(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】脱落防止具
(51)【国際特許分類】
F16B 41/00 20060101AFI20221007BHJP
F16B 39/20 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
F16B41/00 A
F16B39/20 A
(21)【出願番号】P 2019020673
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391007024
【氏名又は名称】株式会社アドバネクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 栄
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/095850(WO,A1)
【文献】特開2010-121708(JP,A)
【文献】特開2009-052648(JP,A)
【文献】特開2012-037010(JP,A)
【文献】特開2016-156482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 39/20
F16B 39/10
F16B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットが取り付けられたボルトに設置される前記ナットの脱落防止具であって、
前記ボルトが挿入されるボルト保持部と、
前記ボルト保持部と一体として設けられると共に、前記ナットの外周に設けられると共に
巻回部による復元力により前記ナットの回転を阻止するナット保持部とを有
し、
前記巻回部は、コイルバネ状の部位であり、
前記巻回部により、前記ボルト保持部による前記ボルトを挟み込む方向の力、及び前記ナット保持部による前記ナットが締まる方向へ前記ナットを付勢する力を発生させることを特徴とする脱落防止具。
【請求項2】
前記ボルト保持部に接続されると共に前記ボルト保持部の径を変更可能とする持ち手部を有することを特徴とする請求項1記載の脱落防止具。
【請求項3】
前記持ち手部は、前記ナット保持部よりも、前記ボルトの径方向において外側に突出していることを特徴とする請求項2記載の脱落防止具。
【請求項4】
前記ボルト保持部
、前記巻回部、及び前記ナット保持部は、1本の金属線により形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の脱落防止具。
【請求項5】
前記ナット保持部は、前記ナットの外周面に接触すると共に、多角形形状とされることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の脱落防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱落防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボルトに取り付けられた、ナットの脱落を防止するため、脱落防止具をボルトに取り付けることがある。例えば、特許文献1には、環状の第1コイルバネ部と、上記第1コイルバネ部に配置されると共にボルトに巻き付けられる第2コイルバネ部と、上記第1コイルバネ部と上記第2コイルバネ部とを接続する接続部とを備える脱落防止具が開示されている。上記脱落防止具は、ナットと同様の要領でボルトに取り付けることが可能である。これにより、上記脱落防止具は、ボルトに対して巻き付くことで、ナットのボルト軸方向における移動を阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような脱落防止具においては、ボルトに巻き付けることでナットの緩みを阻止しているため、ボルトに対して強い力で固定する必要がある。したがって、例えば、メンテナンスや解体時等において、ナットをボルトから取り外す際に、脱落防止具がナットに食い込む等により脱落防止具をボルトから取り外すことが難しい。したがって、従来の脱落防止具を取り外す際には、工具等により脱落防止具を破壊して取り外している。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、脱落防止具の取り外しを容易とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の手段として、ナットが取り付けられたボルトに設置される前記ナットの脱落防止具であって、前記ボルトが挿入されるボルト保持部と、前記ボルト保持部と一体として設けられると共に、前記ナットの外周に設けられると共に復元力により前記ナットの回転を阻止するナット保持部とを有する、という構成を採用する。
【0008】
第2の手段として、上記第1の手段において、前記ボルト保持部に接続されると共に前記ボルト保持部の径を変更可能とする持ち手部を有する、という構成を採用する。
【0009】
第3の手段として、上記第2の手段において、前記持ち手部は、前記ナット保持部よりも、前記ボルトの径方向において外側に突出している、という構成を採用する。
【0010】
第4の手段として、上記第1~3のいずれかの手段において、前記ボルト保持部及び前記ナット保持部は、1本の金属線により形成される、という構成を採用する。
【0011】
第5の手段として、上記第1~4のいずれかの手段において、前記ナット保持部は、前記ナットの外周面に接触すると共に、多角形形状とされる、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ナット保持部3がナットを保持することにより、復元力を用いてナットの回転を阻止している。これにより、ボルトに対して大きな力を加えることなくナットの脱落を防止することが可能である。したがって、本発明に係る脱落防止具は、破壊することなくボルトから取り外すことができ、ボルトからの取り外しが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る脱落防止具の非ボルト取付時における正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る脱落防止具のボルト取付時における正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る脱落防止具の斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る脱落防止具のボルト取付時における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る脱落防止具の一実施形態について説明する。
【0015】
本実施形態に係る脱落防止具1は、1本の金属線を屈曲することにより形成されており、
図1~3に示すように、可動部2と、ナット保持部3とを有している。
【0016】
可動部2は、持ち手部2aと、ボルト保持部2bと、巻回部2cとを有している。持ち手部2aは、V字状に屈曲された2つの凸部が、互いに交差するように配置された部位である。また、持ち手部2aの2つの凸部は、ボルト保持部2b及び巻回部2cを介して連続している。これにより、持ち手部2aは、連続して設けられるボルト保持部2bにおける後述する湾曲部同士の幅を変更することで、ボルト保持部2bの内径を変更可能としている。なお、持ち手部2aは、ボルト軸方向から見た際に、ナット保持部3よりも径方向において外側に突出している。
【0017】
ボルト保持部2bは、持ち手部2aの端部と連続して形成され、半円状に湾曲した2つの湾曲部を有している。上記湾曲部は、2つの凸部のそれぞれに連なって形成されており、凸部の交差角度が変更されることにより互いに重なり合うことで、円環状となる。そして、ボルト保持部2bは、中心の空洞にボルトが挿入され、ネジ溝に歯合した状態でボルトを保持する。すなわち、ボルト保持部2bは、2つの湾曲部がボルトを挟み込んで保持している。
【0018】
巻回部2cは、金属線が複数回同軸上で巻回されることにより形成されたコイルバネ状の部位である。このような巻回部2cは、持ち手部2aと反対側においてボルト保持部2bと隣接して形成されており、両端が2つの湾曲部と連続している。そして、巻回部2cは、持ち手部2aの端部に力が加えられた際に、縮径方向に弾性変形することで、持ち手部2aの位置を変更可能とする。
【0019】
ナット保持部3は、持ち手部2aの一端と連続して形成され、正六角形状(多角形形状)に屈曲されると共に、
図3に示すように複数回巻回された部位とされる。このようなナット保持部3は、持ち手部2aに力が加えられることにより円環状となったボルト保持部2bと同軸上に配される。ナット保持部3は、
図2に示すように、脱落防止具1がボルトに取り付けられた際に、ナットの外周に配置される。このとき、ナット保持部3は、外形形状が六角形のナットの外周の各面と接触した状態で固定される。
【0020】
脱落防止具1は、
図1の状態において持ち手部2aに作業者が両側から力を加えることで、ボルト保持部2bの湾曲部が重なり合い、円環状となる。この状態で、作業者は、
図1及び
図4に示すように、ボルト保持部2bにナット保持部3が形成されている側からボルトを挿入する。さらに、持ち手部2aを解放することで、持ち手部2aには元に戻る方向に力が生じるため、ボルトには、ボルト保持部2bの湾曲部が両側から挟み込む方向へと力がかかった状態となる。
【0021】
このような脱落防止具1がボルトに取り付けられると、
図2に示すように、ボルト軸方向から見て、ボルト保持部2bとナット保持部3とが同軸上に配された状態となる。このとき、ナット保持部3は、ナットが締まる方向(回転方向)へとナットを付勢した状態で固定している。
【0022】
この状態で、振動等によりナットが緩む方向(締まる方向と反対の回転方向)に荷重がかかると、ナット保持部3には、拡径方向(緩み方向)へと撓みが発生することとなる。このとき、ナット保持部3には撓み復元力が発生し、元の位置、すなわち、脱落防止具1が取り付けられた際の位置へと戻る。これにより、ナットは、ナット保持部3により回転が阻止された状態となる。したがって、本実施形態に係る脱落防止具1は、ナット保持部3がナットの回転を阻止することで、ナットの脱落を防止することが可能である。
【0023】
このような本実施形態に係る脱落防止具1によれば、ナットの回転を付勢力により阻止することで、ボルトに対して脱落防止具1を強固に取り付ける必要がなく、さらにボルトに対して大きな力が加わることがない。したがって、例えば、メンテナンス時や解体時等に、ナットをボルトから取り外す際にも、脱落防止具1を容易に取り外すことが可能である。脱落防止具1は、取り外す際に破壊されることがないため、再利用することも可能である。
【0024】
また、本実施形態に係る脱落防止具1によれば、持ち手部2aを用いてボルト保持部2bの内径の大きさを変更することが可能である。これにより、脱落防止具1をボルトに取り付ける際に、ボルト外径より大きく撓ませ、ボルト軸方向からネジ山に沿わせる昼用がなく、直接ナットが設けられている位置に脱落防止具1を取り付けることが可能である。したがって、脱落防止具1の取り付けが容易である。
【0025】
また、本実施形態に係る脱落防止具1によれば、ナット保持部3は、ナットの外形形状と同一の六角形形状とされている。これにより、ナット保持部3は、ナットに取り付けられた際に、ナットから外れることがなく、確実にナットを保持することが可能である。したがって、脱落防止具1は、確実にナットの脱落を防止することが可能である。
【0026】
また、本実施形態に係る脱落防止具1によれば、1本の金属線を加工することにより、可動部2とナット保持部3とを形成している。したがって、形成が容易であると共に、各部位への力の伝達が容易である。
【0027】
また、本実施形態によれば、持ち手部2aは、ナット保持部3よりも径方向外側へと突出している。これにより、作業者は、容易に持ち手部2aを把持することが可能であり、脱落防止具1の取り付けが容易である。
【0028】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0029】
上記実施形態においては、ナット保持部3の形状を六角形としたが、本発明はこれに限定されない。ナット保持部3は、ナットの形状に合わせ、様々な形状(多角形形状)とすることが可能である。また、例えば、ナット保持部3は、六角形形状のナットの場合でも、四角形形状であれば、同様にナットを保持することが可能である。
【0030】
また、上記実施形態においては、脱落防止具1は、持ち手部2aが形成されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、持ち手部2aを有さず、ボルトのネジ溝に沿って回転させることにより、ナットに取り付けるものとしてもよい。
【0031】
また、上記実施形態においては、脱落防止具1は、持ち手部2aがナット保持部3よりも径方向外側に突出しているものとしたが、本発明はこれに限定されない。持ち手部2aは、ナット保持部3よりも径方向内側に形成されるものとしてもよい。この場合、脱落防止具1がナットから径方向外側に大きく飛び出すことがなく、ナット及びボルトの周囲構造物を阻害することがない。
【符号の説明】
【0032】
1 脱落防止具
2 可動部
2a 持ち手部
2b ボルト保持部
2c 巻回部
3 ナット保持部