(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】風車用ブレード
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
F03D3/06 G
(21)【出願番号】P 2019056781
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中村 真章
(72)【発明者】
【氏名】小玉 拓寛
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-275536(JP,A)
【文献】特開昭63-025377(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0086557(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
B32B 1/00-43/00
C08J 5/04- 5/10
C08J 5/24
C08J 9/00- 9/42
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材を覆う繊維強化樹脂層とを備えた樹脂複合体で構成されている風車用ブレードであって、
前記芯材が複数の樹脂発泡体で構成されており、複数の前記樹脂発泡体には、第1樹脂発泡体と、該第1樹脂発泡体とは見掛け密度が異なる第2樹脂発泡体とが含まれ、
前記芯材の厚さ方向に風を受けて回転するよう構成され、
前記第1樹脂発泡体と、前記第2樹脂発泡体とが前記厚さ方向に積層されており、
前記芯材の表面には、前記回転する方向の先端側と末端側との両方に前記第1樹脂発泡体と前記第2樹脂発泡体との境界線が形成されている風車用ブレード。
【請求項2】
前記繊維強化樹脂層がシート状の繊維基材と該繊維基材に含浸された樹脂とを含み、
前記先端側及び前記末端側の少なくとも一方においては、
前記第1樹脂発泡体を覆っている前記繊維基材と前記第2樹脂発泡体を覆っている前記繊維基材との少なくとも一方が前記境界線を越えて他方に重なり合って前記芯材を覆っており、
前記芯材は、前記境界線、又は、前記境界線に隣接する領域が重なり合った前記繊維基材で覆われている請求項1記載の風車用ブレード。
【請求項3】
前記第1樹脂発泡体を覆う前記繊維基材と前記第2樹脂発泡体を覆う前記繊維基材とが連続した1枚の繊維基材であり、
該繊維基材は、両端部の内の一端部と他端部とが前記先端側の前記境界線、又は、該境界線に隣接する領域で重なり合い、且つ、前記一端部と前記他端部との間の中間部で前記末端側の前記境界線を覆うように配されている請求項2記載の風車用ブレード。
【請求項4】
前記第1樹脂発泡体と前記第2樹脂発泡体とが常温硬化型接着剤で接着されている
請求項1乃至3の何れか1項に記載の風車用ブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風車用ブレードに関し、芯材と、該芯材を覆う繊維強化樹脂層とを備えた樹脂複合体で構成されている風車用ブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂発泡体で構成された芯材と、樹脂及び繊維を含む繊維強化樹脂層とを備え、該繊維強化樹脂層によって前記芯材が覆われている樹脂複合体が各種の用途に用いられている。
この種の樹脂複合体は、軽量でありながら優れた強度を有しており、例えば、下記特許文献1においては、風車用のブレードとして利用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風車用ブレードは、通常、複数本が一組となって1台の風車に装着される。
そして、風車では、回転軸方向が水平方向となる一般的な風車に限らず、回転軸方向を垂直方向とした垂直軸風車であっても、複数のブレードは、回転軸を周回する方向に等間隔となって配置される。
そのため、風車は、複数のブレードの内の一ブレードと他ブレードとの間で質量を異ならせると当該ブレードの回転によって回転軸に加えられる遠心力に不均衡が生じることになる。
【0005】
ここで本発明者が検討したところによれば、樹脂発泡体は、同じ原材料と同じ成形型とを使って繰り返し作製しても、同じ見掛け密度になるとは限らず、見掛け密度を異ならせる場合がある。
そのため樹脂発泡体を芯材として利用した風車用ブレードにおいては、上記のような遠心力の不均衡といった問題が生じるおそれがある。
そして、このような点については従来着目がされていないため、特にそのような問題を解決するための手段も確立されていない。
本発明は、このような問題を解決すべくなされたもので、回転時に遠心力の不均衡を生じさせ難い風車用ブレードを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明は、芯材と、該芯材を覆う繊維強化樹脂層とを備えた樹脂複合体で構成されている風車用ブレードであって、前記芯材が複数の樹脂発泡体で構成されており、複数の前記樹脂発泡体には、第1樹脂発泡体と、該第1樹脂発泡体とは見掛け密度が異なる第2樹脂発泡体とが含まれている風車用ブレードを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記芯材を複数の樹脂発泡体で構成する。
しかも、本発明では、見掛け密度が異なる複数の樹脂発泡体で芯材を形成させるため、風車用ブレードを作製する際に樹脂発泡体の組み合わせによって合計質量を調整し易く、複数の風車用ブレードを作製する際に質量バラツキが生じることを抑制することが容易である。
したがって、本発明によれば回転時に遠心力の不均衡を生じさせ難い風車用ブレードが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態における風車用ブレードを備えた風車を示す概略斜視図。
【
図2】一実施形態に係る風車用ブレードを示した斜視図。
【
図4】
図3における破線X部を拡大して示した概略断面図。
【
図5】他の実施形態に係る風車用ブレードを示した概略断面図。
【
図6】他の実施形態に係る風車用ブレードを示した概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、垂直軸風車の風車本体部100を示した図であり、
図2は、風車本体部100に複数が一組となって風車に利用される風車用ブレード30(以下、単に「ブレード30」ともいう)を示したものである。
図にも示されているように前記風車本体部100は、垂直方向Hに延びる回転軸10と、該回転軸10の上端部から径方向外向きに放射状に延びる棒状の支持具20と、該支持具20の先端部に固定された前記ブレード30とを備えている。
【0010】
風車本体部100は、回転軸10の延在する方向とは交差する方向から前記ブレード30が風Wを受けた際に当該ブレード30が風力によって回転軸10の周りを周回運動すべく構成されている。
該垂直軸風車は、ブレード30が回転軸10の周りを周回する方向R(以下「周方向R」ともいう)に移動することで該ブレード30に支持具20を介して連結されている回転軸10が軸周りに回転し、該回転軸10の回転運動が図示していないジェネレータの駆動に利用されて発電を行うべく構成されている。
【0011】
本実施形態の風車本体部100は、複数のブレード30を備え、前記回転軸10の軸方向視において複数の前記ブレード30が前記回転軸10を中心とした同一円周上に配され、且つ、周方向Rにおいて略等間隔となるように配されている。
【0012】
本実施形態のブレード30は、長板状であり、回転軸と並行するように配されている。
本実施形態のブレード30は、長さ方向X(長手方向)が垂直方向Hとなり、幅方向Y(短手方向)が周方向Rとなり、厚さ方向Zが径方向Dとなるように風車本体部100に配されている。
本実施形態のブレード30は、長手方向(垂直方向H)の中央部において前記支持具20と連結されている。
【0013】
図2、
図3に示すように本実施形態のブレード30は、樹脂複合体1によって構成されている。
本実施形態において前記ブレード30として用いられる前記樹脂複合体1は、コアとなる芯材2と、該芯材2を覆う外殻となる繊維強化樹脂層3とを備えている。
本実施形態における前記樹脂複合体1は、前記芯材2が複数の樹脂発泡体で構成されている。
前記芯材2を構成する複数の前記樹脂発泡体として、本実施形態では、第1樹脂発泡体21と、該第1樹脂発泡体21とは見掛け密度が異なる第2樹脂発泡体22とが備えられている。
本実施形態においては、前記第1樹脂発泡体21よりも前記第2樹脂発泡体22の方が見掛け密度が高くなっている。
言い換えると、本実施形態においては、より発泡度が高い樹脂発泡体が前記第1樹脂発泡体21として備えられている。
【0014】
本実施形態における前記樹脂複合体1は、幅方向Yでの一端部1aが風車で回転する際の回転方向先端側となり、幅方向Yでの他端部1bが回転方向末端側となるように構成されている。
本実施形態における前記樹脂複合体1は、厚さ方向Zに風を受けるように風車に装着される。
即ち、前記樹脂複合体1は、風を受ける第1表面1fと、第1表面1fとは反対面となる第2表面1hとを備えている。
【0015】
本実施形態の前記芯材2では、前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22とが樹脂複合体1の厚さ方向Zに積層されている。
即ち、前記芯材2は、厚さ方向Zにおける中央部に前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22との接着面を有している。
【0016】
本実施形態においては、前記第1樹脂発泡体21が前記第1表面1fの側に配され、前記第2樹脂発泡体22が前記第2表面1hの側に配されている。
従って、前記第1樹脂発泡体21は、風を受ける方向において背面側に前記第2樹脂発泡体22との接着に利用される接着面21aを有し、前記第2樹脂発泡体22は前面側に前記第1樹脂発泡体21との接着に利用される接着面22aを有している。
従って、本実施形態における前記芯材2の表面には、風車における回転方向での先端側と末端側との両方に前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との境界線2xが形成されている。
【0017】
本実施形態においては、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との接着に接着剤が用いられており、前記芯材2は、厳密に言えば、前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22と、これらの間に設けられた接着剤層23とで構成されている。
前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とは、外周縁部に至るまで十分接着されており、前記接着面21a,22aの外周縁(接着剤層23の外周縁)が前記境界線2xとなっている。
【0018】
風車用ブレード30は、強い風を受けた際には長さ方向Xに湾曲して風力を僅かに逃してしまい易いが、本実施形態の芯材2は、幅方向両端部に境界線2xを形成させており風を受ける方向(厚さ方向)に対向するように前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との接着面が形成されていることから前記接着剤層23による補強効果を期待でき上記のような湾曲を抑制する効果を期待することができる。
【0019】
本実施形態において前記芯材2を構成する前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とは、特にその形成方法や材質が限定されない。
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、例えば、押出発泡成形体であってもよく、ビーズ発泡成形体などであってもよい。
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、ビーズ発泡成形体であることが好ましい。
【0020】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、例えば、ポリエチレン樹脂発泡体、ポリプロピレン樹脂発泡体などのポリオレフィン樹脂発泡体;汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)発泡体、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)発泡体などのポリスチレン樹脂発泡体;ポリアミド12発泡体、ポリアミド6発泡体、ポリアミド66発泡体などのポリアミド樹脂発泡体;ポリ乳酸樹脂発泡体、ポリブチレンサクシネート樹脂発泡体、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体、ポリブチレンテレフタレート樹脂発泡体などのポリエステル樹脂発泡体;ポリカーボネート樹脂発泡体;アクリル樹脂発泡体などとすることができる。
【0021】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、高い強度の風車用ブレードを形成させる上において、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体、ポリカーボネート樹脂発泡体、又は、アクリル樹脂発泡体のいずれかであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体であることが特に好ましい。
【0022】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、例えば、50kg/m3以上700kg/m3以下の見掛け密度を有する樹脂発泡体を採用することができる。
【0023】
前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との見掛け密度の違いは、見掛け密度の高い側での見掛け密度を100質量%としたときに1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。
見掛け密度の違いは、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22の見掛け密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」記載の方法で測定することができる。
即ち、見掛け密度は、原則的には次のようにして求めることができる。
(見掛け密度測定方法)
100cm3以上の試験片を材料の元のセル構造をできるだけ変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出することができる。
見掛け密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm3)
尚、測定用試験片は、原則的に成形が施された後、72時間以上経過した試料から切り取り、温度23±2℃、湿度50±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものとする。
なお、試料の寸法測定には、例えば、(株)ミツトヨ製「DIGIMATIC」CD-15タイプを用いることができる。
【0025】
本実施形態のブレード30は、風車に利用される全てのブレード30の質量が全てのブレードの平均質量に対して±20%の範囲内に収まることが好ましく、±15%の範囲内に収まることがより好ましく、±10%の範囲内に収まることが特に好ましい。
従って、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とは、風車に利用される全てのブレード30の芯材2から算出した平均質量に対して±20%の範囲内に収まる見掛け密度であることが好ましく、±15%の範囲内に収まる見掛け密度であることがより好ましく、±10%の範囲内に収まる見掛け密度であることが特に好ましい。
【0026】
前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との接着は、単なる感圧接着剤ではなく、反応硬化型接着剤によって行われることが好ましい。
前記反応硬化型接着剤としては、熱硬化型であっても常温硬化型であってもよい。
但し、芯材2の中心部には、外部より効率良く熱を加えることが難しいため、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との接着は、常温硬化型接着剤によって実施することが好ましい。
該常温硬化型接着剤としては、例えば、シリコン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
前記常温硬化型接着剤としては、エポキシ系接着剤が好適である。
前記エポキシ系接着剤としては、主剤と硬化剤とを使用直前に混合する2液混合タイプであることが好ましい。
【0027】
本実施形態においては、相対的に見掛け密度の高い第2樹脂発泡体22が回転軸の近くに位置することで回転時におけるモーメントを小さくすることができる。
複数のブレードを風車に配置する際は、見掛け密度の高い樹脂発泡体と見掛け密度の低い樹脂発泡体との位置関係が互いに共通するように配置することが好ましい。
尚、見掛け密度の高い樹脂発泡体と見掛け密度の低い樹脂発泡体とを風を受ける方向に積層し、これらの位置関係を複数のブレードの間で共通させることなど、芯材に関する公的な態様については、垂直軸風車、水平軸風車のいずれにも該当する。
【0028】
該芯材2の表面を覆う前記繊維強化樹脂層3は、本実施形態においては、2枚のシート状の繊維強化樹脂材によって形成されている。
前記繊維強化樹脂材の一方は前記第1樹脂発泡体21に積層されており、他方は前記第2樹脂発泡体22に積層されている。
即ち、本実施形態の繊維強化樹脂層3は、前記第1樹脂発泡体21に積層された前記繊維強化樹脂材で構成されている第1の部位(以下「第1繊維強化樹脂層31」ともいう)と、前記第2樹脂発泡体22に積層された前記繊維強化樹脂材で構成されている第2の部位(以下「第2繊維強化樹脂層32」ともいう)とを備えている。
【0029】
図4に示すように前記第1繊維強化樹脂層31は、シート状の繊維基材31aと、該繊維基材31aに含浸されて繊維基材31aに担持されている樹脂31bとで構成されている。
前記第2繊維強化樹脂層32も、繊維材で構成された繊維基材32aと、該繊維基材32aに含浸されて繊維基材32aに担持されている樹脂31bとで構成されている。
即ち、本実施形態における繊維強化樹脂層3は、前記第1樹脂発泡体21に積層された第1の繊維基材31a(以下「第1繊維基材31a」ともいう)と前記第2樹脂発泡体22に積層された第2の繊維基材32a(以下「第2繊維基材32a」ともいう)とを含む複数の繊維基材が繊維強化樹脂層3の形成に用いられている。
【0030】
上記のように本実施形態の繊維強化樹脂層3は、一領域の形成に用いられている第1繊維基材31aと前記一領域とは異なる他領域の形成に用いられている第2繊維基材32aとを含む複数の繊維基材を有する。
【0031】
前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとは、本実施形態においては前記芯材2の前記境界線2xを互いに重なり合って覆っている。
即ち、本実施形態においては、前記繊維強化樹脂層3がシート状の繊維基材31a,32aと該繊維基材31a,32aに含浸された樹脂31b,32bとを含み、前記芯材2の表面では、前記第1樹脂発泡体21を覆っている前記第1繊維基材31aが前記境界線2xを越えて前記第2樹脂発泡体22に及び、前記第2樹脂発泡体22を覆っている前記第2繊維基材32aが前記境界線2xを越えて前記第1樹脂発泡体21に及んでおり、前記境界線2xでは、前記第1樹脂発泡体21を覆っている前記第1繊維基材31aと前記第2樹脂発泡体22を覆っている前記第2繊維基材32aとが重なりあって前記芯材2を覆っている。
【0032】
前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとが重なりあって部分の幅WD(外側の繊維基材の表面に沿って測定される幅)は、該重なり合いが形成されている全域での平均値(以下「平均ラップ幅」ともいう)が1mm以上であることが好ましい。
前記平均ラップ幅は、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることが特に好ましい。
前記幅WDは、通常、最大でも25mm以下とされ、前記平均ラップ幅も、通常、25mm以下とされる。
【0033】
本実施形態においては、この繊維基材の重なり合いは、前記接着剤層23の外周縁に沿って帯状に延在する。
従って、本実施形態においては、前記接着剤層23と、繊維基材の重なり合いとによって形成される補強構造がH鋼のような状態となっており、ブレード30に対して高い補強効果を発揮する。
【0034】
上記のような効果は、
図5に示すように第1繊維基材31aと第2繊維基材32aとの少なくとも一方が境界線2xを越えて芯材2を覆っていれば発揮され得る。
即ち、前記第1樹脂発泡体21を覆っている前記第1繊維基材31aと前記第2樹脂発泡体22を覆っている前記第2繊維基材32aとの少なくとも一方が前記境界線2xを越えて他方の繊維基材と重なり合って前記芯材2を覆っており、前記芯材2の前記境界線2xに隣接する領域が重なり合った前記繊維基材(31a,32a)で覆われていると、前記接着剤層23とによって形成される補強構造がL字アングルのような状態となって形成されるため、
図4に示す態様と同様の効果が発揮され得る。
この場合に形成させる重なり合いの幅WD’やその平均値(平均ラップ幅)については、
図4に示す態様と同様とすることができる。
【0035】
尚、本実施形態のブレード30を構成する樹脂複合体1を作製する際には、加圧方向が当該樹脂複合体1の厚さ方向となるようなプレス方法が採用されることになるが、前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとがこのプレス方向に行き違いになっていることでプレス時には前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとが前記平均ラップ幅を増大させる方向に適宜スライドすることができ、芯材2の表面形状に対する良好な追従性を示してシワなどが生じ難くなる。
即ち、本実施形態の樹脂複合体1は、幅方向Yの端部において繊維基材どうしが重なり合っていることで、高い補強効果が発揮させるばかりでなく、外観美麗ともなり得る。
【0036】
前記繊維強化樹脂層3の形成に用いられる繊維基材(31a,32a)は、例えば、平織物、綾織物、繻子織物など織布であっても、不織布であってもよい。
前記繊維基材(31a,32a)は、編布であってもよい。
【0037】
前記繊維基材(31a,32a)を構成する繊維は、特に限定されず、例えば、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、塩化ビニル繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、アセテート繊維などの有機繊維や、カーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維、などの無機繊維を挙げることができる。
【0038】
繊維基材(31a,32a)に含浸される前記樹脂(31b,32b)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。
熱硬化性樹脂の場合には、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
【0039】
前記繊維強化樹脂層3は、通常、繊維基材が重なっている部分以外での平均厚さが0.05mm以上20mm以下のとなるように形成させることができ、0.1mm以上10mm以下の平均厚さとなるように形成されることが好ましい。
該平均厚さは、樹脂複合体1において無作為に選択した複数箇所(例えば、10箇所)での測定による算術平均値を計算して求めることができる。
【0040】
尚、前記繊維基材(31a,32a)は、第1繊維基材31aと第2繊維基材32aとで厚さや材質などが共通している必要はなく、これらが異なっていてもよい。
また、前記第1繊維基材31aに担持されて前記第1繊維強化樹脂層31の形成材料となっている前記樹脂31bと、前記第2繊維基材32aに担持されて前記第2繊維強化樹脂層32の形成材料となっている前記樹脂32bとは材質などが共通している必要はなく、異なっていてもよい。
従って、前記第1繊維強化樹脂層31と前記第2繊維強化樹脂層32とは平均厚さが異なっていてもよい。
【0041】
前記第1繊維強化樹脂層31と前記第2繊維強化樹脂層32とは、それぞれ繊維基材(31a,32a)が1枚ずつである必要はなく、何れか一方又は両方に複数の繊維基材が厚さ方向に積層された状態で備えられていてもよい。
その場合、
図6に示すように第1繊維強化樹脂層31に備えられた繊維基材31aと第2繊維強化樹脂層32に備えられた繊維基材32aとは、前記境界線2xの形成地点において交互に積層されて前記芯材2を覆うことが好ましい。
また、前記第1繊維強化樹脂層31や前記第2繊維強化樹脂層32に複数枚の繊維基材が備えられる場合、全ての繊維基材が前記境界線2xの形成地点において重なり合うようにしなくてもよい。
さらには、本実施形態においては、優れた補強効果を発揮させる上において繊維基材の重なり合いを形成させているが、要すれば、繊維基材を重ね合わせるようにしなくてもよい。
【0042】
本実施形態においては、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とにそれぞれ繊維基材を積層しているが、要すれば、芯材全体を1枚の繊維基材で覆うようにしてもよい。
即ち、本実施形態においては、前記第1樹脂発泡体を覆う前記繊維基材と前記第2樹脂発泡体を覆う前記繊維基材とが連続した1枚の繊維基材であってもよい。
【0043】
連続した1枚の繊維基材で芯材2を覆う場合、前記ブレード30を構成する前記樹脂複合体1は、風車で前記ブレード30が回転する際の回転方向先端側となる前記一端部1aにおいて繊維基材を重ね合わせることが好ましい。
即ち、本実施形態において風車用のブレード30を構成する前記樹脂複合体1は、前記第1樹脂発泡体21を覆う前記繊維基材と前記第2樹脂発泡体22を覆う前記繊維基材とが連続した1枚の繊維基材であり、該繊維基材が、その両端部の内の一端部と他端部とが風車用のブレード30の回転方向における前記先端側の前記境界線2x、又は、該境界線2xに隣接する領域で重なり合い、且つ、前記一端部と前記他端部との間の中間部で前記末端側(幅方向Yでの他端部1b)の前記境界線2xを覆うように配されていることが好ましい。
【0044】
風車の回転方向先端側は、鳥類や風に乗って飛来する飛来物などが衝突し易く、この部分が重なり合った繊維基材によって補強されることで樹脂複合体1の風車用ブレードとしての耐用期間を長期化させることができる。
【0045】
また、本実施形態においては、前記第1樹脂発泡体21や前記第2樹脂発泡体22の一方又は両方を複数の領域に分けて一領域を覆う繊維基材を他領域を覆う繊維基材と別体のものとしてもよい。
【0046】
尚、本実施形態においては、前記芯材2を2つの樹脂発泡体で構成させる態様を例示しているが、前記芯材2の構成には3以上の樹脂発泡体を用いてもよい。
さらに、2つの樹脂発泡体はブレードの厚さ方向に積層させる必要はない。
以上のように本実施形態においては樹脂複合体1や該樹脂複合体1をブレード30として採用する風車について上記のような例示を行っているが、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1:樹脂複合体、2:芯材、2x:境界線、3:繊維強化樹脂層、21:第1樹脂発泡体、22:第2樹脂発泡体、30:風車用ブレード、31:第1繊維強化樹脂層、31a:第1繊維基材、32:第2繊維強化樹脂層、32a:第2繊維基材