(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】塗料充填方法及び塗料充填装置
(51)【国際特許分類】
B05B 12/14 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
B05B12/14
(21)【出願番号】P 2019022571
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】藤井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鹿内 康平
(72)【発明者】
【氏名】福島 寿昭
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-341192(JP,A)
【文献】特開昭62-053760(JP,A)
【文献】特許第3013734(JP,B1)
【文献】特開2000-176333(JP,A)
【文献】特開2010-274248(JP,A)
【文献】特開2007-130531(JP,A)
【文献】特開2006-334551(JP,A)
【文献】特開2005-087811(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2010-0108087(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の塗料を収容する塗料カートリッジへの塗料の充填を前記塗料カートリッジの有する先端針を介して行う塗料充填方法であって、
前記塗料カートリッジの先端針が接続可能な塗料充填部を、塗装色ごとにテーブル上に配置し、塗装色ごとに塗料を収容する各塗料タンクから、より少量の塗料を前記塗料充填部に供給する工程と、
前記テーブルを移動し、前記塗料カートリッジの直下にいずれかの塗料充填部を配置する工程と、
前記塗料カートリッジの先端針を前記カートリッジ直下の塗料充填部に接続する工程と、を備えることを特徴とする塗料充填方法。
【請求項2】
所定量の塗料を収容する塗料カートリッジへの塗料の充填を前記塗料カートリッジの有する先端針を介して行う塗料充填装置であって、
前記塗料カートリッジの先端針が接続可能であって、塗料を収容する塗料タンクから供給される、より少量の塗料を収容する塗料充填部と、
複数の前記塗料充填部が塗装色ごとに配置された充填部切替テーブルと、
前記充填部切替テーブルの上方に配置され、前記塗料カートリッジを保持するカートリッジ保持部と、
前記充填部切替テーブルを移動させ、各塗料充填部を前記カートリッジ保持部の直下に配置可能な充填部移動機構と、を備え、
前記塗料カートリッジを前記カートリッジ保持部に保持させることにより、前記塗料カートリッジの先端針が前記カートリッジ保持部直下の塗料充填部に接続されることを特徴とする塗料充填装置。
【請求項3】
前記充填部切替テーブルは円板状であって、複数の前記塗料充填部が前記充填部切替テーブルの周縁部に配置され、
前記充填部移動機構は、前記充填部切替テーブルを、その中心軸周りに回転させることを特徴とする請求項2に記載された塗料充填装置。
【請求項4】
円板状に形成され、周方向に複数の前記塗料カートリッジを保持可能であって、中心軸周りに回転することによって、保持するいずれかの塗料カートリッジを前記カートリッジ保持部の直上に位置させるカートリッジ切替テーブルと、
前記カートリッジ切替テーブルをその中心軸周りに回転させ、且つ昇降移動させるカートリッジ移動機構とを備えることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載された塗料充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料充填方法及び塗料充填装置に関し、特に、塗料カートリッジへの塗料の充填を効率的に行うことのできる塗料充填方法及び塗料充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のボディ等の被塗物を塗装する塗装システムは、塗装用ロボット等の塗装作業機と、該塗装作業機に取付けられた塗装機と、塗装機に塗料を供給する塗料供給装置とから構成される。
この塗装システムは、前記塗装作業機をプログラムによって動作し、塗装機から塗料を噴霧することにより自動的に塗装を行うことができる。
また、この種の塗装システムにあっては、色替え作業時に廃棄される塗料とシンナーの量を低減すること、及び多色化への対応が要求されている。
【0003】
多色化に対応できるものとして、例えば特許文献1には、塗装機に対し、複数の塗装色の塗料を少量の単位で選択的に供給できるとともに、塗装色の交換を迅速かつ自動的に行うことができる塗料供給装置が開示されている。
図7に特許文献1に開示された塗料供給装置50の断面図を示し、
図8に塗料供給装置50の平面図を示す。図示するように、この塗料供給装置50は、円板状のターンテーブル51及びその駆動機構52をアングル枠体53の中に収容してなる。また、駆動機構52の有するモータ54の駆動によって、前記ターンテーブル51を中央の主軸55を中心として回転可能としている。このターンテーブル51の円周上には、例えば5個の塗料タンク56が等間隔に固定されている。
【0004】
また、ターンテーブル51側方のアングル枠体58上には、塗装機側と接続するためのコネクタ等を含む接続ユニット57が配置されている。この接続ユニット57は、塗料コネクタ63及びこれに組み付けたシリンダ71と、エアコネクタ64及びこれに組み付けたシリンダ72とからなる。
【0005】
前記塗料コネクタ63は、塗料ホース(図示せず)の一端が接続され、他端側に接続された塗装機側へ塗料を供給するために用いられる。また前記エアコネクタ64は、エアホース(図示せず)の一端が接続され、他端側に接続された加圧エア源から圧縮エアが供給されるようになっている。
また、これら塗料コネクタ63及びエアコネクタ64は、それぞれシリンダ71,72の作動によって、それらに対向する塗料タンク56側に移動可能に構成されている。
【0006】
また、塗料供給装置50は、図示しない制御装置を備え、この制御装置により、ターンテーブル51を所定の角度回転する度に停止させ、その後必要によりさらに回転を続行するという運転制御を行う。
そして、ターンテーブル51の回転によって5個の塗料タンク56が一緒に回り、指定した所定の塗料タンク56が接続ユニット57に対向する位置まで回し運ばれるようになっている。
尚、前記5個の塗料タンク56には、それぞれ異なる塗装色の塗料が満たされており、タンク内の塗料は、攪拌装置60によって均質に保持されている。
【0007】
また、各塗料タンク56には、前記接続ユニット57の塗料コネクタ63及びエアコネクタ64にそれぞれ接続するための塗料用継手61とエア用継手62とが設けられている。
即ち、接続ユニット57側からシリンダ71、72の作動によって塗料コネクタ63及びエアコネクタ64が塗料タンク56側に移動し、塗料用継手61と塗料コネクタ63とが接続し、エア用継手62とエアコネクタ64とが接続するように構成されている。
また、塗料供給装置50は、洗浄ユニット65を備えており、ある色の塗装が終了した際には、塗装機までの塗料流路(塗料ホース内など)をシンナー又はエアを用いて洗浄するように構成されている。
【0008】
このように構成された塗料供給装置50において、所望の色の塗料を塗装機に供給する際には、ターンテーブル51を回転させて、その色の塗料タンク56を接続ユニット57に対向する位置で停止させる。
そして、接続ユニット57のシリンダ71、72を作動させて、塗料タンク56の塗料用継手61に対し塗料コネクタ63を接続し、エア用継手62に対しエアコネクタ64を接続する。
塗料コネクタ63は塗料ホースを介して塗装機に接続されており、エアコネクタ64から供給される加圧エアによって、塗料タンク56から塗装機側に塗料を供給することになる。
【0009】
このような塗料供給装置を用いることにより、複数の塗装色の塗料を用いて塗装を行う場合には、自動的に所望の色の塗料の供給、洗浄、タンクの交換、次の色の塗料の供給、洗浄、と連続的に自動処理を行うことができる。
【0010】
一方、特許文献2には、廃棄塗料、シンナーの削減、及び多色化に対応するものとして、塗料カートリッジを用いたカートリッジ式塗装システム(塗装機)が開示されている。
この塗装システムは、各色ごとの塗料が充填されたカートリッジを、自動車のボディを塗装する度に、塗装機に対し交換して取り付けるものである。
このようなカートリッジ式の塗装システムによれば、塗装機において色替えの際の洗浄作業が不要となるため、廃棄する塗料及びシンナーが削減され、多色化への対応が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第3658720号公報
【文献】特許第3013734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、特許文献1に開示された塗料供給装置にあっては、色替えの都度、塗料コネクタ63に接続された塗料ホースを洗浄する作業が発生するため、塗装色の交換時間短縮に改善の余地が残されていた。また、洗浄の際にシンナー及び塗料の損失が生じていた。この塗料供給側における塗料及びシンナーの損失問題は、特許文献2のように塗装機の塗料をカートリッジ式としても、塗料の供給先がカートリッジとなるだけであり同様に生じる。
【0013】
また、特許文献1に開示の塗料供給装置にあっては、ターンテーブル51上に複数の塗料タンク56を載せる必要があるため、装置が大型化し多数の塗料タンク56の搭載が困難である上、回転駆動装置等の消費電力も大きくなるという課題があった。
【0014】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、塗料カートリッジへの塗料充填において、小型及び省電力で塗料損失が少なく、効率よく塗装色供給の交換が可能な塗料充填方法及び塗料充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記した課題を解決するために、本発明に係る塗料充填方法は、所定量の塗料を収容する塗料カートリッジへの塗料の充填を前記塗料カートリッジの有する先端針を介して行う塗料充填方法であって、前記塗料カートリッジの先端針が接続可能な塗料充填部を、塗装色ごとにテーブル上に配置し、塗装色ごとに塗料を収容する各塗料タンクから、より少量の塗料を前記塗料充填部に供給する工程と、前記テーブルを移動し、前記塗料カートリッジの直下にいずれかの塗料充填部を配置する工程と、前記塗料カートリッジの先端針を前記カートリッジ直下の塗料充填部に接続する工程と、を備えることに特徴を有する。
【0016】
このような方法によれば、各塗装色の供給経路の分離が可能となり、複数のカートリッジに対する色の異なる塗料の充填作業を効率的に行うことができる。また、充填作業において、塗料を異なる色に変更する際の洗浄工程が不要なため塗料及びシンナーの損失を防止することができる。
また、大容量の塗料タンクに比べて小型で軽量となる塗料充填部をテーブルに配置するため、多数の塗料充填部を配置しても、装置を格段に小型化することができ、また、低消費電力の構成とすることができる。
【0017】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る塗料充填装置は、所定量の塗料を収容する塗料カートリッジへの塗料の充填を前記塗料カートリッジの有する先端針を介して行う塗料充填装置であって、前記塗料カートリッジの先端針が接続可能であって、塗料を収容する塗料タンクから供給される、より少量の塗料を収容する塗料充填部と、複数の前記塗料充填部が塗装色ごとに配置された充填部切替テーブルと、前記充填部切替テーブルの上方に配置され、前記塗料カートリッジを保持するカートリッジ保持部と、前記充填部切替テーブルを移動させ、各塗料充填部を前記カートリッジ保持部の直下に配置可能な充填部移動機構と、を備え、前記塗料カートリッジを前記カートリッジ保持部に保持させることにより、前記塗料カートリッジの先端針が前記カートリッジ保持部直下の塗料充填部に接続されることに特徴を有する。
【0018】
尚、前記充填部切替テーブルは円板状であって、複数の前記塗料充填部が前記充填部切替テーブルの周縁部に配置され、前記充填部移動機構は、前記充填部切替テーブルを、その中心軸周りに回転させることが望ましい。
【0019】
また、円板状に形成され、周方向に複数の前記塗料カートリッジを保持可能であって、中心軸周りに回転することによって、保持するいずれかの塗料カートリッジを前記カートリッジ保持部の直上に位置させるカートリッジ切替テーブルと、前記カートリッジ切替テーブルをその中心軸周りに回転させ、且つ昇降移動させるカートリッジ移動機構とを備えることが望ましい。
【0020】
このように、塗料タンクそのものではなく、より少量の塗料を収容する複数の塗料充填部を充填部切替テーブルに配置し、各塗料充填部に対し塗料カートリッジがその先端針を介して容易に接続可能(充填可能)な構成とした。
これにより各塗装色の供給経路の分離が可能となり、複数のカートリッジに対する色の異なる塗料の充填作業を効率的に行うことができる。また、充填作業において、塗料を異なる色に変更する際の洗浄工程が不要なため塗料及びシンナーの損失を防止することができる。
また、大容量の塗料タンクに比べて小型で軽量となる塗料充填部を充填部切替テーブルに配置するため、多数の塗料充填部を配置しても、装置を格段に小型化することができ、また、低消費電力の構成とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、塗料カートリッジへの塗料充填において、小型及び省電力で塗料損失が少なく、効率よく塗装色供給の交換が可能な塗料充填方法及び塗料充填装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(a)は、本発明に係る塗料充填装置を斜め上方からみた模式的な斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)の塗料充填装置の一部を斜め下方からみた斜視図であり、1(c)は、
図1(a)の状態と異なる塗料充填装置の一部拡大図である。
【
図2】
図2(a)、(b)は、塗料カートリッジの概略構成を示す断面図であって、
図2(a)は、充填前の状態(吐出後の状態)を示し、
図2(b)は、充填した状態を示す。
【
図3】
図3(a)は、
図1の塗料充填装置が備える塗料充填部の斜視図であり、
図3(b)は、塗料充填部の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の塗料充填装置を用いて例えば2本の塗料カートリッジにそれぞれ異なる塗料を充填する場合の工程の流れを示すフローである。
【
図5】
図5(a)~(e)は、
図4のフローに対応する本発明の塗料充填装置の状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る塗料充填装置の変形例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、従来の塗料供給装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかる塗料充填方法及び塗料充填装置の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。本実施の形態における塗料充填方法及び塗料充填装置は、例えば自動車の外表面等に塗装を行う塗装機にセットされる塗料カートリッジへの塗料の充填工程に用いられる。
【0024】
図1(a)は、本発明に係る塗料充填装置を斜め上方からみた模式的な斜視図であり、
図1(b)は塗料充填装置の一部を斜め下方からみた斜視図である。また、
図1(c)は、
図1(a)の状態と異なる塗料充填装置の一部拡大図である。
【0025】
図1(a)乃至
図1(c)に示すように塗料充填装置1は、大径円板状の充填部切替テーブル2と、その斜め上方に配置され、前記充填部切替テーブル2と一部重なる状態となされた小径円板状のカートリッジ切替テーブル3とを備える。
また、塗料充填装置1は、前記充填部切替テーブル2を中心軸周りに回転させるためのテーブル回転機構4(充填部移動機構)と、充填部切替テーブル2の回転を停止させた際に充填部切替テーブル2の周方向の回転位置を固定するための位置固定機構5とを備える。
【0026】
また、塗料充填装置1は、カートリッジ切替テーブル3を中心軸周りに回転させ、且つカートリッジ切替テーブル3を昇降移動させるためのテーブル移動機構6(カートリッジ移動機構)と、塗料カートリッジ35への充填時に塗料カートリッジ35を固定するためのカートリッジ保持部7とを備える。
さらに塗料充填装置1は、
図1(a)に示すように前記テーブル回転機構4、位置固定機構5、テーブル移動機構6等の動作を制御するためのコンピュータからなる制御部10を備える。
【0027】
また、本発明に係る塗料充填装置は、前記したように塗料カートリッジ35への充填を効率よく行うためのものである。
図2の断面図に本実施形態で使用可能な塗料カートリッジ35の概略構成を示す。
図2(a)は、充填前の状態(吐出後の状態)であり、
図2(b)は、充填した状態を示している。
【0028】
図2(a)、(b)に示すように塗料カートリッジ35は、シリンダ37の内部空間にピストン板38を有し、ピストン板38がシリンダ37内を摺動することにより塗料収容室39と押出液室40の容積が変化するようになっている。
【0029】
また、塗料収容室39は、細管状の先端針36に連通しており、
図2(b)に示すように先端針36が充填部11に挿入された状態で、塗料が供給されている充填部11が空の押出液室40よりも圧力が高くなることにより、室内に充填部11から塗料が流れ込むようになっている。
【0030】
また、塗料カートリッジ35内の塗料を使用する場合には、
図2(a)に示すように押出液室40に押出液を供給することで塗料収容室39の容積が小さくなり、室内の塗料が先端針36を介して吐出されるようになっている。
【0031】
また、
図1(a)乃至
図1(c)に示すように、塗料充填装置1の充填部切替テーブル2において、その周縁部には、複数(図では24個)の塗料充填部11が等間隔に設けられている。
図3(a)、(b)に示すように塗料充填部11は、例えば、上部開口した有底円筒状の容器本体21の開口部に樹脂からなる蓋部材22が嵌合した状態で構成される。蓋部材22の中央には、塗料カートリッジ35の先端針36を挿入可能な挿入孔11aが形成され、例えば周縁部には、
図1(a)に示す塗料タンク30との間で塗料パイプ12を接続するための塗料供給孔22bが設けられている。
【0032】
前記塗料タンク30は、例えばタンク内が加圧されることによって、塗料パイプ12を介してタンク外に塗料を供給する。したがって、塗料充填部11内には、塗料パイプ12を介して接続された塗料タンク30からの塗料が供給されるように構成されている。
また、
図3(b)に示すように、塗料充填部11の容器本体21は、充填部切替テーブル2の周縁部に埋設され、蓋部材22の周縁に形成されたフランジ22aがテーブル上面に係止した状態に取付けられている。
【0033】
図1(c)に示すように、塗料充填部11の挿入孔11aには、塗料カートリッジ35の先端針36が挿入可能となされており、挿入された状態で、塗料カートリッジ35の押出液室40と塗料充填部11との圧力差によりカートリッジ内に塗料が充填されるようになっている。
【0034】
また、
図1(a)に示すように、充填部切替テーブル2の周縁部に設けられた複数の塗料充填部11には、それぞれ色の異なる塗料を収容した複数の塗料タンク30が、1:1の対応関係で塗料パイプ12を介して接続され、塗料充填部11内には常に塗料が各塗料タンク30から供給される構成となっている(図示する例では最大24色に対応)。
【0035】
前記充填部切替テーブル2は、前記したようにテーブル回転機構4により中心軸周りに回転可能である。
図1(b)に示すようにテーブル回転機構4は、充填部切替テーブル2の裏面中心部に設けられた第2ギア18と、これに噛み合い回転させるための第1ギア19と、第1ギア19を回転駆動するための駆動モータ20(ステッピングモータ)とを有する。この駆動モータ20により第1ギア19が所定方向に回転すると、第2ギア20とともに充填部切替テーブル2が回転するように構成されている。尚、充填部切替テーブル2の回転は、±180°の回転可能範囲とすることが望ましい。
【0036】
また、
図1(a)に示すように充填部切替テーブル2の周縁部には、前記塗料充填部11の他に、複数のストッパ孔13が設けられている。これらのストッパ孔13は、前記位置固定機構5によって利用される。前記位置固定機構5は、垂直方向に延びる昇降ピン14と、昇降ピン14を垂直方向に昇降させるための昇降モータ15とを有する。
【0037】
前記昇降ピン14は、上方に移動することにより前記充填部切替テーブル2のストッパ孔13に挿入され、充填部切替テーブル2に係止可能となされている。それにより充填部切替テーブル2の周方向の位置が固定される。一方、昇降ピン14が下降し、前記ストッパ孔13から抜けると、充填部切替テーブル2は、再び周方向に回転可能な状態となる。
【0038】
また、カートリッジ切替テーブル3は、周方向に沿って複数(図では3つ)の保持孔3a~3cを有する。これらの保持孔3a~3cは、それぞれ塗料カートリッジ35を保持するために設けられている。即ち、図示するように塗料カートリッジ35の上部に形成されたフランジが保持孔3a~3cのいずれかに係止することにより保持される。
【0039】
また、カートリッジ切替テーブル3の中心には、これを支持する支持軸16が設けられ、この支持軸16は駆動部17によって垂直方向に昇降、あるいは軸周り所定方向に回転するようになっている。
また、前記したように充填部切替テーブル2とカートリッジ切替テーブル3とは、一部が縦方向に重なる状態に配置され、その重なる領域の空間(両テーブルに挟まれた空間)には、枠体8上に固定された前記カートリッジ保持部7が設けられている。このカートリッジ保持部7は、上下開口する筒状に形成され、そこに塗料カートリッジ35を挿し込むことにより、
図1(c)に示すように塗料カートリッジ35を保持可能となされている。
【0040】
この構成においてカートリッジ切替テーブル3の保持する充填前の塗料カートリッジ35がカートリッジ保持部7の直上位置に配置され、さらにカートリッジ切替テーブル3が降下すると、前記塗料カートリッジ35がカートリッジ保持部7に挿入されて保持される。そして、塗料カートリッジ35の先端針部36が充填部切替テーブル2の周縁部に設けられた所定の塗料充填部11の挿入孔11aに挿入され、塗料カートリッジ35への塗料の充填作業が可能となるように構成されている。
【0041】
続いて、前記塗料充填装置1を用いて例えば2本の塗料カートリッジ35にそれぞれ異なる塗料を充填する場合の工程について
図4のフローに沿って、
図5(a)乃至
図5(e)の状態図を用いながら具体的に説明する。
最初に、充填部切替テーブル2の周縁部に設けた各塗料充填部11には、塗料タンク30より、それぞれ異なる色の塗料を充分に供給しておく(
図4のステップS1)。
【0042】
次いで制御部10の指示により、図示しないマテリアルハンドリングロボット(以下、マテハンロボットと称する)が、
図5(a)に示すように最初の塗料カートリッジ35-1を塗料充填装置1側に搬送し、カートリッジ切替テーブル3の保持孔3aに保持させる(
図4のステップS2)。
【0043】
制御部10は、
図5(b)に示すようにカートリッジ切替テーブル3を上昇させ、カートリッジ切替テーブル3を周方向に回転させて、カートリッジ保持部7の直上位置に前記塗料カートリッジ35-1を配置する(
図4のステップS3)。
【0044】
一方、昇降ピン14は下降移動して、充填部切替テーブル2は、所定の塗装色に対応する塗料充填部11がカートリッジ保持部7の直下に位置するまで回転制御され、
図5(c)に示すように昇降ピン14が上昇してストッパ孔13に挿入されることによって充填部切替テーブル2の位置決め(固定)がなされる(
図4のステップS4)。
【0045】
更にカートリッジ切替テーブル3が下降される。これによりカートリッジ保持部7に塗料カートリッジ35-1が挿入されて保持され、塗料カートリッジ35-1の先端針36がカートリッジ保持部7直下の塗料充填部11に挿入される(
図4のステップS5)。即ち、塗料カートリッジ35-1と塗料充填部11とが先端針36を介して接続される。
【0046】
また、制御部10の指示により、図示しないマテハンロボットが
図5(c)に示すように2つめの塗料カートリッジ35-2を塗料供給装置1側に搬送し、カートリッジ切替テーブル3の保持孔3bに塗料カートリッジ35-2を保持させる(
図4のステップS6)。
【0047】
また、最初の塗料カートリッジ35-1と塗料充填部11とが接続された状態で、塗料カートリッジ35-1の押出液室40と塗料充填部11の圧力差により、塗料充填部11から塗料収容室39内に塗料が充填される(
図4のステップS7)。
【0048】
塗料カートリッジ35-1への塗料充填が終わると、
図5(d)に示すようにカートリッジ切替テーブル3を上昇移動し、周方向に回転して、カートリッジ保持部7の直上に前記塗料カートリッジ35-2を配置する(
図4のステップS8)。
【0049】
一方、昇降ピン14は下降移動して、充填部切替テーブル2は、所定の塗装色に対応する他の塗料充填部11がカートリッジ保持部7の直下に位置するまで回転制御される。そして、
図5(e)に示すように再び昇降ピン14が上昇してストッパ孔13に挿入されることによって充填部切替テーブル2の位置決め(固定)がなされる(
図4のステップS9)。尚、同じ色の塗料を2つの塗料カートリッジ35に充填する場合には、このステップは不要である。
【0050】
更にカートリッジ切替テーブル3を下降させる。これによりカートリッジ保持部7に塗料カートリッジ35-2が挿入され保持される。また、塗料カートリッジ35-2の先端針36がカートリッジ保持部7直下の塗料充填部11に挿入され、塗料カートリッジ35-2と塗料充填部11とが接続される(
図4のステップS10)。
【0051】
そして、塗料カートリッジ35-2と塗料充填部11とが接続された状態で、塗料カートリッジ35-2の押出液室40と塗料充填部11との圧力差により塗料カートリッジ35-2内に塗料が充填される(
図4のステップS11)。
また、マテハンロボットにより、塗料カートリッジ35-1はカートリッジ切替テーブル3から抜き出され、図示しない塗装機へと搬送される(
図4のステップS12)。このように本実施形態にあっては、カートリッジ切替テーブル3に3つの保持孔3a~3cが設けられているため、新たな塗料カートリッジ35の搬入と充填済みの塗料カートリッジ35の搬出とを、他の充填カートリッジ35への充填作業中に行うことができる。
【0052】
塗料カートリッジ35-2への塗料充填が終わると、
図5(d)の塗料カートリッジ35-1と同様にカートリッジ切替テーブル3が上昇移動され、周方向に回転されて、カートリッジ保持部7の直上位置から外される(
図4のステップS13)。
そして、マテハンロボットにより、
図5(e)の塗料カートリッジ35-1と同様に、塗料カートリッジ35-2はカートリッジ切替テーブル3から抜き出され、図示しない塗装機へと搬送される(
図4のステップS14)。
【0053】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、塗料タンクそのものではなく、より少量の塗料を収容する複数の塗料充填部11を充填部切替テーブル2に配置し、各塗料充填部11に対し塗料カートリッジ35がその先端針を介して容易に接続可能(充填可能)な構成とした。
これにより各塗装色の供給経路の分離が可能となり、複数のカートリッジに対する色の異なる塗料の充填作業を効率的に行うことができる。また、充填作業において、塗料を異なる色に変更する際の洗浄工程が不要なため塗料及びシンナーの損失を防止することができる。
また、大容量の塗料タンクに比べて小型で軽量となる塗料充填部11を充填部切替テーブル2に配置するため、多数の塗料充填部11を配置しても、装置を格段に小型化することができ、また、低消費電力の構成とすることができる。
【0054】
尚、前記実施の形態においては、カートリッジ切替テーブル3を設け、これにより3本の塗料カートリッジ35を同時に搭載可能な構成としたが、本発明にあっては、この構成に限定されるものではない。
例えば、カートリッジ切替テーブル3を具備せず、マテハンロボットにより1本の塗料カートリッジ35をカートリッジ保持部7に直接的に挿す構成としてもよい。
また、カートリッジ切替テーブル3を具備する場合、同時に保持可能な塗料カートリッジ35の数は3本に限定されるものではなく、2本でも、あるいは4本以上でもよい。
【0055】
また、前記実施形態にあっては、充填部切替テーブル2を円板状とし、その周縁部に設けた各充填部11をテーブルの回転によってカートリッジ保持部7の直下に位置させることが可能な構成としたが、本発明にあっては、その構成に限定されるものではない。
例えば、円板状の充填部切替テーブル2に替えて、
図6に示すように長板状の充填部切替テーブル2Aを設け、その面上にXY軸方向に沿って複数の塗料充填部11を配列する。そして、2軸移動機構9により充填部切替テーブル2AをXY2軸方向に移動させ、いずれかの塗料充填部11をカートリッジ保持部7の直下に位置させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 塗料充填装置
2 充填部切替テーブル
2A 充填部切替テーブル
3 カートリッジ切替テーブル
4 テーブル回転機構(充填部移動機構)
5 位置固定機構
6 テーブル移動機構(カートリッジ移動機構)
7 カートリッジ保持部
10 制御部
11 塗料充填部
13 ストッパ孔
35 塗料カートリッジ
36 先端針