(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】インナーライナー用ゴム組成物および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20221007BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20221007BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221007BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20221007BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C08L21/00
B60C5/14 A
C08K3/04
C08L83/06
C08L91/00
(21)【出願番号】P 2018209545
(22)【出願日】2018-11-07
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊本 亮
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-542456(JP,A)
【文献】特開2012-007068(JP,A)
【文献】国際公開第97/035918(WO,A2)
【文献】特開平11-189680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0210885(US,A1)
【文献】特開2000-169629(JP,A)
【文献】特開平10-087884(JP,A)
【文献】特表2011-504956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
B60C 5/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを含むゴム組成物であって、
分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイル、およびプロセスオイルを含
み、
前記カーボンブラックは前記ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、20重量部以上であることを特徴とするインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項2】
前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルは、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下であることを特徴とする請求項1記載のインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項3】
前記プロセスオイルは、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、0.5重量部以上5重量部以下であることを特徴とする請求項1または2記載のインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項4】
前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルおよび前記プロセスオイルの合計が、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項5】
前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルと前記プロセスオイルとの重量比(分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイル/プロセスオイル)が0.1~4であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物を用いてなるインナーライナーを備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーライナー用ゴム組成物および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
チューブレス空気入りタイヤにおいては、気密性を確保するために、タイヤ内面にインナーライナーと呼ばれる空気透過性の低い(耐空気透過性を有する)ゴム層が設けられている。また、当該インナーライナーには、通常、トレッドやサイドウォールなどを構成する通常のゴム層に比べて、空気透過性の低い(耐空気透過性を有する)ブチル系ゴムが使用されている。
【0003】
さらに、耐空気透過性をより向上させるために、平板状充填剤をインナーライナー用ゴム組成物に配合することが知られている。しかし、平板状充填剤を配合した場合、ゴム組成物から得られる架橋ゴムの耐屈曲疲労性が悪化するという問題が生じることから、耐空気透過性および耐屈曲疲労性をバランスよく改良することが求められている(特許文献1)。
【0004】
また、インナーライナー用ゴム組成物には、耐空気透過性の悪化を抑制する観点から、好ましくはプロセスオイルなどの軟化剤やフタル酸エステルなどの可塑剤を配合しないことが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-168666号公報
【文献】特開2009-24101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、インナーライナー用ゴム組成物に含まれる上記のブチル系ゴムは、圧延、押出、成形などの加工性が良好ではないことが知られており、インナーライナー用ゴム組成物は、上記のプロセスオイルなどの軟化剤を使用することが望まれる。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、ゴム組成物中にプロセスオイルを含む場合においても、耐空気透過性の低下を抑制でき、耐屈曲疲労性に優れる加硫ゴムが得られるインナーライナー用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、カーボンブラックを含むゴム組成物であって、分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイル、およびプロセスオイルを含むことを特徴とするインナーライナー用ゴム組成物、に関する。
【0009】
また、本発明は、前記ゴム組成物を用いてなるインナーライナーを備えることを特徴とする空気入りタイヤ、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるインナーライナー用ゴム組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。但し、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0011】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、カーボンブラック、分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイル、およびプロセスオイルを含む。上記の特許文献2で記載されているように、通常、インナーライナー用ゴム組成物には、プロセスオイルなどの軟化剤を配合することは好ましくない。しかしながら、本発明のインナーライナー用ゴム組成物においては、プロセスオイルが含まれていても、前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルは、ゴム組成物中のカーボンブラック表面のヒドロキシ基やカルボキシ基と反応できるため、当該ゴム組成物から得られる架橋ゴムは、極性の大きいカーボンブラック(シリコーンオイルと反応したカーボンブラック)を含むことから、窒素や酸素などが架橋ゴム中に溶解し難くなることが推定される結果、架橋ゴムの耐空気透過性の低下が抑制できる。また、前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルが、カーボンブラック表面のヒドロキシ基やカルボキシ基と反応することで、ゴム組成物の混合の際に、カーボンブラック同士の凝集が抑制できることが推定される結果、架橋ゴムは耐屈曲疲労性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック、および末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイル、およびプロセスオイルを含むインナーライナー用ゴム組成物である。
【0013】
<カーボンブラック>
本発明のカーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。カーボンブラックは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0014】
前記カーボンブラックは、架橋ゴムの粘着性を向上させる観点から、ヨウ素吸着量が、5mg/g以上であることが好ましく、15mg/g以上であることがより好ましく、そして、150mg/g以下であることが好ましく、100mg/g以下であることがより好ましく、55mg/g以下であることがさらに好ましい。また、前記カーボンブラックは、DBP(ジブチルフタレート)吸油量が、40cm3/100g以上であることが好ましく、75cm3/100g以上であることがより好ましく、そして、150cm3/100g以下であることが好ましく、125cm3/100g以下であることがより好ましい。ここで、ヨウ素吸着量は、JIS K6217-1に準拠して測定される値であり、また、DBP吸油量は、JIS K6217-4に準拠して測定される値である。
【0015】
前記カーボンブラックは、加硫ゴムの補強性を向上させる観点から、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、20重量部以上であることが好ましく、30重量部以上であることがより好ましく、40重量部以上であることがさらに好ましく、そして、ゴム組成物の粘度が大きくなることを抑制する観点から、100重量部以下であることが好ましく、70重量部以下であることがより好ましく、60重量部以下であることがさらに好ましい。
【0016】
<分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイル>
本発明の分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルの側鎖および/末端にシラノール基が導入されているオルガノポリシロキサン化合物である。前記シラノール基は、分子の両末端に存在してもよく、片方の末端に存在していてもよい。架橋ゴムの耐空気透過性および耐屈曲疲労性を向上させる観点からは、分子両末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルが好ましい。なお、分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルは、入手容易性の観点から、主骨格がポリジメチルシロキサンを有するオルガノポリシロキサン化合物であることが好ましい。
【0017】
前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルは、25℃条件下における粘度が、ゴム組成物の加工性を向上させる観点から、100,000mm2/s以下であることが好ましく、10,000mm2/s以下であることがより好ましく、5,000mm2/s以下であることがさらに好ましく、1,000mm2/s以下であることがよりさらに好ましく、500mm2/s以下であることがよりさらに好ましく、100mm2/s以下であることが最も好ましい。
【0018】
前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルの市販品としては、例えば、信越化学工業社製の、商品名「X-21-5841」、「KF-9701」;モメンティブ社製の、商品名「YF3800」、「XF3905」、「YF3057」、「YF3807」、「YF3802」、「YF3897」、「XC96-723」;Gelest社製の、商品名「DMS-S12」、「DMS-S14」、「DMS-S15」、「DMS-S21」、「DMS-S27」、「DMS-S31」、「DMS-S32」、「DMS-S33」、「DMS-S35」、「DMS-S42」、「DMS-S45」、「DMS-S51」などが挙げられる。
【0019】
前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルは、加硫ゴムの耐屈曲疲労性を向上させる観点から、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、0.1重量部以上であることが好ましく、0.5重量部以上であることがより好ましく、1重量部以上であることがさらに好ましく、そして、架橋ゴムの耐空気透過性を向上させる観点から、10重量部以下であることが好ましく、8重量部以下であることがより好ましく、6重量部以下であることがさらに好ましい。
【0020】
<プロセスオイル>
本発明のプロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどが挙げられる。前記パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルは、高沸点の石油留分であり、一般的に、炭化水素の化学構造によって、鎖状飽和炭化水素であるパラフィン系プロセスオイルと、環状飽和炭化水素であるナフテン系プロセスオイルと、芳香族炭化水素であるアロマ系プロセスオイルに分類されるものである。また、前記プロセスオイルは、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイル(低PCA含量プロセスオイル)を使用してもよい。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、オイル芳香族系プロセスオイルを再抽出したTreated Distillate Aromatic Extract(TDAE)、アスファルトとナフテン油の混合油であるアロマ代替オイル、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvates)(MES)、重ナフテン系オイルなどが挙げられる。これらの中でも、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルが好ましい。プロセスオイルは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0021】
前記プロセスオイルは、加硫ゴムの耐屈曲疲労性またはゴム組成物の加工性を向上させる観点から、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、0.5重量部以上であることが好ましく、1重量部以上であることがより好ましく、1.5重量部以上であることがさらに好ましく、そして、架橋ゴムの耐空気透過性を向上させる観点から、5重量部以下であることが好ましく、4.5重量部以下であることがより好ましく、4重量部以下であることがさらに好ましい。
【0022】
また、前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルおよび前記プロセスオイルの合計は、加硫ゴムの耐空気透過性および耐屈曲疲労性のバランスを良好にする観点から、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、1重量部以上であることが好ましく、3重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることがさらに好ましく、そして、10重量部以下であることが好ましく、8重量部以下であることがより好ましく、6重量部以下であることがさらに好ましい。
【0023】
また、前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイルと前記プロセスオイルとの重量比(分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイル/プロセスオイル)は、加硫ゴムの耐空気透過性および耐屈曲疲労性のバランスを良好にする観点から、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましく、そして、4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明では、少なくとも、前記カーボンブラック、および前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイル、およびプロセスオイルを用いて、インナーライナー用ゴム組成物を調製することができる。さらに、前記インナーライナー用ゴム組成物の原料としては、通常ゴム業界で使用される、ゴム、平板状充填剤、粘着付与剤、各種配合剤などが挙げられる。
【0025】
<ゴム>
前記ゴムとしては、架橋ゴムの耐空気透過性を向上させる観点から、ブチル系ゴムを使用することが好ましい。前記ブチル系ゴムとしては、例えば、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴムなどのハロゲン化ブチルゴム;ブチルゴムなどが挙げられる。ブチル系ゴムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0026】
前記ブチル系ゴムは、架橋ゴムの耐空気透過性を向上させる観点から、前記ハロゲン化ブチルゴムを使用することが好ましく、ゴム組成物のブチル系ゴム成分中、60重量%以上であることが好ましい。
【0027】
前記ゴムには、前記ブチル系ゴムと共に、例えば、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などの合成ジエン系ゴムを使用することができる。また、合成ジエン系ゴムは、アミノ基、アルコキシシラン基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ハロゲン等を導入した変性ジエン系ゴムであってもよい。合成ジエン系ゴム、および変性ジエン系ゴムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0028】
前記ゴムとして、前記ブチル系ゴムおよび前記合成ジエン系ゴムを併用した場合、架橋ゴムの耐空気透過性を向上させる観点から、前記ブチル系ゴムは、ゴム組成物のゴム成分中、60重量部以上であることが好ましく、80重量部以上であることが好ましく、90重量部以上であることがさらに好ましい。
【0029】
<平板状充填剤>
前記平板状充填剤は、粒子の主形状が平板状である充填剤であり、ゴム層中で空気の透過を阻害することでインナーライナーの耐空気透過性を向上させることができる。すなわち、薄いゴム層からなるインナーライナーは、通常、ロールや押出機などでシート状に押し出されて成形されるため、平板状充填剤がゴム層中において層表面に略平行に寝かされた状態で配設される。よって、ゴム層をその厚み方向において通過しようとする空気が平板状充填剤によりその通路を遮られるため、空気の透過が阻害される。
【0030】
前記平板状充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、クレーなどの層状鉱物などの無機充填剤;石炭粉砕物などの有機充填剤が挙げられる。前記石炭粉砕物は、石炭をボールミルなどの粉砕機で細かく砕いて得られる平板状の粒子である。前記平板状充填剤としては、ゴム成分との相溶性がよく、ゴム成分に対する分散性に優れることから、石炭粉砕物を用いることが好ましい。
【0031】
前記平板状充填剤は、レーザー回折散乱法によって測定される平均粒子径が、0.5~100μm程度であることが好ましく、1~30μm程度であることがより好ましい。
【0032】
前記平板状充填剤は、加硫ゴムの耐空気透過性を向上させる観点から、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、5重量部以上であることが好ましく、8重量部以上であることがより好ましく、そして、架橋ゴムの耐屈曲疲労性を向上させる観点から、40重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることがより好ましく、20重量部以下であることがさらに好ましい。
【0033】
<粘着付与剤>
前記粘着付与剤は、ゴム組成物に粘着性を付与する添加剤であり、タッキファイヤーとも称される。粘着付与剤を配合することにより、グリーンタイヤ成形後の加硫までの間にインナーライナーのジョイント部での接着性を高めてジョイント部の開きを抑制することができ、またカーカスプライに対するインナーライナーの接着性も向上することができる。
【0034】
前記粘着付与剤としては、例えば、アルキルフェノール系樹脂、炭化水素樹脂などが挙げられる。前記粘着付与剤は、架橋ゴムの耐空気透過性を向上させる観点から、炭化水素樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
前記炭化水素樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂などが挙げられる。前記脂肪族系石油樹脂は、炭素数4~5個相当の石油留分(C5留分)であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C5系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。前記芳香族系石油樹脂は、炭素数8~10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C9系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。前記脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂は、上記C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂であり(C5/C9系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。前記炭化水素樹脂は、C5成分を主成分とする石油樹脂が好ましい。
【0036】
前記粘着付与剤は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、1重量部以上であることが好ましく、2重量部以上であることがより好ましく、そして、15重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましい。
【0037】
前記各種配合剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、メチレン受容体およびメチレン供与体、有機酸コバルト塩、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、有機過酸化物、ワックスなどの軟化剤、加工助剤などが挙げられる。
【0038】
前記加硫剤は、通常のゴム用加硫剤であればよく、硫黄系加硫剤が好ましい。前記硫黄系加硫剤としての硫黄は、通常のゴム用硫黄であればよく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。加硫剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0039】
前記加硫剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、0.05~2重量部であることが好ましく0.1~1重量部であることがより好ましい。
【0040】
前記加硫促進剤としては、通常のゴム用加硫促進剤であればよく、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。加硫促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0041】
前記加硫促進剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して0.5~5重量部であることが好ましく、1~3重量部であることがより好ましい。
【0042】
前記カーボンブラック、前記分子末端にシラノール基を有する変性シリコーンオイル、前記プロセスオイル、前記ゴム、前記平板状充填剤、前記粘着付与剤、および前記各種配合剤の配合(添加)の方法は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練する方法が挙げられる。
【0043】
前記混練する方法は特に限定されないが、例えば、硫黄系加硫剤および加硫促進剤などの加硫系成分以外の成分を、任意の順序で添加し混練する方法、同時に添加して混練する方法、また、全成分を同時に添加して混練する方法などが挙げられる。また、混練する回数は、1回または複数回であってもよい。混練する時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、2~5分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、100~170℃とすることが好ましく、110~160℃とすることがより好ましい。なお、混練機の排出温度は、前記加硫系成分を含む場合、80~110℃とすることが好ましく、80~100℃とすることがより好ましい。
【0044】
前記ゴム組成物をインナーライナーに成形する方法は、常法に従って、ロールや押出機などでシート状に押し出し、押し出したシート状物をトレッドやサイドウォールなどを構成するゴムの内側に貼り付けて加硫成形すればよい。このような成形方法によれば、タイヤ内面に薄いゴム層よりなるインナーライナーを備えるチューブレス空気入りタイヤが形成できる。なお、インナーライナーの厚みは、タイヤサイズなどにより異なるが、通常は0.5~3mmである。
【0045】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、用途が特に限定されるものではないが、高い耐空気透過性が要求されるトラックやバスなどの重荷重用空気入りタイヤに好適である。
【実施例】
【0046】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0047】
(使用原料)
a)臭素化ブチルゴム:「ブロモブチル2222」(日本ブチル社製)
b)カーボンブラック:「シーストV(GPF)」(東海カーボン社製)
c)石炭粉砕物:瀝青炭の粉砕物、「オースチンブラック325」(Coal Fillers社製)、(平均粒子径が5μm)
d)粘着付与剤:「T-REZ RA100」(東燃化学社製)
e)オイル(A):両末端シラノール変性シリコーンオイル、「X-21-5841」(信越化学工業社製)、(25℃条件下における粘度が30mm2/s)
f)オイル(B):両末端シラノール変性シリコーンオイル、「YF3802」(モメンティブ社製)、(25℃条件下における粘度が80,000mm2/s)
g)オイル(C):「プロセスNC-140」(JX日鉱日石エネルギー社製)
h)オイル(D):「JOMOプロセスP-200」(JX日鉱日石エネルギー社製)
i)酸化亜鉛:「酸化亜鉛3種」(三井金属鉱業社製)
j)ステアリン酸:「Palmac 1500 Beads」(IOI Acidchem Sdn Bhd社製)
k)加硫促進剤:「ノクセラーDM-P」(大内新興化学社製)
l)硫黄:「5%油入微粉末硫黄」(鶴見化学工業社製)
【0048】
<実施例1~7、比較例1~2>
<ゴム組成物および未加硫ゴム組成物の製造>
表1に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:3分、排出温度:120℃)することにより、ゴム組成物を製造した。次いで、得られたゴム組成物に、表1に記載の硫黄、加硫促進剤を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:1分、排出温度:90℃)することにより、未加硫ゴム組成物を製造した。なお、表1中の配合比率は、ゴム組成物に含まれるゴム成分を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。
【0049】
<加硫ゴムの製造>
上記の実施例及び比較例で得られた未加硫ゴム組成物を、160℃、30分間の条件で加硫することにより、加硫ゴムを製造した。得られた加硫ゴムについて以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0050】
<耐空気透過性の評価>
耐空気透過性の評価は、厚み1mmの加硫ゴムシートについて、ガス透過率試験機(東洋精機製作所製「BT-3」)を用いて空気透過率を測定し、比較例1を100とした指数で表示した。数値が大きいほど、耐空気透過性に優れることを示す。
【0051】
<耐屈曲疲労性の評価>
耐屈曲疲労性の評価は、JIS K6260(デマチャ屈曲亀裂試験)の耐屈曲疲労性の評価に準拠して、加硫ゴムの試験片の亀裂成長が2mmになるまでの回数を求め、比較例1の値を100として指数で表示した。数値が大きいほど、耐疲労性に優れることを示す。
【0052】