及びパージガス流出孔GHout側の両方に設けるようにした。しかし、保護材60は、特にパージガスによるクリープ現象を受けやすい、パージガス流入孔GHin側にのみ設けられているようにしてもよい。このように保護材60を配置しても気液分離膜の寿命を延ばす効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0097】
10 トリハロメタン分析装置
30 分離部
60 保護材
61 底部
62 両側部
SP 試料液流路板
GP ガスチャンバ
CP キャリア液流路板
SF1 第1気液分離膜
SF2 第2気液分離膜
GR1 第1の溝
GR2 第2の溝
GR3 第3の溝