(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】摩耗ライナを据付けるツール及び方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20221007BHJP
B64D 27/10 20060101ALN20221007BHJP
【FI】
F02C7/00 E
F02C7/00 A
F02C7/00 F
B64D27/10
(21)【出願番号】P 2018211864
(22)【出願日】2018-11-12
【審査請求日】2021-10-20
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】レイセオン テクノロジーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フリーマン
(72)【発明者】
【氏名】コリン ジー.アマドン
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4241487(US,A)
【文献】米国特許第6131260(US,A)
【文献】米国特許第5153974(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第3244017(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0241874(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2930311(EP,A1)
【文献】特開2013-139768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F01D 9/00-9/04
F01D 25/00
F01D 25/24
F01D 25/28
B64D 27/10
B25B 27/00
B25B 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンのファンケースの第1の溝に摩耗ライナを据付けるツールであって、
第1の端部と第2の端部を有する本体と、
前記本体に接続され、前記本体から延びるハンドルと、
前記本体の前記第1の端部に接続され、前記本体の前記第1の端部から延びる第1のガイド足と、
を含み、前記第1のガイド足は、前記本体に接続された第1の端部と、前記第1のガイド足の前記第1の端部と反対側の第2の端部とを含み、前記第1のガイド足の前記第2の端部は、曲線的で、面取り部分を含む、
前記ツール。
【請求項2】
前記本体の第1の側面に沿って延在する第1の面と、
前記本体の第2の側面に沿って延在する第2の面と、
をさらに含み、前記第2の面は、前記本体の前記第1の面の反対側にあり、前記第1の面と前記第2の面は、平坦である、
請求項1に記載のツール。
【請求項3】
前記第1のガイド足は、前記ファンケースの前記第1の溝の曲率に一致するように構成された曲率を含む、請求項1に記載のツール。
【請求項4】
前記本体の前記第1の端部に接続され、前記本体の前記第1の端部から延びる第2のガイド足をさらに含み、
前記第2のガイド足は、前記第1のガイド足が前記本体の前記第1の端部から延びる方向と反対の方向に前記本体の前記第1の端部から延び、前記第2のガイド足は、前記ファンケースの第2の溝に挿入されるように構成される、
請求項1に記載のツール。
【請求項5】
前記第1のガイド足は、第1の厚さを含み、前記第1のガイド足の前記第1の厚さは、前記ファンケースの前記第1の溝の幅未満である、請求項1に記載のツール。
【請求項6】
ガスタービンエンジンのファンケースの第1の溝にライナを設置する方法であって、
前記ライナの一部分を前記ファンケースの前記第1の溝に位置合わせすることと、
前記ライナの一部分を前記ファンケースの前記第1の溝に挿入することと、
ツールの第1のガイド足を、前記第1のガイド足と前記ファンケースの前記第1の溝の表面との間に前記ライナの一部分が配置されるように、前記ファンケースの前記第1の溝に挿入することと、
前記ファンケースに対して円周方向に前記ツールを動かすことと、
前記ツールの前記第1のガイド足を、前記第1のガイド足が前記ライナを前記第1の溝に引き込むように、前記ライナに係合させることと、
前記ライナが前記第1の溝に完全に据付けられるように、前記ライナを前記第1の溝内に据付けることと、
を含む、前記方法。
【請求項7】
前記ファンケースは、完全なファンケースの半分である分割ケースを含み、前記ファンケースに対して前記ツールを円周方向に動かすことは、前記ツールの前記第1のガイド足を前記分割ケースにおいて180度にわたって摺動させることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ライナを前記第1の溝に据付けることは、前記ライナの全ての主要な面を前記ファンケースの前記第1の溝の面に接触させることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ツールの第2のガイド足を、前記ファンケースの第2の溝に挿入することと、
前記ツールが前記ファンケースに対して前記円周方向に動かされると、前記ツールの前記第2のガイド足が前記ファンケースを通って摺動することと、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
複数の翼を前記第1の溝に設置することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記ツールの前記第1のガイド足を前記ライナに係合することは、
前記第1のガイド足の面取り部分を、前記ライナに接触するように、また、前記ライナを横断するように引き込むことと、
前記第1のガイド足の前記面取り部分によって前記ライナを前記第1の溝内の完全な据付け位置に引き込むことと、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記ライナを部分的に設置された位置から移動することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記ライナを前記ファンケースの前記第1の溝に挿入中、前記ライナが前記第1の溝で動かなくなったか否かを検出することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、摩耗ライナの設置に関する。より詳細には、本開示は、ファンケースの溝に摩耗ライナを設置するためのツールに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、米国空軍によって承認されたFA8626-15-D-0015-3501に基づき米国政府の支援により行われた。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
ガスタービンエンジンの運転環境は、非常に過酷である。運転速度での通常の使用による振動は、極度である。さらに、一部のエンジン構成要素が経験する運転温度は、非常に高温である。翼の足部は、エンジンの振動と高温により摩耗する多くの構成要素のうちの1つである。摩耗を低減するために、翼足部とエンジンケースとの間のファンケースの溝に摩耗ライナが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
摩耗ライナが、完全に真っ直ぐに溝に配置されない場合、摩耗ライナは、少し斜めになって動かなくなり、摩耗ライナを溝内に完全に据付けるのを妨げる場合がある。これは、ファンケースへのステータの設置を妨げる。ハンマを用いた大きな鈍力の使用等、力を加えて摩耗ライナを溝内に完全に据付けるという機械工が使用する既存の方法は、摩耗ライナを損傷し、摩耗ライナを故障させる危険がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ガスタービンエンジンのファンケースの第1の溝に摩耗ライナを据付けるツールは、本体、ハンドル、及び、第1のガイド足を含む。本体は、第1の端部及び第2の端部を含む。ハンドルは、本体に接続され、本体から延びる。第1のガイド足は、本体の第1の端部に接続され、本体の第1の端部から延びる。第1のガイド足は、本体に接続された第1の端部と、第1のガイド足の第1の端部の反対側の第2の端部とを含む。第1のガイド足の第2の端部は、曲線的で、面取り部分を含む。
【0006】
ガスタービンエンジンのファンケースの第1の溝にライナを設置する方法は、ライナの一部分をファンケースの第1の溝に位置合わせすることを含む。ライナの一部分は、ファンケースの第1の溝に挿入される。ツールの第1のガイド足が、第1のガイド足とファンケースの第1の溝の表面との間にライナの一部分が配置されるように、ファンケースの第1の溝に挿入される。ツールは、ファンケースに対して円周方向に動かされる。ツールの第1のガイド足は、ライナを第1の溝に引き入れるように、ライナと係合される。ライナは、第1の溝に完全に据付けられるように、第1の溝内に据付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2A】ステータと摩耗ライナとを有するファンケースの部分斜視図である。
【
図2B】J字形溝、ステータ、及び、摩耗ライナを有するファンケースの部分拡大斜視図である。
【
図3A】ファンケースのJ字形溝内に摩耗ライナを設置するツールの斜視図である。
【
図3B】
図3Aに示すのと別の角度から見たツールの別の斜視図である。
【
図4A】ファンケースのJ字形溝に挿入されたツールの断面図である。
【
図4B】ファンケースのJ字形溝に挿入されたツールの部分拡大断面図である。
【
図5B】ハンドルを斜めにしたツールの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本開示のライナ/翼組立体を含むガスタービンエンジン10の断面図である。
図1は、エンジン中心線C
Lに沿った縦断面図である。
図1は、ファンセクション12、圧縮機セクション14、燃焼器セクション16、タービンセクション18、高圧ロータ20、低圧ロータ22、エンジンケース24、ロータ段26、ステータ段28、及び、ファンケース30を含むガスタービンエンジン10を示す。圧縮機セクション14は、低圧ロータ段26L、高圧ロータ段26H、低圧ステータ段28L、及び、高圧ステータ段28Hを含む。タービンセクション18は、高圧ロータ段26H、低圧ロータ段26L、高圧ステータ段28H、及び、低圧ステータ段28Lを含む。
【0009】
図1に示すように、ファンセクション12は、ガスタービンエンジン10の前端部近くのエンジン中心線C
Lから延びる。圧縮機セクション14は、ファンセクション12の後方に、エンジン中心線C
Lに沿って配置され、続いて燃焼器セクション16がある。タービンセクション18は、燃焼器セクション16の隣で、圧縮機セクション14の反対側に位置する。高圧ロータ20と低圧ロータ22は、エンジン中心線C
Lを中心に回転するように取り付けられる。高圧ロータ20は、タービンセクション18の高圧部を圧縮機セクション14の高圧部に接続する。低圧ロータ22は、タービンセクション18の低圧部をファンセクション12と圧縮機セクション14の低圧部に接続する。エンジンケース24は、ガスタービンエンジン10を囲んで、圧縮機セクション14、燃焼器セクション16、及び、タービンセクション18に構造的支持を提供し、且つ、エンジン10を通る空気流を閉じ込める。ロータ段26とステータ段28は、圧縮機セクション14とタービンセクション18を通して交互に配置される。高圧ロータ段26Hは、高圧ロータ20に接続し、低圧ロータ段26Lは、低圧ロータ22に接続する。ファンケース30は、ファンセクション12を囲むエンジンケース24の一部分である。
【0010】
運転時、空気流Fは、ファンブレード12の間を通った後、圧縮機セクション14に入る。空気流Fは、高圧タービンセクション18によって駆動される圧縮機セクション14の回転によって圧縮される。圧縮機セクション14からの圧縮空気は、分割されて、一部は燃焼器セクション16に行き、一部は、ファン12を通って迂回し、一部は、構成要素の冷却、バッファ、及び、他の目的に使われる。圧縮空気と燃料が、燃焼器セクション16で混合、発火されて、高温、高圧の燃焼ガスFPを生成する。燃焼ガスFPは、燃焼器セクション16を出て、タービンセクション18に入る。
【0011】
低圧ステータ段28Lと高圧ステータ段28Hは、空気流Fと燃焼ガスFPの流れを次の低圧ロータ段26Lと高圧ロータ段26Hに対して、それぞれ、効率的な迎え角になるように適切に調整する。タービンセクション18の低圧ロータ段26Lを過ぎた燃焼ガス流FPは、低圧ロータ22(低圧ロータ22は、ファンブレード12を駆動して、ガスタービンエンジン10からの推力FSを生成する)と低圧圧縮段26Lの回転を駆動する。タービンセクションの高圧ロータ段26Hは、高圧ロータ20を駆動し、高圧ロータ20は、圧縮機セクション14の高圧ロータ段26Hを駆動する。
【0012】
航空用途のターボファンガスタービンエンジンに関して本開示の実施形態を説明するが、本開示は、他の航空ガスタービンエンジンや、産業用ガスタービンエンジンにも適用されることを理解されたい。
【0013】
図2Aは、ファンケース30の部分斜視図であり、ファンケース30(J字形溝32を有する)、翼34(エアフォイル36、内側プラットフォーム38、及び、外側プラットフォーム40を有する)、及び、摩耗ライナ42を示す。
図2Bは、
図2Aの部分2B-2Bの拡大斜視図で、ファンケース30(J字形溝32を有する)、翼34((後方足部44を含む)外側プラットフォーム40を有する)、及び、摩耗ライナ42を示す。
図2A及び2Bは、同一または類似の要素を含むので、まとめて記述する。
【0014】
この非制限的な実施形態において、ファンケース30は、ガスタービンエンジン10のファンケースの全周の半分である。J字形溝32は、ファンケース30内で円周方向に延在するスロットまたは溝である。翼34は、翼34を通って流れる空気流を操作するように構成された静翼である。エアフォイル36は、翼34のエアフォイル部分である。内側プラットフォーム38と外側プラットフォーム40は、ファンケース30等のケースに取り付けるために構成された翼34の反対側の端部である。摩耗ライナ42は、2つの物の間の摩損または摩耗を防ぐように構成されたライナである。後方足部44は、翼34をファンケース30に取り付ける係合機能である。
【0015】
ファンケース30は、ガスタービンエンジン10の一部分を囲む。J字形溝32は、ファンケース30の半径方向内側表面に沿って設けられ、ファンケース30の円周に沿って延在する(ファンケース30の場合、180度延在する)。J字形溝32は、翼34の外側プラットフォーム40を受ける。翼34は、外側プラットフォーム40がJ字形溝32と係合することによってファンケース30に取り付けられる。エアフォイル36は、内側プラットフォーム38と外側プラットフォーム40の間に接続され、それらの間に延在する。内側プラットフォーム38は、エアフォイル36の半径方向内側端部に接続される。外側プラットフォーム40は、エアフォイル36の半径方向外側端部に接続される。摩耗ライナ42は、J字形溝32内に据付けられ、外側プラットフォーム38の後方足部44とJ字形溝32の表面(複数可)との間に配置される。後方足部44は、J字形溝32内に配置され、摩耗ライナ42と接触する。
【0016】
ファンケース30は、ガスタービンエンジン10のファン部分12に筐体を提供し、ファン部分12を収容する。J字形溝32は、翼34をファンケース30に取り付けるように、翼34の後方足部44を受ける。J字形溝32は、摩耗ライナ42を受け止めるように構成され、また、後方足部44の部分とJ字形溝32を形成するファンケース30の表面との間に摩耗ライナ42を保持するように構成される。翼34のエアフォイル36は、ガスタービンエンジン10の運転に有益なように空気流を向けるように、翼34を通る空気流を誘導、妨害するエアフォイルとして構成される。内側プラットフォーム38は、翼34のエアフォイル36を支持する働きをし、翼34に追加の取り付け機能を提供する。外側プラットフォーム40は、ファンケース30のJ字形溝32内に配置された後方足部44に適合され、そこから翼34を支持できるようになっている。摩耗ライナ42は、翼34とファンケース30との間の振動を抑制し、外側プラットフォーム40とファンケース30との間の熱成長に対応し、翼34のJ字形溝32への組立またはJ字形溝32からの分解を容易にする。
【0017】
図3Aは、ファンケース30のJ字形溝32内に摩耗ライナ42を設置するツール46の斜視図であり、ハンドル48、本体50(第1の端部52、第2の端部54、第1の側面56(第1の面58を含む)を有する)、第1のガイド足60(第1の端部62及び第2の端部64(第1の面取り部66A及び第2の面取り部66Bを含む)を有する)、及び、第2のガイド足68を有するツール46を示す。
図3Bは、(
図3Aとは別の角度からの)ツール46の斜視図で、ハンドル48、本体50(第1の端部52、第2の端部54、第2の側面70(第2の面72を含む)を有する)、第1のガイド足60(第1の端部62及び第2の端部64(第1の面取り部66Aと第2の面取り部66Bを含む)を有する)、及び、第2のガイド足68を含むツール46を示す。
図3A及び3Bは、同一または類似の要素を含むので、まとめて記述する。
【0018】
ツール46は、摩耗ライナ設置ツールである。非限定的な一実施形態においては、ツール46は、ステレオリソグラフィによって形成でき、及び/または、ツール46とその構成要素の材料は、ポリオキシメチレン等の熱可塑性物質を含んでよい。ハンドル48は、固体材料の細長い円筒または長手方向シャフトである。本体50は、ツール46の主要部分である。この非限定的な実施形態において、本体50は、直方体の形状である。他の非限定的な実施形態においては、本体50は、多面体等の他の幾何学的形状を含み得る。第1の端部52と第2の端部54は、本体50の反対側の端部である。第1の側面56と第2の側面70は、本体50の反対側の側面である。第1の面58と第2の面72は、本体50の平坦な表面である。第1のガイド足60と第2のガイド足68は固体材料の平坦な突出部である。第1の端部62と第2の端部64は、第1のガイド足60の反対側の端部である。第1の面取り部66Aと第2の面取り部66Bは、第1のガイド足60の傾斜した、または、斜めの表面である。非限定的な一実施形態においては、第1の面取り部66A及び/または第2の面取り部66Bの表面は、平坦な表面であってよい。他の非限定的な実施形態においては、第1の面取り部66A及び/または第2の面取り部66Bの表面は、摩耗ライナ42の一部分の曲線的な形に一致するように、または、第1のガイド足60の第2の端部64の縁の曲線的な形に一致するように、曲線的であってよい。他の非限定的な実施形態においては、第2のガイド足68は、第1のガイド足60に類似した少なくとも1つの面取り部を含み得る。
【0019】
使用中、ツール46は、J字形溝32の一部分に挿入され、摩耗ライナ42と接触する。ハンドル48は、本体50の第2の端部54に接続され、本体50の第2の端部54から延びる。本体50は、ハンドル48、第1のガイド足60、第2のガイド足68に接続される。第1の端部52と第2の端部54は、互いに本体50の反対表面に設けられる。第1の端部52と第2の端部54は、本体50の長手方向端部に配置される。第1の側面56と第2の側面70は、互いに本体50の反対の表面に設けられる。第1の側面56と第2の側面70は、本体50の第1の面58と第2の面72を形成する。第1の面58と第2の面72は、それぞれ、本体50の第1の側面56と第2の側面70に設けられる。第1の面58と第2の面72は、本体50の主要な面を形成する。非制限的な一実施形態において、第1の面58と第2の面72は、ガイド足60の接線に大体(また、ほぼ)直交する。
【0020】
第1のガイド足60と第2のガイド足68は、本体50の第1の端部52に取り付けられる、または、本体50の第1の端部52と共に形成される。第1のガイド足60の第1の端部62は、本体50の第1の端部52に接続される。第1のガイド足60の第2の端部64は、第1の端部62から反対方向に延びる。第1の面取り部66Aと第2の面取り部66Bは、第1のガイド足60の第2の端部64の部分に傾斜した表面を形成する。
【0021】
ツール46は、摩耗ライナ42がJ字形溝32に完全に据付けられるように、摩耗ライナ42をJ字形溝32に設置するために使用される。非限定的な一実施形態においては、ツール46は、ツール46を用いて摩耗ライナ42をJ字形溝32に入れ、摩耗ライナ42をJ字形溝32の完全な据付け位置まで引き入れることによって、摩耗ライナ42をJ字形溝32に完全に設置するために使用できる。他の非限定的な実施形態においては、ツール46は、設置中の、摩耗ライナ42がJ字形溝32内で動けなくなった、または、詰まった時点で使用できる。摩耗ライナ42をJ字形溝32に挿入中に、摩耗ライナ42がJ字形溝32内で動かなくなった場合、ツール46は、摩耗ライナ42がJ字形溝32内で動くのを可能にするように(すなわち、摩耗ライナ42の詰まりを取り除くように)、摩耗ライナ42が動かなくなった場所で、摩耗ライナ42を取り除くために使用でき、それによって、摩耗ライナ42は、J字形溝32内に完全に据付けられる。
【0022】
ハンドル48は、ツール46のユーザがファンケース30の円周に沿ってツール46を動かす時、ユーザに把持部を提供する。本体50は、ツール46の構成要素を全て結び付ける。第1の面58と第2の面72は、摩耗ライナ42がJ字形溝32に沿って進むように、本体50にケース30に対して接線方向にユーザが力を加えることができる表面を提供する。非限定的な一実施形態においては、ユーザは、ファンケース30に沿ってツール46を円周方向に少しずつ動かすように、第1の面58または第2の面72のうちの1つの上に円周方向(すなわち、摩耗ライナ42に対して真っすぐではない)に別のツール(例えば、ハンマ)を用いて力を加えることができる。ツール46がファンケース30に対して円周方向に動かされると、第1のガイド足60を使用して、摩耗ライナ42は、J字形溝32内に引き入れられる。
【0023】
ツール46が、ファンケース30に対して円周方向に動かされると、第1のガイド足60が摩耗ライナ42をJ字形溝32に引き入れるように、第1の面取り部66Aは、摩耗ライナ42と係合する。第1の面取り部66Aは、摩耗ライナ42に接触し、摩耗ライナ42を横断するように引き入れられる。第1の面取り部66Aが、J字形溝32を通して摩耗ライナ42の部分を横断するように引き入れられると、第1の面取り部66Aの傾斜面が、完全な据付け位置に摩耗ライナ42を引き入れる役割をする。例えば、第1の面取り部66Aの傾斜面は、摩耗ライナ42に徐々に力を加えるウェッジとして働いて、J字形溝32内の完全な据付け(すなわち、完全な設置)位置まで摩耗ライナ42をJ字形溝32内にさらに引き込む。
【0024】
摩耗ライナ42が、J字形溝32内に完全に真っ直ぐに配置されない場合、摩耗ライナ42は、少し斜めになって動かなくなり、摩耗ライナ42のJ字形溝32内への完全な据付けが妨げられることがある。摩耗ライナ42が動かなくなると、翼34のファンケース30への設置が妨げられる場合がある。ツール46を使用する前は、機械工は、摩耗ライナ42の外側部分に力を加えて、摩耗ライナ42をJ字形溝32の底に押し付けて、摩耗ライナ42を損傷する危険があった。摩耗ライナ42は、損傷すると、割れることがあり、摩耗ライナ42の一部が、ガスタービンエンジン10に吸い込まれる場合がある。ツール46を使用することによって、急な力や鈍力を摩耗ライナ42に直接、加えること無しに摩耗ライナ42を設置することが可能になり、これによって、摩耗ライナ42を損傷する危険が最小限になる。摩耗ライナ42をJ字形溝32に引き入れるためにツール46が摩耗ライナ42に加える引張動作によって、摩耗ライナ42をJ字形溝32内に下向きに押すためにユーザが摩耗ライナ42に直接、力を加える必要が無くなる。
【0025】
図4Aは、J字形溝32内に挿入されたツール46の断面図で、ファンケース30(J字形溝32と第2の溝74を有する)、摩耗ライナ42、ツール46、本体50、第1のガイド足60、及び、第2のガイド足68を示す。第2の溝74は、ファンケース30内に設けられ、円周方向に延在するスロットまたは溝である。摩耗ライナ42は、第1のガイド足60とJ字形溝32の表面との間に配置される。この非限定的な実施形態において、
図4Aは、摩耗ライナ42が、J字形溝32内に完全に据付けられて、摩耗ライナ42の表面とJ字形溝32の表面との間には隙間も空間も無いように示されている。言い換えると、摩耗ライナ42は、J字形溝32内に、翼34のJ字形溝32内への設置を可能にする所望の位置に完全に据付けられているので、摩耗ライナ42をJ字形溝32内にそれ以上、押し込むことはできない。ファンケース30と共にツール46を使用している間、第1のガイド足60と第2のガイド足68は、J字形溝32と第2の溝74内に、それぞれ、挿入される。
【0026】
第1のガイド足60は、摩耗ライナ42の表面の部分の輪郭(及び、J字形溝32の輪郭)に一致するように丸い縁を含む。第2の溝74は、第2のガイド足68を受ける。第2のガイド足68の断面形状は、第2の溝74の断面の形状または輪郭に一致する。ツール46は、第1のガイド足60がJ字形溝32内に挿入され、第2のガイド足68が第2の溝74内に挿入されるように、ファンケース30に対して配置される。
【0027】
第1のガイド足60の丸い縁は、ツール46が、摩耗ライナ42上またはJ字形溝32の部分の上に引っ掛かることなく、J字形溝32を通って摺動するのを可能にする。仮に、ツール46が、第1のガイド足60の縁に沿って尖った角を有すると、このような角は、J字形溝32の表面に引っ掛かって動かなくなる可能性に加えて、摩耗ライナ42に引っ掛かって損傷を引き起こす危険がある。第2のガイド足68を第2の溝74内に挿入して、第2の溝74を通って摺動させることによって、第1のガイド足60がJ字形溝32を通って摩耗ライナ42にわたって摺動する時、ツール46に追加の誘導を提供し、第1のガイド足60とJ字形溝32との適切な位置合わせを維持するように支援する。第2のガイド足68を第2の溝74に挿入して、第2の溝74を通って摺動させることは、第1のガイド足60をJ字形溝32を通って動かす時、第1のガイド足60が、
図4A及び4Bに示す据付け位置等、完全な据付け位置に摩耗ライナ42を引き入れるように、第1のガイド足60がJ字形溝32内に完全に挿入されることも確実にする。
【0028】
非限定的な一実施形態においては、摩耗ライナ42をファンケース30のJ字形溝32内に設置する方法は、摩耗ライナ42の一部分とファンケース30のJ字形溝32との位置を合わせることを含む。摩耗ライナ42の一部分が、ファンケース30のJ字形溝32に挿入される。摩耗ライナ42のファンケース30のJ字形溝32への挿入中に、摩耗ライナ42がJ字形溝32内で動かなくなっているか否かを、次に、ユーザが目視で検出する。
【0029】
摩耗ライナ42が、J字形溝32内で動かなくなった場合、ツール46の第1のガイド足60がファンケース30のJ字形溝32内に挿入され、摩耗ライナ42の一部分が第1のガイド足60とファンケース30のJ字形溝32の表面との間に配置されるように、ツール46が、ファンケース30に係合される。ツール46の第2のガイド足68は、ファンケース30の第2の溝74に挿入できる。ツール46は、ファンケース30に対して円周方向に動かされる。ツール46をファンケース30に対して円周方向に動かすことは、分割ケースにおいて180度にわたってツール46の第1のガイド足60を摺動させることを含む。ツール46がファンケース30に対して円周方向に動かされると、ツール46の第2のガイド足68もファンケース30を通って摺動することができる。
【0030】
ツール46の第1のガイド足60は、第1のガイド足60が摩耗ライナ42をJ字形溝32内に引き込むように、摩耗ライナ42に係合される。ツール46の第1のガイド足60を摩耗ライナ42に係合することは、第1のガイド足60の第1の面取り部66Aが摩耗ライナ42に接触し、摩耗ライナ42を横断するように引き入れることと、第1のガイド足60の第1の面取り部66Aによって摩耗ライナ42をJ字形溝32内の完全な据付け位置に引き入れることとを含む。摩耗ライナ42は、部分的に設置された位置から移動し、摩耗ライナ42がJ字形溝32内に完全に据付けられるように、J字形溝32内に引き込まれる。摩耗ライナ42をJ字形溝32内に据付けることは、摩耗ライナ42の全ての主要な面をファンケース30のJ字形溝32の表面に接触させることを含み得る。次に、複数の翼34をファンケース30のJ字形溝32内に設置できる。
【0031】
ツール46を使用して、摩耗ライナを移動し、J字形溝32内に完全に設置することによって、摩耗ライナ42に引っ掛かることなしに、翼34をファンケース30に設置するのを可能にする。摩耗ライナ42が、J字形溝32内に完全に据付けられない位置で動かなくなった場合、翼34の足部(例えば、後方足部44)が、摩耗ライナ42に引っ掛かって、翼34の一部または全てが、ファンケース30に正確に設置されるのが妨げられることがある。
【0032】
図4Bは、J字形溝32に挿入されたツール46の部分拡大断面図であり、ファンケース30、J字形溝32(幅W
Jを有する)、摩耗ライナ42、ツール46、本体50、第1のガイド足60(幅W
GFを有する)、第1のガイド足60の第1の端部62、及び、第1のガイド足60の第2の端部64を示す。幅W
Jは、J字形溝32の幅である。
図4A及び4Bの実施形態において、幅W
Jは、ガスタービンエンジン10のファンケース30に関連する軸方向のJ字形溝32の幅である。幅W
GFは、第1のガイド足60の幅である。J字形溝32の幅W
Jは、第1のガイド足60の幅W
GFより大きい。第1のガイド足60の幅W
GFは、J字形溝32の幅W
Jより小さい。J字形溝32の幅W
Jが、第1のガイド足60の幅W
GFより大きいと、第1のガイド足60は、J字形溝32の表面に引っ掛からずに、J字形溝32を通って摺動できる。ツール46の第1のガイド足60と第2のガイド足68は、翼34の足部(例えば、後方足部44)よりJ字形溝32に緩く嵌合して、ツール46が、J字形溝32を通ってより容易に円周方向に摺動するのを可能にする。
【0033】
図5Aは、設置ツール46の上面図であり、ツール46、ハンドル48、本体50、本体50の第1の端部52、本体50の第2の端部54、本体50の第1の側面56、本体50の第2の側面70、第2のガイド足68、及び、第2のガイド足68の弧A
2GFを示す。
【0034】
弧A2GFは、第2のガイド足68の曲率量を表す。この非限定的な実施形態において、第2のガイド足68の弧A2GFは、ファンケース30の円周方向の第2の溝74の曲率に一致及び/または対応する。他の非制限的な実施形態においては、第1のガイド足60は、ファンケース30の円周方向のJ字形溝32の曲率に一致及び/または対応する曲率を有する弧を含む。第2のガイド足68の弧A2GFと第1のガイド足60の弧が、それぞれ、第2の溝74とJ字形溝32に一致及び/または対応すると、ツール46がファンケース30の円周に沿って動かされる時、ツール46は、J字形溝32と第2の溝74に対して、円周方向及び半径方向に位置合わせされたままである。
【0035】
図5Bは、角度θで設定されたハンドル48を有するツール46の上面図で、ツール46、ハンドル48(長手方向軸A
Hを有する)、本体50(長手方向軸A
Bを有する)、本体50の第1の端部52、本体50の第2の端部54、本体50の第1の側面56、本体50の第2の側面70、第2のガイド足68、第2のガイド足68の弧A
2GF、及び、角度θを示す。長手方向軸A
Hは、ツール46のハンドル48の長手方向に沿って延びる軸である。長手方向軸A
Bは、ツール46の本体50の長手方向に沿って延びる軸である。この非限定的な実施形態において、本体50の長手方向は、本体50の直方体形状によって表されるデカルト座標の3寸法の各寸法のうち最も大きい(すなわち、最も長い)本体50の寸法に沿って延びる。角度θは、ハンドル48の長手方向軸A
Hと本体50の長手方向軸A
Bとの間の角度である。
【0036】
この限定的な実施形態において、ハンドル48は、本体50の第1の側面56で本体50に取り付けられる。ハンドル48の長手方向軸A
Hは、本体50の長手方向軸A
Bに対して角度θで向けられる。この非限定的な実施形態において、角度θは、0度より大きく、90度未満である。他の非限定的な実施形態においては、摩耗ライナ42のJ字形溝32内への据付け中、第1のガイド足60または第2のガイド足68のいずれかが、それぞれ、J字形溝32と第2の溝74に挿入され、且つ、ツール46がファンケース30の円周に沿って動かされる時、角度θは、ハンドル48が、摩耗ライナ42またはファンケース30に接触するのを防ぐ角度量を含む。非限定的な一実施形態においては、ツール46がファンケース30に係合される(例えば、第2のガイド足68が第2の溝74内に挿入される、及び/または、第1のガイド足60がJ字形溝32に挿入される)時、本体50の長手方向軸A
Bは、本体50の長手方向軸A
Bがファンケース30と交差する点で、ファンケース30の接線(
図5Bには示さず)に垂直に向けられる。
【0037】
角度θがゼロより大きいことは、ハンドル48が
図5Aのように構成されている場合よりも、ツール46に加える力をハンドル48を介してJ字形溝32の接線により平行に向けることによって、J字形溝32の円周の周囲にツール46を向ける助けになる。この非限定的な実施形態において、
図5Bは、第1のガイド足60及び第2のガイド足68により近い位置に駆動力を加えながら、J字形溝32または摩耗ライナ42の邪魔にならないように第1のガイド足60及び第2のガイド足68からハンドル48を十分に離した、ハンドル48の(例えば、第1の側面56上の)代替の接続点を表す。
可能な実施形態の記述
以下に本発明の可能な実施形態を限定的ではなく記載する。
【0038】
ガスタービンエンジンのファンケースの第1の溝に摩耗ライナを据付けるツールは、本体、ハンドル、及び、第1のガイド足を含む。本体は、第1の端部と第2の端部を含む。ハンドルは、本体に接続され、本体から延びる。第1のガイド足は、本体の第1の端部に接続され、第1の端部から延びる。第1のガイド足は、本体に接続された第1の端部と、第1のガイド足の第1の端部の反対側の第2の端部とを含む。第1のガイド足の第2の端部は、曲線状で、面取り部分を含む。
【0039】
上記段落のツールは、任意選択で、以下の特徴、構成、及び/または、追加の構成要素のいずれか1つまたは複数を追加及び/または代替で含むことができる。
【0040】
第1の面は、本体の第1の側面に沿って延在してよく、及び/または、第2の面は、本体の第2の側面に沿って延在してよく、第2の面は、本体の第1の面の反対側にあってよく、第1の面及び/または第2の面は、平坦であってよい。
【0041】
第1のガイド足は、ファンケースの第1の溝の曲率と一致するように構成できる曲率を含んでよい。
【0042】
第2のガイド足は、本体の第1の端部に接続してよい、及び/または、第1の端部から延びてよく、第2のガイド足は、第1のガイド足が本体の第1の端部から延びる方向と反対であり得る方向に、本体の第1の端部から延びてよく、第2のガイド足は、ファンケースの第2の溝に挿入されるように構成されてよい。
【0043】
第1のガイド足は、第1の厚さを含んでよく、第1のガイド足の第1の厚さは、ファンケースの第1の溝の幅未満であってよい。
【0044】
ガスタービンエンジンのファンケースの第1の溝にライナを設置する方法は、ライナの一部分をファンケースの第1の溝に位置合わせすることを含む。ライナの一部分が、ファンケースの第1の溝に挿入される。ツールの第1のガイド足が、ライナの一部分が第1のガイド足とファンケースの第1の溝の表面との間に配置されるように、ファンケースの第1の溝に挿入される。ツールが、ファンケースに対して円周方向に動かされる。ツールの第1のガイド足が、第1のガイド足がライナを第1の溝に引き込むように、ライナと係合される。ライナが、第1の溝に完全に据付けられる。
【0045】
上記段落の方法は、任意選択的に、以下のステップ、特徴、構成、及び/または、追加の構成要素の任意の1つまたは複数を追加及び/または代替で含むことができる。
【0046】
ファンケースは、完全なファンケースの半分であってよい分割ケースを含むことができ、ファンケースに対して円周方向にツールを動かすことは、分割ケースにおいて180度にわたってツールの第1のガイド足を摺動させることをさらに含み得る。
【0047】
ライナの全ての主要な面は、ファンケースの第1の溝の表面に接触させてよい。
【0048】
ツールの第2のガイド足が、ファンケースの第2の溝に挿入されてよい、及び/または、ツールが、ファンケースに対して円周方向に動かされると、ツールの第2のガイド足は、ファンケースにわたって摺動できる。
【0049】
複数の翼が、第1の溝に挿入されてよい。
【0050】
第1のガイド足の面取り部分は、ライナに接触するように、及び/または、ライナを横断するように引き込まれてよく、及び/または、ライナは、第1のガイド足の面取り部分と共に、第1の溝内の完全な据付け位置に引き込まれてよい。
【0051】
ライナは、部分的に設置された位置から移動することができる。
【0052】
ファンケースの第1の溝へのライナの設置中にライナが第1の溝で動かなくなったか否かを検出できる。
【0053】
例示の実施形態(複数可)を参照して発明を記載したが、発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を行ってよく、発明の要素を同等物で置き換えてよいことを、当業者は理解されよう。さらに、発明の本質的な範囲を逸脱することなく、特定の状況または材料を発明の教示に適合させるために多くの修正が行われてよい。よって、発明は、開示された特定の実施形態(複数可)に限定されず、発明は、添付の特許請求の範囲に該当する全ての実施形態を含むことを意図している。