(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】高体積および重量エネルギー密度を有するアルカリ金属-硫黄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20221007BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20221007BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221007BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20221007BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20221007BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221007BHJP
H01M 4/60 20060101ALI20221007BHJP
H01M 4/1397 20100101ALI20221007BHJP
H01M 4/1399 20100101ALI20221007BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20221007BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221007BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20221007BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20221007BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20221007BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20221007BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20221007BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20221007BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/054
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/58
H01M4/36 A
H01M4/60
H01M4/1397
H01M4/1399
H01M4/1395
H01M4/66 A
H01M4/74 Z
H01M4/587
H01M10/0565
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/80 C
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2018536293
(86)(22)【出願日】2017-01-10
(86)【国際出願番号】 US2017012847
(87)【国際公開番号】W WO2017123544
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2019-11-21
(32)【優先日】2016-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-256584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0272610(US,A1)
【文献】特表2015-525730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052-10/0587
H01M 4/13-4/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属-硫黄電池を製造するための方法において、前記アルカリ金属が、リチウム(Li)および/またはナトリウム(Na)から選択され、
(a)第1の導電性多孔質構
造を用意するステップと、
(b)第2の導電性多孔質構
造を用意するステップと、
(c)前記第1の導電性多孔質構造の細孔に第1の懸濁液を注入または含浸させてアノード電極を形成するステップであって、前記第1の懸濁液が、アノード活性材料、任意選択の導電性添加剤、および第1の液体またはゲル電解質を含み、前記アノード電極と前記第1の導電性多孔質構造との形状および寸法が類似または同等である、ステップと、
(d)前記第2の導電性多孔質構造の細孔に第2の懸濁液を注入または含浸させてカソード電極を形成するステップであって、前記第2の懸濁液が、カソード活性材料、任意選択の導電性添加剤、および第2の液体またはゲル電解質を含み、前記カソード活性材料が、硫黄、ポリ硫化リチウム、ポリ硫化ナトリウム、硫黄-ポリマー複合体、オルガノスルフィド、硫黄-炭素複合体、硫黄-グラフェン複合体、またはそれらの組合せから選択され、前記カソード電極と前記第2の導電性多孔質構造との形状および寸法が類似または同等である、ステップと、
(e)前記アノード電極、セパレータ、およびカソード電極を組み立てて、前記アルカリ金属-硫黄電池にするステップと
を含み、
前記方法の使用中に、前記アノード電極への乾燥はなく、前記カソード電極への乾燥はないことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記ステップ(c)の前に前記第1の懸濁液および前記第2の懸濁液を調製するステップを有し、
前記ステップ(c)の前もしくは後、または前記ステップ(d)の前もしくは後に、多孔質アノード集電体としての前記第1の導電性多孔質構造、多孔質カソード集電体としての前記第2の導電性多孔質構造、および前記多孔質アノード集電体と前記多孔質カソード集電体との間に配設された多孔質セパレータから構成される多孔質セルフレームワークを組み立てるステップであって、前記多孔質アノード集電体および/または前記多孔質カソード集電体が、200μm以上の厚さ、および少なくとも70体積%の細孔を有する、ステップを有し、
前記アノード活性材料が前記アノード電極内で20mg/cm
2以上の材料質量装填量を有し、または前記カソード活性材料が前記カソード電極内で15mg/cm
2以上の材料質量装填量を有するようになる程度まで、前記アノード集電体の細孔に前記第1の懸濁液を注入して前記アノード電極を形成し、前記カソード集電体の細孔に前記第2の懸濁液を注入して前記カソード電極を形成する
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法におい
て、
前記アノード活性材料が、前記アノード電極内で20mg/cm
2以上の材料質量装填量を有し、および/または前記カソード活性材料が、前記カソード電極内で10mg/cm
2以上の材料質量装填量を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
アルカリ金属-硫黄電池を製造するための方法において、前記アルカリ金属がリチウム(Li)および/またはナトリウム(Na)から選択され、
(a)カソード集電体としての第1の導電性多孔質構造、アノード集電体、および前記アノード集電体とカソード集電体との間に配設された多孔質セパレータから構成された多孔質セルフレームワークを組み立てるステップであって、前記第1の導電性多孔質構造が、200μm以上の厚さ、および少なくとも70体積%の細孔を有し、前記アノード集電体が、2つの対向する主面を有し、前記2つの主面の少なくとも1つが、ナトリウムもしくはリチウム金属、または中に少なくとも50重量%のナトリウムまたはリチウム元素を有する合金の層を含むステップと、
(b)第1の液体電解質中に分散されたカソード活性材料の第1の懸濁液を調製するステップであって、前記カソード活性材料が、硫黄、ポリ硫化リチウム、ポリ硫化ナトリウム、硫黄-ポリマー複合体、オルガノスルフィド、硫黄-炭素複合体、硫黄-グラフェン複合体、またはそれらの組合せから選択される、ステップと、
(c)前記カソード活性材料が
10mg/cm
2以上の電極活性材料装填量を成す程度に、前記第1の懸濁液を前記第1の導電性多孔質構造の細孔に注入して、カソード電極を形成し、前記アノード、前記セパレータ、および前記カソードが、前記注入ステップが行われる前または後に保護ハウジング内に組み立てられるステップと
を含み、
前記方法の使用中に、前記アノード電極への乾燥はなく、前記カソード電極への乾燥はないことを特徴とする方法。
【請求項5】
アルカリ金属-硫黄電池を製造するための方法において、前記アルカリ金属が、リチウム(Li)および/またはナトリウム(Na)から選択され、
(a)少なくとも1つまたは複数の導電性多孔質構造と、液体電解質と混合されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤の1つまたは複数の湿潤カソード層とを用意するステップであって、前記カソード活性材料が、硫黄、ポリ硫化リチウム、ポリ硫化ナトリウム、硫黄-ポリマー複合体、オルガノスルフィド、硫黄-炭素複合体、硫黄-グラフェン複合体、またはそれらの組合せから選択され、前記導電性多孔質構造が、相互接続された導電性経路、および少なくとも80体積%の細孔を含む、ステップと、
(b)2つの反対側の主面を有するアノード集電体を有するアノード電極を用意するステップであって、前記2つの主面の少なくとも一方が、中に少なくとも50重量%のNaおよび/またはLi元素を有するアルカリ金属またはアルカリ金属性合金の層を堆積されるステップと、
(c)前記アノード電極と接触して多孔質セパレータ層を配置するステップと、
(d)
前記アノード電極、多孔質セパレータ、およびカソード電極をハウジング内に組み立てて封止して、前記アルカリ金属電池を製造するステップと
を含み、
前記カソード活性材料が、前記カソード電極内で10mg/cm
2以上の材料質量装填量を有し、
前記方法の使用中に、前記アノード電極への乾燥はなく、前記カソード電極への乾燥はな
いことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記カソード活性材料が、前記
第2の導電性多孔質構造の細孔壁に結合された硫黄、炭素もしくは黒鉛材料に結合されたまたは炭素もしくは黒鉛材料によって閉じ込められた硫黄、ポリマーに結合されたまたはポリマーによって閉じ込められた硫黄、硫黄-炭素化合物、金属硫化物M
xS
y(ここで、xは1~3の整数であり、yは1~10の整数であり、MはLi、Na、K、Mg、Ca、遷移金属、周期表の第13族~第17族の金属、およびそれらの組合せから選択される金属元素である)から選択されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法において、前記カソード活性材料が、前記カソード集電体の細孔壁に結合された硫黄、炭素もしくは黒鉛材料に結合されたまたは炭素もしくは黒鉛材料によって閉じ込められた硫黄、ポリマーに結合されたまたはポリマーによって閉じ込められた硫黄、硫黄-炭素化合物、金属硫化物M
xS
y(ここで、xは1~3の整数であり、yは1~10の整数であり、Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、遷移金属、周期表の第13族~第17族の金属、およびそれらの組合せから選択される金属元素である)から選択されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法において、前記カソード活性材料が、前記
導電性多孔質構造の細孔壁に結合された硫黄、炭素もしくは黒鉛材料に結合されたまたは炭素もしくは黒鉛材料によって閉じ込められた硫黄、ポリマーに結合されたまたはポリマーによって閉じ込められた硫黄、硫黄-炭素化合物、金属硫化物M
xS
y(ここで、xは1~3の整数であり、yは1~10の整数であり、MはLi、Na、K、Mg、Ca、遷移金属、周期表の第13族~第17族の金属、およびそれらの組合せから選択される金属元素である)から選択されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記導電性多孔質構造が、金属発泡体、金属ウェブまたはスクリーン、穿孔された金属シートベースの構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマーコーティング繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、およびそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項4に記載の方法において、前記導電性多孔質
構造が、金属発泡体、金属ウェブまたはスクリーン、穿孔された金属シートベースの構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマーコーティング繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、およびそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項5に記載の方法において、前記導電性多孔質
構造が、金属発泡体、金属ウェブまたはスクリーン、穿孔された金属シートベースの構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマーコーティング繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、およびそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、カソード
活性材料層の厚さと
第2の導電性多孔質構造の厚さの比が0.8/1~1/0.8であり、および/または前記カソード活性材料が15mg/cm
2よりも大きい電極活性材料装填量を成し、前記
第2の導電性多孔質構造が300μm以上の厚さを有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記カソード活性材料が、
(a)軟質炭素、硬質炭素、高分子炭素または炭化樹脂、メソフェーズ炭素、コークス、炭化ピッチ、カーボンブラック、活性炭、ナノセル炭素発泡体、または部分的に黒鉛化された炭素の粒子から選択されるナノ構造化または多孔質無秩序炭素材料;
(b)単層グラフェンシートまたは多層グラフェンプレートレットから選択されるナノグラフェンプレートレット;
(c)単壁カーボンナノチューブまたは多壁カーボンナノチューブから選択されるカーボンナノチューブ;
(d)カーボンナノファイバ、ナノワイヤ、金属酸化物ナノワイヤまたは繊維、導電性ポリマーナノファイバ、またはそれらの組合せ;
(e)カルボニル含有有機またはポリマー分子;
(f)硫黄を可逆的に捕捉するカルボニル基、カルボン酸基、またはアミン基を含む機能性材料;
およびそれらの組合せ
からなる群から選択される機能性材料またはナノ構造化材料によって支持されていることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記アノード活性材料が、アルカリ金属、アルカリ金属合金、アルカリ金属またはアルカリ金属合金とアルカリインターカレーション化合物との混合物、アルカリ元素含有化合物、およびそれらの組合せから選択されるアルカリイオン源を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、前記アノード活性材料が、石油コークス、カーボンブラック、無定形炭素、活性炭、硬質炭素、軟質炭素、鋳型炭素、中空炭素ナノワイヤ、中空炭素球、天然黒鉛、人工黒鉛、リチウムまたはナトリウムチタン酸塩、NaTi
2(PO
4)
3、Na
2Ti
3O
7、Na
2C
8H
4O
4、Na
2TP、Na
xTiO
2(x=0.2~1.0)、Na
2C
8H
4O
4、カルボン酸塩ベースの物質、C
8H
4Na
2O
4、C
8H
6O
4、C
8H
5NaO
4、C
8Na
2F
4O
4、C
10H
2Na
4O
8、C
14H
4O
6、C
14H
4Na
4O
8、およびそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記アノード活性材料が、
(a)リチウムまたはナトリウムドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、およびそれらの混合物;
(b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物のリチウムまたはナトリウム含有合金または金属間化合物;
(C)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物または複合体のリチウムまたはナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、またはアンチモン化物;
(d)リチウムまたはナトリウム塩;ならびに
(e)リチウムまたはナトリウムを予め装填されたグラフェンシート
といった材料の群から選択されるアルカリインターカレーション化合物またはアルカリ含有化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、リチウムまたはナトリウムを予め装填された前記グラフェンシートが、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、それらの物理的もしくは化学的に活性化もしくはエッチングされたバージョン、およびそれらの組合せのプレナトリウム化されたまたはプレリチウム化されたバージョンから選択されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記第1または第2の液体またはゲル電解質が、水性電解質、有機電解質、イオン液体電解質、有機電解質とイオン電解質との混合物、またはそれらとポリマーとの混合物から選択されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記水性電解質が、水中または水とアルコールとの混合物中に溶解されたナトリウム塩またはリチウム塩を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、ナトリウム塩またはリチウム塩が、Na
2SO
4、Li
2SO
4、それらの混合物、NaOH、LiOH、NaCl、LiCl、NaF、LiF、NaBr、LiBr、NaI、LiI、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法において、前記有機電解質が、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、炭酸プロピレン(PC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、ギ酸プロピル(PF)、ギ酸メチル(MF)、トルエン、キシレン、酢酸メチル(MA)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸アリルエチル(AEC)、ヒドロフルオロエーテル、およびそれらの組合せからなる群から選択される液体有機溶媒を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項18に記載の方法において、前記有機電解質が、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロ-メタスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF
3SO
2)
2)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF
2C
2O
4)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF
2C
2O
4)、硝酸リチウム(LiNO
3)、Li-フルオロアルキルリン酸塩、リチウムビスペルフルオロエチスルホニルイミド(LiBETI)、過塩素酸ナトリウム(NaClO
4)、過塩素酸カリウム(KClO
4)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF
6)、六フッ化リン酸カリウム(KPF
6)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF
4)、ホウフッ化カリウム(KBF
4)、六フッ化ヒ酸ナトリウム、六フッ化ヒ酸カリウム、トリフルオロ-メタスルホン酸ナトリウム(NaCF
3SO
3)、トリフルオロ-メタスルホン酸カリウム(KCF
3SO
3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CF
3SO
2)
2)、トリフルオロメタンスルホンイミドナトリウム(NaTFSI)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドカリウム(KN(CF
3SO
2)
2)、およびそれらの組合せから選択されるアルカリ金属塩を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項18に記載の方法において、前記イオン液体電解質が、テトラ-アルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、またはテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、およびそれらの組合せから選択されるカチオンを有する室温イオン液体から選択されるイオン液体溶媒を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記イオン液体溶媒が、BF
4
-、B(CN)
4
-、CH
3BF
3
-、CH
2CHBF
3
-、CF
3BF
3
-、C
2F
5BF
3
-、n-C
3F
7BF
3
-、n-C
4F
9BF
3
-、PF
6
-、CF
3CO
2
-、CF
3SO
3
-、N(SO
2CF
3)
2
-、N(COCF
3)(SO
2CF
3)
-、N(SO
2F)
2
-、N(CN)
2
-、C(CN)
3
-、SCN
-、SeCN
-、CuCl
2
-、AlCl
4
-、F(HF)
2.3
-、およびそれらの組合せから選択されるアニオンを有する室温イオン液体から選択されることを特徴とする方法。
【請求項25】
(a)(i)第1の液体またはゲル電解質中に分散されたアノード活性材料および任意選択の導電性添加剤を含むアノード活性材料スラリと、(ii)3Dアノード集電体として作用する導電性多孔質構造とを有する湿潤アノードであって、前記導電性多孔質構造が、少なくとも70体積%の細孔を有し、前記アノード活性材料スラリが、前記導電性多孔質構造の細孔内に配設されている、湿潤アノード、
(b)(i)第1の液体またはゲル電解質と同じまたは異なる第2の液体またはゲル電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤を含むカソード活性材料スラリと、(ii)3Dカソード集電体として作用する導電性多孔質構造とを有する湿潤カソードであって、前記導電性多孔質構造が、少なくとも70体積%の細孔を有し、前記カソード活性材料スラリが、前記導電性多孔質構造の細孔内に配設され、前記カソード活性材料が、前記カソード集電体の細孔壁に結合された硫黄、炭素もしくは黒鉛材料に結合されたまたは炭素もしくは黒鉛材料によって閉じ込められた硫黄、ポリマーに結合されたまたはポリマーによって閉じ込められた硫黄、硫黄-炭素化合物、金属硫化物M
xS
y(ここで、xは1~3の整数であり、yは1~10の整数であり、Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、遷移金属、周期表の第13族~第17族の金属、またはそれらの組合せから選択される金属元素である)から選択される、湿潤カソード、ならびに
(c)前記湿潤アノードと前記湿潤カソードとの間に配設されたセパレータ
を備えるアルカリ金属-硫黄電池において、
アノード
活性材料層の厚さとアノード集電体厚さの比が0.8/1~1/0.8であり、および/またはカソード
活性材料層の厚さとカソード集電体厚さの比が0.8/1~1/0.8であり、前記3D多孔質アノード集電体またはカソード集電体が、200μm以上の厚さを有し、前記カソード活性材料が、10mg/cm
2超の電極活性材料装填量を成し、および/または前記アノード活性材料と前記カソード活性材料が、合わせて前記電池セル重量の40重量%を超える
ことを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項26】
(a)アノード集電体上にまたはアノード集電体と物理的に接触してコーティングされたアノード活性材料を有する湿潤アノードであって、前記アノード活性材料が第1の電解質とイオン接触している湿潤アノード、
(b)
(i)第2の液体またはゲル電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤を含むカソード活性材料スラリと、(ii)3Dカソード集電体として作用する導電性多孔質構造とを有する湿潤カソードであって、前記導電性多孔質構造が、少なくとも70体積%の細孔を有し、前記カソード活性材料スラリが、前記導電性多孔質構造の細孔内に配設され、前記カソード活性材料が、硫黄、ポリ硫化リチウム、ポリ硫化ナトリウム、硫黄-ポリマー複合体、オルガノスルフィド、硫黄-炭素複合体、硫黄-グラフェン複合体、またはそれらの組合せから選択される、湿潤カソード、ならびに
(c)前記湿潤アノードと前記湿潤カソードとの間に配設されたセパレータと
を備えるアルカリ金属-硫黄電池において、
カソード
活性材料層の厚さとカソード集電体厚さの比が0.8/1~1/0.8であり、および/または前記カソード活性材料が15mg/cm
2よりも大きい電極活性材料装填量を成し、前記3Dカソード集電体が200μm以上の厚さを有する
ことを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項27】
請求項26に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、前記アノード集電体が多孔質発泡性構造を含むことを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項28】
請求項26にアルカリ金属-硫黄電池において、前記カソード活性材料が、
a)軟質炭素、硬質炭素、高分子炭素または炭化樹脂、メソフェーズ炭素、コークス、炭化ピッチ、カーボンブラック、活性炭、ナノセル炭素発泡体、または部分的に黒鉛化された炭素の粒子から選択されるナノ構造化または多孔質無秩序炭素材料;
b)単層グラフェンシートまたは多層グラフェンプレートレットから選択されるナノグラフェンプレートレット;
c)単壁カーボンナノチューブまたは多壁カーボンナノチューブから選択されるカーボンナノチューブ;
d)カーボンナノファイバ、ナノワイヤ、金属酸化物ナノワイヤまたは繊維、導電性ポリマーナノファイバ、またはそれらの組合せ;
e)カルボニル含有有機またはポリマー分子;
f)硫黄を不可逆に捕捉するためのカルボニル基、カルボキシル基、またはアミン基を含む機能性材料;
およびその組合せ
からなる群から選択される機能性材料またはナノ構造化材料によって支持されていることを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項29】
請求項26に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、前記アノード活性材料が、アルカリ金属、アルカリ金属合金、アルカリ金属またはアルカリ金属合金とアルカリインターカレーション化合物との混合物、アルカリ元素含有化合物、およびそれらの組合せから選択されるアルカリイオン源を含むことを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項30】
請求項25に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、前記アノード活性材料が、石油コークス、カーボンブラック、無定形炭素、活性炭、硬質炭素、軟質炭素、鋳型炭素、中空炭素ナノワイヤ、中空炭素球、天然黒鉛、人工黒鉛、リチウムまたはナトリウムチタン酸塩、NaTi
2(PO
4)
3、Na
2Ti
3O
7、Na
2C
8H
4O
4、Na
2TP、Na
xTiO
2(0.2≦x≦1.0)、Na
2C
8H
4O
4、カルボン酸塩ベースの物質、C
8H
4Na
2O
4、C
8H
6O
4、C
8H
5NaO
4、C
8Na
2F
4O
4、C
10H
2Na
4O
8、C
14H
4O
6、C
14H
4Na
4O
8、およびそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含むことを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項31】
請求項25に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、前記アノード活性材料が、
a)リチウムまたはナトリウムドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、およびそれらの混合物;
b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物のリチウムまたはナトリウム含有合金または金属間化合物;
c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物または複合体のリチウムまたはナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、またはアンチモン化物;
d)リチウムまたはナトリウム塩;ならびに
e)リチウムまたはナトリウムで予め装填されたグラフェンシート
といった材料の群から選択されるアルカリインターカレーション化合物またはアルカリ含有化合物を含むことを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項32】
請求項31に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、リチウムまたはナトリウムを予め装填された前記グラフェンシートが、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、それらの物理的もしくは化学的に活性化もしくはエッチングされたバージョン、およびそれらの組合せのプレナトリウム化されたまたはプレリチウム化されたバージョンから選択されることを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項33】
請求項26に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、前記第1の電解質がゲル電解質または固体電解質であることを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項34】
請求項25に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、前記第1または第2の液体またはゲル電解質が、水性電解質、有機電解質、イオン液体電解質、有機電解質とイオン電解質との混合物、またはそれらとポリマーとの混合物から選択されることを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項35】
請求項34に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、前記水性電解質が、水中または水とアルコールとの混合物中に溶解されたナトリウム塩または
リチウム塩を含むことを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項36】
請求項35に記載のアルカリ金属イオン電池において、前記ナトリウム塩またはリチウム塩が、Na
2SO
4、Li
2SO
4、NaOH、LiOH、NaCl、LiCl、NaF、LiF、NaBr、LiBr、NaI、LiI、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とするアルカリ金属イオン電池。
【請求項37】
請求項34に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、前記有機電解質が、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、炭酸プロピレン(PC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、ギ酸プロピル(PF)、ギ酸メチル(MF)、トルエン、キシレン、酢酸メチル(MA)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸アリルエチル(AEC)、ヒドロフルオロエーテル、およびそれらの組合せからなる群から選択される液体有機溶媒を含むことを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項38】
請求項34に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、前記有機電解質が、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロ-メタスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF
3SO
2)
2)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF
2C
2O
4)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF
2C
2O
4)、硝酸リチウム(LiNO
3)、Li-フルオロアルキルリン酸塩、リチウムビスペルフルオロエチスルホニルイミド(LiBETI)、過塩素酸ナトリウム(NaClO
4)、過塩素酸カリウム(KClO
4)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF
6)、六フッ化リン酸カリウム(KPF
6)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF
4)、ホウフッ化カリウム(KBF
4)、六フッ化ヒ酸ナトリウム、六フッ化ヒ酸カリウム、トリフルオロ-メタスルホン酸ナトリウム(NaCF
3SO
3)、トリフルオロ-メタスルホン酸カリウム(KCF
3SO
3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CF
3SO
2)
2)、トリフルオロメタンスルホンイミドナトリウム(NaTFSI)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドカリウム(KN(CF
3SO
2)
2)、およびそれらの組合せから選択されるアルカリ金属塩を含むことを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項39】
請求項34に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、前記イオン液体電解質が、テトラ-アルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、またはテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、およびそれらの組合せから選択されるカチオンを有する室温イオン液体から選択されるイオン液体溶媒を含むことを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項40】
請求項39に記載のアルカリ金属-硫黄電池において、前記イオン液体溶媒が、BF
4
-、B(CN)
4
-、CH
3BF
3
-、CH
2CHBF
3
-、CF
3BF
3
-、C
2F
5BF
3
-、n-C
3F
7BF
3
-、n-C
4F
9BF
3
-、PF
6
-、CF
3CO
2
-、CF
3SO
3
-、N(SO
2CF
3)
2
-、N(COCF
3)(SO
2CF
3)
-、N(SO
2F)
2
-、N(CN)
2
-、C(CN)
3
-、SCN
-、SeCN
-、CuCl
2
-、AlCl
4
-、F(HF)
2.3
-、およびそれらの組合せから選択されたアニオンを有する室温イオン液体から選択されることを特徴とするアルカリ金属-硫黄電池。
【請求項41】
請求項1に記載の方法において、
第1の導電性多孔質構造である3D多孔質アノード集電体または
第2の導電性多孔質構造である3D多孔質カソード集電体が、少なくとも85体積%の細孔を有する200μm以上の厚さを有する導電性発泡構造を含み、および/または前記アノード活性材料が、20mg/cm
2以上の質量装填量を有し、電池セル全体の少なくとも25重量%または体積%を占め、および/または前記カソード活性材料が、20mg/cm
2以上の質量装填量を有することを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項1に記載の方法において、
第1の導電性多孔質構造である3D多孔質アノード集電体または
第2の導電性多孔質構造である3D多孔質カソード集電体が、少なくとも90体積%の細孔を有する300μm以上の厚さを有する導電性発泡構造を含み、および/または前記アノード活性材料が、25mg/cm
2以上の質量装填量を有し、電池セル全体の少なくとも30重量%または体積%を占め、および/または前記カソード活性材料が、25mg/cm
2以上の質量装填量を有することを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項1に記載の方法において、
第1の導電性多孔質構造である3D多孔質アノード集電体または
第2の導電性多孔質構造である3D多孔質カソード集電体が、少なくとも95体積%の細孔を有する400μm以上の厚さを有する導電性発泡構造を含み、および/または前記アノード活性材料が、30mg/cm
2以上の質量装填量を有し、電池セル全体の少なくとも35重量%または体積%を占め、および/または前記カソード活性材料が、30mg/cm
2以上の質量装填量を有することを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項1に記載の方法において、
第1の導電性多孔質構造である3D多孔質アノード集電体または
第2の導電性多孔質構造である3D多孔質カソード集電体が、金属発泡体、金属ウェブまたはスクリーン、穿孔された金属シートベースの3D構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマーコーティング繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、およびそれらの組合せから選択される導電性発泡構造を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に援用する、どちらも2016年1月15日に出願された米国特許出願第14/998,513号明細書および同第14/998,523号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、高い体積エネルギー密度および高い重量エネルギー密度を有する二次(充電式)のリチウム-硫黄電池(Li-SおよびLiイオン-Sセルを含む)またはナトリウム-硫黄電池(Na-SおよびNaイオン-Sセルを含む)を対象とする。
【背景技術】
【0003】
充電式リチウムイオン(Liイオン)およびリチウム金属電池(Li-硫黄およびLi金属-空気電池を含む)が、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、およびポータブル電子デバイス、例えばラップトップコンピュータおよび携帯電話用の有望な電源とみなされている。金属元素としてのリチウムは、アノード活性材料としての任意の他の金属または金属インターカレーション化合物(4,200mAh/gの比容量を有するLi4.4Siを除く)と比較して最高の容量(3,861mAh/g)を有する。したがって、一般に、Li金属電池は、リチウムイオン電池よりも大幅に高いエネルギー密度を有する。
【0004】
歴史的には、充電式リチウム金属電池は、リチウム金属アノードと結合されたカソード活性材料として、TiS2、MoS2、MnO2、CoO2、およびV2O5など、比較的高い比容量を有する非リチウム化化合物を使用して製造された。電池が放電されると、リチウム金属アノードから電解質を通ってカソードにリチウムイオンが移動され、カソードがリチウム化された。残念ながら、充放電を繰り返すと、リチウム金属がアノードでデンドライトを形成し、このデンドライトは、最終的にはセパレータを貫通して成長し、内部短絡および爆発を引き起こした。この問題に関連した一連の事故の結果、1990年代初頭にこれらのタイプの二次電池の生産が中止され、リチウムイオン電池に取って代わられた。
【0005】
リチウムイオン電池では、純粋なリチウム金属のシートまたはフィルムが、アノードとしての炭素質材料によって置換された。炭素質材料は、(例えば、グラフェン面間でのリチウムイオンまたは原子のインターカレーションにより)リチウムを吸収し、リチウムイオン電池動作のそれぞれ再充電段階中および放電段階中にリチウムイオンを脱着する。炭素質材料は、リチウムとインターカレートすることができる黒鉛を主に含むことがあり、得られる黒鉛インターカレーション化合物は、LixC6として表すことができ、ここで、xは典型的には1未満である。
【0006】
リチウムイオン(Liイオン)バッテリは、電気駆動車用の有望なエネルギー貯蔵デバイスであるが、現況技術のLiイオン電池は、コスト面および性能面での目標をまだ満たしていない。Liイオンセルは、典型的には、炭素負極(アノード)に対して高電位でLi+を脱/再インターカレートする正極(カソード)としてリチウム遷移金属酸化物またはリン酸塩を使用する。リチウム遷移金属酸化物またはリン酸塩ベースのカソード活性材料の比容量は、典型的には140~170mAh/gの範囲内である。その結果、市販のLiイオンセルの比エネルギーは、典型的には120~250Wh/kg、最も典型的には150~220Wh/kgの範囲内である。これらの比エネルギー値は、バッテリ駆動式電気自動車が広く受け入れられるために必要とされるよりも2~3倍低い。
【0007】
ハイブリッド(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(HEV)、全電池電気自動車(EV)の急速な発展に伴って、大幅に高い比エネルギー、より高いエネルギー密度、より高いレート性能、長いサイクル寿命、および安全性を備える充電式電池を提供するアノードおよびカソード材料が緊急で必要である。最も有望なエネルギー貯蔵デバイスの1つは、リチウム-硫黄(Li-S)セルである。これは、Liの理論容量が3,861mAh/gであり、Sの理論容量が1,675mAh/gであるからである。Li-Sセルは、その最も単純な形態では、正極としての元素硫黄と、負極としてのリチウムとからなる。リチウム-硫黄セルは、Li+/Li0に対して2.2Vに近い反応S8+16Li⇔8Li2Sで表される酸化還元対で動作する。この電気化学電位は、従来のリチウムイオン電池における従来の正極(例えば、LiMnO4)によって示される電位の約2/3である。しかし、この欠点は、LiとSの両方の非常に高い理論容量によって相殺される。したがって、従来のインターカレーションに基づくLiイオン電池と比較して、Li-Sセルは、大幅に高いエネルギー密度(容量と電圧の積)を提供する可能性を有する。Li2Sへの完全な反応を仮定すると、エネルギー密度値は、LiおよびSの合計重量または体積に基づいて、それぞれ2,500Wh/kgおよび2,800Wh/Lに近づき得る。総セル重量または体積に基づく場合、エネルギー密度はそれぞれ約1,000Wh/kgおよび1,100Wh/Lに達し得る。しかし、硫黄カソード技術の業界リーダーによって報告された現在のLi硫黄セルは、(総セル重量または体積に基づいて)250~400Wh/kgおよび500~650Wh/Lの最大セル比エネルギーを有しており、これは、可能な値よりもかなり低い。
【0008】
要約すると、かなりの利点があるにもかかわらず、Li-Sセルには、いくつかの主な技術的問題があり、したがってそれらがLi-Sセルの広範な商業化を妨げている。
(1)従来のリチウム金属セルは、デンドライト形成および関連の内部短絡の問題を依然として有する。
(2)硫黄または硫黄含有有機化合物は、電気的にもイオン的にも高い絶縁性を有する。高い電流密度または充放電レートで可逆電気化学反応を可能にするために、硫黄は、導電性添加剤との密接な接触を維持しなければならない。この目的のために様々な炭素-硫黄複合体が利用されているが、接触面積のスケールが限られているため、限られた成功しか収めていなかった。報告されている典型的な容量は、中程度のレートで、(カソード炭素-硫黄複合体重量に基づいて)300~550mAh/gである。
(3)このセルは、放電-充電サイクル中に大幅な容量減衰を示す傾向がある。これは主に、電解質に使用される極性有機溶媒中での放電プロセスと充電プロセスの両方において反応中間体として形成されるポリ硫化リチウムアニオンの高い可溶性によるものである。サイクリング中、ポリ硫化リチウムアニオンは、セパレータを通ってLi負極に移動することがあり、そこで還元されて固体の沈殿物(Li2S2および/またはLi2S)となり、活性質量損失を引き起こす。さらに、放電中に正極の表面に析出する固体生成物が電気化学的に不可逆的になり、これも活性質量損失の一因となる。
(4)より一般的に言えば、元素硫黄、有機硫黄、および炭素-硫黄材料を含むカソードを含むセルの大きな欠点は、カソードからセルの残りの部分への、可溶性硫化物、ポリ硫化物、オルガノスルフィド、硫化炭素、および/またはポリ硫化炭素(本明細書では以後、アニオン性還元生成物と呼ぶ)の溶解および過剰な外方拡散に関する。この現象は一般的にシャトル効果と呼ばれる。このプロセスは、以下のようないくつかの問題を生じる:高い自己放電率、カソード容量の損失、活性セル構成要素への電気的接触の喪失をもたらす集電体および電気的リードの腐食、アノードの機能不全をもたらすアノード表面の汚れ、ならびに、イオン輸送の喪失およびセル内の内部抵抗の大きな増加をもたらすセル膜セパレータの細孔の目詰まり。
【0009】
これらの課題に対応して、新規の電解質、リチウムアノード用の保護フィルム、および固体電解質が開発されている。いくつかの興味深いカソードの開発が最近報告されており、ポリ硫化リチウムを含む。しかし、それらの性能は、まだ実用的な用途に必要な性能に至っていない。
【0010】
例えばJiらは、ナノ構造化硫黄/メソポーラス炭素材料に基づくカソードがこれらの課題を大幅に克服でき、安定した高い可逆容量を示し、レート特性とサイクリング効率が優れていることを報告した[Xiulei Ji,Kyu Tae Lee,& Linda F.Nazar,“A highly ordered nanostructured carbon-sulphur cathode for lithium-sulphur batteries,”Nature Materials 8,500-506(2009)]。しかし、提案されている高度に秩序化されたメソポーラス炭素構造の作製には、単調であり高い費用がかかるテンプレート支援プロセスが必要である。また、物理気相成長法または溶液沈殿法を使用して、これらのメソスケールの細孔に高比率の硫黄を装填することも困難である。
【0011】
Zhangら(米国特許公開第2014/0234702号明細書;2014年8月21日)は、単離された酸化グラフェン(GO)シートの表面上にS粒子を堆積させる化学反応法を利用する。しかし、この方法は、GO表面上に高比率のS粒子(すなわち、典型的にはGO-Sナノコンポジット組成物中で66%未満のS)を作成することができない。得られるLi-Sセルはまた、レート性能が低い;例えば、0.02Cのレートで(Sの重量に基づいて)1,100mAh/gの比容量が、1.0Cのレートで<450mAh/gに低下される。実現可能な最高の比容量1,100mAh/gは、そのような低い充放電レートでさえ、1,100/1,675=65.7%の硫黄利用効率を示すことに留意されたい(0.02Cは、1/0.02=50時間で充電または放電プロセスを完了することを意味する。同様に、1C=1時間、2C=1/2時間、3C=1/3時間などである)。さらに、そのようなS-GOナノコンポジットカソードベースのLi-Sセルは、非常に短いサイクル寿命を示し、容量は、典型的には、40回未満の充放電サイクルでその元の容量の60%未満に低下する。そのような短いサイクル寿命のため、このLi-Sセルは実用的な用途には有用でない。酸化グラフェン表面上にS粒子を堆積させる別の化学反応法をWangらが開示している(米国特許出願公開第2013/0171339号明細書;2013年7月4日)。このLi-Sセルも依然として同じ問題を抱えている。
【0012】
Li-Sセル中のカソード材料として使用するための(GO表面上に吸着された硫黄粒子を有する)グラフェン-硫黄ナノコンポジットを調製するための溶液沈殿法をLiuらが開示している(米国特許出願公開第第2012/0088154号明細書;2012年4月12日)。この方法は、GOシートと溶媒(CS2)中のSとを混合して懸濁液を形成することを含む。次いで溶媒を蒸発させて固体ナノコンポジットを得て、次いでこれを粉砕して、平均直径が約50nm未満の一次硫黄粒子を有するナノコンポジット粉末を得る。残念ながら、この方法は、40nm未満のS粒子を生成することはできないようである。得られたLi-Sセルは、サイクル寿命が非常に短い(わずか50サイクル後に50%の容量減衰)。これらのナノコンポジット粒子がポリマーにカプセル化されているときでさえ、Li-Sセルは、100サイクル後にその元の容量の80%未満しか保たない。また、このセルは、レート性能が低い(0.1Cのレートで1,050mAh/g(S重量)の比容量。1.0Cのレートで<580mAh/gに低下)を示す。ここでも、これは、高比率のSがリチウム貯蔵に寄与せず、その結果、S利用効率が低いことを示唆する。
【0013】
高エネルギー密度Li-Sセルの作製のために様々な手法が提案されているにもかかわらず、電気活性カソード材料の利用(S利用効率)を改良し、多数回のサイクルにわたって高い容量を有する充電式Li-Sセルを提供するカソード材料および製造プロセスの必要性がまだ残っている。
【0014】
最も重要なことに、リチウム金属(純リチウム、他の金属元素との高いリチウム含有量のリチウム合金、または高いリチウム含有量を有するリチウム含有化合物を含む;例えば、>80重量%以上、または好ましくは>90重量%のLi)は、実質的に全ての他のアノード活性材料(純粋なシリコンを除く。しかし、シリコンは粉末化の問題を有する)と比較して、最高のアノード比容量を依然として提供する。デンドライト関連の問題に対処することができれば、リチウム金属は、リチウム-硫黄二次電池における理想的なアノード材料となる。
【0015】
ナトリウム金属(Na)とカリウム金属(K)は、Liと同様の化学的特性を有し、室温ナトリウム-硫黄セル(RT Na-S電池)またはカリウム-硫黄セル(K-S)での硫黄カソードは、(i)低い活性材料利用率、(ii)低いサイクル寿命、および(iii)低いクーロン効率など、Li-S電池で観察される同じ問題に直面する。ここでも、これらの欠点は、主にSの絶縁性、液体電解質中のSおよびポリ硫化NaまたはK中間体の溶解(および関連するシャトル効果)、ならびに充放電中の大きな体積変化により生じる。
【0016】
公開されている文献レポート(科学論文)および特許文献のほとんどにおいて、科学者らまたは発明者らは、(カソード複合体の総重量ではなく)硫黄またはポリ硫化リチウムの重量のみに基づいてカソード比容量を表現することを選択しているが、残念ながら、典型的にはそれらのLi-Sセルでは高比率の非活性材料(導電性添加剤およびバインダなど、リチウムを貯蔵することができない材料)が使用されることに留意されたい。実用の目的では、カソード複合体の重量に基づく容量値を使用することがより有意義である。
【0017】
低容量のアノードまたはカソード活性材料は、リチウム-硫黄電池またはナトリウム-硫黄電池に関連する唯一の問題ではない。電池業界が認識していないと思われる、またはほとんど無視している重大な設計上および製造上の問題がある。例えば、公開されている文献および特許文献で頻繁に主張されているように(アノードまたはカソード活性材料の重量のみに基づく)電極レベルでの重量容量が高いにもかかわらず、これらの電極は、残念ながら、(総電池セル重量またはパック重量に基づく)電池セルまたはパックレベルでの高い容量を電池に提供することができない。これは、これらの報告では電極の実際の活性材料質量負荷が低すぎるという見解によるものである。ほとんどの場合、アノードの活性材料質量負荷(面密度)は、15mg/cm2よりもかなり低く、大抵は<8mg/cm2である(面密度=電極の厚さ方向に沿った電極断面積あたりの活性材料の量)。セルの中のカソード活性材料の量は、典型的にはアノード活性材料の量の1.5~2.5倍である。その結果、Naイオン-硫黄電池セルまたはLiイオン-硫黄電池セルにおけるアノード活性材料(例えば、炭素)の重量比は、典型的には15%~20%であり、カソード活性材料の重量比は、20%~35%(大抵は<30%)である。カソード活性材料およびアノード活性材料の複合の重量分率は、典型的には、セル重量の35%~50%である。
【0018】
低い活性材料質量負荷は、主として、従来のスラリコーティング手順を使用して比較的厚い電極(100~200μmよりも厚い)を得ることができないことが原因である。これは、思うほど簡単な作業ではなく、現実には、電極の厚さは、セル性能を最適化するために任意にかつ自由に変えることができる設計パラメータではない。反対に、より厚い試料は、非常に脆くなりやすく、または構造的完全性が低くなりやすく、また大量の粘結剤樹脂の使用を必要とする。硫黄の低融点で軟性の特性により、硫黄カソードを100μmよりも厚く形成することは実質的に不可能である。さらに、実際の電池製造施設では、150μmよりも厚い被覆電極は、被覆されたスラリを完全に乾燥させるために100メートルの長さの加熱区域を必要とする。これにより、設備費が大幅に増加し、製造スループットが低下する。低い面密度および低い体積密度(薄い電極および低い充填密度に関連する)により、電池セルの体積容量は比較的低く、体積エネルギー密度は低い。
【0019】
よりコンパクトでポータブルなエネルギー貯蔵システムに対する需要の高まりと共に、電池の体積の利用率を高めることに強い関心が持たれている。セルの体積容量およびエネルギー密度の改良を実現するために、高い体積容量および高い質量負荷を可能にする新規の電極材料および設計が不可欠である。
【0020】
したがって、本発明の目的は、従来のLi-SおよびNa-Sセルに一般的に関連する以下の問題を克服または大幅に低減する合理的な材料および電池設計に基づく充電式のアルカリ金属-硫黄セルを提供することである:(a)デンドライト形成(内部短絡);(b)硫黄の非常に低い電気およびイオン伝導度。これは、大きな比率(典型的には30~55%)の非活性導電性フィラーを必要とし、かつかなりの比率のアクセス不可能なまたは到達不可能な硫黄またはアルカリ金属ポリ硫化物を有する;(c)電解質中へのSおよびアルカリ金属ポリ硫化物の溶解、ならびにカソードからアノードへのポリ硫化物の移動(これは、アノードでLiまたはNa金属と不可逆反応する)。これは、活性材料の喪失および容量減衰(シャトル効果)をもたらす;(d)短いサイクル寿命;および(e)アノードとカソード両方における低い活性質量装填量。
【0021】
本発明の具体的な目的は、非常に高い比エネルギーまたは比エネルギー密度を示す充電式アルカリ金属-硫黄電池(例えば、主にLi-Sおよび室温Na-S電池)を提供することである。本発明の1つの特定の技術的目標は、(全て総セル重量に基づいて)400Wh/Kgより大きい、好ましくは500Wh/Kgより大きい、より好ましくは600Wh/Kgより大きい、最も好ましくは700Wh/kgよりも大きいセル比エネルギーを有するアルカリ金属-硫黄またはアルカリイオン-硫黄セルを提供することである。好ましくは、体積エネルギー密度は600Wh/Lよりも大きく、さらに好ましくは800Wh/Lよりも大きく、最も好ましくは1,000Wh/Lよりも大きい。
【0022】
本発明の別の目的は、硫黄重量に基づいて1,200mAh/gよりも高い、またはカソード複合体重量(硫黄、導電性添加剤または基材、および粘結剤の重量を合わせて含むが、カソード集電体の重量は除く)に基づいて1,000mAh/gよりも高い高カソード比容量を示すアルカリ金属-硫黄セルを提供することである。好ましくは、比容量は、硫黄重量のみに基づいて1,400mAh/gよりも高く、またはカソード複合体重量に基づいて1,200mAh/gよりも高い。これには、高い比エネルギー、デンドライト形成に対する良好な耐性、および長く安定したサイクル寿命が必然的に伴う。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、従来実現できなかった、高いカソード活性材料質量装填量、厚いカソード、高い硫黄カソード比容量、(活性材料質量および体積に対して)非常に低いオーバーヘッド重量および体積、高い重量エネルギー密度、ならびに高い体積エネルギー密度を有するアルカリ金属-硫黄電池を提供する。本発明は、リチウム金属-硫黄セルと、室温ナトリウム金属-硫黄セルとの両方を含む。
【0024】
リチウム-硫黄電池は、(a)主なアノード活性材料としてのLi金属またはLi金属合金(例えばLi箔)と、主なカソード活性材料としての硫黄、ポリ硫化物、および/または硫黄-炭素化合物とを使用するリチウム金属-硫黄(Li-Sセル)、ならびに(b)主なアノード活性材料としてのリチウムインターカレーション化合物(例えば、黒鉛およびSi)と、主なカソード活性材料としての硫黄、ポリ硫化物、および/または硫黄-炭素化合物とを利用するリチウムイオン-硫黄セルを含む。ナトリウム-硫黄電池は、(a)主なアノード活性材料としてのNa金属またはNa金属合金(例えばNa箔)と、主なカソード活性材料としての硫黄、ポリ硫化物、および/または硫黄-炭素化合物とを使用するナトリウム金属-硫黄(Na-Sセル)、ならびに(b)主なアノード活性材料としてのナトリウムインターカレーション化合物(例えば、硬質炭素粒子およびSi)と、主なカソード活性材料としての硫黄、ポリ硫化物、および/または硫黄-炭素化合物とを利用するナトリウムイオン-硫黄セルを含む。
【0025】
一実施形態では、本発明の電池は、
(a)(i)第1の電解質中に分散されたアノード活性材料および任意選択の導電性添加剤を含むアノード活性材料スラリ(または懸濁液)と、(ii)3Dアノード集電体として作用する導電性多孔質構造とを有するアノードであって、導電性多孔質構造が、少なくとも70体積%の細孔を有し、アノード活性材料スラリが、アノード導電性多孔質構造の細孔内に配設されている(用語「アノード導電性多孔質構造」と「3Dアノード集電体」は、本明細書では交換可能に使用される)、アノード、
(b)(i)第1の液体またはゲル電解質と同じまたは異なる第2の電解質(好ましくは、液体またはゲル電解質)中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤を含むカソード活性材料スラリと、(ii)3Dカソード集電体として作用する導電性多孔質構造とを有するカソードであって、導電性多孔質構造が、少なくとも70体積%の細孔を有し、カソード活性材料スラリが、カソード導電性多孔質構造の細孔内に配設され(用語「カソード導電性多孔質構造」と「3Dカソード集電体」は、本明細書では交換可能に使用される)、
カソード活性材料が、カソード集電体の細孔壁に結合された硫黄、炭素もしくは黒鉛材料に結合されたまたは炭素もしくは黒鉛材料によって閉じ込められた硫黄、ポリマーに結合されたまたはポリマーによって閉じ込められた硫黄、硫黄-炭素化合物、金属硫化物MxSy(ここで、xは1~3の整数であり、yは1~10の整数であり、MはLi、Na、K、Mg、Ca、遷移金属、周期表の第13族~第17族の金属、またはそれらの組合せから選択される金属元素である)から選択される、カソード、ならびに
(c)アノードとカソードとの間に配設されたセパレータ
を備える。
【0026】
この電池では、アノード厚さとアノード集電体厚さの比は0.8/1~1/0.8であり、および/またはカソード厚さとカソード集電体厚さの比は0.8/1~1/0.8である。3D多孔質アノード集電体またはカソード集電体は、200μm以上の厚さを有し、カソード活性材料は10mg/cm2超の電極活性材料装填量を成し、および/またはアノード活性材料とカソード活性材料は、合わせて総電池セル重量の40重量%を超える。
【0027】
このアルカリ金属-硫黄電池は、(一例として)以下のステップを含む方法によって製造することができる。
(a)3Dアノード集電体としての第1の導電性多孔質構造(例えば、導電性発泡体、または電子伝導経路の相互接続された3Dネットワーク)、3Dカソード集電体としての第2の導電性多孔質構造(例えば、導電性発泡体)、および第1および第2の導電性多孔質構造の間に配設されたセパレータとから構成される多孔質セルフレームワークを組み立てるステップであって、第1および/または第2の導電性発泡構造が、200μm以上(好ましくは300μm超、好ましくは400μm超、さらに好ましくは500μm超、最も好ましくは600μm超)の厚さ、および少なくとも70体積%の細孔(好ましくは少なくとも80%の多孔率、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%;これらの細孔体積は、電極活性材料スラリまたは懸濁液で含浸される前の細孔の量を表す)を有する、ステップ、
(b)第1の液体またはゲル電解質中に分散されたアノード活性材料および任意選択の導電性添加剤の第1の懸濁液と、第2の液体またはゲル電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤の第2の懸濁液とを調製するステップ、ならびに
(c)好ましくはアノード活性材料がアノード内で20mg/cm2以上の材料質量装填量を有する、またはカソード活性材料がカソード内で15mg/cm2以上の材料質量装填量を有する程度まで、第1の導電性多孔質構造の細孔に第1の懸濁液を含浸して(例えば、第1の導電性多孔質構造の細孔に第1の懸濁液を注入して)アノードを形成し、第2の導電性多孔質構造の細孔に第2の懸濁液を含浸して(例えば、第2の導電性発泡構造の細孔に第2の懸濁液を注入して)カソードを形成するステップ。
【0028】
第1の懸濁液の注入(または含浸)および/または第2の懸濁液の注入(または含浸)の前、途中、または後に、アノード集電体、セパレータ、およびカソード集電体が保護ハウジング内に組み込まれる。
【0029】
本発明の別の実施形態は、
a)アノード集電体上にまたはアノード集電体と物理的に接触してコーティングされたアノード活性材料を有するアノードであって、アノード活性材料が第1の電解質とイオン接触しているアノード、
b)(i)第1の液体またはゲル電解質と同じまたは異なる第2の液体またはゲル電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤を含むカソード活性材料スラリまたは懸濁液と、(ii)3Dカソード集電体として作用する導電性多孔質構造とを有するカソードであって、導電性多孔質構造が、少なくとも70体積%(好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%)の細孔を有し、カソード活性材料スラリが、カソード導電性多孔質構造の細孔内に配設され、カソード活性材料が、硫黄、ポリ硫化リチウム、ポリ硫化ナトリウム、硫黄-ポリマー複合体、オルガノスルフィド、硫黄-炭素複合体、硫黄-グラフェン複合体、またはそれらの組合せから選択される、カソード、ならびに
c)アノードとカソードとの間に配設されたセパレータ
を備えるアルカリ金属-硫黄電池において、
カソード厚さとカソード集電体厚さの比が0.8/1~1/0.8であり、および/またはカソード活性材料が15mg/cm2よりも大きい電極活性材料装填量を成し、カソード集電体が200μm以上(好ましくは300μm超、より好ましくは400μm超、さらに好ましくは500μm超、最も好ましくは600μm超)の厚さを有する、アルカリ金属-硫黄電池である。導電性多孔質構造の厚さに理論上の制限はない。より厚い多孔質構造(または多孔質集電体)は、より多量の電極活性材料を示唆する。同じセパレータ層、ならびにほぼ同じパッケージングエンベロープおよび他の非活性構成要素を仮定して、このより厚い電極はまた、比較的高比率の活性材料、したがってより高いエネルギー密度を示唆する。
【0030】
アルカリ金属-硫黄電池(例えば、アノード活性材料がLi箔またはNa箔である)では、アノード集電体は、多孔質発泡構造を含むことがある。アルカリ金属-硫黄電池では、第1の電解質は、ゲル電解質または固体電解質でよい。
【0031】
特定の実施形態では、カソード活性材料は、以下のものからなる群から選択される機能性材料またはナノ構造化材料によって支持される。(a)軟質炭素、硬質炭素、高分子炭素もしくは炭化樹脂、メソフェーズ炭素、コークス、炭化ピッチ、カーボンブラック、活性炭、ナノセル炭素発泡体、または部分的に黒鉛化された炭素から選択されるナノ構造化または多孔質の無秩序炭素材料;(b)単層グラフェンシートまたは多層グラフェンプレートレットから選択されるナノグラフェンプレートレット;(c)単壁カーボンナノチューブまたは多壁カーボンナノチューブから選択されるカーボンナノチューブ;(d)カーボンナノファイバ、ナノワイヤ、金属酸化物ナノワイヤもしくは繊維、導電性ポリマーナノファイバ、またはそれらの組合せ;(e)カルボニル含有有機またはポリマー分子;(f)硫黄を不可逆に捕捉するためのカルボニル基、カルボキシル基、またはアミン基を含む機能性材料;およびそれらの組合せ。
【0032】
特定の実施形態では、アノード活性材料は、アルカリ金属、アルカリ金属合金、アルカリ金属またはアルカリ金属合金とアルカリインターカレーション化合物との混合物、アルカリ元素含有化合物、またはこれらの組合せから選択されるアルカリイオン源を含む。
【0033】
いくつかの実施形態(例えば、Liイオン-硫黄またはナトリウムイオン-硫黄セル)では、アノード活性材料は、石油コークス、カーボンブラック、無定形炭素、活性炭、硬質炭素、軟質炭素、鋳型炭素、中空炭素ナノワイヤ、中空炭素球、天然黒鉛、人工黒鉛、チタン酸リチウムまたはナトリウム、NaTi2(PO4)3、Na2Ti3O7、Na2C8H4O4、Na2TP、NaxTiO2(x=0.2~1.0)、Na2C8H4O4、カルボン酸塩ベースの物質、C8H4Na2O4、C8H6O4、C8H5NaO4、C8Na2F4O4、C10H2Na4O8、C14H4O6、C14H4Na4O8、またはそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、アノード活性材料は、(A)リチウムまたはナトリウムドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、およびそれらの混合物;(B)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物のリチウムまたはナトリウム含有合金または金属間化合物;(C)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物または複合体のリチウムまたはナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、またはアンチモン化物;(D)リチウムまたはナトリウム塩;および(E)リチウムまたはナトリウムを予め装填されたグラフェンシートからなる群から選択されるアルカリインターカレーション化合物またはアルカリ含有化合物を含む。
【0035】
リチウムまたはナトリウムを予め装填されたグラフェンシートは、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、それらの物理的もしくは化学的に活性化もしくはエッチングされたバージョン、またはそれらの組合せのプレナトリウム化されたまたはプレリチウム化されたバージョンから選択することができる。
【0036】
第1または第2の電解質は、水性電解質、有機電解質、イオン液体電解質、有機電解質とイオン電解質との混合物、またはそれらとポリマーとの混合物から選択することができる。一実施形態では、水性電解質は、水中、または水とアルコールとの混合物中に溶解されたナトリウム塩またはカリウム塩を含む。ナトリウム塩またはリチウム塩は、Na2SO4、Li2SO4、NaOH、LiOH、NaCl、LiCl、NaF、LiF、NaBr、LiBr、NaI、LiI、またはそれらの混合物から選択することができる。
【0037】
アルカリ金属-硫黄電池は、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、炭酸プロピレン(PC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、ギ酸プロピル(PF)、ギ酸メチル(MF)、トルエン、キシレン、酢酸メチル(MA)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸アリルエチル(AEC)、ヒドロフルオロエーテル、およびそれらの組合せからなる群から選択される液体有機溶媒を有する有機電解質を含むことがある。
【0038】
アルカリ金属-硫黄電池における電解質は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロ-メタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF2C2O4)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF2C2O4)、硝酸リチウム(LiNO3)、Li-フルオロアルキルリン酸塩(LiPF3(CF2CF3)3)、リチウムビスペルフルオロエチスルホニル-イミド(LiBETI)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸カリウム(KClO4)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF6)、六フッ化リン酸カリウム(KPF6)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF4)、ホウフッ化カリウム(KBF4)、六フッ化ヒ酸ナトリウム、六フッ化ヒ酸カリウム、トリフルオロ-メタスルホン酸ナトリウム(NaCF3SO3)、トリフルオロ-メタスルホン酸カリウム(KCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CF3SO2)2)、トリフルオロメタンスルホンイミドナトリウム(NaTFSI)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドカリウム(KN(CF3SO2)2)、またはそれらの組合せから選択されるアルカリ金属塩を含むことがある。
【0039】
アルカリ金属-硫黄電池は、テトラ-アルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、またはテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、またはそれらの組合せから選択されるカチオンを有する室温イオン液体から選択されるイオン液体溶媒を含むイオン液体電解質を含むことがある。イオン性液体溶媒は、BF4
-、B(CN)4
-、CH3BF3
-、CH2CHBF3
-、CF3BF3
-、C2F5BF3
-、n-C3F7BF3
-、n-C4F9BF3
-、PF6
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、N(SO2CF3)2
-、N(COCF3)(SO2CF3)-、N(SO2F)2
-、N(CN)2
-、C(CN)3
-、SCN-、SeCN-、CuCl2
-、AlCl4
-、F(HF)2.3
-、またはそれらの組合せから選択されたアニオンを有する室温イオン液体から選択することができる。
【0040】
導電性多孔質構造は、電子伝導経路の相互接続された2Dまたは3Dネットワークを含む発泡構造でよい。これは、例えば、
図2に示されるように、端部で接続された2Dマット、ウェブ、チキンワイヤ状の金属スクリーンなどでよい。これはまた、金属発泡体、導電性ポリマー発泡体、黒鉛発泡体、炭素発泡体、またはグラフェン発泡体などでもよく、細孔壁が導電性材料を含む。
【0041】
好ましい実施形態では、
図1(C)または
図1(D)に示されるように、3D多孔質アノード集電体は、多孔質セパレータ層の縁部まで延び、その縁部と物理的に接触している。また、3D多孔質導電性カソード集電体も、多孔質セパレータの反対側の縁部まで延び、その縁部と物理的に接触していてよい。換言すると、アノード集電体の細孔壁がアノード層全体を覆い、および/またはカソード集電体の細孔壁がカソード層全体を覆う。これらの構成では、集電体の厚さ/活性材料層の厚さの比が約1/1であり、電極の厚さが集電体の厚さと本質的に同じである(カソードの厚さとカソード集電体の厚さの比が約1であり、アノードの厚さとアノード集電体の厚さの比が約1である)。このような状況では、導電性細孔壁は、あらゆるアノード活性材料粒子またはあらゆるカソード活性材料粒子のすぐ近傍にある。
【0042】
特定の実施形態では、集電体の厚さ/活性材料層の厚さの比は、約0.8/1.0~1.0/0.8とすることができる。別の形で表すと、カソードの厚さとカソード集電体の厚さとの比は0.8/1~1/0.8であり、アノードの厚さとアノード集電体の厚さの比は0.8/1~1/0.8である。従来のリチウムイオンまたはナトリウムイオン電池(
図1(A)および
図1(B)に概略的に図示される)では、アノード(またはカソード)集電体は、典型的には厚さ8~12μmのCu箔(またはAl箔)である。Cu箔表面にコーティングされたアノード活性材料層は、典型的には80~100μmである。したがって、アノード集電体の厚さ/アノード活性材料層の厚さの比は、典型的には8/100~12/80である。従来のLiイオンまたはNaイオンセルのカソード側での集電体の厚さ/活性材料層の厚さの比も、約1/12.5~1/6.7である。これに対して、本発明による電池では、比は0.8/1~1/0.8、より望ましくは0.9/1~1/0.9、さらに望ましくは0.95/1~1/0.95、最も望ましくは典型的には1/1である。
【0043】
発泡性集電体の細孔体積(例えば、>70%)は、活性材料の大きな割合が集電体に収容されるのを保証するのに非常に重要な要件である。この基準に基づくと、天然および/または合成繊維から形成された従来の紙または織物は、十分な量の適切なサイズの細孔を有さないので、この要件を満たさない。
【0044】
第1および/または第2の導電性多孔質構造の孔径は、好ましくは10nm~100μm、より好ましくは100nm~50μm、さらに好ましくは500nm~20μm、さらに好ましくは1μm~10μm、および最も好ましくは1μm~5μmの範囲内である。これらの孔径範囲は、アノード活性材料(炭素粒子など)およびカソード活性材料(硫黄/グラフェン組成物粒子など)を収容するように設計され、典型的には直径が10nm~20μm、最も典型的には50nm~10μm、さらに典型的には100nm~5μm、および最も典型的には200nm~3μmの一次または二次粒径を有する。
【0045】
しかし、より重要なことに、(例えば、孔径5μmを有する)細孔内の全ての活性材料粒子は、平均で3D発泡構造の細孔壁から2.5μmの距離内にあるので、アノード活性材料粒子から電子を容易に収集することができ、NaまたはLiイオンが長距離の固体拡散を受ける必要がない。これは、従来技術のリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池の従来の厚い電極(例えば、100μmの厚さの黒鉛粒子層が、厚さ10μmの固体Cu箔集電体の表面上にコーティングされる)内の幾らかの電子が、集電体によって収集されるために少なくとも50μm進まなければならない(より大きな内部抵抗と、より高い電力を送給する機能の低下とを意味する)という見解とは対照的である。
【0046】
一般に、電池では第1の液体電解質および第2の液体電解質は同一であるが、組成が異なることがある。液体電解質は、水性液体、有機液体、イオン液体(100℃よりも低い、好ましくは室温25℃よりも低い融解温度を有するイオン性塩)、または1/100~100/1の比でのイオン液体と有機液体との混合物でよい。有機液体が望ましいが、イオン液体が好ましい。注入を可能にする幾らかの流動性を電解質が有すると仮定して、ゲル電解質も使用することができる。液状電解質中に0.1%~10%の少量を添合することができる。
【0047】
特定の実施形態では、3D多孔質アノード集電体または3D多孔質カソード集電体は、少なくとも85体積%の細孔を有する200μm以上の厚さを有する導電性発泡構造を含み、および/またはアノード活性材料は、20mg/cm2以上の質量装填量を有し、電池セル全体の少なくとも25重量%または体積%を占め、および/またはカソード活性材料は、20mg/cm2以上の質量装填量を有する。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態では、3D多孔質アノード集電体または3D多孔質カソード集電体は、少なくとも90体積%の細孔を有する300μm以上の厚さを有する導電性発泡構造を含み、および/またはアノード活性材料は、25mg/cm2以上の質量装填量を有し、電池セル全体の少なくとも30重量%または体積%を占め、および/またはカソード活性材料は、25mg/cm2以上の質量装填量を有する。
【0049】
いくつかのさらに好ましい実施形態では、3D多孔質アノード集電体または3D多孔質カソード集電体は、少なくとも95体積%の細孔を有する400μm以上の厚さを有する導電性発泡構造を含み、および/またはアノード活性材料は、30mg/cm2以上の質量装填量を有し、電池セル全体の少なくとも35重量%または体積%を占め、および/またはカソード活性材料は、30mg/cm2以上の質量装填量を有する。
【0050】
3D多孔質アノード集電体または3D多孔質カソード集電体は、金属発泡体、金属ウェブまたはスクリーン、穿孔された金属シートベースの3D構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマーコーティング繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、またはそれらの組合せから選択される導電性発泡構造を含むことがある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1A】
図1(A)は、アノード集電体、アノード電極(例えば、Li箔または薄いSnコーティング層)、多孔質セパレータ、カソード電極、およびカソード集電体から構成された、従来技術のLi-SまたはNa-S電池セルの概略図である。
【
図1B】
図1(B)は、電極層が活性材料(例えば、アノード層内の硬質炭素粒子またはカソード層内のポリ硫化物粒子)の離散粒子から構成された、従来技術のナトリウムイオン電池の概略図である。
【
図1C】
図1(C)は、高多孔率発泡体の形態でのアノード集電体と、多孔質セパレータと、高多孔率発泡体の形態でのカソード集電体とを備える、本発明によるリチウム-硫黄またはナトリウム-硫黄電池セルの概略図である。懸濁液は、2つの集電体の細孔に注入または含浸される。説明のために、細孔の半分が充填されている。
【
図1D】
図1(D)は、高導電質多孔率発泡体の形態でのアノード集電体と、多孔質セパレータと、高多孔率発泡体の形態でのカソード集電体とを備える、本発明によるNaイオン-硫黄またはLiイオン-硫黄電池セルの概略図である。2つの発泡性集電体の細孔に、それぞれの懸濁液が含浸されている。
【
図1E】
図1(E)は、NaまたはLi金属またはその上に堆積された合金の層を含むアノード集電体と、多孔質セパレータと、高多孔率発泡体の形態でのカソード集電体とを備える、本発明によるNa金属-硫黄またはLi金属-硫黄電池セルの概略図である。この発泡性集電体の細孔に、カソード-電解質懸濁液が含浸されている。
【
図2】
図2は、タブを形成するように端部で接続された(電気端子)5枚の高多孔率2Dウェブ(例えば、チキンワイヤ形状の薄い2D構造)から構成された、一例としての発泡性または多孔質集電体の概略図である。
【
図3A】
図3(A)は、導電性多孔質層の例:金属グリッド/メッシュおよびカーボンナノファイバマットを示す図である。
【
図3B】
図3(B)は、導電性多孔質層の例:グラフェン発泡体と炭素発泡体を示す図である。
【
図3C】
図3(C)は、導電性多孔質層の例:黒鉛発泡体およびNi発泡体を示す図である。
【
図3D】
図3(D)は、導電性多孔質層の例:Cu発泡体およびステンレス鋼発泡体を示す図である。
【
図4A】
図4(A)は、剥離黒鉛、膨張黒鉛フレーク(厚さ>100nm)、およびグラフェンシート(厚さ<100nm、より典型的には<10nmであり、0.34nmの薄さでもよい)を製造するための一般に使用されている方法の概略図である。
【
図4B】
図4(B)は、剥離黒鉛、膨張黒鉛フレーク、およびグラフェンシートを製造するための方法を示す概略図である。
【
図5】
図5は、アノード活性材料として硬質炭素粒子を含み、カソード活性材料として炭素/ナトリウムポリ硫化物粒子を含むNaイオン-硫黄電池セルのRagoneプロット(重量および体積電力密度対エネルギー密度)を示す図である。4つのデータ曲線のうちの2つは、本発明の実施形態に従って用意されたセルに関するものであり、他の2つは、電極の従来のスラリコーティング(ロールコーティング)によるものである。
【
図6】
図6は、2つのNa-SセルのRagoneプロット(重量および体積パワー密度vs重量および体積エネルギー密度)を示す図である。どちらのNa-Sセルも、アノード活性材料としてのグラフェン包有Naナノ粒子と、カソード活性材料としてのグラフェンシート上にコーティングされた硫黄とを含む。データは、本発明による方法によって用意されたナトリウムイオンセルと、従来の電極のスラリコーティングとによるナトリウムイオンセルとの両方に関する。
【
図7】
図7は、アノード活性材料としてのリチウム箔、カソード活性材料としてのグラフェンシート担持硫黄、および有機液体電解質としてのリチウム塩(LiPF
6)-PC/DECを含むLi-S電池のRagoneプロットを示す図である。データは、本発明による方法によって用意されたリチウム金属-硫黄セルと、従来の電極のスラリコーティングとによるリチウム金属-硫黄セルとの両方に関する。
【
図8】
図8は、従来のスラリコーティングプロセスによって用意された一連のLiイオン-Sセル(グラフェンラップSiナノ粒子)のRagoneプロットと、本発明のプロセスによって用意された対応するセルのRagoneプロットを示す図である。
【
図9】
図9は、層間剥離および亀裂のない従来の方法によって用意されたS/RGOカソードと、本発明によるS/RGOカソードとの実現可能なカソード厚さ範囲にわたってプロットされた、Liイオン-Sセル(プレリチウム化黒鉛アノード+グラフェン担持Sカソード)のセルレベル重量エネルギー密度(Wh/kg)および体積エネルギー密度(Wh/L)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明は、同じタイプの電池で従来達成されていない非常に高い体積エネルギー密度を示すアルカリ金属-硫黄電池(Li-Sまたは室温Na-S)を対象とする。これは、電解質の融点よりも高い(典型的には>350℃)、かつ硫黄の融点よりも高い温度で動作しなければならないいわゆる高温Na-Sセルは含まない。このアルカリ金属電池は、一次電池でよいが、アルカリ金属イオン電池(例えば、硬質炭素粒子などのLiまたはNaインターカレーション化合物を使用する)またはアルカリ金属二次電池(例えば、NaまたはLi金属箔をアノード活性材料として使用する)から選択される二次電池であることが好ましい。電池は、水性電解質、有機電解質、ゲル電解質、イオン液体電解質、または有機液体とイオン液体との混合物に基づく。アルカリ金属電池の形状は、円筒形、正方形、ボタン状などでよい。本発明は、任意の電池形状または構成に限定されない。
【0053】
図1(A)および
図1(B)に示されるように、従来のリチウムイオン、ナトリウムイオン、Li-S、またはNa-S電池セルは、典型的には、アノード集電体(例えばCu箔)、アノード電極(アノード活性材料層)、多孔質セパレータおよび/または電解質成分、カソード電極(カソード活性材料層)、ならびにカソード集電体(例えばAl箔)から構成される。より一般的に使用されるセル構成(
図1(B))では、アノード層は、アノード活性材料(例えば硬質炭素粒子)、導電性添加剤(例えば膨張黒鉛フレーク)、および樹脂粘結剤(例えばSBRまたはPVDF)から構成される。カソード層は、カソード活性材料(例えばNaイオンセル中のNaFePO
4粒子、またはLi-Sセル中のS-炭素複合体粒子)、導電性添加剤(例えばカーボンブラック粒子)、および樹脂粘結剤(例えばPVDF)の粒子から構成される。アノード層とカソード層はどちらも、単位電極面積当たりにおそらく十分な量の電流を生じるように、典型的には60~100μmの厚さである(典型的には、200μmよりも大幅に薄い)。例として100μmの活性材料層の厚さおよび10μmの固体(CuまたはAl箔)集電体層の厚さを用いると、得られる電池構成は、従来の電池セルでは、集電体厚さと活性材料層厚さとの比が10/100、すなわち1/10である。
【0054】
60~100μmのこの厚さ範囲は、現在のスラリコーティング法(活性材料-粘結剤-添加剤混合スラリのロールコーティング)に基づいて電池設計者が通常的に作業を行う、業界で受け入れられている制約と考えられる。この厚さの制約は、以下のような幾つかの理由によるものである:(a)既存の電池電極コーティング機は、非常に薄いまたは非常に厚い電極層をコーティングするようには装備されていない;(b)リチウムイオン拡散経路長の短縮を考慮すると、より薄い層が好ましい;しかし、層が薄すぎると(例えば<60μm)、十分な量の活性アルカリ金属イオン貯蔵材料を含まない(したがって、不十分な電流出力となる);(c)より厚い電極は、スラリのロールコーティング後の乾燥または取扱い時に層間剥離または亀裂が生じやすい;および(d)より厚いコーティングは、非常に長い加熱区域を必要とする(100メートルよりも長い加熱区域を有することも珍しくない。これは、製造機器を非常に高価なものにする)。この制約は、最小オーバーヘッド重量および最大ナトリウム貯蔵容量、したがって最大エネルギー密度(セルのWk/kgまたはWh/L)を得るために、全ての非活性材料(例えば集電体およびセパレータ)の量を増加させることなく活性材料(NaまたはLiイオンの貯蔵する役目を果たすもの)の量を自由に増加させることを不可能にしている。
【0055】
あまり一般的に使用されていないセル構成では、
図1(A)に示されるように、アノード活性材料(例えば、NaTi
2(PO
4)
3またはNa膜)またはカソード活性材料(例えば、Li-イオンセルまたはLi-Sセル中の硫黄/炭素混合物中のリチウム遷移金属酸化物)が、スパッタリングを利用する銅箔またはAl箔などの集電体上に直接、薄膜の形態で堆積される。しかし、厚さ方向の寸法が非常に小さい(典型的には500nmよりもはるかに小さく、しばしば必要であれば100nmよりも薄い)そのような薄膜構造は、(電極または集電体の表面積を同じと仮定して)電極に少量の活性材料しか組み込むことができないことを示唆し、単位電極表面積当たりの総NaまたはLi貯蔵容量を低減する。そのような薄膜は、(アノードに関する)サイクリングにより誘発される割れに対する耐性をより高くするため、またはカソード活性材料の完全な利用を容易にするために、厚さを100nm未満にしなければならない。そのような制約は、総NaまたはLi貯蔵容量、および単位電極表面積当たりのナトリウムまたはリチウム貯蔵容量をさらに減少させる。そのような薄膜電池は、適用範囲が非常に限られている。
【0056】
アノード側では、100nmよりも厚いスパッタリングされたNaTi2(PO4)3層は、電池の充放電サイクル中に割れ抵抗性が低いことが判明している。わずか数サイクルで破砕されてしまう。カソード側では、100nmよりも厚い硫黄の層は、リチウムまたはナトリウムイオンが完全に浸透してカソード層全体に達することを可能にせず、カソード活性材料利用率が低くなる。望ましい電極厚さは少なくとも100μm(100nmではない)であり、個々の活性材料の粒子は、望ましくは100nm未満の寸法を有する。したがって、集電体上に直接堆積されたこれらの薄膜電極(<100nmの厚さを有する)は、必要な厚さに3桁足りない。さらなる問題として、カソード活性材料は全て、電子とナトリウム/リチウムイオンの両方に対して伝導性ではない。大きな層厚さは、非常に高い内部抵抗、および低い活性材料利用率を示唆する。
【0057】
すなわち、材料のタイプ、サイズ、電極層の厚さ、および活性材料の質量負荷の面で、カソードまたはアノード活性材料の設計および選択に際して同時に考慮しなければならない幾つかの相反する因子がある。これまでのところ、これらのしばしば相反する問題に対して任意の先行技術の教示によって提供されている有効な解決策は存在していない。本明細書に開示されるように、本発明者らは、アルカリ金属-硫黄電池を製造する新規の方法を開発することによって、電池設計者およびまた電気化学者を30年超にわたって悩ませてきたこれらの難題を解決した。
【0058】
従来技術のナトリウムまたはリチウム電池セルは、典型的には、以下のステップを含む方法によって製造される:(a)第1のステップは、アノード活性材料(例えば、硬質炭素粒子)、導電性フィラー(例えば、拡張黒鉛フレーク)、および樹脂粘結剤(例えば、PVDF)の粒子を溶媒(例えば、NMP)中で混合して、アノードスラリを形成することである。それとは別に、カソード活性材料(例えば、Na-イオンセルのリン酸ナトリウム金属粒子およびLi-イオンセルのLFP粒子)、導電性フィラー(例えば、アセチレンブラック)、および樹脂粘結剤(例えば、PVDF)の粒子を溶媒(例えば、NMP)中で混合して分散させて、カソードスラリを形成する。(b)第2のステップは、アノード集電体(例えば、Cu箔)の一方または両方の主面にアノードスラリをコーティングし、溶媒(例えば、NMP)を蒸発させることによってコーティングされた層を乾燥させて、Cu箔上にコーティングされた乾燥アノード電極を形成することである。
同様に、カソードスラリをコーティングして乾燥させて、Al箔上にコーティングされた乾燥カソード電極を形成する。実際の製造状況では、スラリコーティングは通常、ロールツーロール方式で行われる;(c)第3のステップは、アノード/Cu箔シート、多孔質セパレータ層、およびカソード/Al箔シートを積層し合わせて、3層または5層アセンブリを形成し、これを所望のサイズに切断してまたは細く裂いて積層し、(形状の一例として)矩形の構造を形成するか、または巻いて円筒形のセル構造にすることを含む。(d)次いで、矩形または円筒形の積層構造を、アルミニウムプラスチック積層エンベロープまたはスチールケーシングに収容する。(e)次いで、液体電解質を積層構造に注入して、ナトリウムイオンまたはリチウム電池セルを製造する。
【0059】
この方法および結果として得られるナトリウムイオンセルおよびリチウムイオン電池セル(またはLi-SおよびNa-Sセル)に関連する幾つかの重大な問題がある。
1)100μmよりも、まして200μmよりも厚い電極層(アノード層またはカソード層)を製造することは非常に難しい。その理由は幾つかある。厚さ100μmの電極は、典型的には、スラリコーティング施設において長さ30~100メートルの加熱区域を必要とし、これは、時間がかかりすぎ、エネルギーを消費しすぎ、費用対効果が良くない。金属酸化物粒子または硫黄など幾つかの電極活性材料に関しては、100μmよりも厚い良好な構造的完全性を備える電極を実際の製造環境で連続的に製造することはできていない。得られる電極は、非常に壊れやすくて脆い。より厚い電極は、層間剥離および割れが生じる傾向が高い。
2)
図1(A)に示されるような従来の方法では、電極の実際の質量負荷、および活性材料に関する見掛けの密度は、高エネルギー密度を実現するには低すぎる。大抵は、比較的大きい黒鉛粒子に関してさえ、電極のアノード活性材料質量負荷(面密度)は15mg/cm
2よりもかなり低く、活性材料の見掛けの体積密度またはタップ密度は典型的には1.2g/cm
3未満である。電極のカソード活性材料質量負荷(面密度)は、硫黄カソードに関しては、10mg/cm
2よりも実質的に低い。さらに、電池容量に寄与せずに電極に追加の重量および体積を加える非常に多くの他の非活性材料(例えば、導電性添加剤および樹脂粘結剤)が存在する。これらの低い面密度および低い体積密度は、比較的低い重量エネルギー密度および低い体積エネルギー密度をもたらす。
3)従来の方法は、電極活性材料(アノード活性材料およびカソード活性材料)を液体溶媒(例えば、NMP)中で分散させてスラリにする必要があり、集電体表面にコーティングした後に液体溶媒を除去して電極層を乾燥させなければならない。アノードおよびカソード層をセパレータ層と共に積層して、ハウジング内にパッケージングしてスーパーキャパシタセルを形成した後、セル内に(NMPとは異なる溶媒に溶解された塩を使用して)液体電解質を注入する。実際には、2つの電極を濡らし、次いで電極を乾燥させ、最後に再び濡らす。そのような湿潤-乾燥-湿潤法は、良好なプロセスではない。さらに、最も一般的に使用される溶媒(NMP)は、よく知られた望ましくない溶媒(例えば、先天性異常を引き起こすことが知られている)である。
4)現在のLi-SおよびNa-S電池は、依然として、重量エネルギー密度が比較的低く、体積エネルギー密度が低いという問題がある。したがって、Li-Sも室温Na-S電池も市場に出ていない。
【0060】
文献では、活性材料重量のみまたは電極重量に基づいて報告されたエネルギー密度データから、実用的な電池セルまたはデバイスのエネルギー密度を直接導くことはできない。「オーバーヘッド重量」、すなわち他のデバイス構成要素(粘結剤、導電性添加剤、集電体、セパレータ、電解質、およびパッケージング)の重量も考慮に入れる必要がある。従来の製造法では、ナトリウムイオン電池中のアノード活性材料(例えば、カーボン粒子)の重量比は典型的には15%~20%であり、カソード活性材料(例えば、ナトリウム遷移金属酸化物)の重量比は20%~30%である。
【0061】
本発明は、高い電極厚さ(電極活性材料を含む電極の厚さ。活性材料を含まない集電体層(存在する場合)の厚さは含まない)、高い活性材料質量負荷、低いオーバーヘッド重量および体積、高い体積静電容量、ならびに高い体積エネルギー密度を有するLi-SまたはNa-S電池セルを製造する方法を提供する。一実施形態では、
図1(C)および
図1(D)に示されるように、本発明の方法は、以下のことを含む。
(A)アノード集電体としての第1の導電性多孔質または発泡構造236と、カソード集電体としての第2の導電性多孔質または発泡構造238と、第1および第2の導電性多孔質構造の間に配設された多孔質セパレータ240とから構成された多孔質セルフレームワークを組み立てる。
a.第1および/または第2の導電性多孔質構造は、100μm以上(好ましくは200μm超、より好ましくは300μm超、さらに好ましくは400μm超、および最も好ましくは500μm超)の厚さ、および少なくとも70体積%の細孔(好ましくは少なくとも80体積%、より好ましくは少なくとも90体積%、および最も好ましくは少なくとも95体積%の多孔率)を有する。
b.これらの導電性多孔質構造は、本質的に70%~99%の多孔率レベルを有し、残りの1%~30%は細孔壁(例えば、金属または黒鉛骨格)である。これらの細孔は、活性材料(例えば、アノード内の炭素粒子+任意選択の導電性添加剤)と液体電解質との混合物を収容するために使用される。
(B)第1の液体電解質中に分散されたアノード活性材料および任意選択の導電性添加剤の第1の懸濁液(またはスラリ)と、第2の液体電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤の第2の懸濁液(スラリ)とを調製する。
(C)第1の導電性多孔質構造の細孔に第1の懸濁液を注入してまたは含浸してアノードを形成し、第2の導電性発泡構造の細孔に第2の懸濁液を注入してまたは含浸してカソードを形成し、それによって、アノード活性材料がアノード内で20mg/cm
2以上(好ましくは25mg/cm
2以上、およびより好ましくは30mg/cm
2以上)の電極活性材料負荷を成し、またはカソード活性材料が硫黄ベースのカソード活性材料に関して10mg/cm
2以上(好ましくは15mg/cm
2超、およびより好ましくは20mg/cm
2超)の電極活性材料質量負荷を成すようにし、ここで、アノード、セパレータ、およびカソードが、保護ハウジング内に組み立てられる。
a.実質的に全ての細孔が、電極(アノードまたはカソード)活性材料、任意選択の導電性添加剤、および液体電解質(粘結剤樹脂は不要)を充填されることが好ましい。
b.細孔壁(1~30%)に対して細孔の量が多い(70~99%)ので無駄な空間がほとんどなく(「無駄」とは、電極活性材料および電解質が占有していないことを意味する)、その結果、多量の電極活性材料-電解質区域(高い活性材料負荷質量)が得られる。
c.
図1(C)に示されているのは、アノード用の導電性多孔質構造(3Dアノード集電体236)が、第1の懸濁液(液体電解質中に分散されたアノード活性材料および任意選択の導電性添加剤)で一部充填されている状況である。アノード集電体発泡体236の上部240は空のままであるが、下部244はアノード懸濁液を充填されている。同様に、カソード集電体発泡体238の上部242は空のままであり、下部246はカソード懸濁液(液体電解質中に分散されたカソード活性材料)を充填されている。4つの矢印が、懸濁液の噴射方向を表す。
【0062】
図1(D)に示されているのは、アノード集電体発泡体およびカソード集電体発泡体がどちらもそれぞれの懸濁液を充填されている状況である。一例として、発泡孔250(拡大図)は、硬質炭素粒子252(アノード活性材料)および液体電解質254を含むアノード懸濁液を充填されている。同様に、発泡孔260(拡大図)は、炭素被覆硫黄またはポリ硫化物粒子262(カソード活性材料)および液体電解質264を含むカソード懸濁液を充填されている。
【0063】
図1(E)に概略的に示される代替構成は、本発明によるナトリウム金属またはリチウム金属電池セルであり、NaまたはLi金属282またはその上に堆積されたNa/Li金属合金の層を含むアノード集電体280と、多孔質セパレータと、高多孔率発泡体の形態でのカソード集電体とを備える。この発泡性集電体の細孔270には、カソード活性材料272および液体電解質274の懸濁液が含浸されている。
【0064】
そのような構成(
図1(C)~(E))では、細孔壁が集電体全体(またアノード層全体)の至る所に存在するので、電子は、短い距離(平均で孔径の半分;例えば数マイクロメートル)だけ移動すれば、集電体(細孔壁)によって収集される。さらに、各懸濁液において、全ての電極活性材料粒子が液体電解質(電解質濡れ性の問題なし)中に予備分散され、湿式コーティング、乾燥、充填、および電解質注入の従来の方法によって用意される電極で一般に存在する乾燥ポケットの存在をなくす。したがって、本発明による方法は、従来の電池セル製造法に勝る全く予想外の利点を生み出す。
【0065】
好ましい実施形態では、アノード活性材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択されるプレナトリウム化またはプレリチウム化されたバージョンのグラフェンシートである。上記のグラフェン材料の任意の1つを製造するための出発グラフェン材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、またはそれらの組合せから選択することができる。グラフェン材料は、アルカリ金属電池のアノード活性材料とカソード活性材料の両方のための良好な導電性添加剤でもある。
【0066】
面間ファンデルワールス力を克服することができると仮定して、天然または人造黒鉛粒子中の黒鉛結晶の構成グラフェン面を剥離し、抽出または単離して、六角形を成す炭素原子の個々のグラフェンシートを得ることができ、これらのシートは単原子厚である。炭素原子の単離された個々のグラフェン面は、一般に、単層グラフェンと呼ばれる。厚さ方向で約0.3354nmのグラフェン面間隔でファンデルワールス力によって結合された複数のグラフェン面の積層は、一般に多層グラフェンと呼ばれる。多層グラフェンプレートレットは、最大300層のグラフェン面(100nm未満の厚さ)、しかしより典型的には最大30層のグラフェン面(10nm未満の厚さ)、さらにより典型的には最大20層のグラフェン面(7nm未満の厚さ)、および最も典型的には最大10層のグラフェン面(科学界では一般に数層グラフェンと呼ばれる)を有する。単層グラフェンおよび多層グラフェンシートは、総称して「ナノグラフェンプレートレット」(NGP)と呼ばれる。グラフェンシート/プレートレット(総称してNGP)は、0Dフラーレン、1D CNTまたはCNF、および3D黒鉛とは異なる新しいクラスのカーボンナノ材料(2Dナノカーボン)である。特許請求の範囲を定義する目的で、また当技術分野で一般に理解されるように、グラフェン材料(単離されたグラフェンシート)は、カーボンナノチューブ(CNT)またはカーボンナノファイバ(CNF)ではない(それらを含まない)。
【0067】
1つの方法では、
図4(A)および
図4(B)(概略図)に示されるように、グラフェン材料は、天然黒鉛粒子を強酸および/または酸化剤でインターカレーションして黒鉛インターカレーション化合物(GIC)または酸化黒鉛(GO)を得ることによって得られる。GICまたはGO中のグラフェン面間の間隙空間に化学種または官能基が存在することが、グラフェン間隔(d
002;X線回折によって決定される)を増加させる働きをし、それにより、通常であればc軸方向に沿ってグラフェン面を一体に保持するファンデルワールス力を大幅に減少させる。GICまたはGOは、硫酸、硝酸(酸化剤)、および別の酸化剤(例えば、過マンガン酸カリウムまたは過塩素酸ナトリウム)の混合物中に天然黒鉛粉末(
図4(B)での参照番号100)を浸漬することによって生成されることが最も多い。インターカレーション手順中に酸化剤が存在する場合、得られるGIC(102)は、実際には、ある種の酸化黒鉛(GO)粒子である。次いで、このGICまたはGOを繰り返し洗浄し、水中ですすいで余剰の酸を除去すると、酸化黒鉛懸濁液または分散液が得られ、これは、水中に分散された、離散した視覚的に区別可能な酸化黒鉛粒子を含む。グラフェン材料を製造するために、このすすぎステップ後に2つの処理ルートの一方をたどることができ、以下に簡単に説明する。
【0068】
ルート1は、本質的に乾燥GICまたは乾燥酸化黒鉛粒子の塊である「膨張黒鉛」を得るために懸濁液から水を除去することを含む。膨張黒鉛を典型的には800~1,050℃の範囲内の温度に約30秒~2分間曝すと、GICは、30~300倍に急速に体積膨張して、「黒鉛ワーム」(104)を形成する。黒鉛ワーム(104)はそれぞれ、剥離されてはいるがほとんど分離されておらず、相互接続されたままの黒鉛フレークの集合である。
【0069】
ルート1Aでは、これらの黒鉛ワーム(剥離された黒鉛または「相互接続された/分離されていない黒鉛フレークのネットワーク」)を再び圧縮して、典型的には0.1mm(100μm)~0.5mm(500μm)の範囲内の厚さを有する可撓性黒鉛シートまたは箔(106)を得ることができる。代替として、100nmよりも厚い(したがって定義によりナノ材料ではない)黒鉛フレークまたはプレートレットを主として含むいわゆる「膨張黒鉛フレーク」(108)を製造する目的で、低強度エアミルまたはせん断機を使用して黒鉛ワームを単に破砕することを選択することもできる。
【0070】
ルート1Bでは、同一出願人の米国特許出願第10/858,814号明細書(2004年3月6日)に開示されているように、剥離された黒鉛は、(例えば、超音波装置、高せん断ミキサ、高強度エアジェットミル、または高エネルギーボールミルを使用した)高強度の機械的せん断を受けて、分離された単層および多層グラフェンシート(総称してNGP112と呼ぶ)を形成する。単層グラフェンが0.34nmの薄さであり得る一方、多層グラフェンは、最大100nm、しかしより典型的には10nm未満の厚さを有することがある(一般に数層グラフェンと呼ばれる)。複数のグラフェンシートまたはプレートレットが、製紙法を使用して1枚のNGP紙として形成されることがある。このNGP紙は、本発明による方法で利用される多孔質グラフェン構造層の一例である。
【0071】
ルート2は、個々の酸化グラフェンシートを酸化黒鉛粒子から分離/単離する目的で、酸化黒鉛懸濁液(例えば、水中に分散された酸化黒鉛粒子)を超音波処理することを含む。これは、グラフェン面の離間距離が天然黒鉛での0.3354nmから高度に酸化された酸化黒鉛での0.6~1.1nmに増加されており、隣接する面を一体に保持するファンデルワールス力を大幅に弱めるという見解に基づいている。超音波出力は、完全に分離された、単離された、または離散した酸化グラフェン(GO)シートを形成するために、グラフェン面シートをさらに分離するのに十分なものでよい。次いで、これらの酸化グラフェンシートを化学的または熱的に還元して、「還元酸化グラフェン」(RGO)を得ることができ、これは、典型的には、0.001重量%~10重量%、より典型的には0.01重量%~5重量%の酸素含有量を有し、最も典型的にはかつ好ましくは2重量%未満の酸素を含む。
【0072】
本出願の特許請求の範囲を定義する目的で、NGPまたはグラフェン材料は、単層および多層(典型的には10層未満)の純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン(RGO)、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、ドープされた(例えば、BまたはNをドープされた)グラフェンの離散シート/プレートレットを含む。純粋なグラフェンは、本質的に0%の酸素を有する。RGOは、典型的には0.001重量%~5重量%の酸素含有量を有する。酸化グラフェン(RGOを含む)は、0.001重量%~50重量%の酸素を有することができる。純粋なグラフェンを除き、全てのグラフェン材料が、非炭素元素(例えば、O、H、N、B、F、Cl、Br、Iなど)を0.001重量%~50重量%含む。本明細書では、これらの材料を不純グラフェン材料と呼ぶ。
【0073】
純粋なグラフェンは、より小さい離散グラフェンシート(典型的には0.3μm~10μm)として、黒鉛粒子の直接超音波処理(液相剥離または生成としても知られている)または超臨界流体剥離によって製造することができる。これらの方法は、当技術分野でよく知られている。
【0074】
酸化グラフェン(GO)は、反応容器内で、ある期間(出発材料の性質および使用される酸化剤のタイプに応じて典型的には0.5~96時間)にわたって所望の温度で、出発黒鉛材料の粉末またはフィラメント(例えば、天然黒鉛粉末)を酸化性液体媒体(例えば、硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物)中に浸漬することによって得ることができる。上述したように、次いで、得られた酸化黒鉛粒子に熱剥離または超音波誘発剥離を施して、単離GOシートを生成することができる。次いで、これらのGOシートは、OH基を他の化学基(例えば、BrやNH2など)で置換することによって様々なグラフェン材料に変換することができる。
【0075】
本明細書では、ハロゲン化グラフェン材料群の一例として、フッ素化グラフェンまたはフッ化グラフェンが使用される。フッ素化グラフェンを生成するために採用されている2つの異なる手法がある。(1)予め合成されたグラフェンのフッ素化:この手法は、機械的剥離またはCVD成長によって用意されたグラフェンをXeF2またはFベースのプラズマなどのフッ素化剤で処理することを必要とする。(2)多層フッ化黒鉛の剥離:フッ化黒鉛の機械的剥離と液相剥離の両方を容易に達成することができる。
【0076】
低温で黒鉛インターカレーション化合物(GIC)CxF(2≦x≦24)が生成されるのに対し、高温でのF2と黒鉛との相互作用は、共有結合性フッ化黒鉛(CF)nまたは(C2F)nをもたらす。(CF)nでは、炭素原子はsp3混成であり、したがって、フルオロカーボン層は波形であり、トランスリンクされたシクロヘキサンのいす型立体配座からなる。(C2F)nでは、C原子の半分のみがフッ素化され、隣接する炭素シートの対はどれもC-C共有結合により結合される。フッ素化反応に関する系統的研究から、得られたF/C比が、フッ素化温度、フッ素化ガス中のフッ素の分圧、ならびに黒鉛前駆体の物理的特性、例えば黒鉛化度、粒度、および比表面積に大きく依存することが示された。フッ素(F2)に加え、他のフッ素化剤も使用することができるが、入手できる文献のほとんどは、時としてフッ化物の存在下で、F2ガスによるフッ素化を含む。
【0077】
層状の前駆体材料を個々の層または数層の状態に剥離するためには、隣接する層間の引力を克服すること、および層をさらに安定させることが必要である。これは、官能基によるグラフェン表面の共有結合修飾によって、または特定の溶媒、界面活性剤、ポリマー、もしくはドナー-アクセプタ芳香族分子を使用する非共有結合修飾によって実現されることがある。液相剥離のプロセスは、液体媒体中のフッ化黒鉛の超音波処理を含む。
【0078】
グラフェンの窒素化は、酸化グラフェンなどのグラフェン材料を高温(200~400℃)でアンモニアに曝すことによって行うことができる。窒素化グラフェンは、水熱法によって、より低温で生成することもできる。これは、例えば、オートクレーブ内にGOおよびアンモニアを封止し、次いで温度を150~250℃に上昇させることによって行われる。窒素ドープされたグラフェンを合成する他の方法は、グラフェンに対する窒素プラズマ処理、アンモニアの存在下での黒鉛電極間のアーク放電、CVD条件下での酸化グラフェンのアンモノリシス、および様々な温度での酸化グラフェンおよび尿素の水熱処理を含む。
【0079】
上記の特徴は、以下のようにさらに詳細に記述および説明される。
図4(B)に示されるように、黒鉛粒子(例えば、100)は、典型的には、複数の黒鉛結晶または微粒子からなる。黒鉛結晶は、炭素原子の六方晶ネットワークの層面から構成されている。六角形状に配列された炭素原子のこれらの層平面は実質的に平坦であり、特定の結晶において互いに実質的に平行かつ等距離になるように配向または秩序化されている。一般にグラフェン層または基底面と呼ばれる六方晶構造の炭素原子のこれらの層は、弱いファンデルワールス力によってそれらの厚さ方向(結晶学的c軸方向)で弱く結合され、これらのグラフェン層の群は結晶として配列される。黒鉛結晶構造は通常、2つの軸または方向に関して特徴付けられる。すなわち、c軸方向およびa軸(またはb軸)方向である。c軸は、基底面に垂直な方向である。a軸またはb軸は、基底面に平行(c軸方向に垂直)な方向である。
【0080】
平行なグラフェン層を保持する弱いファンデルワールス力により、天然黒鉛を処理してグラフェン層間の間隔をかなり開き、それにより、c軸方向での顕著な膨張を可能にし、したがって炭素層の層状特性が実質的に保持された膨張黒鉛構造を形成することができる。可撓性黒鉛を製造するための方法は、当技術分野でよく知られている。一般に、天然黒鉛のフレーク(例えば、
図4(B)での参照番号100)を酸溶液中にインターカレーションして、黒鉛インターカレーション化合物(GIC、102)を生成する。GICを洗浄し、乾燥させ、次いで、高温に短時間曝すことによって剥離させる。これにより、フレークは、それらの元の寸法の80~300倍まで黒鉛のc軸方向で膨張または剥離する。剥離された黒鉛フレークは、見た目が虫のようであり、したがって一般に黒鉛ワーム104と呼ばれる。大きく膨張されている黒鉛フレークのこれらのワームは、ほとんどの用途に関して、粘結剤を使用せずに、約0.04~2.0g/cm
3の典型的な密度を有する膨張黒鉛の粘着性または一体型のシート、例えばウェブ、紙、ストリップ、テープ、箔、マットなど(典型的には「可撓性黒鉛」106と呼ばれる)として形成することができる。
【0081】
硫酸などの酸は、GICを得るためにグラフェン面間の空間に浸透する唯一のタイプのインターカレーション剤(インターカラント)というわけではない。黒鉛をステージ1、ステージ2、ステージ3などにインターカレーションするために、アルカリ金属(Li、K、Na、Cs、およびそれらの合金または共晶)など多くの他のタイプのインターカレート剤を使用することができる。ステージnは、n個のグラフェン面ごとに1つのインターカラント層があることを示唆する。例えば、ステージ1のカリウムインターカレーションされたGICは、グラフェン面ごとに1つのK層があることを意味する。すなわち、G/K/G/K/G/KG…の順列で2つの隣接するグラフェン面間に挿入された1つのK原子層を見つけることができる。ここで、Gはグラフェン面であり、Kはカリウム原子面である。ステージ2のGICは、GG/K/GG/K/GG/K/GG…の順列を有する。ステージ3のGICは、GGG/K/GGG/K/GGG…の順列を有する。以下同様である。次いで、これらのGICを水または水-アルコール混合物と接触させて、剥離された黒鉛および/または分離/単離されたグラフェンシートを生成することができる。
【0082】
剥離された黒鉛ワームに、高強度エアジェットミル、高強度ボールミル、または超音波デバイスを使用した高強度の機械的せん断/分離処理を施して、分離されたナノグラフェンプレートレット(NGP)を生成することができ、グラフェンプレートレットは全て、100nmよりも薄く、大抵は10nmよりも薄く、多くの場合には単層グラフェンである(
図4(B)では参照番号112としても示されている)。NGPは、グラフェンシートまたは複数のグラフェンシートから構成され、各シートは、炭素原子の2次元の六角形構造である。フィルム形成または製紙法を使用して、単層および/または数層のグラフェンまたは酸化グラフェンの離散シート/プレートレットを含む複数のNGPの塊をグラフェンフィルム/紙(
図4(B)の参照番号114)に形成することができる。代替として、低強度せん断では、黒鉛ワームは、厚さ100nm超のいわゆる膨張黒鉛フレーク(
図4(B)での参照番号108)に分離される傾向がある。これらのフレークは、樹脂粘結剤有りまたは無しの製紙またはマット製造法を使用して黒鉛紙またはマット106として形成することができる。膨張黒鉛フレークは、電池での導電性フィラーとして使用することができる。分離されたNGP(個々の単層または多層のグラフェンシート)は、アノード活性材料として、またはアルカリ金属-硫黄電池のカソードにおける支持導電性材料として使用することができる。
【0083】
本発明を実施するのに使用することができるアノード活性材料またはカソード活性材料の種類に制限はない。1つの好ましい実施形態では、アノード活性材料は、以下のものからなる群から選択される:(a)ナトリウムまたはリチウムドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、およびそれらの混合物;(b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物のナトリウムまたはリチウム含有合金または金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物または複合体のナトリウムまたはリチウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、またはアンチモン化物;(d)ナトリウムまたはリチウム塩;および(e)ナトリウムまたはリチウムを予め装填されたまたは予め付着されたグラフェンシート(本明細書では、プレナトリウム化またはプレリチウム化グラフェンシートと呼ぶ)。
【0084】
充電式アルカリ金属-硫黄電池において、アノードは、アルカリ金属、アルカリ金属合金、アルカリ金属もしくはアルカリ金属合金とアルカリインターカレーション化合物との混合物、アルカリ元素含有化合物、またはそれらの組合せから選択されるアルカリイオン源を含むことがある。特に望ましいのは、石油コークス、カーボンブラック、無定形炭素、硬質炭素、鋳型炭素、中空炭素ナノワイヤ、中空炭素球、天然黒鉛、人工黒鉛、リチウムまたはナトリウムチタン酸塩、NaTi2(PO4)3、Na2Ti3O7(チタン酸ナトリウム)、Na2C8H4O4(テレフタル酸二ナトリウム)、Na2TP(テレフタル酸ナトリウム)、TiO2、NaxTiO2(x=0.2~1.0)、カルボン酸塩ベースの物質、C8H4Na2O4、C8H6O4、C8H5NaO4、C8Na2F4O4、C10H2Na4O8、C14H4O6、C14H4Na4O8、またはそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含むアノード活性材料である。一実施形態において、アノードは、2または3種類のアノード活性材料(例えば、活性炭+NaTi2(PO4)3の混合粒子、またはLi粒子と黒鉛粒子との混合物)の混合物を含むことがある。
【0085】
本発明による方法または電池における第1または第2の液体電解質は、水性電解質、有機電解質、イオン液体電解質、有機電解質とイオン電解質の混合物、またはそれらとポリマーとの混合物から選択することができる。いくつかの実施形態では、水性電解質は、水中、または水とアルコールとの混合物中に溶解されたナトリウム塩またはカリウム塩を含む。いくつかの実施形態において、ナトリウム塩またはカリウム塩は、Na2SO4、K2SO4、それらの混合物、NaOH、LiOH、NaCl、LiCl、NaF、LiF、NaBr、LiBr、NaI、LiI、またはそれらの混合物から選択される。
【0086】
有機溶媒は、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、炭酸プロピレン(PC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、ギ酸プロピル(PF)、ギ酸メチル(MF)、トルエン、キシレン、酢酸メチル(MA)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸アリルエチル(AEC)、ヒドロフルオロエーテル(例えば、メチルペルフルオロブチルエーテル、MFE、またはエチルペルフルオロブチルエーテル、EFE)、およびそれらの組合せから選択される液体溶媒を含むことがある。
【0087】
有機電解質は、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸カリウム(KClO4)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF6)、六フッ化リン酸カリウム(KPF6)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF4)、ホウフッ化カリウム(KBF4)、六フッ化ヒ酸ナトリウム、六フッ化ヒ酸カリウム、トリフルオロメタスルホン酸ナトリウム(NaCF3SO3)、トリフルオロメタスルホン酸カリウム(KCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CF3SO2)2)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドカリウム(KN(CF3SO2)2)、イオン液体塩、またはそれらの組合せから好ましくは選択されるアルカリ金属塩を含むことがある。
【0088】
電解質は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロ-メタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビスートリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF2C2O4)、リチウムオキサリル-ジフルオロボレート(LiBF2C2O4)、硝酸リチウム(LiNO3)、Li-フルオロアルキルリン酸塩(LiPF3(CF2CF3)3)、リチウムビスペルフルオロ-エチスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体リチウム塩、またはそれらの組合せから選択されるリチウム塩を含むこともある。
【0089】
イオン液体はイオンのみから構成されている。イオン液体は、所望の温度を超えたときには融解状態または液体状態になる低融解温度の塩である。例えば、イオン塩は、その融点が100℃未満である場合にイオン液体とみなされる。融解温度が室温(25℃)以下である場合、塩は室温イオン液体(RTIL)と呼ばれる。ILベースのリチウム塩は、大きなカチオンと電荷非局在化アニオンとの組合せによる弱い相互作用によって特徴付けられる。これは、可撓性(アニオン)および非対称性(カチオン)による結晶化の傾向を低減する。
【0090】
いくつかのILは、本発明の第1の有機溶媒と共に働くためのコソルベント(塩ではない)として使用することができる。1-エチル-3-メチル-イミダゾリウム(EMI)カチオンとN,N-ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンとの組合せによって、よく知られたイオン液体が生成される。この組合せにより、最大約300~400℃で、多くの有機電解質溶液と同等のイオン導電率、ならびに低い分解性および低い蒸気圧を有する流体が得られる。これは、一般に低い揮発性および非引火性、したがって電池に関してはるかに安全な電解質溶媒を示唆する。
【0091】
イオン液体は、基本的には、多様な成分の調製が容易であることにより、無制限の数の構造変化を生じる有機または無機イオンから構成される。したがって、様々な種類の塩を使用して、所与の用途に合わせて所望の特性を有するイオン液体を設計することができる。これらは、とりわけ、カチオンとしてのイミダゾリウム、ピロリジニウム、および第四級アンモニウム塩と、アニオンとしてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、およびヘキサフルオロホスフェートとを含む。有用なイオン液体ベースのナトリウム塩(溶媒ではない)は、カチオンとしてのナトリウムイオンと、アニオンとしてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、またはヘキサフルオロリン酸塩とから構成することができる。例えば、トリフルオロメタンスルホンイミドナトリウム(NaTFSI)が特に有用なナトリウム塩である。
【0092】
それらの組成に基づいて、イオン液体は、非プロトン性型、プロトン性型、および双性イオン型の3つの基本的なタイプを含む異なるクラスに入り、それぞれが特定の用途に適している。室温イオン液体(RTIL)の一般的なカチオンとしては、限定はしないが、テトラアルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、およびテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、ならびにトリアルキルスルホニウムが挙げられる。RTILの一般的なアニオンとしては、限定はしないが、BF4
-、B(CN)4
-、CH3BF3
-、CH2CHBF3
-、CF3BF3
-、C2F5BF3
-、n-C3F7BF3
-、n-C4F9BF3
-、PF6
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、N(SO2CF3)2
-、N(COCF3)(SO2CF3)-、N(SO2F)2
-、N(CN)2
-、C(CN)3
-、SCN-、SeCN-、CuCl2
-、AlCl4
-、F(HF)2.3
-などが挙げられる。相対的に言えば、イミダゾリウムまたはスルホニウムベースのカチオンと、AlCl4
-、BF4
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、NTf2
-、N(SO2F)2
-、またはF(HF)2.3
-などの錯体ハロゲン化物アニオンとの組合せが、良好な動作伝導率を有するRTILをもたらす。
【0093】
RTILは、高い固有のイオン導電率、高い熱安定性、低い揮発性、低い(実質的にゼロの)蒸気圧、非引火性、室温よりも上および下の広い温度範囲で液体を維持する機能、高い極性、高い粘度、および広い電気化学的窓など、典型的な特性を有することができる。高い粘度を除いて、これらの特性は、交換可能なリチウムセルにおける電解質副溶媒としてRTILを使用する際に望ましい特性である。
【0094】
Li-SセルまたはNa-Sセルの比容量および比エネルギーは、(粘結樹脂および導電性フィラーなど他の非活性成分に対する)カソード活性層内に実装することができる硫黄の実際の量と、この硫黄量の利用率(すなわち、カソード活性材料の利用効率、またはリチウムイオンの貯蔵および解放に積極的に関与するSの実際の比率)とによって定められる。高容量および高エネルギーのLi-SまたはNa-Sセルは、カソード活性材料層内での高いS量(すなわち、粘結樹脂、導電性添加剤、および他の修飾または支持材料など、非活性材料の量に対して)、および高いS利用効率を必要とする。本発明は、そのようなカソード活性層、およびそのようなカソード活性層(例えば、プレ硫化された活性カソード層)を製造する方法を提供する。硫黄事前装填手順の一例として、この方法は、以下の4つのステップ(a)~(d)を含む。
a)100m2/gよりも大きい比表面積を有する大きなグラフェン表面を有する多孔質グラフェン構造の層を用意するステップ(これらの表面は電解質にアクセス可能でなければならない)。多孔質グラフェン構造は、好ましくは>500m2/g、より好ましくは>700m2/g、最も好ましくは>1,000m2/gの比表面積を有する;
b)溶媒(有機溶媒および/またはイオン液体などの非水性溶媒)と、溶媒に溶解または分散された硫黄源とを含む電解質を用意するステップ;
c)アノードを用意するステップ;
d)多孔質グラフェン構造とアノードとの一体層を電解質とイオン接触させ(例えば、これらの成分すべてを、所期のLi-Sセルの外部のチャンバ内に浸漬する、またはこれらの3つの成分をLi-Sセル内部に封入することによって)、アノードと多孔質グラフェン構造の一体層(カソードとして機能する)との間に、ナノスケール硫黄粒子を電気化学的に堆積して、またはグラフェン表面上にコーティングして、プレ硫化されたグラフェン層を形成するのに十分な期間にわたって十分な電流密度で電流を印加するステップ;
e)このプレ硫化された層を粉末化して、単離されたSコーティンググラフェンシートを製造するステップ。これらのシートをカソード集電体発泡体(多孔質導電性構造)の細孔に注入または含浸させて、カソードを形成することができる。
【0095】
ステップ(a)に記載した多孔質グラフェン構造の層は、グラフェン材料または剥離黒鉛材料を含み、グラフェン材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択され、剥離黒鉛材料は、剥離黒鉛ワーム、膨張黒鉛フレーク、または再圧縮された黒鉛ワームもしくはフレークから選択される(電解質にアクセス可能な高い比表面積>>100m2/gを依然として示さなければならない)。粘結樹脂を必要とせずに、複数のグラフェンシートを一緒に詰めて、構造的完全性を有する硫黄ベースの電極層を形成することができることが発見されたのは驚くべきことであり、そのような層は、結果として得られるLi-Sセルの充放電の繰返し中にその形状および機能を保つことができる。
【0096】
S粒子またはコーティングは、20nm未満(好ましくは<10nm、より好ましくは<5nm、さらに好ましくは<3nm)の厚さまたは直径を有し、ナノスケールの硫黄粒子またはコーティングは、硫黄粒子またはコーティングとグラフェン材料との組合せの総重量に基づいて、少なくとも70%(好ましくは>80%、より好ましくは>90%、および最も好ましくは>95%)の重量分率を占める。できるだけ多くのSを堆積させ、それでも依然としてSコーティングまたは粒子の超薄の厚さまたは直径(例えば、>80%および<3nm;>90%および<5nm;および>95%および<10nmなど)を維持することが有利である。
【0097】
多孔質グラフェン構造の層が用意されると、この層を電解質(好ましくは液体電解質)に浸漬することができ、電解質は、溶媒と、溶媒に溶解または分散された硫黄源とを含む。この層は、基本的に、外部電気化学的堆積チャンバ内のカソードとして機能する。
【0098】
その後、アノード層もチャンバに浸漬される。任意の導電性材料をアノード材料として使用することができるが、好ましくは、この層はリチウムまたはナトリウムをいくらか含む。そのような構成では、多孔質グラフェン構造の層とアノードとが、電解質とイオン接触している。次いで、アノードと多孔質グラフェン構造の一体層(カソードとして機能する)との間に、ナノスケール硫黄粒子を電気化学的に堆積して、またはグラフェン表面上にコーティングして、プレ硫化された活性カソード層を形成するのに十分な期間にわたって十分な電流密度で電流を印加する。必要な電流密度は、所望の堆積速度および堆積材料の均一性に依存する。
【0099】
この電流密度は、20nm未満(好ましくは<10nm、より好ましくは<5nm、さらに好ましくは<3nm)の厚さまたは直径を有するS粒子またはコーティングを堆積するように容易に調整することができる。得られるナノスケールの硫黄粒子またはコーティングは、硫黄粒子またはコーティングとグラフェン材料との組合せの総重量に基づいて少なくとも70%(好ましくは>80%、より好ましくは>90%、および最も好ましくは>95%)の重量分率を占める。
【0100】
好ましい一実施形態では、硫黄源はMxSyであり、ここで、xは1~3の整数であり、yは1~10の整数であり、Mは、アルカリ金属、MgまたはCaから選択されるアルカリ性金属、遷移金属、周期表の第13族~第17族の金属、またはそれらの組合せから選択される金属元素である。望ましい実施形態において、金属元素Mは、Li、Na、K、Mg、Zn、Cu、Ti、Ni、Co、Fe、またはAlから選択される。特に望ましい実施形態では、MxSyは、Li2S6、Li2S7、Li2S8、Li2S9、Li2S10、Na2S6、Na2S7、Na2S8、Na2S9、Na2S10、K2S6、K2S7、K2S8、K2S9、またはK2S10から選択される。
【0101】
一実施形態において、アノードは、アルカリ金属、アルカリ性金属、遷移金属、周期表の第13族~第17族の金属、またはそれらの組合せから選択されるアノード活性材料を含む。このアノードは、Li-Sセルに含まれるように意図されたのと同じアノードでよい。
【0102】
電気化学的堆積チャンバで使用される溶媒およびリチウムまたはナトリウム塩は、リチウム硫黄またはナトリウム硫黄電池に関して上で列挙した任意の溶媒または塩から選択することができる。
【0103】
広く深い研究努力の結果、驚くべきことに、そのような予備硫化が、現在のLi-SまたはNa-Sセルに関連するいくつかの最も重要な問題を解決することに本発明者らは気づいた。例えば、この方法は、硫黄を薄いコーティングまたは超微粒子形態で堆積させることができ、したがって、超短のリチウムイオン拡散経路を提供し、したがって、電池の高速充電および放電のための超高速反応時間を提供する。これは、高い比容量(mAh/g;活性材料、S、担持グラフェンシート、粘結樹脂、および導電性フィラーの質量を含む、カソード層の総重量に基づく)に関して、比較的高比率の硫黄(リチウムの貯蔵を担当する活性材料)、したがって得られるカソード活性層の高い比リチウム貯蔵容量を維持しながら実現される。
【0104】
従来技術の手順を使用して、小さいS粒子を堆積することはできるが、高いS比率を提供することはできず、または高い比率を実現することはできるが、大きい粒子または厚いフィルムの形態でしか提供することができないことに留意することは重要である。しかし、従来技術の手順は、両方を同時に実現することができなかった。このため、高硫黄装填を得ると同時に、超薄/小さい厚さ/直径の硫黄を維持するのは、予想外の非常に有利なことである。これは、従来の硫黄装填技法では可能でなかった。例えば、本発明者らは、カソード層の>90%重量分率を占め、それでもコーティング厚さまたは粒径<3nmを維持するナノスケールの硫黄粒子またはコーティングを堆積させることができた。これは、リチウム-硫黄電池の分野では格別の結果である。別の例として、本発明者らは、4.8~7nmの平均Sコーティング厚さで、>95%S装填量を実現した。
【0105】
Li-S電池の分野での電気化学者または材料科学者は、カソード活性材料層中の高導電性グラフェンシートまたは黒鉛フレークの量がより多い(したがって、Sの量がより少ない)場合に、特に高充電/放電レート条件下でSの利用率がより良くなるはずだと予想していた。これらの予想に反し、高いS利用効率を実現するための鍵は、Sコーティングまたは粒径を最小にすることであり、Sコーティングまたは粒子の厚さ/直径が十分に小さい(例えば<10nm、または<5nmの場合にさらに良い)と仮定して、カソード内に装填されるSの量に応じて決まることが本発明者らによって観察された。ここでの問題は、Sが50重量%よりも高い場合、薄いSコーティングまたは小さな粒径を維持することが可能でなかったことである。ここで、さらに驚くべきことに、高レート条件下においてカソードで高い比容量を可能にするための鍵は、高いS装填量を維持し、依然としてSコーティングまたは粒径をできるだけ小さく保つことであることが本発明者らによって観察され、これは、本発明の予備硫化法を使用して達成される。
【0106】
外部負荷または回路を出入りする電子は、(従来の硫黄カソードでの)導電性添加剤または導電性フレームワーク(例えば、本明細書に開示されている導電性グラフェンシートの剥離黒鉛メソポーラス構造またはナノ構造)を通って、カソード活性材料に達しなければならない。カソード活性材料(例えば、硫黄またはポリ硫化リチウム)は、弱い電子伝導体であるので、必要な電子移動距離を減少させるためには、活性材料粒子またはコーティングはできるだけ薄くなければならない。
【0107】
さらに、従来のLi-Sセルでのカソードは、典型的には、硫黄と導電性添加剤/支持体とから構成される複合体カソード中に70重量%未満の硫黄を有する。従来技術の複合体カソードの硫黄含有量が70重量%に達するかまたはそれを超えるときでさえ、複合体カソードの比容量は、典型的には、理論的予測に基づいて予想されるものよりも大幅に低い。例えば、硫黄の理論上の比容量は1,675mAh/gである。粘結剤を含まない70%硫黄(S)および30%カーボンブラック(CB)から構成された複合体カソードは、1,675×70%=1,172mAh/gまで貯蔵できるはずである。残念ながら、観察される比容量は、典型的には、実現可能なものの75%または879mAh/g未満(しばしばこの例では50%または586mAh/g未満)である。換言すれば、活性材料利用率は、典型的には75%未満(またはさらには50%未満)である。これは、Li-Sセルの技術において主要な問題であり、この問題に対する解決策はなかった。最も驚くべきことに、硫黄またはポリ硫化リチウムのための導電性支持材料としての多孔質グラフェン構造に関連する巨大なグラフェン表面の実現は、典型的には>>80%、より頻繁には90%超、多くの場合には95%~99%近くの活性材料利用率を実現することを可能にする。
【0108】
あるいは、カソード活性材料(Sまたはポリ硫化物)は、機能性材料またはナノ構造化材料上に堆積されても、それらによって結合されてもよい。機能性材料またはナノ構造化材料は、(a)軟質炭素、硬質炭素、高分子炭素もしくは炭化樹脂、メソフェーズ炭素、コークス、炭化ピッチ、カーボンブラック、活性炭、ナノセル炭素発泡体、または部分的に黒鉛化された炭素から選択されるナノ構造化または多孔質の無秩序炭素材料;(b)単層グラフェンシートまたは多層グラフェンプレートレットから選択されるナノグラフェンプレートレット;(c)単壁カーボンナノチューブまたは多壁カーボンナノチューブから選択されるカーボンナノチューブ;(d)カーボンナノファイバ、ナノワイヤ、金属酸化物ナノワイヤもしくは繊維、導電性ポリマーナノファイバ、またはそれらの組合せ;(e)カルボニル含有有機またはポリマー分子;(f)カルボニル基、カルボキシル基、またはアミン基を含む機能性材料;およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。好ましい実施形態では、機能性材料またはナノ構造化材料は、少なくとも500m2/g、好ましくは少なくとも1,000m2/gの比表面積を有する。
【0109】
典型的には、カソード活性材料は導電性でない。したがって、一実施形態では、カソード活性材料は、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子、活性炭、メソ多孔質炭素、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバ(CNF)、グラフェンシート(ナノグラフェンプレートレット、NGPとも呼ばれる)、炭素繊維、またはそれらの組合せなど、導電性フィラーと混合することができる。これらの炭素/黒鉛/グラフェン材料(硫黄またはポリ硫化物を含む)は、本発明のLi-SまたはNa-Sセルのカソード活性材料としての微粒子にすることができる。
【0110】
好ましい実施形態では、ナノスケールのフィラメント(例えば、CNT、CNF、および/またはNGP)は、アノード活性材料(例えば、NaもしくはLiコーティング)またはカソード活性材料(例えば、S)を支持するための大きい表面を含む多孔質ナノ構造として形成される。多孔質ナノ構造は、好ましくは2nm~50nm、好ましくは2nm~10nmの孔径を有する細孔を有するべきである。これらの細孔は、カソード側で電解質を収容し、反復の充放電中に細孔内にカソード活性材料を保持するように適切にサイズ設定される。アノード活性材料を支持するために、アノード側で同じタイプのナノ構造が実現されてもよい。
【0111】
アノード側では、アルカリ金属がアルカリ金属セル内の唯一のアノード活性材料として使用されるときにデンドライトの形成が懸念され、これは、内部短絡および熱暴走をもたらし得る。ここでは、このデンドライト形成の問題に対処するために、個別にまたは組み合わせて2つの手法を使用した。一方は、高濃度電解質の使用を含み、他方は、アノードでアルカリ金属を支持するための導電性ナノフィラメントから構成されるナノ構造の使用を含む。ナノフィラメントは、例として、カーボンナノファイバ(CNF)、黒鉛ナノファイバ(GNF)、カーボンナノチューブ(CNT)、金属ナノワイヤ(MNW)、エレクトロスピニングによって得られる導電性ナノファイバ、導電性エレクトロスピニング組成物ナノファイバ、ナノスケールグラフェンプレートレット(NGP)、またはそれらの組合せから選択することができる。ナノフィラメントは、ポリマー、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、コークス、またはそれらの誘導体から選択される粘結剤材料によって結合されてもよい。
【0112】
意外にも、有意なことに、ナノ構造は、多数回のサイクル後にも幾何学的に鋭利な構造またはデンドライトがアノードで見られない程度で、電池の再充電中にアルカリ金属イオンの均一な堆積をもたらす環境を提供する。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、本出願人は、高導電性ナノフィラメントの3Dネットワークが、再充電中、フィラメント表面へのアルカリ金属イオンの実質的に均一な引力を提供すると考えている。さらに、フィラメントのナノメートルサイズにより、ナノフィラメントの単位体積または単位重量当たりの表面積が大きい。この超高比表面積は、アルカリ金属イオンに、フィラメント表面上に薄いコーティングを均一に堆積する機会を提供する。高い表面積は、液体電解質中に多量のアルカリ金属イオンを容易に受け入れ、アルカリ金属二次電池に関する高い再充電率を可能にする。
【実施例】
【0113】
以下に論じる例では、特に断りのない限り、シリコン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、亜鉛、鉄、ニッケル、チタン、コバルト、およびスズなどの未加工材料は、Alfa Aesarof Ward Hill(米国マサチューセッツ州)、Aldrich Chemical Company(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)、またはAlcan Metal Powders of Berkeley(米国カリフォルニア州)から得られた。銅ターゲットX線管および回折ビームモノクロメータを備えた回折計を使用して、X線回折パターンを収集した。試験した各合金試料毎に、特徴的なピークパターンの有無を観察した。例えば、X線回折パターンが存在しないかまたは鮮明で明確なピークがない場合、相を非晶質とみなした。いくつかの場合、ハイブリッド材料試料の構造および形態を特徴付けるために、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)を使用した。
【0114】
以下では、本発明を実施する最良の形態を示すために、幾つかの異なるタイプのアノード活性材料、カソード活性材料、および多孔質集電体材料(例えば、黒鉛発泡体、グラフェン発泡体、および金属発泡体)の幾つかの例を提供する。これらの例示的な実施例、ならびに本明細書および図面の他の箇所は、個別にまたは組み合わせて、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分すぎるものである。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0115】
実施例1:導電性多孔質層(発泡集電体)の実例
例えばNi発泡体、Cu発泡体、Al発泡体、Ti発泡体、Niメッシュ/ウェブ、ステンレス鋼繊維メッシュなど、様々なタイプの金属発泡体とファインメタルウェブ/スクリーンが市販されている。これらの導電性発泡構造を、本研究ではアノードまたはカソード導電性多孔質層(発泡集電体)として使用した。さらに、
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)、および
図3(D)に示されるように、金属被覆ポリマー発泡体および炭素発泡体も集電体として使用した。
【0116】
実施例2:Ni発泡体テンプレート上のNi発泡体およびCVDグラフェン発泡体ベースの集電体(導電性多孔質層)
CVDグラフェン発泡体を製造するための手順は、以下の公開されている文献で開示されるものから適合した:Chen,Z.et al.“Three-dimensional flexible and conductive interconnected graphene networks grown by chemical vapor deposition,” Nature Materials,10,424-428(2011)。ニッケル発泡体、ニッケルの相互接続された3D足場を有する多孔質構造を、グラフェン発泡体の成長のためのテンプレートとして選択した。簡潔には、周囲圧力下にて1,000℃でCH4を分解することによって炭素をニッケル発泡体に導入し、次いでニッケル発泡体の表面にグラフェンフィルムを堆積させた。ニッケルとグラフェンの熱膨張係数の相違により、グラフェンフィルムに波形や皺が生じた。この実施例で形成された4つのタイプの発泡体、すなわちNi発泡体、CVDグラフェン被覆Ni発泡体、CVDグラフェン発泡体(Niはエッチング除去される)、および導電性ポリマー結合CVDグラフェン発泡体を、本発明によるリチウム電池での集電体として使用した。
【0117】
支持Ni発泡体からグラフェン発泡体を回収(分離)するために、Niフレームをエッチング除去した。Chenらによって提案された手順では、高温HCl(またはFeCl3)溶液によってニッケル骨格をエッチング除去する前に、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の薄層を支持体としてグラフェンフィルムの表面に堆積して、ニッケルエッチング中にグラフェンネットワークが崩壊するのを防止した。高温のアセトンによってPMMA層を注意深く除去した後、脆弱なグラフェン発泡体試料が得られた。PMMA支持層の使用は、グラフェン発泡体の自立型フィルムを用意するのに重要であると考えられていた。代わりに、本発明者らは、粘結剤樹脂として導電性ポリマーを使用して、グラフェンを一体に保持すると共に、Niをエッチング除去した。ここで使用されるCVDグラフェン発泡体は、液体電解質中に分散された活性物質の懸濁液を収容するための発泡性集電体として意図されていることに留意されたい。例えば、アノードに液体電解質と共に注入された硬質炭素ナノ粒子と、カソードに液体電解質と共に注入されたグラフェン担持硫黄ナノ粒子とを収容する発泡性集電体として意図されていることに留意されたい。
【0118】
実施例3:ピッチベースの炭素発泡体からの黒鉛発泡体ベースの集電体
ピッチパウダー、顆粒、またはペレットを、発泡体の所望の最終形状を有するアルミニウム鋳型に入れる。Mitsubishi ARA-24メソフェーズピッチを利用した。試料を1トール未満に排気し、次いで約300℃の温度に加熱する。この時点で、真空を解放して窒素ブランケットとし、次いで1,000psiまでの圧力を加えた。次いで、系の温度を800℃に上昇させた。これは2℃/分の速度で行った。温度を少なくとも15分間保って浸漬を実現し、次いで炉の電力を切って約1.5℃/分の速度で室温まで冷却し、それと共に約2psi/分の速度で圧力を解放した。最終的な発泡体の温度は、630℃および800℃であった。冷却サイクル中、圧力は大気条件まで徐々に解放される。次いで、発泡体を窒素ブランケット下で1050℃まで熱処理(炭化)し、次いで、黒鉛るつぼ内で、アルゴン中で2500℃および2800℃(黒鉛化)まで別々に熱処理した。
【0119】
実施例4:使用される電解質のいくつかの例
好ましい非リチウムアルカリ金属塩は、以下のものを含む。過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸カリウム(KClO4)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF6)、六フッ化リン酸カリウム(KPF6)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF4)、ホウフッ化カリウム(KBF4)、六フッ化ヒ酸ナトリウム、六フッ化ヒ酸カリウム、トリフルオロメタスルホン酸ナトリウム(NaCF3SO3)、トリフルオロメタスルホン酸カリウム(KCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CF3SO2)2)、およびビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドカリウム[KN(CF3SO2)2]。
【0120】
水性電解質では、ナトリウム塩またはカリウム塩は、好ましくは、Na2SO4、K2SO4、それらの混合物、NaOH、KOH、NaCl、KCl、NaF、KF、NaBr、KBr、NaI、KI、またはそれらの混合物から選択される。本研究で使用した塩濃度は、0.3M~3.0M(最も多くの場合には0.5M~2.0M)であった。
【0121】
有機液体溶媒中に溶解された多様なリチウム塩が(単独で、または別の有機液体もしくはイオン液体との混合物中に)本研究にて使用された。以下のリチウム塩が、選択された有機またはイオン液体溶媒によく溶解されると見なされた。ホウフッ化リチウム(LiBF4)、トリフルオロ-メタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス-トリフルオロメチルスルホニルイミド(LiN(CF3SO2)2またはLITFSI)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF2C2O4)、およびリチウムビスペルフルオロエチ-スルホニルイミド(LiBETI)。Li金属を安定化させる助けとなる良好な電解質添加剤は、LiNO3である。特に有用なイオン液体ベースのリチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を含む。
【0122】
好ましい有機液体溶媒は、以下のものを含む。炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸プロピレン(PC)、アセトニトリル(AN)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸アリルエチル(AEC)、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、ヒドロフロロエーテル(例えばTPTP)、スルホン、およびスルホラン。
【0123】
好ましいイオン液体溶媒は、テトラアルキルアンモニウム、ジ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、またはジアルキルピペリジニウムから選択されるカチオンを有する室温イオン液体(RTIL)から選択することができる。対アニオンは、好ましくは、BF4
-、B(CN)4
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、N(SO2CF3)2
-、N(COCF3)(SO2CF3)-、またはN(SO2F)2
-から選択される。特に有用なイオン液体ベースの溶媒は、N-n-ブチル-N-エチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(BEPyTFSI)、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(PP13TFSI)、およびN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを含む。
【0124】
実施例4:天然黒鉛粉末からの酸化グラフェン(GO)および還元酸化グラフェン(RGO)ナノシートの調製
Asbury Carbons(405 Old Main St.,Asbury,NJ 08802,USA)によって提供された公称で45μmサイズの天然黒鉛を粉砕してサイズを約14μmに減少させ、これを出発物質として使用した。GOは、よく知られているmodified Hummers法に従うことによって得られた。この方法は、2つの酸化段階を含む。典型的な手順において、以下の条件で第1の酸化を実現した。1100mgの黒鉛を1000mLの沸騰フラスコに入れた。次いで、K2S2O8、20gのP2O5、および400mLの濃縮H2SO4水溶液(96%)をフラスコに加えた。混合物を還流下で6時間加熱し、次いで室温で20時間安置した。酸化黒鉛を濾過し、中性pHになるまで多量の蒸留水ですすいだ。この最初の酸化の終わりに、ウェットケーキ状物質が回収された。
【0125】
第2の酸化プロセスでは、前に収集されたウェットケーキを、69mLの濃縮H2SO4水溶液(96%)を含む沸騰フラスコに入れた。9gのKMnO4をゆっくりと加えながら、フラスコを氷浴内で保った。過熱を避けるように注意した。得られた混合物を35℃で2時間撹拌し(試料の色が暗い緑色に変わった)、続いて140mLの水を加えた。15分後、420mLの水および15mLの30wt%H2O2水溶液を加えることによって反応を停止させた。この段階での試料の色は、明るい黄色に変わった。金属イオンを除去するために、混合物を濾過し、1:10HCl水溶液ですすいだ。収集した物質を2700gで穏やかに遠心分離し、脱イオン水ですすいだ。最終生成物は、乾燥抽出物から推定されるように、1.4wt%のGOを含むウェットケーキであった。その後、脱イオン水で希釈したウェットケーキ物質を軽く超音波処理することによって、GOプレートレットの液体分散液を得た。
【0126】
純水の代わりに界面活性剤水溶液でウェットケーキを希釈することによって、界面活性剤で安定化されたRGO(RGO-BS)を得た。Sigma Aldrichによって提供されているコール酸ナトリウム(50wt%)とデオキシコール酸ナトリウム(50wt%)の塩の市販の混合物を使用した。界面活性剤の重量画分は、0.5wt%であった。全ての試料に関してこの画分を一定に保った。13mmステップディストラクタホーンと、3mmテーパ付きマイクロチップとを備え、20kHzの周波数で動作するBranson Sonifier S-250Aを使用して超音波処理を行った。例えば、0.1wt%のGOを含む水溶液10mLを10分間超音波処理し、その後、2700gで30分間遠心分離して、溶解していない大きな粒子、凝集物、および不純物を除去した。0.1wt%のGO水溶液10mLを50mL沸騰フラスコに入れることを含む方法に従うことによって、RGOを生成するために、上記のようにして得られたGOの化学的還元を行った。次いで、界面活性剤によって安定化させた混合物に、35wt%のN2H4(ヒドラジン)水溶液10μLおよび28wt%のNH4OH(アンモニア)水溶液70mLを加えた。溶液を90℃に加熱し、1時間還流させた。反応後に測定されたpH値は約9だった。還元反応中、試料の色は暗黒色に変わった。
【0127】
本発明の特定のアルカリ金属電池でのアノードとカソードの一方または両方の導電性添加剤として、RGOを使用した。選択したナトリウム-硫黄セルでは、アノード活性材料として、プレナトリウム化したRGO(例えば、RGO+ナトリウム粒子、またはナトリウムコーティングを予め堆積したRGO)も使用した。Li-Sセル用のアノード活性材料として、プレリチウム化したRGOフィルムも使用した。
【0128】
比較のために、従来の電極を製造するためにスラリコーティングおよび乾燥手順を行った。次いで、電極と、2つの電極間に配設されたセパレータとを組み立てて、Al-プラスチック積層パッケージングエンベロープ内に入れ、続いて液体電解質を注入して、ナトリウムまたはカリウム電池セルを形成した。
【0129】
実施例5:純粋なグラフェンのシート(酸素0%)の調製
GOシート中の高欠陥集団が個々のグラフェン面の導電率を低下させるように作用する可能性を認識して、本発明者らは、純粋なグラフェンのシート(例えば、酸化されておらず、酸素を含まない、ハロゲン化されておらず、ハロゲンを含まない)を使用することで、高い導電率および熱伝導率を有する導電性添加剤を得ることができるかどうか研究することにした。プレナトリウム化された純粋なグラフェンも、アノード活性材料として使用した。直接超音波処理または液相製造法を使用することによって、純粋なグラフェンのシートを製造した。
【0130】
典型的な手順では、約20μm以下のサイズに粉砕した5グラムの黒鉛フレークを1,000mLの脱イオン水(0.1重量%の分散剤を含む。DuPont社製のZonyl(登録商標)FSO)中に分散させて、懸濁液を得た。グラフェンシートの剥離、分離、およびサイズ減少のために、85Wの超音波エネルギーレベル(Branson S450 Ultrasonicator)を15分~2時間の期間にわたって使用した。得られたグラフェンシートは、一度も酸化されておらず、酸素を含まず、比較的欠陥のない純粋なグラフェンである。純粋なグラフェンは、非炭素元素を本質的に含まない。
【0131】
次いで、本発明による発泡体細孔へのスラリ注入手順と、従来のスラリコーティング、乾燥、および積層の手順との両方を使用して、純粋なグラフェンのシートを、導電性添加剤として、アノード活性材料(またはカソードではカソード活性材料)と共に電池に組み込んだ。アルカリ金属イオン電池とアルカリ金属電池(カソードのみへの注入)の両方を調べた。アルカリ金属電池(一次電池または二次電池)では、アノードは、グラフェンシートによって支持されたNa箔またはKチップである。
【0132】
実施例6:ナトリウム硫黄電池のアノード活性材料としてのプレナトリウム化されたグラフェンフッ化物シートの調製
グラフェンフッ化物(GF)を製造するために幾つかの方法を使用したが、ここでは一例として1つの方法のみを述べる。典型的な手順では、インターカレート化合物C2F・xClF3から、大きく剥離された黒鉛(HEG)を調製した。HEGを三フッ化塩素の蒸気によってさらにフッ素化して、フッ素化された大きく剥離された黒鉛(FHEG)を生成した。予冷されたテフロン(Teflon)反応器に20~30mLの予冷された液体ClF3を充填し、反応器を閉じ、液体窒素温度まで冷却した。次いで、ClF3ガスが反応炉の内部に入り込めるようにする穴を有する容器に、1g以下のHEGを入れた。7~10日で、近似式C2Fを有するグレーベージュの生成物が形成された。
【0133】
その後、少量のFHEG(約0.5mg)を20~30mLの有機溶媒(別々に、メタノールとエタノール)と混合し、超音波処理(280W)を30分間行って、均質な黄色っぽい分散液を生成した。溶媒の除去後、分散液は茶色っぽい粉末になった。液体電解質中で、グラフェンフッ化物粉末をナトリウムチップと混合し、アノード集電体の細孔への注入前または後にプレナトリウム化を生じさせた。
【0134】
実施例7:窒素化グラフェンナノシートおよび多孔質グラフェン構造の用意
実施例1で合成した酸化グラフェン(GO)を、異なる比率の尿素で微粉砕し、ペレット化した混合物をマイクロ波反応器(900W)内で30秒間加熱した。生成物を脱イオン水で数回洗浄し、真空乾燥させた。この方法では、酸化グラフェンは、還元されると同時に窒素でドープされる。1:0.5、1:1、および1:2のグラフェン:尿素質量比で得られた生成物を、それぞれNGO-1、NGO-2、およびNGO-3と命名した。これらの試料の窒素含有量は、元素分析によって判明したように、それぞれ14.7、18.2、および17.5重量%であった。これらの窒素化グラフェンシートは、水中に分散可能なままである。次いで、2種類の分散液を調製した。一方は、水溶性ポリマー(例えばポリエチレンオキシド)を窒素化グラフェンシート-水分散液に添加して水ベースの懸濁液を生成した。他方は、窒素化グラフェンシート-水分散液を乾燥させて窒素化グラフェンシートを回収し、次いでこれを前駆体ポリマー-溶媒溶液に加えて有機溶媒ベースの懸濁液を得た。
【0135】
得られた懸濁液をキャスティング、乾燥、炭化、黒鉛化して、多孔質グラフェン構造を作製した。比較試料の炭化温度は、900~1,350℃である。黒鉛化温度は、2,200℃~2,950℃である。多孔質グラフェン層を、Li-Sセルのアノードとカソードの両方の多孔質集電体として使用する。
【0136】
実施例8:アノード用の支持層としての電気紡糸PAAフィブリルからのフィラメントの導電性ウェブ
ピロメリト酸二無水物(Aldrich)および4,4’-オキシジアニリン(Aldrich)をテトラヒドロフラン/メタノール(THF/MeOH、重量比8/2)の混合溶媒中で共重合させることにより、紡糸用のポリ(アミド酸)(PAA)前駆体を調製した。静電紡糸装置を使用してPAA溶液を紡糸して繊維ウェブとした。この装置は、ポリマー溶液が押し出される正に帯電された毛細管と、繊維を収集するための負に帯電されたドラムとを備える15kV直流電源からなっていた。PAAからの溶媒除去とイミド化を、40℃で12時間、100℃で1時間、250℃で2時間、および350℃で1時間での気流下において、段階的熱処理によって同時に行った。熱硬化ポリイミド(PI)ウェブ試料を1,000℃で炭化して、平均フィブリル直径67nmの炭化ナノファイバを得た。そのようなウェブは、アノード活性材料用の導電性基材として使用することができる。Li-Sセルのアノードにおける導電性ナノフィラメントのネットワークの実装が、通常であれば内部短絡を引き起こし得るリチウムデンドライトの開始および成長を効果的に抑制し得ることが本発明者らによって観察された。
【0137】
実施例9:Li-SおよびNa-S電池のための様々なウェブまたは紙構造上のSの電気化学的堆積(外部電気化学的堆積)
電気化学的堆積は、カソード活性層がアルカリ金属-硫黄電池セル(Li-SまたはNa-Sセル)に組み込まれる前に行ってもよい。この手法では、アノードと、電解質と、(カソード層として機能する)多孔質グラフェン構造の一体層とは、リチウム-硫黄セルの外の外部容器内に位置決めされる。必要とされる装置は、当技術分野でよく知られている電気めっきキシステムに類似している。
【0138】
典型的な手順では、金属ポリ硫化物(MxSy)を溶媒(例えば、1:3~3:1の体積比でのDOL/DMEの混合物)に溶解して電解質溶液を生成する。任意選択で、ある量のリチウム塩を添加してもよいが、これは外部電気化学的堆積に必要ではない。この目的のために広範な溶媒を利用することができ、どのような種類の溶媒を用いることができるかについての理論上の制限はない。この所望の溶媒への金属ポリ硫化物のいくらかの可溶性があれば、任意の溶媒を使用することができる。より大きな可溶性は、より多量の硫黄を電解液から導出することができることを意味する。
【0139】
次に、電解液を、乾燥した制御雰囲気下(例えば、Heまたは窒素ガス)のチャンバまたは反応器に注入する。アノードとして金属箔を使用し、カソードとして多孔質グラフェン構造の層を使用することができる。どちらも電解液に浸漬されている。この構成は、電気化学的堆積システムを成す。グラフェン表面上にナノスケールの硫黄粒子またはコーティングを電気化学的に堆積するステップは、多孔質グラフェン構造の層重量に基づいて、好ましくは1mA/g~10A/gの範囲内の電流密度で行われる。
【0140】
この反応器内で起こる化学反応は、式:MxSy→MxSy-z+zS(典型的には、z=1~4)で表すことができる。かなり驚くべきことに、沈殿したSは優先的に核生成され、巨大なグラフェン表面上で成長して、ナノスケールのコーティングまたはナノ粒子を形成する。Sコーティング/粒子のコーティングの厚さまたは粒径および量は、比表面積、電気化学的反応電流密度、温度、および時間によって制御することができる。一般に、より低い電流密度およびより低い反応温度は、Sのより均一な分散をもたらし、反応の制御するのがより容易である。より長い反応時間は、グラフェン表面に堆積されるSの量をより多くし、硫黄源が消費されたとき、または所望量のSが堆積したときに反応が停止される。次いで、これらSコートティングされた紙またはウェブ構造を粉末化して、Li-SまたはNa-Sセルのカソード活性材料として使用するための微粒子にした。
【0141】
実施例10:カソード層の用意の前の、単離されたグラフェンシート上への硫黄粒子の化学反応誘起堆積
単離された酸化グラフェンシートからS-グラフェン複合体を用意するために、従来技術の化学気相成長法を利用する(すなわち、これらのGOシートを、GOシートの表面上へのSの化学的堆積前に多孔質グラフェンの一体構造に詰めなかった)。この手順は、25mlの蒸留水で満たされたフラスコに0.58gのNa2Sを加えてNa2S溶液を生成することから始めた。次いで、S元素0.72gをNa2S溶液中に懸濁させ、室温で約2時間、マグネチックスターラで撹拌した。硫黄が溶解するにつれて、溶液の色はゆっくりとオレンジ-黄色に変化した。硫黄の溶解後、ポリ硫化ナトリウム(Na2Sx)溶液が得られた(x=4~10)。
【0142】
その後、水溶液中での化学気相成長法により、酸化グラフェン-硫黄(GO-S)複合体を作製した。まず、180mgの酸化黒鉛を180mlの超純水に懸濁させ、次いで50℃で5時間超音波処理して安定した酸化グラフェン(GO)分散液を生成した。その後、上記のように調製したGO分散液に、5重量%の界面活性剤セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)の存在下でNa2Sx溶液を添加し、調製後のGO/Na2Sx混合溶液をさらに2時間超音波処理し、次いで2mol/L HCOOH溶液100mlを30~40滴/分の割合で滴定し、2時間撹拌した。最後に、沈殿物を濾過し、アセトンおよび蒸留水で数回洗浄して塩および不純物を除去した。濾過後、沈殿物を乾燥オーブン内で50℃で48時間乾燥させた。この反応は、反応:Sx
2-+2H+→(x-1)S+H2Sで表すことができる。
【0143】
実施例11:カソード層の用意の前の、単離されたグラフェンシート上への硫黄粒子の酸化還元化学反応誘起堆積
化学反応に基づくこの堆積プロセスでは、硫黄源としてチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)を使用し、反応物としてHClを使用した。GO-水懸濁液を調製し、次いで2つの反応物(HClおよびNa2S2O3)をこの懸濁液に注いだ。反応を25~75℃で1~3時間進行させ、GOシートの表面上に堆積したS粒子の沈殿物を得た。この反応は、以下の反応によって表すことができる:
2HCl+Na2S2O3→2NaCl+S↓+SO2↑+H2O
【0144】
実施例12:溶液堆積によるS/GOナノコンポジットの調製
GOシートとSとを混合し、溶媒(CS2)中に分散させて、懸濁液を生成した。入念に撹拌した後、溶媒を蒸発させて固体ナノコンポジットを得て、次いでこれを粉砕してナノコンポジット粉末を得た。これらのナノコンポジット粒子中の一次硫黄粒子は、約40~50nmの平均直径を有する。
【0145】
実施例13:様々な電池セルの用意および電気化学試験
研究したアノードおよびカソード活性材料のほとんどについて、本発明による方法と従来の方法との両方を使用してアルカリ金属-硫黄セルまたはアルカリ金属イオン-硫黄セルを調製した。
【0146】
従来の方法では、典型的なアノード組成物は、85重量%の活性材料(例えば、Naイオン-硫黄アノード用のSnまたはNa2C8H4O4コーティングされたグラフェンシート;Liイオン-硫黄アノード用の黒鉛またはSi粒子)と、7重量%のアセチレンブラック(Super-P)と、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)に溶解された8重量%のポリフッ化ビニリデン粘結剤(PVDF、5重量%の固体含有量)とを含む。Cu箔上にスラリをコーティングした後、電極を120℃で2時間真空乾燥して、溶媒を除去した。カソード層も、(カソード集電体としてAl箔を使用して)同様に作製する。次いで、アノード層、セパレータ層(例えば、Celgard 2400膜)、およびカソード層を一緒に積層し、プラスチックAlエンベロープ内に収容する。次いで、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)(EC-DEC、1:1v/v)との混合物に溶解された1M LiPF6またはNaPF6電解質溶液をセルに注入する。いくつかのセルでは、液体電解質としてイオン性液体を使用した。アルゴン充填グローブボックス内でセルアセンブリを作製した。
【0147】
本発明によるプロセスでは、特定の実施例において、第1の懸濁液の注入(または含浸)および/または第2の懸濁液の注入(または含浸)の前または後に、アノード集電体(アノード用の導電性多孔質構造)、セパレータ、およびカソード集電体(カソード側用の導電性多孔質構造)を保護ハウジング内に組み立てる。いくつかの実施例では、空の発泡性アノード集電体、多孔質セパレータ層、および空の発泡性集電体を一緒に組み立てて、(Al-ナイロン二層フィルムからなる)パウチに収容されたアセンブリを形成した。次いで、第1の懸濁液をアノード集電体内に注入し、第2の懸濁液をカソード集電体内に注入した。次いで、パウチを封止した。他の例では、本発明者らは、発泡性アノード集電体に第1の懸濁液を含浸させてアノード層を形成し、それとは別に、発泡性カソード集電体に第2の懸濁液を含浸させてカソード層を形成した。次いで、アノード層、多孔質セパレータ層、およびカソード層を組み立て、ポーチに収容してセルを形成した。本発明による方法では、典型的には粘結剤樹脂が必要ないかまたは使用されず、8重量%の節約(非活性材料の量の減少)となる。
【0148】
Arbin電気化学ワークステーションを使用して、1mV/sの典型的な走査速度でサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を行った。さらにまた、定電流充電/放電サイクルによって、様々なセルの電気化学的性能を50mA/g~10A/gの電流密度で評価した。長期のサイクル試験には、LAND製のマルチチャネル電池テスタを使用した。
【0149】
留意すべきは、リチウムイオン電池業界では、電池のサイクル寿命を、所要の電気化学的形成後に測定された初期容量に基づいて電池が20%の容量減衰を受ける充放電サイクル数と定義するのが一般的な慣例である。ここでも、Li-Sまたは室温Na-Sセルのサイクル寿命に関する同じ定義に従う。
【0150】
実施例14:典型的な試験結果
各試料毎に、電気化学的応答を決定するために幾つかの電流密度(充電/放電速度を表す)を課し、Ragoneプロット(電力密度対エネルギー密度)の構築に必要なエネルギー密度および電力密度値の計算を可能にした。
図5に、アノード活性材料として硬質炭素粒子を含み、カソード活性材料として活性炭素/硫黄複合体粒子を含むNa-イオン電池セルのRagoneプロット(重量および体積電力密度対エネルギー密度)が示されている。4つのデータ曲線のうちの2つは、本発明の実施形態に従って用意されたセルに関するものであり、他の2つは、電極の従来のスラリコーティング(スラリのロールコーティング)によるものである。これらのデータから以下のような幾つかの重要な観察を行うことができる。
【0151】
本発明による方法(図の凡例では「本発明」と表される)によって用意されたナトリウムイオン-S電池セルの重量および体積エネルギー密度および電力密度は、従来のロールコーティング法(「従来の」と表される)によって用意された相当物のものよりもかなり高い。150μmのアノード厚さ(平坦な固体Cu箔上にコーティングされた)から225μmの厚さ(85%の多孔率を有するNi発泡体の細孔内に全て収容される)への変化、およびバランスの取れた容量比を維持するためのカソードの対応する変化は、155Wh/kgから187Wh/kgへの重量エネルギー密度の増加をもたらす。さらに意外なことに、体積エネルギー密度は232Wh/Lから318Wh/Lに増加される。
【0152】
これらの著しい相違は、単に電極の厚さおよび質量負荷の増加に起因するだけではない。この相違は、おそらく以下のことに起因する。本発明によるセルに関連するかなり高い活性材料質量負荷(他の材料に関連して);活性材料の重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少;粘結剤樹脂を有する必要がないこと;電極活性材料の驚くほど良い利用率(全てではないにせよほとんどの硬質炭素粒子およびC/S粒子がナトリウムイオン貯蔵容量に寄与する。特に高い充電/放電率の条件下で、電極中に乾燥ポケットまたは非効果的なスポットがない);および、発泡性集電体の細孔内に活性材料粒子をより効果的に充填することができる本発明による方法の意外な機能。
【0153】
図6は、アノード活性材料としてグラフェン包有Naナノ粒子を含み、カソード活性材料としてSコーティンググラフェンシートを含む2つのセルのRagoneプロット(重量および体積エネルギー密度に対する重量および体積電力密度)を示す。実験データは、本発明による方法によって用意された電池セルと、電極の従来のスラリコーティングによって用意された電池セルとから得られた。
【0154】
これらのデータは、本発明による方法によって用意された電池セルの重量および体積エネルギー密度および電力密度が、従来の方法によって用意された相当物よりもかなり高いことを示している。ここでも相違は大きい。従来のやり方で形成されたセルは、215Wh/kgの重量エネルギー密度および323Wh/Lの体積エネルギー密度を示すが、本発明によるセルは、それぞれ334Wh/kgおよび601Wh/Lを送給する。セルレベルの重量エネルギー密度601Wh/Lは、充電式ナトリウム電池では従来達成されていない。1432W/kgと2,578W/Lの電力密度は、典型的にはより高いエネルギーのリチウムイオン電池に関して前例がなく、ナトリウムイオン電池については言うまでもない。
【0155】
これらのエネルギー密度および電力密度の相違は、主として以下のことによる。本発明によるセルに関連する高い活性材料質量負荷(アノードでは>25mg/cm2、およびカソードでは>35mg/cm2);活性材料重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少;粘結剤樹脂を有する必要がないこと;活性材料粒子をより良く利用することができ(全ての粒子が液体電解質に接近可能であり、高速のイオンおよび電子運動速度)、発泡性集電体の細孔内に活性材料粒子をより効果的に充填することができる本発明による方法の機能。
【0156】
図7に、アノード活性材料としてリチウム箔、カソード活性材料としてSコーティンググラフェンシート、および有機液体電解質としてリチウム塩(LiaPF
6)-PC/DECを含むLi-S電池のRagoneプロットが示されている。データは、本発明による方法によって用意されたナトリウム金属セルと、電極の従来のスラリコーティングによって用意されたナトリウム金属セルとの両方に関するものである。これらのデータは、本発明による方法によって用意されたナトリウム金属セルの重量および体積エネルギー密度および電力密度が、従来の方法によって用意された相当物よりもかなり高いことを示している。ここでも、相違は大きく、おそらく以下のことに起因する。本発明によるセルに関連するかなり高い活性材料質量負荷;活性材料の重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少;粘結剤樹脂を有する必要がないこと;電極活性材料の驚くほど良い利用率(全てではないにせよほとんどの活性材料がナトリウムイオン貯蔵容量に寄与する。特に高い充電/放電率の条件下で、電極中に乾燥ポケットまたは非効果的なスポットがない);および、発泡性集電体の細孔内に活性材料粒子をより効果的に充填することができる本発明による方法の意外な機能。
【0157】
本発明によるLi-Sセルのセルレベル重量エネルギー密度が、これまでに報告されたすべての充電式リチウム金属またはリチウムイオン電池のものよりも高い624Wh/kgであるという観察結果は、かなり注目に値し、予想外である(現在のLiイオン電池は、典型的には、全セル重量に基づいて150~250Wh/kg、およびセル体積当たり500~650Wh/Lを貯蔵することを想起されたい)。さらに、硫黄カソード活性材料ベースのリチウム電池では、1,185Wh/Lの体積エネルギー密度、2,457W/kgの重量密度、および4,668W/Lの体積密度は、考えられなかった。
【0158】
多くの研究者が行っているようなRagoneプロット上での活性材料のみの重量当たりのエネルギーおよび電力密度の報告は、組み立てられた電池セルの性能の現実的な状況を示さないことがあることを指摘しておくことは重要であろう。他のデバイス構成要素の重量も考慮に入れなければならない。集電体、電解質、セパレータ、粘結剤、コネクタ、およびパッケージングを含むこれらのオーバーヘッド構成要素は、非活性材料であり、電荷蓄積量に寄与しない。これらの構成要素は、デバイスに重量および体積を追加するだけである。したがって、オーバーヘッド構成要素の重量の相対比を減少し、活性材料の割合を増加させることが望ましい。しかしながら、従来の電池製造法を使用してこの目的を達成することは可能でなかった。本発明は、リチウム電池の技術分野におけるこの長年にわたる最も重大な問題を克服する。
【0159】
150μmの電極厚さを有する市販のリチウムイオン電池では、リチウムイオン電池におけるアノード活性材料(例えば、黒鉛や炭素)の重量比は、典型的には12~17%であり、カソード活性材料の重量比(LiMn2O4など無機材料に関して)は22%~41%であり、または有機またはポリマー材料に関しては10%~15%である。Naイオン電池での対応する重量比は、非常に類似していると予想される。なぜなら、2種類の電池の間で、アノード活性材料とカソード活性材料の両方が同様の物理的密度を有し、アノード比容量に対するカソード比容量の比も同様であるからである。したがって、活性材料重量のみに基づく特性から、デバイス(セル)のエネルギーまたは電力密度を外挿するために、係数3~4が使用されることがある。大抵の科学論文では、報告されている特性は、典型的には活性材料重量のみに基づいており、電極は典型的には非常に薄い(<<100μm、および大抵は<<50μm)。活性材料重量は、典型的には総デバイス重量の5%~10%であり、これは、対応する活性材料重量ベース値を係数10~20で割ることによって実際のセル(デバイス)エネルギーまたは電力密度を得ることができることを示唆する。この係数が考慮された後では、これらの論文で報告されている特性は、商用電池の特性よりも良いものとは思えない。したがって、科学論文および特許出願で報告されている電池の性能データを読んで解釈するに当たっては非常に慎重でなければならない。
【0160】
図8は、従来のスラリコーティングプロセスによって用意された一連のLiイオン-Sセル(グラフェンラップSiナノ粒子、またはプレリチウム化Siナノ粒子)のRagoneプロットと、本発明のプロセスによって用意された対応するセルのRagoneプロットとを示す。これらのデータも、予想外に高いエネルギー密度(重量と体積の両方)をLi-S電池セルに与える本発明による方法の効果を実証する。
【0161】
実施例15:実現可能な電極の厚さと、リチウム電池セルの電気化学的性能に対するその影響
アルカリ金属電池の電極厚さは、デバイス性能の最適化のために自由に調整できる設計パラメータであると考えられがちである。実際には、この認識とは対照的に、アルカリ金属電池電極の厚さは製造上の制限を受け、現実の工業的製造環境(例えば、ロールツーロールコーティング施設)では、特定の厚さレベルを超える良好な構造的完全性を有する電極を製造することができない。従来の電池電極設計は、平坦な金属集電体上への電極層のコーティングに基づき、これは、以下のような幾つかの主な問題を有する。(a)Cu箔またはAl箔上の厚いコーティングは、長い乾燥時間を必要とする(長さ30~100メートルの加熱区域を必要とする)。(b)厚い電極は、乾燥およびその後の取扱いの際に層間剥離または割れを生じやすく、電極の完全性を改良すると期待される15~20%の樹脂粘結剤比率でさえ、この問題は大きな制限因子のままである。したがって、固体平坦集電体上にスラリをロールコーティングするそのような業界の慣行は、高い活性物質質量負荷を可能にしない。(c)コーティング、乾燥、および圧縮によって用意された厚い電極は、電解質(セルが形成された後にセルに注入される)が電極を通って浸透するのを難しくし、したがって、厚い電極は、電解質によって濡らされない多くの乾燥ポケットまたはスポットを意味する。これは、活性材料の利用率が低いことを示唆する。本発明は、アルカリ金属電池に関連するこれらの長年にわたる非常に重要な問題を解決する。
【0162】
図9に、層間剥離および割れのない従来の方法によって用意されたS/RGOカソードと、本発明による方法によって用意されたカソードとの実現可能なカソード厚さ範囲にわたってプロットされた、Liイオン-Sセル(プレリチウム化黒鉛アノード+RGO担持Sカソード)のセルレベルの重量エネルギー密度(Wh/kg)および体積エネルギー密度(Wh/L)が示されている。
【0163】
電極は、従来のスラリコーティング法を使用して最大100~200μmの厚さで製造することができる。しかし、対照的に、本発明による方法で実現することができる電極の厚さには理論上の制限はない。典型的には、実用上の電極の厚さは10μm~1000μm、より典型的には100μm~800μm、および最も典型的には200μm~600μmである。
【0164】
これらのデータは、従来実現できなかった超厚リチウムまたはナトリウム電池電極を製造する際の本発明による方法の意外な有効性をさらに確認している。ナトリウム金属電池でのこれら超厚電極は、典型的には実質的に、>15mg/cm2(より典型的には>20mg/cm2、さらに典型的には>30mg/cm2、しばしば>40mg/cm2、およびさらには>50mg/cm2)の非常に高い硫黄カソード活性材料質量負荷をもたらす。これらの高い活性物質質量負荷は、スラリコーティング法によって形成される従来のアルカリ金属硫黄電池で得ることは可能でなかった。これらの高い活性物質質量負荷は、電池システムを同じものと仮定して、従来実現されなかった非常に高い重量および体積エネルギー密度をもたらした。
【0165】
Li、Na、およびK金属の二次電池に共通して関連するデンドライトの問題も、本発明の発泡性集電体ストラテジを使用することによって解決される。数百個のセルを調査したが、発泡性アノード集電体を有するセルでは、セパレータを通るデンドライトの貫通による故障は見つからなかった。本発明のナトリウムおよびカリウムセルからの試料のSEM試験により、多孔質アノード集電体の細孔壁に再堆積されたアルカリ金属表面は滑らかであり均一であるように見え、アノードに固体集電体(Cu箔)を有する対応するセルでしばしば観察されるような鋭利な金属堆積物または樹木状形態の徴候を示さないことが裏付けられた。これは、アノードでの発泡性集電体の高い比表面積に関連付けられるより低い交換電流密度と、繰り返される再充電手順中にアルカリ金属堆積を促す発泡構造でのより均一な局所電場とによるものであり得る。