(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置、及びそれを備えた機械式タービン流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/115 20060101AFI20221007BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20221007BHJP
【FI】
G01F1/115
G01F1/00 Y
(21)【出願番号】P 2019053290
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】越智 毅
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-83298(JP,A)
【文献】特開2008-33398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0045389(US,A1)
【文献】特開平7-325880(JP,A)
【文献】特開平4-158222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
G01F15/00-15/18
G08C13/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する主流路内に回転自在に設けられ、流体の通過に伴って回転するタービンロータと、前記タービンロータの回転数に応じて機械的に処理された流体流量の積算値を表示するアナログ表示部とを有する機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置であって、
前記アナログ表示部が、複数桁の流量を表示可能で、且つ前記複数桁の最小桁を固定指針に対して目盛が相対回転する回転表示部を有するものであり、
前記回転表示部における前記固定指針と前記目盛との相対位置関係を経時的に連続して読み取る指針値読取部と、当該指針値読取部にて読み取られた前記相対位置関係に基づいて前記タービンロータの瞬時流量を導出する瞬時流量導出部とを備える、機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置。
【請求項2】
前記指針値読取部は、前記回転表示部の画像である表示部画像を経時的に連続して取得する画像取得機能部と、取得された前記表示部画像から前記目盛のうち前記固定指針の近傍に存在する特定目盛を抽出する特定目盛抽出機能部と、前記特定目盛抽出機能部にて抽出された前記特定目盛と前記固定指針との間の距離の単位時間当たりの変化量を前記相対位置関係として読み取る変化量読取機能部とを有し、
前記瞬時流量導出部は、前記変化量読取機能部にて読み取られた前記特定目盛と前記固定指針との間の距離の単位時間当たりの変化量に基づいて、前記瞬時流量を導出する請求項1に記載の機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置。
【請求項3】
前記特定目盛抽出機能部は、前記固定指針に接近する目盛を前記特定目盛として抽出するものであり、且つ前記固定指針と前記特定目盛との距離が所定の第1距離未満となったときに、新たな前記特定目盛を抽出する請求項2に記載の機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置。
【請求項4】
前記特定目盛抽出機能部は、前記固定指針から離間する目盛を前記特定目盛として抽出するものであり、且つ前記固定指針と前記特定目盛との距離が所定の第2距離を超えたときに、新たな前記特定目盛を抽出する請求項2に記載の機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置。
【請求項5】
前記画像取得機能部にて取得された前記表示部画像を表示するモニタ部を備え、
前記モニタ部は、前記画像取得機能部にて取得された前記表示部画像の略中央部位に円弧形状の円弧状マーカを表示可能であり、
前記円弧状マーカを前記回転表示部に表示される複数の前記目盛に重畳するよう前記画像取得機能部を前記回転表示部に対して位置決めした状態で、前記画像取得機能部が前記表示部画像を取得する請求項2~4の何れか一項に記載の機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置。
【請求項6】
前記主流路における流体の通流方向で前記タービンロータの上流側部位と下流側部位とを接続するバイパス流路と、
前記バイパス流路において前記上流側部位から前記下流側部位への通常の通流方向へ通流する流体のバイパス流量を計測するバイパス流量計測部と、
前記瞬時流量導出部にて導出された瞬時流量と前記バイパス流量計測部にて計測されたバイパス流量とを比較して、前記瞬時流量導出部の計量性能を評価する計量性能評価部とを備える請求項1~5の何れか一項に記載の機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置。
【請求項7】
前記計量性能評価部にて適正であると評価された瞬時流量の積算値を導出する瞬時流量積算値導出部を備える請求項6に記載の機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の瞬時流量計測装置を備えた機械式タービン流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が通過する主流路内に回転自在に設けられ、流体の通過に伴って回転するタービンロータと、前記タービンロータの回転数に応じて機械的に処理された流体流量の積算値を表示するアナログ表示部とを有する機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置、及びそれを備えた機械式タービン流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、都市ガス等の流体の流量を測定するためのガス流量計として、流体の流路内に配設されたタービンロータの回転により、流体の流量を測定するタービン流量計が知られている(特許文献1を参照)。当該タービンロータは、流体の通流方向に対して所定角度で配設された複数の羽根により構成され、流体がタービンロータを通過する際のタービンロータの回転数から流体の流量を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したタービン流量計としては、電子式のもの(例えば電子式タービン流量計)が知られており、その内部にはマイコン基盤が搭載され、瞬時流量を取得できるようになっており、その取得した瞬時流量を用い、計量に関する調査などに活用している。一方、機械式のもの(例えば機械式タービン流量計)には、マイコン基盤が搭載されていないため、瞬時流量の取得が出来ない。
このため、機械式タービン流量計で計量に関する調査を行うためには、別の流量計を直列に設置して比較するしかなく、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、通常は瞬時流量を計測できないものであっても、瞬時流量を解析可能にすることで異常の大小を事前に判断・スクリーニングでき、経済性を向上できる機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置、及びそれを備えた機械式タービン流量計を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置は、
流体が通過する主流路内に回転自在に設けられ、流体の通過に伴って回転するタービンロータと、前記タービンロータの回転数に応じて機械的に処理された流体流量の積算値を表示するアナログ表示部とを有する機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置であって、その特徴構成は、
前記アナログ表示部が、複数桁の流量を表示可能で、且つ前記複数桁の最小桁を固定指針に対して目盛が相対回転する回転表示部を有するものであり、
前記回転表示部における前記固定指針と前記目盛との相対位置関係を経時的に連続して読み取る指針値読取部と、当該指針値読取部にて読み取られた前記相対位置関係に基づいて前記タービンロータの瞬時流量を導出する瞬時流量導出部とを備える点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、例えば、流体の流量を表示する表示部としてアナログ表示部を有する機械式タービン流量計であっても、アナログ表示部の最少桁である回転表示部について、指針値読取部が固定指針と目盛との相対位置関係を経時的に連続して読み取ることで、瞬時流量導出部が相対位置関係に基づいてタービンロータの瞬時流量を導出するから、最小桁に指針値の動的変化として間接的に表される瞬間的な流量を読み取って、瞬時流量を知ることができる。
以上の機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置を用いることにより、瞬時流量を解析可能にすることで異常の大小を事前に判断・スクリーニングでき、更には、従来の如く別の流量計を直列設置する必要がなくなり、別の流量計の費用や配管部材、工事費用等を軽減して経済性を向上できる。
【0008】
機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置の更なる特徴構成は、
前記指針値読取部は、前記回転表示部の画像である表示部画像を経時的に連続して取得する画像取得機能部と、取得された前記表示部画像から前記目盛のうち前記固定指針の近傍に存在する特定目盛を抽出する特定目盛抽出機能部と、前記特定目盛抽出機能部にて抽出された前記特定目盛と前記固定指針との間の距離の単位時間当たりの変化量を前記相対位置関係として読み取る変化量読取機能部とを有し、
前記瞬時流量導出部は、前記変化量読取機能部にて読み取られた前記特定目盛と前記固定指針との間の距離の単位時間当たりの変化量に基づいて、前記瞬時流量を導出する点にある。
【0009】
固定指針に対して目盛が相対回転する回転表示部において、固定指針とその近傍の目盛である特定目盛との距離の単位時間当たりの変化量は、流体の流量の瞬時流量に対して比例関係にあるため、変化量読取機能部は当該変化量を読み取ると共に、瞬時流量導出部は、読み取った変化量に基づいて比較的精度良く瞬時流量を導出することができる。
【0010】
機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置としては、
前記特定目盛抽出機能部は、前記固定指針に接近する目盛を前記特定目盛として抽出するものであり、且つ前記固定指針と前記特定目盛との距離が所定の第1距離未満となったときに、新たな前記特定目盛を抽出することができる。
【0011】
また、前記特定目盛抽出機能部は、前記固定指針から離間する目盛を前記特定目盛として抽出するものであり、且つ前記固定指針と前記特定目盛との距離が所定の第2距離を超えたときに、新たな前記特定目盛を抽出することができる。
【0012】
上述の如く、特定目盛抽出機能部が、特定目盛を、固定指針と特定目盛との相対位置関係に基づいて切り替えることで、固定指針と目盛との距離の変化量が、流体の流量と適切な比例関係にあるときの目盛を特定目盛として順次選択していくから、それに基づいて導出する瞬時流量を、より精度良く導出できる。
【0013】
機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置の更なる特徴構成は、
前記画像取得機能部にて取得された前記表示部画像を表示するモニタ部を備え、
前記モニタ部は、前記画像取得機能部にて取得された前記表示部画像の略中央部位に円弧形状の円弧状マーカを表示可能であり、
前記円弧状マーカを前記回転表示部に表示される複数の前記目盛に重畳するよう前記画像取得機能部を前記回転表示部に対して位置決めした状態で、前記画像取得機能部が前記表示部画像を取得する点にある。
【0014】
上述の如く、固定指針と特定目盛との相対位置関係に基づいて瞬時流量を導出する場合、表示部画像を取得する画像取得機能部を、回転表示部に対して適切に位置決めする必要がある。
上記特徴構成によれば、モニタ部に表示される円弧状マーカを回転表示部に表示される複数の目盛に重畳するよう画像取得機能部を前記回転表示部に対して位置決めした状態で、表示部画像を取得するから、画像取得機能部と回転表示部との位置関係が一定の関係に調整された状態で表示部画像を取得できるから、読み取りエラー等を生じさせることなく、当該表示部画像から相対位置関係を読み取って、瞬時流量を導出することができる。
【0015】
機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置の更なる特徴構成は、
前記主流路における流体の通流方向で前記タービンロータの上流側部位と下流側部位とを接続するバイパス流路と、
前記バイパス流路において前記上流側部位から前記下流側部位への通常の通流方向へ通流する流体のバイパス流量を計測するバイパス流量計測部と、
前記瞬時流量導出部にて導出された瞬時流量と前記バイパス流量計測部にて計測されたバイパス流量とを比較して、前記瞬時流量導出部の計量性能を評価する計量性能評価部とを備える点にある。
【0016】
上記特徴構成の如く、計量性能評価部を有することで、例えば、急峻な流量変化が生じているとき等で過計量が発生している場合以外の流量を適正流量と評価する形で、計量性能を評価することができる。
【0017】
機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置の更なる特徴構成は、
前記計量性能評価部にて適正であると評価された瞬時流量の積算値を導出する瞬時流量積算値導出部を備える点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、流量積算値をより実態に即した値として導出できる。
【0019】
本願の権利範囲には、これまで説明してきた瞬時流量計測装置を備えた機械式タービン流量計も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の瞬時流量計測装置を備えた機械式タービン流量計に関する図
【
図3】瞬時流量計測装置を備えた機械式タービン流量計の外観斜視図
【
図4】0Nm
3/hと100Nm
3/hとで連続的に変動させた流量を、瞬時流量計測装置を備えた機械式タービン流量計にて計測した場合のグラフ図
【
図5】0Nm
3/hと100Nm
3/hとで連続的に変動させた流量を、電子式タービン流量計にて計測した場合のグラフ図
【
図6】100Nm
3/hと150Nm
3/hとで連続的に変動させた流量を、瞬時流量計測装置を備えた機械式タービン流量計にて計測した場合のグラフ図
【
図7】100Nm
3/hと150Nm
3/hとで連続的に変動させた流量を、電子式タービン流量計にて計測した場合のグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係るタービン流量計の瞬時流量計測装置100、及びそれを備えた機械式タービン流量計200は、通常は瞬時流量を計測できないものであっても、瞬時流量を解析可能にすることで異常の大小を事前に判断・スクリーニングでき、経済性を向上できるものに関する。
以下、タービン流量計の瞬時流量計測装置100、及びそれを備えた機械式タービン流量計200について、
図1~3に基づいて説明する。
【0022】
機械式タービン流量計200は、
図1に示すように、流体(例えば、都市ガス13A)が通流する主流路17内に回転自在に設けられ流体の通過に伴って回転するタービンロータ14と、当該タービンロータ14の回転数を検出するピックアップ装置16と、当該ピックアップ装置16の検出結果を機械的に処理して導出された流体流量の積算値を表示するアナログ表示部H1とを有する。更に、主流路17における流体の通流方向(
図1で矢印Xの矢示方向)でタービンロータ14の上流側部位と下流側部位とを接続するバイパス流路20と、当該バイパス流路20において上流側部位から下流側部位への通常の通流方向(
図1で矢印Yに沿う方向)へ通流する流体のバイパス流量を計測する質量流量計21(バイパス流量計測部の一例)が設けられている。
尚、アナログ表示部H1に表示される流体流量の積算値は、機械式タービン流量計200の使用開始から現在までの流量積算値であるが、これに代えて、例えば、直近1ヵ月間などのように所定期間における流量積算値とすることもできる。
【0023】
機械式タービン流量計200は、
図1に示すように、都市ガス13A等の流体が通流するガス配管(図示せず)に連通接続される主流路17を内部に有する流量計本体11を有する。当該流量計本体11の主流路17の内部には、流体の通流を許容しつつタービンロータ14の固定軸13を支持する支持体12a、12bが設けられ、当該固定軸13に対してタービンロータ14が回転自在に設けられている。
固定軸13を回転軸とするタービンロータ14には、複数の羽根19が固定軸13から放射状に延びる状態で、軸方向視で対称に設けられている。流体の通流方向において、複数の羽根19が設けられる位置にはピックアップ装置16が設けられており、当該ピックアップ装置16は、タービンロータ14の回転により羽根19が近接する毎にタービンロータ14の回転数に応じたパルス信号を出力する。ピックアップ装置16が出力するパルス信号は、機械的に処理されてアナログ表示部H1に表示される。即ち、当該アナログ表示部H1に表示される流量積算値は、タービンロータ14の回転に比例関係のある値であり、過計量が補正されていない非補正値である。
【0024】
当該アナログ表示部H1について説明を追加すると、積算流量値(m
3)として、複数桁(
図1では5ケタ)を表示可能に構成されており、小数点以上を表示する第1表示部H1aと、最小桁の小数点以下第1位を固定指針Hkに対して円形の目盛板Hmに表示された目盛が相対回転する回転表示部H1bとから構成されている。
【0025】
バイパス流路20の流路直径は、主流路17の流路直径に対して小径に構成されている。一例を示すと、バイパス流路20の流路直径は、主流路17の流路直径の1%以上10%以下程度とすることができる。バイパス流路20の流路直径をこのように設定することにより、バイパス流路20を通流する流体の流量を、主流路17を通流する流体の流量に対して略比例関係を持たせた状態とすることができる。更には、バイパス流路20を通流する流体の流量を比較的小流量とでき、流量変化への応答速度の速い計器を、バイパス流量計測部として備えることができる。
当該実施形態では、バイパス流量計測部として質量流量計21を備えており、当該質量流量計21は、バイパス流路20への流体の通流方向において、両端に熱電対21b、21cを設けると共に、その間に熱線ヒータ21aを備えており、熱線ヒータ21aを作動させている状態で、熱電対21b、21cによる温度差を計測することにより、バイパス流路20を通流する流体の質量流量を計測する。当該質量流量計21にて計測された流量に対応する信号は、後述する制御装置Sの計量性能評価部S2へ送信される。
【0026】
さて、アナログ表示部H1は、上述したように、表示する流量が非補正値であると共に、積算値を表示するものであるから、その指針値から瞬時流量を知ることは難しく、更には、過計量を加味した補正値を知ることもできない。
そこで、以下では、このような機械式タービン流量計であっても、適切に瞬時流量を出力できると共に、過計量をも加味した補正値も出力可能な装置について説明を加える。
【0027】
当該実施形態に係る機械式タービン流量計200の瞬時流量計測装置100は、回転表示部H1bにおける固定指針Hkと目盛との相対位置関係を経時的に連続して読み取る指針値読取部Cと、当該指針値読取部Cにて読み取られた相対位置関係に基づいてタービンロータ14を通過する流体の瞬時流量を導出する制御装置Sとしての瞬時流量導出部S1とを備えている。
説明を加えると、指針値読取部Cは、
図1に示すように、回転表示部H1bの画像である表示部画像を経時的に連続して取得するカメラC1としての画像取得機能部と、取得された表示部画像から目盛のうち固定指針Hkの近傍に存在する特定目盛Kmを抽出する特定目盛抽出機能部C2と、特定目盛抽出機能部C2にて抽出された特定目盛Kmと固定指針Hkとの間の距離Lの単位時間当たりの変化量を位置関係として読み取る変化量読取機能部C3とを有し、瞬時流量導出部S1は、変化量読取機能部C3にて読み取られた特定目盛Kmと固定指針Hkとの間の距離Lの単位時間当たりの変化量に基づいて、瞬時流量を導出する。
特定目盛抽出機能部C2にて説明を追加すると、
図1に示す後述のモニタ部H2に示されるように、固定指針Hkに接近する最近接の目盛を特定目盛Kmとして抽出するものであり、且つ固定指針Hkと特定目盛Kmとの距離が所定の第1距離未満(例えば零)となったときに、新たな特定目盛Kmを抽出する制御を行う。これにより、特定目盛Kmを連続的に切り替えて、瞬時流量の連続的な導出が可能となる。
【0028】
尚、図示は省略するが、回転表示部H1bを照らすバックライト、カメラC1とバックライトと制御装置S等に電力を供給するバッテリー、カメラC1とバックライトと制御装置S等を外囲する筐体が設けられている。
【0029】
上述の如く、指針値読取部Cが機能するためには、画像取得機能部としてのカメラC1が、回転表示部H1bの表示部画像を適切に取得するべく、
図3に示すように、回転表示部H1bに対してカメラC1を適切に位置決めする位置決め固定治具Jが設けられている。
位置決め固定治具Jは、
図2に示す機械式タービン流量計200に対して、
図3に示す状態でカメラC1を位置決め固定するものである。
当該位置決め固定治具Jは、アナログ表示部H1の回転表示部H1bの表示面と同程度の開口面積を有する窓部33を有する基板31と、当該基板31を機械式タービン流量計200に複数のボルトBにより固定する環状フランジ部30と、基板31に基端が固定されると共に回転表示部H1bの表示面に直交する方向へ先端が伸びる腕部32と、当該腕部32の先端にて腕部32の伸長方向に直交する第1方向に沿う位置調整自在な第1位置調整機構XTと、腕部32の伸長方向及び第1方向の双方に直交する第2方向に沿う位置調整自在な第2位置調整機構YTと、第1位置調整機構XT及び第2位置調整機構YTにて位置調整されるL字型治具Fにて固定される回転軸心Gと、当該回転軸心G周りで回動自在にカメラC1を固定する固定治具KJとから構成されている。
第1位置調整機構XTは、第1調整ツマミXTaを回転操作することにより第1方向での位置調整可能に構成され、第2位置調整機構YTは、第2調整ツマミYTaを回転操作することにより第2方向での位置調整可能に構成され、固定治具KJは、固定ハンドルKHを緩めることで回転軸心G周りでカメラC1を揺動移動可能に構成されている。
【0030】
更に、瞬時流量計測装置100として、カメラC1にて取得された表示部画像を表示するモニタ部H2を備え、当該モニタ部H2は、カメラC1にて取得された表示部画像の略中央部位に円弧形状の円弧状マーカMを表示可能に構成されている。
操作者が、上述の位置決め固定治具Jを操作することにより、モニタ部H2に表示された円弧状マーカMを、表示部画像上の回転表示部に表示される複数の目盛に重畳するよう配置することで、カメラC1の回転表示部H1bに対する位置決めを完了する。
【0031】
以上の構成により、瞬時流量を導出できる機械式タービン流量計200の瞬時流量計測装置100が実現することになる。
さて、主流路17を通流する流体の流量が急激に変化した場合、タービンロータ14は慣性等により、流体の急激な変化に追従できず、流体の流量とタービンロータ14の回転数とが比例関係でなくなる場合がある。この場合、制御装置Sの瞬時流量導出部S1にて導出される流量は、実流量と乖離する過計量が発生することになる。
そこで、当該実施形態に係る機械式タービン流量計200にあっては、当該過計量を抑制するべく、以下のように構成されている。
制御装置Sは、瞬時流量導出部S1にて導出された瞬時流量と質量流量計21にて計測されたバイパス流量(質量流量)とを比較して、瞬時流量導出部S1の計量性能を評価する計量性能評価部S2を備える。更に、計量性能評価部S2にて適正であると評価された瞬時流量の積算値を導出する瞬時流量積算値導出部S3を備える。そして、計量性能評価部S2にて適正であると評価された瞬時流量、及び瞬時流量積算値導出部S3にて導出された流量積算値が、図示しない記憶部に記憶されると共に、図示しない出力部に出力される。
【0032】
尚、制御装置Sには、上述したように、特定目盛抽出機能部C2、変化量読取機能部C3、瞬時流量導出部S1、計量性能評価部S2及び瞬時流量積算値導出部S3の機能部位が設けられており、制御装置Sは、これらの機能を適切に発揮するべく、各種CPUやメモリ等のハードウェアとソフトウェアとが協働する形で備えられている。
【0033】
〔実施例〕
次に、当該実施形態に係る瞬時流量計測装置を有する機械式タービン流量計を用いた計測結果(
図4、6)を、一般に知られる電子式タービン流量計を用いた計測結果(
図5、7)と比較する形で示す。
図4、5は、流量を0Nm
3/hと100Nm
3/hとで連続的に切り替えて変動させた場合の計測結果であり、
図6、7は、流量を100Nm
3/hと150Nm
3/hとで連続的に切り替えて変動させた場合の計測結果である。より具体的には、低流量の時間が25秒程度とし高流量の時間が6秒程度として連続した流量変化を計測している。
因みに、当該計測結果は、機械式タービン流量計に係る試験結果(
図4、6)は、標準状態での値に換算した値を示しており、電子式タービン流量計に係る試験結果(
図5、7)は、計測環境で計測された値を示している。また、両者のタービンの非補正指針値は、同一の計測環境においては、実質的には同一の過計量が生じるものである。
図4に示す機械式タービン流量計に係る試験結果では、過計量は12.57Nm
3であり、
図5に示す電子式タービン流量計に係る試験結果では、過計量は5.51m
3(13.78Nm
3)であり、略同程度の値を得られていることから、流量を0Nm
3/h程度と100Nm
3/h程度との間で連続的に切り替える場合には、当該実施形態に係る試験結果(
図4)が、電子式タービン流量計での試験結果(
図5)と、略同等の精度で過計量を補正可能であると言える。
図6に示す機械式タービン流量計に係る試験結果では、過計量は2.31Nm
3であり、
図7に示す電子式タービン流量計に係る試験結果では、過計量は0.59m
3(1.48Nm
3)であり、略同程度の値を得られていることから、流量を100Nm
3/h程度と150Nm
3/h程度との間で連続的に切り替える場合には、当該実施形態に係る試験結果(
図6)が、電子式タービン流量計での試験結果(
図7)と、略同等の精度で過計量を補正可能であると言える。
【0034】
〔別実施形態〕
上記実施形態では、特定目盛抽出機能部C2には、固定指針Hkに接近する最近接の目盛を特定目盛Kmとして抽出するものである例を示したが、別の構成を採用しても構わない。
具体的には、特定目盛抽出機能部C2は、固定指針Hkから離間する(離れていく)最近接の目盛を特定目盛Kmとして抽出するものであり、且つ固定指針Hkと特定目盛Kmとの距離が所定の第2距離以上となったときに、新たな特定目盛Kmを抽出する制御を行うものとしても構わない。
【0035】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の瞬時流量計測装置、及びそれを備えた機械式タービン流量計は、通常は瞬時流量を計測できないものであっても、適切に瞬時流量を計測して出力可能な機械式タービン流量計の瞬時流量計測装置、及びそれを備えた機械式タービン流量計として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
14 :タービンロータ
17 :主流路
20 :バイパス流路
21 :質量流量計
100 :瞬時流量計測装置
200 :機械式タービン流量計
C :指針値読取部
C1 :カメラ
C2 :特定目盛抽出機能部
C3 :変化量読取機能部
H1 :アナログ表示部
H1b :回転表示部
H2 :モニタ部
H1a :第1表示部
Hk :固定指針
Hm :目盛板
Km :特定目盛
L :距離
M :円弧状マーカ
S1 :瞬時流量導出部
S2 :計量性能評価部
S3 :瞬時流量積算値導出部